(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-16
(45)【発行日】2022-09-28
(54)【発明の名称】回動機構および自動復帰テーブル
(51)【国際特許分類】
A47B 11/00 20060101AFI20220920BHJP
【FI】
A47B11/00 A
(21)【出願番号】P 2021087167
(22)【出願日】2021-05-24
【審査請求日】2021-05-24
(73)【特許権者】
【識別番号】591015511
【氏名又は名称】高千穂交易株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】特許業務法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】阪田 貴
(72)【発明者】
【氏名】米畑 龍斗
【審査官】広瀬 杏奈
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-200221(JP,A)
【文献】実開昭64-056745(JP,U)
【文献】韓国登録特許第10-1925302(KR,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47B 11/00
A47C 7/68
A47B 83/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基台と、
該基台に内輪が固定されたベアリングと、
前記ベアリングの外輪の回動を所定の回動位置で停止させるストッパーと、
前記ベアリングの外輪に対して
、前記ストッパーにより前記外輪が停止される前記所定の回動位置に向けて回動するように、回動力を付与するバネと、
前記内輪の内側に配置された回転式ダンパーと、
前記ベアリングの外輪に固定され、該ベアリングの外輪と前記回転式ダンパーの回転部分とを接続する接続部材を取り付ける取り付け手段と、
を備えることを特徴とする回動機構。
【請求項2】
前記接続部材がテーブルであることを特徴とする請求項1に記載の回動機構。
【請求項3】
前記接続部材が、前記ベアリングの外輪と前記回転式ダンパーの回転部分とを接続した状態で前記取り付け手段により取り付けられていることを特徴とする請求項1に記載の回動機構。
【請求項4】
前記バネが、定荷重バネであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の回動機構。
【請求項5】
前記バネが、引っ張りコイルバネであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の回動機構。
【請求項6】
請求項1に記載の回動機構と、
前記接続部材としてのテーブルと、
を備えることを特徴とする自動復帰テーブル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、折り畳み式のテーブルや開閉式の扉などにおいて、テーブルや扉などを自動的に元の位置に復帰させるための機構に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、学校の教室、オフィス、会議場などに設置されている椅子には、椅子の利用者がメモを取ったり、読書をしたりする利便性を向上させるために、椅子にテーブルが備え付けられている場合がある。このようなテーブルは、利用者が椅子に着席したり、椅子から立ち上がったりする場合に邪魔にならないよう、折り畳み式に構成されていることが多い。
【0003】
図7は、このような椅子とテーブルの構成の一例を示す斜視図である。
図7において、椅子101には、利用者が着席したときに体の側方となる位置に、利用者の体の動きの邪魔にならないよう、実線Aで示すように折り畳まれたテーブル103が配置されている。利用者は、テーブル103を利用する場合は、実線Aで示す折り畳み位置から、矢印Dで示すようにテーブルを回転軸105の回りに回動させ(二点鎖線Bで示す位置)、さらに矢印Eで示すようにさらに回動させて、二点鎖線Cで示す使用位置に移動させる。テーブル103は、回転軸105に対して二点鎖線Cで示す位置で回転が停止するようにストッパーが設けられており、利用者は、この位置でテーブル103をメモを取ったり読書をしたりするためのテーブルとして利用することができる。
【0004】
利用者が椅子101から立ち上がる場合や、テーブル103の使用が終わった場合には、利用者は、テーブル103を矢印E、Dと反対方向に回動させることにより、実線Aで示す折り畳み位置に戻すことができる。
【0005】
また、別の折り畳みテーブルの例として、特許文献1には、椅子の背面にテーブルを折り畳み式に配置した構成が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このような折り畳み式のテーブルは、利用者が単に椅子を椅子として使用したい場合にはテーブルが邪魔にならず、必要な場合にだけテーブル付きの椅子として使用できるため、利便性の高いものである。
【0008】
しかしながら、従来の折り畳み式のテーブルは、
図7で説明したように、矢印D、Eの方向への回動動作、その反対方向への折り畳み動作をすべて手動で行わなければならず、頻繁に折り畳み動作を行う場合には、操作性がよいとは言えなかった。また、特許文献1に記載の折り畳みテーブルも、開いたり折りたたんだりする操作はすべて手動である。
【0009】
本発明は上述した課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、テーブルや開閉式の扉などを、利用者が移動させた後に、自動的に元の位置に復帰させることができる機構を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係わる回動機構は、基台と、該基台に内輪が固定されたベアリングと、前記ベアリングの外輪の回動を所定の回動位置で停止させるストッパーと、前記ベアリングの外輪に対して、前記ストッパーにより前記外輪が停止される前記所定の回動位置に向けて回動するように、回動力を付与するバネと、前記内輪の内側に配置された回転式ダンパーと、前記ベアリングの外輪に固定され、該ベアリングの外輪と前記回転式ダンパーの回転部分とを接続する接続部材を取り付ける取り付け手段と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、テーブルや開閉式の扉などを、利用者が移動させた後に、自動的に元の位置に復帰させることができる機構を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の第1の実施形態に係わる自動復帰テーブルの構成を示す斜視図である。
【
図2】自動復帰テーブルを、
図1における椅子の前方側から見た側面図である。
【
図3】回動機構を
図1の上方向から見た平面図である。
【
図5】第2の実施形態に係わる回動機構の構成を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について、添付図面を参照して詳細に説明する。
【0014】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態に係わる自動復帰テーブルの構成を示す斜視図である。
【0015】
図1において、学校の教室、オフィス、会議場などに用いられる椅子1の手すり部分1aには、本実施形態の自動復帰テーブル3が配置されている。自動復帰テーブル3は、テーブル本体31と、回動機構33(
図2、
図3参照)とを備えている。詳細は後述するが、自動復帰テーブル3は、回動機構33により一点鎖線で示す回動軸5の回りに回動可能に支持されている。テーブル本体31は、後述する定荷重バネ41(
図2、
図3参照)の力により、矢印Hで示す方向に付勢されており、通常は、Gで示すテーブルとして利用可能な位置に停止している。
【0016】
利用者が、着席している状態から立ち上がる場合は、テーブル本体31を定荷重バネ41の付勢力に抗して矢印Iで示す方向に回動させ、Fで示す開き位置に移動させる。これにより、利用者は椅子1から立ち上がることができる。そして、利用者が椅子1から離れる時に、開き位置Fにおいてテーブル本体31から手を離すことにより、テーブル本体31は、定荷重バネ41の力により利用可能位置Gまで自動的に復帰する。この時、後述する回転式ダンパー47(
図3参照)の減衰力により、バネ力によるテーブル本体31の回動速度が減衰されて、テーブル本体31は、開き位置Fから利用可能位置Gにゆっくりと復帰する。
【0017】
図2は、自動復帰テーブル3を、
図1における椅子1の前方側から見た側面図である。
【0018】
図2において、椅子1の手すり部分1aには、回動機構33が固定されており、回動機構33により、テーブル本体31が、回動軸5の回りに回動可能に支持されている。より詳しくは、回動機構33は、手すり部分1aに固定されるベースプレート35と、ベースプレート35に内輪が固定されたベアリングの外輪に装着される外輪ケース37とを備える。外輪ケース37は、上記のように、ベアリングによりベースプレート35に対して回動可能であり、この構成により、外輪ケース37に固定されたテーブル本体31が、外輪ケース37とともにベースプレート35に対して回動可能に支持される。外輪ケース37とベースプレート35に固定された支柱39との間には、定荷重バネ41が配置されており、外輪ケース37及びテーブル本体31に対して、
図1の矢印H方向に回動させる力(回動力)を付与している。
【0019】
図3は、回動機構33を
図1の上方向から見た平面図であり、
図4は、
図3のL-L視断面図である。
【0020】
図3、
図4において、
図2の説明と重複するが、回動機構33は、椅子1の手すり部分1aに固定される基台としてのベースプレート35を備える。ベースプレート35には、ベアリング43の内輪43aが、内輪カラー45とスペーサー44とを介して固定されている。ベアリング43の内輪43aに対してボール43cを介して回転可能に支持されている外輪43bの外周面には、外輪ケース37が固定されている。これにより、外輪ケース37は、ベースプレート35に対してベアリング43により回転可能に支持される。
【0021】
外輪ケース37の外周面である円筒面37aには、定荷重バネ41が巻き付けられ、定荷重バネ41は、その端部が点Jにおいて、円筒面37aに固定されている。定荷重バネ41の反対側の端部41aは、ベースプレート35に固定された支柱39の円筒面39aに対して滑らかに摺動するように接触している。
【0022】
ここで、定荷重バネ41は、薄板状のバネ材をゼンマイ状に巻いた形状に形成されており、バネの有効長を極めて長くとることにより、変位量に対するバネ力の変化をほとんどなくし、ストロークの全体にわたってほぼ均一のバネ力を発揮することができるバネである。この定荷重バネ41の一端が外輪ケース37に固定され、他端部41aがベースプレート35の支柱39と摺動接触することにより、外輪ケース37は
図3の矢印K方向の回転力を受ける。この力が
図1においてテーブル本体31を矢印H方向に付勢する力となる。なお、本実施形態では、外輪ケース37に回転力を加えるバネとして定荷重バネを用いているが、本発明はこれに限定されるものではなく、引っ張りコイルバネなどの他の形式のバネを用いて外輪ケース37に回転力を加えるようにしてもよい。
【0023】
外輪ケース37のフランジ部37bの裏面には、ブロック49が固定されており、このブロック49がベースプレート35に植設されたピン51と当接する。これにより、定荷重バネ41の付勢力による矢印K方向の外輪37の回転が阻止され、通常の状態では、外輪ケース37は、
図3に示した回転位置で停止している。この位置は、
図1に示したテーブル本体31の利用可能位置Gと一致している
また、ブロック49の内部には、ボール53が配置されており、圧縮バネ55によりベースプレート35に向けて付勢されている。ベースプレート35には、ボール53の直径よりも小さい直径の穴35aが形成されており、ボール53が圧縮バネ55の付勢力によりこの穴35aに落ち込むことにより、外輪ケース37がピン51に当接する位置とは異なる位置でクリック感を持って停止される。これにより、テーブル本体31を通常の利用可能な位置とは異なる回動位置で停止させることができる。この停止位置は、ベースプレート35に形成する穴35aの位置を調節することにより、任意の回動位置に設定することが可能である。なお、テーブル本体31を、開き位置Fと利用可能位置Gの間の位置で停止させる必要が無ければ、このボール53と圧縮バネ55のクリック機構は設けなくてもよい。
【0024】
すでに説明したように、ベアリング43の内輪43aは、内輪カラー45を介してベースプレート35に固定されているが、内輪カラー45のさらに内側には、樹脂製のブッシュ46を介して、回転式ダンパー47が固定されている。この回転式ダンパー47は、内部にオイルが封入されており、このオイルの流体抵抗により回転部分47aの回転に減衰力を加えるように構成されている。回転式ダンパー47の回転部分47aの上端には突起部47bが形成されており、この突起部47bには、テーブル本体31に形成された溝が係合し、テーブル本体31と回転式ダンパー47の回転部分47aは、一体的に回転する。この構成により、ベースプレート35に回転自在に支持された外輪ケース37及びテーブル本体31の回転に対して、回転式ダンパー47の減衰力が作用する。結果として、回転式ダンパー47の減衰力により、テーブル本体31が
図1に示した開き位置Fから利用可能位置Gにバネ力で復帰する場合の速度が減衰され、テーブル本体31を、ゆっくりと利用可能位置Gに復帰させることが可能となる。
【0025】
なお、上記の説明では、回転式ダンパー47は、オイルの流体抵抗により回転速度を減衰するように説明したが、この他にも、他の流体や、ギヤを用いた回転式ダンパーがすでに公知であり、本発明は、これらのどの形式の回転式ダンパーを用いてもよい。
【0026】
以上のように構成された自動復帰テーブルでは、利用者が椅子1に着席する場合、あるいは椅子1から立ち上がる場合に、手動でテーブル本体31を
図1の矢印Iの方向に回動させる。これにより、利用者は、椅子1に着席したり、椅子1から立ち上がったりすることが可能となる。その後、利用者がテーブル本体31から手を離すと、テーブル本体31は、定荷重バネ41の回動力により、矢印Hの方向に回動し、利用可能位置Gに復帰する。この時、テーブル本体31には、回転式ダンパー47の減衰力が作用し、また、ベアリング43により高精度な回転が確保されているため、テーブル本体31はゆっくりと且つ滑らかに利用可能位置Gに復帰する。
【0027】
以上説明したように、上記の実施形態によれば、学校の教室、オフィス、会議場などに設置されるテーブル付きの椅子において、利用者が立ち上がるためにテーブルを移動させた場合でも、テーブルを元の位置に自動的に復帰させることができ、テーブル付きの椅子の利便性を向上させることができる。
【0028】
また、回転式ダンパーにより、テーブルが元の位置に戻るときのスピードを減衰させて動きを滑らかにできるため、利用者の使用感を向上させることができる。
【0029】
また、テーブル本体31以外の回動機構33の部分が、ベースプレート35の上にすべての構成要素を配置し、ユニット化した形態として構成されているため、取り扱いが容易であり、装置としての利便性がさらに向上する。
【0030】
なお、上記の説明では、自動復帰テーブルを、学校の教室、オフィス、会議場などの椅子に配置した例について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、車いすや、自動車、電車などの車両のシート等に適用することも可能である。
【0031】
(第2の実施形態)
図5は、本発明の第2の実施形態に係わる回動機構34の構成を示す斜視図であり、
図6は、
図5のM-M視断面図である。
【0032】
第1の実施形態では、テーブル本体31を用いて外輪ケース37と、回転式ダンパー47の接続を行った。
【0033】
これに対し、本実施形態では、外輪ケース37の上に閉止プレート61を固定し、閉止プレート(接続部材)61に形成された溝61aを用いて、外輪ケース37と、回転式ダンパー47の突起部47bの接続を行っている。そして、テーブル本体31は、閉止プレート61のさらに上面に固定される。その他の構成は、第1の実施形態と同様である。
【0034】
回動機構34をこのように構成すれば、回動機構を自動復帰機能とダンパー機能を含めて完全に独立した1つのユニットして構成することができるので、第1の実施形態よりも、さらに装置の取り扱い性を向上させることができる。
【符号の説明】
【0035】
1:椅子、3:自動復帰テーブル、5:回動軸、31:テーブル本体、33,34:回動機構、35:ベースプレート、37:外輪ケース、39:支柱、41:定荷重バネ、43:ベアリング、47:回転式ダンパー
【要約】
【課題】テーブルや開閉式の扉などを、利用者が移動させた後に、自動的に元の位置に復帰させることができる機構を提供する。
【解決手段】基台と、基台に内輪が固定されたベアリングと、ベアリングの外輪に対して回動力を付与するバネと、内輪の内側に配置された回転式ダンパーと、ベアリングの外輪に固定され、ベアリングの外輪と回転式ダンパーの回転部分とを接続する接続部材を取り付ける取り付け手段とを備える。
【選択図】
図3