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特許7143542分流式下水管への浸入水推定システム、方法、およびプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-16
(45)【発行日】2022-09-28
(54)【発明の名称】分流式下水管への浸入水推定システム、方法、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   E03F 1/00 20060101AFI20220920BHJP
   G06Q 50/06 20120101ALI20220920BHJP
【FI】
E03F1/00 Z
G06Q50/06
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2022056490
(22)【出願日】2022-03-30
【審査請求日】2022-03-30
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】593153532
【氏名又は名称】公益財団法人日本下水道新技術機構
(73)【特許権者】
【識別番号】502341122
【氏名又は名称】株式会社福山コンサルタント
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】特許業務法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 雄二
(72)【発明者】
【氏名】青木 良太
(72)【発明者】
【氏名】高澤 卓
(72)【発明者】
【氏名】黒木 幹
(72)【発明者】
【氏名】青島 亘佐
(72)【発明者】
【氏名】宮村 正樹
【審査官】高橋 雅明
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-023763(JP,A)
【文献】特開2003-027567(JP,A)
【文献】特開2011-080347(JP,A)
【文献】特開2016-108743(JP,A)
【文献】特開2003-184160(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03F 1/00
G06Q 50/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
雨天時に複数の区域で発生し、汚水管に浸入する浸入水を推定する浸入水推定システムであって、
各区域の時刻毎の降雨量を取得する取得手段と、
前記複数の区域から下水処理場に流入する汚水の時刻毎の流入量を計測する計測手段と、
前記流入量の内、晴天時の流入量と雨天時の流入量との差を浸入水の総量として算出する算出手段と、
前記流入量の内、晴天時および雨天時の平日の流入量晴天時および雨天時の休日祝の流入量を把握する手段と、
前記区域毎に降雨する降雨量を積算し、各区域における総降雨量を求める手段と、
降雨開始後特定時間内における時刻毎の浸入水の総量を算出する手段と、
平日の曜日および休日祝日毎の浸入水の総量と各区域の総降雨量と降雨前後の時間関係から各区域の浸入水量を特定する値を求め、当該値から浸入水の発生する区域を推定する手段と、
を備えることを特徴とする分流式下水管への浸入水推定システム。
【請求項2】
前記推定する手段は、前記浸入水の発生する区域を推定する推定モデルに対し、特定地域の降雨を模したダミーデータを適用することを特徴とする請求項1に記載の分流式下水管への浸入水推定システム。
【請求項3】
前記ダミーデータとして設定する降雨量は、全体処理区を小区間に区分した複数の処理分区に対し、降雨量の多い大降雨となる区分を一つ選択した際、他の処理分区を降雨量の少ない小降雨となるよう設定することを特徴とする請求請2に記載の分流式下水管への浸入水推定システム。
【請求項4】
降雨中および降雨後の特定期間における浸入水の総量の時間変化によって、浸入水が分流式下水管の損傷箇所からの流入か、浸入水が意図しない雨水合流および管の誤接続による流入かを推定することを特徴とする請求項1から3の何れか一項に記載の分流式下水管への浸入水推定システム。
【請求項5】
浸入水量は、排水区の単位面積あたりの雨天時浸入水量であることを特徴とする請求請1から4の何れか一項に記載の分流式下水管への浸入水推定システム。
【請求項6】
各区域の分流式下水管の工事の場所および工事の時期を含む工事履歴情報及び各区域における土壌変化が発生した位置および土壌変化が発生した時期を含む土壌変化情報の少なくとも一方を記憶する記憶部と、
所定期間内における時刻毎の浸入水の総量を算出し、前記所定期間内における時刻毎の浸入水の総量の変化を前記工事履歴情報及び前記土壌変化情報の少なくとも一方に対応付けて前記記憶部に記憶する手段と、
を備えることを特徴とする請求請1から5の何れか一項に記載の分流式下水管への浸入水推定システム。
【請求項7】
雨天時に複数の区域で発生し、汚水管に浸入する浸入水を推定する浸入水推定の方法であって、
各区域の時刻毎の降雨量を取得する取得工程と、
前記複数の区域から下水処理場に流入する汚水の時刻毎の流入量を計測する計測工程と、
前記流入量の内、晴天時の流入量と雨天時の流入量との差を浸入水の総量として算出する算出工程と、
前記流入量の内、晴天時および雨天時の平日の流入量晴天時および雨天時の休日祝の流入量を把握する工程と、
前記区域毎に降雨する降雨量を積算し、各区域における総降雨量を求める工程と、
降雨開始後特定時間内における時刻毎の浸入水の総量を算出する工程と、
平日の曜日および休日祝日毎の浸入水の総量と各区域の総降雨量と降雨前後の時間関係から各区域の浸入水を特定する値を求め、当該値から浸水の発生する区域を推定する工程と、
を含むことを特徴とする分流式下水管への浸入水推定の方法。
【請求項8】
雨天時に複数の区域で発生し、汚水管に浸入する浸入水を推定する浸入水推定システム上のコンピュータで機能するプログラムであって、
各区域の時刻毎の降雨量を取得する取得工程と、
前記複数の区域から下水処理場に流入する汚水の時刻毎の流入量を計測する計測工程と、
前記流入量の内、晴天時の流入量と雨天時の流入量との差を浸入水の総量として算出する算出工程と、
前記流入量の内、晴天時および雨天時の平日の流入量晴天時および雨天時の休日祝の流入量を把握する工程と、
前記区域毎に降雨する降雨量を積算し、各区域における総降雨量を求める工程と、
降雨開始後特定時間内における時刻毎の浸入水の総量を算出する工程と、
平日の曜日および休日祝日毎の浸入水の総量と各区域の総降雨量と降雨前後の時間関係から各区域の浸入水を特定する値を求め、当該値から浸水の発生する区域を推定する工程と、
をコンピュータに実行させるための分流式下水管への浸入水推定プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分流式下水道管への雨水浸入箇所を推定する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
降雨によって地上に集められた雨水は、様々な経路をたどりながら河川へ流れ込む。特許文献1には、降雨情報と河川の増水との関連付け、洪水被害などを予測するための情報を得るシステムが開示されている。また、雨水は河川だけではなく、本来雨水の合流が目的となっていない分流式下水管にも流れ込み、下水処理施設で処理すべき流量の総量が増える。特許文献2には、本来想定されていない浸入水がどの地域から発生しているかを推定するシステムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2020-085441号公報
【文献】特許第5574769号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
不明水の発生地点の把握には、管渠の埋設状況、下水処理場の運用データ又は調査用の流量計測データ等を収集・解析し、不明水の発生箇所の絞込みを行う必要があり、これらの調査には多くの労力、時間、コストがかかる。例えば、下水管の複数地点に流量を計測する計測器の設置が必要となる。特許文献2に記載の推定方法では、推定精度を高くすることが困難であり、改善の余地がある。
【0005】
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、分流式下水道管への浸入水の発生箇所の推定精度を高くする技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一観点に係る浸入水推定システムは、
雨天時に複数の区域で発生する浸入水を推定する浸入水推定システムであって、
各区域の時刻毎の降雨量を取得する取得手段と、
前記複数の区域から下水処理場に流入する汚水の時刻毎の流入量を計測する計測手段と、
前記流入量の内、晴天時の流入量と雨天時の流入量との差を浸入水の総量として算出する算出手段と、
前記流入量の内、平日と休日祝日との流入量を把握する手段と、
前記区域毎に降雨する降雨量を積算し、各区域における総降雨量を求める手段と、
降雨開始後特定時間内における時刻毎の浸入水の総量を算出する手段と、
平日の曜日および休日祝日毎の浸入水の総量と各区域の総降雨量と降雨前後の時間関係から各区域の浸入水量を特定する値を求め、当該値から浸入水の発生する区域を推定する手段と、
を備えることを特徴とする分流式下水管への浸入水推定システムである。
【0007】
本発明の一観点に係る浸入水推定の方法は、
雨天時に複数の区域で発生する浸入水を推定する浸入水推定の方法であって、
各区域の時刻毎の降雨量を取得する取得工程と、
前記複数の区域から下水処理場に流入する汚水の時刻毎の流入量を計測する計測工程と

前記流入量の内、晴天時の流入量と雨天時の流入量との差を浸入水の総量として算出する算出工程と、
前記流入量の内、平日と土日祝日との流入量を把握する工程と、
前記区域毎に降雨する降雨量を積算し、各区域における総降雨量を求める工程と、
降雨開始後特定時間内における時刻毎の浸入水の総量を算出する工程と、
平日の曜日および休日祝日毎の浸入水の総量と各区域の総降雨量と降雨前後の時間関係から各区域の浸入水を特定する値を求め、当該値から浸水の発生する区域を推定する工程と、
を含むことを特徴とする分流式下水管への浸入水推定方法である。
【0008】
本発明の一観点に係るプログラムは、
雨天時に複数の区域で発生する浸入水を推定する浸入水推定システム上のコンピュータで機能するプログラムであって、
各区域の時刻毎の降雨量を取得する取得工程と、
前記複数の区域から下水処理場に流入する汚水の時刻毎の流入量を計測する計測工程と、
前記流入量の内、晴天時の流入量と雨天時の流入量との差を浸入水の総量として算出する算出工程と、
前記流入量の内、平日と土日祝日との流入量を把握する工程と、
前記区域毎に降雨する降雨量を積算し、各区域における総降雨量を求める工程と、
降雨開始後特定時間内における時刻毎の浸入水の総量を算出する工程と、
平日の曜日および休日祝日毎の浸入水の総量と各区域の総降雨量と降雨前後の時間関係から各区域の浸入水を特定する値を求め、当該値から浸水の発生する区域を推定する工程と、
をコンピュータに実行させるための分流式下水管への浸入水推定プログラムである。
【0009】
また、本発明は、上記プログラムを非一時的に記録したコンピュータ読取可能な記録媒体として捉えることもできる。なお、上記手段および処理の各々は可能な限り互いに組み合わせて本発明を構成することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、分流式下水道管への浸入水の発生箇所の推定精度を高くする技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、第1実施形態に係る浸入水推定システムの説明図である。
図2図2は、降雨量と浸入水量との関係を示す図である。
図3図3は、処理装置の構成を示すブロック図である。
図4図4は、第1実施形態に係る浸入水推定システムの機能ブロック図である。
図5図5は、ダミーデータとして設定する降雨量データの説明図である。
図6図6は、複数の処理分区の順位を示す図である。
図7図7は、所定の対象地域をメッシュで区切ったときの模式図である。
図8図8は、第1実施形態に係る浸入水推定システムの処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図9図9は、直接浸入水及び間接浸入水の量と浸入水の総量との対応関係を示す図である。
図10図10は、第2実施形態に係る浸入水推定システムの機能ブロック図である。
図11図11は、第2実施形態に係る浸入水推定システムの処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、実施形態について図を参照しながら説明する。以下に示す実施形態は、本願の一態様であり、本願の権利範囲を限定するものではない。
【0013】
<第1実施形態>
図1は、第1実施形態に係る浸入水推定システムの説明図である。浸入水推定システム10は、処理装置1を有し、雨天時に複数の区域で発生する浸入水を推定するシステムである。当該浸入水推定システム10は、汚水と雨水とが別々の管渠を流下する分流式下水道を想定する。下水管2は、汚水が流れる汚水管3と雨水が流れる雨水管4とを有する。複数の区域の家庭や事業所等から発生した汚水が汚水管3を流れて下水処理施設(下水処理場)5に流入する。下水処理施設5に流入した汚水は、下水処理施設5内で処理され、河川等に放流される。雨水は、雨水管4を流れて直接河川等に放流される。分流式下水道では、汚水は下水処理場へ、雨水は川や海に直接放流される。汚水と雨水をそれぞれ専用の管で集めるため、河川の水質が守られ、環境面でも衛生面でも優れた方式であり、昨今は分流式の採用が多くなっている。
【0014】
晴天時は、汚水のみが汚水管3を流れて下水処理施設5に流入する。雨天時においては、汚水に加えて本来合流すべきではない雨水が汚水管3に流れ込み、その後下水処理施設5に流入する場合がある。汚水管3が損傷している場合は、土壌に浸入した雨水が汚水管3の損傷箇所から汚水管3に流入することで、汚水管3を流れる汚水に雨水が混入する。こちらの損傷箇所からの浸入水を間接浸入水と定義する。また、汚水管3に雨水管4が誤接続されている場合は、雨水管4から汚水管3に雨水が流入し、汚水管3を流れる汚水に雨水が混入する。汚水管3に流入した雨水は、汚水管3を流れて下水処理施設5に流入する。本明細書では、汚水管3に流入した雨水を浸入水と呼ぶ。この浸入水は、不明水とも呼ばれる。誤接続等によって雨水管4から汚水管3に浸入する雨水を直接浸入水と定義する。分流式の下水道システムでは、雨水を分離する前提のため、本来想定されていない雨水が下水管に流入することによって下水処理場の処理性能を上回り、十分処理されないまま河川等へ放出されることになる。これらの浸入水の発生地域を推定することが当該システムの目的となる。
【0015】
観測装置6は、複数の区域の降雨量を観測する。処理装置1は、区域毎の降雨量データを観測装置6から特定時間単位で取得する。測定センサ7は、下水処理施設5に流入する複数の区域からの汚水の総流入量を測定する。処理装置1は、汚水の流入量を測定センサ7から取得する。
【0016】
図2は、降雨量と浸入水量との関係を示す図である。グラフの縦軸は水量、横軸は時刻を示している。浸入水は降雨によって発生するが、浸入水量(雨天時浸入水量)は、土壌による浸透や降雨状況による管への到達時間の違い等に影響される。図2に示すように、降雨量のピークと浸入水量のピークの時刻は一致しておらず、また、特徴的なのは降雨の開始から時間経過を経て浸入水が浸入してくることである。同様に降雨が終了した後もしばらくは浸入水の流入が続いている。
【0017】
図3は、処理装置1の構成を示すブロック図である。処理装置1は、制御装置11と、通信インターフェース(IF)装置12と、記憶装置13と、入力装置14と、表示装置15と、を備える。処理装置1は、プロセッサ(CPU)、メモリ、ストレージなどのハードウェア資源を備えている。メモリは、RAMであってもよい。ストレージは、不揮発性の記憶装置(例えばROM、フラッシュメモリなど)であってもよい。処理装置1の各処理手段(機能部)としての機能は、ストレージに格納されたプログラムをメモリに展開
しプロセッサによって実行することにより実現される。なお、処理装置1の構成はこれらに限られない。例えば、機能の全部又は一部をASICやFPGAなどの回路で構成してもよいし、あるいは、機能の全部又は一部をクラウドサーバや他の装置で実行してもよい。
【0018】
通信インターフェース装置12は、観測装置6や測定センサ7との間で通信を行う。なお、観測装置6や測定センサ7から直接ではなく、それらから得た降雨量や総流水量のデータを格納しているクラウドサーバや制御装置を介して入手する構成でもよい。記憶装置13は、各種の情報、各種のデータを記憶する。入力装置14は、例えば、キーボード、マウス、操作ボタン及びタッチパネルなどの入力機器で構成されてもよい。表示装置15は、例えば、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイなどである。
【0019】
制御装置11は、降雨量データ取得手段101と、流水量計測手段102と、第1浸水量算出手段103と、総降雨量算出手段104と、第2浸水量算出手段105と、推定手段106と、を有する。制御装置11において、図3に示す構成要素の全てが必須というわけではなく、適宜、制御装置11の構成要素の追加又は削除がなされてもよい。また、制御装置11の構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【0020】
降雨量データ取得手段101は、各区域の降雨量データを取得する。例えば、対象の地域は、複数の区域に区分されている。対象の地域は、メッシュで区切られてもよい。降雨量データ取得手段101は、各区域の時刻(時間)毎の降雨量データを取得してもよい。時刻毎の降雨量データは、所定時刻(例えば、13時)から所定時刻(例えば、14時)までの間の降雨量データである。降雨量データ取得手段101は、降雨開始から一定時間内の単位時間あたりの降雨量データを区域毎に取得してもよい。一定時間は、任意の時間であり、変更可能である。また、本明細書において、「時刻毎」を「単位時間当たり」と読み替えてもよい。降雨量データ取得手段101は、観測装置6から直接降雨量データを取得してもよいし、気象庁などの公的機関から提供される降雨量データ又は私的機関から提供される降雨量データを間接的に取得してもよい。降雨量データ取得手段101は、取得した降雨量データを記憶装置13に記憶する。
【0021】
降雨量データ取得手段101は、記憶装置13に格納された降雨量データから平日の曜日毎の降雨量データを抽出する。また、降雨量データ取得手段101は、同じく記憶装置13に格納された降雨量データから土日祝日の降雨量データを抽出する。降雨量データ取得手段101は、平日の曜日毎の降雨量データと、土日祝日の降雨量データとを改めて記憶装置13に記憶する。これにより、平日の曜日及び土日祝日毎の降雨量データが、ラベリングされた状態で記憶装置13に記憶される。
【0022】
流水量計測手段102は、測定センサ7によって測定された汚水の流入量に基づいて、複数の区域から下水処理施設5に流入する汚水の流入量(以下、単に「汚水の流入量」とも表記する。)を把握する。流水量計測手段102は、時刻毎の汚水の流入量を、汚水の流入量データとして取得してもよい。時刻毎の汚水の流入量は、所定時刻(例えば、13時)から所定時刻(例えば、14時)までの間の汚水の流入量である。
【0023】
流水量計測手段102は、汚水の流入量が定常量である場合の汚水の流入量データと、汚水の流入量が定常量を超えた場合の汚水の流入量データとを取得する。より具体的には、晴天時では、下水処理施設5に流入する汚水には雨水が含まれていないため、汚水の流入量を定常量として規定できる。一方、雨天時では、下水処理施設5に流入する汚水には雨水が含まれているため、汚水の流入量は定常量を超える。汚水の流入量は、平日の曜日や土日祝日によって変動するため、定常量は平日の曜日や土日祝日に応じて変動する値と
して設定する。これは人が生活を営む際の生活雑排水量が平日と週末や休みでは変わること、同様に工業用廃水も、工場の稼働状況や会社の勤務状況に依存し、工場や会社の平日と休日とでは使用量が大きく異なることに着目している。流水量計測手段102は、汚水の流入量が定常量である場合の汚水の流入量を、晴天時の汚水の流入量データとして取得する。流水量計測手段102は、降雨開始からの汚水の流入量を計測することで、雨天時の汚水の流入量データとして取得する。流水量計測手段102は、雨天時における時刻毎の汚水の流入量を計測してもよい。流水量計測手段102は、降雨開始から特定時間内(降雨開始から所定時間が経過するまでの間)における汚水の流入量を計測することで、雨天時の汚水の流入量データを取得してもよい。流水量計測手段102は、降雨開始から特定時間内における時刻毎の汚水の流入量を計測してもよい。流水量計測手段102は、晴天時の汚水の流入量データ及び雨天時の汚水の流入量データを記憶装置13に記憶する。
【0024】
流水量計測手段102は、記憶装置13に格納された流水量から平日の曜日毎の流入量データを抽出する。平日の曜日毎の流入量データは、平日の曜日毎の晴天時における流入量データと、平日の曜日毎の雨天時における流入量データとを含む。また、流水量計測手段102は、記憶装置13に格納された流水量から土日祝日の流入量データを抽出する。土日祝日の流入量データは、土日祝日の晴天時における流入量データと、土日祝日の雨天時における流入量データとを含む。流水量計測手段102は、平日の曜日毎の流入量データと、土日祝日の流入量データとを改めて記憶装置13に記憶する。これにより、平日の曜日及び土日祝日毎の流入量データが、ラベリングされた状態で記憶装置13に記憶される。
【0025】
第1浸水量算出手段103は、汚水の流入量の内、晴天時の汚水の流入量と雨天時の汚水の流入量との差を、浸入水の総量として算出する。第1浸水量算出手段103は、所定期間の汚水の流入量の内、所定期間の晴天時の汚水の流入量と所定期間の雨天時の汚水の流入量との差を、所定期間の浸入水の総量として算出してもよい。第1浸水量算出手段103は、所定期間の浸入水の総量データを記憶装置13に記憶する。
【0026】
第1浸水量算出手段103は、汚水の流入量の内、平日の汚水の流入量と土日祝日の汚水の流入量とを把握する。第1浸水量算出手段103は、平日の曜日毎の晴天時の汚水の流入量と平日の曜日毎の雨天時の汚水の流入量との差を、平日の曜日毎の浸入水の総量として算出してもよい。第1浸水量算出手段103は、土日祝日毎の晴天時の汚水の流入量と土日祝日毎の雨天時の汚水の流入量との差を、土日祝日毎の浸入水の総量として算出してもよい。第1浸水量算出手段103は、平日の曜日毎の浸入水の総量データと、土日祝日毎の浸入水の総量データとを記憶装置13に記憶する。
【0027】
第1浸水量算出手段103は、晴天時における時刻毎の汚水の流入量と雨天時における時刻毎の汚水の流入量との差を、時刻毎の浸入水の総量として算出してもよい。第1浸水量算出手段103は、同じ曜日の同じ時間帯についての晴天時の汚水の流入量と雨天時の汚水の流入量とを比較することにより、時刻毎の浸入水の総量を算出してもよい。また、第1浸水量算出手段103は、祝日の同じ時間帯についての晴天時の汚水の流入量と雨天時の汚水の流入量とを比較することにより、時刻毎の浸入水の総量を算出してもよい。
【0028】
総降雨量算出手段104は、特定時間内に区域毎に降雨する降雨量を積算し、各区域における総降雨量を算出する。総降雨量算出手段104は、各区域における総降雨量データを記憶装置13に記憶する。
【0029】
第2浸水量算出手段105は、降雨開始後の特定時間内における時刻毎の浸入水の総量を算出する。推定手段106は、平日の曜日及び土日祝日毎の浸入水の総量と各区域の総降雨量と降雨前後の時間関係から各区域の浸入水量を特定する値を求め、当該値から浸入
水の発生する区域を推定する。推定手段106は、複数の区域のうち何れの区域から下水処理施設5に浸入水が流入したのかを推定する。推定手段106は、浸入水が発生している区域として複数の区域のうちの一つを推定してもよいし、浸入水が発生している区域として複数の区域のうちの二つ以上を推定してもよい。推定手段106は、重回帰分析を利用して、浸入水が発生している区域を推定してもよい。
【0030】
推定手段106は、ディープラーニングなどによって学習した推定モデルを用いて、浸入水の発生する区域を推定してもよい。図4は、第1実施形態に係る浸入水推定システム10の機能ブロック図である。図4に示すように、生成した推定モデルである曜日別流量予測モデル110に、時刻毎かつ平日の曜日及び土日祝日毎の流入量データと、時刻毎の降雨量データを入力することにより、推定手段106の推定精度が向上する。また、推定手段106が推定モデルとして機能してもよい。
【0031】
平日の曜日及び土日祝日毎の流入量データがラベリングされた状態で記憶装置13に記憶されている。記憶装置13から平日の曜日及土日祝日毎の流入量データが抽出されて、平日の曜日及び土日祝日毎の流入量データが曜日別流量予測モデル110に入力される。区域毎の総降雨量データが記憶装置13に記憶されている。記憶装置13から時刻毎の降雨量データが抽出されて、時刻毎の降雨量データが曜日別流量予測モデル110に入力される。また、時刻毎の降雨量データは、該当時間における降雨の有無を決定するための降雨発生データとして用いられる。降雨発生データは、差分演算のトリガとしても用いられる。晴天時の汚水の流入量と雨天時の汚水の流入量との差分演算の結果が曜日別流量予測モデル110に入力される。曜日別流量予測モデル110は、浸入水量の推定処理を行う。
【0032】
推定モデルの精度向上のために、推定モデルにダミーデータを適用してもよい。図5を参照して、ダミーデータの一例について説明する。図5は、ダミーデータとして設定する降雨量データの説明図である。図5の(a)は、対象の地域全体(全体処理区)を小区分(小区間)に区分けした状態が示されている。図5に示す例では、全体処理区を20の処理分区(区域)に分けているが、図5に示す例に限定されず、地域全体を他の数の処理分区に分けてもよい。図5の(b)及び(c)に示すように、複数の処理分区の一つに降雨量の多い大降雨が選択され、他の処理分区に降雨量の少ない小降雨が設定されている。図5の(b)では、処理分区No.1に大降雨が設定され、処理分区No.2~20に小降雨が設定されている。図5の(c)では、処理分区No.2に大降雨が設定され、処理分区No.1、3~20に小降雨が設定されている。以降、処理分区No.3~20について、複数の処理分区の一つに大降雨を設定し、他の処理分区に小降雨を設定する処理を繰り返す。このように、ダミーデータとして設定する降雨量は、複数の処理分区に対して、大降雨となる区分を一つ選択した際、他の処理分区を小降雨となるように設定する。大降雨の雨量は、小降雨の雨量よりも多く設定する。大降雨の降雨時間は、小降雨の降雨時間よりも短く設定する。
【0033】
上記のように設定された複数のダミーデータが推定モデルに入力されると共に、曜日毎の流入量データ及び時間毎の降雨量データが推定モデルに入力されることで、浸入水量が算出される。複数の処理分区の一つを大降雨に設定し、他の処理分区を小降雨に設定する処理を全ての処理分区に対して順に行うことで、全ての処理分区についての浸入水量が算出される。処理分区の浸入水量は、処理分区(排水区)の単位面積当たりの雨天時浸入水量(m/ha)であってもよい。複数の処理分区の浸入水量を算出して比較することにより、複数の処理分区の浸水量順位を決定する。
【0034】
図6は、推定モデルによって算出された浸入水量に基づいて決定した複数の処理分区の浸水量順位と、統計データにおける浸入水量に基づいて決定した複数の処理分区の浸水量
順位との関係を示す図である。こちらは関東圏の特定地域において、実際に下水管の流路上に複数の流水量計測器を設置した実測の統計データと推定結果との比較である。実測の統計データは、機械学習において教師データ、検証データとしても使用している。図6では、推定モデルによって算出された浸入水量に基づいて決定した複数の処理分区の順位を実線で結び、統計データにおける浸入水量に基づいて決定した複数の処理分区の順位を点線で結んでいる。図6に示すように、推定モデルによって算出された浸入水量に基づいて決定した複数の処理分区の順位と、統計データにおける浸入水量に基づいて決定した複数の処理分区の順位との間で殆ど差がない結果となっている。推定モデルによって算出された推定結果と統計結果との間で大きな乖離はないため、推定モデルの推定精度が高く、推定モデルが妥当であることが理解できる。
【0035】
図7は、所定の対象地域をメッシュで区切ったときの模式図である。図7の白丸で示した各位置に汚水管3を流れる汚水の流量を測定する流量計を設置している。各流量計によって測定された汚水の流量を測定することで、複数の区域のいずれで浸入水が発生したかを実測した。推定手段106によって推定した浸入水が発生している区域と、実測によって特定した浸入水が発生している区域とが、一致していることが確認された。
【0036】
図8は、第1実施形態に係る浸入水推定システム10の処理の流れの一例を示すフローチャートである。S1において、流水量計測手段102は、汚水の流入量データを取得し、記憶装置13に汚水の流入量データを記憶する。S2において、流水量計測手段102は、記憶装置13から曜日毎の流入量データを抽出する。S3において、総降雨量算出手段104は、区域毎に降雨する降雨量を積算することで、区域(小区分)毎の総降雨量データを取得し、記憶装置13に区域毎の総降雨量データを記憶する。S4において、降雨データ取得手段101は、記憶装置13から各区域の時刻毎の降雨量データを抽出する。
【0037】
S5において、推定手段106は、曜日毎の流入量データ及び時刻毎の降雨量データを曜日別流量予測モデル110に入力する。S6において、曜日別流量予測モデル110にダミーデータを入力する。S7において、推定手段106は、全ての処理分区への適用が完了しているか否を判定する。複数の処理分区の一つに大降雨を設定し、他の処理分区に小降雨を設定してダミーデータを作成する処理が、全ての処理分区に対して行われた場合(S7;YES)、S8に進む。一方、未作成のダミーデータが残っている場合(S7;NO)、S6に進む。
【0038】
S8において、第1浸水量算出手段103は、雨天時浸入水量の差分演算を行い、平日の曜日毎の浸入水の総量データと、土日祝日毎の浸入水の総量データとを算出して記憶装置13に記憶する。S8において、推定手段106は、平日の曜日及び土日祝日毎の浸入水の総量データを曜日別流量予測モデル110に入力する。S9において、推定手段106は、処理分区毎の浸入水量の推定結果を曜日別流量予測モデル110から取得する。
【0039】
推定手段106は、曜日別流量予測モデル110によって算出された複数の処理分区の浸入水量を比較して、複数の処理分区の順位を決定してもよい。推定手段106は、複数の処理分区の浸入水量と閾値とを比較する。複数の処理分区の少なくとも一つの浸入水量が閾値以上である場合、推定手段106は、複数の処理分区の少なくとも一つを浸入水が発生している処理分区と推定する。閾値は、設計、実験又はシミュレーションによって予め求められており、記憶装置13に記憶されている。
【0040】
制御装置11は、複数の処理分区の浸入水量に関する情報、浸入水が発生している処理分区に関する情報などを表示装置15に表示してもよい。また、制御装置11は、複数の処理分区の浸入水量に関する情報、浸入水が発生している処理分区に関する情報などを外部表示装置に表示してもよい。
【0041】
第1実施形態に係る浸入水推定システム10によれば、平日の曜日や休日祝日毎で変動する汚水の流入量(生活排水量および工業排水量)を考慮して区域(処理分区)で発生する浸入水量を推定するため、複数の区域の浸入水量を高い精度で推定することができる。浸入水が発生している区域を高い精度で推定することができるため、浸入水の発生箇所の改修を効率的に行うことが可能となる。下水処理施設5に流入する汚水の流入量を測定すればよいため、流量計などの計測器を広い地域に設定する必要がなくなり、コストを削減することができる。また、特定の処理分区に大降雨を、その他の処理分区に小降雨を設定するダミーデータを適用することで、推定モデルにおける機械学習の精度を高めることができる。
【0042】
<第2実施形態>
第2実施形態に係る浸入水推定システムについて説明する。第2実施形態において、第1実施形態と同一の構成要素については、第1実施形態と同一の符号を付し、その説明を適宜省略する。
【0043】
浸入水には、汚水管3に直接的に流入した浸入水(以下、直接浸入水とも表記する。)と、汚水管3に間接的に流入した浸入水(以下、間接浸入水とも表記する。)と、が含まれる。直接浸入水は、例えば、汚水管3に対して意図しないで合流した浸入水、汚水管3に雨水管4が誤接続されることで汚水管3に流入した浸入水である。間接浸入水は、汚水管3の損傷箇所から汚水管3に流入した浸入水である。降雨開始後から直接浸入水が下水処理施設5に到達するまでの到達時間と、降雨開始後から間接浸入水が下水処理施設5に到達するまでの到達時間と、は異なる。これは直接および間接に浸入する下水管の位置がほぼ同じ場合とした想定においてである。直接浸入水は、降雨開始後の一定時間で下水処理施設5に流入する。間接浸入水は、一度、土壌などの地下に入り込んで滞留した後、汚水管3に流入する。従って、降雨開始後から一定時間までに下水処理施設5に流入する浸入水には、直接浸入水が多く含まれ、降雨開始後の一定時間から降雨終了又は降雨終了の一定時間までに下水処理施設5に流入する浸入水には、間接浸入水が多く含まれることになる。
【0044】
図9は、直接浸入水及び間接浸入水の量と浸入水の総量との対応関係を示す図である。図9の縦軸は、浸入水量を示し、図9の横軸は、時間(時刻)を示している。図9の実線L1は、浸入水の総量を示し、図9の実線L2は、直接浸入水の量を示し、図9の点線L3は、間接浸入水の量を示している。浸入水の総量は、直接浸入水の量と間接浸入水の量との合計量である。図9に示すように、所定時間T1までは直接浸入水の量が間接浸入水の量よりも大きいが、所定時間T1を過ぎると間接浸入水の量が直接浸入水の量よりも大きくなる。所定時間T1は、例えば、降雨開始後の一定時間である。また、所定時間T1後、直接浸水量L2の値が0となる時刻が、降雨がほぼ終了した時刻となる。
【0045】
降雨開始後から直接浸入水が下水処理施設5に到達するまでの到達時間は、降雨開始後から間接浸入水が下水処理施設5に到達するまでの到達時間よりも短い。例えば、降雨開始後の一定時間以降に浸入水の総量が急激に小さくなった場合、浸入水の総量に対する直接浸入水の量の比率が大きいといえる。例えば、降雨開始後の一定時間以降に浸入水の総量が徐々に小さくなった場合、浸入水の総量に対する間接浸入水の量の比率が大きいといえる。
【0046】
推定手段106は、降雨中及び降雨後の特定期間における浸入水の総量の時間変化によって、降雨中及び降雨後の特定期間における浸入水が、直接浸入水か間接浸入水かを推定する。推定手段106は、降雨中及び降雨後の特定期間における浸入水の総量の時間変化によって、降雨中及び降雨後の特定期間における浸入水の総量に対する直接浸入水の量の
比率と、降雨中及び降雨後の特定期間における浸入水の総量に対する間接浸入水の量の比率と、を推定してもよい。推定手段106は、曜日別流量予測モデル110を用いて、直接浸入水の量の比率及び間接浸入水の量の比率を推定してもよい。推定手段106は、直接浸入水の量の比率及び間接浸入水の量の比率に基づいて、降雨中及び降雨後の特定期間における浸入水が、直接浸入水か間接浸入水かを推定してもよい。
【0047】
図10及び図11を参照して、第2実施形態に係る浸入水推定システム10で行われる処理について説明する。図10は、第2実施形態に係る浸入水推定システム10の機能ブロック図である。図10に示すように、第2実施形態に係る浸入水推定システム10では、第1実施形態に係る浸入水推定システム10と比較して、直接浸入水及び間接浸入水の推定処理が追加されている。
【0048】
図11は、第2実施形態に係る浸入水推定システム10の処理の流れの一例を示すフローチャートである。図11に示すS11~S19では、図8に示すS1~S9と同様の処理が行われる。S20において、推定手段106は、降雨中及び降雨後の特定期間における浸入水の総量の時間変化に基づいて、直接浸入水の量の比率及び間接浸入水の量の比率を推定する。S20において、推定手段106は、直接浸入水の量の比率及び間接浸入水の量の比率に基づいて、降雨中及び降雨後の特定期間における浸入水が、直接浸入水か間接浸入水かを推定する。制御装置11は、降雨中及び降雨後の特定期間における浸入水が、直接浸入水又は間接浸入水であることを示す情報などを表示装置15に表示してもよい。また、制御装置11は、降雨中及び降雨後の特定期間における浸入水が、直接浸入水又は間接浸入水であることを示す情報などを外部表示装置に表示してもよい。推定処理は、統計処理、多変量解析、ディープラーニング等の機械学習いずれを使用してもよい。
【0049】
第2実施形態に係る浸入水推定システム10によれば、第1実施形態と同様、平日の曜日や休日祝日毎で変動する汚水量(生活排水量および工業排水量)を考慮して区域(処理分区)で発生する浸入水量を推定するため、複数の区域の浸入水量を高い精度で推定することができる。浸入水が発生している区域を高い精度で推定することができるため、浸入水の発生箇所の改修を効率的に行うことが可能となる。下水処理施設5に流入する汚水の流入量を測定すればよいため、流量計などの計測器を広い地域に設定する必要がなくなり、コストを削減することができる。また、特定の処理分区に大降雨を、その他の処理分区に小降雨を設定するダミーデータを適用することで、推定モデルにおける機械学習の精度を高めることができる。
【0050】
第2実施形態に係る浸入水推定システム10によれば、降雨中及び降雨後の特定期間における浸入水の総量に対する直接浸入水の量の比率及び間接浸入水の量の比率を把握することができる。第2実施形態に係る浸入水推定システム10によれば、降雨中及び降雨後の特定期間における浸入水が、直接浸入水又は間接浸入水であることを把握することができる。これにより、浸入水が発生している区域における浸入水の発生箇所を絞り込むことが容易になり、浸入水の発生箇所の改修を更に効率的に行うことが可能となる。
【0051】
<変形例>
変形例に係る浸入水推定システム10について説明する。記憶装置13は、汚水管3の工事の履歴情報が記憶されていてもよい。記憶装置13は、記憶部の一例である。汚水管3の工事の履歴情報は、各区域の汚水管3の工事の場所及び工事の時期を含む。汚水管3の工事の履歴情報は、汚水管3の工事の概要を更に含んでもよい。第1浸水量算出手段103は、所定期間内における時刻毎の浸入水の総量を算出する。第1浸水量算出手段103は、所定期間内における時刻毎の浸入水の総量の変化を検出する。例えば、所定期間内における第1の時刻の浸入水の総量と、所定期間内における第1の時刻と連続する第2の時刻の浸入水の総量との差分が、閾値以上である場合、所定期間内における第2の時刻の
浸入水の総量が変化したとしてもよい。
【0052】
第1浸水量算出手段103は、所定期間内における時刻毎の浸入水の総量の変化を工事履歴情報に対応付けて記憶装置13に記憶する。所定期間内における第2の時刻の浸入水の総量が変化し、かつ、汚水管3の工事の時期と所定期間内における第2の時刻とが一致又は近似している場合、第1浸水量算出手段103は、所定期間内における第2の時刻の浸入水の総量の変化を工事履歴情報に対応付けて記憶装置13に記憶してもよい。
【0053】
記憶装置13は、土壌変化情報が記憶されていてもよい。土壌変化情報は、各区域における土壌変化が発生した位置及び土壌変化が発生した時期を含む。土壌変化情報は、土壌変化が発生した原因に関する情報を更に含んでもよい。土壌変化が発生した原因は、例えば、台風、大雨、川の氾濫などである。第1浸水量算出手段103は、所定期間内における時刻毎の浸入水の総量の変化を土壌変化情報に対応付けて記憶装置13に記憶する。例えば、所定期間内における第2の時刻の浸入水の総量が変化し、かつ、土壌変化が発生した時期と所定期間内における第2の時刻とが一致又は近似している場合、第1浸水量算出手段103は、所定期間内における第2の時刻の浸入水の総量の変化を土壌変化情報に対応付けて記憶装置13に記憶してもよい。
【0054】
上記の処理は、第2浸水量算出手段105が行ってもよいし、第1浸水量算出手段103とは異なる他の算出手段が行ってもよい。制御装置11は、所定期間内における時刻毎の浸入水の総量の変化に関する情報と、浸入水の総量の変化に対応付けられた工事履歴情報とを、表示装置15に表示してもよい。制御装置11は、所定期間内における時刻毎の浸入水の総量の変化に関する情報と、浸入水の総量の変化に対応付けられた土壌変化情報とを、表示装置15に表示してもよい。また、制御装置11は、これらの情報を外部表示装置に表示してもよい。
【0055】
変形例に係る浸入水推定システム10によれば、汚水管3の工事や土壌変化が、浸入水の総量の変化にどの程度影響を及ぼすのかを把握することができる。浸入水の総量が増加した場合には、汚水管3の工事の場所や土壌変化が発生した位置において浸入水が発生している可能性がある。汚水管3の工事の場所や土壌変化が発生した位置を把握することで、浸入水が発生している区域における浸入水の発生箇所を絞り込むことが容易になり、浸入水の発生箇所の改修を更に効率的に行うことが可能となる。
【0056】
上記で説明した各処理は、コンピュータが実行する方法(浸入水推定方法)として捉えてもよい。また、上記で説明した各処理をコンピュータに実行させるためのプログラム(浸入水推定プログラム)として捉えてもよい。更に、当該プログラムを、ネットワークを通じて、又は、非一時的にデータを保持するコンピュータ読取可能な記録媒体等からコンピュータに提供してもよい。
【符号の説明】
【0057】
1・・・処理装置
2・・・下水管
3・・・汚水管
4・・・雨水管
5・・・下水処理施設
6・・・観測装置
7・・・測定センサ
10・・・浸入水推定システム
11・・・制御装置
12・・・通信インターフェース装置
13・・・記憶装置
14・・・入力装置
15・・・表示装置
101・・・降雨量データ取得手段
102・・・流水量計測手段
103・・・第1浸水量算出手段
104・・・総降雨量算出手段
105・・・第2浸水量算出手段
106・・・推定手段
110・・・曜日別流量予測モデル
【要約】
【課題】分流式下水道管への浸入水の発生箇所の推定精度を高くする技術を提供する。
【解決手段】雨天時に複数の区域で発生する浸入水を推定する浸入水推定システムは、各区域の時刻毎の降雨量を取得する取得手段と、複数の区域から下水処理場に流入する汚水の時刻毎の流入量を計測する計測手段と、流入量の内、晴天時の流入量と雨天時の流入量との差を浸入水の総量として算出する算出手段と、流入量の内、平日と休日祝日との流入量を把握する手段と、区域毎に降雨する降雨量を積算し、各区域における総降雨量を求める手段と、降雨開始後特定時間内における時刻毎の浸入水の総量を算出する手段と、平日の曜日および休日祝日毎の浸入水の総量と各区域の総降雨量と降雨前後の時間関係から各区域の浸入水量を特定する値を求め、当該値から浸入水の発生する区域を推定する手段と、を備える。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11