(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-16
(45)【発行日】2022-09-28
(54)【発明の名称】マルチコアファイバの調心方法、マルチコアファイバ接続体の製造方法、マルチコアファイバの調心装置、及びマルチコアファイバの融着接続機
(51)【国際特許分類】
G02B 6/26 20060101AFI20220920BHJP
G02B 6/02 20060101ALI20220920BHJP
G02B 6/255 20060101ALI20220920BHJP
【FI】
G02B6/26
G02B6/02 461
G02B6/255
(21)【出願番号】P 2022505892
(86)(22)【出願日】2021-02-22
(86)【国際出願番号】 JP2021006544
(87)【国際公開番号】W WO2021182085
(87)【国際公開日】2021-09-16
【審査請求日】2021-12-21
(31)【優先権主張番号】P 2020042214
(32)【優先日】2020-03-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005186
【氏名又は名称】株式会社フジクラ
(74)【代理人】
【識別番号】100143764
【氏名又は名称】森村 靖男
(72)【発明者】
【氏名】大関 真生
(72)【発明者】
【氏名】竹永 勝宏
【審査官】坂上 大貴
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-522987(JP,A)
【文献】特開平9-179003(JP,A)
【文献】国際公開第2017/130627(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0169747(US,A1)
【文献】特開2020-144301(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第106257317(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 6/02-6/036
6/10
6/24
6/255-6/27
6/30-6/34
6/36-6/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
クラッドの中心軸を中心とする円周上に3つ以上のコアが配置され、前記クラッドの中心とそれぞれの前記コアとを結ぶ複数の線分のうち互いに隣り合う前記線分により形成される複数の角が、大きさがP°で周方向に連続して2個以上位置する第1角と、大きさがP°と異なる少なくとも1つの第2角とを含み、それぞれの前記コアの配置が同一である一対のマルチコアファイバを調心する調心方法であって、
前記中心軸が一致するように前記一対のマルチコアファイバの端面同士を対向させた状態で、それぞれの前記マルチコアファイバをP°ずつ前記中心軸を中心にN=360/Pが整数となるように切り上げられた回数で回転させ、それぞれの前記マルチコアファイバの側面の画像をP°回転させる前後ごとに撮像する第1撮像工程と、
前記マルチコアファイバをP°回転させる毎における回転前の前記画像と回転後の前記画像との類似度をそれぞれの前記マルチコアファイバについて算出する第1類似度算出工程と、
一方の前記マルチコアファイバの複数の前記類似度の列と他方の前記マルチコアファイバの複数の前記類似度の列との相互相関が最も高くなる前記一対のマルチコアファイバの特定の相対的回転位置を算出する第1回転位置算出工程と、
一方の前記マルチコアファイバと他方の前記マルチコアファイバとが前記相互相関が前記特定の相対的回転位置の関係となるように、前記一対のマルチコアファイバの少なくとも一方を前記中心軸を中心に回転させる第1回転工程と、
を備える
ことを特徴とするマルチコアファイバの調心方法。
【請求項2】
前記一対のマルチコアファイバの端面同士が対向する当該一対のマルチコアファイバからなる組の複数を、複数の前記マルチコアファイバのうちの1つの長手方向に概ね垂直な方向に沿って並列させた後、前記組のそれぞれに対して、前記第1撮像工程、前記第1類似度算出工程、前記第1回転位置算出工程、及び前記第1回転工程を行う
ことを特徴とする請求項1に記載のマルチコアファイバの調心方法。
【請求項3】
前記線分は前記クラッドの中心と前記コアの中心とを結ぶ
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のマルチコアファイバの調心方法。
【請求項4】
前記第1回転工程後において、それぞれの前記マルチコアファイバの側面の画像を撮像する第2撮像工程と、
前記第2撮像工程で撮像されたそれぞれの前記マルチコアファイバの画像の類似度を算出する第2類似度算出工程と、
前記第2類似度算出工程で算出された前記類似度よりも高い所定範囲の類似度となるように、前記一対のマルチコアファイバの少なくとも一方を前記中心軸を中心に回転させる第2回転工程と、
を備える
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のマルチコアファイバの調心方法。
【請求項5】
前記第2回転工程は、
前記一対のマルチコアファイバの少なくとも一方を、前記一対のマルチコアファイバの相対的な回転角度がP°より小さい大きさで前記中心軸を中心に回転させて、当該回転後におけるそれぞれの前記マルチコアファイバの側面の画像を撮像する第3撮像工程と、
前記第3撮像工程で撮像されたそれぞれの前記マルチコアファイバの画像の類似度を算出する第3類似度算出工程と、
を備え、
前記第2回転工程では、前記第3類似度算出工程で算出された前記類似度が前記所定範囲の前記類似度となるまで、前記第3撮像工程と前記第3類似度算出工程とを繰り返す
ことを特徴とする請求項4に記載のマルチコアファイバの調心方法。
【請求項6】
それぞれのマルチコアファイバにおける前記コアは5つ以上であり、
それぞれのマルチコアファイバにおいて、前記周方向に連続して前記第1角が3つ以上位置する
ことを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載のマルチコアファイバの調心方法。
【請求項7】
クラッドの中心軸を中心とする円周上に3つ以上のコアが配置され、前記クラッドの中心とそれぞれの前記コアとを結ぶ複数の線分のうち互いに隣り合う前記線分により形成される複数の角が、大きさがP°で周方向に連続して2個以上位置する第1角と、大きさがP°と異なる少なくとも1つの第2角とを含み、それぞれの前記コアの配置が同一である複数のマルチコアファイバを調心する調心方法であって、
複数の前記マルチコアファイバのうちの1つの長手方向に概ね垂直な方向に沿って複数の前記マルチコアファイバを並列する並列配置工程と、
並列された前記マルチコアファイバのそれぞれをP°ずつ前記中心軸を中心にN=360/Pが整数となるように切り上げられた回数で回転させ、それぞれの前記マルチコアファイバの側面の画像をP°回転させる前後ごとに撮像する第1撮像工程と、
前記マルチコアファイバをP°回転させる毎における回転前の前記画像と回転後の前記画像との類似度をそれぞれの前記マルチコアファイバについて算出する第1類似度算出工程と、
前記マルチコアファイバのうちの1つの特定の第1マルチコアファイバ以外の第2マルチコアファイバのそれぞれに関して、前記第2マルチコアファイバの複数の前記類似度の列と前記第1マルチコアファイバの複数の前記類似度の列との相互相関が最も高くなる前記第1マルチコアファイバに対する前記第2マルチコアファイバの特定の相対的回転位置を算出する第1回転位置算出工程と、
前記第2マルチコアファイバと前記第1マルチコアファイバとが前記相互相関が前記特定の相対的回転位置の関係となるように、それぞれの前記第2マルチコアファイバを前記第1マルチコアファイバに対して前記中心軸を中心に相対的に回転させる第1回転工程と、
を備える
ことを特徴とするマルチコアファイバの調心方法。
【請求項8】
請求項1から6のいずれか1項に記載のマルチコアファイバの調心方法により一対の前記マルチコアファイバを調心した後、一対の前記マルチコアファイバを融着接続する融着接続工程を備える
ことを特徴とするマルチコアファイバ接続体の製造方法。
【請求項9】
クラッドの中心軸を中心とする円周上に3つ以上のコアが配置され、前記クラッドの中心とそれぞれの前記コアとを結ぶ複数の線分のうち互いに隣り合う前記線分により形成される複数の角が、大きさがP°で周方向に連続して2個以上位置する第1角と、大きさがP°と異なる少なくとも1つの第2角とを含み、それぞれの前記コアの配置が同一である一対のマルチコアファイバを調心する調心装置であって、
それぞれの前記マルチコアファイバを前記中心軸を中心に回転させる回転部と、
それぞれの前記マルチコアファイバの側面の画像を撮像する撮像部と、
前記画像の類似度を算出する類似度算出部と、
前記一対のマルチコアファイバの相対的回転位置を算出する回転位置算出部と、
を備え、
前記回転部は、前記中心軸が一致するように前記一対のマルチコアファイバの端面同士が対向された状態で、それぞれの前記マルチコアファイバをP°ずつN=360/Pが整数となるように切り上げられた回数で回転させ、
前記撮像部は、それぞれの前記マルチコアファイバの側面の画像をP°回転させる前後ごとに撮像し、
前記類似度算出部は、前記マルチコアファイバをP°回転させる毎における回転前の前記画像と回転後の前記画像との類似度をそれぞれの前記マルチコアファイバについて算出し、
前記回転位置算出部は、一方の前記マルチコアファイバの複数の前記類似度の列と他方の前記マルチコアファイバの複数の前記類似度の列との相互相関が最も高くなる前記一対のマルチコアファイバの特定の相対的回転位置を算出し、
前記回転部は、一方の前記マルチコアファイバと他方の前記マルチコアファイバとが前記特定の相対的回転位置の関係となるように、前記一対のマルチコアファイバの少なくとも一方を回転させる
ことを特徴とするマルチコアファイバの調心装置。
【請求項10】
前記線分は前記クラッドの中心と前記コアの中心とを結ぶ
ことを特徴とする請求項9に記載のマルチコアファイバの調心装置。
【請求項11】
前記撮像部は、一方の前記マルチコアファイバと他方の前記マルチコアファイバとが前記特定の相対的回転位置の関係となった状態で、それぞれの前記マルチコアファイバの側面の画像を撮像し、
前記類似度算出部は、一方の前記マルチコアファイバと他方の前記マルチコアファイバとが前記特定の相対的回転位置の関係となった状態で撮像されたそれぞれの前記マルチコアファイバの前記画像の類似度を算出し、
前記回転部は、一方の前記マルチコアファイバと他方の前記マルチコアファイバとが前記特定の相対的回転位置の関係となった状態で算出された前記類似度よりも高い所定範囲の類似度となるように、前記一対のマルチコアファイバの少なくとも一方を前記中心軸を中心に回転させる
ことを特徴とする請求項9または10に記載のマルチコアファイバの調心装置。
【請求項12】
前記回転部は、一方の前記マルチコアファイバと他方の前記マルチコアファイバとが前記特定の相対的回転位置の関係となった状態で、それぞれの前記マルチコアファイバの側面の画像が前記撮像部で撮像された後、前記一対のマルチコアファイバの少なくとも一方を、前記一対のマルチコアファイバの相対的な回転角度がP°より小さい大きさで前記中心軸を中心に回転させ、
前記撮像部は、当該回転後におけるそれぞれの前記マルチコアファイバの側面の画像を撮像し、
前記類似度算出部は、当該回転後に撮像されたそれぞれの前記マルチコアファイバの画像の類似度を算出し、
当該算出された前記類似度が前記所定範囲の前記類似度となるまで、前記特定の相対的回転位置の関係となった状態の後における前記回転部による回転と、前記撮像部による当該回転後の撮像と、前記類似度算出部による当該回転後に撮像されたそれぞれの前記マルチコアファイバの画像の前記類似度の算出とが繰り返される
ことを特徴とする請求項11に記載のマルチコアファイバの調心装置。
【請求項13】
それぞれのマルチコアファイバにおける前記コアは5つ以上であり、
それぞれのマルチコアファイバにおいて、前記周方向に連続して前記第1角が3つ以上位置する
ことを特徴とする請求項9から12のいずれか1項に記載のマルチコアファイバの調心装置。
【請求項14】
請求項9から13のいずれか1項に記載のマルチコアファイバの調心装置と、
前記調心装置により調心された一対の前記マルチコアファイバを融着する融着接続部と、
を備える
ことを特徴とするマルチコアファイバの融着接続機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マルチコアファイバの調心方法、マルチコアファイバ接続体の製造方法、マルチコアファイバの調心装置、及びマルチコアファイバの融着接続機に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の光ファイバ通信システムでは、数十本から数千本といった多数の光ファイバが用いられ、伝送情報量が飛躍的に増大している。こうした光ファイバ通信システムにおける光ファイバの数を低減させるため、クラッドに複数のコアを配置するマルチコアファイバが提案されている。また、光の長距離伝送を行うために一対の光ファイバを互いに接続させて長尺化させる場合があり、マルチコアファイバにおいてもこのような接続が行われる。光ファイバ同士を接続させる方法として、融着接続機を用いた融着接続が挙げられる。
【0003】
マルチコアファイバ同士を融着接続させる場合、それぞれのマルチコアファイバの各コア同士を互いに接続させる必要がある。このため、中心軸が一致した状態で一方の端面が互いに対向する一対のマルチコアファイバの少なくとも一方を周方向に回転させて、マルチコアファイバの回転方向の調心が行われる。このようなマルチコアファイバの調心方法として、例えば下記特許文献1に記載される方法が知られている。この特許文献1に記載されるマルチコアファイバの調心方法では、マルチコアファイバを軸中心に0.1度ずつ回転させて、当該0.1度の回転毎にマルチコアファイバの外周面から見る画像を取得する。その後、取得した画像を機械学習によりマルチコアファイバの回転角度を求めて調心したり、相関係数を求めて当該相関係数が最大となる回転角度でマルチコアファイバを調心する。
【0004】
【発明の概要】
【0005】
しかし、上記特許文献1ではマルチコアファイバを軸中心に0.1°単位で回転させ、その都度画像を取得するため、調心のために3600もの多量の画像が必要となり、調心に手間がかかる。
【0006】
そこで、本発明は、容易にマルチコアファイバを調心し得る調心方法、当該調心方法を用いたマルチコアファイバ接続体の製造方法、容易にマルチコアファイバを調心し得る調心装置、及び当該調心装置を用いたマルチコアファイバの融着接続機を提供することを目的とする。
【0007】
上記目的の達成のため、本発明は、クラッドの中心軸を中心とする円周上に3つ以上のコアが配置され、前記クラッドの中心とそれぞれの前記コアとを結ぶ複数の線分のうち互いに隣り合う前記線分により形成される複数の角が、大きさがP°で周方向に連続して2個以上位置する第1角と、大きさがP°と異なる少なくとも1つの第2角とを含み、それぞれの前記コアの配置が同一である一対のマルチコアファイバを調心する調心方法であって、前記中心軸が一致するように前記一対のマルチコアファイバの端面同士を対向させた状態で、それぞれの前記マルチコアファイバをP°ずつ前記中心軸を中心にN=360/Pが整数となるように切り上げられた回数で回転させ、それぞれの前記マルチコアファイバの側面の画像をP°回転させる前後ごとに撮像する第1撮像工程と、前記マルチコアファイバをP°回転させる毎における回転前の前記画像と回転後の前記画像との類似度をそれぞれの前記マルチコアファイバについて算出する第1類似度算出工程と、一方の前記マルチコアファイバの複数の前記類似度の列と他方の前記マルチコアファイバの複数の前記類似度の列との相互相関が最も高くなる前記一対のマルチコアファイバの特定の相対的回転位置を算出する第1回転位置算出工程と、一方の前記マルチコアファイバと他方の前記マルチコアファイバとが前記特定の相対的回転位置の関係となるように、前記一対のマルチコアファイバの少なくとも一方を前記中心軸を中心に回転させる第1回転工程と、を備えることを特徴とするものである。
【0008】
また、上記目的達成のため、本発明は、クラッドの中心軸を中心とする円周上に3つ以上のコアが配置され、前記クラッドの中心とそれぞれの前記コアとを結ぶ複数の線分のうち互いに隣り合う前記線分により形成される複数の角が、大きさがP°で周方向に連続して2個以上位置する第1角と、大きさがP°と異なる少なくとも1つの第2角とを含み、それぞれの前記コアの配置が同一である一対のマルチコアファイバを調心する調心装置であって、それぞれの前記マルチコアファイバを前記中心軸を中心に回転させる回転部と、それぞれの前記マルチコアファイバの側面の画像を撮像する撮像部と、前記画像の類似度を算出する類似度算出部と、前記一対のマルチコアファイバの相対的回転位置を算出する回転位置算出部と、を備え、前記回転部は、前記中心軸が一致するように前記一対のマルチコアファイバの端面同士が対向された状態で、それぞれの前記マルチコアファイバをP°ずつN=360/Pが整数となるように切り上げられた回数で回転させ、前記撮像部は、それぞれの前記マルチコアファイバの側面の画像をP°回転させる前後ごとに撮像し、前記類似度算出部は、前記マルチコアファイバをP°回転させる毎における回転前の前記画像と回転後の前記画像との類似度をそれぞれの前記マルチコアファイバについて算出し、前記回転位置算出部は、一方の前記マルチコアファイバの複数の前記類似度の列と他方の前記マルチコアファイバの複数の前記類似度の列との相互相関が最も高くなる前記一対のマルチコアファイバの特定の相対的回転位置を算出し、前記回転部は、一方の前記マルチコアファイバと他方の前記マルチコアファイバとが前記特定の相対的回転位置の関係となるように、前記一対のマルチコアファイバの少なくとも一方を回転させることを特徴とするものである。
【0009】
このマルチコアファイバの調心方法及び調心装置で調心されるマルチコアファイバは、上記のように、角度がP°の第1角が2個以上連続して位置するように複数のコアが配置されている。このようにコアが配置されるマルチコアファイバをP°ずつ回転させると、第1角を形成するコアが撮像側に連続して位置する状態では、P°回転させる前後において撮像側におけるコアの配置が概ね一致する。このため、この状態では、P°の回転前後に撮像される側面の画像の類似度が比較的高い。一方、第1角を形成するコアが撮像側に位置する状態からP°回転させることで第2角を形成するコアが撮像側に位置する状態になると、P°回転させる前後において撮像側におけるコアの配置が変化する。このため、P°の回転前後に撮像される側面の画像の類似度が比較的低い。このように、それぞれのマルチコアファイバを撮像した複数の画像において、類似度の高い画像と、類似度の低い画像とが存在する。
【0010】
上記のようにマルチコアファイバをP°ずつ中心軸を中心にN=360/Pが整数となるように切り上げられた回数で回転させると、マルチコアファイバを少なくとも1回転させることになる。このように各マルチコアファイバを1回転させることで、P°回転させる毎に撮像される画像の類似度を1回転分算出することができる。そこで、それぞれのマルチコアファイバについて、類似度の高い画像と類似度の低い画像とを含む複数の類似度の列の相互相関を算出すると、相互相関が最も高くなる一対のマルチコアファイバの特定の相対的回転位置では、それぞれのマルチコアファイバのコアの長手方向に沿って見る位置が概ね一致する。従って、この特定の相対的回転位置にそれぞれのマルチコアファイバが位置するように少なくとも一方のマルチコアファイバを回転させることで、一対のマルチコアファイバを概ね調心することができる。
【0011】
このように、本発明のマルチコアファイバの調心方法、及び、マルチコアファイバの調心装置によれば、第1角の角度であるP°ずつマルチコアファイバを回転させて撮像することで、一対のマルチコアファイバを概ね調心することができる。このような角度は、一般的に上記特許文献1に記載される1回の回転角である0.1°に比べて大きい。このため、上記特許文献1に比べて調心に要する画像の数を減らすことができ、容易にマルチコアファイバを調心し得る。
【0012】
また、上記マルチコアファイバの調心方法において、前記一対のマルチコアファイバの端面同士が対向する当該一対のマルチコアファイバからなる組の複数を、複数の前記マルチコアファイバのうちの1つの長手方向に概ね垂直な方向に沿って並列させた後、前記組のそれぞれに対して、前記第1撮像工程、前記第1類似度算出工程、前記第1回転位置算出工程、及び前記第1回転工程を行ってもよい。
【0013】
この場合、端面同士が対向する一対のマルチコアファイバからなる組の複数を一括して調心することができる。そして、このように一括してマルチコアファイバを調心した状態で、例えば、複数のマルチコアファイバを一度に融着接続することができる。このため、調心や融着を各組ごとに行う場合に比べて、調心や融着に要する時間を短縮することできるとともに、融着接続する場合には、融着時における放電時間を削減することができる。
【0014】
また、上記マルチコアファイバの調心方法、および、上記マルチコアファイバの調心装置において、前記線分は前記クラッドの中心と前記コアの中心とを結ぶことが好ましい。
【0015】
この場合、P°回転させる前後において撮像側におけるコアの配置がより高い精度で一致する。このため、第1角を形成するコアが撮像側に連続して位置する状態において、P°の回転前後に撮像される側面の画像の類似度がより高くなる。このため、一方のマルチコアファイバの複数の類似度と他方のマルチコアファイバの複数の類似度との相互相関が最も高くなる一対のマルチコアファイバの相対的回転位置をより高い精度で算出し得る。従って、一対のマルチコアファイバをより高い精度で調心することができる。
【0016】
また、上記マルチコアファイバの調心方法において、前記第1回転工程後において、それぞれの前記マルチコアファイバの側面の画像を撮像する第2撮像工程と、前記第2撮像工程で撮像されたそれぞれの前記マルチコアファイバの画像の類似度を算出する第2類似度算出工程と、前記第2類似度算出工程で算出された前記類似度よりも高い所定範囲の類似度となるように、前記一対のマルチコアファイバの少なくとも一方を前記中心軸を中心に回転させる第2回転工程と、を備えることが好ましい。
【0017】
また、上記マルチコアファイバの調心装置において、前記撮像部は、一方の前記マルチコアファイバと他方の前記マルチコアファイバとが前記特定の相対的回転位置の関係となった状態で、それぞれの前記マルチコアファイバの側面の画像を撮像し、前記類似度算出部は、一方の前記マルチコアファイバと他方の前記マルチコアファイバとが前記特定の相対的回転位置の関係となった状態で撮像されたそれぞれの前記マルチコアファイバの前記画像の類似度を算出し、前記回転部は、一方の前記マルチコアファイバと他方の前記マルチコアファイバとが前記特定の相対的回転位置の関係となった状態で算出された前記類似度よりも高い所定範囲の類似度となるように、前記一対のマルチコアファイバの少なくとも一方を前記中心軸を中心に回転させることが好ましい。
【0018】
このような調心は、一対のマルチコアファイバが相対的回転位置に回転されて調心された状態からの微調心である。従って、一対のマルチコアファイバが特定の相対的回転位置に回転されて調心された状態よりも、より正確に一対のマルチコアファイバを調心することができる。なお、この所定範囲は、例えば、類似度が極大となる範囲である。
【0019】
また、上記マルチコアファイバの調心方法において、前記第2回転工程は、前記一対のマルチコアファイバの少なくとも一方を、前記一対のマルチコアファイバの相対的な回転角度がP°より小さい大きさで前記中心軸を中心に回転させて、当該回転後におけるそれぞれの前記マルチコアファイバの側面の画像を撮像する第3撮像工程と、前記第3撮像工程で撮像されたそれぞれの前記マルチコアファイバの画像の類似度を算出する第3類似度算出工程と、を備え、前記第2回転工程では、前記第3類似度算出工程で算出された前記類似度が前記所定範囲の前記類似度となるまで、前記第3撮像工程と前記第3類似度算出工程とを繰り返すことが好ましい。
【0020】
また、上記マルチコアファイバの調心装置において、前記回転部は、一方の前記マルチコアファイバと他方の前記マルチコアファイバとが前記特定の相対的回転位置の関係となった状態で、それぞれの前記マルチコアファイバの側面の画像が前記撮像部で撮像された後、前記一対のマルチコアファイバの少なくとも一方を、前記一対のマルチコアファイバの相対的な回転角度がP°より小さい大きさで前記中心軸を中心に回転させ、前記撮像部は、当該回転後におけるそれぞれの前記マルチコアファイバの側面の画像を撮像し、前記類似度算出部は、当該回転後に撮像されたそれぞれの前記マルチコアファイバの画像の類似度を算出し、当該算出された前記類似度が前記所定範囲の前記類似度となるまで、前記特定の相対的回転位置の関係となった状態の後における前記回転部による回転と、前記撮像部による当該回転後の撮像と、前記類似度算出部による当該回転後に撮像されたそれぞれの前記マルチコアファイバの画像の前記類似度の算出とが繰り返されることが好ましい。
【0021】
このような回転、撮像、及び類似度の算出が繰り返されることで、より確実に一対のマルチコアファイバの微調心を行うことができる。
【0022】
また、上記マルチコアファイバの調心方法、および、上記マルチコアファイバの調心装置において、それぞれのマルチコアファイバにおける前記コアは5つ以上であり、それぞれのマルチコアファイバにおいて、前記周方向に連続して前記第1角が3つ以上位置することが好ましい。
【0023】
また、上記目的の達成のため、本発明は、クラッドの中心軸を中心とする円周上に3つ以上のコアが配置され、前記クラッドの中心とそれぞれの前記コアとを結ぶ複数の線分のうち互いに隣り合う前記線分により形成される複数の角が、大きさがP°で周方向に連続して2個以上位置する第1角と、大きさがP°と異なる少なくとも1つの第2角とを含み、それぞれの前記コアの配置が同一である複数のマルチコアファイバを調心する調心方法であって、複数の前記マルチコアファイバのうちの1つの長手方向に概ね垂直な方向に沿って複数の前記マルチコアファイバを並列する並列配置工程と、並列された前記マルチコアファイバのそれぞれをP°ずつ前記中心軸を中心にN=360/Pが整数となるように切り上げられた回数で回転させ、それぞれの前記マルチコアファイバの側面の画像をP°回転させる前後ごとに撮像する第1撮像工程と、前記マルチコアファイバをP°回転させる毎における回転前の前記画像と回転後の前記画像との類似度をそれぞれの前記マルチコアファイバについて算出する第1類似度算出工程と、前記マルチコアファイバのうちの1つの特定の第1マルチコアファイバ以外の第2マルチコアファイバのそれぞれに関して、前記第2マルチコアファイバの複数の前記類似度の列と前記第1マルチコアファイバの複数の前記類似度の列との相互相関が最も高くなる前記第1マルチコアファイバに対する前記第2マルチコアファイバの特定の相対的回転位置を算出する第1回転位置算出工程と、前記第2マルチコアファイバと前記第1マルチコアファイバとが前記相互相関が前記特定の相対的回転位置の関係となるように、それぞれの前記第2マルチコアファイバを前記第1マルチコアファイバに対して前記中心軸を中心に相対的に回転させる第1回転工程と、を備えることを特徴とするものである。
【0024】
この場合、上記のように調心されたマルチコアファイバを1つずつコネクタ化することで、回転位置が同一の複数の単芯の光ファイバコネクタを製造することが可能である。また、この場合、上記のように調心されたマルチコアファイバを1つのコネクタにすることで、回転位置が同一の複数のマルチコアファイバを含む多芯の光ファイバコネクタを製造することが可能である。
【0025】
また、上記目的の達成のため、本発明のマルチコアファイバ接続体の製造方法は、上記のいずれかのマルチコアファイバの調心方法により一対の前記マルチコアファイバを調心した後、一対の前記マルチコアファイバを融着接続する融着接続工程を備えることを特徴とするものである。
【0026】
また、上記目的の達成のため、本発明のマルチコアファイバの融着接続機は、上記のいずれかのマルチコアファイバの調心装置と、前記調心装置により調心された一対の前記マルチコアファイバを融着する融着接続部と、を備えることを特徴とするものである。
【0027】
このようなマルチコアファイバ接続体の製造方法やマルチコアファイバの融着接続機によれば、容易にマルチコアファイバを調心し得るため、容易にマルチコアファイバ接続体を得ることができる。
【0028】
以上のように、本発明によれば、容易にマルチコアファイバを調心し得る調心方法、当該調心方法を用いたマルチコアファイバ接続体の製造方法、容易にマルチコアファイバを調心し得る調心装置、及び当該調心装置を用いたマルチコアファイバの融着接続機が提供され得る。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】本発明の実施形態に係るマルチコアファイバ接続体の概略を示す側面図である。
【
図2】
図1に示すマルチコアファイバの断面図である。
【
図3】本発明の実施形態に係る融着接続機の構成の一例を概念的に示す図である。
【
図4】本発明の実施形態に係るマルチコアファイバ接続体の製造方法の工程を示すフローチャートである。
【
図5】撮像工程における一方のマルチコアファイバと撮像部との回転方向における相対的位置を示す図である。
【
図6】撮像工程におけるそれぞれの回転の前後において、撮像部が一方のマルチコアファイバの側面を撮像した画像である。
【
図7】撮像工程における他方のマルチコアファイバと撮像部との回転方向における相対的位置を示す図である。
【
図8】第1類似度算出工程で求めた一方のマルチコアファイバの複数の類似度の列を示す図である。
【
図9】第1類似度算出工程で求めた他方のマルチコアファイバの複数の類似度の列を示す図である。
【
図10】
図9に示す他方のマルチコアファイバの複数の類似度の列をP°分ずらした図である。
【
図11】本発明の実施形態に係る単芯の光ファイバコネクタの一例を概略的に示す図である。
【
図12】本発明の変形例に係る融着接続機の構成の一例を概念的に示す図である。
【
図13】
図12に示す融着接続機を用いて製造することが可能な多芯の光ファイバコネクタの一例を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明に係るマルチコアファイバの調心方法、マルチコアファイバ接続体の製造方法、マルチコアファイバの調心装置、及びマルチコアファイバの融着接続機を実施するための形態が添付図面とともに例示される。以下に例示する実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、以下の実施形態から変更、改良することができる。また、本明細書では、理解を容易にするために、各部材の寸法が誇張して示されている場合がある。
【0031】
図1は、実施形態に係るマルチコアファイバ接続体の概略を示す側面図である。
図1に示すように、マルチコアファイバ接続体1は、一方側に位置するマルチコアファイバ10Aと、他方側に位置するマルチコアファイバ10Bと、を備え、マルチコアファイバ10Aの一方の端部とマルチコアファイバ10Bの一方の端部とが互いに融着された接続部1Fを含む。マルチコアファイバ10A,10Bの構成は同一である。従って、マルチコアファイバ10Aの図を用いて、マルチコアファイバ10A,10Bの構成について説明をする。
【0032】
図2は、
図1に示すマルチコアファイバ10Aの断面図である。なお、
図2では、図の複雑化を避けるため、ハッチングが省略されている。
図2に示すように、マルチコアファイバ10Aは、クラッド13と、クラッド13の中心に配置される中心コア11と、クラッド13の中心軸Cを中心とする円周Cr上に配置される3つ以上の外側コア12A~12Gと、クラッド13を被覆する被覆層14と、を含む。
【0033】
なお、
図1に示すように、マルチコアファイバ10A,10Bのそれぞれにおいて、接続部1Fとなる一方の端部から一定の距離に亘って被覆層14が剥離され、クラッド13が露出している。被覆層14は、例えば、紫外線硬化性樹脂から成る。
【0034】
本実施形態において、中心コア11の中心はクラッド13の中心軸C上に位置している。また、中心コア11と外側コア12A~12Gとの間、及び、外側コア12A~12Gよりも外側には、コアが非配置である。マルチコアファイバ10Aでは、1つの外側コア12Aを基準として時計回りに外側コア12B、外側コア12C、外側コア12D、外側コア12E、外側コア12F、及び外側コア12Gが順に配置されている。
【0035】
本実施形態では、中心コア11及び外側コア12A~12Gは、それぞれ同一の直径及び同一の屈折率に形成されており、基本モードの光のみを伝搬したり、基本モードの光に加えていくつかの高次モードの光を伝搬する。中心コア11及び外側コア12A~12Gのそれぞれの屈折率は、クラッド13の屈折率よりも高い。中心コア11及び外側コア12A~12Gを構成する材料として、例えば、屈折率を上昇させるゲルマニウム(Ge)等の元素が添加された石英が挙げられる。中心コア11及び外側コア12A~12Gに屈折率を上昇させる元素が添加される場合、クラッド13を構成する材料としては、例えば、何らドーパントが添加されていない純粋石英や屈折率を低下させるフッ素(F)等の元素が添加された石英を挙げることができる。或いは、中心コア11及び外側コア12A~12Gを構成する材料として、例えば、上記純粋石英を挙げることができる。中心コア11及び外側コア12A~12Gを純粋石英から形成する場合、クラッド13を構成する材料としては、屈折率を低下させるフッ素等の元素が添加された石英を挙げることができる。
【0036】
クラッド13の中心とそれぞれの外側コア12A~12Gの中心とを結ぶ複数の線分のうち互いに隣り合う線分により形成される角の角度をコア間の角度とすると、本実施形態では、コア間の角度は全て60°以下である。なお、この線分は
図2では点線で示されている。本実施形態では、外側コア12Aと外側コア12Bとがなすコア間の角度θ
1、外側コア12Bと外側コア12Cとがなすコア間の角度θ
2、外側コア12Cと外側コア12Dとがなすコア間の角度θ
3、外側コア12Dと外側コア12Eとがなすコア間の角度θ
4、外側コア12Eと外側コア12Fとがなすコア間の角度θ
5、及び、外側コア12Fと外側コア12Gとがなすコア間の角度θ
6は、それぞれ50°であり、外側コア12Gと外側コア12Aとがなすコア間の角度θ
7は60°である。また、このように、本実施形態では、コア間の角度θ
1~θ
6である角をそれぞれ第1角し、コア間の角度θ
7である角を第2角とし、第1角の大きさをP°とすると、クラッド13の中心と外側コア12A~12Gとを結ぶ複数の線分により形成される複数の角は、大きさがP°で周方向に連続して2個以上位置する第1角と、大きさがP°と異なる1つの第2角とを含む。このように外側コア12A~12Gが配置されるため、外側コア12A~12Gは円周Cr上の非回転対称の位置に配置されている。
【0037】
上述のように、マルチコアファイバ10Bは、マルチコアファイバ10Aと同様の構成を有する。したがって、マルチコアファイバ10Bは、中心がクラッド13の中心軸C上に配置される中心コア11と、クラッド13の中心軸Cを中心とする円周Cr上に配置される3つ以上の外側コア12A~12Gを有する。従って、クラッド13の中心とそれぞれの外側コア12A~12Gとを結ぶ複数の線分のうち互いに隣り合う線分により形成される複数のコア間の角度θ1~θ7のうちの一部のコア間の角度θ1~θ6が連続して同じ角度で50°であり、コア間の角度θ7が60°となる。
【0038】
本実施形態のマルチコアファイバ接続体1では、マルチコアファイバ10A,10Bのそれぞれのコアが互いに光学的に結合するよう、クラッド13の中心軸Cが互いに一致し、回転方向の相対的位置が調心された状態で、マルチコアファイバ10A,10Bの一方の端部が融着されている。したがって、
図1に示すように、マルチコアファイバ10A,10Bの中心コア11同士、マルチコアファイバ10Aの外側コア12A~12Gとマルチコアファイバ10Bの外側コア12A~12Gとがそれぞれ個別に融着されている。なお、
図1では、中心コア11及び外側コア12A~12Gのうち外側コア12A~12Dを視認できる様子が示されている。
【0039】
次に、このようなマルチコアファイバ接続体1を製造することが可能なマルチコアファイバの融着接続機について説明する。
【0040】
図3は、本実施形態の融着接続機100の構成を概念的に示す図である。
図3に示すように、融着接続機100は、マルチコアファイバ10A,10Bの調心装置200と、融着接続部101を主な構成として備える。調心装置200は、回転部102A、102Bと、撮像部105A,105Bと、処理部110と、メモリ120と、入力部130と、を主な構成として備え、処理部110は、画像処理部111と、類似度算出部112と、回転位置算出部113と、制御部115とを含む。なお、
図3では、画像処理部111と類似度算出部112と回転位置算出部113と制御部115とが、バスラインで接続されている例が示されている。
【0041】
回転部102Aは、マルチコアファイバ10Aを中心軸Cを中心に回転可能に保持し、回転部102Bは、マルチコアファイバ10Bを中心軸Cを中心に回転可能に保持する。また、回転部102A,102Bは、中心軸Cの方向と垂直な方向に移動可能に構成され、マルチコアファイバ10A,10Bの中心軸Cを合わせて、マルチコアファイバ10A,10Bの一方の端面を互いに対向させることができる。なお、回転部102A,102Bは、それぞれ例えばステッピングモータ等により回転し、所望の回転角で停止することができる。また、回転部102A,102Bは、処理部110に電気的に接続され、処理部110の制御部115からの信号に基づく上記回転角で回転させることができる。
【0042】
融着接続部101は、回転部102Aにより保持されたマルチコアファイバ10Aの端部と、回転部102Bにより保持されたマルチコアファイバ10Bの端部とを融着する。この融着接続部101は、例えばマルチコアファイバ10A,10Bの上記端部を挟んで対向する一対の放電電極を備えており、この放電電極からの放電による加熱によりマルチコアファイバ10A,10Bを融着接続する。融着接続部101は、処理部110に電気的に接続されており、処理部110の制御部115からの信号により、放電のタイミングや放電の強度等が調節される。
【0043】
撮像部105Aは、マルチコアファイバ10Aの一方の端部における側面に概ね正対して配置され、マルチコアファイバの10Aの側面の画像を撮像することができる。上記のようにマルチコアファイバ10Aの一方の端部では被覆層14が剥がされているため、撮像部105Aは、マルチコアファイバ10Aのクラッド13の側面、及び、クラッド13を透過して視認できる一部のコアを撮像することができる。また、撮像部105Bは、マルチコアファイバ10Bの一方の端部における側面に概ね正対して配置され、マルチコアファイバの10Bの側面の画像を撮像することができる。上記のようにマルチコアファイバ10Bの一方の端部では被覆層14が剥がされているため、撮像部105Bは、マルチコアファイバ10Bのクラッド13の側面、及び、クラッド13を透過して視認できる少なくとも一部のコアを撮像することができる。それぞれの撮像部105A,105Bは、処理部110に電気的に接続されている。従って、撮像部105Aは、処理部110の制御部115からの信号により、任意のタイミングで撮像することができる。例えば、回転部102A、102Bがマルチコアファイバ10A,10Bを所望の角度回転させる前後において、撮像することができる。撮像部105A、105Bは、撮像した画像を処理部110の画像処理部111に入力する。なお、撮像部105Aと撮像部105Bとが一体となり、一対のマルチコアファイバ10A,10Bのそれぞれの一方の端部を同時に撮像できる構成とされてもよい。
【0044】
処理部110は、例えば、マイクロコントローラ、IC(Integrated Circuit)、LSI(Large-scale Integrated Circuit)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)などの集積回路やNC(Numerical Control)装置を用いることができる。また、処理部110は、NC装置を用いた場合、機械学習器を用いたものであってもよく、機械学習器を用いないものであってもよい。制御部115は、融着接続部101、回転部102A,102B、撮像部105A,105B、画像処理部111、類似度算出部112、及び回転位置算出部113等の動作を制御する。
【0045】
処理部110には、メモリ120が電気的に接続されている。メモリ120は、例えば非一過性(non-transitory)の記録媒体であり、RAM(Random Access Memory)やROM(Read Only Memory)等の半導体記録媒体が好適であるが、光学式記録媒体や磁気記録媒体等の公知の任意の形式の記録媒体を包含し得る。なお、「非一過性」の記録媒体とは、一過性の伝搬信号(transitory, propagating signal)を除く全てのコンピュータで読み取り可能な記録媒体を含み、揮発性の記録媒体を除外するものではない。
【0046】
処理部110の画像処理部111は、撮像部105A,105Bから入力する画像信号を処理する。この際、例えば、画像からノイズを除去したり、画像の各ピクセルを示す信号を2値化してもよい。画像処理部111で処理された信号は、画像処理部111から出力され類似度算出部112に入力される。なお、画像処理が不要である場合には、画像処理部111が不要であり、この場合、撮像部105A,105Bから出力される画像信号は、直接類似度算出部112に入力される。
【0047】
処理部110の類似度算出部112は、撮像部105A,105Bで撮像された一対の画像の類似度を算出する。本実施形態では、類似度算出部112は、撮像部105A,105Bで撮像されメモリ120に格納されている複数の画像データから一対の画像データを読み出し、読み出した画像データを対比して当該一対の画像間の類似度を算出する。類似度算出部112がメモリ120から読み出す一対の画像データは、例えば、マルチコアファイバ10Aが所定の角度回転させる前の画像と回転された後の画像とから成る一対の画像や、マルチコアファイバ10Bが所定の角度回転させる前の画像と回転された後の画像とから成る一対の画像や、マルチコアファイバ10Aの画像とマルチコアファイバ10Bの画像とから成る一対の画像等である。類似度を算出する方法は特に限定されないが、例えば、位相限定相関法に基づいて算出される。位相限定相関法に基づいて類似度が算出される場合、位相限定相関係数が1に近いほど類似度が高く、0に近いほど類似度が低い。類似度算出部で算出される類似度を示す信号は、回転位置算出部113に入力する。
【0048】
処理部110の回転位置算出部113は、マルチコアファイバ10Aとマルチコアファイバ10Bとの相対的回転位置を算出する。この相対的回転位置は、例えば、マルチコアファイバ10Aについて算出された複数の類似度の列とマルチコアファイバ10Bについて算出された複数の類似度の列との相互相関が最も高くなるようなマルチコアファイバ10Aとマルチコアファイバ10Bとの相対的回転位置や、マルチコアファイバ10Aの画像とマルチコアファイバ10Bの画像との類似度が所定の範囲の類似度となるようなマルチコアファイバ10Aとマルチコアファイバ10Bとの相対的回転位置である。相互相関は、例えば、相互相関関数により求められる。相互相関が1に近い程、それぞれのマルチコアファイバの上記複数の類似度の列の相互相関が高く、相互相関が0に近い程、それぞれのマルチコアファイバの上記複数の類似度の列の相互相関が低い。
【0049】
入力部130は、タッチパネルなどの入力装置を含んでおり、処理部110に電気的に接続されている。入力部130では、例えば、第1角の大きさP°が入力される。従って、本実施形態では、入力部130からは、第1角の大きさとして50°が入力される。
【0050】
次に、マルチコアファイバ接続体1の製造方法について説明する。
【0051】
図4は、マルチコアファイバ接続体1の製造方法の工程を示すフローチャートである。
図4に示すように、このマルチコアファイバ接続体1の製造方法は、配置工程P1と、第1撮像工程P2と、第1類似度算出工程P3と、第1回転位置算出工程P4と、第1回転工程P5と、第2撮像工程P6と、第2類似度算出工程P7と、第2回転工程P8と、融着接続工程P9と、を主な構成として備える。
【0052】
(配置工程P1)
本工程は、回転部102Aのマルチコアファイバ10Aを配置し、回転部102Bにマルチコアファイバ10Bを配置して、それぞれのマルチコアファイバ10A,10Bの中心軸Cが一致するように一対のマルチコアファイバ10A,10Bの端面同士を対向させる工程である。それぞれのマルチコアファイバ10A,10Bの端面同士を対向させた状態で、制御部115は、撮像部105Aにマルチコアファイバ10Aの側面の画像を撮像させ、撮像部105Bにマルチコアファイバ10Bの側面の画像を撮像させる。次に制御部115は、回転部102A,102Bを制御して、クラッド13の外周面の位置が長手方向に一致するようにマルチコアファイバ10Aの端部の位置とマルチコアファイバ10Bの端部の位置とを調節する。こうして、それぞれのマルチコアファイバ10A,10Bの中心軸Cが一致する。なお、上記のように、撮像部105Aと撮像部105Bとが一体とされていれば、一つの画像中にマルチコアファイバ10A,10Bのそれぞれの端部が撮像されるため、容易にマルチコアファイバ10A,10Bの中心軸Cが一致させ得る。
【0053】
(第1撮像工程P2)
本工程は、中心軸Cが一致するように一対のマルチコアファイバ10A,10Bの端面同士を対向させた状態で、それぞれのマルチコアファイバ10A,10BをP°ずつ中心軸Cを中心にN=360/Pが整数となるように小数点以下が切り上げられた回数で回転させ、それぞれのマルチコアファイバ10A,10Bの側面の画像をP°回転させる前後ごとに撮像する工程である。
【0054】
上記配置工程P1により、一対のマルチコアファイバ10A,10Bの端面同士は、中心軸Cが一致するように対向している。
図5は、マルチコアファイバ10Aと撮像部105Aとの回転方向における相対的位置を示す図である。なお、
図5において、105A
1~105A
9は、マルチコアファイバ10Aを基準とした撮像部105Aの相対的位置を示す。本実施形態では、配置工程P1後において、撮像部105Aは位置105A
1に位置する。そこで、制御部115は、撮像部105Aにマルチコアファイバ10Aを位置105A
1から撮像させる。撮像された画像は、画像処理部111に入力され、制御部115は画像処理部111を制御して、画像処理部111に所定の画像処理をさせる。画像処理が施された画像データはメモリ120に格納される。
【0055】
次に、制御部115は、回転部102Aにマルチコアファイバ10Aを第1角の大きさであるP°だけ中心軸Cを中心として一方の回転方向に回転させる。このときのマルチコアファイバ10Aを基準とした撮像部105Aの相対的位置は、位置105A2である。そこで、制御部115は、撮像部105Aにマルチコアファイバ10Aを位置105A2から撮像させる。撮像された画像は、画像処理部111により画像処理がなされて、この画像データはメモリ120に格納される。次に、制御部115は、回転部102Aにマルチコアファイバ10AをP°だけ中心軸Cを中心として一方の回転方向に再び回転させる。このときのマルチコアファイバ10Aを基準とした撮像部105Aの相対的位置は、位置105A3であり、制御部115は、撮像部105Aにマルチコアファイバ10Aを位置105A3から撮像させ、上記と同様に撮像データをメモリ120に格納させる。制御部115は、回転部102Aにこのような回転をN=360/Pが整数となるように小数点以下が切り上げられた回数繰り返させ、それぞれの回転後に撮像部105Aに撮像させる。撮像されたそれぞれの画像データは上記と同様にメモリ120に格納される。このN回の回転により、マルチコアファイバ10Aは、1周以上回転することになる。こうして、撮像部105Aは、マルチコアファイバ10AがP°回転される前後において、マルチコアファイバ10Aの側面の画像を撮像することになる。従って、画像は、N+1回撮像される。
【0056】
本実施形態では、P°は50°であるため、回転部102Aは、マルチコアファイバ10Aを8回転させ、8回の回転の前後のそれぞれにおいて、撮像部105Aは、マルチコアファイバ10Aの側面を撮像する。従って、撮像の回数は9回となる。
【0057】
図6は、それぞれの回転の前後において、撮像部105Aがマルチコアファイバ10Aの側面を撮像した画像である。
図6のそれぞれの画像には、
図5における撮像部105Aがマルチコアファイバ10Aを撮像した位置105A
1~105A
9と最初の撮像からの回転角度とが記載されている。
【0058】
図7は、マルチコアファイバ10Bと撮像部105Bとの回転方向における相対的位置を示す図である。
図7に示すように、配置工程P1後において、撮像部105Bはマルチコアファイバ10Bに対して相対的な位置105B
1に位置する。本実施形態では、位置105B
1は、配置工程P1後におけるマルチコアファイバ10Aに対する撮像部105Aの相対的な位置105A
1と異なる位置である。制御部115は、回転部102A及び撮像部105Aの制御と同様に回転部102Bと撮像部105Bとを制御して、回転部102Bにマルチコアファイバ10BをP°だけ中心軸Cを中心として一方の回転方向に回転させると共に、撮像部105BにこのP°の回転の前後にマルチコアファイバ10Bの側面の画像を撮像させ、撮像されたそれぞれの画像データを上記と同様にメモリ120に格納させる。なお、マルチコアファイバ10Aの回転方向とマルチコアファイバ10Bの回転方向とは互いに同一である。また、回転部102Bがマルチコアファイバ10BをP°回転させる回数は、回転部102Aがマルチコアファイバ10AをP°回転させる回数と同数である。従って、マルチコアファイバ10Bも1周以上にわたり撮像部105Bにより側面をN+1回撮像される。
【0059】
(第1類似度算出工程P3)
本工程は、マルチコアファイバ10A、10BをP°回転させる毎における回転前の画像と回転後の画像との類似度をそれぞれのマルチコアファイバ10A,10Bについて算出する工程である。
【0060】
本工程において、制御部115は、類似度算出部112にメモリ120から位置105A1でのマルチコアファイバ10Aの画像及び位置105A2でのマルチコアファイバ10Aの画像を読み出させる。次に、制御部115は、類似度算出部112に位置105A1での画像と位置105A2での画像との類似度SA12を算出させる。本実施形態では、類似度の算出は、上記のように、例えば、位相限定相関法に基づいて算出される。この場合、算出された類似度の値は1以下であり、算出された類似度は、メモリ120に格納される。次に、制御部115は、類似度算出部112にメモリ120から位置105A2での画像及び位置105A3での画像を読み出させ、位置105A2での画像と位置105A3での画像との類似度SA23を算出させる。つまり、類似度算出部112は、マルチコアファイバ10AがP°回転された前後に撮像された画像データをメモリ120から読み出し、読みだした画像の類似度を算出する。制御部115は、類似度算出部112にこの処理を繰り返させ、類似度算出部112は、さらに、位置105A3での画像と位置105A4での画像との類似度SA34、位置105A4での画像と位置105A5での画像との類似度SA45、位置105A5での画像と位置105A6での画像との類似度SA56、位置105A6での画像と位置105A7での画像との類似度SA67、位置105A7での画像と位置105A8での画像との類似度SA78、及び、位置105A8での画像と位置105A9での画像の類似度SA89を算出する。類似度は、N回算出され、算出されたそれぞれの類似度は、メモリ120に格納される。
【0061】
同様に制御部115は、類似度算出部112にマルチコアファイバ10Bの各画像についても上記と同様の処理を繰り返させる。従って、類似度算出部112は、マルチコアファイバ10BがP°回転する前後におけるマルチコアファイバ10Bの画像をメモリ120から読み出し、位置105B1での画像と位置105B2での画像との類似度SB12、位置105B2での画像と位置105B3での画像との類似度SB23、位置105B3での画像と位置105B4での画像との類似度SB34、位置105B4での画像と位置105B5での画像との類似度SB45、位置105B5での画像と位置105B6での画像との類似度SB56、位置105B6での画像と位置105B7での画像との類似度SB67、位置105B7での画像と位置105B8での画像との類似度SB78、及び、位置105B8での画像と位置105B9での画像の類似度SB89を算出する。算出されたN回分のそれぞれの類似度は、メモリ120に格納される。
【0062】
こうして、マルチコアファイバ10A、10BをP°回転させる毎における回転前の画像と回転後の画像との類似度がそれぞれのマルチコアファイバ10A,10Bについて算出される。なお、本工程の一部が上記第1撮像工程P2の途中に行われてもよい。例えば、第1撮像工程P2において、回転部102Aがマルチコアファイバ10AをP°回転させ、当該P°の回転の後に撮像部105Aがマルチコアファイバ10Aを撮像した後であって、次に回転部102Aがマルチコアファイバ10Aを回転させる前に、当該P°の回転の前後において撮像されたマルチコアファイバ10Aの画像の類似度を算出してもよい。同様に、第1撮像工程P2において、回転部102Bがマルチコアファイバ10BをP°回転させ、当該P°の回転の後に撮像部105Bがマルチコアファイバ10Bを撮像した後であって、次に回転部102Bがマルチコアファイバ10Bを回転させる前に、当該P°の回転の前後において撮像されたマルチコアファイバ10Bの画像の類似度を算出してもよい。つまり、第1撮像工程P2において、マルチコアファイバ10A,10BがP°回転されるごとに、類似度算出部112は、当該P°の回転の前後におけるマルチコアファイバ10A,10Bの画像の類似度を算出してもよい。
【0063】
(第1回転位置算出工程P4)
本工程は、一方のマルチコアファイバ10Aの複数の類似度SA12~SA89の列と他方のマルチコアファイバ10Bの複数の類似度SB12~SB89の列との相互相関が最も高くなる一対のマルチコアファイバ10A,10Bの特定の相対的回転位置を算出する工程である。
【0064】
図8は、第1類似度算出工程P3で求めたマルチコアファイバ10Aの複数の類似度SA
12~SA
89の列を示す図であり、
図9は、第1類似度算出工程P3で求めたマルチコアファイバ10Bの複数の類似度SB
12~SB
89の列を示す図である。制御部115は、回転位置算出部113に類似度SA
12~SA
89の列と類似度SB
12~SB
89の列との相互相関を算出させる。次に、制御部115は、回転位置算出部113にマルチコアファイバ10A,10Bの一方の類似度の列をP°分ずらさせて、再び類似度SA
12~SA
89の列と類似度SB
12~SB
89の列との相互相関を算出させる。
図10は、
図9に示すマルチコアファイバ10Bの複数の類似度SB
12~SB
89の列をP°分ずらした図である。
図10では、類似度SB
12~SB
89の列の起点が、
図9の類似度SB
12~SB
89の列の起点と異なる。この場合、回転位置算出部113は
図8に示すマルチコアファイバ10Aの類似度SA
12~SA
89の列と、
図10に示すマルチコアファイバ10Bの類似度SB
12~SB
89の列との相互相関を算出する。このように、マルチコアファイバ10A,10Bの一方の類似度の列をP°分ずらすごとに、類似度SA
12~SA
89の列と類似度SB
12~SB
89の列との相互相関を算出し、この算出をN回行う。この処理により、類似度SA
12~SA
89の列と類似度SB
12~SB
89の列とのすべての組み合わせにおける相互相関が算出される。
【0065】
次に、制御部115は、回転位置算出部113に最も相互相関が高いマルチコアファイバ10Aとマルチコアファイバ10Bとの特定の相対的回転位置を算出させる。本実施形態では、第1撮像工程P2以降マルチコアファイバ10A、10Bは回転していないため、この特定の相対的回転位置は、第1撮像工程P2が終了した時点におけるマルチコアファイバ10Aとマルチコアファイバ10Bとの相対的回転位置からP°の倍数だけマルチコアファイバ10A,10Bが相対的に回転した位置である。なお、この倍数には0倍も含まれ、この場合、第1撮像工程P2の終了時点におけるマルチコアファイバ10A、10Bの相対的回転位置のままである。こうして、複数の類似度SA12~SA89の列と複数の類似度SB12~SB89の列との相互相関が最も高くなる一対のマルチコアファイバ10A,10Bの特定の相対的回転位置が算出される。
【0066】
(第1回転工程P5)
本工程は、一方のマルチコアファイバ10Aと他方のマルチコアファイバ10Bとが上記の特定の相対的回転位置の関係となるように、一対のマルチコアファイバ10A,10Bの少なくとも一方を中心軸Cを中心に回転させる工程である。
【0067】
制御部115は、回転部102A,102Bの少なくとも一方を制御して、一対のマルチコアファイバ10A,10Bの相対的回転位置が、第1回転位置算出工程P4で求めた特定の相対的回転位置となるように、マルチコアファイバ10A,10Bの少なくとも一方を回転させる。このときの相対的な回転角度は、上記のようにP°の倍数である。
【0068】
こうして、一方のマルチコアファイバ10Aと他方のマルチコアファイバ10Bとが、複数の類似度SA12~SA89の列と複数の類似度SB12~SB89の列との相互相関が最も高くなる特定の相対的回転位置の関係となる。
【0069】
こうしてマルチコアファイバ10Aとマルチコアファイバ10Bとの粗調心が完了する。そこで、以降の工程によりマルチコアファイバ10Aとマルチコアファイバ10Bとの微調心を行う。
【0070】
(第2撮像工程P6)
本工程は、第1回転工程P5後において、それぞれのマルチコアファイバ10A,10Bの側面の画像を撮像する工程である。
【0071】
本工程では、制御部115は、撮像部105Aにマルチコアファイバ10Aの側面の画像を撮像させ、撮像部105Bにマルチコアファイバ10Bの側面の画像を撮像させる。従って、撮像部105A,105Bは、マルチコアファイバ10Aとマルチコアファイバ10Bとが特定の相対的回転位置に回転された状態での側面の画像を撮像する。撮像されたそれぞれの画像データはメモリ120に格納される。
【0072】
(第2類似度算出工程P7)
本工程は、第2撮像工程P6で撮像されたそれぞれのマルチコアファイバ10A,10Bの画像の類似度を算出する工程である。
【0073】
本工程では、制御部115は、類似度算出部112にメモリ120から第2撮像工程P6で撮像されたそれぞれのマルチコアファイバ10A,10Bの画像データを読みださせる。次に制御部115は、類似度算出部112にマルチコアファイバ10Aの画像とマルチコアファイバ10Bの画像との類似度を算出させる。本実施形態では、類似度の算出は、第1類似度算出工程P3での算出と同様に算出される。算出された類似度は、メモリ120に格納される。
【0074】
(第2回転工程P8)
本工程は、第2類似度算出工程P7で算出された類似度よりも高い所定範囲の類似度となるように、一対のマルチコアファイバ10A,10Bの少なくとも一方を中心軸Cを中心に回転させる工程である。本実施形態では、本工程は、第3撮像工程P81と、第3類似度算出工程P82と、判断工程P83と、を主な工程として備える。
【0075】
<第3撮像工程P81>
本工程は、一対のマルチコアファイバ10A,10Bの少なくとも一方を、一対のマルチコアファイバ10A,10Bの相対的な回転角度がP°より小さい大きさで中心軸Cを中心に回転させて、当該回転後におけるそれぞれのマルチコアファイバ10A,10Bの側面の画像を撮像する工程である。
【0076】
本工程では、制御部115は、マルチコアファイバ10A,10Bが相対的にP°より小さな微小角度で回転するよう回転部102A,102Bの少なくとも一方を制御する。例えば、回転部102Aにマルチコアファイバ10Aを微小角度だけ回転させたり、回転部102Bにマルチコアファイバ10Bを微小角度だけ回転させたり、回転部102A,102Bにマルチコアファイバ10A、10Bを回転させてそれぞれの相対的な回転角が微小角度となるようにする。こうして、マルチコアファイバ10A,10Bは、相対的にP°より小さな微小角度で回転された状態となる。
【0077】
次に、制御部115は、撮像部105A,105Bを制御して、撮像部105Aにマルチコアファイバ10Aの側面の画像を撮像させ、撮像部105Bにマルチコアファイバ10Bの側面の画像を撮像させる。従って、撮像部105A,105Bは、マルチコアファイバ10Aとマルチコアファイバ10Bとが上記のように相対的に微小角度回転した状態での側面の画像を撮像する。撮像されたそれぞれの画像データはメモリ120に格納される。
【0078】
<第3類似度算出工程P82>
本工程は、第3撮像工程P81で撮像されたそれぞれのマルチコアファイバ10A,10Bの画像の類似度を算出する工程である。
【0079】
本工程では、制御部115は、類似度算出部112にメモリ120から第3撮像工程P81で撮像されたそれぞれのマルチコアファイバ10A,10Bの画像データを読みださせる。次に、制御部115は、類似度算出部112にマルチコアファイバ10Aの画像とマルチコアファイバ10Bの画像との類似度を算出させる。本実施形態では、類似度の算出は、第1類似度算出工程P3での算出と同様に算出される。算出された類似度は、メモリ120に格納される。
【0080】
<判断工程P83>
上記所定範囲の類似度は、本工程は、第3類似度算出工程P82で算出された類似度が上記の所定範囲の類似度となっているか否かを判断する工程である。
【0081】
本実施形態では、上記所定範囲の類似度はあらかじめメモリ120に格納されている。この所定範囲は、例えば類似度が位相限定相関法に基づいて算出される場合、0.99以上とされる。制御部は、メモリ120から予め定められた所定範囲の類似度と、第3類似度算出工程P82で算出された類似度とを読み出す。そして、第3類似度算出工程P82で算出された類似度が、所定の範囲に入っているか否かを判断する。つまり、類似度が位相限定相関法に基づいて算出され、所定範囲が0.99以上とされる場合、第3類似度算出工程P82で算出された類似度が、0.99以上であるか否かを判断する。類似度が所定の範囲に入っている場合、第2回転工程P8は終了し、類似度が所定の範囲に入っていない場合、再び第3撮像工程P81に戻る。つまり、制御部は、第3類似度算出工程P82で算出された類似度が所定範囲の類似度となるまで、第3撮像工程P81と第3類似度算出工程P82とを繰り返す。
【0082】
こうして、マルチコアファイバ10Aとマルチコアファイバ10Bとの微調心が完了する。
【0083】
(融着接続工程P9)
本工程は、上記の工程により一対のマルチコアファイバ10A,10Bを調心した後、一対のマルチコアファイバ10A,10Bを融着接続する工程である。
【0084】
本工程では、制御部115は、融着接続部101にマルチコアファイバ10Aの一方の端部とマルチコアファイバ10Bの一方の端部とを融着接続させる。上記のように、融着接続部101が一対の電極を含む場合、制御部115は、不図示の電源回路を制御して、当該一対の電極から放電させて、この放電による熱により融着接続を行う。
【0085】
こうして、
図1に示すマルチコアファイバ接続体1が製造される。
【0086】
以上説明したように、本実施形態のマルチコアファイバ10A,10Bの調心方法は、第1撮像工程P2と、第1類似度算出工程P3と、第1回転位置算出工程P4と、第1回転工程P5と、を備える。第1撮像工程P2では、中心軸Cが一致するように一対のマルチコアファイバ10A,10Bの端面同士を対向させた状態で、それぞれのマルチコアファイバ10A,10BをP°ずつ中心軸Cを中心にN=360/Pが整数となるように小数点以下が切り上げられた回数で回転させ、それぞれのマルチコアファイバ10A,10Bの側面の画像をP°回転させる前後ごとに撮像する。第1類似度算出工程P3では、マルチコアファイバ10A,10BをP°回転させる毎における回転前の画像と回転後の画像との類似度をそれぞれのマルチコアファイバ10A,10Bについて算出する。第1回転位置算出工程P4では、一方のマルチコアファイバ10Aの複数の類似度の列と他方の前記マルチコアファイバ10Bの複数の類似度の列との相互相関が最も高くなる一対のマルチコアファイバ10A,10Bの特定の相対的回転位置を算出する。第1回転工程P5では、一方のマルチコアファイバ10Aと他方のマルチコアファイバ10Bとが特定の相対的回転位置の関係となるように、一対のマルチコアファイバ10A,10Bの少なくとも一方を中心軸Cを中心に回転させる。
【0087】
また、本実施形態のマルチコアファイバ10A,10Bを調心する調心装置200は、それぞれのマルチコアファイバ10A,10Bを中心軸Cを中心に回転させる回転部102A,102Bと、それぞれのマルチコアファイバ10A,10Bの側面の画像を撮像する撮像部105A,105Bと、画像の類似度を算出する類似度算出部112と、一対のマルチコアファイバ10A,10Bの相対的回転位置を算出する回転位置算出部113と、を備える。回転部102A,102Bは、中心軸Cが一致するように一対のマルチコアファイバ10A,10Bの端面同士が対向された状態で、それぞれのマルチコアファイバ10A,10BをP°ずつN=360/Pが整数となるように小数点以下が切り上げられた回数で回転させる。撮像部105A,105Bは、それぞれのマルチコアファイバ10A,10Bの側面の画像をP°回転させる前後ごとに撮像する。類似度算出部112は、マルチコアファイバ10A,10BをP°回転させる毎における回転前の画像と回転後の画像との類似度をそれぞれのマルチコアファイバ10A,10Bについて算出する。回転位置算出部は、一方のマルチコアファイバ10Aの複数の類似度の列と他方のマルチコアファイバ10Bの複数の類似度の列との相互相関が最も高くなる一対のマルチコアファイバ10A,10Bの特定の相対的回転位置を算出する。回転部102A,102Bは、また、一方のマルチコアファイバ10Aと他方のマルチコアファイバ10Bとが特定の相対的回転位置の関係となるように、一対のマルチコアファイバの少なくとも一方を回転させる。
【0088】
このようなマルチコアファイバの調心方法及び調心装置200で調心されるマルチコアファイバ10A,10Bは、上記のように、角度がP°の第1角が2個以上連続して位置するように複数の外側コア12A~12Gが配置されている。このように外側コア12A~12Gが配置されるマルチコアファイバ10A,10BをP°ずつ回転させると、第1角を形成する外側コア12A~12Gが撮像側に連続して位置する状態では、P°回転させる前後において撮像側における外側コア12A~12Gの配置が概ね一致する。このため、この状態では、P°の回転前後に撮像される側面の画像の類似度が比較的高い。一方、第1角を形成する外側コア12A~12Gが撮像側に位置する状態からP°回転させることで第2角を形成する外側コア12A~12Gが撮像側に位置する状態になると、P°回転させる前後において撮像側における外側コア12A~12Gの配置が変化する。このため、P°の回転前後に撮像される側面の画像の類似度が比較的低い。このように、それぞれのマルチコアファイバ10A,10Bを撮像した複数の画像において、類似度の高い画像と、類似度の低い画像とが存在する。
【0089】
上記のようにマルチコアファイバ10A,10BをP°ずつ中心軸Cを中心にN=360/Pが整数となるように小数点以下が切り上げられた回数で回転させると、マルチコアファイバ10A,10Bを少なくとも1回転させることになる。このように各マルチコアファイバ10A,10Bを1回転させることで、P°回転させる毎に撮像される画像の類似度を1回転分算出することができる。従って、それぞれのマルチコアファイバ10A,10Bについて、類似度の高い画像と類似度の低い画像とを含む複数の類似度の相互相関を算出すると、相互相関が最も高くなる一対のマルチコアファイバ10A,10Bの特定の相対的回転位置では、それぞれのマルチコアファイバ10A,10Bの外側コア12A~12Gの長手方向に沿って見る場合の位置が概ね一致する。従って、この特定の相対的回転位置にそれぞれのマルチコアファイバ10A,10Bが位置するように少なくとも一方のマルチコアファイバを回転させることで、一対のマルチコアファイバ10A,10Bを概ね調心することができる。
【0090】
このように、本実施形態のマルチコアファイバ10A,10Bの調心方法、および、マルチコアファイバ10A,10Bの調心装置200によれば、第1角の角度であるP°ずつマルチコアファイバ10A,10Bを回転させて撮像することで、一対のマルチコアファイバ10A,10Bを調心することができる。このような角度は、従来技術として知られている1回の回転角である0.1°に比べて大きい。このため、従来技術と比べて調心に要する画像の数を減らすことができ、容易にマルチコアファイバ10A,10Bを調心し得る。
【0091】
また、本実施形態のマルチコアファイバ10A,10Bの調心方法、および、マルチコアファイバ10A,10Bの調心装置200において、クラッド13の中心とそれぞれの外側コア12A~12Gとを結ぶ複数の線分はクラッド13の中心と外側コア12A~12Gの中心とを結んでいる。
【0092】
このため、当該線分がクラッド13の中心と外側コア12A~12Gにおける中心以外の部位である非中心部とを結ぶ場合と比べて、上記のようにP°回転させる前後において撮像側における外側コア12A~12Gの配置がより高い精度で一致する。このため、第1角を形成する外側コア12A~12Gが撮像側に連続して位置する状態において、P°の回転前後に撮像される側面の画像の類似度がより高くなる。このため、一方のマルチコアファイバ10Aの複数の類似度と他方のマルチコアファイバ10Bの複数の類似度との相互相関が最も高くなる一対のマルチコアファイバ10A,10Bの相対的回転位置をより高い精度で算出し得る。従って、線分がクラッド13の中心と外側コア12A~12Gにおける非中心部とを結ぶ場合と比べて、一対のマルチコアファイバ10A,10Bをより高い精度で調心することができる。
【0093】
なお、上記実施形態では、クラッド13の中心とそれぞれの外側コア12A~12Gの中心とを結ぶ複数の線分のうち互いに隣り合う線分により第1角及び第2角が形成された。しかし、この線分は、外側コア12A~12Gを通れば、外側コア12A~12Gの中心を通らなくてもよく、クラッド13の中心とそれぞれの外側コア12A~12Gにおける非中心部とを結ぶ複数の線分により第1角及び第2角が形成されてもよい。
【0094】
また、本実施形態のマルチコアファイバ10A,10Bの調心方法は、第1回転工程P5後において、それぞれのマルチコアファイバ10A,10Bの側面の画像を撮像する第2撮像工程P6と、第2撮像工程P6で撮像されたそれぞれのマルチコアファイバ10A,10Bの画像の類似度を算出する第2類似度算出工程P7と、第2類似度算出工程P7で算出された類似度よりも高い所定範囲の類似度となるように、一対のマルチコアファイバ10A,10Bの少なくとも一方を中心軸Cを中心に回転させる第2回転工程P8と、を備える。
【0095】
また、本実施形態のマルチコアファイバ10A,10Bの調心装置200では、撮像部105A,105Bは、一方のマルチコアファイバ10Aと他方のマルチコアファイバ10Bとが特定の相対的回転位置の関係となった状態で、それぞれのマルチコアファイバ10A,10Bの側面の画像を撮像し、類似度算出部112は、一方のマルチコアファイバ10Aと他方のマルチコアファイバ10Bとが特定の相対的回転位置の関係となった状態で撮像されたそれぞれのマルチコアファイバ10A,10Bの画像の類似度を算出し、回転部102A,102Bは、一方のマルチコアファイバ10Aと他方のマルチコアファイバ10Bとが特定の相対的回転位置の関係となった状態で算出された類似度よりも高い所定範囲の類似度となるように、一対のマルチコアファイバ10A,10Bの少なくとも一方を中心軸Cを中心に回転させる。
【0096】
上記のように第1回転工程P5が完了することで、一対のマルチコアファイバ10A,10Bを概ね調心することができる。これに対して、上記のように第2回転工程P8が行われる調心は、一対のマルチコアファイバ10A,10Bが相対的回転位置に回転されて調心された状態からの微調心である。従って、一対のマルチコアファイバ10A,10Bが特定の相対的回転位置に回転されて調心された状態よりも、より正確に一対のマルチコアファイバ10A,10Bを調心することができる。なお、このような微調心が不要である場合、第1回転工程P5より後の工程を行わなくてもよい。
【0097】
また、本実施形態のマルチコアファイバ10A,10Bの調心方法では、第2回転工程P8は、一対のマルチコアファイバ10A,10Bの少なくとも一方を、一対のマルチコアファイバ10A,10Bの相対的な回転角度がP°より小さい大きさで中心軸Cを中心に回転させて、回転後におけるそれぞれのマルチコアファイバ10A,10Bの側面の画像を撮像する第3撮像工程P81と、第3撮像工程P81で撮像されたそれぞれのマルチコアファイバ10A,10Bの画像の類似度を算出する第3類似度算出工程P82と、を備え、第2回転工程P8では、第3類似度算出工程P82で算出された類似度が所定範囲の類似度となるまで、第3撮像工程P81と第3類似度算出工程P82とを繰り返す。
【0098】
また、本実施形態のマルチコアファイバ10A,10Bの調心装置200では、回転部102A,102Bは、一方のマルチコアファイバ10Aと他方のマルチコアファイバ10Bとが特定の相対的回転位置の関係となった状態で、それぞれのマルチコアファイバ10A,10Bの側面の画像が撮像部105A,105Bで撮像された後、一対のマルチコアファイバ10A,10Bの少なくとも一方を、一対のマルチコアファイバ10A,10Bの相対的な回転角度がP°より小さい大きさで中心軸Cを中心に回転させ、撮像部105A,105Bは、当該回転後におけるそれぞれのマルチコアファイバ10A,10Bの側面の画像を撮像し、類似度算出部112は、当該回転後に撮像されたそれぞれのマルチコアファイバ10A,10Bの画像の類似度を算出し、当該算出された類似度が所定範囲の類似度となるまで、特定の相対的回転位置の関係となった状態の後における回転部102A,102Bによる回転と、撮像部105A,105Bによる当該回転後の撮像と、類似度算出部112による当該回転後に撮像されたそれぞれのマルチコアファイバ10A,10Bの画像の類似度の算出とが繰り返される。
【0099】
このような回転、撮像、及び類似度の算出が繰り返されることで、より確実に一対のマルチコアファイバの微調心を行うことができる。なお、微調心を行う方法は、上記実施形態の例に限らず、他の方法によって行われてもよい。例えば、制御部115が回転部102A,102Bにマルチコアファイバ10A,10Bを0.1°といった微小な回転角で相対的に回転させて、当該微小な回転ごとに撮像部105A,105Bにマルチコアファイバ10A,10Bの側面を撮像させて、類似度算出部112に同じタイミングで撮像されたマルチコアファイバ10A,10Bの画像の類似度を算出させ、算出した類似度が最も高い状態でのマルチコアファイバ10A,10Bの相対的位置となるように、回転部102A,102Bにマルチコアファイバ10A,10Bの少なくとも一方を回転させてもよい。
【0100】
また、本実施形態のマルチコアファイバ10A,10Bにおける外側コア12A~12Gは、5つ以上であり、周方向に連続して第1角が3つ以上位置する。なお、第1角が円周Crの周方向に連続して2個以上位置して、少なくとも1つの第2角を含んでいれば、外側コアの数は、上記実施形態と異なっていてもよい。例えば、外側コアの数が、3つであり、第1角が互いに隣り合って2つ位置し、残りの角が第1角と異なる大きさの第2角であってもよい。このような例として、例えば、第1角の大きさであるコア間の角度が125度であり、第2角の大きさであるコア間の角度が110度であってもよい。また、外側コアの数は、上記実施形態の数よりも多くてもよい。
【0101】
また、本実施形態のマルチコアファイバ接続体1の製造方法は、上記実施形態のマルチコアファイバ10A,10Bの調心方法により一対のマルチコアファイバ10A,10Bを調心した後、一対のマルチコアファイバ10A,10Bを融着接続する融着接続工程P9を備える。
【0102】
また、本実施形態のマルチコアファイバ10A,10Bの融着接続機100は、上記実施形態のマルチコアファイバの調心装置200と、調心装置200により調心された一対のマルチコアファイバ10A,10Bを融着する融着接続部101と、を備える。
【0103】
このようなマルチコアファイバ接続体1の製造方法やマルチコアファイバ10A,10Bの融着接続機100によれば、容易にマルチコアファイバ10A,10Bを調心し得るため、容易にマルチコアファイバ接続体1を得ることができる。
【0104】
以上、本発明について上記実施形態を例に説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されない。
【0105】
例えば、上記実施形態のマルチコアファイバ10A,10Bは、中心コア11を有した。しかし、調心、融着される一対のマルチコアファイバは、クラッド13の中心軸Cを中心とする円周上Crに3つ以上のコアが配置され、クラッド13の中心とそれぞれのコアとを結ぶ複数の線分のうち互いに隣り合う線分により形成される複数の角が、大きさがP°で周方向に連続して2個以上位置する第1角と、大きさがP°と異なる少なくとも1つの第2角とを含み、それぞれのコアの配置が同一である一対のマルチコアファイバであればよく、中心コア11を有さなくてもよい。また、第1角の大きさであるP°は、上記実施形態と異なっていてもよく、第2角が2つ以上存在してもよい。
【0106】
また、上記実施形態では、第2回転工程P8の後、融着接続工程P9を行ってマルチコアファイバ接続体を製造する例を説明した。しかし、例えば、融着接続工程P9を行う代わりに、コネクタ化工程を行ってもよい。このコネクタ化工程では、第2回転工程P8により調心されたマルチコアファイバ10A及びマルチコアファイバ10Bの回転位置を保持した状態で、例えば
図11に示すように、マルチコアファイバ10A及びマルチコアファイバ10Bのそれぞれの先端に、フェルール501や位置決め機構を有するフランジ502などを取り付ける。これにより、回転位置が一致する2つの単芯の光ファイバコネクタ5を製造することができる。なお、上記微調心をせずに光ファイバコネクタ5を製造してもよい。
【0107】
また、上記実施形態では、互いに対向する1つのマルチコアファイバ同士を調心する例を説明したが、マルチコアファイバの長手方向に概ね垂直な方向に並列された複数のマルチコアファイバ同士を調心してもよい。以下、このような変形例について説明する。なお、上記実施形態と同一又は同等の構成要素については、特に説明する場合を除き、同一の参照符号を付して重複する説明を省略する。
【0108】
図12は、この変形例に係る融着接続機400の構成を概念的に示す図である。
図12に示すように、融着接続機400は、複数のマルチコアファイバ10A及び複数のマルチコアファイバ10Bを調心可能な調心装置300と、融着接続部301と、を主な構成として備える。調心装置300は、複数の回転部102Aと、複数の回転部102Bと、複数の撮像部105Cと、複数の撮像部105Dと、処理部110と、メモリ120と、入力部130と、を主な構成として備える。
【0109】
本変形例では、複数の回転部102Aのそれぞれに1つのマルチコアファイバ10Aが中心軸を中心に回転可能に保持される。また、複数の回転部102Bのそれぞれに1つのマルチコアファイバ10Bが中心軸を中心に回転可能に保持される。このようにマルチコアファイバ10Aが複数の回転部102Aに保持されることによって、複数のマルチコアファイバ10Aが、当該複数のマルチコアファイバ10Aのうちの1つの長手方向に概ね垂直な方向に沿って並列される。また、同様に、複数のマルチコアファイバ10Bが、当該複数のマルチコアファイバ10Bのうちの1つの長手方向に概ね垂直な方向に沿って並列される。なお、マルチコアファイバの長手方向に概ね垂直な方向とは、マルチコアファイバの長手方向に対して例えば75°以上105°以下の角度であってもよい。このようにマルチコアファイバ10Aのそれぞれとマルチコアファイバ10Bのそれぞれとが並列されることによって、マルチコアファイバ10Aのそれぞれの端面とマルチコアファイバ10Bのそれぞれの端面とが一対一対応で互いに対向する。こうして、
図12に示すように、端面同士が対向する一対のマルチコアファイバ10A,マルチコアファイバ10Bからなる組の複数が、複数のマルチコアファイバ10A,10Bのうちの1つの長手方向に概ね垂直な方向に沿って並列される。なお、これら回転部102A,102Bのそれぞれは、上記組のそれぞれにおけるマルチコアファイバ10A,10Bのそれぞれの中心軸を合わせることができる。また、それぞれの回転部102A,102Bは、処理部110に電気的に接続されており、処理部110の制御部115からの信号に基づいて、所望の回転角になるまでマルチコアファイバ10A,10Bを回転させることができる。
【0110】
融着接続部301は、複数の回転部102Aにより保持された複数のマルチコアファイバ10Aの端部と、複数の回転部102Bにより保持された複数のマルチコアファイバ10Bの端部とを融着する。
【0111】
複数の撮像部105Cは、マルチコアファイバ10Aのそれぞれに対して1つずつ設けられている。撮像部105Cのそれぞれは、並列されたマルチコアファイバ10Aが全て重なって見える方向以外の所定の方向から、マルチコアファイバ10Aのそれぞれの側面、及び、少なくとも一部のコアを撮像する。本実施形態では、撮像部105Cのそれぞれは、マルチコアファイバ10Aのそれぞれの長手方向とマルチコアファイバ10Aが並列される方向との双方に垂直な方向から、対応するマルチコアファイバ10Aの側面の画像を撮像する。この変形例では、1つの撮像部105Cが1つのマルチコアファイバ10Aの側面を撮像するように構成されている。
【0112】
複数の撮像部105Dは、マルチコアファイバ10Aのそれぞれに対して1つずつ設けられている。撮像部105Dのそれぞれは、並列されたマルチコアファイバ10Bが全て重なって見える方向以外の所定の方向から、マルチコアファイバ10Bのそれぞれの側面、及び、少なくとも一部のコアを撮像する。本実施形態では、撮像部105Cのそれぞれは、マルチコアファイバ10Bのそれぞれの長手方向とマルチコアファイバ10Bが並列される方向との双方に垂直な方向から、対応するマルチコアファイバ10Bの側面の画像を撮像する。この変形例では、1つの撮像部105Dが1つのマルチコアファイバ10Bの側面を撮像するように構成されている。
【0113】
なお、複数の撮像部105C,105Dを設ける代わりに、例えば、撮像部105C,105Dを1つずつ設けて、1つの撮像部105Cが並列されたマルチコアファイバ10Aの全ての側面を撮像し、1つの撮像部105Dが並列されたマルチコアファイバ10Bの全ての側面を撮像するようにしてもよい。この場合、上記所定の方向は、撮像された画像中に存在する個々のマルチコアファイバを正しく区別できるように撮像可能な方向であればよい。
【0114】
撮像部105C及び撮像部105Dのそれぞれは、処理部110に電気的に接続されている。従って、撮像部105C及び撮像部105Dのそれぞれは、処理部110の制御部115からの信号により、任意のタイミングで撮像することができる。なお、
図12では、図が複雑になることを避けるために、1つの撮像部105Cと処理部110との接続、及び、1つの撮像部105Dと処理部110との接続のみが示されている。
【0115】
なお、
図12の例では、回転部102A,102B、及び、撮像部105C,105Dがそれぞれ4つずつ設けられ、マルチコアファイバ10A,10Bが4つずつ1列に並べられる例が説明されている。しかし、回転部102A,102Bの数、撮像部105C,105Dの数、及びマルチコアファイバ10A,10Bの数はこれに限定されるものではない。
【0116】
融着接続機400の制御部115は、融着接続部101、それぞれの回転部102A,102B、それぞれの撮像部105C,105D、画像処理部111、類似度算出部112、及び回転位置算出部113等の動作を制御する。
【0117】
融着接続機400の画像処理部111は、それぞれの撮像部105C,105Dから入力する画像信号を処理する。
【0118】
融着接続機400の類似度算出部112は、撮像部105C,105Dで撮像された画像間の類似度を算出する。或いは、それぞれの撮像部105Cで撮像された画像間の類似度やそれぞれの撮像部105Dで撮像された画像間の類似度を算出する。この変形例では、類似度算出部112は、撮像部105C,105Dで撮像された画像間の類似度を算出する。こうして、この変形例における類似度算出部112は、上記組のそれぞれにおけるマルチコアファイバ10A,10Bの上記類似度を算出する。
【0119】
融着接続機400の回転位置算出部113は、上記組のそれぞれにおけるマルチコアファイバ10Aとマルチコアファイバ10Bとの相対的回転位置を算出する。
【0120】
次に、融着接続機400を用いたマルチコアファイバ接続体1の製造方法について説明する。この製造方法は、
図4に示す工程と概ね同様の工程を有する。したがって、
図4に示す工程と重複する箇所については説明を省略する。
【0121】
まず、配置工程P1を行う。この配置工程P1では、まず、回転部102Aのそれぞれにマルチコアファイバ10Aを配置し、回転部102Bのそれぞれにマルチコアファイバ10Bを配置する。これにより、端面同士が対向する一対のマルチコアファイバ10A,10Bからなる組の複数が、複数のマルチコアファイバ10A,10Bのうちの1つのマルチコアファイバの長手方向に概ね垂直な方向に沿って並列される。次に、それぞれの組において、一対のマルチコアファイバ10A,10Bの中心軸同士を一致させる。
【0122】
その後、本変形例では、上記組のそれぞれにおいて、中心軸が一致するように一対のマルチコアファイバ10A,10Bの端面同士を対向させた状態で、撮像部105Cにマルチコアファイバ10Aの側面の画像を撮像させ、撮像部105Dにマルチコアファイバ10Bの側面の画像を撮像させる。このように、本変形例では、上記組のそれぞれに対して上述した第1撮像工程P2を行う。そして、その後、上記組のそれぞれに対して、第1類似度算出工程P3、第1回転位置算出工程P4、及び第1回転工程P5を行う。こうして、上記組のそれぞれにおいて、マルチコアファイバ10A,10Bが、マルチコアファイバ10Aの複数の類似度の列とマルチコアファイバ10Bの複数の類似度の列との相互相関が最も高くなる特定の相対的回転位置の関係となる。こうして、上記組のそれぞれにおいて、マルチコアファイバ10Aとマルチコアファイバ10Bとが粗調心される。
【0123】
次に、本変形例では、上記組のそれぞれに対して、第2撮像工程P6、第2類似度算出工程P7、及び第2回転工程P8を行う。その結果、上記それぞれの組において、マルチコアファイバ10Aとマルチコアファイバ10Bとが微調心される。
【0124】
なお、本変形例において、上記粗調心及び上記微調心の少なくとも一方を上記組ごとに時間差をつけて行ってもよいし、上記組のそれぞれの上記粗調心及び上記微調心の少なくとも一方を同時に行ってもよい。
【0125】
次に、上記の工程により、上記組のそれぞれに対して粗調心及び微調心をした後、制御部115は、融着接続部301を制御して、並列されているマルチコアファイバ10Aのそれぞれの端面と、並列されているマルチコアファイバ10Bのそれぞれの端面とを融着接続させる。なお、上記粗調心をした段階で、マルチコアファイバ10Aのそれぞれの端面と、マルチコアファイバ10Bのそれぞれの端面とを融着接続してもよい。したがって、本変形例において、第2撮像工程P6、第2類似度算出工程P7、及び第2回転工程P8は必須の工程ではない。
【0126】
こうして、複数の
図1に示すマルチコアファイバ接続体1が一括して製造される。
【0127】
このような変形例に係る調心方法及び融着接続方法によれば、複数組のマルチコアファイバ10Aとマルチコアファイバ10Bとを一括して調心した上で、複数のマルチコアファイバ10Aと複数のマルチコアファイバ10Bとを一度に融着接続することができる。このため、調心及び融着を各組ごとに行う場合に比べて、作業時間を短縮することできるとともに、融着時における放電時間を削減することができる。
【0128】
また、上記融着接続機400を光ファイバコネクタの製造工程の一部に使用することもできる。この点について以下説明する。
【0129】
例えば、光ファイバコネクタの一製造例では、まず、
図12に示す融着接続機400の回転部102Aのそれぞれにマルチコアファイバ10Aを取り付ける。これにより、複数のマルチコアファイバ10Aが、当該複数のマルチコアファイバ10Aのうちの1つの長手方向に概ね垂直な方向に沿って並列される。このように、本例の工程は、複数のマルチコアファイバ10Aを当該複数のマルチコアファイバ10Aのうちの1つの長手方向に概ね垂直な方向に沿って並列する並列配置工程を備えている。本例では、
図4に示す配置工程P1に代えて、この並列配置工程を行う。なお、この光ファイバコネクタの製造例では、回転部102Bにマルチコアファイバを取り付けない。
【0130】
その後、上記第1撮像工程P2と同様にして、マルチコアファイバ10Aのそれぞれを回転させると共に、撮像部105Cのそれぞれによって、マルチコアファイバ10Aのそれぞれの側面を回転の前後毎に撮像する。ただし、本例では、上記のようにマルチコアファイバ10Bを融着接続機に取り付けない。そのため、本例における第1撮像工程P2ではマルチコアファイバの中心軸が一致するように一対のマルチコアファイバの端面同士を対向させる必要がない点、上記実施形態における第1撮像工程P2と異なる。
【0131】
その後、上記第1類似度算出工程P3と同様にして、マルチコアファイバ10Aのそれぞれにおいて、マルチコアファイバ10Aの回転前の画像と回転後の画像との類似度を算出する。
【0132】
その後、並列されたマルチコアファイバ10Aのうちの1つである特定のマルチコアファイバ10A以外のマルチコアファイバ10Aのそれぞれに関して、上記第1回転位置算出工程P4と同様の工程を行う。なお、以下において、特定のマルチコアファイバ10Aを第1マルチコアファイバ10Asと記載し、特定のマルチコアファイバ10A以外のマルチコアファイバ10Aを第2マルチコアファイバ10Anと記載することがある。
図12では、便宜上、処理部110に最も近い位置に表されたマルチコアファイバ10Aを第1マルチコアファイバ10Asとし、その他のマルチコアファイバ10Aを第2マルチコアファイバ10Anとしている。
【0133】
上記実施形態では、互いに対向するマルチコアファイバ10A及びマルチコアファイバ10Bにおいて、マルチコアファイバ10Aにおける複数の類似度の列とマルチコアファイバ10Bにおける複数の類似度の列との相互相関が最も高くなるようなマルチコアファイバ10A及びマルチコアファイバ10Bの特定の相対的回転位置を算出した。一方、本例では、並列配置された複数の第2マルチコアファイバ10Anのそれぞれに関して、第2マルチコアファイバ10Anにおける複数の類似度の列と第1マルチコアファイバ10Asの複数の類似度の列との相互相関が最も高くなる第1マルチコアファイバ10Asに対する第2マルチコアファイバ10Anの特定の相対的回転位置を算出する。したがって、本例では、第2マルチコアファイバ10Anのそれぞれに応じて、上記特定の相対的回転位置が算出される。
【0134】
その後、第2マルチコアファイバ10Anのそれぞれに対して、上記第1回転工程P5と同様の工程を行う。したがって、本例では、第2マルチコアファイバ10Anと第1マルチコアファイバ10Asとが上記相互相関が上記特定の相対的回転位置の関係となるように、それぞれの第2マルチコアファイバ10Anを第1マルチコアファイバ10Asに対して中心軸を中心に相対的に回転させる。
【0135】
これにより、一列に並べられたマルチコアファイバ10Aの全てが第1マルチコアファイバ10Asを基準として粗調心される。
【0136】
その後、粗調心されたマルチコアファイバ10Aのそれぞれの側面の画像を撮像して、これら画像間の類似度を算出し、算出された類似度よりも高い所定範囲の類似度となるように、マルチコアファイバ10Aのそれぞれを中心軸を中心に回転させる。こうして、マルチコアファイバ10Aのそれぞれを微調心する。
【0137】
その後、このように調心されたマルチコアファイバ10Aを1つずつコネクタ化することで、回転位置が同一の複数の単芯の光ファイバコネクタを同時に製造することができる。あるいは、例えば
図13に示すように、このように調心された複数のマルチコアファイバ10Aを1つのフェルール601に収容してコネクタ化することで、回転位置が同一の複数のマルチコアファイバ10Aを含む多芯の光ファイバコネクタ6を製造することができる。なお、上記微調心をせずにマルチコアファイバ10Aをコネクタ化してもよい。したがって、本変形例において、第2撮像工程P6、第2類似度算出工程P7、及び第2回転工程P8は必須の工程ではない。
【0138】
本発明によれば、容易にマルチコアファイバを調心し得る調心方法、当該調心方法を用いたマルチコアファイバ接続体の製造方法、容易にマルチコアファイバを調心し得る調心装置、及び当該調心装置を用いたマルチコアファイバの融着接続機が提供され得、例えば光通信等の分野において利用可能である。