IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 豊田合成株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-蓋開閉構造 図1
  • 特許-蓋開閉構造 図2
  • 特許-蓋開閉構造 図3
  • 特許-蓋開閉構造 図4
  • 特許-蓋開閉構造 図5
  • 特許-蓋開閉構造 図6
  • 特許-蓋開閉構造 図7
  • 特許-蓋開閉構造 図8
  • 特許-蓋開閉構造 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-20
(45)【発行日】2022-09-29
(54)【発明の名称】蓋開閉構造
(51)【国際特許分類】
   B60K 15/05 20060101AFI20220921BHJP
   E05D 3/06 20060101ALI20220921BHJP
【FI】
B60K15/05 B
E05D3/06
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019024928
(22)【出願日】2019-02-14
(65)【公開番号】P2020131816
(43)【公開日】2020-08-31
【審査請求日】2021-05-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000604
【氏名又は名称】弁理士法人 共立特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】川口 修平
【審査官】渡邊 義之
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-174567(JP,A)
【文献】特開2015-209689(JP,A)
【文献】特開2017-226299(JP,A)
【文献】特開2019-18671(JP,A)
【文献】特開2006-151293(JP,A)
【文献】特開2018-204324(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0154768(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 11/00- 15/10
E05D 3/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口が設けられた基底部材と、
前記開口を開閉させることが可能な蓋体と、
前記蓋体を開閉動作させる開閉機構と、
を備える蓋開閉構造であって、
前記開閉機構は、
前記基底部材に対して前記開口の内外方向へスライド移動可能に取り付けられたスライド部材と、
前記基底部材に対して回動可能に取り付けられた回動部材と、
を有し、
前記スライド部材は、
前記開口の外方向の端部に設けられた、前記蓋体を回動可能に支持する第一支持部と、
前記回動部材を回動可能に支持する第四支持部と、
を有し、
前記回動部材は、
前記基底部材に回動可能に支持される第二支持部と、
前記蓋体に回動可能かつ前記蓋体の裏面に沿ってスライド移動可能に支持される第三支持部と、
を有し、
前記第一支持部は、常に前記第三支持部に対して前記第二支持部側に位置している、蓋開閉構造。
【請求項2】
前記回動部材は、前記スライド部材のスライド移動に伴う前記基底部材に対する回動時に前記第四支持部を位置移動させながら案内する第一ガイドレールを有する、請求項に記載された蓋開閉構造。
【請求項3】
前記蓋体は、裏面に沿って延びるように形成された、前記回動部材が前記基底部材に対する回動に伴って前記蓋体に対して回動する際に前記第三支持部を位置移動させながら案内する第二ガイドレールを有する、請求項1又は2に記載された蓋開閉構造。
【請求項4】
前記開閉機構は、前記蓋体が閉状態において前記開口の内方向へ押圧操作されることにより前記スライド部材及び前記蓋体を前記開口の外方向へ移動させるポップアップ機構を有し
前記蓋体は、前記ポップアップ機構により前記スライド部材及び前記蓋体が前記開口の外方向へ移動した状態で、閉状態から開状態へ回動される、請求項1乃至3の何れか一項に記載された蓋開閉構造。
【請求項5】
開口が設けられた基底部材と、
前記開口を開閉させることが可能な蓋体と、
前記蓋体を開閉動作させる開閉機構と、
を備える蓋開閉構造であって、
前記開閉機構は、
前記基底部材に対して前記開口の内外方向へスライド移動可能に取り付けられたスライド部材と、
前記基底部材に対して回動可能に取り付けられた回動部材と、
を有し、
前記スライド部材は、前記開口の外方向の端部に設けられた、前記蓋体を回動可能に支持する第一支持部を有し、
前記回動部材は、
前記基底部材に回動可能に支持される第二支持部と、
前記蓋体に回動可能かつ前記蓋体の裏面に沿ってスライド移動可能に支持される第三支持部と、
を有し、
前記第一支持部は、常に前記第三支持部に対して前記第二支持部側に位置しており、
前記開閉機構は、前記蓋体が閉状態において前記開口の内方向へ押圧操作されることにより前記スライド部材及び前記蓋体を前記開口の外方向へ移動させるポップアップ機構を有し、
前記蓋体は、前記ポップアップ機構により前記スライド部材及び前記蓋体が前記開口の外方向へ移動した状態で、閉状態から開状態へ回動され、
前記蓋体は、裏面に対して直交する方向へ延びるように形成された、前記ポップアップ機構による移動時に前記第三支持部を位置移動させながら案内する第三ガイドレールを有する、蓋開閉構造。
【請求項6】
前記蓋体は、裏面に沿って延びるように形成された、前記回動部材が前記基底部材に対する回動に伴って前記蓋体に対して回動する際に前記第三支持部を位置移動させながら案内する第二ガイドレールを有し、
前記第三ガイドレールは、前記ポップアップ機構により前記蓋体及び前記開閉機構が前記開口の外方向へ移動した際に前記第三支持部が位置する部位で、前記第二ガイドレールに連通している、請求項に記載された蓋開閉構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば車両の給油口や充電口などが設けられた開口を塞ぐ蓋体を開閉動作させることが可能な蓋開閉構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両の給油口などに連通する開口を開閉させる蓋体の開閉構造が知られている(例えば、特許文献1)。特許文献1記載の蓋開閉構造は、開口が設けられたハウジングと、その開口を開閉させることが可能な蓋体と、その蓋体を開閉動作させる開閉機構と、を備えている。開閉機構は、第一リンク部材と、第二リンク部材と、を有している。第一リンク部材の一端部は、ハウジングに回動可能に支持されている。第一リンク部材の他端部は、第二リンク部材の一端部に回動可能に連結されている。第二リンク部材の他端部は、蓋体に回動可能に支持されている。第一リンク部材及び第二リンク部材は、蓋体の閉状態では開口内に収まるように折り畳まれていると共に、蓋体の開状態では両者が開口の内外方向に延びつつ直線状に並ぶように開口内から開口の外方向に飛び出す。この構造によれば、蓋体の開閉軌跡を開口から外方向へ遠ざけることができるため、蓋体を車体に干渉させることなく開閉することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-47827号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記の如く、蓋体の開閉軌跡が開口から遠ざかるように二つのリンク部材それぞれが折り畳まれた状態から直線状に開口の内外方向に並んだ状態へ回動する構造では、両リンク部材がそれぞれ大きく回動するので、開閉機構が複雑になる。また、この構造では、蓋体の閉状態と開状態との間での両リンク部材それぞれの回動角度が大きいので、蓋体のスムースな開閉動作が阻害されるおそれがある。
【0005】
一方、上記の不都合を生じさせない構造として、いわゆるグースネック型のヒンジを用いたものがある。しかしながら、グースネック型のヒンジの体格は大きいため、車両への組付作業性などが低下してしまう。
【0006】
本発明は、このような点に鑑みてなされたものであり、蓋体のスムースな開閉動作を車体との干渉を防止しつつ簡易な構造で実現することが可能な蓋開閉構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様である蓋開閉構造は、開口が設けられた基底部材と、前記開口を開閉させることが可能な蓋体と、前記蓋体を開閉動作させる開閉機構と、を備える蓋開閉構造であって、前記開閉機構は、前記基底部材に対して前記開口の内外方向へスライド移動可能に取り付けられたスライド部材と、前記基底部材に対して回動可能に取り付けられた回動部材と、を有し、前記スライド部材は、前記開口の外方向の端部に設けられた、前記蓋体を回動可能に支持する第一支持部を有し、前記回動部材は、前記基底部材に回動可能に支持される第二支持部と、前記蓋体に回動可能かつ前記蓋体の裏面に沿ってスライド移動可能に支持される第三支持部と、を有し、前記第一支持部は、前記第三支持部に対して前記第二支持部側に位置している。
【0008】
この構成によれば、蓋体の回動中心であるスライド部材の第一支持部を開口の枠内で基底部材に対して開口の内外方向へ移動させながら、その蓋体を開閉動作させることができる。また、第一支持部が第三支持部に対して第二支持部側に位置するので、蓋体の開閉動作時に、蓋体が回動部材に対して第三支持部にて回動する角度を小さく抑えることができる。従って、蓋体のスムースな開閉動作を車体との干渉を防止しつつ簡易な構造で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】一実施形態に係る蓋開閉構造における蓋体の閉状態での外観図である。
図2】実施形態の蓋開閉構造における蓋体の閉状態での断面図である。
図3】実施形態の蓋開閉構造の分解斜視図である。
図4】実施形態の蓋開閉構造における蓋体の閉状態において蓋体が開口内方向へ押圧操作された際の断面図である。
図5】実施形態の蓋開閉構造における蓋体のポップアップ後の断面図である。
図6】実施形態の蓋開閉構造における蓋体の開動作中の外観図である。
図7】実施形態の蓋開閉構造における蓋体の開動作中の断面図である。
図8】実施形態の蓋開閉構造における蓋体の開状態(具体的には、全開状態)での外観図である。
図9】実施形態の蓋開閉構造における蓋体の開状態(具体的には、全開状態)での断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に係る蓋開閉構造の具体的な実施形態について、図面を用いて説明する。
【0011】
一実施形態の蓋開閉構造1は、例えば車両の給油口や充電口などを塞ぐ蓋体を開閉動作させるための構造である。蓋開閉構造1は、図1図2、及び図3に示す如く、基底部材10と、蓋体20と、開閉機構30と、を備えている。
【0012】
基底部材10は、例えば車両の側壁やエンジンカバーなどに設けられた給油口や充電口に取り付けられる部材である。基底部材10は、樹脂などにより成形された射出成形体であって、容器状或いは箱状に形成されている。基底部材10には、開口11が設けられている。開口11は、給油口や充電口に連通している。開口11は、所定の平面形状(例えば、四角形状や円形状など)に形成されている。
【0013】
基底部材10は、筒状に形成された側壁部12と、側壁部12の奥端部(すなわち、側壁部12における開口11の内方向の端部)を塞ぐ底面としての底壁部13と、を有している。底壁部13には、給油口や充電口に連なる取出口14が設けられている。取出口14には、燃料タンクやバッテリなどに接続する配管やケーブルの一端が表出している。取出口14は、蓋体20の閉状態で開口11内に隠れる一方、蓋体20の開状態で燃料供給や充電が可能となるように外部に露出する。
【0014】
蓋体20は、開口11を塞ぐ板状の部材である。蓋体20は、開口11を開閉させることが可能である。蓋体20は、開口11の平面形状に合わせた形状に形成されている。蓋体20は、例えば樹脂により成形された射出成形体である。蓋体20は、表皮部材21と、保持部材22と、を有している。蓋体20は、表皮部材21が保持部材22にボルト23を用いて固定されることにより両部材21,22が互いに組み付けられた状態で構成される。
【0015】
表皮部材21は、蓋体20の表面として外部に露出する部材である。表皮部材21は、平板状に形成されており、基底部材10の開口11に対応した平面形状(例えば、四角形状や円形状など)に形成されている。また、保持部材22は、蓋体20の裏側を構成しており、表皮部材21を保持する部材である。表皮部材21と保持部材22とは、複数箇所でボルト23を用いて互いに締結されることにより固定される。保持部材22は、平板部22aと、側壁部22bと、フランジ部22cと、を有している。平板部22aと側壁部22bとフランジ部22cとは、互いに一体的に設けられている。
【0016】
平板部22aは、平板状に形成された、表皮部材21に対面する部位である。平板部22aには、蓋体20の閉状態で取出口14に対向する筒状の対向部22dが設けられている。側壁部22bは、平板部22aの端部からその平板部22aの面に対して直交する方向(具体的には、平板部22aに対して表皮部材21側)に突出して広がる壁面部位である。例えば蓋体20の平面形状が図1に示す如く四角形状である場合、側壁部22bは、図3に示す如く、四角形状の平板部22aの対向する二辺の端部からそれぞれ突出して広がり、互いに平行な壁をなす。
【0017】
フランジ部22cは、側壁部22bにおける平板部22aとの接続部とは反対側の端部からその側壁部22bの面に対して直交する方向(具体的には、外側)に突出して広がる壁面部位である。フランジ部22cは、平板部22aに対して平行な壁をなしており、表皮部材21に対面している。尚、フランジ部22cは、表皮部材21に当接して表皮部材21を面支持する部位であってよい。例えば蓋体20の平面形状が図1に示す如く四角形状である場合、フランジ部22cは、図3に示す如く、互いに平行な二つの側壁部22bからそれぞれ突出して広がる。
【0018】
開閉機構30は、蓋体20を開閉動作させる機構である。開閉機構30は、スライド部材40と、回動部材50と、を有している。開閉機構30は、スライド部材40のスライド移動と回動部材50の回動とが適切に連動することにより蓋体20を開閉動作させることが可能である。
【0019】
スライド部材40は、開口11の内外方向(以下、開口内外方向と称す。)Xへスライド移動可能な部材である。スライド部材40は、基底部材10に対してスライド移動可能に取り付けられている。スライド部材40は、スライド本体部41と、ヒンジ部42と、を有している。スライド本体部41は、略箱状あるいは筒状に形成されている。スライド本体部41は、基底部材10のスライド保持部15にスライド移動可能に挿入されている。スライド保持部15は、開口11の枠内の偏った位置に設けられている。スライド本体部41は、開口11の枠内においてその開口11の一部の周縁に偏った位置に配置されている。ヒンジ部42は、蓋体20をスライド部材40に回動可能に支持する部材である。ヒンジ部42は、スライド本体部41の開口外方向Xoの端部に取り付けられている。
【0020】
ヒンジ部42は、二つの平板42a,42bからなる平蝶番である。ヒンジ部42は、平板42aがスライド本体部41にボルト43を用いて固定されることによりスライド本体部41に取り付けられる。ヒンジ部42の平板42bは、平板42aに対して第一支持部42cを中心にして回動可能である。第一支持部42cは、スライド部材40の開口外方向Xoの端部に設けられている。平板42bは、蓋体20(具体的には、保持部材22を介して表皮部材21)にボルト44を用いて取り付け固定されている。スライド部材40は、ヒンジ部42の第一支持部42cにて蓋体20を回動可能に支持している。
【0021】
回動部材50は、開口内外方向Xに対して直交する方向(以下、Y方向と称す。)に延びる軸を中心にして回動することが可能な部材である。回動部材50は、基底部材10に対して回動可能に取り付けられている。回動部材50は、アーム状に形成されている。回動部材50は、スライド部材40を挟むように一対設けられている。各回動部材50はそれぞれ、第二支持部51と、第三支持部52と、を有している。
【0022】
第二支持部51は、アーム一端部に設けられている。第二支持部51は、基底部材10に回動可能に支持される部位である。第二支持部51は、開口11の一部の周縁に偏った位置(具体的には、スライド本体部41近傍の位置)に配置されている。第二支持部51には、Y方向に開口する円形又は楕円形の支持孔51aが設けられている。支持孔51aには、円柱状の軸体である支持ピン53が挿入される。支持ピン53は、更に、基底部材10にY方向に開口するように円形に設けられた支持孔16に挿入される。回動部材50は、支持ピン53が支持孔51a及び基底部材10の支持孔16に挿入された状態でその支持ピン53を軸中心にして基底部材10に回動可能に支持される。
【0023】
第三支持部52は、アーム他端部に設けられている。第三支持部52は、蓋体20(具体的には、保持部材22)に回動可能かつその蓋体20の裏面(具体的には、保持部材22の側壁部22b)に沿ってスライド移動可能に支持される部位である。第三支持部52は、蓋体20の閉状態において第二支持部51よりも開口11の中心寄りに配置されている。第三支持部52には、Y方向に開口する円形又は楕円形の支持孔52aが設けられている。支持孔52aには、円柱状の軸体である支持ピン54が挿入される。支持ピン54は、更に、蓋体20(具体的には、保持部材22の側壁部22b)にY方向に開口するように設けられた支持孔24に挿入される。支持ピン54は、一対の回動部材50の第三支持部52の支持孔52a同士を繋ぐように一本だけ設けられている。回動部材50は、支持ピン54が一対の支持孔52a及び蓋体20の支持孔24に挿入された状態でその支持ピン54を軸中心にして蓋体20に回動可能に支持される。
【0024】
蓋体20の支持孔24は、略L字状をなし、保持部材22の側壁部22bに、蓋体20の裏面に沿って延びるように形成されていると共に、蓋体20の裏面に対して直交する方向へ延びるように形成されている。支持孔24は、蓋体20の裏面に平行に延びる第一孔部24aと、蓋体20の裏面に対して直交する方向へ延びる第二孔部24bと、からなる。
【0025】
第一孔部24aは、回動部材50が基底部材10に対する回動に伴って蓋体20に対して回動する際に第三支持部52を位置移動させながら案内するガイドレールである。第二孔部24bは、蓋体20の後述するポップアップ時に蓋体20及び開閉機構30が開口外方向Xoへ移動するように第三支持部52を位置移動させながら案内するガイドレールである。第二孔部24bは、第一孔部24aにおける蓋体20とヒンジ部42との取付側とは反対側の端部に連通している。第二孔部24bは、第一孔部24aに連通した部位から、蓋体20の裏面に対して直交する方向のうち表皮部材21側とは反対側である方向(すなわち、蓋体20の裏側方向)へ延びている。すなわち、第二孔部24bが第一孔部24aに連通する部位は、後述の付勢力により蓋体20及び開閉機構30が開口外方向Xoへ移動した際に第三支持部52が位置する部位である。
【0026】
回動部材50は、支持ピン54が一対の支持孔52a及び蓋体20の支持孔24に挿入された状態で第三支持部52にて蓋体20の裏面に沿ってスライド移動可能かつ蓋体20の表裏方向に沿ってスライド移動可能に支持される。回動部材50の第三支持部52は、第二孔部24bにおける表皮部材21側(すなわち、蓋体20の表側方向)の端部までスライド移動した状態で、蓋体20の裏面に沿ってスライド移動することが可能である。
【0027】
スライド部材40のスライド本体部41は、第四支持部45を有している。第四支持部45は、回動部材50を回動可能に支持する部位である。第四支持部45は、スライド本体部41がスライド移動する軸線上の近傍に配置され、そのスライド本体部41における開口外方向Xoの端部に配置されている。第四支持部45には、Y方向に開口する円形又は楕円形の支持孔45aが設けられている。支持孔45aには、円柱状の軸体である支持ピン46が挿入される。支持ピン46は、更に、回動部材50にY方向に開口するように設けられた支持孔55に挿入される。支持ピン46は、一対の回動部材50の支持孔55同士を繋ぐように一本だけ設けられている。回動部材50は、支持ピン46が一対の支持孔55及びスライド本体部41の支持孔45aに挿入された状態でその支持ピン46を中心にしてスライド本体部41に回動可能に支持される。
【0028】
回動部材50の支持孔55は、回動部材50の長手方向中央付近に湾曲しつつ延びるように形成されている。支持孔55は、スライド部材40における開口内外方向Xへのスライド移動に伴う基底部材10に対する回動部材50の回動時に第四支持部45を位置移動させながら案内するガイドレールである。すなわち、第四支持部45は、回動部材50の支持孔55内において位置移動することが可能である。
【0029】
スライド部材40のヒンジ部42の第一支持部42cと、回動部材50の第二支持部51と、回動部材50の第三支持部52と、は以下の位置関係が成立するように配置されている。具体的には、第一支持部42cは、第三支持部52に対して第二支持部51側に位置している。蓋体20の閉状態において、第一支持部42cの開口内外方向Xに直交するZ方向の位置は、第三支持部52のZ方向位置よりも第二支持部51が存在する側である。
【0030】
また、回動部材50の第二支持部51と、回動部材50の第三支持部52と、スライド部材40のスライド本体部41の第四支持部45と、は以下の位置関係が成立するように配置されている。具体的には、第四支持部45は、第三支持部52に対して第二支持部51側に位置している。蓋開閉構造1をY方向から見た場合、第四支持部45は、第三支持部52から比較的遠くかつ第二支持部51に比較的近い位置に配置されている。すなわち、第二支持部51と第四支持部45との位置ズレ量(以下、第一ズレ量A1)は、第三支持部52と第四支持部45との位置ズレ量(以下、第二ズレ量A2)よりも小さい。また、蓋体20の閉状態での第一ズレ量A1と第二ズレ量A2との比(A1/A2)は、開状態での比(A1/A2)よりも小さい。
【0031】
以下、蓋開閉構造1の動作について説明する。
【0032】
蓋体20の閉状態では、図4に示す如く、開閉機構30のヒンジ部42の平板42bが平板42aに対面する回動位置にあり、回動部材50の第三支持部52及び支持ピン54が蓋体20の支持孔24のうち第二孔部24bの表皮部材21側とは反対側の端部の近傍に位置していると共に、スライド部材40のスライド本体部41の第四支持部45及び支持ピン46が回動部材50の支持孔55のうち第二支持部51に近い側の部位に位置して維持されている。
【0033】
上記した蓋体20の閉状態において車両乗員などの操作者が蓋体20を開状態とすることを希望する場合は、操作者により所定の開操作がなされる。この所定の開操作は、操作者が蓋体20を基底部材10に対して開口内方向Xiへ押圧操作することである。この所定の開操作がなされると、蓋体20ひいてはスライド部材40が基底部材10に対して開口内方向Xiへスライド移動する。
【0034】
次に、操作者による所定の開操作(すなわち、蓋体20の開口内方向Xiへの押圧操作)が解除されると、図示しないプッシュリフタ機構又はポップアップ機構の付勢力によりスライド部材40が基底部材10に対して開口外方向Xoへスライド移動する。スライド部材40が基底部材10に対して開口外方向Xoへスライド移動すると、そのスライド移動に同期して、蓋体20がそのスライド部材40のヒンジ部42に支持された状態で基底部材10に対して開口外方向Xoへスライド移動する。スライド部材40が上記したプッシュリフタ機構などにより付勢されて、蓋体20ひいてはスライド部材40が開口外方向Xoへスライド移動すると、それらの蓋体20及びスライド部材40が図5に示す如くポップアップ後位置に至る。
【0035】
また、上記した蓋体20の開口外方向Xoへのスライド移動と同時に、そのスライド部材40のスライド本体部41の第四支持部45及び支持ピン46から回動部材50へ、その回動部材50を第二支持部51の支持孔51a及び基底部材10の支持孔16に挿入されている支持ピン53を軸中心にして基底部材10に対して回動方向ωoへ回動させる力が付与されるので、回動部材50が基底部材10に対して回動方向ωoへ回動する。この際、回動部材50が第二支持部51で基底部材10に支持された状態で、回動部材50の第三支持部52及び支持ピン54が蓋体20の第二孔部24b内においてガイドされながら表皮部材21側とは反対側から表皮部材21側へ位置移動する。
【0036】
第三支持部52及び支持ピン54が蓋体20の第二孔部24b内において表皮部材21側の端部に達するまでは、第三支持部52及び支持ピン54が蓋体20の裏面に沿って平行に位置移動することが規制されるので、蓋体20が第一支持部42cを中心にして回動することは規制される。そして、第三支持部52及び支持ピン54が蓋体20の第二孔部24b内において表皮部材21側の端部に達すると、第三支持部52及び支持ピン54が第一孔部24a内においてガイドされながら第二孔部24bとの連通部位からヒンジ部42側へ位置移動することが許容され、第三支持部52及び支持ピン54が蓋体20の裏面に沿って位置移動することが許容される。このため、図6及び図7に示す如く、第三支持部52及び支持ピン54が蓋体20の裏面に沿って位置移動しつつ、蓋体20がヒンジ部42の第一支持部42cを中心にしてスライド本体部41に対して開状態側へ回動する。
【0037】
スライド部材40の開口内外方向Xへのスライド移動中は、第二支持部51と第三支持部52との距離は不変であるが、第一支持部42cと第二支持部51との距離、及び、第一支持部42cと第三支持部52との距離が変化する。上記の如く第三支持部52及び支持ピン54が蓋体20の裏面に沿って位置移動する際には、第一支持部42cと第二支持部51との距離、及び、第一支持部42cと第三支持部52との距離が徐々に変化するように、スライド本体部41が開口内外方向Xへスライド移動しつつ蓋体20が開状態側へ回動する。
【0038】
蓋体20の開状態側への回動動作中には、第一支持部42cに、スライド本体部41を図7中における左側に倒す方向に力が作用する。この回動の際、スライド本体部41の第四支持部45が、回動する回動部材50の支持孔55内において案内されながら位置移動して、スライド本体部41の移動方向を修正する。このため、開口外方向Xoへのスムースなスライド移動を実現することができる。尚、スライド部材40のスライド移動性すなわち蓋体20の回動性を向上させるうえでは、第四支持部45は、スライド本体部41のZ方向幅の範囲内に形成配置することが好ましい。
【0039】
従って、蓋体20の閉状態において操作者により基底部材10に対する蓋体20の開口内方向Xiへの押圧操作が行われることにより、蓋体20をスライド部材40と一緒に基底部材10に対して開口外方向Xoへスライド移動させると共に、蓋体20を開状態側へ回動させて開状態とすることができる。
【0040】
尚、図8及び図9に示す如く、蓋体20の開状態側への回動は、第三支持部52及び支持ピン54が第一孔部24a内において第二孔部24bとの連通部位から最も遠い第一支持部42c側の端部に当接して移動規制されるまで行われ、その移動規制により停止されることとすればよい。そして、蓋体20の開状態側への回動が停止されると、蓋体20が全開状態になる。また、蓋体20の閉状態から全開状態までの角度は、例えば100°などであってよい。
【0041】
蓋体20の全開状態では、開閉機構30のヒンジ部42の平板42bが平板42aに対して所定角度をなす回動位置にあり、回動部材50の第三支持部52及び支持ピン54が蓋体20の支持孔24のうち第一孔部24aの第一支持部42c側の端部に位置していると共に、スライド部材40のスライド本体部41の第四支持部45及び支持ピン46が回動部材50の支持孔55のうち第二支持部51から遠い側の部位に位置している。
【0042】
上記した蓋体20の開状態において操作者が蓋体20を閉状態とすることを希望する場合は、操作者により所定の閉操作がなされる。この所定の閉操作は、操作者が蓋体20を第一支持部42cを中心にして閉状態側へ回動させると共に、基底部材10に対して開口内方向Xiへ押圧操作することである。この閉操作が行われると、蓋体20及び開閉機構30は、上記した開操作での工程とは逆の工程で動作する。
【0043】
すなわち、上記の閉操作が行われると、まず、蓋体20が第一支持部42cを中心にして基底部材10に対して閉状態側へ回動すると共に、上記したプッシュリフタ機構などの付勢力に抗して蓋体20ひいてはスライド部材40が基底部材10に対して開口内方向Xiへスライド移動する。
【0044】
上記した所定の閉操作が行われる際、蓋体20の閉状態側への回動に伴って、回動部材50が基底部材10に対して回動方向ωiへ回動して、第三支持部52及び支持ピン54が第一孔部24a内においてガイドされながらヒンジ部42側から第二孔部24bとの連通部位へ蓋体20の裏面に沿って位置移動する。また、蓋体20の開口内方向Xiへの押圧に伴って、第三支持部52及び支持ピン54が第二孔部24b内においてガイドされながら表皮部材21側から表皮部材21側とは反対側へ位置移動する。更に同時に、第四支持部45及び支持ピン46が回動部材50の支持孔55内において第二支持部51から遠い側から近い側へ位置移動する。
【0045】
次に、操作者による所定の閉操作(具体的には、蓋体20の閉状態側への回動後における開口内方向Xiへの押圧操作)が解除されると、上記したプッシュリフタ機構などの付勢力によりスライド部材40が基底部材10に対して開口外方向Xoへスライド移動する。スライド部材40が基底部材10に対して開口外方向Xoへスライド移動すると、そのスライド移動に同期して、蓋体20がそのスライド部材40のヒンジ部42に支持された状態で基底部材10に対して開口外方向Xoへスライド移動して、蓋体20が基底部材10に対して所定の閉状態となる。
【0046】
従って、蓋体20の開状態において操作者により基底部材10に対する蓋体20の閉状態側への回動及び開口内方向Xiへの押圧操作が行われることにより、蓋体20を閉状態側へ回動させると共に、蓋体20をスライド部材40と一緒に基底部材10に対して開口内方向Xiへ押し込んで、蓋体20を閉状態とすることができる。
【0047】
このように、蓋開閉構造1によれば、蓋体20の回動中心であるスライド部材40の第一支持部42cを開口11の枠内で基底部材10に対して開口内外方向Xへ移動させながら、その蓋体20を開閉動作させることができる。このため、蓋体20を開閉動作させる構造として、開口11の枠外に至るいわゆるグースネック型のヒンジなどを用いることは不要であるので、構造の小型化・簡易化を図ることができると共に、車両への組付作業性を向上させることができる。
【0048】
また、蓋開閉構造1においては、蓋体20を回動可能に支持するスライド部材40の第一支持部42cが、回動部材50を蓋体20に回動可能かつその蓋体20の裏面に沿ってスライド移動可能に支持する第三支持部52に対して、回動部材50を基底部材10に回動可能に支持する第二支持部51側に位置している。この蓋開閉構造1によれば、蓋体20が開閉動作する際に、スライド部材40が基底部材10に対して開口内外方向Xへ直線状にスライド移動し、そのスライド移動に伴って、回動部材50が基底部材10に対して第二支持部51にて蓋体20の閉状態と開状態との角度相当分回動する一方、蓋体20がその回動部材50に対して第三支持部52にて回動する角度が小さく抑えられる(例えば10°~45°の鋭角な角度)。
【0049】
このため、蓋体20を開閉動作させるうえで、開閉機構30の各部材が大きく回動することは抑えられるので、開閉機構30の複雑化を防止することができ、蓋体20のスムースな開閉動作を実現することができる。従って、蓋体20のスムースな開閉動作を簡易な構造で実現することができる。
【0050】
また、蓋体20が閉状態からスライド部材40に対して第一支持部42cを中心にして開状態側へ回動する際に、その蓋体20及び開閉機構30を閉状態での位置から開口外方向Xoへ移動させることができる。この移動が行われれば、蓋体20の回動中心である第一支持部42cが基底部材10に対して開口外方向Xoへ移動するので、蓋体20がスライド部材40に対して第一支持部42cにて開状態側へ回動しても、蓋体20と基底部材10や車体とが互いに干渉することは回避される。従って、蓋開閉構造1によれば、蓋体20のスムースな開閉動作を車体との干渉を防止しつつ簡易な構造で実現することができる。尚、蓋体20及び開閉機構30は、プッシュリフタ機構の付勢力により閉状態での位置から開口外方向Xoへ移動することができるので、上記干渉の更なる防止を図ることが可能である。
【0051】
更に、蓋開閉構造1においては、回動部材50が、スライド部材40の第四支持部45に回動可能に支持されると共に、そのスライド部材40に対して支持孔55内において位置移動可能である。この蓋開閉構造1によれば、スライド部材40が開口内外方向Xへスライド移動する過程で生じる、そのスライド部材40と回動部材50(ひいては、蓋体20)と基底部材10との位置関係のバラツキを吸収することができ、これにより、蓋体20の更なるスムースな開閉動作を実現することができる。
【0052】
尚、上記の実施形態においては、回動部材50の支持孔55が特許請求の範囲に記載した「第一ガイドレール」に、蓋体20の支持孔24のうち第一孔部24aが特許請求の範囲に記載した「第二ガイドレール」に、蓋体20の支持孔24のうち第二孔部24bが特許請求の範囲に記載した「第三ガイドレール」に、それぞれ相当している。
【0053】
ところで、上記の実施形態においては、開閉機構30のスライド部材40が開口内外方向Xへスライド移動する。しかし、本発明は、これに限定されるものではなく、そのスライド部材40が、開口内外方向Xに対して僅かに傾斜した方向へスライド移動するものに適用することとしてもよい。この傾斜方向は、スライド部材40がスライド移動するスライド軸線が開口内方向Xi側から開口外方向Xo側にかけて、蓋体20が開動作する際にその蓋体20のうち開口内方向Xiへ移動する内方移動側に傾く方向である。この変形形態の構造においては、蓋体20を基底部材10に対してスライド部材40のスライド軸線が傾斜する角度まで大きく傾けることができるので、蓋体20の開動作を大開度まで行うことができ、蓋体20の開閉の角度範囲をより広げることができる。
【0054】
また、上記の実施形態においては、蓋開閉構造1が、上記したプッシュリフタ機構などを備え、操作者の開口内方向Xiへの押圧による所定開操作又は所定閉操作で蓋体20を開動作又は閉動作させるものとしている。しかし、本発明は、これに限定されるものではなく、蓋開閉構造1が、上記したプッシュリフタ機構などを含まず、車両乗員が手動操作で蓋体20を開動作させかつ閉動作させるものに適用することとしてもよいし、また、モータなどを用いて自動的に蓋体20を開動作させかつ閉動作させるものに適用することとしてもよい。
【0055】
また、上記の実施形態においては、スライド部材40が、回動部材50を回動可能に支持する第四支持部45を有すると共に、回動部材50が、スライド部材40における開口内外方向Xへのスライド移動に伴う基底部材10に対する回動部材50の回動時に第四支持部45を位置移動させながら案内するガイドレールである支持孔55を有する。しかし、本発明は、これに限定されるものではなく、スライド部材40が第四支持部45を有しないと共に、回動部材50が支持孔55を有しないものとしてもよい。
【0056】
尚、本発明は、上述した実施形態や変形形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更を施すことが可能である。
【符号の説明】
【0057】
1:蓋開閉構造、10:基底部材、11:開口、20:蓋体、24,55:支持孔、24a:第一孔部、24b:第二孔部、30:開閉機構、40:スライド部材、41:スライド本体部、42:ヒンジ部、42c:第一支持部、45:第四支持部、46,53,54:支持ピン、50:回動部材、51:第二支持部、52:第三支持部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9