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特許7143568完全または部分的なタイミングサポートなしの、従来のIPコアネットワークにおける衛星に依存しない位相および周波数同期のための時間転送システムおよび方法
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  • 特許-完全または部分的なタイミングサポートなしの、従来のIPコアネットワークにおける衛星に依存しない位相および周波数同期のための時間転送システムおよび方法 図1
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  • 特許-完全または部分的なタイミングサポートなしの、従来のIPコアネットワークにおける衛星に依存しない位相および周波数同期のための時間転送システムおよび方法 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-20
(45)【発行日】2022-09-29
(54)【発明の名称】完全または部分的なタイミングサポートなしの、従来のIPコアネットワークにおける衛星に依存しない位相および周波数同期のための時間転送システムおよび方法
(51)【国際特許分類】
   H04L 7/00 20060101AFI20220921BHJP
【FI】
H04L7/00 990
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020549766
(86)(22)【出願日】2019-09-24
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-12-09
(86)【国際出願番号】 TR2019050789
(87)【国際公開番号】W WO2021015687
(87)【国際公開日】2021-01-28
【審査請求日】2020-11-06
(31)【優先権主張番号】2019/10960
(32)【優先日】2019-07-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TR
(73)【特許権者】
【識別番号】520352643
【氏名又は名称】トゥルク テレコムニカシオン アノニム シルケティ
(73)【特許権者】
【識別番号】520352654
【氏名又は名称】ケテン、ウムト
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ケテン、ウムト
【審査官】齊藤 晶
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-533044(JP,A)
【文献】特開2019-035591(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0079310(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0269170(US,A1)
【文献】米国特許第07606541(US,B1)
【文献】Dynamic synchronous Transfer Mode (DTM);Part 1: System description,ETSI ES 201 803-1 V1.1.1 (2001-01),2001年01月
【文献】Magnus Danielson,Time Transfer Capabilities in the DTM Transmission System,2014 European Frequency and Time Forum (EFTF),2014年06月26日
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04L 7/00
IEEE Xplore
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
IP/MPLS(Internet Protocol/Multi Protocol Label Switching)ネットワークにおいて位相および周波数同期を提供する方法であって、
前記IP/MPLSネットワークの一端においてPPS(Pulse Per Second)信号を受信する段階と、
前記受信したPPS信号を、DTM(Dynamic Synchronous Transfer Mode)プロトコルを使用した仮想回路を介して前記IP/MPLSネットワークの他端に送信する段階と、
前記他端に到達した前記PPS信号をToD(time of day)およびPTP(Precission Time Protocol(IEEE1588-2008又は1588v2))データに変換する段階と
前記変換されたToDおよび前記PTPデータを端末コンポーネントに送信する段階と
を含むプロセス段階を備える、方法。
【請求項2】
前記IP/MPLSネットワークの前記一端において前記PPS信号を得るべく、原子時計から受信されたToD(時刻)およびPTPデータを変換するプロセス段階を備える、請求項1に記載の位相および周波数同期を提供する方法。
【請求項3】
IP/MPLSネットワークにおいて位相および周波数同期を提供するシステムであって、
DTMプロトコルを使用して、ネットワークの一端でPPS信号を送信するように構成された送信器メカニズムと、
前記DTMプロトコルを使用して送信された前記PPS信号を前記IP/MPLSネットワークの他端において受信し、前記受信したPPS信号をToDおよびPTPデータに変換することにより、端末コンポーネントに前記受信したPPS信号を送信するように構成された受信器メカニズムと、
前記一端から前記他端に、前記DTMプロトコルを使用した前記PPS信号の伝送を提供するための仮想回路と
を備える、位相および周波数同期を提供するシステム。
【請求項4】
ToD(時刻)出力およびPTPデータを与える原子時計を更に備え
前記送信器メカニズムは、前記原子時計から受信された前記ToDおよび前記PTPデータを前記PPS信号に変換するように更に構成される、請求項3に記載の位相および周波数同期を提供するシステム。
【請求項5】
前記送信器メカニズムは、前記ToDおよび前記PTPデータを前記PPS信号に変換する一次変換器デバイスを備える、
請求項4に記載の位相および周波数同期を提供するシステム。
【請求項6】
前記受信器メカニズムは、
前記PPS信号を前記ToDおよび前記PTPデータに変換し、前記端末コンポーネントに送信する二次変換器デバイ
を備える、請求項3から5のいずれか一項に記載の位相および周波数同期を提供するシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明および方法は、伝統的なコアキャリアIP/MPLSネットワークにおける、衛星から受信された信号に依存しない位相および周波数同期の転送に関する。
【0002】
本発明は具体的に、PPSまたはPPS plus string(1秒当たりのパルス)として原子時計ソースから受信した時間情報の変換に基づく位相および周波数同期の転送方法に関する。次に、伝統的なコアキャリアIP/MPLSネットワークにおいて生成されたポイントツーポイント仮想回路DTM(Dynamic Synchronous Transfer Mode)プロトコルを使用して、時間情報を反対側の遠いエンドに転送する。
[当該分野の現状]
【0003】
現在の技術的要求の大部分は、必要とされる位相および周波数の要求を満たすことである。時分割複信(TDD)およびC‐RANに基づくデジタルネットワーク、および将来的には、他の技術も位相および周波数同期を必要とする。「位相および周波数同期」は、位相同期が通常、各サイクルに同一の位相角度を有する同一の周波数の2つの波形に適用されることを意味する。周波数同期は、別の信号の周波数基準に基づいて、1または複数の信号の相対的な周波数を調整するプロセスである。「位相および周波数同期」は、適切な5Gおよびそれ以降の技術の提供において重要な要素である。[1][2][3]
【0004】
関連技術標準化における位相および周波数同期は、ITU-T(1588)およびIEEE G8275.1(完全なタイミングサポート)およびIEEE G8275.2(部分的なタイミングサポート)規格により実行される。規格は、メインソースとして衛星を介して受信されるGPS/GNSS信号に依存しており、これらの規格は、平凡なネットワークベースの解決手段のみを定義する。GPS/GNSS信号を提供する衛星はほとんどが完全に外国向けであり、一部は軍事的に管理されているので、位相および周波数同期には外部依存が発生する。加えて、衛星信号は弱くて~160dBmであるおよび/または悪天候の場合、ジャマ―が使用されると同期も失敗しやすくなり得る。(一般的に軍事的演習において使用される)
【0005】
これらのIEEEおよびITU-T規格により提案される関連技術は、GPS/GNSSにより同期が失敗する場合におけるスタンバイ対策である。IEEEおよびITU-Tにより勧告されるようにこれらの規格に対応すべく、スタンバイ対策プロトコルの適用に高レベルの投資および運用コストが必要とされる。[4]これらの投資にも関わらず、コアネットワークの特性による非効率に直面することは、そのようなスタンバイ対策が全体に安全ではないことを示す。GPS/GNSSはフェイルオーバシステムを必要とするが、フェイルオーバシステムも同様にロバストである必要がある。IEEEおよびITU-Tが決定した規格もロバストでなく、したがって、半安全システムのスタンバイとしての別の半安全システムは、特に重大なネットワークの要件を満たすことに失敗し、危険な状況が文献において広く見られる。[5][6][7][8]
【0006】
結果として、上記の欠点や既存の解決手段の不十分さにより、関連技術における発展が必要とされた。
[発明の目的]
【0007】
本発明は、既存の状況から着想して発展され、上記の欠点を解消することを目的とする。
【0008】
本発明の主な目的は、PTP(IEEE1588)の使用による現在のIP/MPLSネットワークにおいて位相および周波数同期を転送する代わりに、IP/MPLSネットワークで動作するDTM層において位相および周波数同期を送信することであり、ITU-T8275.xにより定義される。
【0009】
本発明の別の目的は、既存のネットワークに対していかなる追加の投資および動作コストも発生させることなく、位相および周波数同期を提供することである。
【0010】
上記の目的を達成すべく、本発明は、ITU-T G8275.1(完全なタイミングサポート)およびIEEE G8275.2(部分的なタイミングサポート)規格の必要性がなく、かつそのような規格を適用するためにいかなる投資もなく、IP/MPLSネットワークにおける位相および周波数同期を提供する新しい方法である。当該方法は、DTMプロトコルによりPPS/PPS Plus string信号を切り替えて、PPS/PPS Plus string信号の仮想回路を介してネットワークの他端へ送信することと、送信されたPPS/PPS Plus string信号をDTMプロトコルにより再度切り替えて、他端に到達するPPS/PPS Plus string信号をToDおよびPTPデータに変換して終端コンポーネントに送信することと、を行うプロセス段階を備える。
【0011】
上記の方法が使用されるシステムは、ToD(時刻)出力を与える時刻、PPS/PPS Plus stringおよび/またはPTPまたはToD出力、ネットワークの一端においてToDおよびPTPデータをPPS/PPS Plus string信号に変換し、次にDTMプロトコルにより切り替える送信器メカニズムと、DTMプロトコルによりPPS/PPS Plus string信号を切り替えてネットワークの他端においてToDおよびPTPデータに変換することにより、端末コンポーネントにPPS/PPS Plus string信号を送信する受信器メカニズムと、一端から他端にPPS信号の伝送を提供する仮想回路とを備える。
【0012】
本発明の構造および特徴、ならびに全ての利点は、以下に与えられる図面を用いる、かつ図面を参照する詳細な説明でより良く理解される。したがって、図面および詳細な説明を考慮して評価を行う必要がある。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の位相および周波数同期を提供するシステムの実施形態の概略図である。
図2】本発明の位相および周波数同期を提供するシステムの別の実施形態の概略図である。
図3】本発明の位相および周波数同期を提供するシステムの試験結果の図である。 [部品の参照番号の説明]
【0014】
100.原子時計 210.送信器メカニズム 211.一次変換器デバイス 212.一次スイッチングデバイス 220.受信器メカニズム 221.二次変換器デバイス 222.二次スイッチングデバイス 300.仮想回路 400.端末コンポーネント
【発明を実施するための形態】
【0015】
この詳細な説明において、本発明に従って開示された位相および周波数同期を提供する方法およびシステムの好適な実施形態は、主題をより良く理解する目的のためにのみ開示されている。
【0016】
以下に開示される方法は、基本的に、原子時計(100)から受信されたToD(時刻)および/またはPTPプロトコルデータまたはPPS信号を、受信器部分に位置する端末コンポーネント(400)に送信することに関する。ToDおよびPTPデータは、送信プロセス中にPPSに変換され、仮想回路(300)を介して伝送される。切り替え動作は、プロセス中にDTMプロトコルにより実行される。
【0017】
本発明に従って開示された方法のプロセス段階は、以下に簡単に説明されている:
・DTMプロトコルを介して、PPS/PPS Plus string信号を切り替える段階
・仮想回路(300)を介して、PPS/PPS Plus string信号をネットワークの他端に伝送する段階
・送信されたPPS/PPS Plus string信号を、DTMプロトコルを介して再度切り替える段階
・ToD(時刻)および/またはPTPデータに変換されることにより、他端で受信されたPPS/PPS Plus string信号を端末コンポーネント(400)に送信する段階
【0018】
以下に開示される方法において、PPS信号は、この方法で出力を与える原子時計(100)から受信され得る。加えて、PPS信号は、ToD(時刻)出力を与える原子時計(100)から受信されたToDおよびPTPデータをPPS/PPS Plus string信号に変換することにより得られる。
【0019】
図1は、本発明の位相および周波数同期を提供するシステムの実施形態の概略図である。本明細書に示される原子時計(100)は、ToD(時刻)を受信し、IEEE(1588v2)により説明されるように、PTPを出力し得る。それから受信されたPTPデータはまず、これ(210)のために設計されたPCB(プリント回路基板)によってPPS/PPS Plus string信号に変換され、変換された信号はDTMプロトコルを介して切り替えられる。PPS信号は、DTM仮想回路(300)によってネットワークの他端に伝送される。DTM仮想回路(300)によりネットワークの他端に供給されるPPS信号はまず、その中の受信されたメカニズム(220)によってDTMプロトコルにおいて切り替えられ、次に、位相および周波数同期ならびに追加のToDを含む、このために設計されたPCB(プリント回路基板)によりPTPデータに変換される。したがって、変換されたデータは、受信器部分において最後のコンポーネントである端末コンポーネント(400)に供給される。
【0020】
この実施形態に加えて、PPS/PPS Plus stringの出力を与える原子時計(100)は、システムにおいて使用され得る。そのような実施形態において、送信器メカニズム(210)は、送信器メカニズム(210)により受信されたPPS信号の切り替えのみを実行する。
【0021】
図2は、本発明の位相および周波数同期を提供するシステムの別の実施形態の概略図である。当該実施形態において、図1に示される実施形態とは異なり、PTP‐PSPの変換およびDTMプロトコルにおける切り替えは、このために設計された内部PCB(プリント回路基板)の追加の代わりに、別のデバイスにより行なわれる。この実施形態において、システムの初期部分の送信器メカニズム(210)は、ToDおよびPTPデータをPPS信号に変換する一次変換器デバイス(211)と、DTMプロトコルによりPPS信号を切り替える一次スイッチングデバイス(212)とを備える。この実施形態において、同様に、システムの他の部分に提供された受信器メカニズム(220)は、DTMプロトコルによりPPS信号を切り替える二次スイッチングデバイス(222)と、PPS信号をToDおよびPTHデータに変換して端末コンポーネント(400)に送信する二次変換器デバイス(221)とを備える。見られるように、本発明に従って開示されるシステムにおいて、PTP‐PPSの変換およびDTMプロトコルによる切り替えの動作は、統合された単一デバイスによって実行され得るだけでなく、各動作は、別のデバイスにより行われることも可能である。
【0022】
図3は、本発明の位相および周波数同期を提供するシステムの試験結果の図である。見られるように、関連技術において使用可能なシステムと比較して少なくとも10倍高い効率が得られる。
[参考文献]
[1] Synchronization challenges in packet-based Cloud-RAN fronthaul for mobile networks
公開:2015 IEEE International Conference on Communication Workshop (ICCW)
著者:Aleksandra Checko, Anders Christian Juul, Henrik L.Christiansen, Michael S.Berger.
[2] Synchronization Requirements for 5G:An Overview of Standards or Specifications for Cellular Networks
公開:IEEE Vehicular Technology Magazine
著者:Jia-Chin Lin
[3] A Case for Assisted Partial Timing Support Using Precision Timing Protocol Packet Synchronization for LTE-A
公開:2014,IEEE
著者:Tim Pearson and Kishan Shenoi
[4] The road to 5G: The inevitable growth of infrastructure cost
公開:2018 Mckinsey
著者:Grijpink, Alexandre Menard, Halldor Sigurdsson, Nemanja Vucevic
[5] Global Navigation Space Systems: Reliance and Vulnerabilities.
公開:2011, Royal Academy of Engineering
著者:Dr. Martyn Thomas
[6] The economic impact on the UK of a disruption to GNSS
公開:2017, London Economics
著者:Greg Sadlier, Rasmus Flytkjaerr, Farooq Sabri, Daniel Herr
[7] National Risk Estimate: Risks to United States Critical Infrastructure from Global Positioning System Disruptions Published: 2011, Department of Homeland Security
著者:Brandon D. Wales
[8] Performance Characterization of GNSS/IMU/DVL Integration under Real Maritime Jamming Conditions
公開:2018 MDPI, Basel, Switzerland
著者:Ralf Ziebold, Daniel Medina, Michailas Romanovas, Christoph Lass, Stefan Gewies
図1
図2
図3