(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-20
(45)【発行日】2022-09-29
(54)【発明の名称】車両制御装置及び車両制御方法
(51)【国際特許分類】
B60W 30/188 20120101AFI20220921BHJP
B60W 30/095 20120101ALI20220921BHJP
F02D 29/02 20060101ALI20220921BHJP
F02D 41/10 20060101ALI20220921BHJP
F02D 41/12 20060101ALI20220921BHJP
【FI】
B60W30/188
B60W30/095
F02D29/02 K
F02D41/10
F02D41/12
(21)【出願番号】P 2018005446
(22)【出願日】2018-01-17
【審査請求日】2020-12-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000000170
【氏名又は名称】いすゞ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100166006
【氏名又は名称】泉 通博
(74)【代理人】
【識別番号】100124084
【氏名又は名称】黒岩 久人
(74)【代理人】
【識別番号】100154070
【氏名又は名称】久恒 京範
(74)【代理人】
【識別番号】100153280
【氏名又は名称】寺川 賢祐
(72)【発明者】
【氏名】伏江 俊祐
【審査官】齊藤 彬
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-280489(JP,A)
【文献】特開2015-154666(JP,A)
【文献】特開2016-200093(JP,A)
【文献】特開2018-005808(JP,A)
【文献】特開2014-196022(JP,A)
【文献】特開2015-082230(JP,A)
【文献】特開2004-050875(JP,A)
【文献】特開2016-013807(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 30/188
B60W 30/09
F02D 29/02
F02D 41/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両と前記車両の進行方向に存在する障害物との距離を特定する特定部と、
前記特定部により特定された前記距離が第1距離より短い場合、前記車両の発進を抑制する発進抑制部と、
前記特定部により特定された前記距離が
、前記第1距離より長く、
かつ前記第1距離よりも長い第2距離より短い場合、
前記車両が発進したら前記距離が前記第1距離よりも短くなる蓋然性が高いと予測する予測部と、
前記距離が前記第2距離以上である場合には前記車両の発進を補助し、
前記車両の発進が抑制されている場合には前記車両の発進を補助しないように制御し、前記予測部により前記車両が発進したら前記距離が前記第1距離よりも短くなる蓋然性が高いと予測された場合
には前記距離が短いほど前記車両の発進の補助量を小さくする発進補助部と、
を備える車両制御装置。
【請求項2】
前記発進補助部は、前記予測部による
予測状況にかかわらず、エンジンの回転数を所定の回転数以上に維持する、
請求項
1に記載の車両制御装置。
【請求項3】
前記予測部は、前記障害物との距離が増加しているときに、
前記距離が前記第1距離よりも短くなる蓋然性が低いと予測する、
請求項1
又は2に記載の車両制御装置。
【請求項4】
前記車両の速度を特定する速度特定部をさらに備え、
前記予測部は、前記車両の速度が低下しているとともに、前記障害物との距離が減少している場合に、
前記距離が前記第1距離よりも短くなる蓋然性が高いと予測する、
請求項1から
3のいずれか一項に記載の車両制御装置。
【請求項5】
コンピュータが実行する、
車両と前記車両の進行方向に存在する障害物との距離を特定するステップと、
特定された前記距離が第1距離より短い場合、前記車両の発進を抑制するステップと、
特定された前記距離が
、前記第1距離より長く、
かつ前記第1距離よりも長い第2距離より短い場合、
前記車両が発進したら前記距離が前記第1距離よりも短くなる蓋然性が高いと予測するステップと、
前記距離が前記第2距離以上である場合には前記車両の発進を補助
するステップと、
前記車両の発進が抑制されている場合には前記車両の発進を補助しないように制御するステップと、
前記車両が発進したら前記距離が前記第1距離よりも短くなる蓋然性が高いと予測された場合
には前記距離が短いほど前記車両の発進の補助量を小さくするステップと、
を有する車両制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両制御装置及び車両制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の進行方向において障害物の存在が認識された場合に、車両の発進を規制する技術が開示されている(例えば、特許文献1を参照)。また、車両の発進時に、車両の発進を補助する技術が開示されている(例えば、特許文献2を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2008-126953号公報
【文献】特開2016-200093号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
車両の発進を抑制する機能と車両の発進を補助する機能とを有する車両は、それぞれの機能に関する制御が相互に干渉することがある。例えば、車両と障害物との距離が短い状態で車両が発進しようする場合、車両の発進を抑制すべきであっても、車両の発進補助が行われてしまうことで、発進を抑制する機能の効果が低下してしまう場合があった。
【0005】
そこで、本開示はこれらの点に鑑みてなされたものであり、車両の発進を規制する制御と、車両の発進を補助する制御との干渉を抑止できる車両制御装置及び車両制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の第1の態様に係る車両制御装置は、車両と前記車両の進行方向に存在する障害物との距離を特定する特定部と、前記特定部により特定された前記距離が第1距離より短い場合、前記車両の発進を抑制する発進抑制部と、前記特定部により特定された前記距離が前記第1距離より長く、第2距離より短い場合、前記発進抑制部が作動すると予測する予測部と、前記車両の発進を補助し、前記予測部により前記発進抑制部が作動すると予測された場合、前記発進抑制部が作動すると予測されない場合に比べて、前記車両の発進の補助量を小さくする発進補助部と、を備える。
【0007】
前記発進補助部は、前記発進抑制部が作動すると予測された場合、前記車両の発進を補助しないように制御してもよい。
前記発進補助部は、前記障害物との距離が短いほど前記補助量を小さくしてもよい。
前記発進補助部は、前記予測部による前記発進抑制部の作動の予測状況にかかわらず、エンジンの回転数を所定の回転数以上に維持してもよい。
前記予測部は、前記障害物との距離が増加しているときに、前記発進抑制部が動作しないと予測してもよい。
【0008】
前記車両制御装置は、前記車両の速度を特定する速度特定部をさらに備え、前記予測部は、前記車両の速度が低下しているとともに、前記障害物との距離が減少している場合に、前記発進抑制部が作動すると予測してもよい。
【0009】
本開示の第2の態様に係る車両制御方法は、コンピュータが実行する、車両と前記車両の進行方向に存在する障害物との距離を特定するステップと、特定された前記距離が第1距離より短い場合、前記車両の発進を抑制するステップと、特定された前記距離が前記第1距離より長く、第2距離より短い場合、前記車両の発進を抑制すると予測するステップと、前記車両の発進を補助し、前記車両の発進を抑制すると予測された場合、前記車両の発進を抑制すると予測されない場合に比べて、前記車両の発進の補助量を小さくするステップと、を有する。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、車両の発進を規制する制御と、車両の発進を補助する制御との干渉を抑止できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図2】車両制御装置が実行する処理の流れを示すフローチャートである。
【
図4】第2の実施形態に係る車両の機能構成を示す図である。
【
図5】第2の実施形態に係る発進抑制予測処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<第1の実施形態>
[車両制御装置の概要]
第1の実施形態に係る車両制御装置は、車両の発進を補助する機能と、進行方向に障害物が存在するときに車両の発進を抑制する機能とを備える。
【0013】
車両制御装置は、車両が発進しようとする場合に車両の進行方向に存在する障害物に車両が衝突することを抑止するために、車両と障害物との距離を特定し、特定した距離が第1距離より短いとき、車両の発進を抑制する。また、車両制御装置は、車両の発進を抑制している場合には、車両の発進を補助しないように制御する。
【0014】
ところで、車両と障害物との距離が第1距離よりも長い状態で発進したとしても、車両が発進した直後に、車両と障害物との距離が第1距離よりも短くなってしまうと、車両の発進が抑制される可能性が高い。この場合において、車両の発進を補助していると、車両の発進を規制する制御と、車両の発進を補助する制御とが干渉するおそれがある。このため、車両制御装置は、特定された距離が第1距離より長く、第2距離より短い場合、車両の発進を抑制すると予測し、車両の発進を抑制すると予測した場合に車両の発進を補助しないように制御する。これにより、車両制御装置は、車両の発進を補助する機能と、車両の発進を抑制する機能との相互の制御干渉を抑止できる。
【0015】
[車両制御装置1の機能構成]
図1は、車両Vの機能構成を示す図である。車両Vは、車両制御装置1と、エンジン2と、ブレーキ3と、測距センサ4とを備える。エンジン2は、本実施形態においてはディーゼルエンジンであることを想定しているが、ガソリンエンジンであってもよい。ブレーキ3は、例えば、車両の各車輪に設けられたディスクブレーキであるが、ドラムブレーキであってもよい。
【0016】
測距センサ4は、測距センサ4から対象物までの距離を検知するセンサである。測距センサ4は、例えば、超音波距離センサ、レーダー、LIDAR(Laser Imaging Detection and Ranging)、ステレオカメラであるが、これに限らない。なお、車両Vは、複数の測距センサ4を備えていてもよい。例えば、車両Vは、車両Vの前方と車両Vの後方とに測距センサ4を備える。測距センサ4は、車両制御装置1の制御に従って、車両Vの進行方向に存在する対象物までの距離を検知し、検知した距離を示す情報を車両制御装置1に出力する。
【0017】
車両制御装置1は、記憶部11と、制御部12と、エンジンECU13とを備える。
【0018】
記憶部11は、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)及びハードディスク等の記憶媒体を含む。記憶部11は、制御部12が実行するプログラムを記憶する。
【0019】
制御部12は、例えばCPU(Central Processing Unit)であり、先進運転支援システム(ADAS(Advanced driver-assistance systems))用のECU(Electronic Control Unit)である。制御部12は、例えば、車両Vの運転席近傍に設置されている。制御部12は、記憶部11に記憶されたプログラムを実行することにより、距離特定部121、発進抑制部122、及び予測部123として機能する。
【0020】
距離特定部121は、車両Vと車両Vの進行方向に存在する障害物との距離を特定する。具体的には、距離特定部121は、測距センサ4から出力された距離を示す情報に基づいて、車両Vと障害物との距離を特定する。障害物は、例えば、車両の進行方向に存在する車両、人、壁、又は車両の走行が困難な段差である。距離特定部121は、特定した距離を発進抑制部122及び予測部123に出力する。
【0021】
発進抑制部122は、距離特定部121により特定された距離が第1距離より短い場合、ブレーキ3を作動させて車両Vの発進を抑制する。第1距離は、車両Vが走行を継続すると車両Vの進行方向に存在する障害物に車両Vが衝突する可能性が高い発進抑制距離である。発進抑制距離の具体的な値は、車両の重量、エンジン2及びブレーキ3の性能などにより適宜定めればよいが、例えば4mである。
【0022】
発進抑制部122は、車両Vと障害物との距離が第1距離より短い場合、車両Vの発進を抑制していることを示す情報をエンジンECU13に送信する。例えば、発進抑制部122は、車両Vと障害物との距離が第1距離より短い場合、車両Vの発進を抑制していることを示す発進抑制フラグをONにする。そして、発進抑制部122は、発進抑制フラグがONであることを示す情報をエンジンECU13に出力する。
【0023】
予測部123は、距離特定部121により特定された距離が第1距離より長く、第2距離より短い場合、発進抑制部122が作動すると予測する。第2距離は、車両Vが発進した後に、車両Vと障害物との距離が第1距離よりも短くなる可能性が高い危険距離である。危険距離の具体的な値は、車両Vの重量、エンジン2及びブレーキ3の性能などにより適宜定めればよいが、例えば10mである。
【0024】
予測部123は、発進抑制部122が作動すると予測すると、車両Vの発進が抑制されることが予測されたことを示す情報をエンジンECU13に送信する。例えば、予測部123は、発進抑制部122が作動すると予測すると、発進抑制部122が作動すると予測したことを示す発進抑制予測フラグをONにする。そして、予測部123は、発進抑制予測フラグがONであることを示す情報をエンジンECU13に出力する。
【0025】
エンジンECU13は、エンジン2が設置されるエンジンルーム内又は車室内に設置されているエンジン用のECUである。エンジンECU13は、車両Vの発進を補助するようにエンジン2を制御する発進補助部として機能する。エンジンECU13は、例えば、車両Vが発進しようとする場合、エンジン2の回転数を上昇させることにより、車両Vの発進を補助する。エンジンECU13は、車両Vが発進しようとする場合、エンジン2内のシリンダに供給する燃料の量を増加させてもよい。なお、エンジンECU13は、ドライバーにより車両Vのアクセルが踏み込まれると、ドライバーが車両Vを発進させる意思があるとみなし、車両Vが発進しようとしていると判定する。
【0026】
また、エンジンECU13は、発進抑制部122が作動している場合、車両Vの発進を補助しないように制御する。例えば、エンジンECU13は、受信した発進抑制フラグの値を示す情報を、エンジンECU13が参照可能な記憶部に一時的に記憶する。発進抑制フラグの値の初期値はOFFである。エンジンECU13は、一時的に記憶されている発振抑制フラグの値がONである場合に、車両Vの発進を補助しないように制御する。
【0027】
また、エンジンECU13は、予測部123により発進抑制部122が作動すると予測された場合、発進抑制部122が作動すると予測されない場合に比べて、車両Vの発進の補助量を小さくする。例えば、エンジンECU13は、受信した発進抑制予測フラグの値を示す情報を、エンジンECU13が参照可能な記憶部に一時的に記憶する。発進抑制予測フラグの値の初期値はOFFである。エンジンECU13は、一時的に記憶されている発振抑制予測フラグの値がONである場合に、車両Vの発進を補助しないように制御する。
【0028】
例えば、エンジンECU13は、発進抑制部122が作動すると予測された場合、車両Vの発進を補助しないようにエンジン2を制御する。具体的には、エンジンECU13は、エンジン2の回転数を上昇させないようにエンジン2を制御する。なお、エンジンECU13は、エンジン2内のシリンダに供給する燃料の量を増加させないようにエンジン2を制御してもよい。
【0029】
また、エンジンECU13は、車両Vと障害物との距離が短いほど補助量を小さくしてもよい。例えば、エンジンECU13は、車両Vと障害物との距離が第1距離以下である場合に車両Vの発進を補助しないように制御し、車両Vと障害物との距離が第2距離以上であるとき最大の補助量となるように補助量を変更する。具体的には、エンジンECU13は、車両Vと障害物との距離が短いほど、エンジン2の回転数を減少させる。また、エンジンECU13は、車両Vと障害物との距離が短いほど、エンジン2内のシリンダに供給する燃料の量を減少させてもよい。
【0030】
なお、エンジンECU13は、予測部123による発進抑制部122の作動の予測状況にかかわらず、エンジン2の回転数を所定の回転数以上に維持してもよい。所定の回転数は、エンジン2が動作し続けるために必要な回転数である。動作し続けるために必要な回転数は、例えばディーゼルエンジンの場合であれば700rpmである。このようにすることで、エンジンECU13は、エンジン2の回転数が減少しすぎてエンジン2が停止してしまうことを抑制できる。
【0031】
[車両制御装置1が実行する処理]
以下、車両制御装置1が実行する処理の流れについて、
図2及び
図3を参照しながら説明する。
図2は、車両制御装置1が実行する処理の流れを示すフローチャートである。
図2に示すフローチャートは、所定時間(例えば、50ミリ秒)おきに実行される。
【0032】
まず、距離特定部121は、測距センサ4から受信した情報に基づいて車両Vと障害物との距離を特定する(ステップS1)。続いて、発進抑制部122は、距離特定部121が特定した距離が第1距離より短いか否かを判定する(ステップS2)。発進抑制部122は、距離特定部121が特定した距離が第1距離より短いと判定すると(ステップS2でYes)、車両Vの発進を抑制するようにブレーキ3を制御する(ステップS3)。そして、発進抑制部122は、車両Vの発進を抑制していることを示す発進抑制フラグをONにする(ステップS4)。発進抑制部122は、距離特定部121が特定した距離が第1距離以上であると判定すると(ステップS2でNo)、発進抑制フラグをOFFにする(ステップS5)。
【0033】
次に、予測部123は、発進抑制部122が車両Vの発進を抑制するか否かを予測する発進抑制予測処理を実行する。
図3は、発進抑制予測処理のフローチャートである。まず、予測部123は、距離特定部121が特定した距離が第1距離より長いか否かを判定する(ステップS51)。予測部123は、距離特定部121が特定した距離が第1距離より長い判定すると(ステップS51でYes)、第2距離より短いか否かを判定する(ステップS52)。予測部123は、距離特定部121が特定した距離が第2距離より短いと判定すると(ステップS52でYes)、発進抑制部122が作動すると予測したことを示す発進抑制予測フラグをONにする(ステップS53)。
【0034】
予測部123は、距離特定部121が特定した距離が第1距離以下であると判定する(ステップS51でNo)、又は距離が第2距離以上であると判定すると(ステップS52でNo)、発進抑制予測フラグをOFFにする(ステップS54)。以上で発進抑制予測処理を終了し、
図2の車両Vが発進しようとするときの処理に戻る。なお、発進抑制部122が実行するステップS2からステップS5までの処理と、予測部123が実行する発進抑制予測処理との実行順序は逆になってもよい。また、発進抑制部122が実行するステップS2からステップS5までの処理と、予測部123が実行する発進抑制予測処理とは並列に実行されてもよい。
【0035】
発進抑制予測処理が終了すると、エンジンECU13は、車両Vの発進を補助する発進補助タイミングか否かを判定する(ステップS7)。例えば、エンジンECU13は、ドライバーにより車両Vのアクセルが踏み込まれると、車両Vが発進しようとしていると判定し、車両Vの発進補助タイミングであると判定する。エンジンECU13は、発進補助タイミングではないと判定すると(ステップS7でNo)、本フローチャートに係る処理を終了する。エンジンECU13は、発進補助タイミングであると判定すると(ステップS7でYes)、発進抑制フラグがONか否かを判定する(ステップS8)。
【0036】
エンジンECU13は、発進抑制フラグがONであると判定すると(ステップS8でYes)、車両Vの発進を補助しない(ステップS11)。エンジンECU13は、発進抑制フラグがOFFであると判定すると(ステップS8でNo)、発進抑制予測フラグがONか否かを判定する(ステップS9)。エンジンECU13は、発進抑制予測フラグがONであると判定すると(ステップS9でYes)、車両Vの発進を補助しない(ステップS11)。エンジンECU13は、発進抑制予測フラグがOFFであると判定すると(ステップS9でNo)、車両Vの発進を補助する(ステップS10)。
【0037】
(変形例)
以上の説明においては、発進抑制部122がブレーキ3を制御することにより車両Vの発進を抑制した。これに限らず、エンジンECU13が車両Vの発進を抑制してもよい。例えば、エンジンECU13は、発振抑制フラグの値がONである場合、エンジン2の回転数を減少させることにより、車両Vの発進を抑制する。また、エンジンECU13は、発振抑制フラグの値がONである場合、エンジン2内のシリンダに供給する燃料の量を減少させることにより、車両Vの発進を抑制してもよい。
【0038】
[第1の実施形態に係る車両制御装置1の効果]
以上説明したように、第1の実施形態に係る車両制御装置1は、車両Vが発進しようとする場合に、車両Vと障害物との距離を特定する。車両制御装置1は、特定した距離が第1距離より短いとき、車両Vの発進を抑制し、車両Vの発進を補助しないように制御する。また、車両制御装置1は、特定した距離が第1距離より長く、第2距離より短い場合、車両Vの発進を抑制すると予測し、車両Vの発進を補助しないように制御する。このようにすることで、車両制御装置1は、車両Vの発進を補助する機能と、車両Vの発進を抑制する機能との相互の制御干渉を抑止できる。
【0039】
<第2の実施形態>
予測部123は、実際に発進抑制部122が車両Vの発進を抑制する場合に、発進抑制部122が動作すると予測するのが好ましい。例えば、車両Vと障害物との距離が第2距離より短い場合において、車両Vと障害物との距離が増加するとき、発進抑制部122が動作する可能性は低い。また、車両Vが障害物に近づいて停止する場合、発進抑制部122が動作する可能性が高い。そこで、第2の実施形態に係る車両制御装置1は、車両Vと障害物との距離と、車両Vの速度とに基づいて、発進抑制部122が動作するか否かを予測する。
【0040】
図4は、第2の実施形態に係る車両Vの機能構成を示す図である。第2の実施形態に係る車両Vは、第1の実施形態に係る車両Vの構成に加え、速度センサ5を備える。また、第2の実施形態に係る車両制御装置1の制御部12は、記憶部11に記憶されたプログラムを実行することにより、車両Vの速度を特定する速度特定部124として機能する。
【0041】
速度センサ5は、車両Vの速度を検知するセンサである。速度センサ5は、検知した車両Vの速度を示す速度情報を車両制御装置1に出力する。速度特定部124は、速度センサ5から速度情報に基づいて、車両Vの速度を特定する。速度特定部124は、特定した車両Vの速度を予測部123に出力する。
【0042】
予測部123は、車両Vと障害物との距離が第2距離より短い場合において、車両Vと障害物との距離が増加しているときに、発進抑制部122が動作しないと予測する。また、予測部123は、速度特定部124が特定した車両Vの速度が低下しているとともに、車両Vと障害物との距離が減少している場合に、発進抑制部122が作動すると予測してもよい。
【0043】
具体的には、まず、予測部123は、距離特定部121が特定した距離と、速度特定部124が特定した速度とを記憶部11に記憶させる。次に、予測部123は、距離特定部121が新たに特定した距離が記憶部11に記憶されている距離よりも増加したか否かを判定する。予測部123は、新たに特定した距離が、記憶されている距離よりも増加したと判定すると、発進抑制部122が動作しないと予測する。予測部123は、新たに特定した距離が、記憶されている距離より減少したと判定すると、速度特定部124が新たに特定した速度が記憶部11に記憶されている速度よりも低いか否かを判定する。予測部123は、新たに特定した速度が、記憶されている速度よりも低いと判定すると、発進抑制部122が作動すると予測する。
【0044】
以下、第2の実施形態に係る予測部123が実行する発進抑制予測処理について説明する。なお、車両制御装置1が実行する処理は、第1の実施形態においてすでに説明した処理と同様なので説明を省略する。
【0045】
図5は、第2の実施形態に係る発進抑制予測処理のフローチャートである。
図5のフローチャートにおいて、ステップS51及びステップS52は、
図3のステップS51及びステップS52と同様なので説明を省略する。
【0046】
予測部123は、距離特定部121が特定した車両Vと障害物との距離が、第2距離より短いと判定すると(ステップS52でYes)、記憶部11を参照して、車両Vと障害物との距離が増加しているか否かを判定する(ステップS55)。予測部123は、車両Vと障害物との距離が増加していないと判定すると(ステップS55でNo)、速度特定部124が特定した車両Vの速度を取得する(ステップS56)。予測部123は、取得した車両Vの速度が低下しているか否かを判定する(ステップS57)。
【0047】
予測部123は、車両Vの速度が低下していると判定すると(ステップS57でYes)、発進抑制予測フラグをONにする(ステップS58)。予測部123は、車両Vと障害物との距離が増加していると判定した場合(ステップS55でYes)、又は車両Vの速度が低下していないと判定した場合(ステップS57でNo)、発進抑制予測フラグをOFFにする(ステップS59)。
【0048】
[第2の実施形態に係る車両制御装置1の効果]
以上説明したように、第2の実施形態に係る車両制御装置1は、車両Vと障害物との距離が第2距離より短い場合であっても、車両Vと障害物との距離が増加している場合、発進抑制部122が動作しないと予測する。また、車両制御装置1は、車両Vの速度を特定し、車両Vの速度が低下しているとともに、車両Vと障害物との距離が減少している場合に、発進抑制部122が動作すると予測する。このように、車両制御装置1は、発進抑制部122が動作する可能性が低い場合において発進抑制部122が動作しないと予測し、発進抑制部122が動作する可能性が高い場合において発進抑制部122が動作すると予測する。そのため、車両制御装置1は、車両Vと障害物とが衝突する可能性が低い場合において発進を補助し、車両Vが障害物と衝突する可能性が高い場合において発進を抑制するように制御することができる。
【0049】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。例えば、車両制御装置1は、ブレーキ3を制御するブレーキ用ECUを備えていてもよい。この場合、発進抑制部122は、発進抑制フラグがONであることを示す情報をブレーキ用ECUに送信する。ブレーキ用ECUは、発進抑制フラグがONである間、車両Vの発進を抑制するようにブレーキ3を制御する。また、制御部12は、記憶部11に記憶されたプログラムを実行することによって、エンジンECU13として機能してもよい。また、装置の分散・統合の具体的な実施の形態は、以上の実施の形態に限られず、その全部又は一部について、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。また、複数の実施の形態の任意の組み合わせによって生じる新たな実施の形態も、本発明の実施の形態に含まれる。組み合わせによって生じる新たな実施の形態の効果は、もとの実施の形態の効果を合わせ持つ。
【符号の説明】
【0050】
1 車両制御装置
2 エンジン
3 ブレーキ
4 測距センサ
5 速度センサ
11 記憶部
12 制御部
13 エンジンECU
121 距離特定部
122 発進抑制部
123 予測部
124 速度特定部
V 車両