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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-20
(45)【発行日】2022-09-29
(54)【発明の名称】タンク取付構造
(51)【国際特許分類】
   B60K 15/067 20060101AFI20220921BHJP
【FI】
B60K15/067
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2018081849
(22)【出願日】2018-04-20
(65)【公開番号】P2019188927
(43)【公開日】2019-10-31
【審査請求日】2021-03-31
(73)【特許権者】
【識別番号】000000170
【氏名又は名称】いすゞ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100166006
【弁理士】
【氏名又は名称】泉 通博
(72)【発明者】
【氏名】山崎 真也
(72)【発明者】
【氏名】栗田 昌徳
【審査官】福田 信成
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-035932(JP,A)
【文献】実開平05-003623(JP,U)
【文献】特開平05-096962(JP,A)
【文献】実開平04-136924(JP,U)
【文献】実開昭58-093521(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 15/067
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タンクを支持するようにベース部材に取り付けられるタンク支持部であって、第1孔部と、該第1孔部につながるとともに該第1孔部と少なくとも大きさが異なる第2孔部とを有する支持孔部が設けられている、タンク支持部と、
前記タンク支持部の前記支持孔部に係合可能に挿入される軸部材であって、前記支持孔部の前記第1孔部において前記支持孔部へ抜き差し可能であり、前記支持孔部の前記第2孔部において前記支持孔部へ係合状態になる、軸部材と、
前記タンク支持部との間で前記タンクを固定するように前記タンク支持部に取り付けられる帯状のバンドであって、前記タンク支持部に前記軸部材を介して係合状態にされる第1端部と、前記タンク支持部に取り付けられる第2端部と有する、バンドと
を備え、
前記タンク支持部は、前記第1孔部と前記第2孔部との間での前記軸部材の移動経路に突き出るように配置されたL字状の弾性変形可能な突起部を有し、
前記突起部は、
前記軸部材が前記第1孔部から前記第2孔部へ移動する際には、前記軸部材から所定の力を受けることで突出状態から前記移動経路外へ退避する退避状態へ遷移し、
前記軸部材が前記第2孔部から前記第1孔部へ移動する際には、前記突出状態を維持して前記軸部材の前記第2孔部への移動を規制する、
タンク取付構造。
【請求項2】
前記タンク支持部は、前記バンドの前記第1端部を前記タンク支持部の前記支持孔部近傍に位置付けるための移動制限部を更に有する、請求項に記載のタンク取付構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、タンクを取り付けるためのタンク取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料タンクの取付構造の一例が、特許文献1に開示されている。特許文献1のタンク取付構造では、タンクをタンク支持部に載置し、そのタンクをタンク支持部と帯状のバンドとで挟むようにバンドを締め付けることで、タンクの取付けが行われる。当該構造では、まず、タンク支持部に燃料タンクが支持された状態で、バンドの一端部をタンク支持部の挿通孔からその内部に挿入させる。次に、タンク支持部の側壁部の大径孔からピン部材を挿入することで、ピン部材をタンク支持部内のバンドの輪状の一端部と係合させる。この状態で、ピン部材をタンク支持部の前述の大径孔から小径孔に位置させるようにピン部材をスライドさせる。これにより、ナット等を用いることなく、バンドの一端部はタンク支持部の側壁部間に支持される。こうして一端部がタンク支持部に支持されたバンドとタンク支持部との間に燃料タンクを挟んだ状態で、バンドの他端部は、バンドが張った状態になるように、タンク支持部にナット等により締められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-35932号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記特許文献1の取付構造では、タンクの取付け作業者は先ずタンク支持部にタンクを載置し、その後、タンクの上奥側に手を伸ばしてバンドの一端部をタンク支持部に係合させる必要がある。そして、その係合をさせた状態で、バンドの他端部の取付作業が行われる。このバンドの取付作業時、バンドを引っ張る力が弱くなってバンドが緩み、ピン部材が小径孔から大径孔に移動する可能性がある。このようなピン部材の移動は、バンドの他端部の取付作業時に、ピン部材がタンク支持部から外れる可能性を高める。
【0005】
本開示の技術は、タンクの取付けに際して、タンクが載置されるタンク支持部へのバンドの取付け作業性を改善することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の技術は、タンクを支持するようにベース部材に取り付けられるタンク支持部であって、第1孔部と、該第1孔部につながるとともに該第1孔部と少なくとも大きさが異なる第2孔部とを有する支持孔部が設けられている、タンク支持部と、前記タンク支持部の前記支持孔部に係合可能に挿入される軸部材であって、前記支持孔部の前記第1孔部において前記支持孔部へ抜き差し可能であり、前記支持孔部の前記第2孔部において前記支持孔部へ係合状態になる、軸部材と、前記タンク支持部との間で前記タンクを固定するように前記タンク支持部に取り付けられる帯状のバンドであって、前記タンク支持部に前記軸部材を介して係合状態にされる第1端部と、前記タンク支持部に取り付けられる第2端部と有する、バンドとを備え、前記タンク支持部は、前記第1孔部と前記第2孔部との間での前記軸部材の自由な移動を妨げる移動妨げ部を有する、タンク取付構造を提供する。
【0007】
好ましくは、前記移動妨げ部は弾性変形可能に構成されていて、前記支持孔部における前記第1孔部と前記第2孔部との間での前記軸部材の移動経路に突き出るように構成されている。この場合、前記軸部材を介して所定の力が前記移動妨げ部に作用することで、前記移動妨げ部は、前記支持孔部での前記軸部材の前記移動経路から退避した状態になるとよい。
【0008】
更に好ましくは、前記タンク支持部は、前記バンドの前記第1端部を前記タンク支持部の前記支持孔部近傍に位置付けるための移動制限部を更に有する。
【発明の効果】
【0009】
本開示の技術によれば、タンクの取付けに際して、タンクが載置されるタンク支持部へのバンドの取付け作業性を改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本実施形態に係るタンク取付構造が適用されて、取り付けられたタンクシステム及びその周囲の斜視図である。
図2図1のII-II線断面図である。
図3図2のIII-III線断面図である。
図4】固定バンドの一端部に関する、分解斜視図である。
図5】ピン部材を表した図である。
図6】支持ブラケットの係合孔部の説明図である。
図7】支持ブラケットにおける移動制限部材の斜視図である。
図8図7の移動制限部材にピン部材を配置したところを示す図である。
図9】支持ブラケット内の、固定バンドの一端部と、移動制限部材との関係を説明するための図である。
図10】ピン部材の係合孔部への係合を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面に基づいて、本実施形態に係るタンク取付構造について説明する。同一の部品には同一の符号を付してあり、それらの名称および機能も同じである。したがって、それらについての詳細な説明は繰返さない。
【0012】
図1は、本実施形態に係るタンク取付構造Sが適用されて、車体フレーム1に取り付けられたタンクシステム10、及び、その周囲の模式的な斜視図である。図2は、図1のII-II線断面図である。
【0013】
図1における車体フレーム1は、ここではトラック等のキャブオーバ型車両の車体骨格フレームである。車体フレーム1は、車両前後方向に延びる左右一対のサイドメンバ3(図1では一方のサイドメンバ3のみを図示)と、サイドメンバ3間において車幅方向に延在する複数のクロスメンバ5とを備えている。サイドメンバ3は、断面略U字状に形成されている(図2参照)。
【0014】
本実施形態では、一方のサイドメンバ3に、タンクシステム10が取り付けられている。サイドメンバ3はベース部材に相当する。なお、タンクシステム10は、左右何れのサイドメンバ3に取り付けられてもよく、いずれのサイドメンバ3に取り付けられるかについては車両に応じて設定され得る。なお、サイドメンバ3以外の部材にタンクシステム10つまり燃料タンク12が取り付け固定されてもよい。
【0015】
タンクシステム10は、燃料タンク12と、タンク取付部材14とを備える。タンク取付部材14に、本実施形態に係るタンク取付構造Sが適用されている。タンク取付部材14は、一対の支持ブラケット16と、支持ブラケット16毎に用いられるピン部材18と、同様に、支持ブラケット16毎に用いられる帯状の固定バンド20とを含む。支持ブラケット16はタンク支持部に相当し、ピン部材18は軸部材に相当する。なお、タンク取付部材14は、図1に示すように、支持ブラケット16、ピン部材18及び固定バンド20等の組み合わせ14A、14Bを2つ備える。一方の組み合わせ14Aは、他方の組み合わせ14Bと概ね同じ構成を備える。そこで、以下では、主として、一方の組み合わせ14Aをタンク取付部材14の代表として説明し、他方の組み合わせ14Bの説明については省略する。
【0016】
まず、燃料タンク12について説明する。燃料タンク12は、略方形箱体状のタンク本体12Aと、タンク本体12Aに設けられて燃料を給油するための給油口12Bとを備えている。燃料タンク12は、タンク本体12Aの長手方向が車両前後方向となるように支持ブラケット16上に燃料タンク12を載置させ、その燃料タンク12の外面に沿って固定バンド20を架け渡して(所定張力以上の張力がかかって)張った状態で支持ブラケット16に取り付けることで、車体フレーム1に固定される。
【0017】
サイドメンバ3に燃料タンク12を取り付けるために、サイドメンバ3に支持ブラケット16が固定される。一対の支持ブラケット16は、燃料タンク12のタンク本体12Aの車両前後方向の長さよりも短い間隔で互いに対して離してサイドメンバ3に取り付けられている(図1参照)。
【0018】
支持ブラケット16は、全体として略L字状に形成されている。支持ブラケット16は、燃料タンク12が載置されるつまり燃料タンク12を支持する支持部16Aを形成する。支持ブラケット16は、車体フレーム1に取り付けられた図1の状態で、上下方向に延びる縦支持部22と、車幅方向に延びる横支持部24とを備えている。横支持部24は縦支持部22の下方端から略水平方向つまり略車幅方向に延在するように設けられている。図1の取付状態の支持ブラケット16において、縦支持部22の外面22aと、横支持部24の上面24aとで主として支持部16Aが形成される。なお、図1及び図2に示すように縦支持部22が複数のボルト26等によりサイドメンバ3に固定されることで、支持ブラケット16は車体フレーム1のサイドメンバ3に固定されている。
【0019】
支持ブラケット16の縦支持部22は、断面略U字状である。図3に、図2におけるIII-III線断面図を示す。なお、図3では、ピン部材18、固定バンド20及びボルト26を省略している。支持ブラケット16の縦支持部22は、外面22aを有する外側壁部22bと、外側壁部22bの両端部のそれぞれからサイドメンバ3側に延びる側壁部22c、22dとを備える。そして、側壁部22c、22dから張り出す張出部22e、22fをボルト26で留めることで、支持ブラケット16はサイドメンバ3に固定されている。なお、支持ブラケット16は、複数の部材を互いに対して例えば溶接することで一体的な部材として構成されていてもよい。
【0020】
ここで、支持ブラケット16の縦支持部22の上側端部22´における分解斜視図(例えば組立前状態での斜視図)を図4に示す。なお、図4では、ピン部材18及び固定バンド20の一端部(第1端部)20Aも併せて示している。支持ブラケット16には、(図4に矢印A1で示すように)固定バンド20の一端部20Aを挿入するための挿通孔30が外側壁部22bの外面22aに形成されている。
【0021】
また、支持ブラケット16には、ピン部材18が係合可能に挿入される支持孔部32が2つの側壁部22c、22dにわたって形成されている。つまり、支持孔部32は、支持ブラケット16の内部の中空空間の一部を含むものである。支持孔部32における側壁部22c、22dの各々における孔形状及び大きさは同じである。そして、支持孔部32における側壁部22c、22dの各々における孔は、車両前後方向において、その位置が略一致するように、形成されている。特に断らない限り、側壁部22c、22dのうち図4において手前側の側壁部22cに関して支持孔部32を以下説明する。
【0022】
支持孔部32は、第1孔部32aと、第2孔部32bとを有する。第1孔部32aと第2孔部32bとはつながっていて、それらの大きさは異なる。第2孔部32bは、固定バンド20が張った状態で取り付けられるとき、固定バンド20の長手方向に沿う向きにおいて、第1孔部32aに対して位置付けられている。したがって、ここでは、第2孔部32bは、第1孔部32aから斜め上方にかつ外側に延びる。第1孔部32aと第2孔部32bとは形状及び大きさの点で相違するが、これらについては後述する。
【0023】
ここで、固定バンド20について説明する。固定バンド20は、薄い鉄鋼製のバンドとして構成されている。図4に示すように、固定バンド20の一端部20Aは輪状又は環状に、つまりループ状に形成されている。この一端部20Aは、折り返して溶接することで、そのような形状に形成されている。固定バンド20の幅20wは、支持ブラケット16の挿通孔30の幅30wよりも短い。したがって、固定バンド20の一端部20Aは、挿通孔30から支持ブラケット16内に挿入可能である。なお、固定バンド20の他端部(第2端部)20Bは、図2に示すように、ボルト及びナットで、支持ブラケット16の横支持部24に取付可能又は接続可能に構成されている。
【0024】
次に、ピン部材18を説明する。図5にピン部材18を示す。ピン部材18は、略円柱状の部材であり、軸線18Aを有する。ピン部材18は、上記支持孔部32への挿入先端となるピン先端部18bと、他端であるピン後端部18cと、それらの中間に延びるピン中間部18dと、ピン先端部18bとピン中間部18dとの間のピン係合部18eと、ピン後端部18cとピン中間部18dとの間のピン係合部18fとを有する。ピン先端部18b、ピン係合部18e、ピン中間部18d、ピン係合部18f、及び、ピン後端部18cのそれぞれは、軸線18Aを軸線として有する。ピン先端部18b及びピン中間部18dはそれぞれ、断面円形であり、支持孔部32の第1孔部32aを通過可能であるが第2孔部32bを通過できないように寸法付けされている。ピン係合部18e、18fはそれぞれ、断面円形であり、第1孔部32a及び第2孔部32bの両方を通過可能に寸法付けされている。ピン後端部18cは断面円形であり、第1孔部32a及び第2孔部32bの両方を通過できないように寸法付けされている。
【0025】
ここで、図2における側壁部22cの支持孔部32の拡大図を図6に示す。支持孔部32の第1孔部32aは円形の孔部であり、内径(つまり幅)D11を有する。支持孔部32の第2孔部32bは長孔であり、第1孔部32aを円形としたときの中心32cを通る線L1に沿って延びるように形成されている。図6において、線L1に直交する方向での第2孔部32bの幅W12は第1孔部32aの内径D11よりも小さい。そして、ピン部材18のピン先端部18b及びピン中間部18dの外径D21(図5参照)は、第1孔部32aの内径D11よりも小さいが、第2孔部32bの幅W12よりも大きい。ピン部材18のピン係合部18e、18fの外径D22は、第2孔部32bの幅W12よりも小さい。ピン部材18のピン後端部18cの外径D23は、第1孔部32aの内径D11よりも大きい。したがって、支持孔部32の第1孔部32aにおいて、ピン部材18は、ピン先端部18b側から、支持孔部32に抜き差し可能である。しかし、(図4に矢印A2で示すように)ピン部材18を支持孔部32の第1孔部32aに差し入れても、ピン後端部18cが第1孔部32bを区画形成する部分(支持ブラケット16の一部)の周囲に当たるので、支持孔部32をピン部材18は貫通して通り抜けることはできない。そして、ピン部材18におけるピン係合部18e、18f間の間隔、例えば図5の幅18wは、支持ブラケット16の側壁部22c、22d間の幅に対応する。したがって、ピン後端部18cが第1孔部32aの周囲に当たってピン部材18が支持孔部32に挿入状態(又は差込状態)にあるとき、ピン係合部18e、18fはそれぞれ側壁部22c、22dの支持孔部32に相当する部分に位置する。この状態で、ピン部材18を第1孔部32aから第2孔部32bに向けて動かすことで、ピン部材18が支持孔部32に係合状態になることは容易に理解されよう。なお、ピン中間部18dの軸線18A方向の幅は固定バンド20の幅20wに相当する。
【0026】
上記支持ブラケット16の挿通孔30に固定バンド20の一端部20Aを差し込んだ状態で、支持ブラケット16の支持孔部32にピン部材18を差し込むことで、ピン部材18のピン中間部18dはその一端部20Aの環状孔の内部に位置するようになる。これにより、固定バンド20の一端部20Aにピン部材18は係合状態になる。この状態で、上で説明したように、ピン部材18を支持孔部32の第1孔部32aから第2孔部32bに動かすことで、固定バンド20の一端部20Aは支持ブラケット16の縦支持部22に係合状態になる。この状態で、固定バンド20を支持ブラケット16上の燃料タンク12に掛け渡して固定バンド20の他端部20Bを支持ブラケットの横支持部24にボルト及びナットで取り付けて当該ナットを締め付けることで、固定バンド20を張った状態で取り付けることができる。しかし、この固定バンド20の締め付け作業に際して、その一端部20Aがピン部材18を介して支持孔部32の第2孔部32bにおいて支持ブラケット16に係合状態にあるときに、固定バンド20の他端部20Bの取付作業を行う場合、固定バンド20が緩むなどすることで、その一端部20Aを係合状態にするピン部材18が第1孔部32aに意図せず移動することは、固定バンド20の作業性に影響を与え得る。そこで、本実施形態では、支持ブラケット16に、ピン部材18の第1孔部32aと第2孔部32bとの間での自由な移動を妨げるための突起部50が設けられている。突起部50は、移動妨げ部に相当する。
【0027】
図3及び図4に示すように、支持ブラケット16内にL字状の移動制限部材52が設けられている。移動制限部材52を図7に示す。移動制限部材52は鉄鋼製板材を折り曲げ加工等することで作製された部材であるが、他の材料から他の方法で作製されてもよい。移動制限部材52は略L字状に形成されている。移動制限部材52は、図3に示すように、側壁部22c、22d間に、外側壁部22bから所定距離離して設けられている。ここでは、移動制限部材52は溶接により支持ブラケット16に固定され、支持ブラケット16の一部をなす。そして、移動制限部材52は、この固定状態で、外側壁部22bに対向する縦壁部52aと、縦壁部52aの下端部から延出する下側壁部52bとを備える。そして、下側壁部52bの縦壁部52aと反対側の端部から縦壁部52aに対向するように上記突起部50が延出する。この突起部50は、支持ブラケット16の側壁部22c、22dに下側壁部52bを介して取り付けられていて、側壁部22c、22dに固定されていない。したがって、突起部50は支持ブラケット16の内部で弾性変形可能である。突起部50は、2つの突起部50a、50bからなる。移動制限部材52にピン部材18を配置した図8から明らかなように、これら突起部50a、50bからなる突起部50は、ピン係合部18e、18fのそれぞれに対応する位置に延在するように形成されている。
【0028】
そして、移動制限部材52の縦壁部52a及び下側壁部52bは、支持ブラケット16の挿通孔30からその内部に挿入された固定バンド20の一端部20Aが支持孔部32近傍に位置付けられるように、例えば支持孔部32に対応する位置を大幅に超えた支持ブラケット16内の位置に位置することを防ぐように設けられている。したがって、移動制限部材52の縦壁部52a及び下側壁部52bは固定バンド20の一端部20Aを支持ブラケット16の支持孔部32近傍に位置付ける移動制限部として機能する。挿通孔30から支持ブラケット16内に挿入された固定バンド20の一端部20Aの状態を、図9に模式的に示す。図9に示すように、固定バンド20の一端部20Aは、支持ブラケット16内で移動制限部材52の縦壁部52a及び下側壁部52bに突き当たることで、支持孔部32近傍に、特に、支持孔部32に挿入されるピン部材18が係合し易い位置に位置付けられる。
【0029】
図9に示すように、固定バンド20の一端部20Aが支持ブラケット16内で移動制限部材52の縦壁部52a及び下側壁部52bに突き当たっている状態で、ピン部材18が支持孔部32に挿入される。これにより、前述の如く、一端部20Aにピン部材18が係合状態になる。この状態が図10(A)の状態である。図10は、支持ブラケット16の側壁部22cの外側からの、支持孔部32周囲の断面模式図である。
【0030】
図10(A)の状態では、ピン部材18は支持孔部32の第1孔部32aに位置している。この状態からピン部材18に係合状態にある固定バンド20をその一端部20A側からその他端側20Bに向けて引っ張ることで、又は、ピン部材18を第1孔部32aから第2孔部32bに動かすことで、ピン部材18は、第1孔部32aから第2孔部32b側へ動くようになる。このとき、図10(A)に示すように、弾性変形可能に構成されている突起部50は、支持孔部32における第1孔部32aと第2孔部32bとの間でのピン部材18の移動経路に突き出るように構成されている。つまり、突起部50は、第1孔部32aと第2孔部32bとの間でのピン部材18の移動を妨げる妨害状態にある。この状態で、ピン部材18を介して第1孔部32a側から第2孔部32b側への所定の力つまり突起部50が弾性変形するのに足りる力が突起部50に作用すると、突起部50は、図10(B)の状態から図10(C)の状態に、つまり弾性変形してピン部材18の移動経路から退避した退避状態になる。これにより、図10(D)に示すように、ピン部材18は支持孔部32の第2孔部32bに位置するようになる。このとき、突起部50はその弾性力で元の状態つまり妨害状態に戻っているので、仮に、固定バンド20が緩んでピン部材18が第2孔部32bにおいて図10(E)に示すように第1孔部32a側に移動してもピン部材18が第2孔部32b外に移動して万が一にも外れることは防止される。したがって、固定バンド20の一端部20Aを支持ブラケット16に安定的に係合状態にすることができ、その他端部20Bの取付作業性を高めることが可能になる。なお、突起部50は図10等から明らかなようにL字状に曲がっている。それ故、第2孔部32bにあるピン部材18から突起部50にある程度の力(第2の所定の力)が作用すると、突起部50は弾性変形して妨害状態から退避状態になり、よって、ピン部材18は第1孔部32aに移動可能になる。
【0031】
以上説明したように、本実施形態に係るタンク取付構造Sを適用した、突起部50を備える支持ブラケット16、ピン部材18及び固定バンド20を用いることで、燃料タンク12の取付け作業における固定バンド20の取付時、固定バンド20の一端部20Aを支持ブラケット16に安定的に係合状態に保つことができる。よって、固定バンド20の他端部20Bの取付作業性が高まる。
【0032】
上記実施形態では、突起部50は、ピン部材18のピン係合部18e、18fに対応付けられたが、ピン先端部18b、ピン後端部18c及びピン中間部18dのいずれと関係づけられてもよい。また、突起部50は1つの突起部のみから構成されてもよい。もちろん、突起部50は3つ以上設けられてもよい。
【0033】
また、上記突起部50は、移動制限部と一体的に設けられることに限定されない。つまり、移動制限部材52は、移動妨げ部に相当する部材と、移動制限部に相当する部材とに分けられてもよい。
【0034】
また、上記実施形態では、支持孔部32の第1孔部32aは円形の孔部であり、第2孔部32bは長孔部であったが、これにそれら孔部の形状は限定されない。例えば、第1孔部32aは矩形の孔部であってもよい。また、第2孔部32bは円形の孔部であってもよい。
【0035】
なお、本開示は、上述の実施形態に限定されるものではなく、それは本開示の趣旨を逸脱しない範囲で、適宜変形して実施することが可能である。例えば、上記実施形態では、タンク取付構造Sが適用されて取り付けられるタンクは燃料タンクであったが、燃料タンク以外のタンクの取付けに本開示の技術が適用されてもよい。
【符号の説明】
【0036】
10 タンクシステム
16 支持ブラケット(タンク支持部)
18 ピン部材(軸部材)
20 固定バンド
32 支持孔部
32a 第1孔部
32b 第2孔部
50 突起部(移動妨げ部)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10