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特許7143646RFID通信ユニット、RFID通信ユニットの制御方法、およびプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-20
(45)【発行日】2022-09-29
(54)【発明の名称】RFID通信ユニット、RFID通信ユニットの制御方法、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   G06K 17/00 20060101AFI20220921BHJP
   G05B 19/05 20060101ALI20220921BHJP
   H04B 1/59 20060101ALI20220921BHJP
   G06K 7/10 20060101ALI20220921BHJP
【FI】
G06K17/00 022
G05B19/05 L
H04B1/59
G06K7/10 100
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018122040
(22)【出願日】2018-06-27
(65)【公開番号】P2020004022
(43)【公開日】2020-01-09
【審査請求日】2020-12-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000002945
【氏名又は名称】オムロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100155712
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 尚
(72)【発明者】
【氏名】中野 善光
【審査官】三橋 竜太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-251630(JP,A)
【文献】特開2016-130995(JP,A)
【文献】特開2010-186390(JP,A)
【文献】国際公開第2012/169037(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06K 17/00
G05B 19/05
H04B 1/59
G06K 7/00-7/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上位のコントローラとの間で所定の通信周期で通信を行う上位通信制御部と、
RFタグとの間で無線通信によりデータの読み出しおよび書き込みの少なくともいずれか一方を行うRF通信制御部とを備え、
前記RF通信制御部は、前記上位通信制御部による通信が行われている前記通信周期の期間中に前記RFタグとの無線通信を並行して実行するとともに、
前記RFタグとの間で読み出しおよび書き込みの少なくともいずれか一方を行うべきデータを、前記上位通信制御部における1回の前記通信周期において通信可能なデータ交換サイズで分割して、複数回の通信で転送する
ことを特徴とするRFID通信ユニット。
【請求項2】
前記RF通信制御部は、
前記RFタグとの間で読み出しおよび書き込みの少なくともいずれか一方を行うべきデータを、前記上位通信制御部における1回の前記通信周期において通信可能なデータ交換サイズで分割して、複数回の通信で転送する分割転送方式、および、
前記RFタグとの間で読み出しおよび書き込みの少なくともいずれか一方を行うべきデータを一括で1回の通信で転送する一括転送方式、のいずれかを選択する
ことを特徴とする請求項に記載のRFID通信ユニット。
【請求項3】
前記RF通信制御部は、
前記RFタグとの間で読み出しおよび書き込みの少なくともいずれか一方を行うべきデータの転送に関して、前記分割転送方式、および、前記一括転送方式のそれぞれのトータル処理時間を算出し、該トータル処理時間の短い方の転送方式を選択することを特徴とする請求項に記載のRFID通信ユニット。
【請求項4】
前記RF通信制御部は、
前記分割転送方式の前記トータル処理時間を、
前記コントローラからの指令の転送に必要とされる指令転送時間と、
前記RFタグとの間で読み出しおよび書き込みの少なくともいずれか一方を行うべきデータを、前記RFタグとの間で転送する際に必要されるトータルRF通信時間と、
前記RFタグとの間での転送結果を前記コントローラに転送する際に必要とされる応答転送時間と、
を算出することにより、前記分割転送方式、および、前記一括転送方式のそれぞれの前記トータル処理時間を算出することを特徴とする請求項に記載のRFID通信ユニット。
【請求項5】
前記RF通信制御部は、
前記一括転送方式により、前記RFタグとの間で読み出しおよび書き込みの少なくともいずれか一方を行っている際に、前記RFタグとの無線通信に失敗した場合、前記RFタグとの間で1回の通信で転送するデータのデータサイズを減らしていき、1回の通信で転送するデータサイズが上記データ交換サイズまで小さくなったら、上記分割転送方式により、前記上位通信制御部による通信が行われている前記通信周期の期間中に前記RFタグとの無線通信を並行して実行することを特徴とする請求項に記載のRFID通信ユニット。
【請求項6】
上位通信制御部とRF通信制御部とを備えるRFID通信ユニットの制御方法であって、
前記上位通信制御部が、上位のコントローラとの間で所定の通信周期で通信を行うステップと、
前記RF通信制御部が、RFタグとの間で無線通信によりデータの読み出しおよび書き込みの少なくともいずれか一方を行うステップと、を含み、
前記コントローラとの間で通信が行われている前記通信周期の期間中に前記RFタグとの無線通信を並行して実行するとともに、
前記RFタグとの間で読み出しおよび書き込みの少なくともいずれか一方を行うべきデータを、前記上位通信制御部における1回の前記通信周期において通信可能なデータ交換サイズで分割して、複数回の通信で転送する
ことを特徴とするRFID通信ユニットの制御方法。
【請求項7】
請求項1からまでの何れか1項に記載のRFID通信ユニットを動作させるプログラムであって、コンピュータを前記上位通信制御部、および前記RF通信制御部として機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、RFID通信ユニット、RFID通信ユニットの制御方法、およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、製造現場や物流現場で固体管理のために、個体に取り付けたRFタグからデータを読み書きし、プログラマブルコントローラ(Programmable Logic Controller、以下「PLC」と略記)等の産業用制御装置との間でデータ交換を行うRFID通信ユニットが知られている。近年、個体管理する情報が増加し、RFID通信ユニットで扱うデータが大容量化している。
【0003】
RFID通信ユニットでは、RFタグとの間で無線通信によりデータの読み出しおよび書き込みを行うが、データが大容量化しても、これらのデータを一括してRFタグとの間で転送するのが一般である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2009-205369号公報(2009年9月10日公開)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、PLCにおいて、高速かつ高精度な制御を実現するためには、PLCの制御周期を一定かつ短周期にする必要がある。しかしながら、RFID通信ユニットの間で交換するデータの容量が大きいと、PLCの制御周期が短周期となるように、転送速度を犠牲にして、データ交換の容量を抑えるか、または、データ交換の容量を拡大し、PLCの制御周期を犠牲にして、高速化を図る必要があった。
【0006】
一方で、PLCとRFID通信ユニットとの間で大容量のデータを交換する際であっても、データ転送の高速化と、PLCの制御周期を一定にすることとを両立することができる技術に対する要望があった。
【0007】
本発明の一態様は、データ転送の高速化と、PLCの制御周期を一定にすることとを両立することができる技術を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記の課題を解決するために、本発明の一態様に係るRFID通信ユニットは、上位のコントローラとの間で所定の通信周期で通信を行う上位通信制御部と、RFタグとの間で無線通信によりデータの読み出しおよび書き込みの少なくともいずれか一方を行うRF通信制御部とを備え、前記RF通信制御部は、前記上位通信制御部による通信が行われている前記通信周期の期間中に前記RFタグとの無線通信を並行して実行する構成である。
【0009】
上記の構成によれば、上位のコントローラとの通信が行われている期間中に、RFタグとの無線通信を並行して実行することができる。これにより、RFタグからのデータの読み出しおよび、RFタグへのデータの書き込みに必要なトータル処理時間を短くすることができる。さらに、コントローラとの間で所定の通信周期で通信を行うため、コントローラの制御周期を一定に保つことができる。
【0010】
また、本発明の一態様に係るRFID通信ユニットは、前記RF通信制御部は、
前記RFタグとの間で読み出しおよび書き込みの少なくともいずれか一方を行うべきデータを、前記上位通信制御部における1回の前記通信周期において通信可能なデータ交換サイズで分割して、複数回の通信で転送してもよい。
【0011】
前記の構成によれば、RFタグとの間で読み出しおよび書き込みの少なくともいずれか一方を行うべきデータを、コントローラとの間でのデータ交換サイズで分割して、複数回の通信で転送している。よって、1回の通信周期において、コントローラとの間で通信されるデータサイズと、RFタグとの間で通信されるデータサイズとを一致させることができる。すなわち、1回の通信周期の期間中において、コントローラとの通信と、RFタグとの無線通信との並行処理を効率良く実行することができる。
【0012】
また、本発明の一態様に係るRFID通信ユニットは、前記RF通信制御部は、前記RFタグとの間で読み出しおよび書き込みの少なくともいずれか一方を行うべきデータを、前記上位通信制御部における1回の前記通信周期において通信可能なデータ交換サイズで分割して、複数回の通信で転送する分割転送方式、および、前記RFタグとの間で読み出しおよび書き込みの少なくともいずれか一方を行うべきデータを一括で1回の通信で転送する一括転送方式、のいずれかを選択してもよい。
【0013】
前記の構成によれば、コントローラの制御周期やデータ転送サイズに応じて、転送方式を、分割転送方式とするか、一括転送方式とするかを選択することができる。よって、高速かつ高精度な制御を実現するのに適した方式によりデータを転送することができる。
【0014】
また、本発明の一態様に係るRFID通信ユニットは、前記RF通信制御部は、前記RFタグとの間で読み出しおよび書き込みの少なくともいずれか一方を行うべきデータの転送に関して、前記分割転送方式、および、前記一括転送方式のそれぞれのトータル処理時間を算出し、該トータル処理時間の短い方の転送方式を選択してもよい。
【0015】
前記の構成によれば、トータル処理時間が短くなるように、データの転送方式を分割転送方式とするか、一括転送方式とするかを選択することができる。よって、高速かつ高精度な制御を実現するのに適した方式によりデータを転送することができる。
【0016】
また、本発明の一態様に係るRFID通信ユニットは、前記RF通信制御部は、前記分割転送方式の前記トータル処理時間を、前記コントローラからの指令の転送に必要とされる指令転送時間と、前記RFタグとの間で読み出しおよび書き込みの少なくともいずれか一方を行うべきデータを、前記RFタグとの間で転送する際に必要されるトータルRF通信時間と、前記RFタグとの間での転送結果を前記コントローラに転送する際に必要とされる応答転送時間と、を算出することにより、前記分割転送方式、および、前記一括転送方式のそれぞれの前記トータル処理時間を算出してもよい。
【0017】
前記の構成によれば、指令転送時間、トータルRF通信時間、及び応答転送時間を算出して、分割転送方式、および、一括転送方式のそれぞれのトータル処理時間を算出するため、データの転送方式をトータル処理時間が短くなるように、適宜選択することができる。よって、高速かつ高精度な制御を実現するのに適した方式によりデータを転送することができる。
【0018】
また、本発明の一態様に係るRFID通信ユニットは、前記RF通信制御部は、前記一括転送方式により、前記RFタグとの間で読み出しおよび書き込みの少なくともいずれか一方を行っている際に、前記RFタグとの無線通信に失敗した場合、前記RFタグとの間で1回の通信で転送するデータのデータサイズを減らしていき、1回の通信で転送するデータサイズが上記データ交換サイズまで小さくなったら、上記分割転送方式により、前記上位通信制御部による通信が行われている前記通信周期の期間中に前記RFタグとの無線通信を並行して実行してもよい。
【0019】
前記の構成によれば、一括転送方式により、RFタグとの間で読み出しおよび書き込みの少なくともいずれか一方を行っている際に、RFID通信ユニットとRFタグとの間の通信が途切れ、データ転送に失敗した場合には、リトライ時にRFタグとの間で読み書きするデータサイズを減らしていき、リトライの効率化を図ることができる。また、1回の通信で転送するデータサイズがRFID通信ユニットと、コントローラとの間のデータ交換サイズまで小さくなった場合には、分割転送方式に切り替えて、コントローラとの通信と、RFタグとの無線通信との並行処理を行うため、効率よくデータを転送することができる。
【0020】
また、前記の課題を解決するために、本発明の一態様に係るRFID通信ユニットの制御方法は、上位のコントローラとの間で所定の通信周期で通信を行うステップと、RFタグとの間で無線通信によりデータの読み出しおよび書き込みの少なくともいずれか一方を行うステップと、を含み、前記コントローラとの間で通信が行われている前記通信周期の期間中に前記RFタグとの無線通信を並行して実行する方法である。
【0021】
前記の方法によれば、上位のコントローラとの通信が行われている期間中に、RFタグとの無線通信を並行して実行することができる。これにより、RFタグからのデータの読み出しおよび、RFタグへのデータの書き込みに必要なトータル処理時間を短くすることができる。さらに、コントローラとの間で所定の通信周期で通信を行うため、コントローラの制御周期を一定に保つことができる。
【0022】
また、前記の課題を解決するために、本発明の一態様に係るプログラムは、RFID通信ユニットを動作させるプログラムであって、コンピュータを前記上位通信制御部、および前記RF通信制御部として機能させるためのプログラムである。
【0023】
前記の構成によれば、RFタグからのデータの読み出しおよび、RFタグへのデータの書き込みに必要なトータル処理時間を短くすることができる。さらに、コントローラとの間で所定の通信周期で通信を行うため、コントローラの制御周期を一定に保つことができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明の一態様によれば、データ転送の高速化と、PLCの制御周期を一定にすることとを両立することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】実施形態1に係るRFID通信ユニットの要部構成を示すブロック図である。
図2】PLCと、RFID通信ユニットと、RFタグとの間のデータの流れを示す図であり、RFタグからデータを読み出す流れを示す図である。
図3】PLCと、RFID通信ユニットと、RFタグとの間のデータの流れを示す図であり、(a)は、従来のRFID通信ユニットでのトータル処理時間を示し、(b)は実施形態1のRFID通信ユニットでのトータルの処理時間を示している。
図4】PLCと、RFID通信ユニットと、RFタグとの間のデータの流れを示す図であり、RFタグにデータを書き込む流れを示す図である。
図5】実施形態2に係るRFID通信ユニットの要部構成を示すブロック図である。
図6】PLCと、RFID通信ユニットと、RFタグとの間のデータの流れを示す図であり、(a)は、分割方式の場合、(b)は一括方式の場合のトータルの処理時間を示している。
図7】PLCと、RFID通信ユニットと、RFタグとの間のデータの流れを示す図であり、(a)は、分割方式の場合、(b)は一括方式の場合のトータルの処理時間を示している。
図8】PLCと、RFID通信ユニットと、RFタグとの間のデータの流れを示す図であり、(a)は、分割方式の場合、(b)は一括方式の場合のトータルの処理時間を示している。
図9】PLCと、RFID通信ユニットと、RFタグとの間のデータの流れを示す図であり、(a)は、分割方式の場合、(b)は一括方式の場合のトータルの処理時間を示している。
図10】実施形態3に係るRFID通信ユニットの要部構成を示すブロック図である。
図11】PLCと、RFID通信ユニットと、RFタグとの間のデータの流れを示す図であり、(a)は、一括方式の場合、(b)はリトライ効率処理を行った場合のトータルの処理時間を示している。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の一側面に係る実施形態(以下、「本実施形態」とも表記する)を、図面に基づいて説明する。
【0027】
§1 適用例
まず、図1を用いて、本発明が適用される場面の一例について説明する。図1は、本実施形態に係るRFID通信ユニット10の要部構成の一例を示している。
【0028】
本実施形態に係るRFID通信ユニット10は、例えば、図1に示されるとおり、上位のコントローラであるPLC(Programmable Logic Controller)50の入力機器として用いられる。RFID通信ユニット10は、PLC50との間で、上位通信制御部11による制御により、所定の通信周期で通信を行う。また、RFID通信ユニット10は、PLC50からの指令に応じて、RF通信制御部20の制御に基づき、RFタグ30との間で、無線通信により、データの読み出しおよびデータの書き込みの少なくともいずれか一方を行う。また、RFID通信ユニット10は、RFタグ30から応答データを受信し、受信した応答データをPLC50に転送する。
【0029】
RFタグ30は、例えば生産現場において、トレーサビリティ向上のために、部品や製品などの物品に取り付けられる。
【0030】
RFID通信ユニット10は、PLC50の制御周期に応じた所定の通信周期で通信するとともに、1回の通信周期において通信可能なデータ交換サイズでデータを分割して、複数回の通信でデータを転送する。また、RFID通信ユニット10は、PLC50との通信が行われている通信期間中に、RFタグ30との無線通信を並行して実行する。
【0031】
RFID通信ユニット10は、まず、PLC50からの指令を受信する。続いて、RFID通信ユニット10は、RFタグとの間で読み出しおよび書き込みの少なくともいずれか一方を行う。この時、RFID通信ユニット10は、PLC50との間での一回の通信周期において通信可能なデータ交換サイズで、RFタグ30との間で読み出しおよび書き込みの少なくともいずれか一方を行うデータを分割して、複数回の通信で、RFタグ30に転送する。そして、RFID通信ユニット10は、RFタグ30との間での転送結果をPLC50に転送する。RFID通信ユニット10は、RFタグ30との間での転送結果を、RFタグ30との間での一回の無線通信毎に、RFタグ30との間で無線通信に並行してPLC50に転送する。
【0032】
これにより、RFID通信ユニット10は、PLC50からの指令を受信し、RFタグとの間で読み出しおよび書き込みの少なくともいずれか一方を行い、RFタグとの間での転送結果をPLC50に転送するトータル処理時間を短縮するとともに、PLCとの間で所定の通信周期で通信を行うことで、PLC50の制御周期を一定に保つ。
【0033】
§2 構成例
以下、本発明の実施形態に係るRFID通信ユニット10の構成について、図1から図4に基づいて詳細に説明する。
【0034】
〔実施形態1〕
以下、本発明の実施形態1について、詳細に説明する。
【0035】
上述したように、RFID通信ユニット10は、上位通信制御部11と、RF通信制御部20と、アンテナ25と、を備えている。
【0036】
上位通信制御部11は、PLC50との間で、バスやネットワークを介した有線通信を実行する。上位通信制御部11は、PLC50との間で、1バイトあたり数マイクロ秒~数ミリ秒という高速でデータ交換を行うことができる。
【0037】
アンテナ25は、RFタグ30との間の無線通信を実現する。アンテナ25は、RF通信制御部20の制御に基づいて、コマンド信号を含む電磁波を送出するとともに、コマンドに対するRFタグ30からの応答信号を受け付ける。
【0038】
RF通信制御部20は、アンテナ25を介して、RFタグとの間でデータの読み出しおよび書き込みの少なくともいずれか一方を行う。なお、RF通信制御部20は、RFID通信ユニット10の各部を統括的に制御する機能を備えている演算装置であってもよい。RF通信制御部20は、例えば1つ以上のプロセッサ(例えばCPUなど)が、1つ以上のメモリ(例えばRAMやROMなど)に記憶されているプログラムを実行することでRFID通信ユニット10の各部を制御してもよい。
【0039】
RF通信制御部20は、コマンド解読部21と、交信実行部22とを含んでいる。
【0040】
コマンド解読部21は、上位通信制御部11の機能により、PLC50から受信した指令の解読を実行する。PLC50から受信する指令には、RFタグ30との間でのデータの書き込みを指定するライトコマンドと、RFタグ30との間でのデータの読み出しを指定するリードコマンドとがある。ライトコマンド、及びリードコマンドには、PLC50と、RFID通信ユニット10との間でのデータ転送周期、及びPLC50と、RFID通信ユニット10との間の通信周期、及びデータ交換サイズに関するデータが含まれている。
【0041】
コマンド解読部21は、PLC50から受信したライトコマンドに含まれるデータを、RFタグ30に書き込み可能なデータに変換する。コマンド解読部21は、例えば、PLC50から受信したライトコマンドに含まれる8進コード、16進コード、64進コード等のデータをアスキーコードのデータに変換する。
【0042】
また、コマンド解読部21は、PLC50から受信したリードコマンドに対する応答として、RFタグ30との間で読み出したデータを、PLC50に転送可能なデータに変換する。コマンド解読部21は、例えば、RFタグ30との間で読み出した数字列データを、8進コード、16進コード、64進コード等のデータに変換する。
【0043】
交信実行部22は、アンテナ25を介して、RFタグ30に対するコマンド信号の送出と、応答信号の受信とを実行する。また、交信実行部22は、RFタグ30から受信した応答信号の復号化処理を実行することができる構成であってもよい。なお、アンテナ25を介した、RFタグ30との間の無線通信は、1バイトあたり数ミリ~数十ミリ秒という速さの通信である。
【0044】
〔RFID通信ユニットによるデータの送受信について〕
(データの読み出し)
図2は、RFID通信ユニット10が、PLC50から受信したリードコマンドに応じて、RFタグ30との間でデータの読み出しを行い、PLC50に転送する際のデータの流れを模式的に示す図である。図2に示すように、RFID通信ユニット10は、PLC50から転送された指令であるリードコマンドを受信すると、RFタグ30からのデータの読み出しを開始する。PLC50と、RFID通信ユニット10との間のデータ交換サイズは、上位通信制御部11における1回の通信周期において通信可能なデータ交換サイズであり、固定である。RFID通信ユニット10のRF通信制御部20は、PLC50とのデータ交換サイズと同じサイズで、RFタグ30から読み出すデータを分割して、複数回の通信で転送する。
【0045】
RFID通信ユニット10のRF通信制御部20は、RFタグ30から一回の通信で読み出したデータに対して復号化処理、及び変換処理を行って、PLC50との間の通信周期(IO周期)に従って、PLC50にデータを転送する。また、RFID通信ユニット10のRF通信制御部20は、RFタグ30との間での転送結果をPLC50に転送するのに並行して、RFタグ30との無線通信を行って、次の分割データの読み出しを行う。
【0046】
このように、RF通信制御部20は、上位通信制御部11によるPLC50との間の通信が行われている通信周期の期間中にRFタグ30との無線通信を並行して実行する。これにより、RFタグ30から一括して読み出した大容量のデータを、PLC50との間で1回の通信周期において通信可能なデータ交換サイズに分割してPLC50に転送するのに比べて、トータル処理時間TATを短くすることができる。
【0047】
ここで、トータル処理時間TATとは、PLC50からの指令であるリードコマンドの転送に必要とされる指令転送時間と、RFタグ30との間で読み出しを行うべきデータを、RFID通信ユニット10およびRFタグ30との間で転送する際に必要されるトータルRF通信時間T3と、RFID通信ユニット10およびRFタグ30との間での転送結果をPLC50に転送する際に必要とされる応答転送時間T2と、を含めた時間である。
【0048】
このように、PLC50との通信周期の期間中に、RFタグ30との無線通信を並行して行うことで、トータル処理時間TATを、T2+T3よりも短くすることができる。よって、データ転送時間を短縮することができ、高速なデータ転送を実現することができる。
【0049】
また、RFタグ30との間での転送結果をPLC50に転送するのに並行して、RFタグ30との無線通信を行って、次の分割データの読み出しを行うため、PLC50から指令を受信してから、転送結果をPLC50に転送を開始するまでの時間T1を短くすることができ、PLC50に制御対象へのレスポンスを速くすることができる。
【0050】
図3の(a)、(b)は、PLC50と、RFID通信ユニット10との間の通信周期1ms、PLC50とRFID通信ユニット10との間のデータ交換サイズ128バイト、トータルのデータ読み出しサイズ8Kバイトの場合の、トータル処理時間TATを示す図である。図3の(a)は、従来のRFID通信ユニットを用いて読み出したデータを128バイトずつに分割してPLC50に転送する場合の例を示している。図3の(b)は、本実施形態のRFID通信ユニット10を用いて、RFタグ30からの読み出しと、PLC50へのデータ転送とを並行して行う場合の例を示している。
【0051】
図3の(a)に示した例では、RFID通信ユニット10は、2KバイトずつまとめてRFタグ30からデータを読み出して、読み出した2Kバイトのデータを、128バイトずつに分割してPLC50に転送している。RFID通信ユニット10が、RFタグ30から2Kバイトのデータを読み出すのに、1074ms必要であった。PLC50から、RFID通信ユニット10に対する指令の転送時間と、RFID通信ユニット10からPLC50へのデータ転送時間と、RFタグ30からのデータの読み出し時間とを合わせたトータル処理時間TATは4317msであった。
【0052】
なお、従来の転送方式では、RFID通信ユニット10からPLCに応答結果を転送するのに、PLCの通信周期が1msから4.3msに一時的に延びることにより、PLCの制御周期が乱れてしまっていた。
【0053】
一方で、図3の(b)に示した例では、RFID通信ユニット10が、RFタグ30から一回の通信で転送するデータを128バイトずつに分割して8Kバイトのデータを読み出すのに、3294ms必要であった。そして、PLC50から、RFID通信ユニット10に対する指令の転送時間と、RFID通信ユニット10からPLC50へのデータ転送時間と、RFタグ30からのデータの読み出し時間とを合わせたトータル処理時間TATは3297msであった。
【0054】
つまり、図3の(b)に示した例では、上位通信制御部11によるPLC50との通信が行われている通信周期の期間中にRFタグ30との無線通信を並行して実行して、RFタグ30からのデータの読み出しと、PLC50へのデータの転送とを並行して、分割転送方式により転送している。このように、本実施形態による転送方式では、RFID通信ユニット10からPLC50に応答結果を転送する際に、PLC50の通信周期が延びることなく、PLC50の制御周期が乱れる事もない。
【0055】
図3の(a)に示した従来の転送方式の例では、RFタグ30から一括して読み出した大容量のデータを、PLC50との間で1回の通信周期において通信可能なデータ交換サイズに分割してPLC50に一括転送方式により転送している。従来の転送方式と、本実施形態の転送方式では、1020msの高速化を実現することができた。このように、本実施形態の転送方式によれば、RFタグ30からのデータの読み出しと、上位通信制御部11によるPLC50との通信が行われている通信周期の期間中にRFタグ30との無線通信を並行して実行することで、データ転送の高速化と、PLCの制御周期を一定にすることとを両立することができる。
【0056】
(データの書き込み)
図4は、RFID通信ユニット10が、PLC50から受信した指令であるライトコマンドに応じて、PLC30から受信したデータをRFタグ30に書き込む際のデータの流れを模式的に示す図である。図4に示すように、RFID通信ユニット10は、PLC50からライトコマンドを受信すると、RFタグ30へのデータの書き込みを開始する。PLC50と、RFID通信ユニット10との間のデータ交換サイズは上位通信制御部11における1回の通信周期において通信可能なデータ交換サイズであり、固定である。RFID通信ユニット10のRF通信制御部20は、PLC50とのデータ交換サイズと同じサイズのデータを、一度の通信でRFタグ30に転送して、書き込む。このように、RFID通信ユニット10のRF通信制御部20は、PLC50との間のデータ交換サイズと同じサイズのデータを、RFタグ30に一度の通信で転送して書き込む。
【0057】
RFID通信ユニット10のRF通信制御部20は、上位通信制御部11による通信が行われている通信周期の期間中にRFタグ30との無線通信を並行して実行することにより、RFタグ30へのデータの書き込みと並行して、PLC50から転送される次のデータを受信する。
【0058】
このように、RFID通信ユニット10は、PLC50との間のデータ転送と、RFタグ30との間でのデータの書き込みとを並行して行う。これにより、PLC50から転送される書き込み用のデータを、一括してRFタグ30に書き込むのに比べて、PLC50から指令を受信してから、RFタグ30へのデータの書き込みを開始するまで時間T1を短くすることができる。
【0059】
これにより、トータル処理時間TATを、RFタグ30との間で書き込みを行うべきデータを、RFID通信ユニット10およびRFタグ30との間で転送する際に必要されるトータルRF通信時間T3と、RFID通信ユニット10およびRFタグ30との間での転送結果をPLC50に転送する際に必要とされる応答転送時間T2と、を合わせた時間よりも短くすることができる。よって、トータル処理時間TATを短縮することができ、高速なデータ転送を実現することができる。
【0060】
〔実施形態2〕
本発明の実施形態2について、以下に説明する。なお、説明の便宜上、前記実施形態1にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
【0061】
図5は、実施形態2に係るRFID通信ユニット210の要部構成を示すブロック図である。同図に示すように、実施形態1のRFID通信ユニット10の構成に加えて、RF通信制御部220が、交信方式決定部223を含んでいる。
【0062】
〔読み出し方式の決定について〕
交信方式決定部223は、RFタグ30との間で読み出しおよび書き込みの少なくともいずれか一方を行うべきデータを、上位通信制御部11における1回の通信周期において通信可能なデータ交換サイズで分割して、複数回の通信で転送する分割転送方式、および、RFタグとの間で読み出しおよび書き込みの少なくともいずれか一方を行うべきデータを一括で1回の通信で転送する一括転送方式、のいずれかを選択する。
【0063】
また、交信方式決定部223は、RFタグ30との間で読み出しおよび書き込みの少なくともいずれか一方を行うべきデータの転送に関して、分割転送方式、および、一括転送方式のそれぞれのトータル処理時間TATを算出し、該トータル処理時TATの短い方の転送方式を選択する。
【0064】
図6の(a)および(b)は、PLC50と、RFID通信ユニット210との間の通信周期2ms、PLC50とRFID通信ユニット10との間のデータ交換サイズ8バイト、トータルのデータ読み出しサイズ256バイトの場合の、トータル処理時間TATを示す図である。図6の(a)は、分割転送方式でデータを読み出した場合のデータの流れを示す図である。図6の(b)は、一括転送方式でデータを読み出した場合のデータの流れを示す図である。
【0065】
図6の(a)に示すように、RFID通信ユニット210は、RFタグ30との間で読み出すデータを、上位通信制御部11における1回の通信周期において通信可能なデータ交換サイズである8バイトに分割して、複数回の通信で転送する。RFID通信ユニット210が、RFタグ30から1度の通信で8バイトのデータを読み出すのに必要な通信時間は8msである。RFID通信ユニット210は、RFタグ30との通信を32回行って、8×32回=256バイトのデータを読み出す。RFID通信ユニット210が、RFタグ30から256バイトのデータを読み出すのに必要なトータル交信時間は8ms×32回=256msである。
【0066】
RFID通信ユニット210は、RFタグ30から読み出した8バイトのデータを、PLC50に転送するのに並行して、次の8バイトのデータのRFタグ30からの読み出しを実行する。
【0067】
図6の(a)に示すように、分割転送方式により、RFタグ30からデータを読み出すトータル処理時間TATは、トータルRF通信時間T3=256msに、指令転送時間2msと、応答転送時間2msとを合わせた260msとなる。
【0068】
一方で、図6の(b)に示すように、一括転送方式では、RFID通信ユニット210は、PLC50からリードコマンドを受信して、256バイトのデータをRFタグ30から一括して読み出す。RFID通信ユニット210は、RFタグ30から256バイトのデータを一括して、83msで読み出すことができる。続いて、RFID通信ユニット210は、RFタグ30から読み出した256バイトのデータ、上位通信制御部11における1回の通信周期において通信可能なデータ交換サイズである8バイトずつに分割して、32回に分けてPLC50に転送する。PLC50と、RFID通信ユニット210との間の通信周期は、2msであるため、RFID通信ユニット210から、PLC50にデータを転送するのに必要な時間は2ms×32回の64msである。
【0069】
よって、一括転送方式により、データをRFタグ30から読み出すトータル処理時間TATは、トータルRF通信時間T3=83msと、指令転送時間2msと、RFID通信ユニット210からPLC50にRFタグ30から読み出したデータを転送する時間64msとを合わせた149msとなる。
【0070】
このように、PLC50と、RFID通信ユニット210との間の通信周期2ms、PLC50とRFID通信ユニット10との間のデータ交換サイズ8バイトである場合には、分割転送方式でデータの読み出しを行うよりも、一括転送方式でデータの読み出しを行った方が、トータル処理時間TATが短くなる。
【0071】
このように、RF通信制御部220は、交信方式決定部223の機能により、PLC50からの指令の転送に必要とされる指令転送時間と、RFタグ30との間で読み出しを行うべきデータを、RFタグ30との間で転送する際に必要されるトータルRF通信時間と、RFタグ30との間での転送結果をPLC50に転送する際に必要とされる応答転送時間と、を算出する。そして、交信方式決定部223は、指令転送時間と、トータルRF通信時間と、応答転送時間と、に基づいて、分割転送方式、および、一括転送方式のそれぞれのトータル処理時間TATを算出する。RF通信制御部220は、交信方式決定部223の機能により算出した分割転送方式、および、一括転送方式のそれぞれのトータル処理時間TATに基づいて、トータル処理時間の短い方の転送方式を選択して、RFタグとの間での読み出しを実行する。
【0072】
図7の(a)および(b)は、PLC50と、RFID通信ユニット210との間の通信周期10ms、PLC50とRFID通信ユニット10との間のデータ交換サイズ8バイト、トータルのデータ読み出しサイズ256バイトの場合の、トータル処理時間TATを示す図である。図7の(a)は、分割転送方式でデータを読み出した場合のデータの流れを示す図である。図7の(b)は、一括転送方式でデータを読み出した場合のデータの流れを示す図である。
【0073】
図7の(a)に示すように、RFID通信ユニット210は、RFタグ30との間で読み出すデータを、上位通信制御部11における1回の通信周期において通信可能なデータ交換サイズである8バイトに分割して、複数回の通信で転送する。RFID通信ユニット210が、RFタグ30から1度の通信で8バイトのデータを読み出すのに必要な通信時間は8msである。RFID通信ユニット210は、RFタグ30との通信を32回行って、8×32回=256バイトのデータを読み出す。RFID通信ユニット210が、RFタグ30から256バイトのデータを読み出すのに必要なトータル交信時間は8ms×32回=256msである。
【0074】
RFID通信ユニット210は、RFタグ30から読み出した8バイトのデータを、PLC50に転送するのに並行して、次の8バイトのデータのRFタグ30からの読み出しを実行する。
【0075】
図6の(a)に示すように、分割転送方式により、RFタグ30からデータを読み出すトータル処理時間TATは、トータルRF通信時間T3=256msに、指令転送時間10msと、応答転送時間10msとを合わせた276msとなる。
【0076】
一方で、図7の(b)に示すように、一括転送方式では、RFID通信ユニット210は、PLC50からリードコマンドを受信して、256バイトのデータをRFタグ30から一括して読み出す。RFID通信ユニット210は、RFタグ30から256バイトのデータを一括して、83msで読み出すことができる。続いて、RFID通信ユニット210は、RFタグ30から読み出した256バイトのデータ、上位通信制御部11における1回の通信周期において通信可能なデータ交換サイズである8バイトずつに分割して、32回に分けてPLC50に転送する。PLC50と、RFID通信ユニット210との間の転送周期は、1回10msであるため、RFID通信ユニット210から、PLC50にデータを転送するのに必要な時間は10ms×32回の320msである。
【0077】
よって、一括転送方式により、データを読み出すトータル処理時間TATは、トータルRF通信時間T3=83msに、指令転送時間10msと、応答転送時間320msとを合わせた413msとなる。
【0078】
このように、PLC50と、RFID通信ユニット210との間の通信周期10ms、PLC50とRFID通信ユニット10との間のデータ交換サイズ8バイトである場合には、一括方式でデータの読み出しを行うよりも、順次方式でデータの読み出しを行った方が、トータル処理時間TATが短くなる。
【0079】
このように、PLC50から転送される指令に応じて、RFタグ30からデータを読み出してPLC50に転送する場合に、分割転送方式によってデータを読み出した方がトータル処理時間TATが短くなるか、一括転送方式によってデータを読み出した方が、トータル処理時間TATが短くなるかは、PLC50と、RFID通信ユニット210との間のデータ交換サイズと、通信周期とに依存する。よって、RFID通信ユニット210のRF通信制御部220は、交信方式決定部223の機能により、トータル処理時間TATが最短となるように、データの読み出し方式を、分割転送方式とするか、一括転送方式とするかを、決定する。これにより、トータル処理時間TATを短縮することができ、高速なデータ転送を実現することができる。
【0080】
なお、PLC50と、RFID通信ユニット210との間のデータ交換サイズと、通信周期とは、PLC50への操作でユーザが設定することができる。PLC50と、RFID通信ユニット210との通信初期処理において、データ交換サイズと、通信周期とに関する情報がRFID通信ユニット210に渡され、PLC50と、RFID通信ユニット210との間の周期的な通信が開始する。RFID通信ユニット210のRF通信制御部220は、交信方式決定部223の機能により、PLC50から受信したデータ交換サイズと、通信周期とに関する情報をパラメータとして、転送方式を順次転送方式とするか、一括転送方式とするかを決定する。
【0081】
〔書き込み方式の決定について〕
図8の(a)および(b)は、PLC50と、RFID通信ユニット210との間の通信周期2ms、PLC50とRFID通信ユニット10との間のデータ交換サイズ8バイト、トータルのデータ書き込みサイズが16バイトの場合の、トータル処理時間TATを示す図である。図8の(a)は、分割転送方式でデータの書き込みをした場合のデータの流れを示す図である。図8の(b)は、一括転送方式でデータの書き込みをした場合のデータの流れを示す図である。
【0082】
図8の(a)に示すように、RFID通信ユニット210は、RFタグ30との間で書き込むデータを、上位通信制御部11における1回の通信周期において通信可能なデータ交換サイズである8バイトに分割して、複数回の通信で転送する。RFID通信ユニット210が、RFタグ30との間で1度の通信で8バイトのデータを書き込むのに必要な通信時間は8msである。RFID通信ユニット210は、RFタグ30との通信を2回行って、8×2回=16バイトのデータを書き込む。RFID通信ユニット210が、RFタグ30との間で16バイトのデータを書き込むのに必要なトータル交信時間は8ms×2回=16msである。
【0083】
RFID通信ユニット210は、RFタグ30との間で8バイトのデータをRFタグ30に書き込むのに並行して、PLC50から、次の8バイトのデータを受信する。
【0084】
図8の(a)に示すように、分割転送方式により、RFタグ30との間でデータを書き込むトータル処理時間TATは、トータルRF通信時間T3=16msに、指令転送時間2msと、応答転送時間2msとを合わせた20msとなる。
【0085】
一方で、図8の(b)に示すように、一括転送方式では、RFID通信ユニット210は、PLC50からライトコマンドを受信して、16バイトのデータをRFタグ30に一括して書き込む。RFID通信ユニット210は、RFタグ30に16バイトのデータを一括して、11msで書き込むことができる。
【0086】
RFID通信ユニット210は、RFタグ30に対する全書き込みサイズ分のデータの書き込みを終了すると、PLC50に書き込み終了を通知する応答を転送する。
【0087】
よって、一括転送方式により、データを書き込むトータル処理時間TATは、トータルRF通信時間T3=11msに、指令転送時間4msと、応答転送時間2msとを合わせた17msとなる。
【0088】
このように、PLC50と、RFID通信ユニット210との間の通信周期2ms、PLC50とRFID通信ユニット10との間のデータ交換サイズ8バイトである場合には、分割転送方式でデータの書き込みを行うよりも、一括転送方式でデータの書き込みを行った方が、トータル処理時間TATが短くなる。
【0089】
図9の(a)および(b)は、PLC50と、RFID通信ユニット210との間の通信周期10ms、PLC50とRFID通信ユニット10との間のデータ交換サイズ8バイト、トータルのデータ書き込みサイズが16バイトの場合の、トータル処理時間TATを示す図である。図9の(a)は、分割転送方式でデータの書き込みをした場合のデータの流れを示す図である。図9の(b)は、一括転送方式でデータの書き込みをした場合のデータの流れを示す図である。
【0090】
図9の(a)に示すように、RFID通信ユニット210は、RFタグ30との間で書き込むデータを、上位通信制御部11における1回の通信周期において通信可能なデータ交換サイズである8バイトに分割して、複数回の通信で転送する。RFID通信ユニット210が、RFタグ30との間で1度の通信で8バイトのデータを書き込むのに必要な通信時間は8msである。RFID通信ユニット210は、RFタグ30との通信を2回行って、8×2回=16バイトのデータを書き込む。RFID通信ユニット210が、RFタグ30との間で16バイトのデータを書き込むのに必要なトータル交信時間は8ms×2回=16msである。
【0091】
RFID通信ユニット210は、RFタグ30との間で8バイトのデータをRFタグ30に書き込むのに並行して、PLC50から、次の8バイトのデータを受信する。
【0092】
図8の(a)に示すように、分割転送方式により、RFタグ30との間でデータを書き込むトータル処理時間TATは、トータルRF通信時間T3=16msに、指令転送時間10msと、応答転送時間10msとを合わせた36msとなる。
【0093】
一方で、図9の(b)に示すように、一括転送方式では、RFID通信ユニット210は、PLC50からライトコマンドを受信して、16バイトのデータをRFタグ30に一括して書き込む。RFID通信ユニット210は、RFタグ30に16バイトのデータを一括して、11msで書き込むことができる。
【0094】
RFID通信ユニット210は、RFタグ30に対する全書き込みサイズ分のデータの書き込みを終了すると、PLC50に書き込み終了を通知する応答を転送する。
【0095】
よって、一括転送方式により、データを書き込むトータル処理時間TATは、トータルRF通信時間T3=11msに、指令転送時間20msと、応答転送時間10msとを合わせた41msとなる。
【0096】
このように、PLC50と、RFID通信ユニット210との間の通信周期10ms、PLC50とRFID通信ユニット10との間のデータ交換サイズ8バイトである場合には、一括転送方式でデータの書き込みを行うよりも、分割転送方式でデータの書き込みを行った方が、トータル処理時間TATが短くなる。
【0097】
このように、PLC50からのライトマンドに応じて、RFタグ30にデータの書き込みをする場合に、分割転送方式によってデータの書き込みを行った方がトータル処理時間TATが短くなるか、一括転送方式によってデータの書き込みを行った方がトータル処理時間TATが短くなるかは、PLC50と、RFID通信ユニット210との間のデータ交換サイズと、通信周期とに依存する。
【0098】
よって、RFID通信ユニット210のRF通信制御部220は、交信方式決定部223の機能により、トータル処理時間TATが最短となるように、データの書き込み方式を、分割転送方式とするか、一括転送方式とするかを、決定する。これにより、トータル処理時間TATを短縮することができ、高速なデータ転送を実現することができる。
【0099】
〔実施形態3〕
本発明の実施形態3について、以下に説明する。なお、説明の便宜上、前記実施形態1にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
【0100】
図10は、実施形態3に係るRFID通信ユニット310の要部構成を示すブロック図である。図10に示すように、RFID通信ユニット310は、実施形態1のRFID通信ユニット10の構成に加えて、RF通信制御部320が、交信判定部323を含んでいる。
【0101】
RFID通信ユニット310と、RFタグ30とは、無線通信を介して互いに交信する。無線通信は、周囲環境のノイズ等の影響により、通信が途切れる場合がある。このような場合には、RFID通信ユニット310と、RFタグ30との間の交信が失敗し、データの送受信のリトライが発生する。
【0102】
図11の(a)に示すように、RFID通信ユニット310が、RFタグ30から複数のデータをまとめて読み出す一括転送方式において、256バイトのデータを読み出すのに、83msかかるとする。RFタグ30からRFID通信ユニット310に対して、データを送信する際に、RFID通信ユニット310と、RFタグ30との間の通信が途切れて、データ転送が失敗した場合、データ読み出しのリトライが発生し、再び256バイトのデータの読み出しが行われる。RFID通信ユニット310と、RFタグ30との間の通信が2回途切れて、データ転送が2回失敗した場合には、256バイトのデータの読み出しが3回行われ、83×3=249msかかる。RFID通信ユニット310は、RFタグ30から一括転送方式により読み出したデータを、PLC50との間で所定の通信周期で通信を行って、PLC50に分割して転送する。このように、一括転送方式によりRFタグ30からデータを読み込む場合に、RFID通信ユニット310と、RFタグ30との間の交信が失敗すると、データ読み出しのリトライによる後戻り時間が大きいため、データ読み込みのトータル処理時間TATが長くなってしまう。
【0103】
また、一括転送方式によりRFタグ30からデータを読み込む場合と同様に、一括転送方式によりRFタグ30にデータを書き込む場合においても、RFID通信ユニット310と、RFタグ30との間の通信が途切れ、データ転送に失敗すると、データ書き込みのリトライが発生し、データ書き込みのトータル処理時間TATが長くなってしまう。
【0104】
交信判定部323は、RFID通信ユニット310と、RFタグ30との間の通信失敗時の影響を最小化する為に、以下に説明するリトライ効率処理を実行する。
【0105】
交信判定部323は、RFタグ30との間でデータを読み書きしている際に、RFID通信ユニット310と、RFタグ30との間の通信が途切れ、転送が失敗した場合、転送が失敗する度に、一括転送分のデータサイズを減らしていく。例えば、図11の(b)に示すように、RFタグ30か256バイトのデータを一括して読み出す際に、RFID通信ユニット310と、RFタグ30との間の通信が途切れ、データ転送に失敗すると、交信判定部323は、リトライ時にRFタグ30から読み出すデータサイズを、半分の128バイトとする。そして、RFタグ30から128バイトのデータを読み出すリトライを行う。リトライ時に、再びRFID通信ユニット310と、RFタグ30との間の通信が途切れ、データ転送に失敗すると、交信判定部323は、続くリトライ時にRFタグ30から読み出すデータサイズを更に半分の64バイトとする。
【0106】
このように交信判定部323は、一括転送方式により、RFタグ30との間でデータの読み出しおよびデータの書き込みの少なくともいずれか一方を行っている際に、RFタグ30との無線通信に失敗した場合、RFタグ30との間で1回の通信で転送するデータのデータサイズを減らしていく。これにより、RFタグ30との間の通信が途切れ、転送が失敗した場合の、データ転送のリトライの効率化を図る。
【0107】
更に、交信判定部323は、RFタグ30との間で1回の通信で転送するデータのデータサイズが、PLC50との間で1回の通信周期で交換するデータ交換サイズまで小さくなったら、転送方式を、一括転送方式から、分割転送方式に切り替えて、上位通信制御部11による通信が行われている通信周期の期間中にRFタグ30との無線通信を並行して実行する。これらの構成によれば、効率よくデータを転送することができる。
【0108】
また、交信判定部323は、RFID通信ユニット310と、RFタグ30との間の通信に対する周囲環境のノイズレベルを測定する機能を備えていてもよい。そして、交信判定部323は、ノイズレベルが高い場合には、RFタグ30との間で読み書きするデータサイズを、予め減らす処理を行うことができてもよい。
【0109】
〔ソフトウェアによる実現例〕
RFID通信ユニット10の制御ブロック(特に上位通信制御部11、およびRF通信制御部20)は、集積回路(ICチップ)等に形成された論理回路(ハードウェア)によって実現してもよいし、ソフトウェアによって実現してもよい。
【0110】
後者の場合、RFID通信ユニット10は、各機能を実現するソフトウェアであるプログラムの命令を実行するコンピュータを備えている。このコンピュータは、例えば1つ以上のプロセッサを備えていると共に、前記プログラムを記憶したコンピュータ読み取り可能な記録媒体を備えている。そして、前記コンピュータにおいて、前記プロセッサが前記プログラムを前記記録媒体から読み取って実行することにより、本発明の目的が達成される。前記プロセッサとしては、例えばCPU(Central Processing Unit)を用いることができる。前記記録媒体としては、「一時的でない有形の媒体」、例えば、ROM(Read Only Memory)等の他、テープ、ディスク、カード、半導体メモリ、プログラマブルな論理回路などを用いることができる。また、前記プログラムを展開するRAM(Random Access Memory)などをさらに備えていてもよい。また、前記プログラムは、該プログラムを伝送可能な任意の伝送媒体(通信ネットワークや放送波等)を介して前記コンピュータに供給されてもよい。なお、本発明の一態様は、前記プログラムが電子的な伝送によって具現化された、搬送波に埋め込まれたデータ信号の形態でも実現され得る。
【0111】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0112】
10、210、310 RFID通信ユニット
11 上位通信制御部
20、220、320 RF通信制御部
50 PLC(コントローラ)
30 RFタグ
223 転送方式決定部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11