(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-20
(45)【発行日】2022-09-29
(54)【発明の名称】印刷装置
(51)【国際特許分類】
B41J 29/00 20060101AFI20220921BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20220921BHJP
B41J 2/175 20060101ALI20220921BHJP
B41J 11/70 20060101ALI20220921BHJP
B41J 15/04 20060101ALI20220921BHJP
【FI】
B41J29/00 A
B41J2/01 305
B41J2/175 115
B41J11/70
B41J15/04
(21)【出願番号】P 2018133199
(22)【出願日】2018-07-13
【審査請求日】2021-07-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100117101
【氏名又は名称】西木 信夫
(74)【代理人】
【識別番号】100120318
【氏名又は名称】松田 朋浩
(72)【発明者】
【氏名】田中 貢
(72)【発明者】
【氏名】佐本 賢治
【審査官】小宮山 文男
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-152674(JP,A)
【文献】特開2018-002479(JP,A)
【文献】特開2013-028093(JP,A)
【文献】特開2017-100313(JP,A)
【文献】特開2018-089814(JP,A)
【文献】特開2000-318176(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 29/00
B41J 2/01-2/215
B41J 11/70
B41J 15/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体と、
上記筐体の内部空間に位置しており、印刷媒体を搬送方向に搬送する搬送手段と、
上記搬送手段よりも上記搬送方向の下流に位置しており、上記搬送手段が搬送する上記印刷媒体へ印刷流体を吐出する印刷ヘッドと、
少なくとも一部が上記筐体の内部空間に位置しており、上記筐体より上記搬送方向の下流からアクセス可能であって、上記印刷ヘッドに供給する上記印刷流体を貯留するタンクと、
上記筐体において上記搬送方向の下流へ向いて開口しており、上記印刷ヘッドから上記印刷流体が吐出された上記印刷媒体が通過する通過口と、
上記筐体の内部空間に位置しており、上記印刷ヘッドから上記印刷流体が吐出された上記印刷媒体を切断するカッターユニットと、を具備しており、
上記カッターユニットは、
上記搬送方向と交差する走査方向に移動可能なキャリッジと、
上記キャリッジに搭載されたカッターと、を有しており、
上記搬送方向及び上記走査方向と直交する直交方向において、上記通過口の少なくとも一部が上記タンクと同じ位置にあり、
上記直交方向において、上記カッターユニットの少なくとも一部が上記タンクと同じ位置にあり、
上記タンクは、上記通過口から上記走査方向の一方に離れて位置しており、
上記キャリッジは、待機状態において、上記通過口から上記走査方向の他方に離れて位置しており、
上記筐体は、上記キャリッジが上記待機状態において、上記カッターを外部へ露出する露出口と、当該露出口を開閉するカバーと、を有する印刷装置。
【請求項2】
筐体と、
上記筐体の内部空間に位置しており、印刷媒体を搬送方向に搬送する搬送手段と、
上記筐体より上記搬送方向の上流に位置しており、ロール形状に巻かれた上記印刷媒体を上記搬送方向と交差する走査方向を回転軸として収容する収容空間を有するホルダと、
上記搬送手段よりも上記搬送方向の下流に位置しており、上記搬送手段が搬送する上記印刷媒体へ印刷流体を吐出する印刷ヘッドと、
少なくとも一部が上記筐体の内部空間に位置しており、上記筐体より上記搬送方向の下流からアクセス可能であって、上記印刷ヘッドに供給する上記印刷流体を貯留するタンクと、
上記筐体において上記搬送方向の下流へ向いて開口しており、上記印刷ヘッドから上記印刷流体が吐出された上記印刷媒体が通過する通過口と、
上記印刷ヘッドから上記印刷流体が吐出された上記印刷媒体を切断するカッターユニットと、
上記走査方向に沿った軸周りに上記筐体に回動可能に連結されて第1位置と第2位置とに移動するトレイと、を具備しており、
上記カッターユニットは、
上記走査方向に移動可能なキャリッジと、
上記キャリッジに搭載されたカッターと、を有しており、
上記搬送方向及び上記走査方向と直交する直交方向において、上記通過口の少なくとも一部が上記タンクと同じ位置にあり、
上記直交方向において、上記カッターユニットの少なくとも一部が上記タンクと同じ位置にあり、
上記タンクは、上記通過口から上記走査方向の一方に離れて位置しており、
上記キャリッジは、待機状態において、上記通過口から上記走査方向の他方に離れて位置しており、
上記トレイの上記軸は、上記収容空間に収容された上記印刷媒体の上記回転軸より上記搬送方向の下流に位置しており、
上記第2位置は、上記第1位置より上記トレイが上記搬送方向の上流へ倒伏する位置であり、
上記第2位置の上記トレイは、上記直交方向から視て、上記収容空間と重複する印刷装置。
【請求項3】
筐体と、
上記筐体の内部空間に位置しており、印刷媒体を搬送方向に搬送する搬送手段と、
上記搬送手段よりも上記搬送方向の下流に位置しており、上記搬送手段が搬送する上記印刷媒体へ印刷流体を吐出する印刷ヘッドと、
少なくとも一部が上記筐体の内部空間に位置しており、上記筐体より上記搬送方向の下流からアクセス可能であって、上記印刷ヘッドに供給する上記印刷流体を貯留するタンクと、
上記筐体において上記搬送方向の下流へ向いて開口しており、上記印刷ヘッドから上記印刷流体が吐出された上記印刷媒体が通過する通過口と、
上記印刷ヘッドから上記印刷流体が吐出された上記印刷媒体を切断するカッターユニットと、を具備しており、
上記カッターユニットは、
上記搬送方向と交差する走査方向に移動可能なキャリッジと、
上記キャリッジに搭載されたカッターと、を有しており、
上記搬送方向及び上記走査方向と直交する直交方向において、上記通過口の少なくとも一部が上記タンクと同じ位置にあり、
上記直交方向において、上記カッターユニットの少なくとも一部が上記タンクと同じ位置にあり、
上記タンクは、上記通過口から上記走査方向の一方に離れて位置しており、
上記キャリッジは、待機状態において、上記通過口から上記走査方向の他方に離れて位置しており、
上記筐体において、上記直交方向において上記通過口と少なくとも一部が同じ位置に、当該印刷装置に対する入力を受け付ける操作面を有する操作パネルが設けられており、
上記操作面は、上記搬送方向の下流を向いている印刷装置。
【請求項4】
上記キャリッジは、上記操作パネルより上記搬送方向の下流に位置する請求項3に記載の印刷装置。
【請求項5】
上記タンクは、上記搬送方向の下流から上流へ向かって視て、上記通過口の右方に位置しており、
上記待機状態のキャリッジは、上記搬送方向の下流から上流へ向かって視て、上記通過口の左方に位置する請求項1から4のいずれかに記載の印刷装置。
【請求項6】
上記印刷ヘッドは、上記タンクより上記搬送方向の上流に位置する請求項1から5のいずれかに記載の印刷装置。
【請求項7】
上記タンクは、上記搬送方向の下流へ向く注入口を有しており、当該注入口を通じて印刷流体が補充できるものである請求項1から6のいずれかに記載の印刷装置。
【請求項8】
上記タンクは、上記搬送方向の下流へ向かって上記筐体から取り外し可能なものである請求項1から6のいずれかに記載の印刷装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タンクに貯留された印刷流体が、印刷ヘッドにより印刷媒体へ吐出され、当該印刷媒体がカッターにより切断される印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
タンクに貯留された印刷流体が印刷ヘッドから印刷媒体へ吐出される印刷装置が知られている(特許文献1参照)。印刷媒体の一例として、搬送方向に連続する長尺なシートがある。当該シートは、印刷された後に、カッターにより、例えば複数の印刷単位を一体として切断される。シートは、例えば、ラベルと離型紙とから構成されている。例えば、ラベル毎に1つの印刷単位が印刷されており、切断されたシートから、各ラベルが離型紙から剥がされて商品などに貼られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
印刷後のシートは、例えば、印刷装置の前方へ排出されると取り出しやすい。また、タンクに印刷流体を充填したり、タンクを交換したりするときには、例えば、印刷装置の前方からタンクへアクセスできると操作性がよい。また、カッターを交換するときには、例えば、印刷装置の前方や上方からカッターへアクセスできるとメンテナンス性がよい。このように、印刷装置に対して特定の方向からシートやタンクへアクセスできると、使い勝手のよい印刷装置が実現される。
【0005】
しかしながら、シートやタンクに特定の方向からアクセスできるように、印刷装置の特定の面にシートが通過する通過口及びタンクへのアクセス経路などを設けると、印刷装置の特定の面の面積が大きくなり、装置が大型化する。
【0006】
本発明は、前述された事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、印刷装置に対して特定の方向からシートやタンクへアクセスすることができ、薄型化、小型化が実現される印刷装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1) 本発明に係る印刷装置は、筐体と、上記筐体の内部空間に位置しており、印刷媒体を搬送方向に搬送する搬送手段と、上記搬送手段よりも上記搬送方向の下流に位置しており、上記搬送手段が搬送する上記印刷媒体へ印刷流体を吐出する印刷ヘッドと、少なくとも一部が上記筐体の内部空間に位置しており、上記筐体より上記搬送方向の下流からアクセス可能であって、上記印刷ヘッドに供給する上記印刷流体を貯留するタンクと、上記筐体において上記搬送方向の下流へ向いて開口しており、上記印刷ヘッドから上記印刷流体が吐出された上記印刷媒体が通過する通過口と、上記印刷ヘッドから上記印刷流体が吐出された上記印刷媒体を切断するカッターユニットと、を具備する。上記カッターユニットは、上記搬送方向と交差する走査方向に移動可能なキャリッジと、上記キャリッジに搭載されたカッターと、を有する。上記搬送方向及び上記走査方向と直交する直交方向において、上記通過口の少なくとも一部が上記タンクと同じ位置にある。上記直交方向において、上記カッターユニットの少なくとも一部が上記タンクと同じ位置にある。上記タンクは、上記通過口から上記走査方向の一方に離れて位置する。上記キャリッジは、待機状態において、上記通過口から上記走査方向の他方に離れて位置する。
【0008】
上記構成によれば、印刷装置の直交方向の寸法を抑えて薄型化を実現しつつ、走査方向の寸法を小さくして設置面積を抑制することができる。また、タンクや印刷後の印刷媒体に、筐体に対して搬送方向の下流からアクセスすることができる。
【0009】
(2) 好ましくは、上記カッターユニットは、上記筐体の内部空間に位置しており、上記筐体は、上記キャリッジが上記待機状態において、上記カッターを外部へ露出する露出口と、当該露出口を開閉するカバーと、を有する。
【0010】
カバーが開かれて露出口が露出されることによって、キャリッジに搭載されているカッターの交換ができる。
【0011】
(3) 好ましくは、上記印刷装置は、上記筐体より上記搬送方向の上流に位置しており、ロール形状に巻かれた上記印刷媒体を上記走査方向を回転軸として収容する収容空間を有するホルダと、上記走査方向に沿った軸周りに上記筐体に回動可能に連結されて第1位置と第2位置との移動するトレイと、を更に具備しており、上記トレイの上記軸は、上記収容空間に収容された上記印刷媒体の上記回転軸より上記搬送方向の下流に位置しており、上記第2位置は、上記第1位置より上記トレイが上記搬送方向の上流へ倒伏する位置であり、上記第2位置の上記トレイは、上記直交方向から視て、上記収容空間と重複する。
【0012】
直交方向から視て、第2位置のトレイがホルダの収容空間と重複することによって、印刷装置の搬送方向の寸法が抑制される。また、第1位置のトレイは、第2位置のトレイより倒伏していないので、トレイを第1位置とすることによって、収容空間へ印刷媒体が装填しやすくなる。
【0013】
(4) 好ましくは、上記タンクは、上記搬送方向の下流から上流へ向かって視て、上記通過口の右方に位置しており、上記待機状態のキャリッジは、上記搬送方向の下流から上流へ向かって視て、上記通過口の左方に位置する。
【0014】
カッターが交換される頻度より、タンクにアクセスされる頻度が高いので、タンクが通過口の右方に位置することにより、使い勝手がよい。
【0015】
(5) 好ましくは、上記筐体において、上記直交方向において上記通過口と少なくとも一部が同じ位置に、当該印刷装置に対する入力を受け付ける操作面を有する操作パネルが設けられており、上記操作面は、上記搬送方向の下流を向いている。
【0016】
操作パネルに搬送方向の下流からアクセスできるので、使い勝手がよい。
【0017】
(6) 好ましくは、上記キャリッジは、上記操作パネルより上記搬送方向の下流に位置する。
【0018】
露出口を通じてキャリッジへアクセスするときに、操作パネルが干渉しにくい。
【0019】
(7) 好ましくは、上記印刷ヘッドは、上記タンクより上記搬送方向の上流に位置する。
【0020】
(8) 好ましくは、上記タンクは、上記搬送方向の下流へ向く注入口を有しており、当該注入口を通じて印刷流体が補充できるものである。
【0021】
(9) 好ましくは、上記タンクは、上記搬送方向の下流へ向かって上記筐体から取り外し可能なものである。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、印刷装置に対して特定の方向からシートやタンクへアクセスすることができ、且つ、印刷装置の薄型化、小型化が実現される。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】
図1は、印刷装置10の前面14A側の斜視図である。
【
図3】
図3は、印刷装置10の後面14B側であって支持壁22が取り外された状態の斜視図である。
【
図4】
図4は、ホルダ15に収納されたロール紙11が回転軸23から一部引き抜かれた状態の印刷装置10の後面14B側の斜視図である。
【
図5】
図5は、印刷装置10の内部構成を示す模式図である。
【
図6】
図6は、カッターユニット18の構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態に係る印刷装置10について説明する。なお、以下に説明される実施形態は本発明の一例にすぎず、本発明の要旨を変更しない範囲で、実施形態を適宜変更できることは言うまでもない。また、以下の説明では、矢印の起点から終点に向かう進みが向きと表現され、矢印の起点と終点とを結ぶ線上の往来が方向と表現される。また、以下の説明においては、印刷装置10が使用可能に設置された状態(
図1の状態)を基準として上下方向7が定義され、通過口13が設けられている側を手前側(前面)として前後方向8が定義され、印刷装置10を手前側(前面)から視て左右方向9が定義される。
【0025】
[印刷装置10の全体構成]
図1に示されるように、印刷装置10は、インクジェット記録方式でロール紙11(図から
図4参照:印刷媒体の一例)などに画像を記録する。筐体14は、前面14Aに通過口13が形成された概ね直方体形状である。
【0026】
筐体14の後方には、ロール紙11を収容可能なホルダ15が位置する。筐体14の後面から上方へ向かって、トレイ20が延びている。筐体14の前面14Aには、操作パネル17が位置する。操作パネル17の下方において、筐体14の一部が前方へ突出する凸部16が位置する。凸部16は、直方体形状であり、左右方向9を長手方向とする細長な形状である。凸部16の内部空間にカッターユニット18(
図6参照)が位置する。
【0027】
[ホルダ15]
図2から
図4に示されるように、ホルダ15は、左右方向9に離れて位置する支持壁21,22と、支持壁21,22に渡って延びる回転軸23と、支持壁21,22を連続する底板25と、を有する。
【0028】
支持壁21,22は、筐体14の後面14Bからそれぞれ後方へ向かって延びている。筐体14の後面14B及び支持壁21,22の下端に渡って底板25が拡がっている。底板25は、筐体14の後面14Bと支持壁21,22とを連続している。筐体14の後面14B、支持壁21,22、及び底板25によって囲まれる空間が、収容空間26である。収容空間26には、ロール紙11が収容される。
【0029】
回転軸23は、ロール紙11の中心に沿って延びる空間に挿通される円柱形状の部材である。回転軸23の両端は、それぞれ支持壁21,22に回転可能に支持される。ロール紙11に回転軸23が挿通されて、回転軸23が左右方向9に沿って伸びた状態で支持壁21,22に支持される。これにより、ロール紙11が、ホルダ15の収容空間26に収容される。ホルダ15に収容されたロール紙11は、筐体15の後面14Bに形成された開口27(
図5参照)から、筐体14の内部空間へ進入する。
【0030】
[トレイ20]
印刷装置10の後面側には、トレイ20が設けられている。トレイ20は、ホルダ15とは別個に、矩形の複数枚の記録用紙を支持する。トレイ20は、下端を回動基端とし、上端を回動先端として、筐体14に回動可能に支持されている。
図5に示されるように、トレイ20の両側面の下端付近には、左右方向9の外方へそれぞれ突出する回動軸20Aが設けられており、回動軸20Aが、筐体14の軸受けにそれぞれ嵌合されることによって、トレイ20が軸線30(
図2参照)周りに回動可能となっている。
図2に示されるように、軸線30は、ホルダ15の回動軸23より前方に位置する。
【0031】
トレイ20は、
図1に示される起立位置(第1位置の一例)と、
図5に示される倒伏位置(第2位置の一例)との間で回動可能である。起立位置は、トレイ20を使用しないときに、筐体14の後方においてトレイ20が占める前後方向8のスペースを小さくするための位置である。起立位置であるトレイ20の後面は、筐体14の後面14Aと略平行となっている。倒伏位置は、トレイ20が筐体14から後方へ向かって斜め上方へ傾斜した位置である。倒伏位置であるトレイ20に支持された、例えば、単票の記録用紙(印刷媒体の一例)は、その表裏面が鉛直方向と交差する。
【0032】
図1に示されるように、トレイ20の前面には、一対のサイドガイド32が設けられている。サイドガイド32は、左右方向9に離れて位置している。サイドガイド32は、トレイ20の前面に支持された記録用紙の左右方向9の両端にそれぞれ当接することによって、左右方向9において記録用紙を位置決めする。また、トレイ20は、内部空間に収容されており、引き出されることによって上端から延出する拡張トレイ29が設けられている。拡張トレイ29がトレイ20の内部空間から引き出されることにより、トレイ20の前面から上方に突出し、記録用紙を拡張トレイ29が支持する。拡張トレイ29がトレイ20の内部空間に収容されることによって、トレイ20の外形が小さくなる。
【0033】
図5に示されるように、倒伏位置であるトレイ20に支持された記録用紙は、開口31を通じて、筐体14の内部空間へ進入する。トレイ20の位置は、ユーザの操作によって任意に選択可能である。倒伏位置のトレイ20の上端側の一部分は、上下方向7に沿って視て、ホルダ15の収容空間26と重複している。
【0034】
[操作パネル17]
図1に示されるように、操作パネル17は、筐体14の前面14Aにおいて凸部16の上方に位置する。操作パネル17の前面が操作面17Aである。操作面17Aには、ディスプレイ33、操作キー34、電源ボタン35などが位置する。操作面17Aは、概ね前方を向いているが、例えば、前方且つ上方を向いていても、操作パネル17が筐体14に対して回動可能であることにより、操作面17Aの向きが可変であってもよい。
【0035】
[搬送経路65]
図5に示されるように、筐体14の内部空間に設けられた搬送経路65は、後面14Bに形成された開口27から、凸部16に形成された通過口13へ向かって、概ね真っ直ぐに延びている。搬送経路65は、上下方向7に離れている位置するガイド部材などによって区画されている。搬送経路65を、ロール紙11から延びる部分や記録用紙が通過する。なお、
図5においては、第1搬送ローラ対54より搬送向きの下流となる搬送経路65が2点鎖線で示されている。
【0036】
[バイパス経路66]
図5に示されるように、筐体14の内部空間に設けられたバイパス経路66は、後面14Bに形成された開口31から前方かつ下方へ延びて、搬送経路65の第1搬送ローラ対54より後方の位置に連続する。バイパス経路66は、上下方向7に離れている位置するガイド部材などによって区画されている。バイパス経路66を、トレイ20に支持された記録用紙が通過する。
【0037】
[第1搬送ローラ対54及び第2搬送ローラ対55]
図5に示されるように、搬送経路65における記録部24よりも搬送向き(前後方向8の前向き)の上流側には、第1搬送ローラ対54(搬送手段の一例)が設けられている。第1搬送ローラ対54は、第1搬送ローラ60とピンチローラ61とを有する。搬送経路65において、記録部24よりも搬送向きの下流側には、第2搬送ローラ対55が設けられている。第2搬送ローラ対55は、第2搬送ローラ62と拍車63とを有する。第1搬送ローラ60及び第2搬送ローラ62は、モータ(不図示)の回転が伝達されて回転する。第1搬送ローラ対54及び第2搬送ローラ対55は、それぞれを構成する各ローラの間にロール紙11から延びた部分や記録用紙を挟持した状態において、第1搬送ローラ60及び第2搬送ローラ62が回転することによって、ロール紙11や記録用紙を搬送する。
【0038】
[記録部24]
図5に示されるように、第1搬送ローラ対54と第2搬送ローラ対55との間において、記録部24は、プラテン42と対向して搬送経路5の上側に設けられている。記録部24は、ヘッドキャリッジ41と印刷ヘッド39とを備えている。ヘッドキャリッジ41は、プラテン42の後側及び前側に設けられたキャリッジガイドレール43,44によって支持されている。キャリッジガイドレール44には、公知のベルト機構が設けられている。ヘッドキャリッジ41は、ベルト機構の無端ベルトと連結されており、無端ベルトの回動によってキャリッジガイドレール43,44に沿って左右方向9に移動する。
【0039】
印刷ヘッド39は、ヘッドキャリッジ41に搭載されている。印刷ヘッド39の下面には、複数のノズル(不図示)が形成されている。印刷ヘッド39には、タンク70からチューブ71を通じてインク(印刷流体の一例)が供給される。印刷ヘッド39は、複数のノズルからインクを微小なインク滴として選択的に吐出する。ヘッドキャリッジ41が左右方向9へ移動しているときに、ノズルからプラテン42に支持されているロール紙11や記録用紙に対してインク滴が吐出される。吐出されたインク滴がプラテン42上のロール紙11や記録用紙に付着することにより、ロール紙11の一部や記録用紙に画像や文字が記録される。
【0040】
[タンク70]
図5に示されるように、タンク70は、筐体14の内部空間に位置する。タンク70は、インクを貯留する中空形状の容器である。タンク70は、例えば、ブラック、イエロー、シアン、マゼンタの顔料インクをそれぞれ貯留する複数の貯留空間を有している。タンク70の前面の上端付近には注入口72が形成されている。注入口72を通じてタンク70の貯留空間へインクが補充可能である。注入口72は、各貯留空間毎に設けられている。同図には示されていないが、注入口72は、キャップにより封止されており、キャップが取り外されることによって注入口72からインクが補充可能となる。タンク70は、印刷ヘッド39より前方、すなわち搬送方向の下流に位置する。
【0041】
図1に示されるように、筐体14の前面14Aにおける左右方向9の右方には、カバー73が設けられている。カバー73は、凸部16より右方に位置する。カバー73は、下端付近において左右方向9に沿った回動軸73A周りに回動可能である。すなわち、カバー73は、筐体14に回動可能に連結されている。
図1に示されるように、閉位置のカバー73は、筐体14の前面14Aを構成する。カバー73の後方にはタンク70が位置する。すなわち、タンク70は、通過口13より右方に離れて位置する。
【0042】
カバー73が回動軸73A周りに回動されることによって、カバー73の上端側が前方へ移動して、筐体14の内部空間にあるタンク70の少なくとも注入口72付近が露出される。すなわち、カバー73が開位置にあるときに、筐体14の前方からタンク70にアクセス可能となる。タンク70にアクセス可能とは、筐体14の外部から、注入口72を封止するキャップを外したり、注入口72を通じてタンク70の貯留空間にインクを補充したりできることをいう。なお、タンク70は、必ずしも全てが筐体14の内部空間に位置しなくてもよい。また、カバー73の回動軸73Aは上下方向7に沿っていてもよい。
【0043】
[通過口13]
図1に示されるように、通過口13は、凸部16の前面において、左右方向9を長手方向とする細長な開口である。通過口13は、搬送経路65の終端である。通過口13から、印刷後のロール紙11の一部や記録用紙が外部へ排出される。
図5に示されるように、通過口13は、上下方向7において、タンク70と同じ位置にある。また、通過口13は、上下方向7において、タンク70の上端と下端との間の範囲Lに位置する。
【0044】
[カッターユニット18]
図1に示されるように、筐体14の前面には前方へ突出する凸部16が設けられている。凸部16における通過口13の左方には、露出口12が形成されている。露出口12は、前方及び上方へ向かって開口しており、露出口12を通じて凸部16の内部空間が外部に露出される。
図1及び
図2に示されるように、露出口12は、カバー19により閉じられている。カバー19が回動などによって露出口12を閉じている位置から移動されることによって、露出口12が開放される。すなわち、カバー19は、露出口12を開閉する。
【0045】
図6に示されるように、凸部16の内部空間に、カッターユニット18が位置する。カッターユニット18は、印刷後に通過口13を通過するロール紙11の一部分を切断する。
図5に示されるように、カッターユニット18は、上下方向7において、タンク70と同じ位置にある。また、カッターユニット18は、上下方向7において、タンク70の上端と下端との間の範囲Lに位置する。
【0046】
図6に示されるように、カッターユニット18は、左右方向9へ延びるガイドシャフト80と、ガイドシャフト80に沿って移動するカッターキャリッジ81と、カッターキャリッジ81に搭載されたカッター82と、を有する。
【0047】
ガイドシャフト80は、通過口13の左右方向9の両端よりも外方にまで延びる棒状の部材である。ガイドシャフト80は、凸部16の側壁などに支持されている。カッターキャリッジ81は、ガイドシャフト80に支持されている。なお、ガイドシャフト80と平行に延びるカッターガイドレール(図示省略)が更に設けられており、ガイドシャフト80及びカッターガイドレールがカッターキャリッジ81を支持してもよい。
【0048】
各図には示されていないが、ガイドシャフト80に沿って公知のベルト機構が設けられている。カッターキャリッジ81は、ベルト機構の無端ベルトと連結されており、無端ベルトの回動によってガイドシャフト80に沿って左右方向9に移動する。つまり、左右方向9がカッターキャリッジ81の走査方向である。カッターキャリッジ81は、待機状態、すなわち印刷装置が印刷を行っていない状態では、
図6に示されるように、ガイドシャフト80の左方であって、露出口12付近に位置する。この位置が待機位置Hである。待機位置Hは、通過口13より左方(印刷装置10を前方から見て左)に離れた位置である。
【0049】
カッター82は、カッターキャリッジ81に搭載されている。カッター82は、ロール紙11などを切断可能な刃を有する。カッター82の刃先は右方(印刷装置10を前方から見て右)を向いている。カッターキャリッジ81が待機位置Hから右方へ移動するときに、カッター82の刃が、印刷後のロール紙11の一部分に当接して、ロール紙11の一部分が切断される。
【0050】
カッター82は、カッターキャリッジ81とネジ留め(図示省略)などによって連結されている。ネジが取り外されると、カッター82はカッターキャリッジ81から取り外し可能となる。カッター82は、露出口12を通過可能な外形である。カッターキャリッジ81が待機位置Hであるとき、露出口12が開かれると、カッター82は、カッターキャリッジ81から取り外されて外部へ取り出されることが可能である。待機位置Hのカッターキャリッジ81は、操作パネル17より前方に位置するので、露出口12を通じて、カッター82は前方又は上方へ取り出されることが可能である。カッター82が取り出されるための操作が可能であることが、カッター82にアクセス可能と称される。
【0051】
[実施形態の作用効果]
前述された実施形態に係る印刷装置10によれば、通過口13及びカッターユニット18が、上下方向7においてタンク70と同じ位置にあり、タンク70は、通過口13から左右方向9の右方に離れて位置しており、待機位置Hのカッターキャリッジ81は、通過口13から左右方向9の左方に離れて位置するので、印刷装置10の上下方向7の寸法を抑えて薄型化を実現しつつ、左右方向9の寸法を小さくして、印刷装置10の設置面積を抑制することができる。また、タンク70や印刷後のロール紙11の一部に、筐体14に対して前方からアクセスすることができる。
【0052】
また、カバー19が開かれて凸部16の露出口12が露出されることによって、待機位置Hのカッターキャリッジ81に搭載されているカッター82の交換ができる。
【0053】
また、上下方向7から視て、倒伏位置のトレイ20がホルダ15の収容空間26と重複することによって、印刷装置10の前後方向8の寸法が抑制される。また、起立位置のトレイ20は、倒伏位置のトレイ20より上下方向7に対して倒伏していないので、トレイ20を起立位置とすることによって、収容空間20へロール紙11が装填しやすくなる。
【0054】
また、カッター82が交換される頻度より、タンク70にインクを補充する頻度が高いので、タンク70が通過口13の右方(印刷装置10を前方から見て右)に位置することにより、使い勝手がよい。
【0055】
また、操作パネル17の操作面17Aが前方を向いているので、ディスプレイ33を視たり、操作キー34や電源ボタン35を印刷装置10の前方から操作したりできるので、使い勝手がよい。
【0056】
また、カッターキャリッジ81が、操作パネル17より前方に位置するので、露出口12を通じてカッターキャリッジ81へアクセスするときに、操作パネル17がユーザの手などと干渉しにくい。
【0057】
[変形例]
前述された実施形態では、タンク70は、筐体14の内部空間に固定されており、注入口72を通じてタンク70の貯留空間へインクが補充可能なものであるが、これに代えて、タンク70は筐体14に対して着脱可能なカートリッジタイプのものであり、カバー73が開かれて、筐体14から前方へ向かって取り外し可能なものであってもよい。
【0058】
また、タンク70は、ブラック、イエロー、シアン、マゼンタの4色のインクを貯留する複数の貯留空間を有しているが、これに代えて、ブラックのインクを貯留する単一の貯留空間のみを有するものであってもよい。
【0059】
また、タンク70は、ブラック、イエロー、シアン、マゼンタの顔料インクを貯留するが、これに代えて、ブラックの顔料インクと、イエロー、シアン、マゼンタの染料インクとを貯留してもよい。また、タンク70は、ブラック、イエロー、シアン、マゼンタの染料インクを貯留してもよい。また、タンク70が貯留するインクは、例えば、金属粒子が溶媒に分散された導電性のインクであってもよい。また、タンク70が、ブラック、イエロー、シアン、マゼンタのインクを貯留する貯留空間と、導電性のインクを貯留する貯留空間と、を有していてもよい。
【0060】
また、通過口13及びカッターユニット18は、上下方向7において、タンク70の上端と下端との間から、一部分が上方又は下方にあってもよい。すなわち、通過口13及びカッターユニット18は、上下方向7において、タンク70の間に一部が位置していればよい。また、タンク70とカッターユニット18の待機位置Hとは、通過口13に対して左右方向9の位置が逆であってもよい。すなわち、タンク70が通過口13の左方に位置しており、待機位置Hが通過口13の右方であってもよい。
【0061】
また、カッターユニット18は、凸部16の内部空間に設けられていたが、これに限らない。例えば、カッターユニット18は、筐体14の内部空間に設けられていてもよい。カッターユニット18が筐体14の内部空間に設けられる場合、カッターユニット18は、前後方向8において、印刷ヘッド39の下流に位置する。
【0062】
また、カッター82は、前述された実施形態に代えて、前後方向8に沿った回転軸を有する円盤形状のものであってもよい。
【0063】
また、通過口13は、必ずしも筐体14の前面14Aに形成されていなくてもよい。例えば、通過口13が凸部16の上面や筐体14の上面に形成されて、通過口13を通過する印刷済みのロール紙11が、斜め上方や上方に排出されてもよい。
【0064】
また、前述した印刷ヘッド39は、キャリッジガイドレール43,44に支持されたヘッドキャリッジ41が左右方向9へ移動しつつロール紙11などにインクを吐出する、所謂シリアルヘッドであるが、印刷ヘッド39は、ロール紙11の左右方向9の寸法と同等以上の幅を有するものであり、左右方向9へ移動することなく、ロール紙11などにインクを吐出するラインヘッドであってもよい。また、印刷ヘッド39は、前後方向8において、タンク70と重複する位置にあってもよい。
【0065】
また、前述した印刷装置10は、ロール紙11と記録用紙とに印刷することが可能であるが、これに限らず、印刷装置10は、ロール紙11のみに印刷する装置であってもよいし、記録用紙のみに印刷する装置であってもよい。
【0066】
また、前述された印刷装置10は、筐体14の前面14A及び後面14Bが上下方向7及び左右方向9に沿った状態で使用されるが、印刷装置10の使用姿勢はこれに限らない。
【符号の説明】
【0067】
10・・・印刷装置
12・・・露出口
13・・・通過口
14・・・筐体
15・・・ホルダ
17・・・操作パネル
17A・・・操作面
18・・・カッターユニット
19・・・カバー
20・・・トレイ
39・・・印刷ヘッド
60・・・第1搬送ローラ(搬送手段)
70・・・タンク
72・・・注入口
81・・・キャリッジ
82・・・カッター