(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-20
(45)【発行日】2022-09-29
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
H01L 29/417 20060101AFI20220921BHJP
H01L 29/47 20060101ALI20220921BHJP
H01L 21/768 20060101ALI20220921BHJP
H01L 23/522 20060101ALI20220921BHJP
H01L 29/06 20060101ALI20220921BHJP
H01L 21/316 20060101ALI20220921BHJP
H01L 21/338 20060101ALI20220921BHJP
H01L 29/778 20060101ALI20220921BHJP
H01L 29/812 20060101ALI20220921BHJP
【FI】
H01L29/52
H01L29/56
H01L29/50 J
H01L21/90 D
H01L29/06 301F
H01L21/316 X
H01L29/80 H
(21)【出願番号】P 2018135136
(22)【出願日】2018-07-18
【審査請求日】2021-04-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000106276
【氏名又は名称】サンケン電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100097113
【氏名又は名称】堀 城之
(74)【代理人】
【識別番号】100162363
【氏名又は名称】前島 幸彦
(72)【発明者】
【氏名】青木 宏憲
【審査官】宇多川 勉
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-006481(JP,A)
【文献】特開2004-200248(JP,A)
【文献】特開2010-199481(JP,A)
【文献】特開2002-208592(JP,A)
【文献】特開2014-072391(JP,A)
【文献】特表2009-503815(JP,A)
【文献】国際公開第2017/150452(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 29/417
H01L 29/47
H01L 21/768
H01L 29/06
H01L 21/316
H01L 21/338
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体層の上に形成された絶縁層の一部に形成された電極層が用いられた半導体装置であって、
前記絶縁層は、前記半導体層と接する第1絶縁層と、前記第1絶縁層の上に形成された第2絶縁層と、を具備し、
前記第2絶縁層及び前記第1絶縁層を貫通する第1の開口が形成され、
前記第1の開口の内部を覆うように連続的に前記第1絶縁層よりも薄く形成された第3絶縁層を具備し、
前記第1の開口の内部における前記第3絶縁層の一部に、前記半導体層を露出させる第2の開口が形成され、
前記第1絶縁層及び前記第3絶縁層はプラズマシリコン酸化膜で構成され、前記第2絶縁層はTEOS酸化膜で構成され、
前記第2絶縁層は前記第1絶縁層よりも薄く、前記第1の開口を構成する前記第1絶縁層の第1の側面よりも、前記第1の側面の直上にあり前記第1の開口を構成する前記第2絶縁層の第2の側面は緩やかに構成され、
前記第1の側面及び前記第2の側面に、
前記第3絶縁層を介して前記電極層が接することを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
前記第3絶縁層の厚さは0.05μm~0.3μmの範囲であることを特徴とする請求項
1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記半導体層はIII族窒化物半導体で構成されたことを特徴とする請求項1
又は2に記載の半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体基板の上に絶縁層と電極とが形成された半導体装置の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
III族窒化物半導体(GaN等)を用いた半導体装置として、HEMT(High Electron Mobility Transistor))が用いられている。HEMTにおいては電流コラプス現象が問題になるが、電流コラプス現象の緩和のためには、ゲート電極の一部の下に絶縁層を挟んでIII族窒化物半導体層と対向させたフィールドプレート構造が有効である。フィールドプレート構造によって、その下側のIII族窒化物半導体層の表面電位及びIII族窒化物半導体層中での電界が制御され、電流コラプス現象が緩和されることが知られている。
【0003】
特許文献1には、このようなフィールドプレート構造を具備するゲート電極が用いられる半導体装置の構造、製造工程が記載されている。
図4(a)~(h)、
図5(i)~(m)は、この半導体装置9の製造工程を示す工程断面図である。
【0004】
図4(a)においては、HEMTの能動層を構成するIII族窒化物半導体層(半導体層)10の上において、酸化膜(シリコン酸化膜)21、酸化膜21よりも厚いTEOS酸化膜22が順次形成される。ここで、酸化膜21はシラン(SiH
4)を原料として例えばプラズマCVD等によって形成されたプラズマシリコン酸化膜であり、TEOS酸化膜22は、常温で液体であるTEOS(テトラエトキシシラン)を原料として例えばプラズマCVD等によって形成された膜であり、どちらもSiO
2に近い組成をもつ絶縁膜であるが、酸化膜21とTEOS酸化膜22とは組成、膜質は異なる。
【0005】
その後、
図4(b)に示されたようにマスクとなるフォトレジスト層100をフォトリソグラフィにより形成する。この場合におけるフォトレジスト層100の開口は、ゲート電極部分(HEMTにおけるゲートとして機能する部分)に対応する。この状態でドライエッチングを行うことにより、
図4(c)に示されたようにTEOS酸化膜22に開口が形成される。ドライエッチングは異方性であるため、この際にエッチングされたTEOS酸化膜22の側面はほぼ垂直となる。
【0006】
次に、この状態からウェットエッチングを行うことにより、
図4(d)に示されたように酸化膜21にも開口が形成される。この際、TEOS酸化膜22、酸化膜21は厳密な組成や膜質は異なるものの、どちらも組成はSiO
2に近い膜であるため、この際にTEOS酸化膜22、酸化膜21のどちらも同一のエッチャントによりエッチングされ、エッチング速度は、TEOS酸化膜22の方が酸化膜21よりも速い。また、前記のドライエッチングとは異なりウェットエッチングは等方性であるため、酸化膜21がエッチングされる際にTEOS酸化膜22は横方向にエッチングされる。ただし、前記の通り、酸化膜21は薄いため、酸化膜21をウェットエッチングで除去する際のTEOS酸化膜22の横方向のエッチング量を小さく留めることができる。その結果、
図4(d)に示されるように、TEOS酸化膜22/酸化膜21を貫通する開口はテーパー形状となる。
【0007】
その後、
図4(e)に示されるようにフォトレジスト層100を除去した後に、再びフォトリソグラフィにより新たにフォトレジスト層100を
図4(f)に示されるように形成する。
図4(f)においては左右のフォトレジスト層100が覆う範囲は開口に対して非対称となっている。
【0008】
この状態で前記と同様のウェットエッチングを行うと、TEOS酸化膜22、酸化膜21のどちらも等方的にエッチングされ、かつTEOS酸化膜22の方がエッチング速度が速いため、
図4(g)に示されるような緩やかに段差が設けられた断面形状が得られる。その後、フォトレジスト層100を除去した(
図4(h))後に、TEOS酸化膜23を薄く形成すれば、
図5(i)に示されるようになる。
【0009】
その後、
図5(j)に示されるように、再びフォトレジスト層100を形成する。この際のフォトレジスト層100の開口は、ゲート電極がIII族窒化物半導体層10と接する部分(HEMTにおけるゲートとして機能する部分)に対応する。その後、この開口部分でIII族窒化物半導体層10上の薄いTEOS酸化膜23をウェットエッチングで除去することにより、
図5(k)に示されるようにこの部分でIII族窒化物半導体層10を露出させることができる。その後、フォトレジスト層100を除去した(
図5(l))後に、上記のように形成された凹部全体の内部を充填するようにゲート電極30を形成することによって、
図5(m)の形態となる。
【0010】
図5(m)において、ゲート電極30は、領域CにおいてはIII族窒化物半導体層10と接してHEMTにおけるゲート(ショットキーゲート)として機能する。一方、領域Dにおいては、ゲート電極30は、薄いTEOS酸化膜23、酸化膜21、TEOS酸化膜22を介してIII族窒化物半導体層10と対向するフィールドプレートとして機能する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
特許文献1に記載の構造の半導体装置においては、歩留まりは向上したものの、電流コラプス特性を緩和するという効果は十分ではなかった。これは、以下の原因によると推定された。
【0013】
上記の構造においては、フィールドプレート直下における最も絶縁層の薄い部分は、領域Cの外側のTEOS酸化膜23のみで構成された部分であり、この部分ではIII族窒化物半導体層10とTEOS酸化膜23とが直接接する。前記の通り、原料に起因してTEOS酸化膜23と酸化膜21の組成や膜質は異なる。特に、有機材料であるTEOSが用いられたTEOS酸化膜23には不純物が多く含まれ、特にこの不純物として炭素(C)が多く含まれ、これに起因して膜質は酸化膜21と比べて劣る。
【0014】
このため、電流コラプス特性を十分に抑制する事ができなかった。
【0015】
本発明は、かかる問題点に鑑みてなされたものであり、上記問題点を解決する発明を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、上記課題を解決すべく、以下に掲げる構成とした。
本発明の半導体装置は、半導体層の上に形成された絶縁層の一部に形成された電極層が用いられた半導体装置であって、前記絶縁層は、前記半導体層と接する第1絶縁層と、前記第1絶縁層の上に形成された第2絶縁層と、を具備し、前記第2絶縁層及び前記第1絶縁層を貫通する第1の開口が形成され、前記第1の開口の内部を覆うように連続的に前記第1絶縁層よりも薄く形成された第3絶縁層を具備し、前記第1の開口の内部における前記第3絶縁層の一部に、前記半導体層を露出させる第2の開口が形成され、前記第1絶縁層及び前記第3絶縁層はプラズマシリコン酸化膜で構成され、前記第2絶縁層はTEOS酸化膜で構成され、前記第2絶縁層は前記第1絶縁層よりも薄く、前記第1の開口を構成する前記第1絶縁層の第1の側面よりも、前記第1の側面の直上にあり前記第1の開口を構成する前記第2絶縁層の第2の側面は緩やかに構成され、前記第1の側面及び前記第2の側面に、前記第3絶縁層を介して前記電極層が接することを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明は以上のように構成されているので、電流コラプス特性が十分に抑制された半導体装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の実施の形態に係る半導体装置の構造を示す断面図である。
【
図2】本発明の実施の形態に係る半導体装置の製造方法を示す工程断面図(その1)である。
【
図3】本発明の実施の形態に係る半導体装置の製造方法を示す工程断面図(その2)である。
【
図4】従来の半導体装置の製造方法を示す工程断面図(その1)である。
【
図5】従来の半導体装置の製造方法を示す工程断面図(その2)である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態となる半導体装置について説明する。この半導体装置は、III族窒化物化合物半導体上にゲート電極があり、そのゲート電極は、フィールドプレート構造を具備する。このため、電流コラプス特性が緩和される。
【0020】
図1は、この半導体装置1におけるゲート電極周囲の構造を示す断面図である。この半導体装置1においても、前記の半導体装置9と同様にIII族窒化物半導体(半導体層)10が用いられる。なお、実際にはIII族窒化物半導体層10はエピタキシャル成長によって得られるため、III族窒化物半導体層10の下側にもバッファ層や基板が存在しても良い。
【0021】
III族窒化物半導体層10の上には、酸化膜(シリコン酸化膜:第1絶縁層)41、酸化膜41上のTEOS酸化膜(第2絶縁層)42が形成されている。酸化膜41は前記の酸化膜21と同様のプラズマシリコン酸化膜であり、TEOS酸化膜42は前記のTEOS酸化膜22と同様のTEOS(テトラエトキシシラン)を原料として形成された膜である。ここで、TEOS酸化膜42は酸化膜41よりも薄く形成される。TEOS酸化膜42、酸化膜41を貫通する大きな開口(第1の開口)が形成された上で、これら全体を覆う薄い酸化膜(第3絶縁層)43が形成される。酸化膜43は前記の酸化膜41と同様のシリコン酸化膜であり、酸化膜41よりも薄く形成される。第3絶縁膜43としては酸化膜の代わりに窒化膜を用いてもよい。また、酸化膜と窒化膜の組合わせ(例えば、酸化膜上に窒化膜が積層されたもの)を用いてもよい。第1の開口中における酸化膜43には、III族窒化物半導体層10を露出させる開口(第2の開口)が設けられ、酸化膜43はIII族窒化物半導体と接している。
【0022】
ゲート電極50は、第2の開口を含む第1の開口の内部を充填するように形成される。なお、
図1においてはゲート電極50は単層構造として記載されているが、実際にはゲート電極50は、III族窒化物半導体層10と接触をする第1の電極(例えばNiO)からなる層と、第1の電極よりも低抵抗の第2の電極(例えばAl)からなる層の2層構造で形成される。
図1において、ゲート電極50は第1の開口上まで延びており、領域AにおいてはIII族窒化物半導体層10と直接接してゲートとして機能し、領域Bにおいては薄い酸化膜43を介してIII族窒化物半導体層10と対向するフィールドプレートとして機能する。
【0023】
ここで、後述するように、第1の開口は、TEOS酸化膜42、酸化膜41をエッチング(ウェットエッチング又はドライエッチングあるいはこれらの併用)することによって形成される。この際、TEOS酸化膜42と酸化膜41の膜質が異なるため、同一のエッチング条件下においては、エッチング速度はTEOS酸化膜42の方が速い。このため、
図1に示されるように、酸化膜41のテーパー角よりも、TEOS酸化膜42のエッチング端面のテーパー角を小さくすることができる。すなわち、酸化膜41の上側にTEOS酸化膜42を形成した積層構造に対して第1の開口を形成することにより、第1の開口の周辺の断面形状のIII族窒化物半導体層10の上面に対する角度を緩やかにし、ゲート電極50の端部近傍の電界集中を抑制し、電流コラプス特性が緩和される。
【0024】
また、この半導体装置1においては、フィールドプレート構造の直下において、膜質が劣り炭素(C)等の不純物が多く含まれるTEOS酸化膜が直接III族窒化物半導体層10と接することがない。このため、TEOS酸化膜中の不純物がIII族窒化物半導体層10の表面へ拡散することや、TEOS酸化膜の吸湿(水分)がIII族窒化物半導体層10の表面に与える悪影響を抑制することができる。
【0025】
この半導体装置1は、以下に説明する製造方法によって製造することができる。
図2(a)~(h)、
図3(i)(j)は、この製造方法を示す工程断面図である。ここでは、
図2(a)に示されるように、III族窒化物半導体層10の上において、酸化膜41、TEOS酸化膜42が順次形成される。ここで、TEOS酸化膜42は酸化膜41よりも薄く設定される。
【0026】
その後、
図2(b)に示されたようにマスクとなるフォトレジスト層100をフォトリソグラフィにより形成する。この場合におけるフォトレジスト層100の開口は、ゲート電極50がIII族窒化物半導体層10と接する部分(HEMTにおけるゲートとして機能する部分)及びゲート電極50がフィールドプレートとして機能する部分に対応する。この状態でTEOS酸化膜42に対してドライエッチングを行うことにより、
図2(c)に示されたように、エッチング速度の高いTEOS酸化膜42を開口することができる。その後、この状態からウェットエッチングを引き続き行うことにより、
図2(d)に示されたように、開口(第1の開口E)が下側の酸化膜41にも形成される。この際、エッチング速度は酸化膜41よりもTEOS酸化膜42の方が高く、かつウェットエッチングは等方性であるため、上側のTEOS酸化膜42を特にテーパー化することができる。その後、フォトレジスト層100を除去することにより、
図2(e)の形状が得られる。すなわち、この工程によって、第1の開口Eを構成するTEOS酸化膜42の側面(第2の側面42A)は、その直下にある酸化膜41の側面(第1の側面41A)よりも傾斜した角度となり、第1の開口Eの断面形状は緩やかとなる。
【0027】
なお、
図2(c)においては、ドライエッチングによって酸化膜41は開口(貫通)されておらず、ウェットエッチング(
図2(d))によって酸化膜41が開口されIII族窒化物半導体層10の表面が露出する。このため、、ドライエッチングによってIII族窒化物半導体層10がエッチングされて結晶欠陥を生じることが抑制される。また、フォトレジスト100を残してウェットエッチングすることにより、フォトレジスト100の下のTEOS酸化膜42の上面がウェットエッチングされることが抑制され、その結果、薄いTEOS酸化膜42の厚さがこの工程で減少することが抑制される。
【0028】
その後、
図2(f)に示されるように、薄い酸化膜43を前面に形成する。この際に、第1の開口Eの断面形状は上記のように緩やかとなっているために、第1の開口Eの内部から外部にわたり、高い被覆性で酸化膜43を形成することができる。
【0029】
その後、
図2(g)に示されるように、ゲート電極50がIII族窒化物半導体層10と接する部分に対応する開口をもつフォトレジスト層100を形成し、
図2(h)に示されるようにこの部分の酸化膜43をウェットエッチングにより除去することにより、
図3(i)に示されるように、第2の開口Fが酸化膜43に形成される。この際、ウェットエッチングで形成することによって、第2の開口Fを構成する酸化膜43の端部にも傾斜を形成することができる。
【0030】
その後、ゲート電極50を構成する材料を上記のように形成された凹部の内部を充填するように全面に形成した後に、パターニング(フォトリソグラフィによりフォトレジスト層100をゲート電極50となる部分にマスクとして形成した後にドライエッチングによりこの材料をエッチング)することによって、
図3(j)に示されるように、半導体装置1が得られる。
【0031】
前記の半導体装置9においては、
図5(m)のフィールドプレートとして機能する領域Dにおける、ゲート電極30(フィールドプレート)とIII族窒化物半導体層10の間の絶縁層のうち主となるのは、
図4(g)においてウェットエッチングが施された後の酸化膜21であり、ウェットエッチングの工程におけるばらつきに起因して、フィールドプレート直下における酸化膜21の膜厚を正確に制御することが困難である。このため、この場合におけるフィールドプレートとしての効果のばらつきも大きくなる。
【0032】
これに対して、
図1の半導体装置1においては、フィールドプレートとして機能する領域Bにおける、ゲート電極50(フィールドプレート)とIII族窒化物半導体層10の間の絶縁層は、
図2(f)において成膜された酸化膜43であり、少なくとも領域Bにおける酸化膜43にはウェットエッチング等は全く施されず、その膜厚は成膜時(
図2(f))と変わりがない。酸化膜43の成膜時の膜厚は高精度で制御することが可能であるため、この膜厚は精密に制御され、領域Bにおけるフィールドプレートの効果のばらつきは小さい。
【0033】
また、上記の半導体装置1においても、
図2(e)に示されたように、第1の開口Eにおける端面のテーパー角を制御するために、ウェットエッチングが用いられたが、このエッチング時間は短い(エッチング量が小さい)ため、これにより形成される形状のばらつきは小さい。更に、この際に形状や膜厚のばらつきが発生しても、ゲート電極50においてフィールドプレートとして機能する領域Bは第1の開口Eの内部であるため、これらがフィールドプレートとしての効果に与える影響も小さい。このため、この半導体装置1の特性のばらつきを小さくすることができる。
【0034】
また、前記の半導体装置9の製造方法(
図4、5)と、この半導体装置1の製造方法(
図2、3)を比べると、フォトリソグラフィを行う(フォトレジストパターン100を形成する)回数が、前者の場合には3回であったのに対して、後者の場合には、第1の開口、第2の開口をそれぞれ形成するための2回のみとなっている。このため、この半導体装置1を安価に製造することができる。
【0035】
上記の構造においては、TEOS酸化膜42は、主にゲート電極50(フィールドプレート)直下の絶縁層の表面の傾斜を緩やかにする。ただし、TEOS酸化膜42が薄すぎる場合には、段差部分を緩やかにする効果が小さくなる。このため、
図2(a)において形成されるTEOS酸化膜42の厚さは0.2~0.5μmの範囲とすることが好ましく、これに対応して、酸化膜41の厚さは、TEOS酸化膜42よりも厚く、0.35~0.75μmの範囲とすることが好ましい。酸化膜43は、フィールドプレートの効果を大きくするために、酸化膜41よりも薄く、0.05~0.3μmの範囲とすることが好ましい。
【0036】
また、TEOS酸化膜42が一つの要因となって電流コラプスが発生することもある。この場合、酸化膜41をTEOS酸化膜42よりも厚くすることで、電流コラプスを緩和することができる。
【0037】
なお、上記の例においては、ゲート電極にフィールドプレート構造(フィールドプレートとして機能する部分)が設けられたが、III族窒化物半導体層10上の他の電極(ソース電極、ドレイン電極)においても、フィールドプレート構造を設ける場合には、同様の構造、製造方法を用いることができる。
【0038】
また、上記の例では、III族窒化物半導体層(半導体層)10の上の絶縁層として、酸化膜(第1絶縁層)41、TEOS酸化膜(第2絶縁層)42、酸化膜(第3絶縁層)43が用いられ、第1絶縁層及び第3絶縁層として、プラズマシリコン酸化膜が、第2絶縁層としてTEOS酸化膜が用いられた。しかしながら、上記と同様の構成が実現できる限りにおいて、各絶縁層として各種のものを用いることができる。
【0039】
この場合、半導体層と直接接する第1絶縁層、第3絶縁層としては、不純物が少なく半導体層との間の界面特性が良好である絶縁層を用いることができ、第2絶縁層としては、第1絶縁層よりもエッチング速度が高く
図2(e)の形状を容易に実現することができる絶縁層が特に好ましい。第3絶縁層と第1絶縁層を同一種の絶縁層とする必要もない。また、例えば一般的に絶縁層はその成膜条件により不純物や膜質が変動するため、各絶縁層で成膜条件を変えことによって、上記の半導体装置を製造することもできる。
【0040】
また、上記の例は、半導体層がGaN層である半導体装置であるが、同様にフィールドプレート構造が有効となる半導体装置において、上記の構造は有効である。このような半導体層を構成する材料としては、GaN以外のIII族窒化物半導体がある。
【符号の説明】
【0041】
1、9 半導体装置
10 III族窒化物半導体層(半導体層)
21 酸化膜(シリコン酸化膜)
22、23 TEOS酸化膜
30、50 ゲート電極
41 酸化膜(シリコン酸化膜:第1絶縁層)
41A 第1の側面
42 TEOS酸化膜(第2絶縁層)
42A 第2の側面
43 酸化膜(シリコン酸化膜:第3絶縁層)
100 フォトレジスト層
E 第1の開口
F 第2の開口