(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-20
(45)【発行日】2022-09-29
(54)【発明の名称】伝送方法および伝送システム
(51)【国際特許分類】
H04L 1/00 20060101AFI20220921BHJP
H04B 11/00 20060101ALI20220921BHJP
【FI】
H04L1/00 B
H04B11/00 D
(21)【出願番号】P 2018160449
(22)【出願日】2018-08-29
【審査請求日】2021-04-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000000099
【氏名又は名称】株式会社IHI
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100175802
【氏名又は名称】寺本 光生
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100167553
【氏名又は名称】高橋 久典
(72)【発明者】
【氏名】真貝 昌俊
(72)【発明者】
【氏名】小林 陽
(72)【発明者】
【氏名】水島 隼人
(72)【発明者】
【氏名】塩形 大輔
(72)【発明者】
【氏名】藤井 正和
【審査官】谷岡 佳彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-324876(JP,A)
【文献】特開昭63-269635(JP,A)
【文献】特開2018-029253(JP,A)
【文献】特開平03-254240(JP,A)
【文献】国際公開第2015/015879(WO,A1)
【文献】国際公開第2008/099617(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04L 1/00
H04B 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
データ送信装置と、データ受信装置と、を備え、
前記データ送信装置は、演算装置を備え、
前記データ送信装置の前記演算装置は、
送信対象となるデータを、設定されたサイズのデータパケットに分割する機能と、
複数の前記データパケットが配列された複数のパケット列を生成する機能と、
前記各パケット列の誤り訂正符号を生成する機能と、
前記各パケット列の前記各データパケットと前記各誤り訂正符号を、同じ前記パケット列の前記各データパケットと対応する前記誤り訂正符号が設定されたピッチの配置となるよう並べ替え
るとともに前記各データパケットの間及び前記データパケットと前記各誤り訂正符号との間にダミーパケットを挿入して送信データ列を生成する機能と、を備え、
更に、前記データ受信装置は、演算装置を備え、
前記データ受信装置の前記演算装置は、
前記ダミーパケットを除去しながら受信データ列の前記各データパケットと前記各誤り訂正符号の並べ替えを行って、複数の前記パケット列を復元する機能と、
前記受信データ列に生じた複数の連続するデータパケットの欠損により、復元された前記パケット列に前記データパケットの欠損が生じた場合は、前記パケット列における正常に受信された前記データパケットと対応する前記誤り訂正符号とを用いて、欠損した前記データパケットを復元する処理を行って、前記データパケットの欠損が生じていない状態の前記各パケット列を取得する機能と、
前記データパケットの結合により生成するデータを取得する機能と、を備えたこと
を特徴とする伝送システム。
【請求項2】
前記データ送信装置と前記データ受信装置は、設定ファイルが記憶された設定ファイル記憶部を備え、
前記設定ファイルには、前記送信データ列を生成するときに、同じ前記パケット列の前記各データパケットと対応する前記誤り訂正符号を配置するピッチが設定された
請求項1に記載の伝送システム。
【請求項3】
前記設定ファイルは、
設定された或る条件について、連続した複数の前記データパケットのパケット抜けが生じる場合の最大の個数の推定結果がx個である場合に、y≧xとなる値を用いて、前記送信データ列を生成するときには、同じ前記パケット列の前記各データパケットと対応する前記誤り訂正符号を配置するピッチが、前記データパケットのy個分のピッチに設定された
請求項2に記載の伝送システム。
【請求項4】
前記データ送信装置は、前記送信データ列を変調した音響信号を送信する音響通信機を備え、
前記データ受信装置は、前記データ送信装置の前記音響通信機より送信された音響信号を受信する音響通信機を備えた
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の伝送システム。
【請求項5】
データ送信装置の演算装置は、
送信対象となるデータを、設定されたサイズのデータパケットに分割する処理と、
複数の前記データパケットが配列された複数のパケット列を生成する処理と、
前記各パケット列の誤り訂正符号を生成する処理と、
前記各パケット列の前記各データパケットと前記各誤り訂正符号を、同じ前記パケット列の前記各データパケットと対応する前記誤り訂正符号が設定されたピッチの配置となるよう並べ替え
るとともに前記各データパケットの間及び前記データパケットと前記各誤り訂正符号との間にダミーパケットを挿入して送信データ列を生成する処理と、を行い、
データ受信装置の演算装置は、
前記ダミーパケットを除去しながら受信データ列の前記各データパケットと前記各誤り訂正符号の並べ替えを行って、複数の前記パケット列を復元する処理と、
前記受信データ列に生じた複数の連続するデータパケットの欠損により、復元された前記パケット列に前記データパケットの欠損が生じた場合は、前記パケット列における正常に受信された前記データパケットと対応する前記誤り訂正符号とを用いて、欠損した前記データパケットを復元する処理を行って、前記データパケットの欠損が生じていない状態の前記各パケット列を取得する処理と、
前記データパケットの結合により生成するデータを取得する処理と、を行うこと
を特徴とする伝送方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、データ送信装置からデータ受信装置への通信を介したデータの伝送に用いる伝送方法および伝送システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
データ送信装置からデータ受信装置へ通信を介してデータの伝送を行う場合は、通信環境などの影響により、データ受信装置で受信するデータが、データ送信装置から送信されたデータに対して一部欠損する誤りを生じることがある。
【0003】
このようなデータ伝送時に生じる誤りを訂正する技術としては、自動再送要求と、前方誤り訂正が知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【0004】
前方誤り訂正は、一般に、以下の手順で実施される。
【0005】
データ送信装置は、先ず、送信対象となるデータを、設定されたサイズのデータパケットに分割する。次に、データ送信装置は、設定された数のデータパケットが配列されたパケット列(ブロック)を生成し、パケット列ごとに、誤り訂正符号を算出する。次いで、データ送信装置は、パケット列の後に対応する誤り訂正符号のパケットを挿入して送信データ列を生成する。その後、データ送信装置は、送信データ列を搬送波に乗せるよう変調して送信を行う。
【0006】
データ受信装置は、データ送信装置より送信された信号を受信すると、復調して受信データ列を生成する。次に、データ受信装置は、受信データ列にて、或るパケット列に1つのデータパケットの欠損、いわゆるパケット抜けが生じていた場合には、前記或るパケット列における欠損したデータパケット以外の正常なデータパケットと、対応する誤り訂正符号とから、欠損したデータパケットを復元する。これにより、データ受信装置は、すべてのパケット列のすべてのデータパケットを取得する。
【0007】
次いで、データ受信装置は、取得した各パケット列のデータパケットを、前記データ送信装置で行われたデータパケットへの分割と逆の手法により連結することで、送信装置より伝送されたデータを取得することができる。
【0008】
ところで、海底や湖底や水中における種々の探査を行うための手段の1つとして、自律航走を行う水中移動体を用いる手法が考えられている。
【0009】
このような探査などに水中移動体を使用する場合は、水中移動体が探査により得たデータ、更には、水中移動体のステータスに関するデータを、音響通信を用いて母船などの水上移動体へ伝送することが考えられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ところで、無線通信の場合は、通常、パケット抜けは1つのデータパケットの欠損として生じる。そのため、特許文献1に示された如き従来の前方誤り訂正の手法は、無線通信を用いたデータの伝送の場合には有効である。
【0012】
これに対し、水中での音響通信の場合は、音響伝搬特性の変化により、送信データ列として配列されたデータパケットのうち、複数の連続するデータパケットが一度に欠損する形式で、パケット抜けが生じることがある。
【0013】
そのため、音響通信を用いてデータの伝送を行うときに、このような複数の連続するデータパケットの欠損によるパケット抜けが生じた場合は、特許文献1に示された如き従来の前方誤り訂正の手法では対応することができないというのが実状である。
【0014】
よって、データ送信装置からデータ受信装置へ音響通信を介してデータの伝送を行う場合には、複数の連続するデータパケットの欠損によるパケット抜けが生じた場合であっても、データ受信装置側で誤り訂正を行うことができるように、誤り訂正性能の向上化を図ることが望まれる。
【0015】
そこで、本発明は、データ送信装置からデータ受信装置へ通信を介してデータの伝送を行う場合に、データ受信装置側で行う誤り訂正について、誤り訂正性能の向上化を図ることができる伝送方法および伝送システムを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、前記課題を解決するために、データ送信装置と、データ受信装置と、を備え、前記データ送信装置は、演算装置を備え、前記データ送信装置の前記演算装置は、送信対象となるデータを、設定されたサイズのデータパケットに分割する機能と、複数の前記データパケットが配列された複数のパケット列を生成する機能と、前記各パケット列の誤り訂正符号を生成する機能と、前記各パケット列の前記各データパケットと前記各誤り訂正符号を、同じ前記パケット列の前記各データパケットと対応する前記誤り訂正符号が設定されたピッチの配置となるよう並べ替えて送信データ列を生成する機能と、を備え、更に、前記データ受信装置は、演算装置を備え、前記データ受信装置の前記演算装置は、受信データ列の前記各データパケットと前記各誤り訂正符号の並べ替えを行って、複数の前記パケット列を復元する機能と、前記受信データ列に生じた複数の連続するデータパケットの欠損により、復元された前記パケット列に前記データパケットの欠損が生じた場合は、前記パケット列における正常に受信された前記データパケットと対応する前記誤り訂正符号とを用いて、欠損した前記データパケットを復元する処理を行って、前記データパケットの欠損が生じていない状態の前記各パケット列を取得する機能と、前記データパケットの結合により生成するデータを取得する機能と、を備えた構成を有する伝送システムとする。
【0017】
前記データ送信装置と前記データ受信装置は、設定ファイルが記憶された設定ファイル記憶部を備え、前記設定ファイルには、前記送信データ列を生成するときに、同じ前記パケット列の前記各データパケットと対応する前記誤り訂正符号を配置するピッチが設定された構成としてもよい。
【0018】
前記設定ファイルは、設定された或る条件について、連続した複数の前記データパケットのパケット抜けが生じる場合の最大の個数の推定結果がx個である場合に、y≧xとなる値を用いて、前記送信データ列を生成するときには、同じ前記パケット列の前記各データパケットと対応する前記誤り訂正符号を配置するピッチが、前記データパケットのy個分のピッチに設定された構成としてもよい。
【0019】
前記データ送信装置は、前記送信データ列を変調した音響信号を送信する音響通信機を備え、前記データ受信装置は、前記データ送信装置の前記音響通信機より送信された音響信号を受信する音響通信機を備えた構成としてもよい。
【0020】
また、データ送信装置の演算装置は、送信対象となるデータを、設定されたサイズのデータパケットに分割する処理と、複数の前記データパケットが配列された複数のパケット列を生成する処理と、前記各パケット列の誤り訂正符号を生成する処理と、前記各パケット列の前記各データパケットと前記各誤り訂正符号を、同じ前記パケット列の前記各データパケットと対応する前記誤り訂正符号が設定されたピッチの配置となるよう並べ替えて送信データ列を生成する処理と、を行い、データ受信装置の演算装置は、受信データ列の前記各データパケットと前記各誤り訂正符号の並べ替えを行って、複数の前記パケット列を復元する処理と、前記受信データ列に生じた複数の連続するデータパケットの欠損により、復元された前記パケット列に前記データパケットの欠損が生じた場合は、前記パケット列における正常に受信された前記データパケットと対応する前記誤り訂正符号とを用いて、欠損した前記データパケットを復元する処理を行って、前記データパケットの欠損が生じていない状態の前記各パケット列を取得する処理と、前記データパケットの結合により生成するデータを取得する処理と、を行う伝送方法とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明の伝送方法および伝送システムによれば、データ送信装置からデータ受信装置へ通信を介してデータの伝送を行う場合に、データ受信装置側で行う誤り訂正について、誤り訂正性能の向上化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】伝送システムの実施形態を示す概要図である。
【
図2】音響伝搬特性の変化を生じさせる要因として、水上移動体が備えるデータ受信装置の音響通信機の指向角と、水中移動体の深度および相対移動速度との関連を説明するための図である。
【
図3】伝送システムにおける送信装置で行われる処理を示す図である。
【
図4】伝送システムにおける受信装置で行われる処理を示す図である。
【
図5】伝送システムにおける送信装置で行われる処理の別の例を示す図である。
【
図6】伝送システムにおける送信装置で行われる処理の更に別の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明を実施するための形態を図面を参照して説明する。
【0024】
[実施形態]
図1は、伝送システムの実施形態を示すもので、
図1(a)は、水中移動体から水上移動体へのデータ送信に適用した例を示す図、
図1(b)は、伝送システムの概要図である。
図2は、音響伝搬特性の変化を生じさせる要因として、水上移動体が備えるデータ受信装置の音響通信機の指向角と、水中移動体の深度および相対移動速度との関連を説明するための図である。
図3は、伝送システムにおけるデータ送信装置で行われる処理の一例を示すもので、
図3(a)は、データ送信装置の送信対象となるデータを示す図、
図3(b)はデータパケットのパケット列を示す図、
図3(c)は、データパケットのパケット列ごとに誤り訂正符号が算出された状態を示す図、
図3(d)は、データ送信装置の送信データ列を示す図である。
図4は、伝送システムにおけるデータ受信装置で行われる処理の一例を示すもので、
図4(a)は、データ受信装置の受信データ列を示す図、
図4(b)は、誤り訂正符号に対応するパケット列への並べ替えが行われた状態を示す図、
図4(c)は、誤り訂正符号が除かれたパケット列を示す図、
図4(d)は、データ受信装置が取得したデータを示す図である。
【0025】
本実施形態は、本開示の伝送システムを、
図1(a)に示すように、水中移動体V1に装備されたデータ送信装置2から、水上移動体V2に装備されたデータ受信装置3へ、音響通信によりデータの伝送を行う構成に適用する場合の例を示すものである。
【0026】
したがって、本実施形態の伝送システムは、
図1(b)に符号1で示すもので、データ送信装置2と、データ受信装置3とを備えた構成とされ、更に、データ送信装置2が、演算装置4と音響通信機5とを備え、データ受信装置3が、演算装置6と音響通信機7とを備えた構成とされている。
【0027】
なお、
図1(b)では、図示する便宜上、データ送信装置2を装備した水中移動体V1と、データ受信装置3を装備した水上移動体V2は、左右に並べて記載してある。
【0028】
データ送信装置2の演算装置4と、データ受信装置3の演算装置6は、共に設定ファイル記憶部8,9を備えている。
【0029】
ここで、演算装置4の設定ファイル記憶部8と、演算装置6の設定ファイル記憶部9に記憶される設定ファイルについて説明する。
【0030】
音響通信を行う際に最大で何個の連続したデータパケットのパケット抜けが生じるかは、音響通信機5と音響通信機7との間で音響通信を行うときの音響伝搬特性の変化に応じて変化する。
【0031】
したがって、音響伝搬特性の変化を生じさせる要因について条件を設定することにより、音響通信を行う際に連続した複数のデータパケットのパケット抜けが生じる場合の最大の個数は、推定することができる。
【0032】
音響伝搬特性の変化を生じさせる要因としては、たとえば、
図2に示すように、水上移動体V2が装備している音響通信機7が、真下を中心として或る指向角を有している場合は、水中移動体V1が音響通信機7の指向角の範囲内に存在しているか否かという点がある。すなわち、水中移動体V1が音響通信機7の指向角の範囲内に存在しているときには、通信の品質が良好になるため、音響通信におけるデータの欠損は生じにくくなる。これに対し、水中移動体V1が音響通信機7の指向角の範囲外に存在している場合は、通信の品質が低下するため、音響通信におけるデータの欠損が生じやすくなる。
【0033】
ところで、水上移動体V2の位置を基準とする水中移動体V1の相対移動速度が或る一定の値を有する場合は、水上移動体V2から水中移動体V1までの距離が大きくなるにつれて、すなわち水中移動体V1の深度が大きくなるにつれて、水中移動体V1は、音響通信機7の指向角の範囲を通過するのに時間を要するようになる。よって、水中移動体V1は、音響通信機7の指向角の範囲内に留まりやすくなる。一方、水中移動体V1は、
図2に二点鎖線で示すように、水上移動体V2までの距離が小さくなるにつれて、すなわち、水中移動体V1の深度が小さくなるにつれて、音響通信機7の指向角の範囲を、より短時間で通過するようになるため、音響通信機7の指向角の範囲内に留まりにくくなる。
【0034】
なお、水上移動体V2の位置を基準とする水中移動体V1の相対移動速度は、以下、単に、水中移動体V1の相対移動速度という。
【0035】
また、水中移動体V1の深度が変化しない場合は、水中移動体V1の相対移動速度が小さくなるにつれて、水中移動体V1が、音響通信機7の指向角の範囲を通過するのに時間を要するようになる。よって、水中移動体V1は、音響通信機7の指向角の範囲内に留まりやすくなる。一方、水中移動体V1の相対移動速度が大きくなるにつれて、水中移動体V1は、音響通信機7の指向角の範囲を、より短時間で通過するようになるため、音響通信機7の指向角の範囲内に留まりにくくなる。
【0036】
したがって、音響通信機5と音響通信機7との間で行う音響通信については、たとえば、水中移動体V1が音響通信機7の指向角の範囲を通過するのに要する時間を指標として、音響伝搬特性の変化を推定することが可能になる。
【0037】
このように、水中移動体V1が音響通信機7の指向角の範囲を通過するのに要する時間を指標とする場合は、この指標の値が大きくなるにつれて、連続した複数のデータパケットのパケット抜けが生じる場合の最大の個数が小さくなり、一方、この指標の値が大きくなる程、連続した複数のデータパケットのパケット抜けが生じる場合の最大の個数が大きくなる傾向となる。
【0038】
このような点に鑑みて、本実施形態では、音響通信機5と音響通信機7との間で行う音響通信について、水中移動体V1が音響通信機7の指向角の範囲を通過するのに要する時間と、連続した複数のデータパケットのパケット抜けが生じる場合の最大の個数との相関を、水中移動体V1の深度と相対移動速度を種々変化させた条件で行う試験、あるいは、数値計算により、予め推定する。
【0039】
更に、本実施形態では、水中移動体V1の深度と相対移動速度の種々の条件に対して、次の各設定項目を設定した設定ファイルを定めて、設定ファイル記憶部8および設定ファイル記憶部9の双方に記憶させておく。
【0040】
設定ファイルで設定される設定項目は、後述するデータ送信装置2の演算装置4で生成するデータパケットのサイズの設定、データパケットを生成するときに付加されるヘッダーなどの付加情報についての設定、パケット列を構成するデータパケットの数の設定、および、各パケット列のデータパケットおよび各誤り訂正符号を並べ替えて送信データ列を生成するときの並べ替えのルールの設定である。
【0041】
更に、この送信データ列を生成するときの並べ替えのルールの設定は、同じパケット列のデータパケットと対応する誤り訂正符号を、データパケットの何個分のピッチで配置するかという設定を含んでいる。
【0042】
なお、水中移動体V1の深度と相対移動速度の種々の条件からは、水中移動体V1が音響通信機7の指向角の範囲を通過するのに要する時間を求めることができるため、連続した複数のデータパケットのパケット抜けが生じる場合の最大の個数との相関を推定することができる。したがって、水中移動体V1の深度と相対移動速度の或る条件について、連続した複数のデータパケットのパケット抜けが生じる場合の最大の個数の推定結果がx個である場合、設定ファイルには、y≧xとなる値を用いて、送信データ列の生成時には、同じパケット列のデータパケットと対応する誤り訂正符号は、データパケットのy個分のピッチで配置するという設定が行われる。
【0043】
更に、設定ファイル記憶部8と設定ファイル記憶部9は、水中移動体V1の深度と相対移動速度の種々の条件に対応する前記各設定項目の設定について、たとえば、個々の設定の識別に用いる共通の識別番号を備えていることが好ましい。このようにすれば、データ送信装置2は、送信対象となるデータから送信データ列を作成する際に設定ファイル記憶部8から読み出して用いた設定ファイルの識別番号を、音響通信を介してデータ受信装置3に送ることができる。この場合、データ受信装置3は、後述するように受信した受信データ列を処理するときに、設定ファイル記憶部9に記憶されている設定ファイルのうち、どの設定ファイルを使用するかを容易に定めることができる。
【0044】
なお、データ受信装置3は、水中移動体V1の深度と相対移動速度の情報を、図示しない測位装置、速度検出装置などから取得して、得られた水中移動体V1の深度と相対移動速度の情報を基に、データ送信装置2が送信対象となるデータから送信データ列を作成する際に用いた設定ファイルを、推定するようにしてもよい。
【0045】
次に、データ送信装置2の演算装置4の機能を説明すると共に、データ送信装置2で行われる処理について説明する。
【0046】
演算装置4は、送信対象となるデータとして、たとえば、水中移動体V1に装備された図示しない観測機器から、観測データを受け取る機能、および、水中移動体V1の図示しない制御装置から水中移動体V1のステータスの情報を受け取る機能を備えている。
【0047】
一例として、演算装置4は、
図3(a)に示すように、データA,B,C,Dを、送信対象となるデータとする場合の例について説明する。
【0048】
更に、演算装置4は、水中移動体V1の図示しない深度計や制御装置、更には、水上移動体V2の位置情報や速度情報を通信あるいは計測により取得する装置から受け取る情報を基に、水中移動体V1の深度と相対移動速度を取得する機能を備えている。
【0049】
演算装置4は、水中移動体V1の現在の深度と相対移動速度を取得すると、それに対応する設定ファイルを、設定ファイル記憶部8から読み出す機能を備えている。
【0050】
次に、演算装置4は、読み出した設定ファイルの情報を基に、送信対象となるデータとしてのデータA,B,C,Dを、
図3(b)に示すように、設定されたサイズに分割すると共に、ヘッダーなどの所定の付加情報を付加して、データパケットA1,A2,A3,A4、データパケットB1,B2,B3,B4、データパケットC1,C2,C3,C4、データパケットD1,D2,D3,D4を生成するパケット生成機能を備えている。
【0051】
次いで、演算装置4は、パケット生成機能で生成された各データパケットA1-A4,B1-B4,C1-C4,D1-D4を、設定ファイルで設定された数、たとえば、4個ずつ配列したパケット列LA,LB,LC,LDを生成する機能を備えている。
【0052】
更に、演算装置4は、
図3(c)に示すように、各パケット列LA,LB,LC,LDの各データパケットA1-A4,B1-B4,C1-C4,D1-D4に対応して、前方誤り訂正の手法による誤り訂正符号AEC,BEC,CEC,DECを、計算により生成する機能を備えている。この際、各誤り訂正符号AEC,BEC,CEC,DECのサイズは、各データパケットA1-A4,B1-B4,C1-C4,D1-D4と同様のサイズとなるよう調整される。
【0053】
なお、誤り訂正符号AEC,BEC,CEC,DECは、排他的論理和を用いた計算など、前方誤り訂正の手法で従来用いられているか、または、提案されている計算手法を用いて計算するようにすればよい。
【0054】
その後、演算装置4は、設定ファイルの設定を基に、各パケット列LA,LB,LC,LDの各データパケットA1-A4,B1-B4,C1-C4,D1-D4と、各パケット列LA,LB,LC,LDに対応する各誤り訂正符号AEC,BEC,CEC,DECの並べ替えを行って、
図3(d)に示す送信データ列Sを生成する機能を備えている。
【0055】
本実施形態は、水中移動体V1の深度と相対移動速度の条件を基に設定ファイル記憶部8から読み出された設定ファイルに、音響通信を行う際に連続した複数のデータパケットのパケット抜けが生じる場合の最大の個数が4個と設定されている場合の例を示す。
【0056】
したがって、
図3(d)に示す送信データ列Sでは、パケット列LAの各データパケットA1,A2,A3,A4と対応する誤り訂正符号AECは、データパケットの4個分のピッチで配置されるように、1、5、9、13、17番目に配置されている。同様に、パケット列LBの各データパケットB1,B2,B3,B4と対応する誤り訂正符号BECは、2、6、10、14、18番目に配置されている。パケット列LCの各データパケットC1,C2,C3,C4と対応する誤り訂正符号CECは、3、7、11、15、19番目に配置されている。パケット列LDの各データパケットD1,D2,D3,D4と対応する誤り訂正符号DECは、4、8、12、16、20番目に配置されている。
【0057】
しかる後、演算装置4は、生成した送信データ列Sについて、音響通信機5と音響通信機7との音響通信に用いる音響信号の搬送波に乗るよう変調を行い、その変調された音響信号を送信するよう音響通信機5に指令を与える。
【0058】
これにより、データ送信装置2では、音響通信機5が、演算装置4の指令に基づいて、送信データ列Sの音響信号の送信を行う。
【0059】
次いで、データ受信装置3の演算装置6の機能を説明すると共に、データ受信装置3で行われる処理について説明する。
【0060】
データ受信装置3では、音響通信機7が、データ送信装置2の音響通信機5より送信された音響信号を受信すると、その音響信号が演算装置6へ送られる。これにより、演算装置6は、
図4(a)に示す如き受信データ列Tを取得する機能を備えている。
【0061】
演算装置6は、受信データ列Tを取得すると、設定ファイル記憶部9より、データ送信装置2の演算装置4が送信データ列Sを生成するときに使用した設定ファイルと同様の設定ファイルを読み出す機能を備えている。なお、演算装置6にて、演算装置4が使用した設定ファイルを特定する処理は、前記したように、データ送信装置2との通信か、または、水中移動体V1の深度と相対移動速度の情報を基に行うようにすればよい。
【0062】
次に、演算装置6は、設定ファイルの設定を基に、
図4(a)の受信データ列Tにおける各データパケットA1,B1,C1,・・・,C4,D4、および、各誤り訂正符号AEC,BEC,CEC,DECについて、並べ替えを行って、
図4(b)に示すように、
図3(c)に示したと同様の各パケット列LA,LB,LC,LDと、対応する誤り訂正符号AEC,BEC,CEC,DECとの関連付けを復元する機能を備えている。
【0063】
ここで、音響通信機5と音響通信機7との音響通信により、受信データ列Tに、複数の連続するデータパケットの欠損として、たとえば、
図4(a)に×印を付して示した、4個のデータパケットC2,D2,A3,B3のパケット抜けが生じた状況を考える。
【0064】
この場合、演算装置6が、前記した並べ替えにより
図4(b)に示した各パケット列LA,LB,LC,LDの復元を行うと、パケット列LAは、データパケットA3のパケット抜けが生じた状態になる。同様に、パケット列LBは、データパケットB3のパケット抜けが生じた状態になる。パケット列LCは、データパケットC2のパケット抜けが生じた状態になる。パケット列LDは、データパケットD2のパケット抜けが生じた状態になる。
【0065】
このように、本実施形態では、データ送信装置2で送信データ列Sを生成するときに、各パケット列LA,LB,LC,LDの各データパケットA1-A4,B1-B4,C1-C4,D1-D4を、前記した所定のピッチで並べ替えていたため、たとえ、受信データ列Tにて4個の連続したデータパケットC2,D2,A3,B3のパケット抜けが生じた場合でも、データ受信装置3の演算装置6では、各パケット列LA,LB,LC,LDに、それぞれ1つずつのデータパケットA3,B3,C2,D2のパケット抜けが生じたものとして取り扱うことができる。
【0066】
そこで、演算装置6は、
図4(b)(c)に示すように、各パケット列LA,LB,LC,LDについて、それぞれ欠損したデータパケットA3,B3,C2,D2を復元する処理を行う機能を備えている。
【0067】
具体的には、演算装置6は、パケット列LAでは、正常に受信されたデータパケットA1,A2,A4と誤り訂正符号AECとを用いて、欠損したデータパケットA3を復元する処理を行う。同様に、演算装置6は、パケット列LBでは、正常に受信されたデータパケットB1,B2,B4と誤り訂正符号BECとを用いて、欠損したデータパケットB3を復元する処理を行う。演算装置6は、パケット列LCでは、正常に受信されたデータパケットC1,C3,C4と誤り訂正符号CECとを用いて、欠損したデータパケットC2を復元する処理を行う。演算装置6は、パケット列LDでは、正常に受信されたデータパケットD1,D3,D4と誤り訂正符号DECとを用いて、欠損したデータパケットD2を復元する処理を行う。
【0068】
これにより、演算装置6は、
図4(c)に示すように、データパケットの欠損が生じていない状態の各パケット列LA,LB,LC,LDを取得することができる。
【0069】
更に、演算装置6は、設定ファイルの情報を基に、データ送信装置2の演算装置4でデータパケットに分割する処理とは逆の処理により、各データパケットA1,A2,A3,A4、データパケットB1,B2,B3,B4、データパケットC1,C2,C3,C4、および、データパケットD1,D2,D3,D4を結合する機能を備えている。これにより、演算装置6は、
図4(d)に示す如きデータA,B,C,Dを取得することができる。
【0070】
なお、前記においては、複数の連続するデータパケットの欠損として、4個のデータパケットC2,D2,A3,B3のパケット抜けが生じた場合の例を示した。これに対し、最大で4個の連続したデータパケットの欠損は、
図4(a)の如く配列されたデータパケットA1,B1,C1,・・・C4,D4のいずれで生じる可能性はある。しかし、いずれの場合も、演算装置6は、前記したと同様の手順により、各パケット列LA,LB,LC,LDにて正常に受信されたデータパケットと、対応する誤り訂正符号AEC,BEC,CEC,DECとを用いて、欠損したデータパケットの復元を行うことができる。よって、この場合も、演算装置6は、
図4(d)に示す如きデータA,B,C,Dを取得することができる。
【0071】
また、最大で4個の連続したデータパケットの欠損は、誤り訂正符号AEC,BEC,CEC,DECを含む状態で生じる可能性はある。しかし、この場合は、欠損が生じた誤り訂正符号AEC,BEC,CEC,DECに対応するパケット列LA,LB,LC,LDでは、データパケットA1-A4,B1-B4,C1-C4,D1-D4は正常に受信された状態となる。よって、演算装置6は、この場合も、
図4(d)に示す如きデータA,B,C,Dを取得することができる。
【0072】
したがって、データ受信装置3は、取得したデータA,B,C,Dを、図示しないデータ利用機器へ出力することが可能になる。
【0073】
以上の構成としてある本実施形態の伝送システム1によれば、前記したデータ送信装置2による処理の手順と、データ受信装置3による処理の手順とにより、データ送信装置2からデータ受信装置3へのデータA,B,C,Dの伝送を行う伝送方法を実施することができる。よって、データ受信装置3は、データ送信装置2で送信対象とされたデータA,B,C,Dを、欠損なく取得することができる。
【0074】
このように、本実施形態の伝送方法および伝送システムによれば、データ送信装置2からデータ受信装置3へ音響通信を介してデータの伝送を行う場合には、複数の連続するデータパケットの欠損によるパケット抜けが生じた場合であっても、データ受信装置3側で誤り訂正を行うことができる。
【0075】
したがって、本実施形態の伝送方法および伝送システムによれば、データ送信装置2からデータ受信装置3へ通信を介してデータの伝送を行う場合に、データ受信装置3側で行う誤り訂正について、従来の前方誤り訂正の手法に比して、誤り訂正性能の向上化を図ることができる。
【0076】
ところで、水中音速は約1500m/sであり、電波や光の速度に比して大幅に遅いため、一般に、水中での音響通信は、電波や光を搬送波として用いる通信に比して時間を要する。そのため、音響通信では、データ受信装置が発する再送要求がデータ送信装置へ伝達されるまでに時間がかかる。更に、音響通信では、通信距離に応じて使用可能な周波数帯が制限されるため、再送要求を行う場合であっても、音響干渉を避けるために本来のデータ伝送用の音響信号が発音されていない時間帯に再送要求を送る必要がある。そのため、再送要求の手法は、音響通信により連続的にデータを伝送する用途では、伝送遅延が大きくなるというのが実状である。
【0077】
これに対し、本実施形態の伝送方法および伝送システムによれば、データ受信装置3は、たとえ受信データ列Tに複数の連続するデータパケットの欠損によるパケット抜けが生じた場合であっても、データ受信装置3側で誤り訂正を行うことが可能である。そのため、本実施形態の伝送方法および伝送システムは、再送要求の必要性を低減することができて、音響通信を介したデータの伝送に好適なものとすることができる。更に、再送要求の必要性をなくすことができる場合は、データ受信装置3からデータ送信装置2へ再送要求を行うために必要とされる機器構成を不要なものとする効果も期待できる。
【0078】
なお、たとえば、データ受信装置3が取得した受信データ列Tに、設定ファイルに設定されている以上の個数で、複数の連続するデータパケットの欠損によるパケット抜けが生じていた場合や、複数のデータパケットの欠損が複数個所に生じていた場合は、本実施形態のデータ受信装置3による処理では、欠損したデータパケットを復元できない可能性がある。この場合は、データ受信装置3は、データ送信装置2に対し再送要求を行って、欠損したデータパケットを取得するようにすればよい。したがって、本実施形態の伝送方法および伝送システムは、再送要求を行う手法と併用してもよいことは勿論である。
【0079】
また、
図3(a)に示したデータA,B,C,Dは、音響通信機5と音響通信機7との間での音響通信の際に、最大で4個の連続したデータパケットのパケット抜けが生じることが推定される場合の対応として、データ送信装置2の演算装置4で、
図3(c)に示すように、個別の誤り訂正符号を備える4つのパケット列LA,LB,LC,LDを生成する説明を行うための便宜上のものである。したがって、データA,B,C,Dは、いずれか複数、または、全部が、連続するデータであってもよい。
【0080】
更に、
図3(b)では、データA,B,C,Dを、それぞれ4個ずつのデータパケットに分割してパケット列LA,LB,LC,LDを生成する例を示した。これに対し、本開示の伝送方法および伝送システムでは、データA,B,C,Dよりデータパケットを生成する際の分割数は、データA,B,C,Dのサイズと、設定ファイルで設定されるデータパケットの1個当たりのサイズとを基に、4個以外の任意の複数個に設定してもよいことは勿論である。
【0081】
[第1応用例]
前記実施形態は、音響通信機5と音響通信機7との間での音響通信の際に、最大で4個の連続したデータパケットのパケット抜けが生じることが推定される場合の例を示した。
【0082】
これに対し、音響通信機5と音響通信機7との間での音響通信の際に、最大で3個の連続したデータパケットのパケット抜けが生じることが推定される場合は、データ送信装置2の演算装置4では、
図5(a)(b)(c)に示すように、送信対象となるデータA,B,Cから、複数のデータパケットA1-A4,B1-B4,C1-C4を含むパケット列LA,LB,LCと、それに対応する誤り訂正符号AEC,BEC,CECを、3系統で生成するようにしてもよい。
【0083】
これにより、演算装置4は、
図5(d)に示すように、同じパケット列LA,LB,LCのデータパケットA1-A4,B1-B4,C1-C4と対応する誤り訂正符号AEC,BEC,CECを、データパケットの3個分のピッチで配置するよう並べ替えた送信データ列Sを生成することができる。
【0084】
したがって、本開示の伝送方法および伝送システムでは、データ送信装置2の演算装置4は、設定ファイルに、同じパケット列のデータパケットと対応する誤り訂正符号を配置するピッチが、データパケットのy個分と設定されている場合は、複数のデータパケットを有するパケット列、および、パケット列に対応する誤り訂正符号は、y系統で生成することが好ましい。このようにすれば、演算装置4では、後述するダミーパケットを要することなく、各パケット列のデータパケットと対応する誤り訂正符号の並べ替えによって、送信データ列Sを生成することができる。よって、この場合は、データ送信装置2の演算装置4と、データ受信装置3の演算装置6に、ダミーパケットの処理に関する機能を備える必要はない。
【0085】
[第2応用例]
前記実施形態は、音響通信機5と音響通信機7との間での音響通信の際に、最大で4個の連続したデータパケットのパケット抜けが生じることが推定される場合の例を示した。
【0086】
これに対し、設定ファイル記憶部8に記憶されている設定ファイルでは、データパケットのサイズが設定されているため、送信対象となるデータの元のサイズによっては、対応する誤り訂正符号を備えるパケット列の数が、同じパケット列のデータパケットと対応する誤り訂正符号を配置するピッチを定めるデータパケットの個数よりも少なくなる可能性がある。
【0087】
この場合は、データ送信装置2の演算装置4は、送信データ列Sを生成するときに、設定されたピッチに不足する分を、ダミーパケットを挿入する処理を行う機能を備えるものとすればよい。
【0088】
一例として、演算装置4は、
図6(a)(b)(c)に示すように、
図3(a)(b)(c)に示した実施形態の場合と同様に、データA,B,C,Dより、4つのパケット列LA,LB,LC,LDと、それに対応する誤り訂正符号AEC,BEC,CEC,DECを生成する場合の例を示す。
【0089】
この状態で、設定ファイルに、送信データ列の生成時には、同じパケット列のデータパケットと対応する誤り訂正符号は、データパケットの5個分のピッチで配置するという設定が行われている場合について説明する。
【0090】
この場合、演算装置4は、
図6(d)に示すように、
図3(d)に示したと同様の並べ替えを行うと共に、データパケットD1とデータパケットA2との間、データパケットD2とデータパケットA3との間、データパケットD3とデータパケットA4との間、データパケットD4と誤り訂正符号AECとの間に、それぞれダミーパケットRを挿入する処理を行って送信データ列Sを生成する機能を備えている。
【0091】
これにより、送信データ列Sは、同じパケット列LA,LB,LC,LDのデータパケットA1-A4,B1-B4,C1-C4,D1-D4と、対応する誤り訂正符号AEC,BEC,CEC,DECが、データパケットの5個分のピッチで配置されたものとなる。
【0092】
この場合、データ受信装置3の演算装置6は、
図6(d)に示した送信データ列Sと同様の受信データ列を取得すると、ダミーパケットRを除去しながら、
図4(b)に示したと同様の各パケット列LA,LB,LC,LDと、対応する誤り訂正符号AEC,BEC,CEC,DECとの関連付けを復元する機能を備えるものとすればよい。
【0093】
したがって、本応用例では、データ受信装置3の演算装置6は、たとえ、受信データ列のいずれかに5個の連続したデータパケットのパケット抜けが生じた場合でも、各パケット列LA,LB,LC,LDに、それぞれ1つずつのデータパケットのパケット抜けが生じたものとして取り扱うことができる。
【0094】
よって、本応用例においても、前記実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0095】
なお、本開示の伝送方法および伝送システムでは、データ送信装置2の演算装置4は、設定ファイルに設定されている前記ピッチと、複数のデータパケットを有するパケット列と対応する誤り訂正符号の系統数との差に応じて、2個以上のダミーパケットRを連ねて挿入するようにしてもよいことは勿論である。
【0096】
なお、本開示の伝送方法および伝送システムは、前記実施形態および各応用例にのみ限定されるものではない。
【0097】
設定ファイル記憶部8,9に記憶される設定ファイルは、水中移動体V1の深度と相対移動速度の条件に応じて設定されているものとして説明したが、これは、水上移動体V2が真下に向く姿勢で音響通信機7を備えている場合の例である。したがって、設定ファイルは、音響伝搬特性の変化を生じさせる要因となる条件であれば、水中移動体V1の深度と相対移動速度以外の条件に対応して設定されていてもよい。
【0098】
前記実施形態は、水中移動体V1がデータ送信装置2を備え、水上移動体V2がデータ受信装置3を備える構成を例示した。これに対し、本開示の伝送方法および伝送システムは、水上移動体V2から音響通信を介して水中移動体V1へデータを送信することが望まれる場合には、水上移動体V2がデータ送信装置2を備え、水中移動体V1がデータ受信装置3を備える構成としてもよい。
【0099】
また、本開示の伝送方法および伝送システムは、水中移動体V1と水上移動体V2が、双方向でデータの伝送を行う構成に適用してもよい。この場合は、データ送信装置2の演算装置4と、データ受信装置3の演算装置6は、一つのコンピュータに機能として実装されていてもよい。また、この場合は、前記コンピュータが、データ送信装置2の音響通信機5とデータ受信装置3の音響通信機7を兼ねる音響通信機に接続された構成とすればよい。
【0100】
本開示の伝送方法および伝送システムは、2つの装置の間で音響通信を介してデータの伝送が望まれるものであれば、水中移動体V1と水上移動体V2との間でのデータの伝送以外に適用してもよい。たとえば、本開示の伝送方法および伝送システムは、水中移動体同士の間でのデータの伝送に適用してもよい。また、本開示の伝送方法および伝送システムは、データ送信側とデータ受信側の少なくとも一方が、水面や水中に浮遊する状態に配置されたブイや浮体のように、移動機能を有しない装置である構成に適用してもよい。
【0101】
更に、本開示の伝送方法および伝送システムは、データ送信装置とデータ受信装置との間でパケット通信を介してデータの伝送を行うときに、連続した複数のデータパケットのパケット抜けが生じる可能性がある場合には、無線通信、有線通信、搬送波として電波や光を用いる通信など、音響通信以外の通信でデータの伝送を行う場合に適用してもよい。
【0102】
その他本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0103】
2 データ送信装置、3 データ受信装置、4 演算装置、5 音響通信機、6 演算装置、7 音響通信機、8 設定ファイル記憶部、9 設定ファイル記憶部、A データ、A1,A2,A3,A4 データパケット、AEC 誤り訂正符号、B データ、B1,B2,B3,B4 データパケット、BEC 誤り訂正符号、C データ、C1,C2,C3,C4 データパケット、CEC 誤り訂正符号、D データ、D1,D2,D3,D4 データパケット、DEC 誤り訂正符号、LA,LB,LC,LD パケット列、S 送信データ列、T 受信データ列