(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-20
(45)【発行日】2022-09-29
(54)【発明の名称】分析システム、分析装置および情報処理方法
(51)【国際特許分類】
G01N 35/00 20060101AFI20220921BHJP
G01N 23/223 20060101ALN20220921BHJP
【FI】
G01N35/00 A
G01N23/223
(21)【出願番号】P 2018224803
(22)【出願日】2018-11-30
【審査請求日】2021-03-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】寺下 衛作
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 桂次郎
【審査官】草川 貴史
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-169888(JP,A)
【文献】特開2006-313171(JP,A)
【文献】特表2002-530748(JP,A)
【文献】国際公開第02/068963(WO,A1)
【文献】特開2006-105800(JP,A)
【文献】特開2008-039504(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 35/00-37/00
G01N 23/223
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の分析装置およびサーバが通信接続された分析システムであって、
前記複数の分析装置の各々は、
試料の測定を行なう装置本体と、
前記装置本体による測定データを分析する情報処理装置とを含み、
前記情報処理装置は、前記測定データおよび前記測定データの分析結果を記憶するための第1の記憶部を有し、前記第1の記憶部に記憶された前記分析結果を基に、前記分析結果の概要を示す分析結果サマリを生成して前記サーバに送信し、
前記サーバは、第2の記憶部を有し、前記情報処理装置から受信した前記分析結果サマリを蓄積したデータベースを構築して前記第2の記憶部に格納する
とともに、前記データベースに蓄積されている複数の前記分析結果サマリの一覧を前記複数の分析装置に対して公開するように構成され、
前記分析結果サマリの一覧は、前記測定データのファイル名と、前記測定データごとの前記分析結果サマリとを対応付けたデータにより構成され、
前記複数の分析装置のうちの第1の分析装置は、第1の前記情報処理装置を有し、前記複数の分析装置のうちの第2の分析装置は、第2の前記情報処理装置を有し、
前記第2の情報処理装置は、前記分析結果サマリの一覧から前記第1の分析装置の前記測定データが選択されると、選択された前記測定データの閲覧要求を前記サーバに送信し、
前記サーバは、前記第2の情報処理装置からの前記閲覧要求を前記第1の情報処理装置に通知し、
前記第1の情報処理装置は、前記サーバから前記閲覧要求が通知されると、前記第1の記憶部から前記要求された前記測定データを読み出して前記サーバに送信し、
前記第2の情報処理装置は、前記サーバから前記測定データを受信する、分析システム。
【請求項2】
前記分析結果サマリは、前記測定データごとの前記分析結果の概要を表す文書データにより構成される、請求項
1に記載の分析システム。
【請求項3】
前記分析結果サマリは、前記測定データよりもファイルサイズが小さい、請求項
2に記載の分析システム。
【請求項4】
各前記複数の分析装置の前記情報処理装置は、所定の送信周期毎に前記分析結果サマリを前記サーバに送信するように構成され、
前記第1の情報処理装置は、前記閲覧要求を受け付けると、次回の前記分析結果サマリの送信タイミングにおいて、前記要求された前記測定データを前記サーバに送信する、請求項
1に記載の分析システム。
【請求項5】
各前記複数の分析装置の前記情報処理装置は、所定の送信周期毎に前記分析結果サマリを前記サーバに送信するように構成され、
前記第1の情報処理装置は、前記閲覧要求を受け付けると、次回の前記分析結果サマリの送信タイミングよりも前に、前記要求された前記測定データを前記サーバに送信する、請求項
1に記載の分析システム。
【請求項6】
サーバと通信接続可能な分析装置であって、
試料の測定を行なう装置本体と、
前記装置本体による測定データを分析する情報処理装置とを備え、
前記情報処理装置は、前記測定データおよび前記測定データの分析結果を記憶するための記憶部を有し、前記記憶部に記憶された前記分析結果を基に、前記分析結果の概要を示す分析結果サマリを生成して前記サーバに送信
し、
前記サーバは、前記サーバと通信接続される複数の前記分析装置から送信される複数の前記分析結果サマリを蓄積するデータベースを有しており、前記複数の前記分析結果の一覧を前記複数の前記分析装置に対して公開し、
前記分析結果サマリの一覧は、前記測定データのファイル名と、前記測定データごとの前記分析結果サマリとを対応付けたデータにより構成され、
前記情報処理装置は、前記分析結果サマリの一覧から他の前記分析装置の前記測定データが選択されると、選択された前記測定データの閲覧要求を前記サーバに送信し、前記サーバから前記他の分析装置の前記測定データを受信する、分析装置。
【請求項7】
前記情報処理装置は、前記サーバから自己の前記分析装置における前記測定データの前記閲覧要求が通知されると、前記記憶部から前記要求された前記測定データを読み出して前記サーバに送信する、請求項
6に記載の分析装置。
【請求項8】
複数の分析装置およびサーバが通信接続された分析システムにおける情報処理方法であって、
前記複数の分析装置の各々は、試料の測定データおよび前記測定
データの分析結果を記憶するための第1の記憶部を有し、前記サーバは第2の記憶部を有し、
前記複数の分析装置の各々が、前記第1の記憶部に記憶された前記分析結果を基に、前記分析結果の概要を示す分析結果サマリを生成して前記サーバに送信するステップと、
前記サーバが、前記複数の分析装置から送信される複数の前記分析結果サマリのデータベースを構築して前記第2の記憶部に記憶するステップと
、
前記データベースに蓄積されている複数の前記分析結果サマリの一覧を前記複数の分析装置に対して公開するステップとを備え、
前記分析結果サマリの一覧は、前記測定データのファイル名と、前記測定データごとの前記分析結果サマリとを対応付けたデータにより構成され、
前記複数の分析装置のうちの第1の分析装置は、第1の情報処理装置を有し、前記複数の分析装置のうちの第2の分析装置は、第2の情報処理装置を有し、
前記情報処理方法は、
前記第2の情報処理装置が、前記分析結果サマリの一覧から前記第1の分析装置の前記測定データが選択されると、選択された前記測定データの閲覧要求を前記サーバに送信するステップと、
前記サーバが、前記第2の情報処理装置からの前記閲覧要求を前記第1の情報処理装置に通知するステップと、
前記第1の情報処理装置が、前記サーバから前記閲覧要求が通知されると、前記第1の記憶部から前記要求された前記測定データを読み出して前記サーバに送信するステップと、
前記第2の情報処理装置が、前記サーバから前記測定データを受信するステップとをさらに備える、情報処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、分析システム、分析装置、サーバおよび情報処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2006-313171号公報(特許文献1)には、試料の分析を行なう複数の分析装置とサーバとをインターネットを用いて接続した分析システムが開示される。特許文献1では、サーバは、分析装置の分析条件に関するデータを蓄積するデータベースを備えており、多数の個人または団体で行なわれた分析に関わる情報をデータベースとして蓄積していくことで、蓄積された情報を誰もが共有することを可能としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した分析システムにおいては、サーバに接続される複数の分析装置の間で測定データを共有したい場面が少なからず存在する。そのために、サーバは、複数の分析装置の各々から測定データを受信すると、受信した測定データのデータベースを構築し、ストレージに格納する。これによると、各分析装置のユーザは、データベースから他の分析装置の測定データを検索し、自装置に当該測定データをダウンロードすることができる。
【0005】
しかしながら、分析の方法および分析対象などによっては、1つの測定データのファイルサイズが大きくなるために、複数の分析装置から送信される複数の測定データをすべてデータベースに蓄積しようとすると、データベースを記憶するためのストレージの容量を十分に大きくする必要がある。また、ストレージの容量不足が生じたときには、ストレージの容量を追加することが必要となる。その結果、分析システムの運用コストがかかってしまうことが懸念される。
【0006】
また、分析の対象によっては、ユーザは測定データの全体を閲覧することを必要とはしておらず、測定データのうちの特定の定量値についてのみ閲覧したいという場合がある。このような場合であっても、ユーザは、サーバから測定データをダウンロードし、当該測定データから特定の定量値を抽出する手順を踏む必要があり、ユーザの利便性の低下が懸念される。
【0007】
この発明はこのような問題点を解決するためになされたものであって、この発明の目的は、複数の分析装置およびサーバが通信接続された分析システムにおいて、サーバのストレージの容量増加を抑制し、かつ、高いユーザ利便性で複数の分析装置の測定データを共有することを実現することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明のある局面では、複数の分析装置およびサーバが通信接続された分析システムであって、複数の分析装置の各々は、試料の測定を行なう装置本体と、装置本体による測定データを分析する情報処理装置とを含む。情報処理装置は、測定データおよび測定データの分析結果を記憶するための第1の記憶部を有し、第1の記憶部に記憶された分析結果を基に、分析結果の概要を示す分析結果サマリを生成してサーバに送信する。サーバは、第2の記憶部を有し、情報処理装置から受信した分析結果サマリを蓄積したデータベースを構築して第2の記憶部に格納する。
【0009】
上記分析システムによれば、サーバは、複数の分析装置の分析結果サマリのデータベースを構築して管理することにより、各分析装置のユーザに対して、他の分析装置の分析結果サマリを閲覧するサービスを提供することができる。分析結果サマリは測定データに比べてファイルサイズを小さくできるため、各分析装置からサーバに送信される分析結果サマリを全て第2の記憶部に格納しても、測定データを第2の記憶部に格納する構成に比べて、データベースの構築に必要な第2の記憶部の容量を小さく抑えることができる。したがって、第2の記憶部の容量不足を回避することができ、結果的に分析システムの運用コストの増大を抑制することができる。
【0010】
また、各分析装置のユーザは、サーバから分析結果サマリをダウンロードすることで、測定データのうちの特定の定量値を直ちに知ることができる。したがって、ユーザの利便性を向上させることができる。
【0011】
好ましくは、サーバは、データベースに蓄積されている複数の分析結果サマリの一覧を複数の分析装置に対して公開するように構成される。分析結果サマリの一覧は、測定データのファイル名と、測定データごとの分析結果サマリとを対応付けたデータにより構成される。
【0012】
このようにすると、各分析装置のユーザは、分析結果サマリの一覧を参照することで、詳細な内容を確認したい測定データを選択することができる。
【0013】
好ましくは、複数の分析装置は、第1および第2の分析装置を含み、第1および第2の分析装置は、第1および第2の情報処理装置をそれぞれ有する。第2の情報処理装置は、分析結果サマリの一覧から第1の分析装置の測定データが選択されると、選択された測定データの閲覧要求をサーバに送信する。サーバは、第2の情報処理装置からの閲覧要求を第1の情報処理装置に通知する。第1の情報処理装置は、サーバから閲覧要求が通知されると、第1の記憶部から、要求された測定データを読み出してサーバに送信する。第2の情報処理装置は、サーバから測定データを受信する。
【0014】
このようにすると、各分析装置のユーザは、サーバを経由して他の分析装置の測定データを閲覧することができる。
【0015】
好ましくは、分析結果サマリは、測定データごとの分析結果の概要を表す文書データにより構成される。これによると、分析結果サマリのファイルサイズを、測定データのファイルサイズよりも小さくすることができるため、データベースの構築に必要な第2の記憶部の容量を小さく抑えることができる。
【0016】
好ましくは、分析結果サマリは、測定データよりもファイルサイズが小さい。これによると、分析結果サマリのファイルサイズを、測定データのファイルサイズよりも小さくすることができるため、データベースの構築に必要な第2の記憶部の容量を小さく抑えることができる。
【0017】
好ましくは、各複数の分析装置の情報処理装置は、所定の送信周期毎に分析結果サマリをサーバに送信するように構成される。第1の情報処理装置は、閲覧要求を受け付けると、次回の分析結果サマリの送信タイミングにおいて、要求された測定データをサーバに送信する。
【0018】
このようにすると、サーバに対して、分析結果サマリと同じタイミングで測定データを送信することで、サーバの負荷を低減することができる。
【0019】
好ましくは、各複数の分析装置の情報処理装置は、所定の送信周期毎に分析結果サマリをサーバに送信するように構成される。第1の情報処理装置は、閲覧要求を受け付けると、次回の分析結果サマリの送信タイミングよりも前に、要求された測定データをサーバに送信する。
【0020】
このようにすると、測定データを早急に入手したいなどの即時性が求められる場合において、ユーザは、次回の分析結果サマリの送信タイミングを待たずに、欲しい測定データを取得することができる。
【0021】
この発明の別の局面では、サーバと通信接続可能な分析装置であって、試料の測定を行なう装置本体と、装置本体による測定データを分析する情報処理装置とを備える。情報処理装置は、測定データおよび測定データの分析結果を記憶するための記憶部を有し、記憶部に記憶された分析結果を基に、分析結果の概要を示す分析結果サマリを生成してサーバに送信する。
【0022】
上記分析装置によれば、サーバでは、各分析装置から送信される分析結果サマリのデータベースを構築することができ、複数の分析装置間で分析結果サマリを共有することが可能となる。
【0023】
好ましくは、サーバは、サーバと通信接続される複数の分析装置から送信される複数の分析結果サマリを蓄積するデータベースを有しており、複数の分析結果の一覧を複数の分析装置に対して公開する。分析結果サマリの一覧は、測定データのファイル名と、測定データごとの分析結果サマリとを対応付けたデータにより構成される。情報処理装置は、分析結果サマリの一覧から他の分析装置の測定データが選択されると、選択された測定データの閲覧要求をサーバに送信する。
【0024】
これによると、各分析装置のユーザは、分析結果サマリの一覧を参照することで、詳細な内容を確認したい測定データを選択することができる。
【0025】
好ましくは、情報処理装置は、サーバから自己の分析装置における測定データの閲覧要求が通知されると、記憶部から、要求された測定データを読み出してサーバに送信する。
【0026】
これによると、閲覧要求された測定データをサーバを経由して他の分析装置に送信することができる。
【0027】
この発明の別の局面では、複数の分析装置と通信接続可能なサーバであって、複数の分析装置の各々は、試料の測定を行なう装置本体と、装置本体による測定データを分析する情報処理装置とを含む。情報処理装置は、測定データの分析結果を基に、分析結果の概要を示す分析結果サマリを生成してサーバに送信するように構成される。サーバは、記憶部を有しており、情報処理装置から受信した分析結果サマリを蓄積したデータベースを構築して記憶部に格納する。
【0028】
上記サーバによれば、複数の分析装置の分析結果サマリのデータベースを構築して管理することにより、各分析装置のユーザに対して、他の分析装置の分析結果サマリを閲覧するサービスを提供することができる。分析結果サマリは測定データに比べてファイルサイズを小さくできるため、データベースの構築に必要な記憶部の容量を小さく抑えることができる。したがって、記憶部の容量不足を回避することができ、結果的に分析システムの運用コストの増大を抑制することができる。また、各分析装置のユーザは、サーバから分析結果サマリをダウンロードすることで、測定データのうちの特定の定量値を直ちに知ることができる。したがって、ユーザの利便性を向上させることができる。
【0029】
好ましくは、サーバは、データベースに蓄積されている複数の分析結果サマリの一覧を複数の分析装置に対して公開するように構成される。分析結果サマリの一覧は、測定データのファイル名と、測定データごとの分析結果サマリとを対応付けたデータにより構成される。
【0030】
これによると、各分析装置のユーザは、分析結果サマリの一覧を参照することで、詳細な内容を確認したい測定データを選択することができる。
【0031】
この発明の別の局面では、複数の分析装置およびサーバが通信接続された分析システムにおける情報処理方法であって、複数の分析装置の各々は、試料の測定データおよび測定結果の分析結果を記憶するための第1の記憶部を有し、サーバは第2の記憶部を有する。複数の分析装置の各々が、第1の記憶部に記憶された分析結果を基に、分析結果の概要を示す分析結果サマリを生成してサーバに送信するステップと、サーバが、複数の分析装置から送信される複数の分析結果サマリのデータベースを構築して第2の記憶部に記憶するステップとを備える。
【0032】
上記情報処理方法によれば、サーバは、複数の分析装置の分析結果サマリのデータベースを構築して管理することにより、各分析装置のユーザに対して、他の分析装置の分析結果サマリを閲覧するサービスを提供することができる。分析結果サマリは測定データに比べてファイルサイズを小さくできるため、データベースの構築に必要な第2の記憶部の容量を小さく抑えることができる。また、各分析装置のユーザは、サーバから分析結果サマリをダウンロードすることで、測定データのうちの特定の定量値を直ちに知ることができる。したがって、ユーザの利便性を向上させることができる。
【0033】
好ましくは、情報処理方法は、サーバが、データベースに蓄積されている複数の分析結果サマリの一覧を複数の分析装置に対して公開するステップをさらに備える。分析結果サマリの一覧は、測定データのファイル名と、測定データごとの分析結果サマリとを対応付けたデータにより構成される。
【0034】
このようにすると、各分析装置のユーザは、分析結果サマリの一覧を参照することで、詳細な内容を確認したい測定データを選択することができる。
【0035】
好ましくは、複数の分析装置は第1および第2の分析装置を含み、第1および第2の分析装置は第1および第2の情報処理装置をそれぞれ有する。情報処理方法は、第2の情報処理装置が、分析結果サマリの一覧から第1の分析装置の測定データが選択されると、選択された測定データの閲覧要求をサーバに送信するステップと、サーバが、第2の情報処理装置からの閲覧要求を第1の情報処理装置に通知するステップと、第1の情報処理装置が、サーバから閲覧要求が通知されると、第1の記憶部から、要求された測定データを読み出してサーバに送信するステップと、第2の情報処理装置が、サーバから測定データを受信するステップとをさらに備える。
【0036】
これによると、各分析装置のユーザは、サーバを経由して他の分析装置の測定データを閲覧することができる。
【発明の効果】
【0037】
この発明によれば、複数の分析装置およびサーバが通信接続された分析システムにおいて、サーバのストレージの容量増加を抑制し、かつ、高いユーザ利便性で複数の分析装置の測定データを共有することを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【
図1】本実施の形態に従う分析システムの構成例を説明する概略図である。
【
図2】
図1に示した分析装置の構成例を概略的に示す図である。
【
図3】分析装置の装置本体で取得される測定データの一例を説明する図である。
【
図4】情報処理装置の構成を概略的に示す図である。
【
図7】分析システムが実行する処理の一例を示すシーケンス図である。
【
図10】分析システムが実行する処理の他の例を示すシーケンス図である。
【
図11】従来の分析システムの構成例を説明する概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下に、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。なお、以下では図中の同一または相当部分には同一符号を付してその説明は原則的に繰返さないものとする。
【0040】
図1は、本実施の形態に従う分析システムの構成例を説明する概略図である。
図1を参照して、分析システム100は、試料の分析を行なうシステムであり、N台(Nは2以上の整数)の分析装置EDX1~EDXNと、サーバ4と、ストレージ5とを備える。
【0041】
分析装置EDX1~EDXNの各々は、試料の分析を行なう装置である。以下の説明では、分析装置EDX1~EDXNを分析装置EDXとも総称する。本実施の形態では、分析装置EDXとして、試料にX線を照射して試料が発生する蛍光X線を測定する蛍光X線分析装置を例示する。蛍光X線分析装置は、例えばエネルギー分散型(Energy Dispersive X-ray Fluorescence Spectrometer;EDX)の蛍光X線分析装置である。
【0042】
分析装置EDXは、装置本体1および情報処理装置2により構成される。装置本体1は試料の測定を行なう。本実施の形態では、装置本体1は、試料が発生する蛍光X線を検出して、試料を構成する元素の種類や含有量を測定するように構成される。情報処理装置2は、装置本体1における測定を制御するとともに、装置本体1による測定データの定量分析を行なう。
【0043】
分析装置EDXの情報処理装置2は、通信網の代表例であるインターネット3に接続されている。これにより、分析装置EDX1~EDXNの各々の情報処理装置2は、インターネット3を介して相互に通信可能に接続される。
【0044】
さらに、分析システム100では、サーバ4がインターネット3に接続されている。したがって、分析装置EDXの情報処理装置2は、インターネット3を経由して、サーバ4との間で双方向にデータを送受信することができる。
【0045】
サーバ4にはストレージ5が接続されている。ストレージ5は、サーバ4と分析装置EDXとの間で遣り取りされるデータを保存するための記憶部である。
図1の例では、メモリをサーバに外付けされたストレージ5で構成しているが、サーバ4に記憶部を内蔵する構成としてもよい。ストレージ5は「第2の記憶部」の一実施例に対応する。
【0046】
図2は、
図1に示した分析装置EDXの構成例を概略的に示す図である。
図2を参照して、分析装置EDXは蛍光X線分析装置であり、装置本体1は試料室10および測定室20によって構成される。試料室10および測定室20内部の空間は、筐体13によって気密に囲繞され、必要に応じて内部を真空に保つことができる。
【0047】
試料室10は、底部に試料台11を備えている。試料台11には、円形状の開口部12が形成されている。開口部12を覆うように、試料台11上に試料Sが載置される。試料Sは、測定位置が開口部12から露出するように試料台11上に載置される。
【0048】
測定室20は、その壁面にX線管21と、検出器22とを備えている。X線管21は試料Sに向けて1次X線を照射する。X線管21は、熱電子を出射するフィラメントと、熱電子を所定の1次X線に変換して出射するターゲットとを有する。X線管21が出射した1次X線は、開口部12を通じて試料Sの測定位置に照射される。試料Sが発した2次X線(蛍光X線)は検出器22に入射し、蛍光X線のエネルギーおよび強度が測定される。
【0049】
測定室20には、シャッター23、1次X線フィルタ24、コリメータ25および撮像部28が設置されている。シャッター23、1次X線フィルタ24およびコリメータ25は駆動機構26によって、
図3の紙面に垂直な方向にスライド可能に構成されている。
【0050】
シャッター23は、鉛などのX線吸収材で形成されており、必要なときに1次X線の光路に挿入して1次X線を遮蔽することができる。
【0051】
1次X線フィルタ24は、目的に応じて選択された金属箔によって形成されており、X線管21から発せられる1次X線のうちのバックグラウンド成分を減衰して、必要な特性X線のS/N比を向上させる。実際の装置では、互いに異なる種類の金属で形成された複数枚のフィルタ24が使用されており、目的に応じて選択されたフィルタ24が駆動機構26によって1次X線の光路に挿入される。
【0052】
コリメータ25は、中央に円形状の開口を有するアパーチャ―であり、試料Sを照射する1次X線のビームの大きさを決定する。コリメータ25は、鉛、黄銅などのX線吸収材により形成される。実際の装置では、開口径が互いに異なる複数枚のコリメータ25が、
図1の紙面に垂直な方向に並設されており、目的に応じて選択されたコリメータ25が駆動機構26によって1次X線ビームライン上に挿入される。
【0053】
撮像部28は、測定室20の下部に設置されている。撮像部28は、試料台11に形成された開口部12を通して試料Sの測定位置を撮像する。撮像部28は、例えばCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)またはCCD(Charge Coupled Device)など、複数の画素に区画された撮像素子を含んで構成される。測定前において、蛍光X線分析を行なう測定者は、この撮像部28により取得された画像を図示しない表示装置に表示させ、この画像を見ながら試料Sの測定位置を調整することができる。
【0054】
情報処理装置2は、演算処理部であるCPU(Central Processing Unit)を主体として構成される。情報処理装置2には、例えばパーソナルコンピュータなどを利用することができる。情報処理装置2にはX線管21、検出器22および撮像部28が接続される。
【0055】
情報処理装置2は、装置本体1による測定を制御する。具体的には、情報処理装置2は、X線管21における管電圧、管電流および照射時間などを制御するとともに、シャッター23、1次X線フィルタ24およびコリメータ25の各々を駆動する。
【0056】
情報処理装置2は、測定時、検出器22により検出された2次X線のスペクトルを取得する。情報処理装置2は、検出器22で検出された2次X線のスペクトルに基づいて各元素の定量分析を行なう。
図3は、分析装置EDXの装置本体1で取得される測定データの一例を説明する図である。
図3には、装置本体1の検出器22で検出された2次X線のスペクトルが例示されている。
図3の横軸はエネルギーを示し、
図3の縦軸は蛍光X線強度を示す。2次X線のスペクトルには、各元素に固有のエネルギー位置に蛍光X線のピークが現れる。したがって、2次X線のスペクトルのピーク位置を調べることにより、試料Sに含まれる元素を特定することができる。
【0057】
特定した元素の定量法には、FP法(ファンダメンタルパラメータ法)と検量線法の2つがある。FP法では、主成分の組成を仮定したうえで理論式を用いて蛍光X線の実測強度を再現することにより各元素の定量値を求める。検量線法では同じ組成で含有量が既知の標準試料を複数測定して検量線を作成する必要がある一方、FP法ではその必要がないことから手軽に分析を実行できるという利点がある。なお、FP法による定量値は、検量線法により求められる厳密な定量値と区別するために半定量値とも呼ばれる。
【0058】
測定データには、
図3に示した2次X線のスペクトルを表すデータの他、測定条件を示すデータが含まれる。測定データは、分析装置EDXで使用されるソフトウェアのフォーマットで表現されている。
【0059】
図4は、情報処理装置2の構成を概略的に示す図である。
図4を参照して、情報処理装置2は、装置全体を制御するためのCPU32と、プログラムおよびデータを格納する記憶部とを備えており、プログラムに従って動作するように構成される。記憶部は、ROM(Read Only Memory)34、RAM(Random Access Memory)36およびHDD(Hard Disk Drive)40を含む。
【0060】
ROM34は、CPU32にて実行されるプログラムを格納することができる。RAM36は、CPU32におけるプログラムの実行中に利用されるデータを一時的に格納することができ、作業領域として利用される一時的なデータメモリとして機能することができる。HDD40は、不揮発性の記憶装置であり、装置本体1による測定データ、撮像部28によって取得された画像データおよび、情報処理装置2による分析結果など情報処理装置2で生成された情報を格納することができる。HDD40に加えて、あるいは、HDD40に代えて、フラッシュメモリなどの半導体記憶装置を採用してもよい。HDD40は「第1の記憶部」の一実施例に対応する。
【0061】
情報処理装置2は、さらに、通信インターフェイス42、I/O(Input/Output)インターフェイス38、入力部44および表示部46を含む。通信インターフェイス42は、情報処理装置2が装置本体1およびサーバ4を含む外部機器と通信するためのインターフェイスである。
【0062】
I/Oインターフェイス38は、情報処理装置2への入力または情報処理装置2からの出力のインターフェイスである。
図4に示すように、I/Oインターフェイス38は、入力部44および表示部46に接続される。
【0063】
入力部44は、測定者からの情報処理装置2に対する指示を含む入力を受け付ける。入力部44は、キーボード、マウスおよび、表示部46の表示画面と一体的に構成されたタッチパネルなどを含み、試料の測定条件および撮像部28に対する撮像指示などを受け付ける。
【0064】
表示部46は、測定条件を設定する際に、例えば測定条件の入力画面および撮像部28で取得された試料Sの測定位置の画像などを表示することができる。測定中には、表示部46は、検出器22により検出された2次X線のスペクトルおよび、情報処理装置2による分析結果を、撮像部28で取得された試料Sの測定位置を示す画像とともに表示することができる。
【0065】
図5は、サーバ4の構成を概略的に示す図である。
図5を参照して、サーバ4は、装置全体を制御するためのCPU52と、プログラムおよびデータを格納する記憶部とを備えており、プログラムに従って動作するように構成される。記憶部は、ROM54、RAM56、HDD60およびストレージ5を含む。
【0066】
ROM54は、CPU52にて実行されるプログラムを格納することができる。RAM56は、CPU52におけるプログラムの実行中に利用されるデータを一時的に格納することができ、作業領域として利用される一時的なデータメモリとして機能することができる。HDD60およびストレージ5は、不揮発性の記憶装置であり、情報処理装置2から送信された情報を格納することができる。
【0067】
情報処理装置2は、さらに、通信インターフェイス62およびI/Oインターフェイス58を含む。通信インターフェイス62は、サーバ4が情報処理装置2を含む外部機器と通信するためのインターフェイスである。
【0068】
I/Oインターフェイス58は、サーバ4への入力またはサーバ4からの出力のインターフェイスである。I/Oインターフェイス58はストレージ5に接続される。ストレージ5は、サーバ4および情報処理装置2の間で送受信されるデータを蓄積するためのメモリである。
【0069】
サーバ4は一般的なコンピュータに相当する機能を有して構成することができる。サーバ4は表示部および入力部をさらに含んでもよい。
【0070】
図1に戻って、分析装置EDXにおいて、情報処理装置2は、装置本体1による試料Sの測定が行なわれると、
図3に示した2次X線のスペクトルを含む測定データをHDD40(
図4)に格納する。情報処理装置2は、また、測定データを定量分析し。分析結果をHDD40に格納する。
【0071】
情報処理装置2は、予め設定された送信周期Tごとに、HDD40に格納されている1または複数の分析結果の各々について、分析結果の概要に相当する分析結果サマリを生成する。情報処理装置2は、生成した分析結果サマリを、インターネット3を経由してサーバ4へ送信する。なお、分析結果サマリの送信周期Tは、数時間、1日または1週間など、分析システム100を管理する上位の制御装置によって任意の期間に設定することができる。あるいは、分析結果サマリの送信時刻は、ユーザが入力部44を用いて任意の時刻に設定することができる。
【0072】
図6は、分析結果サマリの一例を示す図である。
図6の例では、分析結果サマリは、1送信周期Tの間に取得された、ある測定データの分析結果が表の形式でまとめられている。
【0073】
図6の表は、RoHS(Directive on the Restriction of the Use of Certain Hazardous Substances in Electrical Equipment:電気・電子機器に含まれる特定有害物質の使用制限に関する欧州議会および理事会指令)規制に伴い、試料Sに含まれるカドミウム(Cd)、鉛(Pb)、水銀(Hg)、ポリ臭化ビフェニル(PBB)、ポリ臭化ジフェニルエーテル(PBDE)、六価クロム(Cr)の元素の定量分析を行なった結果をまとめたものである。表は、分析対象の元素ごとに、定量値、標準偏差σおよび判定結果を示す形式となっている。
【0074】
測定データ名には、定量分析を行なった測定データのファイル名が記載される。
定量値には、試料Sとなる製品の主成分の組成を仮定し、理論式を用いて蛍光X線の実測強度を再現するFP法により求められた各元素の定量値(半定量値)が用いられる。もちろん、検量線法により求めた定量値を用いてもよい。
【0075】
標準偏差σは、例えば、繰り返し測定された蛍光X線の測定結果に基づいて複数回計算した元素の濃度の値から算出される。または、標準偏差σは、1回の測定で得られる理想σから算出される。
【0076】
判定結果は、定量値と予め定められた管理基準値とを比較した結果に基づいており、例えば「OK」、「NG」、「グレーゾーン」の三段階で表わすことができる。例えば、定量値が第1の管理基準値未満である場合には「OK」と判定され、定量値が第1の管理基準値よりも高い第2の管理基準値を超える場合には「NG」と判定され、定量値が第1の管理基準値以上かつ第2の管理基準値以下である場合には「グレーゾーン」と判定される。
【0077】
分析結果サマリは、さらに、2次X線のスペクトルを含んでいてもよい。
図6の例では、分析対象の元素のうちの少なくとも1つの元素(Cd,Pb,Cr)のスペクトルが示されている。
【0078】
ただし、分析結果サマリに含まれる2次X線のスペクトルは、
図3に示した2次X線のプロファイルを表す画像データをPDF(Portable Document Format)ファイルなどの文書データに変換したものである。したがって、スペクトルデータのファイルサイズは、測定データそのもののファイルサイズに比べて小さい。
【0079】
ここで、
図6に示した分析結果サマリは、試料Sを分析装置EDXで測定することにより得られた測定データに基づいて生成されたものである。この測定データは、装置本体1の検出器22により検出される2次X線のスペクトルを表すデータ(
図3参照)を含んでおり、エネルギーごとの蛍光X線強度の測定値で構成される。測定データのファイルサイズは数MB程度のものから数十MBにまで及ぶものがある。例えば分析装置がGCMS(ガスクロマトグラフ質量分析装置)の場合、測定データのファイルサイズは数十MBとなることがある。
【0080】
これに対して、分析結果サマリは、表形式で表された文字情報だけで構成されたテキストファイルと、2次X線のスペクトルのデータであるPDFファイルとによって構成することができる。分析結果サマリのファイルサイズは数KB程度であり、測定データに比べて、ファイルサイズを大幅に小さくすることができる。
【0081】
図11に、従来の分析システム1000の構成例を説明する概略図である。
図11を参照して、従来の分析システム1000は、
図1に示した本実施の形態に従う分析システム100と基本的な構成が同じであるが、分析装置EDXの情報処理装置2が装置本体1による測定データを、インターネット3を介してサーバ4へ送信する点が異なる。具体的には、情報処理装置2は、所定の送信周期Tごとに、装置本体1による測定データをサーバ4へ送信するように構成される。
【0082】
サーバ4は、各分析装置EDXから送信される測定データを受信すると、分析装置EDXの測定データに関するデータベースを構築する。構築されたデータベースは、分析装置EDX1~EDXNによる測定データの検索に用いられる。データベースはストレージ5に格納される。
【0083】
このようにサーバ4は、分析装置EDXの測定データのデータベースを構築して管理することにより、各分析装置EDXのユーザに対して、他の分析装置EDXの測定データを閲覧するサービスを提供することができる。
【0084】
しかしながら、一方で、1つの測定データのファイルサイズが数十MBに及ぶ場合には、各分析装置EDXから定期的に送信される測定データを全てストレージ5に格納するためには、ストレージ5の容量を十分に大きくしておく必要がある。特に測定データを長期間にわたって保存したい場合、その必要性は顕著となる。また、ストレージ5の容量不足が生じたときには、ストレージ5の容量を追加する必要が生じる。その結果、分析システムの運用コストがかかってしまうことが懸念される。
【0085】
また、分析対象によっては、ユーザは測定データの全体を閲覧することを必要とはしておらず、測定データのうちの特定の定量値についてのみ閲覧したいという場合がある。このような場合であっても、ユーザは、サーバ4から測定データをダウンロードし、当該測定データから特定の定量値を抽出する手順を踏む必要があり、ユーザの利便性の低下が懸念される。
【0086】
一方、本実施の形態に係る分析システム100では、各分析装置EDXの情報処理装置2は、測定データに代えて、測定データの分析結果の概要である分析結果サマリをサーバ4へ送信するように構成されている。サーバ4は、各分析装置EDXから分析結果サマリを受信すると、分析結果サマリに関するデータベースを構築し、ストレージ5に格納する。したがって、本実施の形態では、サーバ4は、分析装置EDXの分析結果サマリのデータベースを構築して管理することにより、各分析装置EDXのユーザに対して、他の分析装置EDXの分析結果サマリを閲覧するサービスを提供することができる。
【0087】
これによると、分析結果サマリは測定データに比べてファイルサイズを十分に小さくできるため、各分析装置EDXからサーバ4に送信される分析結果サマリを全てストレージ5に格納しても、測定データをストレージ5に格納する従来の分析システム1000(
図7参照)に比べて、データベースの構築に必要なストレージ5の容量を小さく抑えることができる。したがって、ストレージ5の容量不足を回避することができ、結果的に分析システム100の運用コストの増大を抑制することができる。
【0088】
また、分析結果サマリには分析対象の元素ごとの定量値を示すデータが含まれているため、ユーザは、サーバ4から分析結果サマリをダウンロードすることで、測定データのうちの特定の元素の定量値を直ちに知ることができる。したがって、ユーザの利便性を向上させることができる。
【0089】
さらに、本実施の形態では、以下に説明するように、各分析装置EDXの情報処理装置2は、サーバ4を経由して他の分析装置EDXの情報処理装置2に対して閲覧要求を送信することで、他の分析装置EDXの測定データについても閲覧することができる。
【0090】
以下では、本実施の形態に従う分析システム100における分析装置EDXおよびサーバ4の動作について、
図7を用いて説明する。
【0091】
図7は、分析システム100が実行する処理の一例を示すシーケンス図である。
図7では、説明を簡単にするため、分析装置EDX1,EDX2およびサーバ4が実行する処理について説明し、他の分析装置EDX3~EDXNを省略している。
【0092】
分析システム100では、分析装置EDX1、EDX2は、所定の送信周期Tごとに、インターネット3を経由してサーバ4に分析結果サマリを送信する。
図7では、時刻t1にて、分析装置EDX1の情報処理装置2は、HDD40に蓄積されている複数の分析結果について分析結果サマリを生成する(S11)。例えば、分析結果サマリは、1または複数の測定データの各々について、分析結果を示す表と2次X線のスペクトルとから構成される(
図6参照)。情報処理装置2は、生成した分析結果サマリを、インターネット3を経由してサーバ4へ送信する(S12)。
【0093】
分析装置EDX2の情報処理装置2も、分析装置EDX1と同様の方法によって、所定の送信周期Tごとに、分析結果サマリを生成し(S21)、インターネット3を経由してサーバ4へ送信する(S22)。
【0094】
サーバ4は、分析装置EDX1,EDX2から分析結果サマリを受信すると(S31)、分析結果サマリのデータベース(以下、分析結果DBとも称する)を構築し、ストレージ5に格納する(S32)。これにより、分析装置EDX1,EDX2のユーザは、分析結果DBを検索して他の分析装置EDXの分析結果サマリを閲覧することが可能となる。
【0095】
次に、サーバ4は、分析結果DBに蓄積されている、複数の分析結果サマリの一覧を複数の分析装置EDXに対して公開する。この一覧は、測定データごとの分析結果サマリを示すものであるため、「測定データ一覧」とも称する。
図7の例では、サーバ4は、測定データ一覧をブラウザで表示する(S33)。
図8に、サーバ4がブラウザ表示する測定データ一覧の一例を示す。
図8を参照して、測定データ一覧では、測定データのファイル名と、分析結果サマリとが対応付けられて表示されている。
図8の例では、分析結果サマリとして、分析対象の各元素の定量値のみが表示されている。
【0096】
図7に戻って、サーバ4がブラウザ表示した測定データ一覧は、各分析装置EDXの情報処理装置2にて閲覧(ブラウジング)することができる。例えば、分析装置EDX2の情報処理装置2が閲覧する場合を想定する(S23)。
【0097】
分析装置EDX2では、情報処理装置2は、サーバ4を経由して、測定データ一覧(
図8)を、コンテンツ表示用プログラムであるブラウザを用いて表示部46に表示させる。分析装置EDX2のユーザは、表示部46に表示された測定データ一覧を見ることで、各測定データの分析結果サマリ(
図8の例では定量値)を知ることができる。
【0098】
測定データ一覧の中で、詳細な内容を確認したい測定データがある場合には、ユーザは、測定データ一覧上でその測定データを選択し、選択した測定データの閲覧をサーバ4に要求することができる(S24)。例えば
図8に示すように、測定データ一覧において、各測定データ名に並べてチェックボックスを配置する。ユーザが詳細を確認したい測定データ名に対応するチェックボックスにチェック(
図8ではレ点)を入れることで、測定データを選択することができる。
【0099】
あるいは、分析結果サマリにおいて判定結果が「NG」または「グレーゾーン」と示された測定データを、分析装置EDX2の情報処理装置2が自動的に選択し、選択した測定データの閲覧をサーバ4に要求する構成としてもよい。これによると、ユーザが測定データを選択する手間を省くことができる。または、情報処理装置2によって自動的に選択された測定データの中からユーザが所望の測定データを選択する構成としてもよい。
【0100】
サーバ4は、測定データ一覧をブラウザ表示した後に、分析装置EDX2から測定データの閲覧要求を受け付けると、要求された測定データをリスト化し、リクエストファイルを作成する(S34)。
図9に、サーバ4で作成されるリクエストファイルの一例を示す。サーバ4は、分析装置EDXごとに、情報処理装置2に向けたリクエストファイルを作成する。例えば、分析装置EDX2が要求した測定データが、分析装置EDX1で取得された測定データに該当する場合には、
図9に示すように、分析装置EDX1の情報処理装置2に向けたリクエストファイルが作成される。リクエストファイルには、要求されている測定データのファイル名が記載されている。リクエストファイルはテキストファイルである。
【0101】
時刻t1から1送信周期Tが経過し、次に分析結果サマリを送信するタイミングが到来すると(
図7の時刻t2に相当)、分析装置EDX1,EDX2の各々において、情報処理装置2は、直前の送信周期Tの間に取得された1または複数の測定データの分析結果サマリを生成する(S13,S25)。このとき、情報処理装置2は、リクエストファイル(
図9参照)をサーバ4からダウンロードする(S14,S28)。
【0102】
ダウンロードしたリクエストファイルに自装置で取得された測定データ名が記載されていれば、情報処理装置2は、指定された測定データをHDD60から読み出す。そして、情報処理装置2は、分析結果サマリとともに、指定された測定データをサーバ4へ送信する(S15)。
図7の例では、分析装置EDX1の情報処理装置2は、リクエストファイルに記載された測定データをHDD40から読み出し、分析結果サマリとともにサーバ4へ送信する。
【0103】
一方、分析装置EDX2の情報処理装置2は、リクエストファイルに測定データ名が記載されていないため、分析結果サマリのみをサーバ4へ送信する(S27)。
【0104】
サーバ4は、分析装置EDX1,EDX2から分析結果サマリを受信すると(S35)、分析結果DBを構築し、ストレージ5に格納する(S36)。続いてサーバ4は、分析装置EDX1の情報処理装置2から送信された測定データをストレージ5に格納するとともに、当該測定データが分析装置EDX1以外の分析装置EDXの情報処理装置2によりダウンロード可能な状態となったことをブラウザ表示する(S37)。
【0105】
分析装置EDX2では、情報処理装置2は、自身の要求した測定データがダウンロード可能な状態となったことを知ると、当該測定データをサーバ4からダウンロードする(S28)。これにより、分析装置EDX2のユーザは、測定データの詳細な内容を確認することが可能となる。測定データは2次X線のスペクトルを示すことから、ユーザはスペクトルの詳細を確認することができる。
【0106】
なお、
図7に示したシーケンスにおいて、リクエストファイルを用いた測定データのアップロードの処理は一例であって、コマンド(Application Programming Interface;API)を利用して測定データのアップロードを行なうことも可能である。
【0107】
また、
図7のシーケンスでは、所定の送信周期Tごとに各分析装置EDXからサーバ4に分析結果サマリを送信するタイミングで、リクエストされた測定データを送信する構成としたが、測定データを早急に入手したいなどの即時性が求められる場合には、分析結果サマリの送信タイミングを待たずに、強制的にリクエストファイルをサーバ4から分析装置EDX1の情報処理装置2に送信して、測定データを送信させる構成としてもよい。
【0108】
図10は、分析システム100が実行する処理の他の例を示すシーケンス図であって、
図7と対比される図である。
図10では、
図7と同様に、分析装置EDX1,EDX2およびサーバ4が実行する処理について説明し、他の分析装置EDX3~EDXNを省略している。
【0109】
図10のシーケンス図は、
図7のシーケンス図と比較して、分析装置EDX1の情報処理装置2が測定データを送信するタイミングが異なる。
【0110】
具体的には、サーバ4は、測定データ一覧をブラウザ表示した後に(S33)、分析装置EDX2から測定データの閲覧要求を受け付けると、要求された測定データをリスト化し、リクエストファイル(
図9参照)を作成する(S34)。サーバ4は、作成したリクエストファイルを、当該測定データを保有している分析装置EDX1の情報処理装置2へ送信する(S34A)。
【0111】
分析装置EDX1では、情報処理装置2は、サーバ4からリクエストファイルを受信すると(S12A)、リクエストファイルに記載された測定データをHDD40から読み出し、サーバ4へ送信する(S15A)。
【0112】
サーバ4は、分析装置EDX1から測定データを受信すると(S35A)、当該測定データをストレージ5に格納するとともに、当該測定データが分析装置EDX1以外の分析装置EDXの情報処理装置2がダウンロード可能な状態となったことをブラウザ表示する(S37)。
【0113】
分析装置EDX2では、情報処理装置2は、自身の要求した測定データがダウンロード可能な状態となったことを知ると、当該測定データをサーバ4からダウンロードする(S28)。
【0114】
次に、時刻t1から1送信周期Tが経過し、次に分析結果サマリを送信するタイミングが到来すると(
図10の時刻t2に相当)、分析装置EDX1,EDX2の各々において、情報処理装置2は、直前の送信周期Tの間に取得された1または複数の測定データの分析結果サマリを生成する(S13、S25)。情報処理装置2は、生成した分析結果サマリを、インターネット3を経由してサーバ4へ送信する(S15B,S27)。
【0115】
サーバ4は、分析装置EDX1,EDX2から分析結果サマリを受信すると(S35B)、分析結果DBを構築し、ストレージ5に格納する(S36)。図示は省略するが、サーバ4は、分析結果DBに蓄積されている、複数の分析結果サマリの一覧(測定データ一覧)をブラウザで表示する。
【0116】
図10のシーケンス図では、サーバ4は、分析装置EDX2の情報処理装置2から測定データの転送の要求を受けると、直ちに、その要求を分析装置EDX1の情報処理装置2へ送信するように構成される。そして、分析装置EDX1では、サーバ4からの要求を受信すると、分析サマリの送信とは別に、直ちに測定データをサーバ4へ送信するように構成される。これによると、分析装置EDX2のユーザは、次回の分析結果サマリの送信タイミングを待たずに、欲しい測定データを取得することができる。
【0117】
一方で、
図7のシーケンス図では、分析装置EDX1の情報処理装置2が分析結果サマリの送信タイミングに測定データをサーバ4に送信することで、
図10のような即時性に欠けるものの、サーバ4の負荷を低減することができる。
【0118】
このように本実施の形態に従う分析システムによれば、サーバ4は、複数の分析装置EDXの各々における測定データの分析結果を概要を示す分析結果サマリのデータベースを構築して管理することにより、分析装置EDXの測定データのデータベースを構築して管理する構成(
図11参照)に比べて、データベースの構築に必要なストレージ5の容量を小さく抑えることができる。したがって、ストレージ5の容量不足を回避することができ、結果的に分析システム100の運用コストの増大を抑制することができる。
【0119】
また、分析結果サマリには測定データごとの分析結果の概要が示されているため、ユーザは、サーバ4から分析結果サマリをダウンロードすることで、測定データのうちの特定の定量値を直ちに知ることができる。したがって、ユーザの利便性を向上させることができる。
【0120】
さらに、本実施の形態に係る分析システム100では、各分析装置EDXの情報処理装置2は、サーバ4を経由して他の分析装置EDXの情報処理装置2に対して閲覧要求を送信することで、他の分析装置EDXの測定データについても閲覧することができる。したがって、ユーザは、必要に応じて測定データの詳細の内容を確認することができる。
【0121】
また、本実施の形態に係る分析システム100では、2つの分析装置EDX間の測定データの遣り取りをサーバ4を経由して行なう構成としたことで、サーバ4が一方の分析装置EDXからアップロードされた測定データをブラウザ表示することで、他方の分析装置EDX以外の分析装置EDXも当該測定データを閲覧することができる。
【0122】
なお、本実施の形態では、分析装置として蛍光X線分析装置を例示して説明したが、分析装置は蛍光X線分析装置以外であっても、試料の分析を行なう装置であって、サーバとの間でデータを遣り取りする機能を有する分析装置を適用することが可能である。
【0123】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0124】
1 装置本体、2 情報処理装置、3 インターネット、4 サーバ、5 ストレージ、10 試料室、11 試料台、12 開口部、13 筐体、20 測定室、21 X線管、22 検出器、23 シャッター、24 1次X線フィルタ、25 コリメータ、26 駆動機構、28 撮像部、32,52 CPU、34,54 ROM、36,56 RAM、38,58 I/Oインターフェイス、40,60 HDD、42,62 通信インターフェイス、44 入力部、46 表示部、100,1000 分析システム、EDX1~EDXN,EDX 分析装置。