(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-20
(45)【発行日】2022-09-29
(54)【発明の名称】転舵機能付き車両駆動装置
(51)【国際特許分類】
B62D 7/08 20060101AFI20220921BHJP
B62D 5/04 20060101ALI20220921BHJP
【FI】
B62D7/08 Z
B62D5/04
(21)【出願番号】P 2018230012
(22)【出願日】2018-12-07
【審査請求日】2021-09-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000003609
【氏名又は名称】株式会社豊田中央研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100079049
【氏名又は名称】中島 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【氏名又は名称】加藤 和詳
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 篤史
(72)【発明者】
【氏名】日比野 良一
(72)【発明者】
【氏名】後藤 良次
(72)【発明者】
【氏名】天野 也寸志
(72)【発明者】
【氏名】嶋貫 研人
(72)【発明者】
【氏名】荒川 政司
【審査官】森本 康正
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-315645(JP,A)
【文献】特開昭62-128832(JP,A)
【文献】特開2007-145070(JP,A)
【文献】特開2017-013529(JP,A)
【文献】特許第5239582(JP,B2)
【文献】特開2014-201263(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 5/00-15/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動用のモータと、
前記モータにより駆動される入力軸と、
前記入力軸と交差し、車輪が取り付けられる出力軸と、
前記入力軸に取り付けられた入力歯車と、
前記出力軸に取り付けられ前記入力歯車と噛み合い、前記入力歯車と共に第1の交差軸歯車を構成する出力歯車と、
前記出力軸を回転可能に支持すると共に、前記入力軸回りに回転可能に支持されたハウジングと、
前記出力軸の回転を制限可能な第1ブレーキと、
前記ハウジングの回転を制限可能な第2ブレーキと、
を有する転舵機能付き車両駆動装置。
【請求項2】
前記モータ、前記入力軸、前記出力軸、前記入力歯車、前記出力歯車、前記ハウジング、前記第1ブレーキ及び前記第2ブレーキは、車両における左右の車輪にそれぞれ設けられ、
左右の前記ハウジングは、タイロッドにより連結され、
転舵の条件に応じて、前記モータにより前記出力軸を回転させる駆動トルクと左右の前記モータにより前記ハウジングを回転させる転舵トルクとを調整可能とされた請求項1に記載の転舵機能付き車両駆動装置。
【請求項3】
前記モータと前記入力軸との間に、第2の交差軸歯車が設けられている請求項1又は請求項2に記載の転舵機能付き車両駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、転舵機能付き車両駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、転舵アクチュエータを用いて、アッパアームに設けた上下方向の転舵軸周りに車輪を回転させるインホイールモータ車用転舵装置が開示されている。
【0003】
特許文献2には、ハンドル軸とパワーアシスト装置から出力された操舵力により、一方の車輪と、該車輪にタイロッドを介して連結された他方の車輪とを操舵する構造が開示されている。
【0004】
特許文献3には、ハウジングに固定されるステータ及びステータに対して回転可能に支持されるロータを有する電動モータと、ロータの回転を車軸に伝達して車輪を回転駆動する車輪駆動ユニットと、車輪を操舵制動する舵角制御機構とを備えた車両駆動用アクチュエータが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2013-112112号公報
【文献】特許第6273427号公報
【文献】特許第5239582号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記した従来例では、何れも、車輪用の駆動モータとは別に、転舵用のアクチュエータを車輪付近に配置している。
【0007】
しかしながら、このようなアクチュエータを、例えば前輪駆動車における前輪のような駆動輪に設ける場合には、駆動トルクを伝達する車軸等との干渉により、該アクチュエータの配置が困難になると考えられる。また、特許文献3に記載の構成では、車輪内に複雑な遊星歯車機構とクラッチ類、モータが配置されているため、車輪の重量が増加し、ばね下重量の増加による乗り心地の悪化が懸念される。
【0008】
本発明は、車輪内の部品増や重量増を抑制しつつ、1つのモータを駆動源とする車輪の駆動と転舵の動作を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1の態様に係る転舵機能付き車両駆動装置は、駆動用のモータと、前記モータにより駆動される入力軸と、前記入力軸と交差し、車輪が取り付けられる出力軸と、前記入力軸に取り付けられた入力歯車と、前記出力軸に取り付けられ前記入力歯車と噛み合い、前記入力歯車と共に第1の交差軸歯車を構成する出力歯車と、前記出力軸を回転可能に支持すると共に、前記入力軸回りに回転可能に支持されたハウジングと、前記出力軸の回転を制限可能な第1ブレーキと、前記ハウジングの回転を制限可能な第2ブレーキと、を有する。
【0010】
この転舵機能付き車両駆動装置では、入力歯車が取り付けられた入力軸と、出力歯車が取り付けられた出力軸が交差しており、入力歯車と出力歯車とが噛み合っている。つまり、入力歯車と出力歯車とが第1の交差軸歯車を構成している。第2ブレーキを使用することで、ハウジングの回転を抑制することができ、第1ブレーキを使用することで、出力軸の回転を抑制することができる。
【0011】
ここで、第2ブレーキを使用し、第1ブレーキを使用しない状態でモータを作動させて入力歯車を回転させると、入力歯車から出力歯車に回転が伝達され、出力軸が回転する。このときハウジングの回転は抑制されている。したがって、第2ブレーキを使用し、第1ブレーキを使用しない状態では、モータの動力を主として車輪の駆動トルクに配分することができる。
【0012】
一方、第2ブレーキを使用せず、第1ブレーキを使用した状態でモータを作動させて入力歯車を回転させると、出力歯車の回転が抑制されているため、車輪の回転駆動が抑制される。しかしながら、入力歯車と出力歯車とが噛み合っているため、出力歯車、出力軸及びハウジングが、入力軸回りに回転し、結果として車輪が転舵される。したがって、第2ブレーキを使用せず、第1ブレーキを使用した状態では、モータの動力を主として車輪の転舵トルクに配分することができる。
【0013】
第2ブレーキの制動力と第1ブレーキの制動力を制御することにより、モータの動力を車輪の駆動トルクと転舵トルクの配分を任意に変更することができ、駆動トルクと転舵トルクのいずれかに100%配分することもできる。
【0014】
第2の態様は、第1の態様に係る転舵機能付き車両駆動装置において、前記モータ、前記入力軸、前記出力軸、前記入力歯車、前記出力歯車、前記ハウジング、前記第1ブレーキ及び前記第2ブレーキは、車両における左右の車輪にそれぞれ設けられ、左右の前記ハウジングは、タイロッドにより連結され、転舵の条件に応じて、前記モータにより前記出力軸を回転させる駆動トルクと左右の前記モータにより前記ハウジングを回転させる転舵トルクとを調整可能とされている。
【0015】
この転舵機能付き車両駆動装置では、左右の車輪がタイロッドにより連結されているので、一方の車輪を転舵させると、他方の車輪も連動して転舵される。左右どちらかのモータが故障した場合でも、もう一つのモータで車輪の駆動及び転舵が可能であり、退避場までの回避運転に対応可能である。
【0016】
第3の態様は、第1の態様又は第2の態様に係る転舵機能付き車両駆動装置において、前記モータと前記入力軸との間に、第2の交差軸歯車が設けられている。
【0017】
この転舵機能付き車両駆動装置では、入力歯車と出力歯車で構成される第1の交差軸歯車に加え、モータと入力軸との間に第2の交差軸歯車が設けられているので、モータの配置の自由度を高めることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る転舵機能付き車両駆動装置によれば、車輪内の部品増や重量増を抑制しつつ、1つのモータを駆動源とする車輪の駆動と転舵の動作を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本実施形態に係る転舵機能付き車両駆動装置を車両の前輪に適用した例を示す平面図である。
【
図2】本実施形態に係る転舵機能付き車両駆動装置を車両の前輪に適用した例を示す断面図である。
【
図3】本実施形態に係る転舵機能付き車両駆動装置を示す断面図である。
【
図4】(A)は、本実施形態に係る転舵機能付き車両駆動装置において、車輪が駆動される状態を示す部分断面平面図である。(B)は、本実施形態に係る転舵機能付き車両駆動装置において、車輪が転舵される状態を示す部分断面平面図である。
【
図5】(A)は、車両が直進する状態を模式的に示す平面図である。(B)は、大きい操舵入力により車両が左折する状態を模式的に示す平面図である。(C)は、小さい操舵入力により車両が左旋回する状態を模式的に示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を実施するための形態を図面に基づき説明する。図面において、矢印FRは車両前方を示し、矢印UPは車両上方を示し、矢印LHは車両左方向を示している。
【0021】
図1、
図2、
図5において、本実施形態に係る転舵機能付き車両駆動装置10は、車輪の一例としての車両12の左前輪14及び右前輪24に対してそれぞれ設けられている。この転舵機能付き車両駆動装置10は、駆動用のモータ16と、入力軸18と、出力軸20と、入力歯車28と、出力歯車30と、ハウジング22と、第1ブレーキ31と、第2ブレーキ32とを有している。入力歯車28と出力歯車30は、第1の交差軸歯車41を構成している。
【0022】
入力軸18は、モータ16により駆動される回転軸である。
図2、
図3に示されるように、入力軸は、任意の数の軸受34により、その軸方向が車両上下方向となるように支持されている。軸受34は、支持部36に設けられている。支持部36は、例えば車体40に設けられている。モータ16と入力軸18との間には、第2の交差軸歯車42が設けられている。
【0023】
モータ16は、その出力軸46の軸方向が水平方向となるように、例えば車体40に取り付けられている。出力軸46には、小歯車48が取り付けられている。また、入力軸18の上端には、大歯車50が取り付けられている。この小歯車48と大歯車50により、第2の交差軸歯車42が構成されている。図示の例では、小歯車48が取り付けられた出力軸46と、大歯車50が取り付けられた入力軸18とが直交しており、歯車軸の交差角度が90°である。したがって、第2の交差軸歯車42は、直交軸歯車である。また、第2の交差軸歯車42は減速歯車機構であり、大歯車50の歯数は小歯車48の歯数より多く設定されている。
【0024】
図3において、大歯車50は、ハウジング52に軸受54を介して回転可能に支持されている。またモータ16の出力軸46は、ハウジング52に軸受56を介して回転可能に支持されている。なお、ハウジング52は車体40に設けられているが、
図1、
図2ではハウジング52の図示を省略している。
【0025】
出力軸20は、入力軸18と交差している。出力軸20には、車輪の一例としての左前輪14が取り付けられている。入力歯車28は、入力軸18の例えば下端に取り付けられている。出力歯車30は、出力軸20に取り付けられ、入力歯車28と噛み合い、入力歯車28と共に第1の交差軸歯車41を構成している。図示の例では、入力歯車28が取り付けられた入力軸18と、出力歯車30が取り付けられた出力軸20とが直交しており、歯車軸の交差角度が90°である。したがって、第1の交差軸歯車41は直交軸歯車である。また、第1の交差軸歯車41は減速歯車機構であり、出力歯車30の歯数は入力歯車28の歯数より多く設定されている。
【0026】
ハウジング22は、出力軸20を回転可能に支持すると共に、入力軸18回りに回転可能に支持されている。図示の例では、出力軸20に取り付けられた出力歯車30が、ハウジング22に軸受58を介して回転可能に支持されている。このハウジング22は、車体40側のハウジング52に、軸受60を介して、入力軸18と同軸に回転可能に支持されている。また、ハウジング22は、軸受62を介して入力軸18を回転可能に支持している。つまり、入力軸18は、上下に配置された軸受34,62により二点で回転支持されている。
【0027】
第1ブレーキ31は、例えばハウジングに設けられ、出力歯車30に対して制動力を与えることで、出力軸20の回転を制限可能とされている。第2ブレーキ32は、例えば車体40側のハウジング52に設けられ、ハウジング22に対して制動力を与えることで、ハウジング22の回転を制限可能とされている。
【0028】
第1ブレーキ31及び第2ブレーキ32の構成は任意であるが、摩擦力を用いて制動力を生じさせる機械的ブレーキ、電気エネルギを消費させて制動力を生じさせる電気的ブレーキ、流体抵抗を用いて制動力を生じさせる流体ブレーキ等の構成を用いることができる。
【0029】
転舵機能付き車両駆動装置10におけるモータ16、入力軸18、出力軸20、入力歯車28、出力歯車30、ハウジング22、第1ブレーキ31及び第2ブレーキ32等の要素は、車両12における左前輪14及び右前輪24にそれぞれ設けられている。そして、左右のハウジング22は、タイロッド44により連結されている。具体的には、タイロッド44は、両端のタイロッドエンド44Aにおいて、左右のハウジング22にそれぞれ結合されている。タイロッドエンド44Aは、例えばボールジョイントである。
【0030】
転舵機能付き車両駆動装置10では、転舵の条件に応じて、
図4(A)に示す状態のモータ16により出力軸20を回転させる駆動トルクと、
図4(B)に示すモータ16によりハウジング22を回転させる転舵トルクとを調整可能とされている。
【0031】
(作用)
本実施形態は、上記のように構成されており、以下その作用について説明する。
図3において、本実施形態に係る転舵機能付き車両駆動装置10では、入力歯車28が取り付けられた入力軸18と、出力歯車30が取り付けられた出力軸20が交差しており、入力歯車28と出力歯車30とが噛み合っている。つまり、入力歯車28と出力歯車30とが第1の交差軸歯車41を構成している。第2ブレーキ32を使用することで、ハウジング22の回転、つまり車輪の転舵を抑制することができる。また、第1ブレーキ31を使用することで、出力軸20の回転、つまり車輪の駆動を抑制することができる。
【0032】
また入力歯車28と出力歯車30で構成される第1の交差軸歯車41に加え、モータ16と入力歯車28との間に第2の交差軸歯車42が設けられているので、モータ16の配置の自由度を高めることができる。
【0033】
ここで、第2ブレーキ32を使用し、第1ブレーキ31を使用しない状態でモータ16を作動させて入力歯車28を回転させると、
図5(A)に示されるように、入力歯車28から出力歯車30に回転が伝達され、出力軸20が回転する。このときハウジング22の回転は抑制されている。したがって、第2ブレーキ32を使用し、第1ブレーキ31を使用しない状態では、モータ16の動力を主として例えば左前輪14(車輪)の駆動トルクに配分することができる。
【0034】
一方、第2ブレーキ32を使用せず、第1ブレーキ31を使用した状態でモータ16を作動させて入力歯車28を回転させると、
図5(B)に示されるように、出力歯車30の回転が抑制されているため、例えば左前輪14(車輪)の回転駆動が抑制される。しかしながら、入力歯車28と出力歯車30とが噛み合っているため、出力歯車30、出力軸20及びハウジング22が、入力軸18回りに回転し、結果として左前輪14(車輪)が転舵される(角度θ)。したがって、第2ブレーキ32を使用せず、第1ブレーキ31を使用した状態では、モータ16の動力を主として車輪の一例としての左前輪14の転舵トルクに配分することができる。
【0035】
また、第2ブレーキ32の制動力と第1ブレーキ31の制動力を制御することにより、モータ16の動力を車輪の一例としての左前輪14の駆動トルクと転舵トルクの配分を任意に変更することができ、駆動トルクと転舵トルクのいずれかに100%配分することもできる。換言すれば、二自由度(車輪の駆動と転舵)の動作を実現できる。
【0036】
更に、
図1に示されるように、本実施形態では、左右の車輪の一例としての左前輪14がタイロッド44により連結されているので、一方の車輪である右前輪24を転舵させると、他方の車輪である左前輪14も連動して転舵される。左右どちらかのモータ16が故障した場合でも、もう一つのモータ16で車輪の駆動及び転舵が可能であり、退避場までの回避運転に対応可能である。
【0037】
このように、本実施形態によれば、車輪内の部品増や重量増を抑制しつつ、1つのモータ16を駆動源とする車輪の駆動と転舵の動作を実現することができる。
【0038】
(車両の動作)
ここで、車両12の基本動作の例について、
図5を用いて説明する。車両12は前輪駆動であり、左前輪14と右前輪24に転舵機能付き車両駆動装置10がそれぞれ適用されている。動作条件は、表1に示されるとおりである。表1において、「ON」は作動を意味し、「NE」は必要に応じた作動を意味し、「OFF」は非作動を意味する。モータの「力行」は、電力をモータの出力軸の回転に変換して出力している状態を意味し、「回生」はモータの出力軸の回転を電力に変換している状態を示す。
【0039】
(a)直進モード
車両が直進する場合、左前輪及び右前輪においてそれぞれ第2ブレーキが作動するので、該左前輪及び右前輪は転舵されない。加速時には左前輪及び右前輪に対して、モータによりそれぞれ同等の駆動トルクが付与される。また、減速時には、左前輪及び右前輪に対して、第1ブレーキによる制動力が作用する。また、左前輪及び右前輪には、減速時のモータの回生による制動力も作用する。
【0040】
(b)右左折モード
車両のステアリング操作等により、大きい操舵角が左折方向に入力されたとき、右前輪の第1ブレーキが作動することで、該右前輪の駆動が抑制され、該右前輪が左に転舵される。この動きは、タイロッドを介して左前輪にも伝達されるので、該左前輪も左に転舵される。このとき、左前輪のモータ及び第2ブレーキは作動しない。左前輪の第1ブレーキは作動してもよいし、作動しなくてもよい。一方、右折の場合には、左前輪の第1ブレーキが作動することで、該左前輪の駆動が抑制され、該左前輪が右に転舵される。この動きは、タイロッドを介して右前輪にも伝達されるので、該右前輪も右に転舵される。このとき、右前輪のモータ及び第2ブレーキは作動しない。右前輪の第1ブレーキは作動してもよいし、作動しなくてもよい。このように、左折及び右折の場合には、転回中心から見て外側の車輪のモータを駆動し、内側の車輪のモータは駆動しない。内側の車輪については、必要に応じて制動してもよく、また制動しなくてもよい。
【0041】
(c)旋回モード
車両のステアリング操作等により、小さい操舵角が左折方向に入力されたときは、旋回モード(トルクベクタリングモード)となる。具体的には、左前輪と右前輪において第2ブレーキがそれぞれ作動するので、該左前輪及び右前輪は何れも転舵されない。そして、右前輪と左前輪との間で、モータの駆動トルクに差を付与する。具体的には、右前輪の駆動トルクを左前輪の駆動トルクよりも大きくする。この駆動トルクの差によって、車両平面視で左回りの旋回トルクT(ヨー)が発生することで、車両が左に曲がる。
【0042】
一方、小さい操舵角が右折方向に入力されたときは、左前輪の駆動トルクを右前輪の駆動トルクよりも大きくする。この駆動トルクの差によって、車両平面視で右回りの旋回トルク(ヨー)が発生することで、車両が右に曲がる。この旋回モードでは、第2ブレーキをONにしない(作動させない)場合も同様の動作が可能である。すなわち、右左折モードで使った転舵を左右輪のトルク差によって追加することができる。
【0043】
この旋回モードは、高速走行時の進路変更時等、操舵角が例えば3°未満でよいときに好適である。(b)、(c)のモード切替は、操舵角、車速、アクセルペダル及びブレーキペダルからの入力に基づき行われる。
【0044】
なお、
図5の例では、車両12が前輪駆動で前輪転舵の構成を有する場合について説明したが、産業車両のように後輪駆動、後輪転舵の車両(図示せず)にも、本実施形態を適用することができる。また、四輪駆動の車両(図示せず)にも、本実施形態を適用することができる。
【0045】
【0046】
[他の実施形態]
以上、本発明の実施形態の一例について説明したが、本発明の実施形態は、上記に限定されるものでなく、上記以外にも、その主旨を逸脱しない範囲内において種々変形して実施可能であることは勿論である。
【0047】
転舵機能付き車両駆動装置10は、四輪車における左右の車輪に設けられるものに限られず、三輪車の前輪のように、1つの車輪に設けられるものであってもよい。
【0048】
また、モータ16と入力軸18との間に第2の交差軸歯車42が設けられるものとしたが、第2の交差軸歯車42を省略した構成であってもよい。また、モータ16と入力軸18との間に、他の減速歯車機構が設けられていてもよい。更には、モータ16が入力軸18に直結されていてもよい。
【0049】
第1の交差軸歯車41及び第2の交差軸歯車42は、何れも直交軸歯車には限られず、例えば歯車軸の交差角度が90±10°であってもよい。
【符号の説明】
【0050】
10 転舵機能付き車両駆動装置
12 車両
14 左前輪(車輪)
16 モータ
18 入力軸
20 出力軸
22 ハウジング
24 右前輪(車輪)
28 入力歯車
30 出力歯車
31 第1ブレーキ
32 第2ブレーキ
41 第1の交差軸歯車
42 第2の交差軸歯車
44 タイロッド