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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-20
(45)【発行日】2022-09-29
(54)【発明の名称】機器および機器用のフック
(51)【国際特許分類】
   B25F 5/02 20060101AFI20220921BHJP
   B25H 3/00 20060101ALI20220921BHJP
   F16B 45/00 20060101ALI20220921BHJP
【FI】
B25F5/02
B25H3/00 Z
F16B45/00 H
F16B45/00 F
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2018243121
(22)【出願日】2018-12-26
(65)【公開番号】P2020104192
(43)【公開日】2020-07-09
【審査請求日】2021-06-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000005094
【氏名又は名称】工機ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】弁理士法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】坂井 正登
(72)【発明者】
【氏名】武田 修治
(72)【発明者】
【氏名】寺西 卓也
【審査官】城野 祐希
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2014/0097217(US,A1)
【文献】特開2011-101919(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0108300(US,A1)
【文献】登録実用新案第3198546(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25F 5/02
B25H 3/00
F16B 45/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングを備えた機器に装着可能なフックであって、
前記ハウジングの側面に装着される装着片と、
前記装着片に接続され、前記装着片から下方に延びる開放操作片と、
前記開放操作片の下端に接続される係止片と、を有し、
前記開放操作片は、当該開放操作片の長手方向に螺旋形状であり、前記装着片が前記ハウジングに装着される側とは逆側に突出する突出部を有する、機器用のフック。
【請求項2】
ハウジングを備えた機器に装着可能なフックであって、
前記ハウジングの側面に装着される装着片と、
前記装着片に接続され、前記装着片から下方に延びる開放操作片と、
前記開放操作片の下端に接続される係止片と、を有し、
前記開放操作片は、前記装着片が前記ハウジングに装着される側とは逆側に突出し、かつ前記装着片から前記ハウジングの前後方向外方に突出する突出部を有する、機器用のフック。
【請求項3】
請求項1または2記載の機器用のフックにおいて、
前記係止片は、前記機器をカラビナに吊り下げる時にカラビナに係止され、
前記係止片と前記開放操作片との連なり部分は、前記機器を吊り下げ姿勢から使用姿勢に反転移動させるときの前記機器の支点を有し、前記支点を中心として前記機器を回転させることでゲートを開放し、前記カラビナと前記係止片との係止を解除する、機器用のフック。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の機器用のフックにおいて、
前記係止片から前記装着片に向けて突出し、前記機器を使用者のベルトに引っ掛けるためのベルトフックを前記係止片に設けた、機器用のフック。
【請求項5】
請求項1~のいずれか1項に記載の機器用のフックにおいて、
前記装着片を移動自在に支持するスリーブを前記ハウジングに取り付け、前記機器の使用者のベルトに引っ掛けるためのベルトフックを前記スリーブに取り付けた、機器用のフック。
【請求項6】
請求項1~のいずれか1項に記載の機器用のフックにおいて、
前記装着片は、前記開放操作片が前記機器の後方に迫り出す迫り出し位置と、前記機器との側面に重なる重なり位置との間で移動自在である、機器用のフック。
【請求項7】
請求項1~のいずれか1項に記載の機器用のフックにおいて、
前記装着片の一端部と前記係止片の一端部との間に設けられる1つの前記開放操作片と、前記装着片の他端部と前記係止片の他端部との間に設けられる他の1つの前記開放操作片とが前記装着片の長手方向中央部に対して対称に配置され、前記機器の左右両方の側面のいずれにも装着し得る、機器用のフック。
【請求項8】
請求項記載の機器用のフックにおいて、
前記係止片から前記装着片に向けて突出するベルトフックを前記係止片の長手方向中央部に設け、前記ベルトフックと2つの前記開放操作片との間にベルトが入り込む隙間を形成し、前記機器を使用者のベルトに引っ掛けるようにした、機器用のフック。
【請求項9】
請求項記載の機器用のフックにおいて、
前記装着片を移動自在に支持するスリーブを前記ハウジングに取り付け、前記機器の使用者のベルトに引っ掛けるためのベルトフックを前記スリーブに取り付けた、機器用のフック。
【請求項10】
請求項1~のいずれか1項に記載の機器用のフックが設けられた機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はインパクト工具やブロワやライト等の機器を保持するための機器用のフックに関する。
【背景技術】
【0002】
機器には、ドライバドリル、インパクトドライバ、電子パルスドライバ、ロータリハンマドリル、インパクトレンチ、エアー工具、エンジン工具、ブロワ、ライト等がある。インパクトドライバは、ドリルの機能とドライバの機能を有するドライバドリルの機能に加えて、先端工具に回転方向の衝撃力を付加することができ、ドライバドリルに比してねじを強く締め付けることができる。電子パルスドライバは、電動モータに一定の負荷が加わると、電動モータを空回りさせてその回転の勢いにより先端工具を回転方向に叩くようにした機器である。ロータリハンマドリルは、先端工具に打撃力を加える機能を有しており、コンクリートのハツリ作業を行うことができる。また、インパクトレンチはボルトやナットを回転方向に打撃力を加えて回転させる機能を有している。
【0003】
このような機器を使用者のベルトに吊り下げるようにするため、機器の基端部にはベルトフックやカラビナフック等のフックが設けられる。フックの形態には、使用者のベルトに直接係合つまり引っ掛けるようにしたベルトフック、これに代えるか、またはこれに加えて、使用者のベルトにカラビナを介して係止つまり引っ掛けて止め付けるようにしたカラビナフックがある。
【0004】
特許文献1に記載されたインパクト工具には、使用者のベルトに直接引っ掛けて係合させるようにした係合舌片からなるベルトフックが設けられている。このような形態のフックにおいては、ベルトフックに設けられた貫通孔にカラビナを係止させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2011-62771号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載されたインパクトレンチ等の機器においては、ベルトフックとしての係合舌部に設けられた貫通孔にカラビナを係止させることにより、ベルトに装着されたカラビナに機器を吊り下げることができる。しかしながら、フックが係止されたカラビナを介してベルトに吊り下げられた機器を、ベルトから取り外すには、一方の手でカラビナフックの貫通孔の位置をカラビナのゲートの位置に移動し、他方の手でゲートを開放操作しなければならず、両手を用いて機器をカラビナから取り外す必要がある。
【0007】
カラビナフックが取り付けられた機器においても、ループ状のカラビナとカラビナフックとの係止状態を解除してベルトから機器を取り外すには、両手を用いる必要があり、使用者が機器の取り外し操作を容易に行うことができないという課題があった。
【0008】
カラビナフックとしては、機器の側面に取り付けられて後方下向きに突出する傾斜片と、傾斜片の先端から上方に折り曲げられた部分およびその上端部から機器の背面に沿うように直角に折り曲げられた水平部からなる折り曲げコーナー片とを備えたものがある。このタイプのカラビナフックをカラビナから取り外すには、まず、機器の先端部が使用者から離れるように横向きに機器を回転させる。次いで、コーナー片の水平部をカラビナのゲートの外面に突き当てるように手首をねじって機器を首振り旋回させ、ゲートを水平部により開放操作する必要がある。このカラビナフックは、片手でカラビナから機器を取り外すことができるが、取り外し操作が終了したときには、機器は使用者の側面から横方向を向いた状態となる。
【0009】
従来のカラビナフックは、カラビナから機器を取り外すには、両手を操作する必要があり、取り外し操作を容易に行うことができない。一方、片手の操作により取り外すようにしたカラビナフックにおいては、機器を横向きに回転させる操作と、手首をねじる操作とを行う必要があり、取り外し操作を容易に行うことができない。
【0010】
本発明の目的は、使用者が機器に容易に着脱可能なフックを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の機器用のフックは、ハウジングを備えた機器に装着可能なフックであって、前記ハウジングの側面に装着される装着片と、前記装着片に接続され、前記装着片から下方に延びる開放操作片と、前記開放操作片の下端に接続される係止片と、を有し、前記開放操作片は、当該開放操作片の長手方向に螺旋形状であり、前記装着片が前記ハウジングに装着される側とは逆側に突出する突出部を有する。また、本発明の機器用のフックは、ハウジングを備えた機器に装着可能なフックであって、前記ハウジングの側面に装着される装着片と、前記装着片に接続され、前記装着片から下方に延びる開放操作片と、前記開放操作片の下端に接続される係止片と、を有し、前記開放操作片は、前記装着片が前記ハウジングに装着される側とは逆側に突出し、かつ前記装着片から前記ハウジングの前後方向外方に突出する突出部を有する。
【発明の効果】
【0012】
カラビナフックは装着片が機器のハウジングに装着され、ベルトのカラビナにカラビナフックの係止片を係止させて機器が吊り下げられた状態から、使用姿勢に機器を反転させると、係止片と開放操作片との接続部付近を支点中心としてカラビナフックが反転移動する。反転移動により、開放操作片の突出部がカラビナのゲートをその外面を横切るときに、ゲートに当接してゲートが開放される。このように、吊り下げられた状態の機器を使用姿勢に反転させる動作によって、カラビナのゲートが開放されるので、反転操作のみによって、機器を容易にカラビナから取り外すことができる。反転操作のみによってカラビナから取り外すことができるとともに、使用姿勢に反転された状態そのままで、機器を使用した作業を行うことができ、機器の作業性を大幅に向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】一実施の形態であるカラビナフックが装着されたインパクトドライバの正面図である。
図2図1の右側面図である。
図3】(A)は図2の平面図であり、(B)は図2の底面図である。
図4】上下を反転させた状態におけるインパクトドライバの背面図である。
図5】(A)はカラビナフックの正面図であり、(B)は(A)の左側面図であり、(C)は(A)の右側面図である。
図6】(A)はカラビナフックの背面図であり、(B)は図5(A)の平面図であり、(C)は図5(A)の底面図である。
図7】(A)は図5(A)における7A-7A線断面図であり、(B)は図5(A)における7B-7B線断面図であり、(C)は図7(B)における7C-7C線断面図である。
図8】(A)はインパクトドライバの吊り下げ姿勢におけるカラビナとカラビナフックとの位置関係を示す正面図であり、(B)は(A)における8B-8B線断面図である。
図9】(A)はインパクトドライバを吊り下げ姿勢から使用姿勢に反転移動させた状態におけるカラビナとカラビナフックとの位置関係を示す正面図であり、(B)は(A)における9B-9B線断面図である。
図10】(A)は左右両側にカラビナフックが装着され、それぞれの1つの開放操作片を後方に迫り出させた状態のインパクトドライバの要部を示す斜視図であり、(B)は左右両側にカラビナフックが装着され、それぞれの開放操作片を前側に引っ込めて側面に重ならせた状態のインパクトドライバの要部を示す斜視図である。
図11】(A)はカラビナフックをカラビナに係止させるため、ベルトのカラビナにカラビナフックを接触させた状態を示す正面図であり、(B)はカラビナフックによりゲートが押し開かれた状態を示す正面図であり、(C)はカラビナフックがゲートを通過してカラビナフックが係止された状態を示す正面図である。
図12】(A)はカラビナフックをカラビナから取り外すためにインパクトドライバを吊り下げ姿勢から使用姿勢に反転させている状態を示す正面図であり、(B)はカラビナフックによりゲートが押し開かれている状態を示す正面図であり、(C)はカラビナフックがゲートを通過してカラビナから外れた状態を示す正面図である。
図13】(A)は他の実施の形態のカラビナフックの正面図であり、(B)は(A)の左側面図であり、(C)は(A)の右側面図である。
図14】(A)は他の実施の形態のカラビナフックの背面図であり、(B)は図5(A)の平面図であり、(C)は図5(A)の底面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。図1図4に示される機器は、インパクトドライバ10であり、ハンドル部11と、ハンドル部11の一端側に設けられる胴体部つまり工具本体部12と、ハンドル部11の他端側に設けられるバッテリ装着部13とを構成するハウジング14を備えている。ハウジング14は工具本体部12とハンドル部11との部分により、側面においてT字形状となっている。
【0015】
インパクトドライバ10の基端部に設けられたバッテリ装着部13には、電力供給源としてのバッテリ15が着脱自在に装着される。バッテリ15からの電力により駆動される電動モータが工具本体部12の内部に組み込まれており、工具本体部12の先端部に設けられた先端工具保持部16は電動モータにより回転駆動される。
【0016】
図1図4に示されるインパクトドライバ10は、先端工具保持部16に先端工具であるドリルビット17が装着されている。ドリルビット17に回転方向の打撃力を加えるために、工具本体部12内には減速機構および打撃機構が組み込まれている。ハンドル部11の正面側には、トリガスイッチ18が設けられており、トリガスイッチ18の操作により電動モータの起動と停止が操作される。
【0017】
図1および図2には、基端部のバッテリ装着部13を下側とし、工具本体部12を上側とした状態でインパクトドライバ10が示されている。使用者がハンドル部11を手に持って作業を行うときには、正面側のドリルビット17が使用者の前方に向けられる。この明細書においては、工具本体部12のうち先端工具保持部16側をインパクトドライバ10の正面とし、反対側を背面とする。
【0018】
ハウジング14のうちバッテリ装着部13の一方の側面には、図1および図2に示されるように、機器用のカラビナフック20が装着されている。図5(A)はカラビナフック20の正面図であり、図5(B)は図5(A)の左側面図であり、図5(C)は図5(A)の右側面図である。図6(A)はカラビナフック20の背面図であり、図6(B)は図5(A)の平面図であり、図6(C)は図5(A)の底面図である。カラビナフック20について、この明細書においては、図5(A)に示される面を正面または外面とし、図6(A)に示される反対側の面を背面または内面とする。カラビナフック20の正面はこれがインパクトドライバ10に装着されたときにその外側となり、カラビナフック20の背面はインパクトドライバ10に対向する内面となる。
【0019】
図5および図6に示されるように、カラビナフック20はハウジング14の側面に装着される装着片21を有している。装着片21は、バッテリ装着部13の一方の側面、つまり図1に示されるインパクトドライバ10においては、正面から見て右側の側面に装着されており、装着片21は、インパクトドライバ10の前後方向つまり工具本体部12の長手方向に延びている。カラビナフック20は、装着片21に沿って装着片21に対向して延びる係止片22を有している。
【0020】
装着片21の一端部と係止片22の一端部との間には、第1の開放操作片23aが設けられており、開放操作片23aは装着片21から下方に延びている。開放操作片23aは装着片21と係止片22との間に連なって、これらと一体に設けられている。同様に、装着片21の他端部と係止片22の他端部との間には、第2の開放操作片23bが設けられており、開放操作片23bは装着片21から下方に延びている。開放操作片23bは装着片21と係止片22との間に連なって、これらと一体に設けられている。このように、図示されるカラビナフック20は、装着片21の一端部側に設けられる1つの開放操作片23aと、他端部側に設けられる他の1つの開放操作片23bとの2つの開放操作片を備えたツイン型である。それぞれの開放操作片23a、23bの下端には係止片22が接続されている。
【0021】
係止片22の長手方向中央部には、図6(C)に示されるように、外方つまりインパクトドライバ10のハウジング14から離れる方向に山形に屈曲した屈曲部24が設けられている。この屈曲部24は、図5(B)および図5(C)に示されるように、装着片21の方向に傾斜している。屈曲部24には係合舌片からなるベルトフック25が設けられ、ベルトフック25は開放操作片23a、23bに沿って延びている。
【0022】
ベルトフック25は、開放操作片23a、23bよりもインパクトドライバ10の外方に配置されており、機器であるインパクトドライバ10を使用者のベルトに直接引っ掛けたり、脚立等の種々の部材に直接引っ掛けたりするために使用される。ベルトフック25と、その内側の開放操作片23a、23bとの間には、図5(B)および図5(C)に示されるように、ベルトが入り込む隙間26が形成される。使用者のベルトにベルトフック25を容易に係合させるようにするために、ベルトフック25の先端部25aは外側に向けて僅かに傾斜している。
【0023】
ベルトフック25を使用者のベルトに係合させるときには、図4に示されるように、工具本体部12が下側となるようにインパクトドライバ10は吊り下げ姿勢に設定される。図1および図2は、工具本体部12が上側となった状態を示しており、この状態は、インパクトドライバ10が通常使用される基本的な姿勢であり、図1および図2を使用姿勢とする。
【0024】
2つの開放操作片23a、23bは、図5(A)に示されるように、装着片21の長手方向中央部つまりベルトフック25の幅方向中央部を中心として相互に左右対称である。このように開放操作片23a、23bは、カラビナフック20の左右両側の部分に、装着片21の長手方向中央部に対して対称に配置される。
【0025】
使用者のベルトにループ状のカラビナ30を介してインパクトドライバ10を吊り下げるときには、インパクトドライバ10は、図4に示されるように、工具本体部12が下側となるようにカラビナ30に吊り下げられる。係止片22をカラビナ30に係止させることによりインパクトドライバ10が吊り下げ姿勢となると、図8に示されるように、カラビナフック20の係止片22は装着片21よりも上側になる。カラビナ30は、図8(A)に示されるように、ベルト31に設けられた回動支持部32に回動自在に装着される旋回ロッド部33と、ピン34を中心に開閉動自在のゲート35が設けられた着脱ロッド部36とを有し、旋回ロッド部33と着脱ロッド部36は、上下のアーム部37、38により一体に連なっており、全体的にループ状となっている。
【0026】
カラビナフック20をカラビナ30に係止させる際に、ゲート35が、ピン34を中心にベルト31に接近するように開放移動されると、着脱ロッド部36には着脱用のゲート開放空間が形成される。このように、カラビナフック20の係止片22を外側からゲート35に押し付けると、ゲート35は開放されて、カラビナフック20の係止片22はカラビナ30に係止される。ゲート35にはゲート空間を閉じる方向のばね力が加えられており、外側からゲート35を押し付けなければ、ゲート開放空間は閉じられた状態を保持する。図8は、カラビナ30にカラビナフック20が係止された状態を示し、機器であるインパクトドライバ10は、先端部側の工具本体部12が下側となり、バッテリ装着部13およびバッテリ15の基端部側が上側となって、カラビナフック20の係止片22がカラビナ30に係止される。この状態でインパクトドライバ10はベルト31に吊り下げられる。
【0027】
カラビナ30を介してベルト31に吊り下げられていたインパクトドライバ10を、カラビナ30から取り外すには、インパクトドライバ10を図4に示した吊り下げ姿勢から、図1および図2に示した使用姿勢に反転移動させる。このときには、インパクトドライバ10の反転移動により、カラビナフック20は、図8(B)において矢印Rで示される方向に反転される。係止片22の開放操作片23a側の端部は、支点部41を構成している。インパクトドライバ10を使用姿勢に反転移動させるときには、カラビナ30の着脱ロッド部36とアーム部38の境界部分は当接部を形成する支点部41に当接し、カラビナフック20は支点部41の部分を中心として、アーム部38の外周面を滑るように、反転移動する。このように、係止片22はインパクトドライバ10を吊り下げるときにはカラビナ30を係止し、係止片22の開放操作片23a側の端部の支点部41は、インパクトドライバ10の反転操作時には反転動作の中心部を形成する。開放操作片23aは、支点部41から装着片21までの部分が湾曲部42となっている。
【0028】
湾曲部42は、図5(A)および図8(B)に示される正面において、ベルトフック25に向けて突出する方向に屈曲した屈曲部43と、開放操作片23aの装着片21との接続部においてはベルトフック25から離れる方向に屈曲した屈曲部44とを有しており、両方の屈曲部43、44は中間部45により一体となっている。屈曲部43は、図5(B)、図5(C)に示されるように、中間部45に向けて外側に屈曲しており、屈曲部44は逆に中間部45から内側に向けて屈曲している。したがって、屈曲部43、44と中間部45からなる湾曲部42は、外側つまりインパクトドライバ10のハウジング14から離れる方向に突出している。
【0029】
このように、開放操作片23aの湾曲部42は、カラビナフック20が当接部つまり支点部41の部分を中心として反転移動すると、図9(B)に示されるように、屈曲部43と中間部45の部分が着脱ロッド部36を内方側から外方側に横切るとともに、中間部45と屈曲部44の部分がゲート35の外面を横切る方向に沿ってゲート35に当接する。当接開始時には、まず、突出部46がゲート35の先端部側の外面に当接する。
【0030】
したがって、インパクトドライバ10が使用姿勢に反転されると、開放操作片23aの支点部41はカラビナ30の内側に位置し、湾曲部42がカラビナ30の内側から外側に蛇行し着脱ロッド部36を内方側から外方側に巻き付く状態になるとともに、突出部46がゲート35の外面を横切る方向に当接するので、ゲート35には突出部46又は湾曲部42から開放方向の押し付け力が加えられる。これにより、インパクトドライバ10を吊り下げ姿勢から使用姿勢に反転させると、その反転操作力により、自動的にカラビナ30のゲート35が開放され、カラビナ30と係止片22との係止状態が解除される。
【0031】
開放操作片23aには、図5(A)に示されるように、突出部46が設けられている。突出部46は、装着片21からハウジング14の前後方向外方に突出するとともに、図5(B)、(C)に示されるように、ハウジング14に向けて傾斜している。この突出部46は、カラビナフック20が吊り下げ姿勢から使用姿勢に反転されるときに、カラビナ30のゲート35の外面に横切って当接し、ゲート35の開放動作を円滑に達成させることができる。
【0032】
図5(A)に示されるように、開放操作片23aはその正面方向から見ると、全体的にS字形状となって蛇行している。また、図5(C)に示されるように、右側面から見ると、全体的にS字形状となって蛇行している。したがって、開放操作片23aは、平面側または底面側から見ると、図6(B)、(C)に破線で示されるように、長手方向に螺旋形状である。この螺旋形状に関しては、小型化を優先する場合は、正面側もしくは右側面側から見てどちらか一方でもS字形状になっていれば同様の効果を有する。
【0033】
上述した第1の開放操作片23aに対して、第2の開放操作片23bは、装着片21の長手方向中央部に対して対称に配置されている。したがって、開放操作片23bも開放操作片23aと同様に、湾曲部42および突出部46を有しており、重複した説明は省略する。なお、第2の開放操作片23bは、図6(A)に示されるように、背面側から見ると、S字形状に蛇行している。
【0034】
カラビナフック20は、開放操作片23a、23bとベルトフック25とを有しているが、カラビナフック20を使用者のベルトに直接係合させない場合には、ベルトフック25が取り除かれた形態のカラビナフックとすることができる。
【0035】
カラビナフック20は、装着片21の部分でインパクトドライバ10のハウジング14に装着される。装着片21は、図5および図7に示されるように、ハウジング14に取り付けられるスリーブ51に移動自在に組み付けられている。装着片21の背面には、ハウジング14に形成された位置決め溝に挿入される突起部52が設けられている。スリーブ51には2つの取付孔53a、53bが厚み方向に貫通して設けられており、一方の取付孔53aに取り付けられるねじ部材54によりスリーブ51はハウジング14に取り付けられる。ハウジング14にはねじ部材54がねじ結合されるねじ孔が設けられている。カラビナフック20は、突起部52を溝に挿入させることにより、1つのねじ部材54によりハウジング14の所定の位置に固定される。
【0036】
スリーブ51は装着片21の横断面形状に対応して形成された貫通孔を有し、装着片21は貫通孔に移動自在に保持されている。ねじ部材54は装着片21に長手方向に延びて形成された長孔55を貫通している。スリーブ51の背面側部には、長孔55内に突出するばねホルダ56が設けられ、ばねホルダ56には板ばね57からなるばね部材とばねスイッチ58とが保持されている。長孔55の内面には、長手方向に離れて2つのノッチつまり切欠き溝59a、59bが設けられており、ばねスイッチ58は板ばね57を上方に押し上げて切欠き溝59a、59bと板ばね57との係合を外す際に操作される。ばねスイッチ58はスリーブ51の正面側に取り付けられたばねスイッチカバー50により覆われており、ばねスイッチカバー50はばねスイッチ58に取り付けられている。ばねスイッチカバー50は、カラビナフック20をスリーブ51に沿ってスライドするときに使用者により操作される操作部としての機能を有している。ばねスイッチ58とばねスイッチカバー50は、板ばね57を切欠き溝に係合させてカラビナフック20をスリーブ51に固定させるときに、より確実に固定させることができる。
【0037】
ばねスイッチ58とばねスイッチカバー50は、カラビナフック20をスリーブ51に沿ってスライドさせるときにより簡単にスライドさせることができるように設けられている。ただし、ばねスイッチ58とばねスイッチカバー50とを設けなくとも、多少のスムーズさは失われるもののカラビナフック20を指で移動することにより同じような動作を行うことができる。
【0038】
長孔55の内面には、長手方向に離れて2つのノッチつまり切欠き溝59a、59bが設けられている。図2に示されるように、スリーブ51をねじ部材54によりハウジング14のバッテリ装着部13に取り付け、第1の開放操作片23aをバッテリ装着部13の後方に迫り出させると、図7(C)に示されるように、切欠き溝59aに板ばね57が係合する。このように、開放操作片23aをバッテリ装着部13の側面よりも後方にずらして板ばね57を切欠き溝59aに係合させた状態においては、弱い外力ではカラビナフック20は移動しないので、カラビナフック20に容易にカラビナ30を係止させることができる。板ばね57が切欠き溝59aに係合するので、カラビナ30を介してインパクトドライバ10を吊り下げた状態では、カラビナフック20が自由に移動することが抑制される。
【0039】
カラビナ30を係止させないときには、開放操作片23aを図2において左側にずらしてバッテリ装着部13の側面に重なる位置にすると、インパクトドライバ10を使用する際に、開放操作片23aは邪魔にならない。左側にずらすときには、カラビナフック20に外力を加えてを移動させると、板ばね57は切欠き溝59aから外れて切欠き溝59bに係合する。この状態では、インパクトドライバ10を使用しているときに、カラビナフック20が自由に移動することが防止される。
【0040】
上述したインパクトドライバ10においては、図2に示されるように、インパクトドライバ10のハウジング14の左側の側面にカラビナフック20が装着されている。右利きの使用者がハンドル部11を右手に持って作業を行う場合には、使用者に取り付けられたベルト31の右側にカラビナ30を位置させるので、カラビナ30にカラビナフック20を係止させるには、カラビナフック20はハウジング14の左側の側面に装着される。
【0041】
これに対して、左利きの使用者がインパクトドライバ10をカラビナ30に係止して吊り下げるときには、カラビナフック20をハウジング14の右側面に装着することができる。そのために、ハウジング14の右側面にも、突起部52が入り込む位置決め孔と、ねじ部材54が取り付けられるねじ孔とが設けられている。ハウジング14の左側面に設けられるねじ孔は右側面に設けられるねじ孔と同軸であり、左側面に設けられる溝は、右側面に設けられる溝に対向している。カラビナフック20がハウジング14の右側面に装着されるときには、開放操作片23bが開放操作片23aに対してインパクトドライバ10の後端部側となる。さらに、ねじ部材54はスリーブ51の取付孔53bを貫通して、ハウジング14に取り付けられる。
【0042】
このように、ねじ部材54によりスリーブ51を取り外すことにより、ハウジング14の左右両方の側面のいずれにもカラビナフック20を装着し得る。また、ハウジング14の左右両方の側面にそれぞれカラビナフック20を装着することもできる。
【0043】
図10は、左右両方の側面にカラビナフック20が装着されたインパクトドライバ10の要部を示す。
【0044】
図10(A)においては、両方のカラビナフック20の一方の開放操作片が後方に迫り出した状態のインパクトドライバ10が示されている。左側のカラビナフック20は開放操作片23aがインパクトドライバ10の基端部のバッテリ装着部13の後方に迫り出し、右側のカラビナフック20は開放操作片23bが後方に迫り出している。図10(B)においては、両方のカラビナフック20がインパクトドライバ10の前側にずらされて、それぞれがバッテリ装着部13とバッテリ15の側面に重なる重なり位置となったインパクトドライバ10が示されている。言い換えれば、インパクトドライバ10にカラビナフック20が収納される状態となり、カラビナフック20の不使用時にカラビナフック20が邪魔になることが無い。図10にはカラビナフック20がインパクトドライバ10の前後方向にスライド移動する説明があるが、例えばインパクトドライバ10の左右方向を回転軸とし回転移動する形態としても同様の効果が得られる。このように、機器であるインパクトドライバ10には、1つのカラビナフック20を装着することができるだけでなく、2つのカラビナフック20を装着することもできる。1つのカラビナフック20を装着する場合には、ハウジング14の左側面と右側面の一方から他方に位置換えすることもできる。
【0045】
図10に示されるように、2つのカラビナフック20を装着する場合には、左側のカラビナフック20のスリーブ51は取付孔53aを貫通するねじ部材54によりハウジング14に取り付けられる。一方、右側のカラビナフック20のスリーブ51は取付孔53bを貫通するねじ部材54によりハウジング14に取り付けられる。また、2つのカラビナフック20を装着する場合には、ねじ部材54に換えてリベットを用いて、スリーブ51を外れないようにしても良い。
【0046】
次に、カラビナフック20のカラビナ30への引っ掛け操作と、カラビナ30からの取り外し操作とについて、図11および図12を参照して説明する。
【0047】
図11(A)に示されるように、インパクトドライバ10のカラビナフック20を使用者Pのベルト31のカラビナ30に引っ掛けるには、まず、インパクトドライバ10を下向きにし、上側となったカラビナフック20をカラビナ30のゲート35に接触させる。次いで、図11(B)に示されるように、カラビナフック20をゲート35に押し当てると、ゲート35は押し開かれる。図11(C)に示されるように、係止片22がゲート35を通過すると、カラビナフック20はカラビナ30を介してベルト31に吊り下げられる。ベルト31に吊り下げられると、図4に示されるように、工具本体部12はバッテリ装着部13よりも下側になり、インパクトドライバ10の背面側が使用者Pの正面側になる。
【0048】
一方、ベルト31に吊り下げられたインパクトドライバ10をカラビナ30から取り外すには、図12(A)に示されるように、インパクトドライバ10を使用姿勢に向けて反転させる。インパクトドライバ10を吊り下げ姿勢から使用姿勢に反転させると、図12(B)に示されるように、カラビナフック20によりゲート35が押し開かれる。このときには、図9に示したように、カラビナフック20の支点部41がカラビナ30のアーム部38の着脱ロッド部36側の部分に当接し、ここを中心にカラビナフック20が反転位置に向けて回転する。この回転操作において、開放操作片23aの屈曲部44および突出部46がゲート35の外面を滑って横切る方向に移動するので、カラビナフック20の反転移動がゲート35の開放動作に変換される。
【0049】
したがって、使用者がインパクトドライバ10をカラビナ30から外すときには、吊り下げられた状態のインパクトドライバ10を使用姿勢に反転させるという単純なワンアクションによって、ゲート35を開放してカラビナフック20をカラビナ30から取り外すことができる。図12(C)は、カラビナフック20がゲート35を通過してカラビナ30から外れた状態を示す。インパクトドライバ10を使用姿勢に反転させると、図1に示したインパクトドライバ10の正面が使用者の正面を向くことになる。インパクトドライバ10の正面が使用者の前方を向くので、インパクトドライバ10の先端を作業箇所に向けて方向転換することなく、前方の壁等へのねじ打ち作業等をそのままの姿勢で行うことができる。つまり、ワンアクションでカラビナ30からの取り外しと、作業箇所へのドリルビット17の位置決めとを行うことができる。
【0050】
図13および図14は他の実施の形態のカラビナフック20aを示す図であり、上述したカラビナフック20と共通する部材には同一の符号が付されている。
【0051】
カラビナフック20aの係止片22はインパクトドライバ10の側面に沿う方向にほぼ真っ直ぐに伸びており、上述したカラビナフック20の屈曲部24は係止片22には設けられてない。係止片22の両端部と装着片21の両端部との間には、開放操作片23a、23bが設けられており、カラビナフック20aは、カラビナフック20と同様に2つの開放操作片を備えたツイン形である。それぞれの開放操作片23a、23bは、屈曲部43、44を備えた湾曲部42を有しており、屈曲部44は、上述したカラビナフック20の突出部46を含めた長さである。突出部46の先端には、スリーブ51に向けて屈曲した取付基部47が一体に設けられており、取付基部47は装着片21の端部に固定されている。
【0052】
カラビナフック20aは、スリーブ51の表面にベルトフック25取り付けられている。ベルトフック25はスリーブ51に取り付けられて、スリーブ51から係止片22に向けて開放操作片23a、23bに沿って延びるフック基部27と、フック基部27の先端部から反転してフック基部27に沿って平行に延びる係合舌片28とを有している。係合舌片28と開放操作片23a、23bとの間には隙間26が形成される。
【0053】
フック基部27の先端部は図13(A)および図14(A)に示されるように、二股に分岐しており、フック基部27の先端部に一体となった係合舌片28は2つの舌部28a、28bを有し、両方の舌部28a、28bの先端は一体となっている。係合舌片28の先端部の内側の円弧面29は、図13(A)に示されるように、取付孔53bを外部に露出させる。したがって、取付孔53bにねじ部材54を取り付けるときには、ねじ部材54を円弧面29の内側を通過させることができ、ねじ部材54の取付操作を容易に行うことができる。なお、図13および図14に示したカラビナフック20aにおいては、ねじ部材54は図示省略されている。
【0054】
このように、ベルトフック25をスリーブ51に取り付けると、開放操作片23a、23bの一方を、インパクトドライバ10のバッテリ装着部13とバッテリ15の側面から迫り出したときに、ベルトフック25はベルトに沿って移動することがない。これにより、カラビナフック20aのスリーブ51に沿った方向への移動をスムーズに行うことができる。
【0055】
図13および図14に示したカラビナフック20aを、図1図4に示されるように、インパクトドライバ10の一方の側面に取り付けるようにしても良く、図10に示されるように、両方の側面に取り付けるようにしても良い。
【0056】
それぞれのカラビナフック20、20aは、対称的に2つの開放操作片23a、23bを備えたツイン型であるが、一方の側面のみに装着するようにしたカラビナフックとするのであれば、1つの開放操作片のみを備えたタイプとすることができる。
【0057】
本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。カラビナフック20は、インパクトドライバ10のみならず、ドライバドリル、電子パルスドライバ、ロータリハンマドリル、インパクトレンチ等のように、ハウジングを備えた機器に装着可能なフックに適用することができる。
【符号の説明】
【0058】
10 インパクトドライバ(機器)
11 ハンドル部
12 工具本体部
13 バッテリ装着部
14 ハウジング
20、25a カラビナフック
21 装着片
22 係止片
23a、23b 開放操作片
24 屈曲部
25 ベルトフック
30 カラビナ
31 ベルト
35 ゲート
41 支点部
42 湾曲部
43、44 屈曲部
45 中間部
46 突出部
50 ばねスイッチカバー
51 スリーブ
52 突起部
54 ねじ部材
55 長孔
56 ばねホルダ
57 板ばね
58 ばねスイッチ
59a、59b 切欠き溝
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14