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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-20
(45)【発行日】2022-09-29
(54)【発明の名称】旋回制御方法及び旋回制御装置
(51)【国際特許分類】
   G05D 1/02 20200101AFI20220921BHJP
   B61B 13/00 20060101ALI20220921BHJP
【FI】
G05D1/02 W
B61B13/00 A
B61B13/00 S
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019006771
(22)【出願日】2019-01-18
(65)【公開番号】P2020115309
(43)【公開日】2020-07-30
【審査請求日】2021-04-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100124062
【弁理士】
【氏名又は名称】三上 敬史
(74)【代理人】
【識別番号】100148013
【弁理士】
【氏名又は名称】中山 浩光
(74)【代理人】
【識別番号】100162640
【弁理士】
【氏名又は名称】柳 康樹
(72)【発明者】
【氏名】林 隆司
【審査官】今井 貞雄
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-021149(JP,A)
【文献】特開平09-272468(JP,A)
【文献】特開2013-041527(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05D 1/02
B61B 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被牽引車を牽引しながら第1の誘導線に追従して進行方向へ走行する牽引車が旋回することで、前記第1の誘導線と交差する第2の誘導線へ乗り移る旋回制御方法であって、
前記第2の誘導線よりも前記進行方向における下流側の領域において、前記牽引車を自律走行にて旋回させる旋回ステップを備え
前記牽引車が前記第1の誘導線に追従して走行しているときにマークを検出した後、一定距離を前記第1の誘導線に追従して前記牽引車を走行させる追従走行ステップを更に備え、
前記第2の誘導線よりも前記進行方向における下流側の領域にて、前記追従走行ステップから前記旋回ステップへ切り替え、
前記一定距離のパラメータを複数記憶し、前記被牽引車の寸法情報に基づいて、前記追従走行ステップから前記旋回ステップへ切り替えるためのステップ切替点を変更する、旋回制御方法。
【請求項2】
前記旋回ステップでは、前記牽引車と前記被牽引車との連結部が、前記第1の誘導線からの距離と前記第2の誘導線からの距離とが等しい仮想点を回転中心として旋回するように、前記牽引車を旋回させる、請求項1に記載の旋回制御方法。
【請求項3】
前記旋回ステップの開始時には、前記牽引車と前記被牽引車との連結部を中心として、前記牽引車を回転させて方向転換させる、請求項1又は2に記載の旋回制御方法。
【請求項4】
被牽引車を牽引しながら第1の誘導線に追従して進行方向へ走行する牽引車が旋回することで、前記第1の誘導線と交差する第2の誘導線へ乗り移る旋回制御装置であって、
前記第2の誘導線よりも前記進行方向における下流側の領域において、前記牽引車を自律走行にて旋回させる旋回ステップの制御を行い、
前記牽引車が前記第1の誘導線に追従して走行しているときにマークを検出した後、一定距離を前記第1の誘導線に追従して前記牽引車を走行させる追従走行ステップの制御を行い、
前記第2の誘導線よりも前記進行方向における下流側の領域にて、前記追従走行ステップから前記旋回ステップへ切り替え、
前記一定距離のパラメータを複数記憶し、前記被牽引車の寸法情報に基づいて、前記追従走行ステップから前記旋回ステップへ切り替えるためのステップ切替点を変更する、旋回制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、旋回制御方法及び旋回制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の無人の牽引車の旋回制御方法として、例えば特許文献1に記載されている技術が知られている。特許文献1では、牽引車は、被牽引車を牽引しながら誘導線に追従するように走行する。牽引車が、追従している誘導線と他の誘導線とが直交する箇所まで来ると、交差点の手前で旋回して、他の誘導線に乗り移る。その後、牽引車は、他の誘導線に追従するように走行する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特公平8-20901号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の旋回制御方法では、牽引車は、互いに交差する誘導線間の内周側の部分を通過していた。この場合、牽引車と被牽引車との間に内輪差が存在するため、被牽引車は、交差点付近を大きく内周側に旋回する必要がある。また、被牽引車の向きが乗り移った先の誘導線と平行になるまでに長い距離を走行しなくてはならない。このように、被牽引車が大回りな動作をすることで各種問題が生じるため、旋回時の被牽引車の動作を小回りにすることが求められる。
【0005】
従って、本発明は、旋回時の被牽引車の動作を小回りにすることができる旋回制御方法及び旋回制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様の旋回制御方法は、被牽引車を牽引しながら第1の誘導線に追従して進行方向へ走行する牽引車が旋回することで、第1の誘導線と交差する第2の誘導線へ乗り移る旋回制御方法であって、第2の誘導線よりも進行方向における下流側の領域において、牽引車を自律走行にて旋回させる旋回ステップを備える。
【0007】
旋回制御方法は、第2の誘導線よりも進行方向における下流側の領域において、牽引車を自律走行にて旋回させる旋回ステップを備える。牽引車が第2の誘導線よりも進行方向における下流側の領域を旋回すると、牽引車は大回りで旋回を行う。この場合、牽引車の進行方向の上流側で牽引される被牽引車は、牽引車との内輪差の影響が低減されることで、第1の誘導線と第2の誘導線との交差点付近にて小回りで方向転換することができる。以上より、旋回時の被牽引車の動作を小回りにすることができる。
【0008】
旋回制御方法は、牽引車が第1の誘導線に追従して走行しているときにマークを検出した後、一定距離を第1の誘導線に追従し牽引車を走行させる追従走行ステップを更に備え、第2の誘導線よりも進行方向における下流側の領域にて、追従走行ステップから旋回ステップへ切り替えてよい。このように、マークを検出してただちに自立走行を行うのではなく、牽引車が一定距離を第1の誘導線に追従するようにする。これにより、第1の誘導線を用いて、牽引車を第2の誘導線よりも進行方向における下流側の領域まで走行させる距離を被牽引車の寸法に応じて変化させることができ、寸法が異なる複数の被牽引車が存在してもマークの位置を変更することなく理想の位置で旋回ステップへの切り替えが行える。
【0009】
旋回制御方法において、旋回ステップでは、牽引車と被牽引車との連結部が、第1の誘導線からの距離と第2の誘導線からの距離とが等しい仮想点を回転中心として旋回するように、牽引車を旋回させてよい。このように、連結部が回転中心周りを旋回するような動作とすることで、被牽引車の動作を小回りにすることができるとともに、被牽引車の旋回後の中心線と第2の誘導線とのずれを最小限にすることができる。
【0010】
旋回制御方法において、旋回ステップの開始時には、牽引車と被牽引車との連結部を中心として、牽引車を回転させて方向転換させてよい。牽引車は、被牽引車を動かすことなく、方向転換を行うことができる。この場合、牽引車の方向転換時において被牽引車の軌道を考慮する必要が無くなり、且つ、被牽引車の移動量を減らすことができる。これにより、自律走行の処理内容をシンプルにすることができ、且つ、被牽引車の動作を小回りにすることができる。
【0011】
旋回制御方法において、一定距離のパラメータを複数記憶し、被牽引車の寸法情報に基づいて、追従走行ステップから旋回ステップへ切り替えるためのステップ切替点を変更してよい。この場合、被牽引車の寸法に応じた位置で旋回を開始することができる。
【0012】
旋回制御方法では、一定距離のパラメータを複数記憶し、被牽引車の寸法情報に基づいて、追従走行ステップから旋回ステップへ切り替えるためのステップ切替点を変更する。この場合、被牽引車の寸法に応じたタイミングで旋回ステップへ切り替わることができる。
【0013】
本発明の一態様の旋回制御装置は、被牽引車を牽引しながら第1の誘導線に追従して進行方向へ走行する牽引車が旋回することで、第1の誘導線と交差する第2の誘導線へ乗り移る旋回制御装置であって、第2の誘導線よりも進行方向における下流側の領域において、牽引車を自律走行にて旋回させる制御を行う。
【0014】
この旋回制御装置によれば、上述の旋回制御方法と同趣旨の作用・効果を得ることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、旋回時の被牽引車の動作を小回りにすることができる旋回制御方法及び旋回制御装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本実施形態に係る旋回制御方法で旋回を行う搬送車の側面図である。
図2図1に示す搬送車の概略構成図である。
図3】本実施形態に係る旋回制御方法を示すフローチャートである。
図4】旋回時の各タイミングにおける搬送車の状態を示す概略平面図である。
図5】旋回時の各タイミングにおける搬送車の状態を示す概略平面図である。
図6】旋回時の各タイミングにおける搬送車の状態を示す概略平面図である。
図7】比較例に係る旋回制御方法を採用した搬送者の動作を示す概略平面図である。
図8】比較例に係る旋回制御方法を採用した搬送者の動作を示す概略平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0018】
図1は、本実施形態に係る旋回制御方法で旋回を行う搬送車100の側面図である。図2は、図1に示す搬送車100の概略構成図である。図1及び図2に示すように、搬送車100は、無人で走行する牽引車1と、荷を積んだ状態で牽引車1に牽引される被牽引車2と、を備える。
【0019】
牽引車1は、旋回のための回転軸を有する一輪以上の旋回輪3と、旋回のための回転軸を有さない二輪以上の固定輪4と、を有する。本実施形態では、牽引車1は、車体6の前側に一輪の旋回輪3を有し、車体6の後側に二輪の固定輪4を有する。被牽引車2は、旋回のための回転軸を有する一輪以上の旋回輪7と、旋回のための回転軸を有さない二輪以上の固定輪8と、を有する。本実施形態では、被牽引車2は、車体9の前側に二輪の旋回輪7を有し、車体9の後側に二輪の固定輪8を有する。旋回輪3,7は、進行方向に応じて平面視(図2に示す視点)において回転する。固定輪4,8は、進行方向に関わらず平面視において不動である。
【0020】
被牽引車2は、車体9の前端から前方へ延びる牽引レバー11を有する。牽引レバー11の前端部は、連結部12を介して牽引車1の車体6に回転可能に連結されている。被牽引車2は、連結部12を介して牽引車1に牽引される。被牽引車2は、連結部12を中心として、平面視において牽引車1に対して相対的に回転可能である。連結部12は、車体6の幅方向における略中央位置に配置されている。また、連結部12は、車体6の前後方向において、固定輪4の車軸AX1と重なる位置、又は車軸AX1の近傍に配置されている。
【0021】
牽引車1は、車体6の下面側に誘導センサ13と、マークセンサ14と、を備える。誘導センサ13は、路面に形成された誘導線TL1,TL2(図4(a)参照)を検出するセンサである。誘導センサ13は、車体6の幅方向において一定範囲内で誘導線TL1,TL2を検出できるように、幅方向に延びる形状を有する。マークセンサ14は、路面に設置されたマークMK(図4(a)参照)を検出するセンサである。マークセンサ14は、車体6における幅方向の少なくとも一方の端部側に設けられている。なお、誘導センサ13及びマークセンサ14の詳細については、動作と共に後述する。
【0022】
図2に示すように、牽引車1は、制御装置20(旋回制御装置)を有している。制御装置20は、装置を統括的に管理するECU[Electronic Control Unit]を備えている。ECUは、CPU[Central Processing Unit]、ROM[Read Only Memory]、RAM[Random Access Memory]、CAN[Controller Area Network]通信回路等を有する電子制御ユニットである。ECUでは、例えば、ROMに記憶されているプログラムをRAMにロードし、RAMにロードされたプログラムをCPUで実行することにより各種の機能を実現する。ECUは、複数の電子ユニットから構成されていてもよい。制御装置20は、情報取得部21と、走行制御部22と、記憶部23と、を備える。
【0023】
情報取得部21は、誘導センサ13及びマークセンサ14からの検出結果を取得する。走行制御部22は、情報取得部21で取得された情報に基づいて牽引車1の走行制御を行う。走行制御部22は、牽引車1が誘導線TL1,TL2に追従する追従走行を行う場合は、誘導センサ13からの検出結果に基づいて走行制御を行う。走行制御部22は、牽引車1が旋回を行う場合は、自律走行にて牽引車1を旋回させる旋回制御を行う。記憶部23は、牽引車1の制御のための各種情報を格納する。記憶部23は、牽引車1が自律走行にて旋回を行うための情報を格納している。
【0024】
なお、牽引車1の操舵方式は特に限定されず、操舵輪方式と二輪速度差方式のいずれの方式が採用されてもよい。操舵輪方式は、旋回輪3を進行方向に合わせてステアリングモータで回転させることで、牽引車1の旋回を行う方式である。この場合、旋回輪3と固定輪4の少なくとも一方が走行モータによって回転する駆動輪となる。走行制御部22は、ステアリングモータを制御することで、牽引車1の旋回動作を制御する。二輪速度差方式は、左右の固定輪4を別々の走行モータで駆動させ、各固定輪4に速度差を設けることで、牽引車1の旋回を行う方式である。走行制御部22は、各走行モータの速度を制御することで、牽引車1の旋回動作を制御する。
【0025】
次に、図3及び図4図6を参照して、本実施形態に係る旋回制御方法について説明する。この旋回制御方法は、被牽引車2を牽引しながら第1の誘導線TL1に追従して第1の進行方向D1(進行方向)へ走行する牽引車1が旋回することで、第1の誘導線TL1と交差する第2の誘導線TL2へ乗り移るための制御方法である。図3は、本実施形態に係る旋回制御方法を示すフローチャートである。なお、図3に示すフローチャートは、旋回制御方法における処理内容の一例を示すものであり、処理内容は適宜変更してもよい。図4図6は、旋回時の各タイミングにおける搬送車100の状態を示す概略平面図である。
【0026】
まず、本実施形態において、牽引車1が旋回を行う場所の路面の構成について説明する。図4(a)に示すように、当該場所では、直線状に延びる第1の誘導線TL1と直線状に延びる第2の誘導線TL2とが、互いに垂直をなして交差している。第1の誘導線TL1及び第2の誘導線TL2は、牽引車1が当該誘導線TL1,TL2に追従するように誘導するためのラインである。誘導線TL1,TL2は磁気テープなどで形成されてよく、この場合、誘導センサ13は誘導線TL1,TL2からの磁気を検出する。誘導線TL1,TL2は路面と異なる色で描かれた線でよく、この場合、誘導センサ13は、誘導線TL1,TL2を光学的に検出する。牽引車1は、第1の誘導線TL1に沿って第1の進行方向D1へ向かって走行し、第2の誘導線TL2に乗り移った後は、第2の誘導線TL2に沿って第2の進行方向D2へ向かって走行する。ここで、第2の誘導線TL2よりも第1の進行方向D1における上流側の領域を「第1の領域E1」とし、下流側の領域を「第2の領域E2」とする。
【0027】
マークMKは、牽引車1が旋回する位置に近付いたことを示すマークである。マークMKは、第1の領域E1における第1の誘導線TL1の近傍であって、第2の誘導線TL2との交差点の手前側に形成される。マークMKは、第2の誘導線TL2から第1の進行方向D1における下流側へ離間した位置に形成される。マークMKは、第1の誘導線TL1よりも第2の進行方向D2における下流側に形成されているが、上流側に形成されてもよい。マークセンサ14は、磁気的、電気的、または光学的にマークMKを検出してよい。
【0028】
図3に示す処理が開始される前段階において、図4(a)に示すように、牽引車1は、第1の誘導線TL1の第1の領域E1の部分に追従しながら第1の進行方向D1に向かって走行する。牽引車1が、マークセンサ14によってマークMKを検出する位置まで到達したタイミングで、図3に示す処理が開始される。制御装置20は、牽引車1が第1の誘導線TL1における第2の誘導線TL2よりも第1の進行方向D1における上流側の位置(すなわち第1の領域E1)にてマークMKを検出した後、一定距離を第1の誘導線TL1に追従して牽引車1を走行させる追従走行ステップS10を実行する。
【0029】
追従走行ステップS10では、制御装置20は、図4(b)に示すように、誘導センサ13が第2の誘導線TL2の位置まで到達しても、第1の誘導線TL1に追従する走行を継続する。制御装置20は、牽引車1が図4(c)に示す位置に到達するまで、追従走行ステップS10を継続する。制御装置20は、第1の誘導線TL1における第2の誘導線TL2よりも第1の進行方向D1における下流側の位置(すなわち第2の領域E2)にて、追従走行ステップS10から後述の旋回ステップS50へ切り替える。当該切り替えが行われるとき、誘導センサ13、後輪の車軸AX1及び連結部12は、第2の領域E2に位置している。
【0030】
具体的には、牽引車1は、被牽引車2の後輪である固定輪8の車軸AX2が、第1の進行方向D1において、回転中心CPの位置に到達するまで、追従走行ステップS10を実行する。回転中心CPは、第1の誘導線TL1からの距離と第2の誘導線TL2からの距離とが等しい仮想点である。このときの距離を「距離L1」とする。回転中心CPは、第1の誘導線TL1から第2の進行方向D2へ距離L1だけ離間している。回転中心CPは、第2の誘導線TL2から第1の進行方向D1の反対方向へ距離L1だけ離間している。本実施形態では、距離L1は、被牽引車2の前輪と後輪の車軸間距離に設定されている。しかし、距離L1は、搬送車100のサイズや形状、及び周囲の干渉物などの位置関係によって任意に設定可能な値である。なお、距離L1の下限値は、例えば被牽引車2の固定輪8のホイールベースの半分に設定することができる。なお、図5(b9において牽引車1と被牽引車2のなす角度が大きくなるため、牽引車1の後部と被牽引車2の前部が干渉しないようにする必要がある。よって、牽引レバー11が短い場合や、被牽引車2の形状によっては、当該状況を考慮して距離L1を大きめに設定してよい。なお、距離L1の上限値は、特に限定されないが、干渉が生じない範囲で小さくすることが好ましい。なお、マークセンサ14がマークMKを検出した後、牽引車1が第1の誘導線TL1に追従して走行する一定距離は、図4(c)中に示す距離L4となる。距離L4は、マークセンサ14がマークMKを検出した時の車軸AX2と第2の誘導線TL2との間の距離から、距離L1を引いた距離である。制御装置20は、マークMKを検出してから距離L4分だけ牽引車1の追従走行を行う。
【0031】
なお、距離L4は記憶部23内に記憶されている。またこの数値は被牽引車2の台車の寸法に応じて複数記憶させておいてよい。牽引車1に連結されている被牽引車2がその内のどの寸法のものかを無線で知らしめたり、連結部にRFIDアンテナを設置して被牽引車2側に取り付けたRFIDの情報を読み取ったりなどして寸法を把握することもできる。制御装置20は、被牽引車2の寸法情報に基づいて、追従走行ステップS10から旋回ステップS50へ切り替えるためのステップ切替点を変更する。すなわち、追従走行をどの程度の距離だけ行うか、被牽引車2の寸法に応じて変更することができる。
【0032】
次に、制御装置20は、第2の誘導線TL2よりも第1の進行方向D1における下流側の第2の領域E2において、牽引車1を自律走行にて旋回させる旋回ステップS50を実行する。旋回ステップS50は、方向転換ステップS20と、旋回走行ステップS30と、方向転換ステップS40と、を備える。なお、旋回ステップS50での自律走行のプログラムテーブルは、記憶部23に格納されている。従って、制御装置20は、記憶部23からプログラムテーブルを読み出して、当該プログラムを実行する。自律走行とは、誘導センサ13で誘導線を読み取りながら追従走行するような走行方式ではなく、誘導線によらず、予め角度や距離などを設定しておいたプログラムに基づいて牽引車1を走行させる走行方式である。
【0033】
図5(a)に示すように、制御装置20は、旋回ステップS50の開始時に、牽引車1と被牽引車2との連結部12を中心として、牽引車1を回転させて方向転換させることで方向転換ステップS20を実行する。方向転換ステップS20では、制御装置20は、被牽引車2が動かないように、牽引車1だけが連結部12周りをその場で旋回するように制御する。操舵輪方式を採用する場合、制御装置20は、牽引車1の旋回輪3の車軸AX3を90°操舵する。二輪速度差方式を採用する場合、左右の固定輪4の回転方向を逆向きに設定する。なお、二輪速度差方式を採用した場合も、旋回輪3の車軸AX3は90°回転する。制御装置20は、牽引車1の固定輪4の車軸AX1の延長線が回転中心CPを通過する状態となるまで、牽引車1の方向転換を行う。なお、制御装置20は、牽引車1が備える走行パルスのカウント機構やジャイロなどによる姿勢角の検出機構などを用いて、図4(c)に示す状態から図5(a)に示す状態となったことを判定してよい。
【0034】
制御装置20は、方向転換ステップS20の後、旋回走行ステップS30を実行する。旋回走行ステップS30では、制御装置20は、搬送車100が図5(a)の状態から図5(b)の状態となるまで牽引車1を旋回走行させる。旋回走行ステップS30では、制御装置20は、牽引車1と被牽引車2との連結部12が、回転中心CPを中心として旋回するように、牽引車1を旋回させる。連結部12の旋回半径は、連結部12と回転中心CPとを結ぶ直線の長さに該当する。図5(a)に示す状態では、当該直線の第1の進行方向における寸法は距離L2で示され、第2の進行方向における寸法は距離L1で示される。よって、連結部12の旋回半径は、「(距離L1)+(距離L2)」の平方根で求められる。距離L2は、連結部12と固定輪8の車軸AX2との間の距離である。距離L2は、被牽引車2の固有の値である。なお、連結部12のみならず、牽引車1及び被牽引車2の各部位も、回転中心CPを中心として旋回する。
【0035】
操舵輪方式を採用する場合、制御装置20は、牽引車1の旋回輪3の車軸AX3の延長線が回転中心CPを通過するように、旋回輪3を操舵し、当該状態が維持された状態で牽引車1を旋回走行させる。二輪速度差方式を採用する場合、制御装置20は、内周側の固定輪4と外周側の固定輪4との速度比が「距離L3:距離L3+寸法T」となるように固定輪4の速度を制御する。距離L3は、回転中心CPと内周側の固定輪4の中央位置との間の距離である。寸法Tは、内周側の固定輪4と外周側の固定輪4との間の寸法である。距離L3は、距離L1の設定値によって変動する値である。寸法Tは牽引車1の固有の値である。なお、二輪速度差方式を採用した場合も、旋回輪3の車軸AX3の延長線は回転中心CPを通過する。制御装置20は、連結部12が第2の誘導線TL2上、又は第2の誘導線TL2付近に到達するまで、牽引車1の旋回走行を行わせる。
【0036】
なお、図5(a)に示す状態から図5(b)に示す状態となる間に、誘導センサ13が第2の誘導線TL2を検出するタイミングが存在する。旋回走行ステップS30の実行中に誘導センサ13が第2の誘導線TL2を検出できなかった場合、制御装置20は異常判定を行い、牽引車1の自動運転を停止してよい。なお、当該異常判定は、図4(b)の状態から図4(c)の状態となる間にも行われてよい。
【0037】
図6に示すように、制御装置20は、旋回ステップS50の終了時、すなわち旋回走行ステップS30の完了後に、牽引車1と被牽引車2との連結部12を中心として、牽引車1を回転させて方向転換させることで方向転換ステップS40を実行する。方向転換ステップS40では、制御装置20は、被牽引車2が動かないように、牽引車1だけが連結部12周りをその場で旋回するように制御する。操舵輪方式を採用する場合、制御装置20は、牽引車1の旋回輪3の車軸AX3を90°操舵する。二輪速度差方式を採用する場合、左右の固定輪4の回転方向を逆向きに設定する。なお、二輪速度差方式を採用した場合も、旋回輪3の車軸AX3は90°回転する。制御装置20は、牽引車1の向きが第2の進行方向D2と一致するまで方向転換ステップS40を行う。制御装置20は、誘導センサ13が中央位置で第2の誘導線TL2を検出した位置で、方向転換を停止する。
【0038】
以上により、図3に示す制御処理が終了し、搬送車100の第2の誘導線TL2への乗り移りが完了する。その後、牽引車1は、第2の誘導線TL2に追従するように第2の進行方向D2へ走行する。
【0039】
なお、上述の制御のためのパラメータは、予め固定値として記憶部23に格納されてよい。例えば、距離L1,L3やその他の計算値は、予め記憶部23に格納されてよい。または、距離L1,L3などのパラメータは、必要なタイミングで制御装置20に通信を介して送られ、その他の計算値はその都度、制御装置20によって計算されてよい。例えば、被牽引車2の種類が複数存在している場合は、通信を用いることが有効である。
【0040】
次に、本実施形態に係る旋回制御方法及び制御装置20の作用・効果について説明する。
【0041】
まず、比較例に係る旋回制御方法について説明する。図7は、比較例に係る旋回制御方法を採用した搬送車200の動作を示す概念図である。搬送車200の牽引車201は、第1の誘導線TL1に追従して走行し、第2の誘導線TL2よりも第1の進行方向D1における上流側の第1の領域E1において、自律走行にて旋回して第2の誘導線TL2へ乗り移る。この場合、牽引車201と被牽引車202との間に内輪差が存在するため、被牽引車202は、交差点付近を大きく内周側に旋回する必要がある。この場合、内周側の設備EBと被牽引車202とが接触しないように、設備EBを誘導線TL1,TL2から大きく離して設置する必要が生じてしまう。また、被牽引車202の向きが第2の誘導線TL2と平行になるまで(図7のAで示す状態となるまで)に長い距離を走行しなくてはならない。例えば、旋回場所から近い場所(Aで示す場所よりも第1の誘導線TL1に近い場所)で荷積み荷卸しを行う場合、斜めに停止した被牽引車202に対して作業を行わなくてはならなくなる。従って、自動移載機器が使いにくくなるという問題がある。
【0042】
図8は、他の比較例に係る旋回制御方法を採用した搬送車300の動作を示す概念図である。この旋回制御方法では、第2の誘導線よりも第1の進行方向D1における下流側の第2の領域E2において、牽引車301が大回りに旋回するための第3の誘導線TL3が設けられる。牽引車301は、自律走行を行うことなく、第3の誘導線TL3に追従するように制御される。これにより、被牽引車302は交差点付近にて内輪差の影響を軽減して小回りで旋回することができる。しかしながら、当該旋回制御方法では、磁気テープなどの誘導線を複雑な形状で敷設する必要があり、旋回場所が多い場合に多大な手間がかかるという問題がある。更に複数の寸法の被牽引車が存在する場合、各寸法共通に最適となる敷設形状は存在しないという問題がある。
【0043】
これに対し、本実施形態に係る旋回制御方法は、被牽引車2を牽引しながら第1の誘導線TL1に追従して第1の進行方向D1へ走行する牽引車1が旋回することで、第1の誘導線TL1と交差する第2の誘導線TL2へ乗り移る旋回制御方法であって、第2の誘導線TL2よりも第1の進行方向D1における下流側の第2の領域E2において、牽引車1を自律走行にて旋回させる旋回ステップS50を備える。
【0044】
牽引車1が第2の誘導線TL2よりも第1の進行方向D1における下流側の第2の領域E2を旋回すると、牽引車1は大回りで旋回を行う。この場合、牽引車1の第1の進行方向D1の上流側で牽引される被牽引車2は、牽引車1との内輪差の影響が低減されることで、第1の誘導線TL1と第2の誘導線TL2との交差点付近にて(少なくとも、図7に示す比較例に比して)小回りで方向転換することができる。以上より、旋回時の被牽引車2の動作を小回りにすることができる。
【0045】
旋回制御方法は、牽引車1が第1の誘導線TL1に追従して走行しているときにマークMKを検出した後、一定距離を第1の誘導線TL1に追従し牽引車1を走行させる追従走行ステップS10を更に備え、第2の誘導線TL2よりも第1の進行方向D1における下流側の第2の領域E2にて、追従走行ステップS10から旋回ステップS50へ切り替える。このように、マークMKを検出してただちに自律走行を行うのではなく、牽引車1が一定距離を第1の誘導線TL1に追従するようにする。これにより、第1の誘導線TL1を用いて、牽引車1を第2の誘導線TL2よりも第1の進行方向D1における下流側の第2の領域E2まで到達させることができる。これにより、第1の誘導線TL1を用いて、牽引車1を第2の誘導線TL2よりも第1の進行方向D1における下流側の第2の領域E2まで走行させる距離を被牽引車2の寸法に応じて変化させることができ、寸法が異なる複数の被牽引車2が存在してもマークMKの位置を変更することなく理想の位置で旋回ステップへの切り替えが行える。
【0046】
旋回制御方法において、旋回ステップS50では、牽引車1と被牽引車2との連結部12が、第1の誘導線TL1からの距離と第2の誘導線TL2からの距離とが等しい仮想点を回転中心CPとして旋回するように、牽引車1を旋回させる。このように、連結部12が回転中心CP周りを旋回するような動作とすることで、被牽引車2の動作を小回りにすることができるとともに、被牽引車2の旋回後の中心線と第2の誘導線TL2とのずれを最小限にすることができる。
【0047】
旋回制御方法において、旋回ステップS50の開始時には、牽引車1と被牽引車2との連結部12を中心として、牽引車1を回転させて方向転換させる。牽引車1は、被牽引車2を動かすことなく、方向転換を行うことができる。この場合、牽引車1の方向転換時において被牽引車2の軌道を考慮する必要が無くなり、且つ、被牽引車2の移動量を減らすことができる。これにより、自律走行の処理内容をシンプルにすることができ、且つ、被牽引車2の動作を小回りにすることができる。
【0048】
旋回制御方法では、一定距離のパラメータ(例えば距離L4)を複数記憶し、被牽引車2の寸法情報に基づいて、追従走行ステップS10から旋回ステップS50へ切り替えるためのステップ切替点を変更する。この場合、被牽引車2の寸法に応じたタイミングで旋回ステップS50へ切り替わることができる。
【0049】
制御装置20は、被牽引車2を牽引しながら第1の誘導線TL1に追従して第1の進行方向D1へ走行する牽引車1が旋回することで、第1の誘導線TL1と交差する第2の誘導線TL2へ乗り移る制御装置20であって、第2の誘導線TL2よりも第1の進行方向D1における下流側の領域E2において、牽引車1を自律走行にて旋回させる制御を行う。
【0050】
この制御装置20によれば、上述の旋回制御方法と同趣旨の作用・効果を得ることができる。
【0051】
本発明は、上述の実施形態に限定されるものではない。
【0052】
上述の実施形態では、マークMKが第2の誘導線TL2から手前側に離間した位置に配置されていた。ただし、マークMKの位置は第1の進行方向D1の上流側又は下流側の位置に調整されてもよい。マークMKは、第2の領域E2に配置されてもよい。ただし、マークMKが第1の領域E1に配置されている場合、マークセンサ14は、第2の誘導線TL2を検出できるようになり、当該検出結果を現在位置の確認や走行距離の推定などに有効に利用することができる。また、マーク検出後、第1の誘導線TL1に追従して走行する距離を可変とすることで、牽引車1及び被牽引車2の軌跡の大きさを調整してもよい。
【0053】
なお、制御装置20は、マークMKを検出した後、牽引車1を自律走行で第2の領域E2まで走行させてよい。
【0054】
上述の実施形態では、制御装置20は、第2の領域E2において、牽引車1を自律走行にて旋回させる旋回ステップS50を実行した。旋回ステップS50の方向転換ステップS40では、牽引車1の車体の一部が第1の領域E1に入り込んでいた。このように、旋回ステップS50の全期間において、牽引車1の車体の全体が第2の領域E2に存在している必要はなく、一部の期間において牽引車1の車体の一部または全部が第1の領域E1に入り込んでもよい。例えば、旋回ステップS50は、牽引車1の車体全体が第2の領域E2に存在する状態から処理が開始されたが、牽引車1の車体の一部または全体が第2の領域E2に存在する状態から処理が開始されてもよい。この場合、旋回走行ステップS30の少なくも一部の期間、牽引車1の連結部12が第2の領域E2に存在するように自律走行の制御がなされる。
【0055】
また、第1の誘導線TL1と第2の誘導線TL2の交差角度は90°でなくともよく、傾斜した角度であってもよい。なお、マークMKと交差角度が紐付けられており、制御装置20は、マークMKを検出すると同時に、交差角度を把握してもよい。
【符号の説明】
【0056】
1…牽引車、2…被牽引車、12…連結部、20…制御装置(旋回制御装置)、TL1…第1の誘導線、TL2…第2の誘導線、MK…マーク。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8