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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-20
(45)【発行日】2022-09-29
(54)【発明の名称】積層型コイル部品
(51)【国際特許分類】
   H01F 17/04 20060101AFI20220921BHJP
   H01F 17/00 20060101ALI20220921BHJP
   H01F 41/02 20060101ALI20220921BHJP
   H01F 1/34 20060101ALI20220921BHJP
   C04B 35/30 20060101ALI20220921BHJP
【FI】
H01F17/04 F
H01F17/00 D
H01F41/02 D
H01F1/34 140
C04B35/30
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019097645
(22)【出願日】2019-05-24
(65)【公開番号】P2020194811
(43)【公開日】2020-12-03
【審査請求日】2021-01-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】西川 勇紀
(72)【発明者】
【氏名】比留川 敦夫
(72)【発明者】
【氏名】杉井 一星
【審査官】久保田 昌晴
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-196398(JP,A)
【文献】特開2000-233967(JP,A)
【文献】特開2006-052100(JP,A)
【文献】特開2014-220469(JP,A)
【文献】特許第6465240(JP,B1)
【文献】特開2008-290931(JP,A)
【文献】特開2013-163628(JP,A)
【文献】特開平10-163017(JP,A)
【文献】特開2017-212372(JP,A)
【文献】特開平11-307344(JP,A)
【文献】特開2018-098368(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0126165(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 1/34、3/08、17/00-19/08、27/255
H01F 41/02
C04B 35/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の絶縁層が長さ方向に積層されてなり、内部にコイルを内蔵する積層体と、
前記コイルに電気的に接続されている第1の外部電極及び第2の外部電極と、を備え、
前記コイルは、前記絶縁層とともに前記長さ方向に積層された複数のコイル導体が電気的に接続されてなり、
前記積層体は、前記長さ方向において相対する第1の端面及び第2の端面と、前記長さ方向と直交する高さ方向において相対する第1の主面及び第2の主面と、前記長さ方向及び前記高さ方向に直交する幅方向において相対する第1の側面及び第2の側面と、を有し、
前記第1の外部電極は、前記第1の端面の少なくとも一部を覆い、
前記第2の外部電極は、前記第2の端面の少なくとも一部を覆い、
前記積層体の積層方向と前記コイルのコイル軸方向とは、前記第1の主面と平行であり、
前記コイル導体間の前記絶縁層は、少なくともNi、Zn、Cu及びFeを含む磁性材料と、少なくともZn及びSiを含む非磁性材料を含む焼結材料からなり、
前記焼結材料は、FeをFeに換算して8mol%以上、37mol%以下、ZnをZnOに換算して30mol%以上、60mol%以下、CuをCuOに換算して1mol%以上、7mol%以下、NiをNiOに換算して3mol%以上、17mol%以下、SiをSiOに換算して7mol%以上、28mol%以下含み、
前記焼結材料の中のSi及びFeをそれぞれ、SiO及びFeに換算したときの前記SiOと前記Feのモル比(SiO/Fe)が0.2以上、3.5以下であり、
前記焼結材料の中のFe、Ni、Zn、Cu及びSiを、それぞれFe、NiO、ZnO、CuO及びSiOに換算したときの、前記Fe、前記NiO、前記ZnO、前記CuO及び前記SiOの合計量を100mol部としたときに、前記焼結材料が、BをB単体に換算して0.05mol部以上、0.5mol部以下含有し、
前記コイル導体の積層数は、40以上、60以下であり、
60GHzでの透過係数S21は-2.5dB以上であることを特徴とする、積層型コイル部品。
【請求項2】
複数の絶縁層が長さ方向に積層されてなり、内部にコイルを内蔵する積層体と、
前記コイルに電気的に接続されている第1の外部電極及び第2の外部電極と、を備え、
前記コイルは、前記絶縁層とともに前記長さ方向に積層された複数のコイル導体が電気的に接続されてなり、
前記積層体は、前記長さ方向において相対する第1の端面及び第2の端面と、前記長さ方向と直交する高さ方向において相対する第1の主面及び第2の主面と、前記長さ方向及び前記高さ方向に直交する幅方向において相対する第1の側面及び第2の側面と、を有し、
前記第1の外部電極は、前記第1の端面の少なくとも一部を覆い、
前記第2の外部電極は、前記第2の端面の少なくとも一部を覆い、
前記積層体の積層方向と前記コイルのコイル軸方向とは、前記第1の主面と平行であり、
前記コイル導体間の前記絶縁層は、少なくともNi、Zn、Cu及びFeを含む磁性材料と、少なくともZn及びSiを含む非磁性材料を含む焼結材料からなり、
前記焼結材料は、FeをFe に換算して8mol%以上、37mol%以下、ZnをZnOに換算して30mol%以上、60mol%以下、CuをCuOに換算して1mol%以上、7mol%以下、NiをNiOに換算して3mol%以上、17mol%以下、SiをSiO に換算して7mol%以上、28mol%以下含み、
前記焼結材料の中のSi及びFeをそれぞれ、SiO 及びFe に換算したときの前記SiO と前記Fe のモル比(SiO /Fe )が0.2以上、3.5以下であり、
前記焼結材料の中のFe、Ni、Zn、Cu及びSiを、それぞれFe 、NiO、ZnO、CuO及びSiO に換算したときの、前記Fe 、前記NiO、前記ZnO、前記CuO及び前記SiO の合計量を100mol部としたときに、前記焼結材料が、BをB単体に換算して0.05mol部以上、0.5mol部以下含有し、
酸化ビスマスを含まず、
60GHzでの透過係数S21は-2.5dB以上であることを特徴とする、積層型コイル部品。
【請求項3】
前記非磁性材料が、さらにCuを含み、
前記Siに対する前記Znと前記Cuの含有量の合計[(Zn+Cu)/Si]がモル比換算で1.8以上、2.2以下である請求項1又は2に記載の積層型コイル部品。
【請求項4】
前記第1の主面が実装面であり、
前記第1の外部電極は、前記第1の端面の一部と前記第1の主面の一部とを延伸して覆い、
前記第2の外部電極は、前記第2の端面の一部と前記第1の主面の一部とを延伸して覆う、請求項1~3のいずれかに記載の積層型コイル部品。
【請求項5】
前記実装面からみて、前記コイル導体が、前記第1の外部電極及び前記第2の外部電極と重なる位置まで配置されている、請求項4に記載の積層型コイル部品。
【請求項6】
前記積層方向における前記コイル導体の配置領域の寸法は、前記積層体の長さ寸法の85%以上、95%以下である請求項1~のいずれか1項に記載の積層型コイル部品。
【請求項7】
前記長さ方向に隣り合う前記コイル導体間の距離は4μm以上、8μm以下である、請求項1~6のいずれか1項に記載の積層型コイル部品。
【請求項8】
前記コイル導体は、ライン部と前記ライン部の端部に配置されるランド部とを有し、
前記ライン部の幅は、30μm以上、50μm以下である、請求項1~7のいずれか1項に記載の積層型コイル部品。
【請求項9】
前記コイル導体の内径は、50μm以上、100μm以下である、請求項1~8のいずれか1項に記載の積層型コイル部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層型コイル部品に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の電気機器の通信速度の高速化、及び、小型化に応じて、積層型インダクタには高周波帯(例えば、50GHz以上のGHz帯)での高周波特性が充分であることが求められている。
積層型コイル部品として、例えば、特許文献1には、コイル導体及びセラミック層が積層されて構成される電子部品が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第5790702号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の電子部品では、セラミック層に、焼結助剤としてホウケイ酸ガラス(MO-SiO-Bガラス)が0.5~17.0重量%含まれている。しかし、焼結性を担保するために必要なガラスの添加量が多く、磁気特性を阻害してしまうという問題が発生する。さらに、Bは水溶性であるため、生産途中でBが溶出してしまうことで焼結性が低下し、強度面の低下や信頼性試験で充分な品位を確保できないという問題が発生するおそれがある。
【0005】
本発明は上記の問題を解決するためになされたものであり、焼結性に加え、透磁率、絶縁抵抗及び誘電率等の磁気特性並びに周波数特性に優れる積層型コイル部品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の積層型コイル部品は、複数の絶縁層が長さ方向に積層されてなり、内部にコイルを内蔵する積層体と、上記コイルに電気的に接続されている第1の外部電極及び第2の外部電極と、を備え、上記コイルは、上記絶縁層とともに上記長さ方向に積層された複数のコイル導体が電気的に接続されてなり、上記積層体は、上記長さ方向において相対する第1の端面及び第2の端面と、上記長さ方向と直交する高さ方向において相対する第1の主面及び第2の主面と、上記長さ方向及び上記高さ方向に直交する幅方向において相対する第1の側面及び第2の側面と、を有し、上記第1の外部電極は、上記第1の端面の少なくとも一部を覆い、上記第2の外部電極は、上記第2の端面の少なくとも一部を覆い、上記積層体の積層方向と上記コイルのコイル軸方向とは、上記第1の主面と平行であり、上記コイル導体間の上記絶縁層は、少なくともNi、Zn、Cu及びFeを含む磁性材料と、少なくともZn及びSiを含む非磁性材料を含む焼結材料からなり、上記焼結材料は、FeをFeに換算して8mol%以上、37mol%以下、ZnをZnOに換算して30mol%以上、60mol%以下、CuをCuOに換算して1mol%以上、7mol%以下、NiをNiOに換算して3mol%以上、17mol%以下、SiをSiOに換算して7mol%以上、28mol%以下含み、上記焼結材料中のSi及びFeをそれぞれ、SiO及びFeに換算したときの上記SiOと上記Feのモル比(SiO/Fe)が0.2以上、3.5以下であり、上記焼結材料の中のFe、Ni、Zn、Cu及びSiを、それぞれFe、NiO、ZnO、CuO及びSiOに換算したときの、上記Fe、上記NiO、上記ZnO、上記CuO及び上記SiOの合計を100mol部としたときに、上記焼結材料が、BをB単体に換算して0.05mol部以上、0.5mol部以下含有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、焼結性に加え、透磁率、絶縁抵抗及び誘電率等の磁気特性並びに周波数特性に優れる積層型コイル部品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本発明の積層型コイル部品の一例を模式的に示す斜視図である。
図2図2(a)は、図1に示す積層型コイル部品の側面図であり、図2(b)は、図1に示す積層型コイル部品の正面図であり、図2(c)は、図1に示す積層型コイル部品の底面図である。
図3図3は、本発明の積層型コイル部品の一例を模式的に示す断面図である。
図4図4は、図3に示す積層型コイル部品を構成する絶縁層の様子を模式的に示す分解斜視模式図である。
図5図5は、図3に示す積層型コイル部品を構成する絶縁層の様子を模式的に示す分解平面模式図である。
図6図6は、本発明の積層型コイル部品の他の一例を模式的に示す斜視図である。
図7図7(a)は、図6に示す積層型コイル部品の側面図であり、図7(b)は、図6に示す積層型コイル部品の正面図であり、図7(c)は、図6に示す積層型コイル部品の底面図である。
図8図8は、透過係数S21を測定する方法を模式的に示す図である。
図9図9は、試料1~4及び13の透過係数S21を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の積層型コイル部品について説明する。
しかしながら、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲において適宜変更して適用することができる。なお、以下において記載する個々の望ましい構成を2つ以上組み合わせたものもまた本発明である。
【0010】
図1は、本発明の積層型コイル部品の一例を模式的に示す斜視図である。
図2(a)は、図1に示す積層型コイル部品の側面図であり、図2(b)は、図1に示す積層型コイル部品の正面図であり、図2(c)は、図1に示す積層型コイル部品の底面図である。
【0011】
図1図2(a)、図2(b)及び図2(c)に示す積層型コイル部品1は、積層体10と第1の外部電極21と第2の外部電極22とを備えている。積層体10は、6面を有する略直方体形状である。積層体10の構成については後述するが、複数の絶縁層が長さ方向に積層されてなり、内部にコイルを内蔵している。第1の外部電極21及び第2の外部電極22は、それぞれ、コイルに電気的に接続されている。
【0012】
本発明の積層型コイル部品及び積層体では、長さ方向、高さ方向、幅方向を、図1におけるx方向、y方向、z方向とする。ここで、長さ方向(x方向)と高さ方向(y方向)と幅方向(z方向)は互いに直交する。
【0013】
図1図2(a)、図2(b)及び図2(c)に示すように、積層体10は、長さ方向(x方向)に相対する第1の端面11及び第2の端面12と、長さ方向に直交する高さ方向(y方向)に相対する第1の主面13及び第2の主面14と、長さ方向及び高さ方向に直交する幅方向(z方向)に相対する第1の側面15及び第2の側面16とを有する。
【0014】
図1には示されていないが、積層体10は、角部及び稜線部に丸みが付けられていることが好ましい。角部は、積層体の3面が交わる部分であり、稜線部は、積層体の2面が交わる部分である。
【0015】
第1の外部電極21は、図1図2(a)、図2(b)及び図2(c)に示すように、積層体10の第1の端面11の全部を覆い、かつ、第1の端面11から延伸して第1の主面13の一部、第2の主面14の一部、第1の側面15の一部、及び、第2の側面16の一部を覆っている。
また第2の外部電極22は、積層体10の第2の端面12の全部を覆い、かつ、第2の端面12から延伸して第1の主面13の一部、第2の主面14の一部、第1の側面15の一部、及び、第2の側面16の一部を覆っている。
【0016】
以上のように第1の外部電極21及び第2の外部電極22が配置されているため、積層型コイル部品1を基板上に実装する場合には、積層体10の第1の主面13、第2の主面14、第1の側面15、及び第2の側面16のいずれかが実装面となる。
【0017】
本発明の積層型コイル部品のサイズは特に限定されないが、0603サイズ、0402サイズ、又は、1005サイズであることが好ましい。
【0018】
本発明の積層型コイル部品が0603サイズである場合、積層体の長さ(図2(a)中、両矢印Lで示される長さ)は、0.63mm以下であることが好ましく、0.57mm以上であることが好ましく、0.60mm(600μm)以下、0.56mm(560μm)以上であることがより好ましい。
本発明の積層型コイル部品が0603サイズである場合、積層体の幅(図2(c)中、両矢印Wで示される長さ)は、0.33mm以下であることが好ましく、0.27mm以上であることが好ましい。
本発明の積層型コイル部品が0603サイズである場合、積層体の高さ(図2(b)中、両矢印Tで示される長さ)は、0.33mm以下であることが好ましく、0.27mm以上であることが好ましい。
【0019】
本発明の積層型コイル部品が0603サイズである場合、積層型コイル部品の長さ(図2(a)中、両矢印Lで示される長さ)は、0.63mm以下であることが好ましく、0.57mm以上であることが好ましい。
本発明の積層型コイル部品が0603サイズである場合、積層型コイル部品の幅(図2(c)中、両矢印Wで示される長さ)は、0.33mm以下であることが好ましく、0.27mm以上であることが好ましい。
本発明の積層型コイル部品が0603サイズである場合、積層型コイル部品の高さ(図2(b)中、両矢印Tで示される長さ)は、0.33mm以下であることが好ましく、0.27mm以上であることが好ましい。
【0020】
本発明の積層型コイル部品が0603サイズである場合、積層体の第1の主面を覆う部分の第1の外部電極の長さ(図2(c)中、両矢印Eで示される長さ)は、0.12mm以上、0.22mm以下であることが好ましい。同様に、積層体の第1の主面を覆う部分の第2の外部電極の長さは、0.12mm以上、0.22mm以下であることが好ましい。
なお、積層体の第1の主面を覆う部分の第1の外部電極の長さ、及び、積層体の第1の主面を覆う部分の第2の外部電極の長さが一定でない場合、最も長い部分の長さが上記範囲にあることが好ましい。
【0021】
本発明の積層型コイル部品が0402サイズである場合、積層体の長さ(図2(a)中、両矢印Lで示される長さ)は、0.42mm以下であることが好ましく、0.38mm以上であることが好ましい。
本発明の積層型コイル部品が0402サイズである場合、積層体の幅(図2(c)中、両矢印Wで示される長さ)は、0.22mm以下であることが好ましく、0.18mm以上であることが好ましい。
本発明の積層型コイル部品が0402サイズである場合、積層体の高さ(図2(b)中、両矢印Tで示される長さ)は、0.22mm以下であることが好ましく、0.18mm以上であることが好ましい。
【0022】
本発明の積層型コイル部品が0402サイズである場合、積層型コイル部品の長さ(図2(a)中、両矢印Lで示される長さ)は、0.42mm以下であることが好ましく、0.38mm以上であることが好ましい。
本発明の積層型コイル部品が0402サイズである場合、積層型コイル部品の幅(図2(c)中、両矢印Wで示される長さ)は、0.22mm以下であることが好ましく、0.18mm以上であることが好ましい。
本発明の積層型コイル部品が0402サイズである場合、積層型コイル部品の高さ(図2(b)中、両矢印Tで示される長さ)は、0.22mm以下であることが好ましく、0.18mm以上であることが好ましい。
【0023】
本発明の積層型コイル部品が0402サイズである場合、積層体の第1の主面を覆う部分の第1の外部電極の長さ(図2(c)中、両矢印Eで示される長さ)は、0.06mm以上、0.13mm以下であることが好ましい。同様に、積層体の第1の主面を覆う部分の第2の外部電極の長さは、0.06mm以上、0.13mm以下であることが好ましい。
なお、積層体の第1の主面を覆う部分の第1の外部電極の長さ、及び、積層体の第1の主面を覆う部分の第2の外部電極の長さが一定でない場合、最も長い部分の長さが上記範囲にあることが好ましい。
【0024】
本発明の積層型コイル部品が1005サイズである場合、積層体の長さ(図2(a)中、両矢印Lで示される長さ)は、1.05mm以下であることが好ましく、0.95mm以上であることが好ましい。
本発明の積層型コイル部品が1005サイズである場合、積層体の幅(図2(c)中、両矢印Wで示される長さ)は、0.55mm以下であることが好ましく、0.45mm以上であることが好ましい。
本発明の積層型コイル部品が1005サイズである場合、積層体の高さ(図2(b)中、両矢印Tで示される長さ)は、0.55mm以下であることが好ましく、0.45mm以上であることが好ましい。
【0025】
本発明の積層型コイル部品が1005サイズである場合、積層型コイル部品の長さ(図2(a)中、両矢印Lで示される長さ)は、1.05mm以下であることが好ましく、0.95mm以上であることが好ましい。
本発明の積層型コイル部品が1005サイズである場合、積層型コイル部品の幅(図2(c)中、両矢印Wで示される長さ)は、0.55mm以下であることが好ましく、0.45mm以上であることが好ましい。
本発明の積層型コイル部品が1005サイズである場合、積層型コイル部品の高さ(図2(b)中、両矢印Tで示される長さ)は、0.55mm以下であることが好ましく、0.45mm以上であることが好ましい。
【0026】
本発明の積層型コイル部品が1005サイズである場合、積層体の第1の主面を覆う部分の第1の外部電極の長さ(図2(c)中、両矢印Eで示される長さ)は、0.15mm以上、0.33mm以下であることが好ましい。同様に、積層体の第1の主面を覆う部分の第2の外部電極の長さは、0.15mm以上、0.33mm以下であることが好ましい。
なお、積層体の第1の主面を覆う部分の第1の外部電極の長さ、及び、積層体の第1の主面を覆う部分の第2の外部電極の長さが一定でない場合、最も長い部分の長さが上記範囲にあることが好ましい。
【0027】
本発明の積層型コイル部品を構成する積層体が内蔵するコイルについて説明する。
コイルは、絶縁層とともに長さ方向に積層された複数のコイル導体が電気的に接続されることにより形成される。
【0028】
図3は、本発明の積層型コイル部品の一例を模式的に示す断面図であり、図4は、図3に示す積層型コイル部品を構成する絶縁層の様子を模式的に示す分解斜視模式図であり、図5は、図3に示す積層型コイル部品を構成する絶縁層の様子を模式的に示す分解平面模式図である。
図3は、絶縁層、コイル導体及び連結導体、並びに、積層体の積層方向を模式的に示すものであり、実際の形状及び接続等を厳密には表していない。例えば、コイル導体はビア導体を介して接続されている。
【0029】
図3に示すように、積層型コイル部品1は、絶縁層とともに積層された複数のコイル導体32が電気的に接続されることにより形成されるコイルを内蔵する積層体10と、コイルに電気的に接続される第1の外部電極21及び第2の外部電極22を備える。
積層体10には、コイル導体が配置された領域と、第1の連結導体41又は第2の連結導体42が配置された領域とが存在する。積層体10の積層方向、及び、コイルの軸方向(図3中、コイル軸Aを示す)は、第1の主面13に対して平行である。
【0030】
積層方向におけるコイル導体32の配置領域の寸法Lは、積層体10の長さ寸法Lの85%以上、95%以下となっていることが好ましい。積層方向におけるコイル導体32の配置領域の寸法Lが、積層体10の長さ寸法の85%以上、95%以下であると、積層体に占める連結導体の長さが短くなることに起因して、連結導体と外部電極との間の浮遊容量が小さくなり、高周波特性が向上する。
【0031】
積層体10の積層方向に隣り合うコイル導体32間の距離Dは、4μm以上、8μm以下であることが好ましい。積層体10の積層方向に隣り合うコイル導体32間の距離Dが4μm以上、8μm以下であると、高周波特性が向上する。
【0032】
図4及び図5に示すように、積層体10は、図3中の絶縁層31として、絶縁層31aと、絶縁層31bと、絶縁層31cと、絶縁層31dと、を有している。積層体10は、図3中の絶縁層35aとして、絶縁層35aと、絶縁層35aと、絶縁層35aと、絶縁層35aと、を有している。積層体10は、図3中の絶縁層35bとして、絶縁層35bと、絶縁層35bと、絶縁層35bと、絶縁層35bと、を有している。
絶縁層31a、絶縁層31b、絶縁層31c及び絶縁層31dはいずれも、コイル導体間に配置される絶縁層となる。
【0033】
コイル30は、図3中のコイル導体32として、コイル導体32aと、コイル導体32bと、コイル導体32cと、コイル導体32dと、を有している。
【0034】
コイル導体32a、コイル導体32b、コイル導体32c、及び、コイル導体32dは、各々、絶縁層31a、絶縁層31b、絶縁層31c、及び、絶縁層31dの主面上に配置されている。
【0035】
コイル導体32a、コイル導体32b、コイル導体32c、及び、コイル導体32dの長さは、各々、コイル30の3/4ターンの長さである。つまり、コイル30の3ターンを構成するためのコイル導体の積層数は4である。積層体10においては、コイル導体32a、コイル導体32b、コイル導体32c、及び、コイル導体32dが1つの単位(3ターン分)として繰り返し積層されている。
【0036】
コイル導体32aは、ライン部36aと、ライン部36aの端部に配置されるランド部37aと、を有している。コイル導体32bは、ライン部36bと、ライン部36bの端部に配置されるランド部37bと、を有している。コイル導体32cは、ライン部36cと、ライン部36cの端部に配置されるランド部37cと、を有している。コイル導体32dは、ライン部36dと、ライン部36dの端部に配置されるランド部37dと、を有している。
【0037】
絶縁層31a、絶縁層31b、絶縁層31c、及び、絶縁層31dには、各々、ビア導体33a、ビア導体33b、ビア導体33c、及び、ビア導体33dが積層方向に貫通するように配置されている。
【0038】
コイル導体32a及びビア導体33a付きの絶縁層31aと、コイル導体32b及びビア導体33b付きの絶縁層31bと、コイル導体32c及びビア導体33c付きの絶縁層31cと、コイル導体32d及びビア導体33d付きの絶縁層31dとは、1つの単位(図4及び図5中の点線で囲まれた部分)として繰り返し積層されている。これにより、コイル導体32aのランド部37aと、コイル導体32bのランド部37bと、コイル導体32cのランド部37cと、コイル導体32dのランド部37dとは、ビア導体33a、ビア導体33b、ビア導体33c、及び、ビア導体33dを介して接続される。つまり、積層方向に隣り合うコイル導体のランド部は、ビア導体を介して互いに接続される。
【0039】
以上により、積層体10に内蔵されるソレノイド状のコイル30が構成される。
【0040】
積層方向から平面視したとき、コイル導体32a、コイル導体32b、コイル導体32c、及び、コイル導体32dで構成されるコイル30は、円形状であってもよいし、多角形状であってもよい。積層方向から平面視したとき、コイル30が多角形状である場合、多角形の面積相当円の直径をコイル30のコイル径とし、多角形の重心を通り積層方向に延伸する軸をコイル30のコイル軸とする。
【0041】
積層方向から平面視したとき、ランド部37a、ランド部37b、ランド部37c、及び、ランド部37dの径は、各々、図5に示すように、ライン部36a、ライン部36b、ライン部36c、及び、ライン部36dの線幅よりも大きいことが好ましい。
【0042】
積層方向から平面視したとき、ランド部37a、ランド部37b、ランド部37c、及び、ランド部37dは、各々、図5に示すような円形状であってもよいし、多角形状であってもよい。積層方向から平面視したとき、ランド部37a、ランド部37b、ランド部37c、及び、ランド部37dが多角形状である場合、多角形の面積相当円の直径を各ランド部の径とする。
【0043】
絶縁層35a、絶縁層35a、絶縁層35a、及び、絶縁層35aには、各々、ビア導体33pが積層方向に貫通するように配置されている。絶縁層35a、絶縁層35a、絶縁層35a、及び、絶縁層35aの主面上には、ビア導体33pに接続されるランド部が配置されていてもよい。
【0044】
ビア導体33p付きの絶縁層35aと、ビア導体33p付きの絶縁層35aと、ビア導体33p付きの絶縁層35aと、ビア導体33p付きの絶縁層35aとは、コイル導体32a及びビア導体33a付きの絶縁層31aと重なるように積層されている。これにより、ビア導体33p同士がつながって第1の連結導体41を構成し、第1の連結導体41が第1の端面11に露出する。その結果、第1の外部電極21とコイル30とが、第1の連結導体41を介して互いに接続される。
【0045】
第1の連結導体41は、上述したように、第1の外部電極21とコイル30との間を直線状に接続することが好ましい。第1の連結導体41が第1の外部電極21とコイル30との間を直線状に接続するとは、積層方向から平面視したとき、第1の連結導体41を構成するビア導体33p同士が重なっていることを意味し、ビア導体33p同士は厳密に直線状に並んでいなくてもよい。
【0046】
絶縁層35b、絶縁層35b、絶縁層35b、及び、絶縁層35bには、各々、ビア導体33qが積層方向に貫通するように配置されている。絶縁層35b、絶縁層35b、絶縁層35b、及び、絶縁層35bの主面上には、ビア導体33qに接続されるランド部が配置されていてもよい。
【0047】
ビア導体33q付きの絶縁層35bと、ビア導体33q付きの絶縁層35bと、ビア導体33q付きの絶縁層35bと、ビア導体33q付きの絶縁層35bとは、コイル導体32d及びビア導体33d付きの絶縁層31dと重なるように積層されている。これにより、ビア導体33q同士がつながって第2の連結導体42を構成し、第2の連結導体42が第2の端面12に露出する。その結果、第2の外部電極22とコイル30(コイル導体32d)とが、第2の連結導体42を介して互いに接続される。
【0048】
第2の連結導体42は、上述したように、第2の外部電極22とコイル30との間を直線状に接続することが好ましい。第2の連結導体42が第2の外部電極22とコイル30との間を直線状に接続するとは、積層方向から平面視したとき、第2の連結導体42を構成するビア導体33q同士が重なっていることを意味し、ビア導体33q同士は厳密に直線状に並んでいなくてもよい。
【0049】
なお、第1の連結導体41を構成するビア導体33pと第2の連結導体42を構成するビア導体33qとの各々にランド部が接続されている場合、第1の連結導体41及び第2の連結導体42の形状は、ランド部を除いた形状を意味する。
【0050】
図4及び図5では、コイル30の3ターンを構成するためのコイル導体の積層数が4である場合、すなわち、繰り返し形状が3/4ターン形状である場合を例示したが、コイルの1ターンを構成するためのコイル導体の積層数は特に限定されない。
例えば、コイルの1ターンを構成するためのコイル導体の積層数が2、すなわち、繰り返し形状が1/2ターン形状であってもよい。
【0051】
積層方向から平面視したときに、コイルを構成するコイル導体は互いに重なることが好ましい。また、積層方向から平面視したとき、コイルの形状は円形であることが好ましい。なお、コイルがランド部を含む場合には、ランド部を除いた形状(すなわちライン部の形状)をコイルの形状とする。
また、連結導体を構成するビア導体にランド部が接続されている場合には、ランド部を除いた形状(すなわちビア導体の形状)を連結導体の形状とする。
【0052】
なお、図4に示すコイル導体は、繰り返しパターンが円形となるような形状であるが、繰り返しパターンが四角形等の多角形となるようなコイル導体であってもよい。
またコイル導体の繰り返し形状は3/4ターン形状ではなく、1/2ターン形状であってもよい。
【0053】
本発明の積層型コイル部品は、コイル導体間の絶縁層を構成する焼結材料の組成が、以下のようになっている。
Fe:Feに換算して8mol%以上、37mol%以下
Zn:ZnOに換算して30mol%以上、60mol%以下
Cu:CuOに換算して1mol%以上、7mol%以下
Ni:NiOに換算して3mol%以上、17mol%以下
Si:SiOに換算して7mol%以上、28mol%以下
焼結材料の中のSi及びFeを、それぞれSiO及びFeに換算したときのSiOとFeのモル比(SiO/Fe)が、0.2以上、3.5以下。
焼結材料の中のFe、Ni、Zn、Cu及びSiを、それぞれFe、NiO、ZnO、CuO及びSiOに換算したときのFe、NiO、ZnO、CuO及びSiOの合計を100mol部としたときに、焼結材料が、BをB単体に換算して0.05mol部以上、0.5mol部以下含有する。
上記組成を満たすことで、焼結性を改善することができる。さらに、上記組成を満たすことで、透磁率μが1.8以上、絶縁抵抗(比抵抗ともいう)logρが10.8以上及び比誘電率εが12以下となり磁気特性が良好となる。さらに、上記組成を満たすことで高周波特性が良好(50GHzで-0.9dB以上、60GHzで-2.5dB以上)となる。
積層型コイル部品の50GHzでの透過係数S21が-0.9dB以上である場合、及び、60GHzでの透過係数S21が-2.5dB以上である場合、例えば、光通信回路内のバイアスティー(Bias-Tee)回路等に好適に使用できる。透過係数S21は、入力信号に対する透過信号の電力の比から求められる。周波数毎の透過係数S21は、例えば、ネットワークアナライザを用いて求められる。透過係数S21は、基本的に無次元量であるが、通常、常用対数をとってdB単位で表される。
【0054】
ライン部の幅は、30μm以上、50μm以下であることが好ましく、より好ましくは30μm以上、40μm以下である。ライン部の線幅が30μmよりも小さい場合、コイルの直流抵抗が大きくなる。ライン部の線幅が50μmよりも大きい場合、コイルの静電容量が大きくなるため、積層型コイル部品の高周波特性が低下する。
【0055】
コイル導体の内径は、50μm以上、100μm以下であることが好ましく、より好ましくは、50μm以上、80μm以下である。
コイル導体の内径が50μmよりも小さい場合、コイルのインダクタンスが低下してしまう。コイル導体の内径が100μmよりも大きい場合、コイルの静電容量が大きくなるため、積層型コイル部品の高周波特性が低下する。
【0056】
積層方向に隣り合うコイル導体間の距離は4μm以上、8μm以下であることが好ましく、より好ましくは、5μm以上、7μm以下である。
【0057】
積層方向から平面視したとき、コイル導体において、ランド部の外周縁は、ライン部の内周縁と接していることが好ましい。これにより、ライン部の外周縁の外側に位置するランド部の面積が充分小さくなり、ランド部に起因する浮遊容量が充分小さくなるため、積層型コイル部品の高周波特性がより向上する。
【0058】
積層方向から平面視したときのランド部の形状は、円形状であってもよいし、多角形状であってもよい。ランド部の形状が多角形状である場合、多角形の面積相当円の直径をランド部の径とする。
【0059】
コイル導体の厚みは特に限定されないが、3μm以上、6μm以下であることが好ましい。
【0060】
コイル導体の積層数は特に限定されないが、40以上、60以下であることが好ましい。
【0061】
本発明の積層型コイル部品は、積層方向から平面視したときに、ランド部が、ライン部の内周縁よりも内側に位置せず、かつ、ライン部と部分的に重なることが好ましい。
ランド部がライン部の内周縁よりも内側に位置すると、インピーダンスが低下してしまうことがある。
また、積層方向から平面視したときに、ランド部の径は、ライン部の線幅の1.05倍以上、1.3倍以下であることが好ましい。
ランド部の径がライン部の線幅の1.05倍未満であると、ランド部とビア導体との接続が不充分となることがある。一方、ランド部の径がライン部の線幅の1.3倍を超えると、ランド部に起因する浮遊容量が大きくなるため、高周波特性が低下することがある。
【0062】
本明細書において、積層方向に隣り合うコイル導体間の距離とは、ビアを介して接続されているコイル導体間の積層方向における最短距離である。従って、積層方向に隣り合うコイル導体間の距離と、浮遊容量を発生させるコイル導体間の距離とは、必ずしも一致しない。
【0063】
本発明の積層型コイル部品において、実装面は特に限定されないが、第1の主面が実装面であることが好ましい。
第1の主面が実装面である場合には、第1の外部電極が、第1の端面の一部と第1の主面の一部とを延伸して覆い、第2の外部電極が、第2の端面の一部と第1の主面の一部とを延伸して覆うことが好ましい。
【0064】
第1の主面が実装面である場合の外部電極の形状の例について、図6図7(a)、図7(b)及び図7(c)を用いて説明する。
図6は、本発明の積層型コイル部品の他の一例を模式的に示す斜視図であり、図7(a)は、図6に示す積層型コイル部品の側面図であり、図7(b)は、図6に示す積層型コイル部品の正面図であり、図7(c)は、図6に示す積層型コイル部品の底面図である。
【0065】
図6図7(a)、図7(b)及び図7(c)に示す積層型コイル部品2は、積層体10と第1の外部電極121と第2の外部電極122とを備えている。積層体10の構成については、図1図2(a)、図2(b)及び図2(c)に示した積層型コイル部品1を構成する積層体10と同じである。
【0066】
第1の外部電極121は、図6及び図7(b)に示すように、積層体10の第1の端面11の一部を覆い、かつ、図6及び図7(c)に示すように、第1の端面11から延伸して第1の主面13の一部を覆って配置されている。図7(b)に示すように、第1の外部電極121は、第1の端面11のうち、第1の主面13と交わる稜線部を含む領域を覆っているが、第1の端面11から延伸して第2の主面14を覆っていてもよい。
【0067】
なお、図7(b)では、積層体10の第1の端面11を覆う部分の第1の外部電極121の高さは一定であるが、積層体10の第1の端面11の一部を覆う限り、第1の外部電極121の形状は特に限定されない。例えば、積層体10の第1の端面11において、第1の外部電極121は、端部から中央部に向かって高くなる山なり形状であってもよい。また、図7(c)では、積層体10の第1の主面13を覆う部分の第1の外部電極121の長さは一定であるが、積層体10の第1の主面13の一部を覆う限り、第1の外部電極121の形状は特に限定されない。例えば、積層体10の第1の主面13において、第1の外部電極121は、端部から中央部に向かって長くなる山なり形状であってもよい。
【0068】
図6及び図7(a)に示すように、第1の外部電極121は、さらに、第1の端面11及び第1の主面13から延伸して第1の側面15の一部及び第2の側面16の一部を覆って配置されていてもよい。この場合、図7(a)に示すように、第1の側面15及び第2の側面16を覆う部分の第1の外部電極121は、いずれも、第1の端面11と交わる稜線部及び第1の主面13と交わる稜線部に対して斜めに形成されていることが好ましい。なお、第1の外部電極121は、第1の側面15の一部及び第2の側面16の一部を覆って配置されていなくてもよい。
【0069】
第2の外部電極122は、積層体10の第2の端面12の一部を覆い、かつ、第2の端面12から延伸して第1の主面13の一部を覆って配置されている。第1の外部電極121と同様、第2の外部電極122は、第2の端面12のうち、第1の主面13と交わる稜線部を含む領域を覆っている。
また、第1の外部電極121と同様に、第2の外部電極122は、第2の端面12から延伸して、第2の主面14の一部、第1の側面15の一部及び第2の側面16の一部を覆っていてもよい。
【0070】
第1の外部電極121と同様、積層体10の第2の端面12の一部を覆う限り、第2の外部電極122の形状は特に限定されない。例えば、積層体10の第2の端面12において、第2の外部電極122は、端部から中央部に向かって高くなる山なり形状であってもよい。また、積層体10の第1の主面13の一部を覆う限り、第2の外部電極122の形状は特に限定されない。例えば、積層体10の第1の主面13において、第2の外部電極122は、端部から中央部に向かって長くなる山なり形状であってもよい。
【0071】
第1の外部電極121と同様、第2の外部電極122は、さらに、第2の端面12及び第1の主面13から延伸して、第2の主面14の一部、第1の側面15の一部及び第2の側面16の一部を覆って配置されていてもよい。この場合、第1の側面15及び第2の側面16を覆う部分の第2の外部電極122は、いずれも、第2の端面12と交わる稜線部及び第1の主面13と交わる稜線部に対して斜めに形成されていることが好ましい。なお、第2の外部電極122は、第2の主面14の一部、第1の側面15の一部及び第2の側面16の一部を覆って配置されていなくてもよい。
【0072】
以上のように第1の外部電極121及び第2の外部電極122が配置されているため、積層型コイル部品2を基板上に実装する場合には、積層体10の第1の主面13が実装面となる。
【0073】
積層体のサイズが0603サイズである場合、積層体の第1の端面を覆う部分の第1の外部電極の高さ(図7(b)中、両矢印Eで示される長さ)は、0.10mm以上、0.20mm以下であることが好ましい。同様に、積層体の第2の端面を覆う部分の第2の外部電極の高さは、0.10mm以上、0.20mm以下であることが好ましい。この場合、外部電極に起因する浮遊容量を低減することができる。
なお、積層体の第1の端面を覆う部分の第1の外部電極の高さ、及び、積層体の第2の端面を覆う部分の第2の外部電極の高さが一定でない場合、最も高い部分の高さが上記範囲にあることが好ましい。
【0074】
図6図7(a)、図7(b)及び図7(c)に示す積層型コイル部品2は、図1図2(a)、図2(b)及び図2(c)に示す積層型コイル部品1と比較して、外部電極が設けられている面積が小さいため、積層型コイル部品1よりも浮遊容量を低減し、高周波特性を向上させることができる。
【0075】
図6図7(a)、図7(b)及び図7(c)に示す外部電極の形状を採用する場合、第1の連結導体及び第2の連結導体は、コイル導体のうち、第1の主面に最も近い部分に接続されていることが好ましい。これにより、第1の端面及び第2の端面を覆う第1の外部電極121及び第2の外部電極122の高さEを低くすることができる。高さEが低くなることにより、外部電極とコイルとの間の浮遊容量を低減し、高周波特性を向上させることができる。
【0076】
積層体のサイズが0402サイズである場合、積層体の第1の端面を覆う部分の第1の外部電極の高さ(図7(b)中、両矢印Eで示される長さ)は、0.06mm以上、0.13mm以下であることが好ましい。同様に、積層体の第2の端面を覆う部分の第2の外部電極の高さは、0.06mm以上、0.13mm以下であることが好ましい。この場合、外部電極に起因する浮遊容量を低減することができる。
【0077】
積層体のサイズが1005サイズである場合、積層体の第1の端面を覆う部分の第1の外部電極の高さ(図7(b)中、両矢印Eで示される長さ)は、0.15mm以上、0.33mm以下であることが好ましい。同様に、積層体の第2の端面を覆う部分の第2の外部電極の高さは、0.15mm以上、0.33mm以下であることが好ましい。この場合、外部電極に起因する浮遊容量を低減することができる。
【0078】
[積層型コイル部品の製造方法]
本発明の積層型コイル部品の製造方法の一例について説明する。
【0079】
最初に、後に絶縁層となるセラミックグリーンシートを作製する。例えば、まず、磁性材料であるフェライト材料、非磁性材料及びホウ素材料に、ポリビニルブチラール系樹脂等の有機バインダと、エタノール、トルエン等の有機溶剤と、分散剤と、等を加えて混練し、スラリー状にする。その後、ドクターブレード法等の方法によって、厚みが12μm程度のセラミックグリーンシートを作製する。
【0080】
フェライト材料としては、例えば、下記の方法で作製されるものが挙げられる。まず、鉄、ニッケル、亜鉛、及び、銅の酸化物原料を混合し、800℃で1時間仮焼成する。その後、得られた仮焼成物をボールミルによって粉砕し、乾燥させることによって、平均粒径が約2μmのNi-Zn-Cu系のフェライト材料(酸化物混合粉末)を作製する。
【0081】
フェライト材料の組成は、Fe:40mоl%以上、49.5mоl%以下、ZnO:2mоl%以上、35mоl%以下、CuO:6mоl%以上、13mоl%以下、NiO:10mol%以上、45mol%以下、残部:微量添加剤(不可避不純物を含む)、であることが好ましい。
【0082】
非磁性材料としては、少なくともSi及びZnを含有した酸化物であることが好ましく、さらにCuを含有した酸化物であることが好ましい。
非磁性材料がSi及びZnを含有する酸化物である場合の組成は、aZnO・SiOで表され、Siに対するZnの含有量がモル比換算で1.8以上、2.2以下である(すなわち、aが1.8以上、2.2以下)ことが好ましい。
非磁性材料がSi、Zn及びCuを含有する酸化物である場合の組成は、aZnO・bCuO・SiOで表され、Siに対するZnとCuの含有量の合計[(Zn+Cu)/Si]がモル比換算で1.8以上、2.2以下(すなわち、a+bが1.8以上、2.2以下)であることが好ましい。
【0083】
ホウ素原料としては、BC等が挙げられる。
は水に溶けてしまうため、生産途中でBが溶出して焼結性が低下するという問題が生じるが、BCではこのような問題が発生しない。
【0084】
このとき、磁性材料と非磁性材料からなる焼結材料が、以下の条件を満たすように、磁性材料、非磁性材料及びホウ素材料の組成及び混合比率を調整する。
Fe:Feに換算して8mol%以上、37mol%以下
Zn:ZnOに換算して30mol%以上、60mol%以下
Cu:CuOに換算して1mol%以上、7mol%以下
Ni:NiOに換算して3mol%以上、17mol%以下
Si:SiOに換算して7mol%以上、28mol%以下
焼結材料の中のSi及びFeを、それぞれSiO及びFeに換算したときのSiOとFeのモル比(SiO/Fe)が、0.2以上、3.5以下。
焼結材料の中のFe、Ni、Zn、Cu及びSiを、それぞれFe、NiO、ZnO、CuO及びSiOに換算したときのFe、NiO、ZnO、CuO及びSiOの合計を100mol部としたときに、焼結材料が、BをB単体に換算して0.05mol部以上、0.5mol部以下含有する。
【0085】
次に、セラミックグリーンシートに、後にコイル導体及びビア導体となる導体パターンを形成する。例えば、まず、セラミックグリーンシートにレーザー加工を施すことによって、直径20μm以上、30μm以下程度のビアホールを形成する。そして、銀ペースト等の導電性ペーストをビアホールに充填し、ビア導体用導体パターンを形成する。更に、セラミックグリーンシートの主面上に、銀ペースト等の導電性ペーストを用いて、スクリーン印刷等の方法によって、厚みが11μm程度のコイル導体用導体パターンを印刷する。コイル導体用導体パターンとしては、例えば、図4及び図5に示すようなコイル導体に相当する導体パターンなどを印刷する。
【0086】
その後、乾燥させることによって、セラミックグリーンシートにコイル導体用導体パターン及びビア導体用導体パターンが形成された構成を有するコイルシートが得られる。コイルシートにおいては、コイル導体用導体パターン及びビア導体用導体パターンが互いに接続されている。
【0087】
また、コイルシートとは別に、セラミックグリーンシートにビア導体用導体パターンが形成された構成を有するビアシートを作製する。ビアシートのビア導体用導体パターンは、後に連結導体を構成するビア導体となる導体パターンである。
【0088】
次に、個片化及び焼成後に実装面と平行なコイル軸を有するコイルが積層体の内部に形成されるように、コイルシートを所定の順序で積層させる。
更に、コイルシートの積層体の上下にビアシートを積層させる。
【0089】
次に、コイルシート及びビアシートの積層体を熱圧着して圧着体を得た後、所定のチップサイズとなるように切断することによって、個片化したチップを得る。個片化したチップに対しては、例えば、バレル研磨を施すことによって、角部及び稜線に丸みを付けてもよい。
【0090】
次に、個片化したチップに対して、所定の温度及び時間で脱バインダ処理及び焼成を施すことによって、内部にコイルを内蔵する積層体(焼成体)を形成する。この際、コイル導体用導体パターン及びビア導体用導体パターンは、各々、焼成後にコイル導体及びビア導体となる。コイルは、コイル導体同士がビア導体を介して接続されてなる。また、積層体の積層方向とコイルのコイル軸方向とは、実装面と平行になる。
【0091】
次に、銀ペースト等の導電性ペーストを所定の厚みに引き伸ばした層に、積層体を垂直に浸漬して焼き付けることによって、積層体の5面(端面、両主面及び両端面)に外部電極の下地電極層を形成する。
また、銀ペースト等の導電性ペーストを所定の厚みに引き伸ばした層に、積層体を斜めに浸漬して焼き付けることによって、積層体の4面(主面、端面、及び、両側面)に外部電極の下地電極層を形成することができる。
【0092】
次に、下地電極層に対して、めっきによって、所定の厚みのニッケル被膜及びスズ被膜を順次形成する。その結果、外部電極が形成される。
【0093】
以上により、本発明の積層型コイル部品が製造される。
【実施例
【0094】
以下、本発明の積層型コイル部品をより具体的に開示した実施例を示す。なお、本発明は、これらの実施例のみに限定されるものではない。
【0095】
[試料の作製]
(試料1)
(1)所定の組成を有するフェライト材料(仮焼粉末)を準備した。
【0096】
(2)上記仮焼粉末(磁性材料)、非磁性材料、ホウ素材料(BC)、有機バインダ(ポリビニルブチラール系樹脂)及び有機溶剤(エタノール及びトルエン)をPSZボールとともにポットミルに入れ、湿式で充分に混合粉砕し、磁性体スラリーを作製した。
なお、仮焼粉末(磁性材料)と非磁性材料の合計重量を100部とし、ホウ素材料であるBCの添加量を0.01部とした。また、非磁性材料と仮焼粉末(磁性材料)との混合比率は、20体積%:80体積%とした。
仮焼粉末(磁性材料)及び非磁性材料の組成は以下の通りである。
(磁性材料)
Fe:Fe換算で48.0mol%、Zn:ZnO換算で22.0mol%、Ni:NiO換算で22.0mol%、Cu:CuO換算で8.0mol%
(非磁性材料)
aZnO・bCuO・SiO(a=2.00、b=0.01)
【0097】
(3)ドクターブレード法により、上記磁性体スラリーをシート状に成形加工し、これを矩形に打ち抜くことにより、厚さ12μmのセラミックグリーンシートを複数枚作製した。
【0098】
(4)Ag粉末と有機ビヒクルを含む内部導体用の導電性ペーストを準備した。
【0099】
(5)ビアシートの作製
セラミックグリーンシートの所定箇所にレーザーを照射することにより、ビアホールを形成した。ビアホールに導電性ペーストを充填してビア導体を形成、その周囲に円形に導電性ペーストをスクリーン印刷することにより、ランド部を形成した。
【0100】
(6)コイルシートの作製
セラミックグリーンシートの所定箇所にビアホールを形成し、導電性ペーストを充填してビア導体を形成した後、ランド部及びライン部からなるコイル導体を印刷し、コイルシートを得た。
【0101】
(7)これらのシートを図4及び図5に示した順序で積層した後、加熱、加圧し、ダイサーで切断して個片化することにより積層成形体を作製した。
【0102】
(8)積層成形体を焼成炉に入れて、大気雰囲気下、500℃の温度で脱バインダ処理を行い、その後、900℃の温度で焼成することにより、積層体(焼成済み)を作製した。
得られた積層体30個の寸法をマイクロメーターを用いて測定し平均値を求めたところ、L=0.60mm、W=0.30mm、T=0.30mmであった。
【0103】
(9)Ag粉末とガラスフリットを含有する外部電極用の導電性ペーストを塗膜形成槽に流し込み、所定厚みの塗膜が形成されるようにした。この塗膜に、積層体の外部電極を形成する箇所を浸漬した。
【0104】
(10)浸漬後、800℃程度の温度で焼き付けることで、外部電極の下地電極を形成した。
【0105】
(11)電解めっきで、下地電極の上にNi皮膜及びSn皮膜を順次形成して、外部電極を形成した。
以上により、図1図2(a)、図2(b)及び図2(c)に示す形状の外部電極、並びに、図3図4及び図5に示すような積層体の内部構造を有する積層型コイル部品(試料1)を作製した。
【0106】
(焼結材料の組成分析)
試料1より絶縁層を切り出して焼結材料の元素分析を行ったところ、Fe:Fe換算で36.8mol%、Zn:ZnO換算で32.5mol%、Ni:NiO換算で16.9mol%、Cu:CuO換算で6.1mol%、Si:SiO換算で7.8mol%であった。
Si(SiO換算)とFe(Fe換算)とのモル比(SiO/Fe)は、0.2であった。
さらに、Fe(Fe換算)、Ni(NiO換算)、Zn(ZnO換算)、Cu(CuO換算)及びSi(SiO換算)の合計を100mol部としたときのBの含有量は、0.078mol部であった。
【0107】
(透磁率μの測定)
インピーダンスアナライザ(アジレント・テクノロジー社製、E4991A)を用いて、100MHz、1Vrms、周囲温度20℃±3℃の条件でインダクタンスを測定し、透磁率μを計算した。5個の試料の測定値の平均より、試料1の透磁率μを求めた。
【0108】
(絶縁抵抗logρの測定)
試料に50Vの直流電圧を印加し、1分後の抵抗値を測定し、この測定値と試料寸法とから、絶縁抵抗logρを計算した。5個の試料の測定値の平均より、試料1の絶縁抵抗logρを求めた。
【0109】
(透過係数S21の測定)
図8は、透過係数S21を測定する方法を模式的に示す図である。
図8に示すように、信号経路61とグランド導体62を設けた測定用治具60に試料(積層型コイル部品1)をはんだ付けした。積層型コイル部品1の第1の外部電極21が信号経路61に接続され、第2の外部電極22がグランド導体62に接続される。
【0110】
ネットワークアナライザ63を用いて、試料への入力信号と透過信号の電力を求め、周波数を変化させて透過係数S21を測定した。ネットワークアナライザ63には、信号経路61の一端と他端が接続される。
測定結果を図9に、60GHzにおける透過係数S21を表2にそれぞれ示す。図9は、実施例で作製した一部の試料の透過係数S21を示すグラフである。なお、透過係数S21は、0dBに近いほど損失が少ないことを示す。
【0111】
(試料2~13)
磁性材料の組成、磁性材料と非磁性材料の混合割合、及びホウ素材料の添加量を変更することで、焼結材料の組成を表1に示すように変更したほかは、試料1と同様の手順で、試料2~13を作製し、透磁率μ及び絶縁抵抗を測定した。結果を表1に示す。なお、試料11及び12では、焼結材料の焼結性が充分ではなかったため、透磁率及び絶縁抵抗を測定していない。
さらに、試料1~4及び13については、透過係数S21も測定した。結果を表2及び図9に示す。
図9は、試料1~4及び13の透過係数S21を示すグラフである。
【0112】
【表1】
【0113】
【表2】
【0114】
表1の結果より、本発明の積層型コイル部品は、100MHzにおける透磁率μが1.8以上、誘電率εが12以下、絶縁抵抗logρが10.8以上であることがわかった。また、表2の結果より、本発明の積層型コイル部品は、50GHzにおける透過係数S21が-0.9dB以上であり、60GHzにおける透過係数S21が-2.5dB以上であり、高周波特性に優れることがわかった。
【符号の説明】
【0115】
1、2 積層型コイル部品
10 積層体
11 第1の端面
12 第2の端面
13 第1の主面
14 第2の主面
15 第1の側面
16 第2の側面
21、121 第1の外部電極
22、122 第2の外部電極
30 コイル
31、31a、31b、31c、31d、35a、35a、35a、35a、35a、35b、35b、35b、35b、35b 絶縁層
32、32a、32b、32c、32d、132 コイル導体
33a、33b、33c、33d、33p、33q ビア導体
36a、36b、36c、36d ライン部
37a、37b、37c、37d ランド部
41 第1の連結導体
42 第2の連結導体
60 測定用治具
61 信号経路
62 グランド導体
63 ネットワークアナライザ
A コイルの中心軸
積層方向に隣り合うコイル導体間の距離
第1の主面を覆う部分の第1の外部電極の長さ
第1の端面を覆う部分の第1の外部電極の高さ
積層体の長さ寸法
積層型コイル部品の長さ寸法
積層方向におけるコイル導体の配置領域の寸法
積層体の高さ寸法
積層型コイル部品の高さ寸法
積層体の幅寸法
積層型コイル部品の幅寸法
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9