(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-20
(45)【発行日】2022-09-29
(54)【発明の名称】音響パラメータ調整装置、音響パラメータ調整方法および音響パラメータ調整プログラム
(51)【国際特許分類】
G10H 1/00 20060101AFI20220921BHJP
G10H 1/053 20060101ALI20220921BHJP
【FI】
G10H1/00 102Z
G10H1/053 Z
(21)【出願番号】P 2019571861
(86)(22)【出願日】2018-02-14
(86)【国際出願番号】 JP2018005094
(87)【国際公開番号】W WO2019159259
(87)【国際公開日】2019-08-22
【審査請求日】2020-07-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000004075
【氏名又は名称】ヤマハ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108523
【氏名又は名称】中川 雅博
(74)【代理人】
【識別番号】100098305
【氏名又は名称】福島 祥人
(74)【代理人】
【識別番号】100125704
【氏名又は名称】坂根 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100187931
【氏名又は名称】澤村 英幸
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 直哉
(72)【発明者】
【氏名】柏崎 紘一
【審査官】菊池 智紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-258564(JP,A)
【文献】特開2003-195868(JP,A)
【文献】特開2002-328676(JP,A)
【文献】特開平03-203789(JP,A)
【文献】特開2013-140234(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G10H 1/00-7/12
G10G 1/00-7/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
3つ以上の複数のパートのうち1つのパートを基準パートに決定する基準パート決定部と、
前記複数のパートのうち前記基準パートを除く他の複数のパートを対象パート群に決定する対象パート群決定部と、
前記基準パートに設定される第1の音響パラメータの値の変化パターンを取得する取得部と、
前記取得された変化パターンに従って前記対象パート群に設定される第2の音響パラメータの値を変化させる変化部と、
前記第2の音響パラメータの選択を受け付ける受付部と、
選択された第2の音響パラメータおよび可否条件に基づいて、前記対象パート群の各パートについて前記選択された第2の音響パラメータの値を変化させるべきか否かを判定する判定部とを備え、
前記変化部は、前記対象パート群のうち、前記第2の音響パラメータの値を変化させるべきであると判定されたパートについて前記変化パターンに従って前記第2の音響パラメータの値を変化させる、音響パラメータ調整装置。
【請求項2】
前記選択された第2の音響パラメータおよび係数設定条件に基づいて、前記第2の音響パラメータの値を変化させるべきであると判定されたパートに、前記第2の音響パラメータの変化の度合いを表す変化係数を設定する設定部をさらに備える、請求項1記載の音響パラメータ調整装置。
【請求項3】
3つ以上の複数のパートのうち1つのパートを基準パートに決定する基準パート決定部と、
前記複数のパートのうち前記基準パートを除く他の複数のパートを対象パート群に決定する対象パート群決定部と、
前記基準パートに設定される第1の音響パラメータの値の変化パターンを取得する取得部と、
前記取得された変化パターンに従って前記対象パート群に設定される第2の音響パラメータの値を変化させる変化部とを備え、
前記基準パート決定部は、前記複数のパートのうち、決定条件を満たすパートを基準パートに決定し、
前記決定条件は、第1の音響パラメータの値がしきい値を境界とする上範囲と下範囲との間で一定時間毎に一定回数以上移行することである、音響パラメータ調整装置。
【請求項4】
3つ以上の複数のパートのうち1つのパートを基準パートに決定する基準パート決定部と、
前記複数のパートのうち前記基準パートを除く他の複数のパートを対象パート群に決定する対象パート群決定部と、
前記基準パートに設定される第1の音響パラメータの値の変化パターンを取得する取得部と、
前記取得された変化パターンに従って前記対象パート群に設定される第2の音響パラメータの値を変化させる変化部とを備え、
前記基準パート決定部は、前記複数のパートのうち、決定条件を満たすパートを基準パートに決定し、
前記決定条件は、アルペジオが設定されていることである、音響パラメータ調整装置。
【請求項5】
前記第1の音響パラメータは音量であり、
前記変化パターンは、音量の時間的変化を表す包絡線である、請求項1~4のいずれか一項に記載の音響パラメータ調整装置。
【請求項6】
音響パラメータ調整装置により、3つ以上の複数のパートのうち1つのパートを基準パートに決定することと、
前記音響パラメータ
調整装置により、前記複数のパートのうち前記基準パートを除く他の複数のパートを対象パート群に決定することと、
前記音響パラメータ調整装置により、前記基準パートに設定される第1の音響パラメータの値の変化パターンを取得することと、
前記音響パラメータ調整装置により、前記取得された変化パターンに従って前記対象パート群に設定される第2の音響パラメータの値を変化させることと、
前記音響パラメータ調整装置により、前記第2の音響パラメータの選択を受け付けることと、
前記音響パラメータ調整装置により、選択された第2の音響パラメータおよび可否条件に基づいて、前記対象パート群の各パートについて前記選択された第2の音響パラメータの値を変化させるべきか否かを判定することとを含み、
前記第2の音響パラメータの値を変化させることは、前記対象パート群のうち、前記第2の音響パラメータの値を変化させるべきであると判定されたパートについて前記変化パターンに従って前記第2の音響パラメータの値を変化させることを含む、音響パラメータ調整方法。
【請求項7】
前記音響パラメータ調整装置により、前記選択された第2の音響パラメータおよび係数設定条件に基づいて、前記第2の音響パラメータの値を変化させるべきであると判定されたパートに、前記第2の音響パラメータの変化の度合いを表す変化係数を設定することをさらに含む、請求項6記載の音響パラメータ調整方法。
【請求項8】
音響パラメータ調整装置により、3つ以上の複数のパートのうち1つのパートを基準パートに決定することと、
前記音響パラメータ
調整装置により、前記複数のパートのうち前記基準パートを除く他の複数のパートを対象パート群に決定することと、
前記音響パラメータ調整装置により、前記基準パートに設定される第1の音響パラメータの値の変化パターンを取得することと、
前記音響パラメータ調整装置により、前記取得された変化パターンに従って前記対象パート群に設定される第2の音響パラメータの値を変化させることとを含み、
前記基準パートを決定することは、前記複数のパートのうち、決定条件を満たすパートを基準パートに決定することを含み、
前記決定条件は、第1の音響パラメータの値がしきい値を境界とする上範囲と下範囲との間で一定時間毎に一定回数以上移行することである、音響パラメータ調整方法。
【請求項9】
音響パラメータ調整装置により、3つ以上の複数のパートのうち1つのパートを基準パートに決定することと、
前記音響パラメータ
調整装置により、前記複数のパートのうち前記基準パートを除く他の複数のパートを対象パート群に決定することと、
前記音響パラメータ調整装置により、前記基準パートに設定される第1の音響パラメータの値の変化パターンを取得することと、
前記音響パラメータ調整装置により、前記取得された変化パターンに従って前記対象パート群に設定される第2の音響パラメータの値を変化させることとを含み、
前記基準パートを決定することは、前記複数のパートのうち、決定条件を満たすパートを基準パートに決定することを含み、
前記決定条件は、アルペジオが設定されていることである、音響パラメータ調整方法。
【請求項10】
前記第1の音響パラメータは音量であり、
前記変化パターンは、音量の時間的変化を表す包絡線である、請求項6~9のいずれか一項に記載の音響パラメータ調整方法。
【請求項11】
3つ以上の複数のパートのうち1つのパートを基準パートに決定することと、
前記複数のパートのうち前記基準パートを除く他の複数のパートを対象パート群に決定することと、
前記基準パートに設定される第1の音響パラメータの値の変化パターンを取得することと、
取得された前記変化パターンに従って前記対象パート群に設定される第2の音響パラメータの値を変化させることと、
前記第2の音響パラメータの選択を受け付けることと、
選択された第2の音響パラメータおよび可否条件に基づいて、前記対象パート群の各パートについて前記選択された第2の音響パラメータの値を変化させるべきか否かを判定することとを、
コンピュータに実行させ、
前記第2の音響パラメータの値を変化させることは、前記対象パート群のうち、前記第2の音響パラメータの値を変化させるべきであると判定されたパートについて前記変化パターンに従って前記第2の音響パラメータの値を変化させることを含む、音響パラメータ調整プログラム。
【請求項12】
前記選択された第2の音響パラメータおよび係数設定条件に基づいて、前記第2の音響パラメータの値を変化させるべきであると判定されたパートに、前記第2の音響パラメータの変化の度合いを表す変化係数を設定することを
前記コンピュータにさらに実行させる、請求項11記載の音響パラメータ調整プログラム。
【請求項13】
3つ以上の複数のパートのうち1つのパートを基準パートに決定することと、
前記複数のパートのうち前記基準パートを除く他の複数のパートを対象パート群に決定することと、
前記基準パートに設定される第1の音響パラメータの値の変化パターンを取得することと、
取得された前記変化パターンに従って前記対象パート群に設定される第2の音響パラメータの値を変化させることとを、
コンピュータに実行させ、
前記基準パートを決定することは、前記複数のパートのうち、決定条件を満たすパートを基準パートに決定することを含み、
前記決定条件は、第1の音響パラメータの値がしきい値を境界とする上範囲と下範囲との間で一定時間毎に一定回数以上移行することである、音響パラメータ調整プログラム。
【請求項14】
3つ以上の複数のパートのうち1つのパートを基準パートに決定することと、
前記複数のパートのうち前記基準パートを除く他の複数のパートを対象パート群に決定することと、
前記基準パートに設定される第1の音響パラメータの値の変化パターンを取得することと、
取得された前記変化パターンに従って前記対象パート群に設定される第2の音響パラメータの値を変化させることとを、
コンピュータに実行させ、
前記基準パートを決定することは、前記複数のパートのうち、決定条件を満たすパートを基準パートに決定することを含み、
前記決定条件は、アルペジオが設定されていることである、音響パラメータ調整プログラム。
【請求項15】
前記第1の音響パラメータは音量であり、
前記変化パターンは、音量の時間的変化を表す包絡線である、請求項11~14のいずれか一項に記載の音響パラメータ調整プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パートに設定される音響パラメータを調整する音響パラメータ調整装置、音響パラメータ調整方法および音響パラメータ調整プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
複数のパートの演奏を行うことが可能な電子音楽装置において、1つのパートの音響パラメータの値の変化に従って他のパートの音響パラメータの値を変化させる技術がある。特許文献1に記載されるコンテンツ制御装置においては、入力された音響波形のエンベロープに基づいてパラメータ値が計算され、そのパラメータ値が音源回路に供給される。これにより、例えば、複数の演奏パートのうちの所定の演奏パートの音響波形のエンベロープに従って、他の演奏パートの楽音の発生態様を自動的に変化させることができる。
【文献】特開2016-81045号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記特許文献1のコンテンツ制御装置において、複数の演奏パートの関係性を適切に設定するために、専門的な知見および煩雑な設定操作が必要となる。熟練を有しないユーザにとって、このような設定を行うことは容易でない。
【0004】
本発明の目的は、容易にかつ効果的に複数のパートの音響パラメータの値を変化させることが可能な音響パラメータ調整装置、音響パラメータ調整方法および音響パラメータ調整プログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る音響パラメータ調整装置は、3つ以上の複数のパートのうち1つのパートを基準パートに決定する基準パート決定部と、複数のパートのうち基準パートを除く他の複数のパートを対象パート群に決定する対象パート群決定部と、基準パートに設定される第1の音響パラメータの値の変化パターンを取得する取得部と、取得された変化パターンに従って対象パート群に設定される第2の音響パラメータの値を変化させる変化部とを備える。
【0006】
第1の音響パラメータは音量であり、変化パターンは、音量の時間的変化を表す包絡線であってもよい。
【0007】
音響パラメータ調整装置は、第2の音響パラメータの選択を受け付ける受付部と、選択された第2の音響パラメータおよび可否条件に基づいて、対象パート群の各パートについて選択された第2の音響パラメータの値を変化させるべきか否かを判定する判定部とをさらに備え、変化部は、対象パート群のうち、第2の音響パラメータの値を変化させるべきであると判定されたパートについて変化パターンに従って第2の音響パラメータの値を変化させてもよい。音響パラメータ調整装置は、選択された第2の音響パラメータおよび係数設定条件に基づいて、第2の音響パラメータの値を変化させるべきであると判定されたパートに、第2の音響パラメータの変化の度合いを表す変化係数を設定する設定部をさらに備えてもよい。
【0008】
基準パート決定部は、複数のパートのうち、決定条件を満たすパートを基準パートに決定してもよい。決定条件は、第1の音響パラメータの値がしきい値を境界とする上範囲と下範囲との間で一定時間毎に一定回数以上移行することであってもよい。決定条件は、アルペジオが設定されていることであってもよい。
【0009】
本発明に係る音響パラメータ調整方法は、3つ以上の複数のパートのうち1つのパートを基準パートに決定することと、複数のパートのうち基準パートを除く他の複数のパートを対象パート群に決定することと、基準パートに設定される第1の音響パラメータの値の変化パターンを取得することと、取得された変化パターンに従って対象パート群に設定される第2の音響パラメータの値を変化させることとを含む。
【0010】
第1の音響パラメータは音量であり、変化パターンは、音量の時間的変化を表す包絡線であってもよい。
【0011】
音響パラメータ調整方法は、第2の音響パラメータの選択を受け付けることと、選択された第2の音響パラメータおよび可否条件に基づいて、対象パート群の各パートについて選択された第2の音響パラメータの値を変化させるべきか否かを判定することとをさらに含み、第2の音響パラメータの値を変化させることは、対象パート群のうち、第2の音響パラメータの値を変化させるべきであると判定されたパートについて変化パターンに従って第2の音響パラメータの値を変化させることを含んでもよい。音響パラメータ調整方法は、選択された第2の音響パラメータおよび係数設定条件に基づいて、第2の音響パラメータの値を変化させるべきであると判定されたパートに、第2の音響パラメータの変化の度合いを表す変化係数を設定することをさらに含んでもよい。
【0012】
基準パートを決定することは、複数のパートのうち、決定条件を満たすパートを基準パートに決定することを含んでもよい。決定条件は、第1の音響パラメータの値がしきい値を境界とする上範囲と下範囲との間で一定時間毎に一定回数以上移行することであってもよい。決定条件は、アルペジオが設定されていることであってもよい。
【0013】
本発明に係る音響パラメータ調整プログラムは、3つ以上の複数のパートのうち1つのパートを基準パートに決定することと、複数のパートのうち基準パートを除く他の複数のパートを対象パート群に決定することと、基準パートに設定される第1の音響パラメータの値の変化パターンを取得することと、取得された変化パターンに従って対象パート群に設定される第2の音響パラメータの値を変化させることとを、コンピュータに実行させるためのものである。
【0014】
第1の音響パラメータは音量であり、変化パターンは、音量の時間的変化を表す包絡線であってもよい。
【0015】
音響パラメータ調整プログラムは、第2の音響パラメータの選択を受け付けることと、選択された第2の音響パラメータおよび可否条件に基づいて、対象パート群の各パートについて選択された第2の音響パラメータの値を変化させるべきか否かを判定することとを、コンピュータにさらに実行させ、第2の音響パラメータの値を変化させることは、対象パート群のうち、第2の音響パラメータの値を変化させるべきであると判定されたパートについて変化パターンに従って第2の音響パラメータの値を変化させることを含んでもよい。音響パラメータ調整プログラムは、選択された第2の音響パラメータおよび係数設定条件に基づいて、第2の音響パラメータの値を変化させるべきであると判定されたパートに、第2の音響パラメータの変化の度合いを表す変化係数を設定することをさらに含んでもよい。
【0016】
基準パートを決定することは、複数のパートのうち、決定条件を満たすパートを基準パートに決定することを含んでもよい。決定条件は、第1の音響パラメータの値がしきい値を境界とする上範囲と下範囲との間で一定時間毎に一定回数以上移行することであってもよい。決定条件は、アルペジオが設定されていることであってもよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、容易にかつ効果的に複数のパートの音響パラメータの値を変化させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】
図1は本発明の一実施の形態に係る電子音楽装置の構成を示すブロック図である。
【
図2】
図2は音響パラメータ調整装置の機能的な構成を示すブロック図である。
【
図3】
図3は基準パートと対象パート群との関係について説明するための図である。
【
図4】
図4は基準パートの音量と対象パート群の第2の音響パラメータとの関係について説明するための図である。
【
図7】
図7は複数の設定記憶領域に記憶される複数のパラメータ制御情報の例を示す図である。
【
図8】
図8は
図2の各機能部による音響パラメータ設定処理の一例を示すフローチャートである。
【
図9】
図9は
図2の各機能部による音響パラメータ制御処理の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態に係る音響パラメータ調整装置、音響パラメータ調整方法および音響パラメータ調整プログラムについて図面を用いて詳細に説明する。
【0020】
[1]電子音楽装置の構成
図1は本発明の一実施の形態に係る電子音楽装置の構成を示すブロック図である。
図1の電子音楽装置1によれば、使用者は演奏を行うことができるとともに楽曲の制作等の音楽制作を行うことができる。
【0021】
電子音楽装置1は、演奏操作部2、入力I/F(インタフェース)3、設定操作部4、検出回路5、ディスプレイ6および表示回路7を備える。演奏操作部2は、例えば、複数の鍵からなる鍵盤を含む。また、演奏操作部2は、ユーザが足で操作するペダル操作子(例えば、エクスプレッションペダル、ペダルスイッチまたはダンパーペダル等)を含んでもよく、回転操作子(例えばロータリエンコーダ)またはスライド操作子(例えばリニアエンコーダ)等を含んでもよい。演奏操作部2は、入力I/F3を介してバス19に接続され、使用者の演奏動作に基づく演奏データが演奏操作部2により入力される。
【0022】
設定操作部4は、オンオフ操作されるスイッチ、回転操作またはスライド操作される可変抵抗器等を含み、検出回路5を介してバス19に接続される。設定操作部4は、音色の切り替え、音量の調整、電源のオンオフおよび各種設定を行うために用いられる。ディスプレイ6は、表示回路7を介してバス19に接続される。ディスプレイ6には、演奏または設定等に関する各種情報が表示される。ディスプレイ6および設定操作部4の少なくとも一部がタッチパネルディスプレイにより構成されてもよい。
【0023】
電子音楽装置1は、RAM(ランダムアクセスメモリ)9、ROM(リードオンリメモリ)10、CPU(中央演算処理装置)11、タイマ12、記憶装置13および通信I/F(インタフェース)14をさらに備える。RAM9、ROM10、CPU11、記憶装置13および通信I/F14はバス19に接続され、タイマ12はCPU11に接続される。外部記憶装置15等の外部機器が通信I/F14を介してバス19に接続されてもよい。RAM9、ROM10およびCPU11がコンピュータを構成する。また、RAM9、ROM10、CPU11および記憶装置13が音響パラメータ調整装置100を構成する。
【0024】
RAM9は、例えば揮発性メモリからなり、CPU11の作業領域として用いられるとともに、各種データを一時的に記憶する。ROM10は、例えば不揮発性メモリからなり、制御プログラムおよび音響パラメータ調整プログラム等のコンピュータプログラムを記憶する。CPU11は、ROM10に記憶された音響パラメータ調整プログラムをRAM9上で実行することにより後述する音響パラメータ設定処理および音響パラメータ制御処理を行う。タイマ12は、現在時刻等の時間情報をCPU11に与える。
【0025】
記憶装置13は、ハードディスク、光学ディスク、磁気ディスクまたはメモリカード等の記憶媒体を含む。外部記憶装置15は、記憶装置13と同様に、ハードディスク、光学ディスク、磁気ディスクまたはメモリカード等の記憶媒体を含む。上記の音響パラメータ調整プログラムが記憶装置13または外部記憶装置15に記憶されてもよい。
【0026】
音響パラメータ調整プログラムは、コンピュータが読み取り可能な記録媒体に格納された形態で提供され、ROM10または記憶装置13にインストールされてもよい。また、通信I/F14が通信網に接続されている場合、通信網に接続されたサーバから配信された音響パラメータ調整プログラムがROM10または記憶装置13にインストールされてもよい。
【0027】
電子音楽装置1は、音源16およびサウンドシステム18をさらに備える。音源16はバス19に接続され、サウンドシステム18は音源16およびバス19に接続される。音源16は、演奏操作部2から入力される演奏データまたは記憶装置13から与えられるシーケンスデータ等に基づいて音響信号を生成するとともにその音響信号に音響効果を付与する。音響効果は、例えば、リバーブ(Reverb)、ディレイ(Delay)、モジュレーション(Modulation)、ディストーション(Distortion)、ブリリアンス(Brilliance)、エンハンス(Enhance)等である。サウンドシステム18は、デジタルアナログ(D/A)変換回路、増幅器およびスピーカを含む。サウンドシステム18は、音源16から与えられる音響信号に基づく楽音を発生する。
【0028】
[2]音響パラメータ調整装置の機能的な構成
図2は、音響パラメータ調整装置100の機能的な構成を示すブロック図である。
図2に示すように、音響パラメータ調整装置100は、基準パート決定部51、対象パート群決定部52、取得部53、受付部54、判定部55、設定部56、変化部57および表示制御部58を含む。
図1のCPU11がROM10または記憶装置13に記憶された音響パラメータ調整プログラムを実行することにより
図2における音響パラメータ調整装置100の各部の機能が実現される。
【0029】
本実施の形態では、3つ以上の複数のパートが設定される。複数のパートは、リズムパートおよびノーマルパートを含む。リズムパートには、例えば、ドラム等のパーカッション楽器の音色が割り当てられる。ノーマルパートは、メロディまたは伴奏を構成する複数の音高を発生可能な楽器(例えば、ピアノ、ギターおよびベース等)の音色が割り当てられる。マイクロフォン等を介して外部から入力された音(入力音)がいずれかのパートに割り当てられてもよい。また、各パートは、手動演奏パートおよび自動演奏パートのいずれかに分類される。手動演奏パートでは、ユーザが
図1の演奏操作部2を操作することによりリアルタイムで演奏を行う。自動演奏パートでは、予め用意されたシーケンスデータに基づいて自動演奏が行われる。シーケンスデータは、例えばMIDI(Musical Instrument Digital Interface)データである。
図1の記憶装置13に、各パートに割り当てられる音色または入力音、ならびに自動演奏パートのシーケンスデータが記憶される。
【0030】
基準パート決定部51は、複数のパートのうち1つのパートを基準パートに決定する。例えば、ユーザが設定操作部4を操作して選択したパートが基準パートに決定される。後述のように、基準パートを決定するための決定条件が定められ、その決定条件に基づいて基準パートが決定されてもよい。対象パート群決定部52は、複数のパートのうち基準パートを除く他の複数のパートを対象パート群に決定する。以下、対象パート群決定部52により決定された対象パート群に含まれる複数のパートの各々を対象候補パートと呼ぶ。
【0031】
取得部53は、基準パートに設定された第1の音響パラメータの値の変化パターンを取得する。本例において、第1の音響パラメータは音量であり、変化パターンは、音量の時間的変化を表すエンベロープ(包絡線)である。例えば、音源16から出力される基準パートの音響信号から音量の時間的変化を表すエンベロープが取得される。
【0032】
受付部54は、対象パート群に設定されるべき第2の音響パラメータの選択を受け付ける。例えば、ユーザが
図1の設定操作部4の操作により第2の音響パラメータを選択する。第2の音響パラメータとして、音量(Volume)、カットオフ(Cutoff)、レゾナンス(Resonance)、音高(Pitch)、定位(Pan)、LFO(Low Frequency Oscillator)等が選択可能である。
【0033】
判定部55は、対象パート群決定部52により決定された対象パート群の各対象候補パートについて、第2の音響パラメータの値を変化させるべきか否かの判定(以下、可否判定と呼ぶ。)を行う。以下、可否判定において第2の音響パラメータの値を変化させるべきであると判定された対象候補パートを変化対象パートと呼ぶ。設定部56は、各変化対象パートについて、第2の音響パラメータの値の変化の度合いを表す変化係数を設定する。本例では、可否判定を行うための可否条件、および変化係数を設定するための係数設定条件が定められる。可否条件および係数設定条件は、一定に固定されていてもよく、ユーザが変更可能であってもよい。判定部55は、可否条件に基づいて可否判定を行い、設定部56は、係数設定条件に基づいて変化係数を設定する。可否条件および係数設定条件の詳細は後述する。
【0034】
変化部57は、取得部53により取得された変化パターンに従って対象パート群の第2の音響パラメータの値を変化させる。本例では、対象パート群のうち変化対象パートの第2の音響パラメータの値が変化される。この場合、変化部57は、
図1の音源
16を制御することによって変化対象パートの第2の音響パラメータの値を制御する。表示制御部58は、基準パートおよび対象パート群を決定するための一括設定画面をディスプレイ6に表示させる。一括設定画面の詳細は後述する。
【0035】
[3]第1および第2の音響パラメータ
図3は、基準パートと対象パート群との関係について説明するための図である。
図3においては、複数のパートを区別するため、各パートにパート番号“N”(Nは、正の整数)が付される。本例では、パート“1”~“4”が設定される。パート“1”~“3”は、ノーマルパートであり、パート“4”はリズムパートである。
図2の基準パート決定部51が、例えば、リズムパートであるパート“4”を基準パートに決定する。基準パートが決定されると、
図2の対象パート群決定部52は、基準パート以外の3つのパート“1”~“3”を対象パート群に決定する。続いて、
図2の判定部55が、対象パート群から変化対象パートを決定する。本例では、対象パート群に含まれるパート“1”~“3”の全てが変化対象
パートに決定される。
【0036】
演奏が開始されると、
図2の取得部53は、基準パートであるパート“4”の第1の音響パラメータの値の変化パターンを取得する。
図2の変化部57は、取得された変化パターンに従ってパート“1”~“3”の第2の音響パラメータの値を変化させる。これにより、パート“4”の第1の音響パラメータの値の変化に連動するように、パート“1”~“3”の第2の音響パラメータの値が変化する。
【0037】
例えば、基準パートの音量の時間的変化を表すエンベロープが変化パターンとして抽出され、そのエンベロープに従って対象パート群の第2の音響パラメータ(例えば音量)の値が変化される。
図4は、基準パートの音量と対象パート群の第2の音響パラメータとの関係について説明するための図である。
図4の上部には基準パートの音響信号の波形(音響波形)SWが表され、中央部には音響波形SWのピーク値のエンベロープECが表され、下部には第2の音響パラメータが表される。
図4において、横軸は時間を表し、縦軸は変位および第2の音響パラメータの値を表す。
図4の上部に示される音響波形SWの振幅が、基準パートの音量を表す。また、
図4の中央部に示されるエンベロープECが、基準パートの音量の時間的変化を表す。このエンベロープECと連動するように、対象パート群の第2の音響パラメータの値が変化される。第2の音響パラメータの値の変化の度合いは、各変化対象パートに設定された変化係数に依存する。
【0038】
ここで、基準パートの第1の音響パラメータの値の変化の態様によっては、第2の音響パラメータの値を効果的に変化させることができない。例えば、第1の音響パラメータの値が変化する頻度が低い場合には、第2の音響パラメータの値の変化の頻度も低くなるので、音楽的な魅力が乏しくなりやすい。
【0039】
そこで、例えばリズムパートであることが基準パートの決定条件として定められてもよい。一般的にリズムパートでは、時間軸上で複数の音が連続的に配置され、かつ各音のアタックおよび減衰が比較的大きい。そのため、リズムパートの音量は、継続的または断続的に変化する。したがって、リズムパートが基準パートに決定された場合には、基準パートの音量の時間的変化に従って対象パート群の第2の音響パラメータの値が効果的に変化される。あるいは、アルペジオが設定されていることが決定条件として定められてもよい。アルペジオが設定されている場合、該当のパートの音高が予め設定されたアルペジオパターンに従って連続的に変化する。この場合も、時間軸上で複数の音が連続的に配置されるので、音量が継続的または断続的に変化しやすい。したがって、アルペジオが設定されているパートが基準パートに決定された場合には、基準パートの音量の時間的変化に従って対象パート群の第2の音響パラメータの値が効果的に変化される。
【0040】
また、第1の音響パラメータの値の変化の度合いが一定の基準を満たすことが決定条件として定められてもよい。例えば、音量が、しきい値を境界とする上範囲と下範囲との間で一定時間毎に一定回数以上移行することが決定条件として定められてもよい。この場合も、基準パートの音量が継続的または断続的に変化するので、基準パートの音量の時間的変化に従って対象パート群の第2の音響パラメータの値が効果的に変化される。
【0041】
本例では、基準パートおよび対象パート群の決定時に、基準パートおよび対象候補パートを一括設定するための一括設定画面が
図1のディスプレイ6に表示される。
図5は、一括設定画面の例を示す図である。
図5の一括設定画面SPは、パート表示領域R1、キット選択領域R2、パラメータ選択領域R3、項目表示領域R4および一括設定ボタンSBを含む。
【0042】
パート表示領域R1には、現時点で基準パートに選択されているパート(パート番号)が表示される。
図5の例において、現時点で選択されているパート“4”は、リズムパートである。キット選択領域R2には、リズムパートの音色として選択可能な複数(本例では、9つ)のリズムキットが表示される。各リズムキットは、複数のリズム楽器の組み合わせである。リズムキット毎に異なるリズムパターンが設定されていてもよい。ユーザは、表示された複数のリズムキットのうち所望のリズムキットを選択する。
【0043】
パラメータ選択領域R3において、第2の音響パラメータを選択することができる。“Destination”は、第2の音響パラメータを表す。
図5の例では、第2の音響パラメータ(Destination)として、音量(Volume)が選択されている。項目表示領域R4には、第2の音響パラメータに関する“Gain”および“Polarity”等の複数の設定項目が表示される。ユーザは、各設定項目の数値または条件を変更することにより、対象パート群の第2の音響パラメータの値の変化の態様を調整することができる。この場合、複数パートの第2の
音響パラメータの値の変化の態様を一括で調整可能であってもよく、パート毎に第2の
音響パラメータの値の変化の態様を個別に調整可能であってもよい。
【0044】
一括設定ボタンSBが操作されると、現時点で選択されているパート(パート表示領域R1に表示されているパート)が基準パートに決定され、それ以外の複数のパートが対象パート群に決定される。また、一括設定ボタンSBが操作されると、パラメータ選択領域R3に表示された第2の音響パラメータの選択が受け付けられる。
【0045】
[4]条件テーブル
可否条件および係数設定条件の具体例を説明する。本例では、可否条件および係数設定条件を定めた条件テーブルが用いられる。
図6は、条件テーブルの一例を示す図である。
図6の条件テーブルでは、第2の音響パラメータとして選択される可能性がある複数の音響パラメータ(以下、選択対象パラメータと呼ぶ。)と、対象候補パートに設定される音源方式との関係が定められる。音源方式としては、PCM(Pulse Code Modulation)音源またはFM(Frequency Modulation)音源が用いられる。音源方式毎に、各選択対象パラメータに対応するパラメータ名および変化係数が定められる。
【0046】
PCM音源については、ノーマルパートとリズムパートとで別個にパラメータ名および変化係数が定められる。PCM音源が用いられる場合、リズムパートでは、“Cutoff”または“Resonance”等の値を変化させても、聴感的にはその変化をほとんど知覚することができない。そこで、リズムパートにおいては、一部の選択対象パラメータの値を変化させるべきでないことが可否条件として定められる。
図6の条件テーブルでは、変化させるべきでない選択対象パラメータに対応するパラメータ名および変化係数が“×”で表される。
【0047】
図2の判定部55は、
図6の条件テーブルに基づいて、各対象候補パートの可否判定を行う。例えば、第2の音響パラメータとして“Cutoff”が設定され、対象候補パートがノーマルパートであり、かつ対象候補パートの音源方式がPCM音源である場合、判定部55は、その対象候補パートの第2の音響パラメータの値を変化させるべきであると判定する。一方、第2の音響パラメータとして“Cutoff”が設定され、対象候補パートがリズムパートであり、かつ対象候補パートの音源方式がPCM音源である場合、判定部55は、その対象候補パートの第2の音響パラメータの値を変化させるべきでないと判定する。これにより、対象パート群から変化対象パートが決定される。
【0048】
図2の設定部56は、
図6の条件テーブルに基づいて、各変化対象パートの変化係数を設定する。例えば、第2の音響パラメータとして“Resonance”が設定され、変化対象パートの音源方式がFM音源である場合、その変化対象パートの変化係数を“66”に設定する。
【0049】
[5]パラメータ制御情報
図1の記憶装置13は、各パートについて複数の設定記憶領域を有する。これら複数の設定記憶領域には、複数のパラメータ制御情報がそれぞれ記憶される。
図7は、複数の設定記憶領域に記憶される複数のパラメータ制御情報の例を示す図である。
図7の例では、1つのパートについて16の設定記憶領域が設けられる。各設定記憶領域には、セット番号“1”~“16”が付される。この場合、1つのパートについて最大で16のパラメータ制御情報を設定することができる。
【0050】
パラメータ制御情報は、基準パラメータ、制御パラメータおよび変化係数を含む。この場合、基準パラメータに基づいて、制御パラメータが制御される。基準パラメータとしては、例えば、
図1の演奏操作部2に含まれるいずれかの操作子に割り当てられたパラメータが設定される。制御パラメータとしては、いずれかの音響パラメータが設定される。変化係数は、基準パラメータの値の変化に対する制御パラメータの値の変化の度合いを表す。
【0051】
図7の例では、セット番号“1”および“2”の設定記憶領域にパラメータ制御情報が記憶されている。具体的には、セット番号“1”の設定記憶領域には、基準パラメータとして“ノブ1”が記憶され、制御パラメータとして“Volume”が記憶され、変化係数として“32”が記憶される。ノブ1は、
図1の演奏操作部2に含まれる回転操作子の1つである。この場合、ノブ1の操作に基づいて、 “Volume”が制御される。セット番号“2”の設定記憶領域には、基準パラメータとして“フットコントローラ1”が記憶され、制御パラメータとして“Cut Off”が記憶され、変化係数として“61”が記憶される。フットコントローラ1は、
図1の演奏操作部2に含まれるペダル操作子の1つである。この場合、フットコントローラ1の操作に基づいて、“Cutoff”が制御される。
【0052】
本実施の形態では、基準パートおよび変化対象パートが決定されると、変化対象パートのいずれかの設定記憶領域に、基準パラメータとして第1の音響パラメータが記憶され、制御パラメータとして第2の音響パラメータが記憶される。これにより、第1の音響パラメータに基づいて、第2の音響パラメータが制御される。
【0053】
[6]音響パラメータ調整方法
本実施の形態に係る音響パラメータ調整方法による音響パラメータ設定処理および音響パラメータ制御処理について説明する。
図8は、
図2の各機能部による音響パラメータ設定処理の一例を示すフローチャートである。
図9は、
図2の各機能部による音響パラメータ制御処理の一例を示すフローチャートである。
図8の音響パラメータ調整処理および
図9の音響パラメータ制御処理は、
図1のCPU11がROM10または記憶装置13に記憶された音響パラメータ調整プログラムを実行することにより行われる。
図8の音響パラメータ調整処理は、電子音楽装置1における演奏前に行われ、
図9の音響パラメータ制御処理は、電子音楽装置1における演奏中に行われる。
【0054】
図8の音響パラメータ設定処理においては、まず、表示制御部58が、
図1のディスプレイ6に一括設定画面SP(
図5参照)を表示させる(ステップS1)。一括設定画面SPのパート表示領域R1には、その時点で基準パートに選択されているパートが表示される。次に、基準パート決定部51が、一括設定画面SP内で一括設定ボタンSBが操作されたか否かを判定する(ステップS2)。一括設定ボタンSBが操作されるまで、基準パート決定部51はステップS2を繰り返す。
【0055】
一括設定ボタンSBが操作されると、基準パート決定部51は、その時点で選択されているパートを基準パートに決定する(ステップS3)。また、対象パート群決定部52が、基準パート以外の全てのパートを対象パート群に決定する(ステップS4)。さらに、受付部54が、第2の音響パラメータの選択を受け付ける(ステップS5)。
【0056】
次に、判定部55が、条件テーブルにより定められた可否条件に基づいて、決定された対象パート群に含まれる各対象候補パートについてステップS5で受け付けられた第2の音響パラメータの値を変化させるべきか否かの可否判定を行う(ステップS6)。これにより、変化対象パートが決定される。
【0057】
次に、設定部56が、決定された各変化対象パートについて、パラメータ制御情報を追加可能であるか否かを判定する(ステップS7)。具体的には、各変化対象パートに対応する複数の設定記憶領域のうち、パラメータ制御情報が記憶されていない設定記憶領域が有るか否かが判定される。いずれかの設定記憶領域にパラメータ制御情報が記憶されていない場合、設定部56は、パラメータ制御情報を追加可能であると判定する。全ての設定記憶領域にパラメータ制御情報が記憶されている場合、設定部56は、パラメータ制御情報を追加することができないと判定する。
【0058】
いずれかの変化対象パートについてパラメータ制御情報を追加することができない場合には、音響パラメータ設定処理が終了される。全ての変化対象パートについてパラメータ制御情報を追加可能である場合、設定部56は、各変化対象パートについて、パラメータ制御情報を記憶させるべき設定記憶領域のセット番号を取得する(ステップS8)。例えば、
図7の例のように、セット番号“1”および“2”の設定記憶領域にパラメータ制御情報が記憶されている場合、次のセット番号“3”が取得される。
【0059】
次に、基準パート決定部51が、全ての変化対象パートに対して第1の音響パラメータを一括設定する(ステップS9)。具体的には、全ての変化対象パートについて、ステップS8で取得されたセット番号の設定記憶領域に、基準パラメータとして、第1の音響パラメータが記憶される。
【0060】
次に、対象パート群決定部52が、全ての変化対象パートに対して第2の音響パラメータを一括設定する(ステップS10)。具体的には、全ての変化対象パートについて、ステップS8で取得されたセット番号の設定記憶領域に、制御パラメータとして、ステップS5で受け付けられた第2の音響パラメータが記憶される。
【0061】
次に、設定部56が、条件テーブルにより定められた係数設定条件に基づいて、全ての変化対象パートに対して変化係数を一括設定する(ステップS11)。具体的には、全ての変化対象パートについて、ステップS10で設定された第2の音響パラメータに対応する変化係数が条件テーブルから取得される。取得された変化係数が、ステップS8で取得されたセット番号の設定記憶領域に記憶される。これにより、音響パラメータ設定処理が終了される。
【0062】
基準パートが適宜変更可能であってもよい。基準パートが変更されると、ステップS3~S11の処理が繰り返される。また、基準パートに選択可能なパートが制限されてもよい。例えばリズムパートのみが基準パートに選択可能であってもよい。また、一括設定画面SPで選択されているパートが基準パートに決定されるのではなく、決定条件に基づいて基準パートが決定されてもよい。また、第2の音響パラメータが適宜変更可能であってもよい。第2の音響パラメータが変更されると、ステップS5~S11の処理が繰り返される。
【0063】
ステップS7でいずれかの変化対象パートについてパラメータ制御情報を追加することができない場合に、音響パラメータ設定処理が終了されるのではなく、パラメータ制御情報を追加可能な変化対象パートに対してパラメータ制御情報(基準パラメータ、制御パラメータおよび変化係数)が設定されてもよい。
【0064】
図9の音響パラメータ制御処理においては、まず、取得部53が、演奏の開始が検出されたか否かを判定する(ステップS21)。例えば、
図1の設定操作部4が開始ボタンを含み、ユーザによって開始ボタンが操作された場合に演奏の開始が検出される。演奏の開始が検出されると、自動演奏パートにおいては、
図1の記憶装置13に記憶されたシーケンスデータに従って自動演奏パートが再生される。それにより、
図1のサウンドシステム18から自動演奏パートの演奏音が出力される。また、手動演奏パートにおいては、ユーザによる演奏操作部2(例えば鍵盤)の操作に基づいてサウンドシステム18から手動演奏パートの演奏音が出力される。
【0065】
取得部53は、演奏の開始が検出されるまでステップS21を繰り返す。演奏の開始が検出されると、取得部53は、基準パートに設定された第1の音響パラメータの値を取得する(ステップS22)。例えば、
図1の音源16から出力される音響信号から基準パートの音量が取得される。
取得部は、第1の音響パラメータの値の変化パターンを取得する(ステップS23)。次に、変化部57が、
取得された変化パターンに従って、各変化対象パートの第2の音響パラメータの値を調整する(ステップS24)。この場合、各変化対象パートに設定された変化係数に基づいて第2の音響パラメータの値が算出される。
【0066】
次に、変化部57は、演奏の停止が検出されたか否かを判定する(ステップS25)。例えば、
図1の設定操作部4が停止ボタンを含み、停止ボタンが操作された場合に演奏の停止が検出される。また、シーケンスデータにおける再生位置が終了位置に到達することによって演奏の停止が検出されてもよい。演奏の停止が検出されると、自動演奏パートの再生が停止される。演奏の停止が検出されない場合、取得部53がステップS22に戻る。演奏の停止が検出されると、音響パラメータ調整処理が終了される。
【0067】
[7]実施の形態の効果
本実施の形態に係る音響パラメータ調整装置100においては、複数のパートのうち1つのパートが基準パートに決定されると、基準パートを除く他の複数のパートが対象パート群に決定される。この場合、基準パートを除く他の複数のパートについて、パート毎に基準パートとの関係を設定する必要がなく、これら複数のパートを一括で対象パート群に設定することができる。また、基準パートの第1の音響パラメータの値の変化パターンに従って、対象パート群の第2の音響パラメータの値を変化させることができる。これにより、容易にかつ効果的に複数のパートの音響パラメータの値を変化させることができる。
【0068】
また、本実施の形態では、選択された第2の音響パラメータおよび可否条件に基づいて、対象パート群に含まれる各対象候補パートについて第2の音響パラメータの値を変化させるべきか否かが判定され、その判定結果に基づいて対象パート群の第2の音響パラメータが制御される。これにより、各対象候補パートの種類および音源形式等に応じて、対象パート群の第2の音響パラメータの値を適切に制御することができる。
【0069】
また、本実施の形態では、第2の音響パラメータの値を変化させるべきであると判定された対象候補パート(変化対象パート)に対して、第2の音響パラメータおよび係数設定条件に基づいて変化係数が設定される。これにより、各変化対象パートの第2の音響パラメータの値をより効果的に変化させることができる。
【0070】
[8]他の実施の形態
上記実施の形態では、対象パート群から可否条件に基づいて変化対象パートが決定され、各変化対象パートの第2の音響パラメータの値が第1の音響パラメータの値の変化パターンに従って変化されるが、本発明はこれに限定されない。例えば、対象パート群に含まれる全ての対象候補パートの第2の音響パラメータの値が第1の音響パラメータの値の変化パターンに従って変化されてもよい。その場合、
図2の判定部55は設けられなくてもよい。また、上記実施の形態では、基準パート以外の全パートが対象パート群に決定されるが、基準パート以外の全パートのうち、一定の条件を満たす複数のパートまたはユーザにより選択された複数のパートが対象パート群に決定されてもよい。
【0071】
第1の音響パラメータは、基準パートの音量に限らない。例えば、基準パートの音高が第1の音響パラメータとして用いられてもよい、また、演奏操作部2のペダル操作子、回転操作子またはスライド操作子に割り当てられたパラメータが第1の音響パラメータとして用いられてもよい。
【0072】
上記実施の形態では、ユーザにより選択された音響パラメータが第2の音響パラメータが選択されるが、予め定められた音響パラメータが第2の音響パラメータに決定されてもよい。その場合、
図2の受付部54は設けられなくてもよい。また、上記実施の形態では、変化対象パート毎に変化係数が設定されるが、全変化対象パートに対して共通の変化係数が設定されてもよい。その場合、
図2の設定部56は設けられなくてもよい。また、上記実施の形態では、一括設定画面SP上で種々の設定が行われるが、一括設定画面SPが表示されることなく他の方法でこれらの設定が行われてもよい。その場合、
図2の表示制御部58は設けられなくてもよい。
【0073】
上記実施の形態では、
図2の各機能部がCPU11等のハードウェアおよび音響パラメータ調整プログラム等のソフトウェアにより実現されるが、これらの機能部が電子回路等のハードウェアにより実現されてもよい。
【0074】
音響パラメータ調整装置100が、パーソナルコンピュータ、スマートフォンまたはタブレット端末等の他の電子機器に適用されてもよい。