(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-20
(45)【発行日】2022-09-29
(54)【発明の名称】遠隔管理システム
(51)【国際特許分類】
A01C 11/02 20060101AFI20220921BHJP
G06Q 50/02 20120101ALI20220921BHJP
【FI】
A01C11/02 303Z
A01C11/02 303C
G06Q50/02
(21)【出願番号】P 2020030337
(22)【出願日】2020-02-26
【審査請求日】2021-09-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000000125
【氏名又は名称】井関農機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100137752
【氏名又は名称】亀井 岳行
(72)【発明者】
【氏名】牧田 圭右
(72)【発明者】
【氏名】細沼 奨
【審査官】磯田 真美
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-029436(JP,A)
【文献】特開2008-001233(JP,A)
【文献】特開2012-044942(JP,A)
【文献】特開2016-095661(JP,A)
【文献】特開2012-237201(JP,A)
【文献】特開2018-201373(JP,A)
【文献】特開2019-118268(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01C 11/00 - 11/04
G06Q 50/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圃場を走行して苗を圃場に移植する単数又は複数の移植機(2)の動作を検出しながら制御する単数又は複数の作業側制御装置(6)と、
前記作業側制御装置(6)と通信接続して情報の送受信を行い、前記移植機(2)の遠隔管理を制御する管理側制御装置(7)と、
を備え、
前記作業側制御装置(6)および管理側制御装置(7)のうち少なくとも作業側制御装置(6)には、前記移植機(2)の走行および苗植付け等の動作に関してそれぞれ検出される検出値が正常であるとみなす規定値の情報が記憶されており、
前記作業側制御装置(6)は、前記規定値から外れた検出値を検出したときに、その外れた検出値の情報を該当する前記移植機(2)の識別情報、位置情報および検出時間情報と関連付けた動作異常情報として前記管理側制御装置(7)に送信する動作を実行し、
前記管理側制御装置(7)は、前記送信される動作異常情報を記憶保存するとともに報知する動作を実行し、
前記移植機(2)は、車体(20)の傾斜する角度を検出する傾斜センサ(68)を有し、
前記作業側制御装置(6)は、前記傾斜センサ(68)で検出された傾斜角度が前記規定値を超えて外れたことを検出したときに、その外れた傾斜角度の情報を記憶保存し、前記傾斜角度の情報を記憶保存した後に該当する前記移植機(2)のエンジン(23)が再始動されたときに、前記傾斜角度の情報を前記動作異常情報として前記管理側制御装置(7)に送信する動作を実行することを特徴とする遠隔管理システム。
【請求項2】
前記移植機(2)は、エンジン(23)の回転および回転数を検出するエンジン回転センサ(67)を有し、
前記作業側制御装置(6)は、エンジン(23)の始動操作の回数が一定の時間内で所定の回数を超えた場合にかかわらず前記エンジン回転センサ(67)を通してエンジン(23)の回転が継続せず始動していないことを検出したときと、前記エンジン(23)が始動した後に前記エンジン回転センサ(67)を通してエンジンの回転数が規定値を超えて外れたことを検出したときに、その各検出された情報を前記動作異常情報として前記管理側制御装置(7)に送信する動作を実行することを特徴とする請求項1に記載の遠隔管理システム。
【請求項3】
前記作業側制御装置(6)と前記管理側制御装置(7)とにそれぞれ通信接続して情報の送受信を行うことが可能でかつ測位機能および計時機能を有する通信端末(8)を備え、
前記移植機(2)は、苗植付けの前後間隔である株間を設定する株間設定部(52)を有し、
前記作業側制御装置(6)は、前記株間設定部(52)の設定値の情報を前記通信端末(8)に送信する動作を実行することが可能であり、
前記通信端末(8)は、前記作業側制御装置(6)に通信接続して前記株間設定部(52)の設定値の情報を収集して記憶保存するとともに、その設定値の情報を該当する前記移植機(2)の識別情報、位置情報および時間情報と関連付けた動作設定情報として前記管理側制御装置(7)に送信する動作を実行し、
前記管理側制御装置(7)は、前記送信される動作設定情報を記憶保存するとともに、その動作設定情報に該当する前記移植機(2)の株間の設定値を使用頻度から順位付けして記憶保存する動作を実行し、
前記通信端末(8)は、前記管理側制御装置(7)に通信接続して所要の前記移植機(
2)に関する使用頻度の高い複数の株間の設定値の情報を受信する動作と、その受信した設定値の情報を該当する前記移植機(2)の前記作業側制御装置(6)に通信接続して送信するとともに当該移植機(2)の前記株間設定部(52)の設定値を前記使用頻度の最も高い株間の設定値に変更する動作が可能であることを特徴とする請求項1又は2に記載の遠隔管理システム。
【請求項4】
前記移植機(2)の株間設定部(52)に株間を増減させる操作手段(52A,52B)を有し、
前記作業側制御装置(6)は、前記操作手段が所定の時間以上操作されると、前記通信端末(8)から送信された使用頻度の高い複数の株間の設定値の情報を表示する動作を実行することを特徴とする請求項
3に記載の遠隔管理システム。
【請求項5】
前記作業側制御装置(6)は、前記使用頻度の高い複数の株間の設定値の情報が表示された後に前記操作手段(52A,52B)が所定の時間内で操作されないときに前記株間設定部(52)の設定値を前記使用頻度の最も高い株間の設定値に変更する動作を実行する一方で、前記操作手段(52A,52B)が所定の時間内で増減させる操作が続けられたときに増減の要求に応じて前記使用頻度の高い複数の株間の設定値を上位側又は下位側の設定値にずらして表示する動作と前記株間設定部(52)の設定値をその表示された設定値から選択した設定値に変更する動作を実行することを特徴とする請求項4に記載の遠隔管理システム。
【請求項6】
前記移植機(2)は、エンジン(23)の回転および回転数を検出するエンジン回転センサ(67)と、車体の傾斜する角度を検出する傾斜センサ(68)と、苗を植え付ける畝(102)の畝面(102a)に接触して高低の変化を検出するとともに畝(102)への到達を検出する畝センサ(69)と、警告音を発生する音発生装置(59)を有し、
前記通信端末(8)は、音を収集して記録する収音装置(91)を有し、
前記作業側制御装置(6)は、エンジン回転センサ(67)又は傾斜センサ(68)が前記規定値を外れた検出値を検出したときと前記畝センサ(69)が走行開始後の所定の時間内に又は所定の距離を走行する前に検出しないときに、前記音発生装置(59)を作動させて警告音を発生させる動作を実行し、
前記通信端末(8)は、前記収音装置(91)が前記警告音を収集して検知したときに、前記管理側制御装置(7)に通信接続してエンジン回転センサ(67)又は傾斜センサ(68)に関する前記動作異常情報の有無の検出と前記畝センサ(69)の非検出情報の有無を検出するとともに前記音発生装置(59)の作動の正誤を判定してその判定結果の情報を記憶保存する動作と、その判定結果の情報を前記管理側制御装置(7)に送信する動作を実行することを特徴とする請求項
3乃至5
のいずれか1項に記載の遠隔管理システム。
【請求項7】
前記移植機(2)の苗植付け動作に関係する部分の少なくとも一部の動きを撮影することが可能であり、前記通信端末(8)に搭載されているか又は前記通信端末(8)と通信接続が可能である撮影装置(92)を有し、
前記通信端末(8)は、前記移植機(2)のうち前記撮影装置(92)で撮影される部分の正常な動きの映像が記憶保存されており、また、前記撮影装置(92)で撮影された映像を前記正常な動きの映像と比較して相違する部分の有無を判定してその判定結果の情報を記憶保存する動作と、その判定結果の情報を前記管理側制御装置(7)に送信する動作を実行することを特徴とする請求項
3乃至6のいずれか1項に記載の遠隔管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、野菜等の苗を圃場に移植する移植機について遠隔管理する遠隔管理システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、移植機としては、走行車体の後部に苗トレイの載置台を設け、その苗トレイから苗取り装置で苗を取り出して植付けホッパ-に投入し、所定の軌跡を描きながら植付けホッパ-が上下動することで苗を植え付け、鎮圧輪で植え付けられた苗の周囲の土を押し固める苗移植機が知られている(特許文献1参照)。
【0003】
この移植機では、植付けホッパ-による苗の植え付けが走行車体の前進により一定の間隔をあけて行われる。また、このときの植付け間隔は、走行車体の後部に設けられる操作部の株間増減ボタンの操作により、植付けクラッチを所定間隔毎に入切するソレノイドの作動タイミングを変更することで調節することが可能であり、作業者が移植作業の前に設定するようになっている。
また、この移植機は、その植え付け間隔に関する制御などを行う制御装置が搭載されている。この制御装置は、畝の高さを検知する畝高さセンサとも接続されており、畝高さセンサの検出に合わせて走行車体の車高を増減させ、苗の植付け深さを設定した通りに保つ機能も有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記移植機における制御装置は、その移植機単体の制御に用いられているにすぎず、例えば、その移植作業中に植付けホッパ-や苗取り装置の挙動に異常が発生していても、その異常の発生に関する報知や管理をするものではなかった。
このため、移植機の操作者がその異常に気づかずに走行車体を前進させると、苗の植え付けが行われない箇所や、苗が設定した間隔や深さで植え付けられていない箇所が生じてしまうことがあり、この結果、その各箇所における苗の植え直しをするための作業に余分な時間と労力を費やすことになるという問題がある。
【0006】
本発明の課題は、移植機について遠隔管理する者が移植機に異常が発生したことを早期に知ることができる遠隔管理システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明の上記課題は、以下の手段により解決される。
すなわち、請求項1に係る発明は、圃場を走行して苗を圃場に移植する単数又は複数の移植機(2)の動作を検出しながら制御する単数又は複数の作業側制御装置(6)と、前記作業側制御装置(6)と通信接続して情報の送受信を行い、前記移植機(2)の遠隔管理を制御する管理側制御装置(7)と、を備え、
前記作業側制御装置(6)および管理側制御装置(7)のうち少なくとも作業側制御装置(6)には、前記移植機(2)の走行および苗植付け等の動作に関してそれぞれ検出される検出値が正常であるとみなす規定値の情報が記憶されており、
前記作業側制御装置(6)は、前記規定値から外れた検出値を検出したときに、その外れた検出値の情報を該当する前記移植機(2)の識別情報、位置情報および検出時間情報と関連付けた動作異常情報として前記管理側制御装置(7)に送信する動作を実行し、
前記管理側制御装置(7)は、前記送信される動作異常情報を記憶保存するとともに報知する動作を実行し、
前記移植機(2)は、車体(20)の傾斜する角度を検出する傾斜センサ(68)を有し、
前記作業側制御装置(6)は、前記傾斜センサ(68)で検出された傾斜角度が前記規定値を超えて外れたことを検出したときに、その外れた傾斜角度の情報を記憶保存し、前記傾斜角度の情報を記憶保存した後に該当する前記移植機(2)のエンジン(23)が再始動されたときに、前記傾斜角度の情報を前記動作異常情報として前記管理側制御装置(7)に送信する動作を実行することを特徴とする遠隔管理システムである。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の遠隔管理システムにおいて、前記移植機(2)は、エンジンの回転および回転数を検出するエンジン回転センサ(67)を有し、
前記作業側制御装置(6)は、エンジン(23)の始動操作の回数が一定の時間内で所定の回数を超えた場合にかかわらず前記エンジン回転センサ(67)を通してエンジン(23)の回転が継続せず始動していないことを検出したときと、前記エンジン(23)が始動した後に前記エンジン回転センサ(67)を通してエンジンの回転数が規定値を超えて外れたことを検出したときに、その各検出された情報を前記動作異常情報として前記管理側制御装置(7)に送信する動作を実行することを特徴とする遠隔管理システムである。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の遠隔管理システムにおいて、前記作業側制御装置(6)と前記管理側制御装置(7)とにそれぞれ通信接続して情報の送受信を行うことが可能でかつ測位機能および計時機能を有する通信端末(8)を備え、
前記移植機(2)は、苗植付けの前後間隔である株間を設定する株間設定部(52)を有し、
前記作業側制御装置(6)は、前記株間設定部(52)の設定値の情報を前記通信端末(8)に送信する動作を実行することが可能であり、
前記通信端末(8)は、前記作業側制御装置(6)に通信接続して前記株間設定部(52)の設定値の情報を収集して記憶保存するとともに、その設定値の情報を該当する前記移植機(2)の識別情報、位置情報および時間情報と関連付けた動作設定情報として前記管理側制御装置(7)に送信する動作を実行し、
前記管理側制御装置(7)は、前記送信される動作設定情報を記憶保存するとともに、その動作設定情報に該当する前記移植機(2)の株間の設定値を使用頻度から順位付けして記憶保存する動作を実行し、
前記通信端末(8)は、前記管理側制御装置(7)に通信接続して所要の前記移植機(2)に関する使用頻度の高い複数の株間の設定値の情報を受信する動作と、その受信した設定値の情報を該当する前記移植機(2)の前記作業側制御装置(6)に通信接続して送信するとともに当該移植機(2)の前記株間設定部(52)の設定値を前記使用頻度の最も高い株間の設定値に変更する動作が可能であることを特徴とする遠隔管理システムである。
【0011】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の遠隔管理システムにおいて、前記移植機(2)の株間設定部(52)に株間を増減させる操作手段(52A,52B)を有し、
前記作業側制御装置(6)は、前記操作手段が所定の時間以上操作されると、前記通信端末(8)から送信された使用頻度の高い複数の株間の設定値の情報を表示する動作を実行することを特徴とする遠隔管理システムである。
【0012】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の遠隔管理システムにおいて、前記作業側制御装置(6)は、前記使用頻度の高い複数の株間の設定値の情報が表示された後に前記操
作手段(52A,52B)が所定の時間内で操作されないときに前記株間設定部(52)の設定値を前記使用頻度の最も高い株間の設定値に変更する動作を実行する一方で、前記操作手段(52A,52B)が所定の時間内で増減させる操作が続けられたときに増減の要求に応じて前記使用頻度の高い複数の株間の設定値を上位側又は下位側の設定値にずらして表示する動作と前記株間設定部(52)の設定値をその表示された設定値から選択した設定値に変更する動作を実行することを特徴とする遠隔管理システムである。
【0013】
請求項6に記載の発明は、請求項3乃至5のいずれか1項に記載の遠隔管理システムにおいて、前記移植機(2)は、エンジン(23)の回転および回転数を検出するエンジン回転センサ(67)と、車体の傾斜する角度を検出する傾斜センサ(68)と、苗を植え付ける畝(102)の畝面(102a)に接触して高低の変化を検出するとともに畝(102)への到達を検出する畝センサ(69)と、警告音を発生する音発生装置(59)を有し、
前記通信端末(8)は、音を収集して記録する収音装置(91)を有し、
前記作業側制御装置(6)は、エンジン回転センサ(67)又は傾斜センサ(68)が前記規定値を外れた検出値を検出したときと前記畝センサ(69)が走行開始後の所定の時間内に又は所定の距離を走行する前に検出しないときに、前記音発生装置(59)を作動させて警告音を発生させる動作を実行し、
前記通信端末(8)は、前記収音装置(91)が前記警告音を収集して検知したときに、前記管理側制御装置(7)に通信接続してエンジン回転センサ(67)又は傾斜センサ(68)に関する前記動作異常情報の有無の検出と前記畝センサ(69)の非検出情報の有無を検出するとともに前記音発生装置(59)の作動の正誤を判定してその判定結果の情報を記憶保存する動作と、その判定結果の情報を前記管理側制御装置(7)に送信する動作を実行することを特徴とする遠隔管理システムである。
【0014】
請求項7に記載の発明は、請求項3乃至6のいずれか1項に記載の遠隔管理システムにおいて、前記移植機(2)の苗植付け動作に関係する部分の少なくとも一部の動きを撮影することが可能であり、前記通信端末(8)に搭載されているか又は前記通信端末(8)と通信接続が可能である撮影装置(92)を有し、
前記通信端末(8)は、前記移植機(2)のうち前記撮影装置(92)で撮影される部分の正常な動きの映像が記憶保存されており、また、前記撮影装置(92)で撮影された映像を前記正常な動きの映像と比較して相違する部分の有無を判定してその判定結果の情報を記憶保存する動作と、その判定結果の情報を前記管理側制御装置(7)に送信する動作を実行することを特徴とする遠隔管理システムである。
【発明の効果】
【0015】
請求項1に記載の発明によれば、移植機(2)の動作を検出しながら制御する作業側制御装置(6)が規定値から外れた検出値を検出するとその外れた検出値の情報を動作異常情報として管理側制御装置(7)に送信し、また管理側制御装置(7)がその送信される動作異常情報を記憶保存するとともに報知するので、移植機について遠隔管理する者が移植機に異常が発生したことを早期に知ることができる。また、請求項1に記載の発明によれば、遠隔管理者が移植機の転倒した可能性又は転倒するおそれがある可能性を早期に知ることができる。
【0016】
請求項2に記載の発明によれば、請求項1に記載の発明の効果に加えて、遠隔管理者がエンジンの故障が発生した可能性を早期に知ることができる。
【0018】
請求項3に記載の発明によれば、請求項1又は2に記載の発明の効果に加えて、移植機(2)の株間の設定値が管理側制御装置(7)で順位付けされた使用頻度の最も高い株間の設定値に通信端末(8)を介して変更されるので、株間設定に要する時間の短縮を図ることができる。また、通信端末に測位機能や計時機能があるので、作業側制御装置に測位機能や計時機能を設ける必要がなくなり、その分だけ作業側制御装置の構成の簡略化やコストの軽減化を図ることができる。
【0019】
請求項4に記載の発明によれば、請求項3に記載の発明の効果に加えて、株間設定部(52)の操作手段(52A,52B)を所定時間以上操作することで使用頻度の高い複数の株間の設定値に関する情報が表示されるので、作業側制御装置に使用頻度の高い株間の設定値を呼び出して表示させるための専用の操作手段を別途設ける必要がなくなり、その分だけ作業側制御装置の構成の簡略化やコストの軽減化を図ることができる。
【0020】
請求項5に記載の発明によれば、請求項4に記載の発明の効果に加えて、使用頻度の高い複数の株間の設定値に関する情報が表示された後に操作手段(52A,52B)が所定の時間内で操作されなければ株間設定部(52)の設定値が使用頻度の最も高い株間の設定値に自動で設定されるので、株間設定に要する時間の短縮が図れて使い勝手がよい。また、その表示後に操作手段(52A,52B)が所定の時間内で増減させるよう操作されると、使用頻度の高い複数の株間の設定値が上位側又は下位側の設定値にずらして表示されることや表示中の設定値の選択による設定変更を行うことが可能になるので、この場合も使い勝手がよい。
【0021】
請求項6に記載の発明によれば、請求項3乃至5のいずれか1項に記載の発明の効果に加えて、音発生装置が作動して警告音が発生したときに、その音発生装置の誤作動の有無に関する判定結果を遠隔管理者が早期に知ることができる。
【0022】
請求項7に記載の発明によれば、請求項3乃至6のいずれか1項に記載の発明の効果に加えて、遠隔管理者が移植機の稼動中の映像結果から異常の発生を早期に知ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】実施の形態1等に係る遠隔管理システムの概要図である。
【
図2】
図1の遠隔管理システムの構成を示す機能ブロック図である。
【
図3】遠隔管理システムに適用される移植機の一例を示す概略側面図である。
【
図5】(A)は
図3の移植機における苗供給装置を示す概略斜視図、(B)はその移植機における苗供給装置および植付け装置を示す概略側面図である。
【
図6】植付け装置と植付け駆動装置を示す概略側面図である。
【
図7】作業用制御装置の動作を示すフローチャート図である。
【
図8】管理側制御装置の動作を示すフローチャート図である。
【
図9】実施の形態2に係る遠隔管理システムの構成を示す機能ブロック図である。
【
図10】移植機の他の構成例を示す概略平面図である。
【
図11】(A)は
図10における水タンクの一構成例を示す概略断面図、(B)は
図10における水タンクの別の構成例を示す概略断面図である。
【
図12】移植機のさらに別の構成例(その一部)を示す概略側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0025】
本実施の形態に係る遠隔管理システム1は、
図1に示されるように、苗を圃場に移植する移植機2の動作を検出しながら制御する作業側制御装置6と、移植機2の遠隔管理を制御する管理側制御装置7とを備えている。
管理側制御装置7は、移植機2の作業側制御装置6とインターネット通信等の情報通信手段200を介して通信接続して情報の送受信を行うようになっている。この遠隔管理システム1に適用される移植機2は、通常、複数であるが、単数であってもかまわない。また移植機2は、例えば遠隔管理に関する契約を結んでいるもの等が含まれる。
【0026】
遠隔管理システム1に適用される移植機2は、
図3、
図4等に示されるように、圃場100を走行することが可能な走行車体20と、植え付けの対象となる苗11を供給する苗供給装置30と、苗供給装置30から供給される苗を圃場100に植え付ける植付け装置40、作業側制御装置6等を備えている。以下では、移植機2の構成について1台の移植機2(A)を代表して説明するが、移植機2が複数ある場合の他の移植機2(B)も同様の構成であってもあるいは一部異なる構成であってもよい。
【0027】
走行車体20は、図示しない車体フレームに左右(L,R)一対の前輪21および後輪22が設けられており、その車体フレームに搭載されているエンジン23の回転動力が動力伝動装置24を介して所要の回転方向で後輪22に伝達されることにより前進走行又は後進走行する。この走行車体20は、苗を植え付ける畝102が形成された圃場100でも、その左右一対の前輪21および後輪22によって畝102を跨いだ状態で走行することができるようになっている。
図3等における符号101は、圃場100のうち前輪21や後輪22が転動して走行する走行面を示している。
【0028】
また、走行車体20の後部には、移植機2の操作者が手をそえて移植機2を操縦するための操縦ハンドル25が設けられている。
操縦ハンドル25には、例えば、エンジン23からの回転動力を入切して走行と停止を切り替える走行クラッチレバー26a、走行車体20を昇降動させる昇降用油圧シリンダ27を作動させる昇降操作レバー26b、エンジン23の回転数の増減を調整するスロットルレバー26c、後述する操作部50等が配置されている。
【0029】
走行クラッチレバー26aと昇降操作レバー26bは、その各レバーの操作位置が走行クラッチセンサ207又は昇降操作センサで検出され、その検出された各情報が後述する制御部61(
図2)にそれぞれ送信される。また、走行クラッチレバー26aには、入り切りの状態を自動で切り替える走行クラッチ切替え装置57が設けられている。走行クラッチ切替え装置57は、例えばアクチュエータ、ソレノイド等で構成される。
【0030】
エンジン23は、例えばリコイルスタータ23aを手動で操作することで始動するものであり、そのエンジン23の回転やその回転数がエンジン回転センサ67で検出され、その検出された情報が後述の制御部61(
図2)に送信される。エンジン23の回転数については、スロットルレバー26cの操作に応じて出力が増減する図示しないスロットルモータの作動により調整される。
【0031】
移植機2には、左右一対の後輪22を走行車体20に対して上下動させることで走行車体20の姿勢および車高を制御する機体制御機構が設けられている。
機体制御機構は、後輪22の上げ下げによって走行車体20を昇降させる昇降用油圧シリンダ27と、走行車体を左右に傾斜させる水平用油圧シリンダ28(
図4)とで構成されており、各油圧シリンダ27,28を作動させることで走行車体20の姿勢および車高を調整する仕組みになっている。走行車体20には、その傾斜する角度を検出する傾斜センサ68が設けられており、その検出された情報が後述の制御部61(
図2)に送信される。
【0032】
次に、苗供給装置30は、植え付け対象になる複数の苗が保持された苗トレイ31を支持するトレイ搬送路33を有した苗置台32と、苗トレイ31をトレイ搬送路33に沿って縦方向に間欠的に送るトレイ縦送り装置35と、苗置台32のトレイ搬送路33を左右の方向に往復移動させるトレイ搬送路移動装置36等で構成されている。
【0033】
苗トレイ31は、
図5(A)に示されるように、複数の育苗ポット31aを縦横に格子状に並べるよう連続して設けたものであり、可撓性を有している。苗は、育苗ポット31aに収容されている。
苗置台32は、トレイ搬送路33が前下がりに傾斜した状態で設けられている。トレイ搬送路33には、苗トレイ31の有無を検出するトレイセンサ33a、苗トレイ31の縦方向への移動を押さえて案内する図示しない押え案内部材等が配置されている。
トレイ縦送り装置35は、
図5(B)に示されるように、苗置台32上に置かれる苗トレイ31の裏側において育苗ポット31aどうし間の隙間(溝部)にロッド先端部を差し込んで係合させながら苗トレイ31を下方に移動させるトレイ送りロッド35bを有している。
【0034】
トレイ搬送路移動装置36は、トレイ搬送路33の裏側(下方)に配置されており、苗置台32を左右方向に往復移動させるリードカム軸36bと、苗置台32の左右方向への移動を案内するガイドレール36cと、ガイドレール36c等を左右の両端で保持する左右両壁部36dを有している。リードカム軸36bは、植付け作業中にはエンジン23の駆動力を得ることにより所定の方向に回転駆動し、また植付け作業停止中には駆動モータ36aの駆動力を得ることにより所定の方向に回転駆動する。
【0035】
この苗供給装置30は、以下の横送り動作と縦送り動作をその順番で繰り返して行うことにより、苗の供給を行うようになっている。
すなわち、横送り動作は、苗トレイ31の横方向一列分の育苗ポット31aの苗が植付け装置40の後述する取出し装置41により順次取り出されるよう、トレイ搬送路移動装置36により苗置台32のトレイ搬送路33を左右の横方向に間欠的に送る動作である。また縦送り動作は、上記横送り動作と苗の取り出しにより苗トレイ31における横方向一列分のすべての育苗ポット31aからの苗の取り出しが完了した後に、トレイ縦送り装置35のトレイ送りロッド35bにより苗置台32のトレイ搬送路33上の苗トレイ31をその育苗ポット31aの横方向一列分だけ下方向に送る動作である。
【0036】
次に、植付け装置40は、苗供給装置30における苗トレイ31の育苗ポット31a内にある苗を取り出す取出し装置41と、取出し装置41で取り出された苗を圃場100に植え付ける植付け具44と、取出し装置41を駆動させる取出し駆動機構46と、植付け具44を駆動させる植付け駆動機構47と、植付け具44により苗が植え付けられた畝102の表面の土壌を鎮圧する鎮圧輪408等で構成されている。
【0037】
取出し装置41は、
図5(B)に示されるように、苗置台32の下端部に対向する位置に配置されており、苗供給装置30により左右の横方向に移動する苗トレイ31の各育苗ポット31aからそれぞれ苗を順次取り出して植付け具44に供給するよう作動する取出し部材42を有している。取出し装置41は、例えば左右の横方向に所定の間隔をあけて2つ配置されているが、その数は移植機2の苗を植える条の数によって決められる。
取出し部材42は、その先端の取出し爪42aが破線で例示する所定の軌跡Kを描くように作動することで、育苗ポット31aから苗を取り出した後にその苗を植付け具44に落下させて供給する。軌跡Kは、先端の取出し爪42aが育苗ポット31aの内部と植付け具44の上方との間を往復して移動するように動くパターンである。
【0038】
植付け具44は、
図3や
図5(B)等に示されるように、取出し装置41の下方側の位置に配置されており、閉じた状態で下端部が尖がった左右一対の嘴状のホッパー45を有している。ホッパー45は、
図3に示されるように、取出し装置41と圃場100の畝102との間で所定の軌跡T1を描くよう上下方向に移動するよう揺動アーム44aに支持されている。植付け具44は、取出し装置41の場合と同様に、左右の横方向に取出し装置41と対応した間隔をあけて2つ配置されているが、その数は移植機2の苗を植える条の数によって決められる。
ホッパー45は、その上端部が取出し装置41に接近する位置に移動したときに、閉じた状態になって取出し装置41から落下して供給される苗をホッパー内に収容するよう作動する。またホッパー45は、その下端部が圃場100の畝102に接近して差し込まれたときに、その下端部が左右に離間するよう開いた状態になって苗を畝102に植え付けるよう作動する。
【0039】
取出し駆動機構46は、動力伝動装置24を介して伝動されるエンジン23の回転動力の一部を伝達ベルト46aにより取出し装置41に伝達させて取出し部材42を作動させる機構の動力として使用している。植付け駆動機構47は、取出し駆動機構46に伝動されたエンジン23の回転動力の一部を植付け具44に伝動させて揺動アーム44aやホッパー45を作動させる機構の動力として使用している。
【0040】
本実施の形態における植付け駆動機構47は、ホッパー45を上下動させる揺動アーム44a等を含む機構への回転動力の伝達を入り切りするための植付けクラッチ48を備えている。この植付け駆動機構47では、植付けクラッチ48の「入り(接続)」の状態と「切り(接続遮断)」の状態について、植付けクラッチ48を入りの状態と切りの状態にするためのストッパーをソレノイド49の作動により動かすことで切り替えるよう構成されている。
また、この植付け駆動機構47には、植付けクラッチ48の入り切りの状態を自動で切り替える植付けクラッチ切替え装置58が設けられている。植付けクラッチ切替え装置58は、例えばアクチュエータ、ソレノイド等で構成される。
【0041】
また、本実施の形態では、例えば、ソレノイド49に通電がされてその作用ロッドを引っ込めた状態にしたときに、ストッパーが植付けクラッチ48を可動状態にするよう動かされて、植付けクラッチ48が「入り」の状態になるよう構成されている。これにより、植付け装置40では、植付け駆動機構47への回転動力の伝達が実行されて揺動アーム44a等を含む機構によるホッパー45の上下動が可能になり、植付け動作が行われるようになる。
反対に、ソレノイド49への通電が停止されてその作用ロッドを突出させた状態にしたときには、ストッパーが植付けクラッチ48を停止状態にするように動かされて、植付けクラッチ48が「切り」の状態になるよう構成されている。これにより、植付け装置40では、植付け駆動機構47への回転動力の伝達が遮断されて揺動アーム44a等を含む機構によるホッパー45の上下動が不可になり、植付け動作が行われないようになる。
【0042】
また、移植機2には、
図3に示されるように、苗を植え付ける畝102の表面(畝面102a)に接触させる接触検出板29が設けられている。移植機2では、接触検出板29の畝面102aとの接触の有無の情報や、接触検出板29の畝面102aの高低変化に伴う上下回動の情報や、その接触の有無が生じる位置の情報を得ることにより、植付け作業を開始する情報として用いることや、植付け深さの調節を行うようにしている。
【0043】
また、移植機2では、接触検出板29が畝面102aに接触して動くことにより入り状態になる畝センサ69が設けられている。畝センサ69は、接触検出板29が畝面102aに接触して上方に回動すると入り状態になり、しかる後、接触検出板29が畝面102aから離間して下方に回動すると切り状態になり、これにより移植機2が畝102の端部に到達したことを検出する。畝センサ69の入り切り状態の情報は、後述の制御部61(
図2)に送信される。
なお移植機2では、畝102の端部ではない場所において畝102の一部が何らかの影響で崩れて接触検出板29が下方に向かって十分な範囲に回動し得る窪み(穴を含む)がある場合、畝センサ69が切りの状態になり、後述するブザー59等の報知装置が作動する。これにより、作業者に苗の植付け作業に支障があることを報知する。
【0044】
また、移植機2では、植付け装置40による植え付け動作が間欠的に行われ、特に植付け具44のホッパー45および取出し装置41の動作間隔が苗を植え付けるときの株間に反映される。
【0045】
また、移植機2では、
図4に示されるように、操縦ハンドル25の間に操作部50が設けられている。操作部50には、苗の植付け作業を開始するための植付け開始ボタン51や、株間設定部の一例である株間設定ボタン52や、所要の情報が表示される表示部53、選択・決定ボタン54等が設けられている。植付け開始ボタン51や株間設定ボタン52の入り切り状態の情報は、後述の制御部61(
図2)に送信される。また、操作部50には、必要なときに警告音を発生する音発生装置の一例としてのブザー59(
図2)が設けられている。
【0046】
上記株間設定ボタン52は、株間を所定の間隔(例えば1cm間隔)で増減させる増加ボタン52Aと減少ボタン52Bとで構成されている。この株間設定ボタン52は、植付け駆動機構47におけるソレノイド49(
図6)の作動タイミングを増減するようになっている。これにより、植付け装置40における植付けクラッチ48の入り切りの間隔が、ソレノイド49の作動タイミングに応じて(ストッパーを介して)変更され、最終的に植付け具44のホッパー45の動作間隔が変更されることで株間が調整される。
【0047】
そして、作業側制御装置6は、移植機2の各動作について検出しながら制御するコントローラであり、
図2に示されるように、制御部61、記憶部62、入出力部63、通信部64、計時部65、測位部66等を備えている。
【0048】
この作業側制御装置6は、遠隔管理される移植機2が複数(例えば2台の移植機2A,2B)ある場合には、その各移植機(2A,2B)の作業側制御装置6(6A,6B)としてそれぞれ装備される(
図1)。また、作業側制御装置6は、移植機2の所要の場所(例えば操作部50)に配置されている。
【0049】
制御部61は、演算処理部、記憶素子等で構成されており、記憶部62に格納されている移植機2の動作に関する制御プログラムやデータ等に基づいて所要の演算処理をするとともに所要の制御対象に対して制御信号や情報を送信する。
記憶部62は、制御プログラム、各種データを記憶して保存する。入出力部63は、作業側制御装置6内の各部との間における必要な信号や情報の入出力を行うとともに、移植機2にある各種センサ、スイッチ等の検出手段との間における必要な情報の入出力を行う。通信部64は、所要の情報通信手段200を介して管理側制御装置7の間において必要な情報の送受信を行う。
計時部65は、時刻の記録や、経過時間の計測を行う。測位部66は、全地球測位システム、衛星測位システム等の測位システムを利用して移植機2の走行車体20の位置情報を計測する。
【0050】
作業側制御装置6は、
図2に示されるように、移植機2におけるエンジン制御部におけるエンジン回転センサ67や、走行制御部における走行クラッチセンサ207、傾斜センサ68や、植付け制御部における畝センサ69や、操作部50における植付け開始ボタン51、株間増減ボタン52A,52B、選択・決定ボタン54等から、検出した情報や入り切り状態の情報が送信されて入力される。作業側制御装置6は、操作部50における表示部53や、走行クラッチ切替え装置57や、植付けクラッチ切替え装置58等に対して必要な表示情報や制御信号を送信する。
【0051】
一方、管理側制御装置7は、移植機2の遠隔管理を制御するものであり、
図2に示されるように、制御部71、記憶部72、入出力部73、通信部74、操作部75、表示部76等を備えている。
【0052】
この管理側制御装置7は、例えばモニター等の周辺機器を含むサーバー等のコンピュータシステムで構成されている。また、管理側制御装置7は、例えば以下の場所に設置される。すなわち、移植機2による移植作業を行う圃場100から離れた場所にある移植機2の販売店や、移植機2の製造会社の管理センターなどの建物や、移植機2の所有者(作業者)の自宅や、移植機2を所有する組織(法人)の事務所や、移植機2を用いた苗の植付け作業等の農作業に対応する管理サービスを提供する事業者の事務所等である。
【0053】
制御部71は、演算処理部、記憶素子等で構成されており、記憶部72に格納されている遠隔管理に関する制御プログラムやデータ等に基づいて所要の演算処理をするとともに所要の制御対象に対して制御信号や情報を送信する。
記憶部72は、制御プログラム、各種データを記憶して保存する。入出力部73は、管理側制御装置7内の各部との間における必要な信号や情報の入出力を行う。通信部74は、所要の情報通信手段200を介して作業側制御装置6の間において必要な情報の送受信を行う。
操作部75は、管理側制御装置7の利用に際して管理側制御装置7を運用する遠隔管理者が必要とする操作を行う。表示部76は、管理側制御装置7において必要な情報を表示する。
【0054】
そして、この遠隔管理システム1においては、作業側制御装置6に移植機2の走行および苗植付け等の動作に関してそれぞれ検出される検出値が正常であるとみなす規定値の情報が記憶(保存)されている。
正常であるとみなす規定値(閾値)Sは、移植機2の操作者又は遠隔管理者によって予め行われる記憶部62に格納する作業により記憶されるか、あるいは、必要なタイミングで管理側制御装置7から送信されて記憶部62に自動で格納されて記憶される。この規定値(閾値)Sとしては、例えば、エンジン23の回転数に関する規定値Se、走行車体20の傾斜角度に関する規定値Si等が挙げられる。
【0055】
また、遠隔管理システム1においては、作業側制御装置6が規定値Sから外れた検出値を検出したときに、作業側制御装置6が、その外れた検出値の情報をその検出された該当する移植機2の識別情報、位置情報および検出時間情報と関連付けた動作異常情報Idとして管理側制御装置7に送信する動作を実行する。
すなわち、作業側制御装置6では、
図7に示されるように、各種の検出手段からの検出した情報を入手し(ステップS10)、その検出値が規定値Sを超えて外れているか否かを判断する(S11)。このとき検出値が規定値Sを超えている場合には、その検出値の情報を動作異常情報Idとして管理側制御装置7に情報通信手段200を介して送信する(S12)。
【0056】
さらに、管理側制御装置7は、作業側制御装置6から送信される動作異常情報Idを記憶保存するとともに報知する動作を実行する。
すなわち、管理側制御装置7では、
図8に示されるように、作業側制御装置6からの動作異常情報Idを受信するか否かを判断している(ステップS20)。このとき動作異常情報Idを受信した場合は、その動作異常情報Idを記憶部72に記憶保存し(S21)、また動作異常情報Idが発生したことを報知する(S22)。
【0057】
このときの動作異常情報Idの記憶保存は、規定値Sを超えた検出値と、それを検出した移植機2の識別情報と、圃場100の位置情報(緯度・経度など)と、検出時間の情報とが関連付けられた形式で記憶される。
また動作異常情報Idの発生の報知は、遠隔管理者に発見されやすい動作であればよく、例えば、表示部76に警告用の表示をすることや、警告用のランプや表示マークを点灯若しくは点滅させることや、ブザーで警告音を鳴らすことが行われる。
【0058】
したがって、この遠隔管理システム1では、移植機2について遠隔管理する者が移植機2に異常が発生したことを早期に知ることができる。
【0059】
これにより、管理側制御装置7を運用する遠隔管理者やその遠隔管理者から異常の発生を連絡されて知る場合の移植機2の操作者は、その異常が発生した移植機2に対して必要な対応を速やかにとることが可能になる。この結果、苗の植え直し作業に必要以上の労力や時間が費やされることが軽減され、当初予定している移植作業が大幅に遅延してしまうことを抑制することができる。
この場合、管理側制御装置7から作業側制御装置6に通信接続して移植機2に異常が発生したことを知らせる動作(警告通知)を行うことが好ましい。この警告通知は、遠隔管理者が手動で操作して行われるか、又は管理側制御装置7が動作異常情報Idを受信した後に自動で実行されるように構成すればよい。
【0060】
またこの際、遠隔管理者は、管理側制御装置7に記憶保存された動作異常情報Idから異常が発生したときの該当する移植機2と圃場100の位置や時間がわかるので、その動作異常情報Idの発生した時刻や圃場100の箇所から該当する移植機2の走行した距離を算出して植え直しが必要な個所や量を予測することができる。またこの際、次回以降の移植作業時に同じ異常が再発することを防ぐための対策をたてることもできる。さらにこの際、動作異常情報Idの内容によっては、動作等の異常が発生しにくい圃場100の造り(耕うんや畝たての仕方)を計画および実行することが可能になる。
【0061】
この遠隔管理システム1についてさらに具体例を挙げて説明すると、例えば、作業側制御装置6は、移植機2のエンジン23の始動操作の回数が一定の時間内で所定の回数を超えたにもかかわらずエンジン回転センサ67の検出した情報を通してエンジン23の回転が継続せず始動していないことを検出したときに、その検出された情報を動作異常情報Idとして管理側制御装置7に送信する動作を行うよう構成されている。
この際、エンジン23の始動操作の回数が所定の回数を超えた場合とは、例えば、リコイルスタータ23aによる手動の始動操作が一定の時間内で10回以上行われた場合である。また、エンジン23の回転が継続せず始動していないこととは、エンジン回転センサ67が回転を検出しても比較的すぐにゼロになること等である。
【0062】
また、このときの作業側制御装置6は、エンジン23が始動した後にエンジン回転センサ67で検出されるエンジンの回転数が規定値Seを超えて外れたことを検出したときも、その検出された情報を動作異常情報Idとして管理側制御装置7に送信する動作を行うよう構成されている。
【0063】
このような動作異常情報Idを送信する動作をするよう構成した場合は、最終的に管理側制御装置7が作業側制御装置6から送信される動作異常情報Idを記憶保存するとともに報知する動作を実行するので、遠隔管理者が移植機2のエンジン23に関する故障が発生した可能性を早期に知ることができる。
【0064】
これにより、遠隔管理者は、移植機2の代替機の手配や修理作業の手配を速やかに行うことができ、この結果、移植作業の大幅な遅れ(作業の中断)を少なくすることができ、あるいは、移植作業の当初の計画を早めに変更して対応することができる。
また、エンジン23が正常に始動した後でもエンジン回転数が規定値Seを超えた場合には、その原因として操作者の誤操作や、エンジン制御の異常の発生が考えられ、そのエンジン異常が発生した状態での植付け精度が低下した移植作業が続行されることを早めに中止することができる。
【0065】
このときのエンジン制御の異常は、例えば、スロットルレバー26cの操作に対応してエンジン23の回転数を実際に制御するスロットルモータの異常などである。この場合、例えばスロットルモータが制御不能になったときには、予期せぬ速度で移植機2が走行し始めることもあり得るので、そのような事態の発生を未然に防ぐこともでき、この動作異常情報Idの報知はきわめて有効である。
【0066】
ちなみに、この構成を採用する作業側制御装置6においては、エンジン23が正常に始動した後でもエンジン回転数が規定値Seを超えた場合、遠隔管理者が管理側制御装置7から該当する移植機2の作業側制御装置6に向けて遠隔操作で(又は自動で)走行クラッチ切替え装置57に走行クラッチレバー26aを切り状態にする信号を発信させる動作や、その作業側制御装置6に向けて遠隔操作で(又は自動で)植付けクラッチ切替え装置58に植付けクラッチ48を切り状態にする信号を発信させる動作を行うように構成することが好ましい。
【0067】
このように構成した場合は、エンジン23の異常が発生したときに速やかに移植機2の走行動作や植付け動作を停止させることができる。この結果、苗の植え直し区間を少なく抑えることができる。なお、走行クラッチレバー26aを切り状態にした場合は、エンジン23の伝動が遮断されるので、走行動作だけでなく植付け動作も同時に停止される。
【0068】
また、この遠隔管理システム1は、作業側制御装置6において傾斜センサ68で検出された傾斜角度が規定値Siを超えて外れたことを検出したときに、その外れた傾斜角度の情報を記憶部62に記憶保存し、しかも、その傾斜角度の情報を記憶保存した後に該当する移植機2のエンジン23が再始動されたときに、先の傾斜角度の情報を動作異常情報Idとして管理側制御装置7に送信する動作を行うように構成される。
【0069】
このような動作をするように構成した場合は、最終的に管理側制御装置7が作業側制御装置6から送信される動作異常情報Idを記憶保存するとともに報知する動作を実行するので、遠隔管理者が移植機2の転倒した可能性又は転倒するおそれがある可能性を早期に知ることができる。
【0070】
これにより、遠隔管理者は、移植機2の操作者に連絡をとって事実確認をすることや、作業の安全性の低下を防止することができる。例えば、転倒した状態又は転倒しかねない走行車体20の姿勢でエンジン23が再始動したときには、例えば予期せぬ方向に動きだしたり、あるいは、異常な走行により畝102を荒らしたり、あるいは、苗が余分に消費されたりすることもあり得る。この点、上記動作異常情報Idが発生したことが報知されることにより、それらの問題が発生することを抑制すること又は未然に防ぐことが可能になる。
【0071】
またこの際、遠隔管理者は、動作異常情報Idから規定値Siを外れた傾斜角度が検出されたときの圃場100の位置情報がわかるので、その圃場100における次回以降の移植作業を行うときの注意喚起を図ることやその圃場100について転倒しにくい圃場造りを行うことができ、作業の安全性を向上させることができる。転倒しにくい圃場造りとは、例えば、該当する圃場100の耕うん時や畝たて時に移植機2の傾斜を引き起こす要因を解消させるように対処することである。
【0072】
なお、実施の形態1に係る遠隔管理システム1においては、作業側制御装置6に加えて管理側制御装置7にも、移植機2の走行および苗植付け等の動作に関してそれぞれ検出される検出値が正常であるとみなす規定値Sの情報を記憶保存するように構成してもよい。
【0073】
この場合は、例えば、
図8に二点鎖線で示すように、管理側制御装置7において作業側制御装置6から動作異常情報Idを受信した後、その動作異常情報Idに含まれる検出値が規定値Sを超えて外れていて動作異常情報Id自体が正しい情報であるかを再確認する動作(ステップS23)を実行するように構成することが可能になる。
また、このステップS23のような動作を行う場合は、その動作異常情報Idが正しいと判断したときには、原則通り、その動作異常情報Idを記憶部72に記憶保存する動作(S21)を行い、反対にその動作異常情報Idが正しくないときには、例えば、その動作異常情報Idを破棄(消去)する動作(S24)を行うように構成することも可能になる。
【0074】
以上の構成により、遠隔管理システム1では、動作異常情報Idに含まれる検出値が規定値Sを外れた値であるかについて二重のチェックをすることができ、動作異常情報Idの信頼性を高めることができる。
【0075】
[実施の形態2]
図9には、実施の形態2に係る遠隔管理システム1が示されている。
実施の形態2に係る遠隔管理システム1は、
図1に二点鎖線で含めて示され、また
図9に示されるように、作業側制御装置6と管理側制御装置7とにそれぞれ通信接続して情報の送受信を行うことが可能な通信端末8を新たに備えるようにしたことと、その作業側制御装置6の構成の一部を割愛したことで変更した以外は実施の形態1に係る遠隔管理システム1とほぼ同じ構成からなるものである。
【0076】
通信端末8は、通信接続して情報の送受信を行うことが可能でかつ測位機能および計時機能を有するものであり、
図9に示されるように、制御部81、記憶部82、入出力部83、通信部84、表示部85、操作部86、計時部87、測位部88、収音部91、撮影部92等を備えている。
【0077】
この通信端末8は、例えば、情報端末機能を備えた携帯電話(モバイルフォン、スマートフォン)や、通信機能を備えたコンピュータ型のタブレットで構成されている。
また、通信端末8は、作業側制御装置6と管理側制御装置7との双方にそれぞれ通信接続して情報の送受信を行うことが可能なものである。この場合、通信端末8と管理側制御装置7との間の通信手段としては、例えば、インターネット通信、LTE等の携帯電話通信等の方式として知られている遠距離通信が可能な情報通信手段200Aを適用するとよいが、特にこれに限定されるものではない。また、通信端末8と作業側制御装置6との間の通信手段としては、例えば、Wi-Fi(登録商標。ワイヤレスLAN)、Bluetooth(登録商標)等の方式や規格として知られている近距離通信が可能な情報通信手段200Bを適用するとよいが、特にこれに限定されるものではない。
【0078】
この近距離通信可能な情報通信手段200Bを採用した場合は、遠距離通信可能な情報通信手段200Aを採用する場合に比べると、その分コストの低減化が可能になる。またこの場合、通信端末8の制御部81に通信処理を主に行わせるよう構成すれば、作業側制御装置6の制御部61として通信処理のために高性能で高価な演算処理ユニットを設ける必要がなくなり、これによってコストのさらなる低減化が図れる。
【0079】
通信端末8における制御部81は、演算処理部、記憶素子等で構成されており、記憶部82に格納されている通信端末の動作に関する制御プログラムやデータ等に基づいて所要の演算処理をするとともに所要の制御対象に対して制御信号や情報を送信する。
記憶部82は、制御プログラム、各種データを記憶して保存する。入出力部83は、通信端末8内の各部との間における必要な信号や情報の入出力を行う。通信部84は、所要の情報通信手段200A,200Bを介して作業側制御装置6および管理側制御装置7との間において必要な情報の送受信を行う。
【0080】
表示部85は、通信端末8において必要な情報を表示する。操作部86は、通信端末8の利用に際して通信端末8を使用する移植機2の操作者が必要とする操作を行う。このときの操作としては、例えば、蓄積されている移植機2の作業情報のうちの任意の情報又は全ての情報を管理側制御装置7に送信する操作や、管理側制御装置7から圃場における作業計画の更新情報を取得する操作が挙げられる。なお、これらの操作は、実際の情報の更新が無いときには、更新情報が無いことを通知するものとする。これにより、更新が無いことを確認できるものとする。
計時部87と測位部88については、スマートフォン等の通信端末8が備えている計時機能や測位機能をそのまま活用すればよい。
【0081】
収音部91は、音を収集して記録することができる部分であり、収音装置の一例である。この収音部91は、例えば通信端末8に内蔵されている小型マイクを適用することができる。また、収音部91は、通信端末8と通信接続が可能であって通信端末8に後付けした状態で使用することが可能な小型マイクであってもよい。
撮影部92は、移植機2のうち特に苗植付け動作に関する部分の少なくとも一部を動画撮影等ができるような撮影機能を有する部分であり、撮影装置の一例である。この撮影部92は、例えば通信端末8に内蔵されている小型カメラを適用することができる。また、撮影部92は、通信端末8と通信接続が可能であって通信端末8に後付けした状態で使用することが可能な小型カメラであってもよい。
【0082】
一方、この遠隔管理システム1に適用する作業側制御装置6は、通信端末8に計時機能と測位機能があってそれらを利用することが可能であるため、実施の形態1における作業側制御装置6(
図2)と比べた場合、
図9に示されるように、実施の形態1における作業側制御装置6が備えていた計時部65および測位部66(
図2)を設ける必要がなく割愛することができる。
これにより、この遠隔管理システム1においては、作業側制御装置6に計時部65と測位部66を設ける必要がない分だけ、作業側制御装置6の構成の複雑化やコストの上昇を抑制することができる。
【0083】
そして、この遠隔管理システム1においては、移植機2における株間設定部としての株間設定ボタン52の設定値の情報を通信端末8に送信する動作を実行できるように構成されている。
株間設定ボタン52による株間の設定は、増加ボタン52Aと減少ボタン52Bを押す操作により行われる。この際、操作部50における表示部53に設定される株間の情報が表示され、その表示内容を参照しながら設定操作が行われる。
【0084】
また、この遠隔管理システム1においては、通信端末8が、作業側制御装置6に通信接続して株間設定ボタン52の設定値の情報を収集して記憶部82に記憶保存するとともに、その設定値の情報を該当する移植機2の識別情報、位置情報および時間情報と関連付けた動作設定情報Isとして管理側制御装置7に送信する動作を実行する。
これにより、管理側制御装置7では、遠隔管理者が移植機2における株間設定の運用情報を収集して管理することができる。
【0085】
また、この遠隔管理システム1においては、管理側制御装置7が、通信端末8から送信される動作設定情報Isを記憶部82に記憶保存するとともに、その動作設定情報Isに該当する移植機2の株間の設定値を使用頻度から順位付けして記憶保存する動作を実行する。
この場合、株間の設定値の順位付けは、株間の設定値の情報が複数収集された以降に行われる。また、このときの管理側制御装置7は、例えば、株間の設定値に関する情報について検索可能なデータベースソフトにより整理して保存するよう構成することができる。このときのデータベースソフトは、通信端末8にて操作可能なアプリケーションとしてインストール可能なものとし、もし必要な際にインストールされていなければ(あるいはアップデートの必要があれば)、管理側制御装置7または接続可能なサーバーから任意にダウンロードすることもできるものとする。
【0086】
さらに、この遠隔管理システム1においては、通信端末8が、管理側制御装置7に通信接続して所要(例えば使用中)の移植機2に関する使用頻度の高い複数の株間の設定値の情報を受信する動作と、その受信した設定値の情報を該当する移植機2の作業側制御装置6に通信接続して送信するとともに当該移植機2の株間設定ボタン52の設定値を使用頻度の最も高い株間の設定値に変更する動作とを行うことが可能になっている。
【0087】
この場合、使用頻度の最も高い株間の設定値については、現時点で収集されている株間の設定値のうち、最も使用回数の多い設定値を反映するものとする。また、株間設定ボタン52の設定値が使用頻度の最も高い株間の設定値に自動で変更された場合は、植付け駆動機構47におけるソレノイド49の駆動タイミングの設定情報についても連続して自動で変更することになる。
通信端末8の情報の通信や株間の設定値の変更等の動作については、その専用のアプリケーションソフトを記憶部82に格納しておき、そのアプリケーションソフトを起動して操作することで実行できるように構成される。
【0088】
以上説明した実施の形態2に係る遠隔管理システム1では、遠隔管理者が移植機2における株間設定の運用情報を収集して管理することができることに加えて、移植機2の作業側制御装置6における株間の設定値が管理側制御装置7で順位付けされた使用頻度の最も高い株間の設定値に通信端末8を介して自動で変更されるので、移植機2の操作者が株間の設定変更の操作を行う必要がなくなり、株間の設定に要する時間の短縮を図ることができる。
【0089】
この遠隔管理システム1においては、所定の移植機2における株間の設定値の設定又は変更について、遠隔管理者が管理側制御装置7で入力等の必要な操作をすることにより行うこと(遠隔操作)が可能になるよう構成してもよい。この場合は、遠隔管理者が選択した株間の設定値の情報が管理側制御装置7から通信端末8を中継して対象となる移植機2の作業側制御装置6に送信され、その作業側制御装置6における株間の設定内容が遠隔管理者の遠隔操作で選択された設定値に設定又は変更される。
【0090】
これにより、移植機2ごとに適切な株間の設定調整(チューニング)が可能になる。また、例えば移植作業をする圃場100での作業の設定内容を知らない者が移植機2を操縦することがある場合であっても、その移植機2における株間などの設定が遠隔操作で行われるようになる。このような遠隔操作による作業側制御装置6の設定を可能にする構成を採用した場合には、情報不足や聞き間違いによる設定ミスが発生することを防止することができ、その移植機2の操作者は走行車体20の操縦をするだけで適切な苗の植え付けを行うことが可能になる。
【0091】
また、実施の形態2に係る遠隔管理システム1においては、作業側制御装置6で株間設定に関する増減ボタン52A,52Bが所定の時間以上押されて操作(長押し)された場合に、通信端末8から送信された使用頻度の高い複数の株間の設定値の情報を移植機2における操作部50の表示部53(
図9)に表示する動作を実行するよう構成することもできる。
【0092】
この場合、増減ボタン52A,52Bが同時に所定の時間以上長押しされたときに、上記表示動作が行われるようにするとよい。このときの表示は、使用頻度の高い予め設定される複数(例えば3~5種類)の株間の設定値の情報を例えば表示画面に縦又は横に並べた状態で表示される。またこのときの表示は、表示された株間の設定値を選択可能に表示するとよい。さらにこのときの表示の構成は、使用頻度の低い株間の設定値を選択して表示しない構成にもなる。
【0093】
このように構成した場合は、株間設定部を構成する増減ボタン52A,52Bを所定時間以上操作するだけで使用頻度の高い複数の株間の設定値が移植機2に表示されるので、作業側制御装置6に使用頻度の高い株間の設定値を呼び出して表示させるための専用の操作手段を別途設ける必要がなくなり、その分だけ作業側制御装置6の構成の複雑化やコストの上昇を抑えることができる。このことは換言すれば、その分だけ作業側制御装置6の構成の簡略化やコストの低減化を図ることが可能になる。
【0094】
ちなみに、増減ボタン52A,52Bを個別に押して操作した場合は、株間の数値が所定の間隔(例えば1cm間隔)ずつ増加又は減少して表示されることになるが、例えば、設定変更したい株間の数値が現状の設定値とは離れた数値であるときには、その離れた数値を呼び出して表示させるまでの所要時間が長くなる。この点、上記のように構成した場合は、その表示されるまでの所要時間が短くなり、株間の設定作業時間の短縮化を図ることができる。また、細かい設定変更を行う場合には、誤操作や設定ミスが起こりにくくなる。
【0095】
さらに、実施の形態2に係る遠隔管理システム1においては、作業側制御装置6について、上記したように使用頻度の高い複数の株間の設定値の情報を表示した後に増減ボタン52A,52Bが所定の時間内で何も操作されないときには株間の設定値をその使用頻度の最も高い株間の設定値に変更する動作を実行する一方で、増減ボタン52A,52Bが所定の時間内で増減させる操作が続けられたときにはその増減の要求に応じて前記使用頻度の高い複数の株間の設定値を上位側又は下位側の設定値にずらして表示する動作とその表示された設定値のなかから選択された設定値に変更する動作を実行するよう構成することもできる。
【0096】
このように構成した場合は、株間設定部52の設定値が使用頻度の最も高い株間の設定値に自動で設定されることがあるので、株間設定に要する時間の短縮が図れて使い勝手がよくなる。また、使用頻度の高い複数の株間の設定値の情報が表示された後に増減ボタン52A,52Bが所定の時間内で増減させるよう操作されると、使用頻度の高い複数の株間の設定値が上位側又は下位側の設定値にずらして表示されることや表示中の設定値の選択による設定変更を行うことが可能になるので、この場合も使い勝手がよくなる。
【0097】
なお、実施の形態2における通信端末8は、
図1に二点鎖線で例示されるように、実施の形態1に係る遠隔管理システム1においても適用するよう構成してもよい。つまり、実施の形態2に係る遠隔管理システム1は、実施の形態1の遠隔管理システム1として適用することも可能になる。
この場合、作業側制御装置6から管理側制御装置7に送信する動作異常情報Idは、作業側制御装置6から通信端末8にも送信するよう構成することができる。また、その動作異常情報Idの管理側制御装置7への送信について、作業側制御装置6に代えて通信端末8から管理側制御装置7に送信するよう構成しても構わない。
【0098】
[実施の形態3]
実施の形態3に係る遠隔管理システム1は、実施の形態1又は2に係る遠隔管理システム1(
図1、
図2、
図9)における作業側制御装置6について、エンジン回転センサ67又は傾斜センサ68が各規定値Se,Siを外れた検出値を検出したときと畝センサ69が走行開始後の所定の時間内に又は所定の距離を走行する間に検出しないときに、音発生装置の一例であるブザー59を作動させて警告音を発生させる動作を実行するように構成している。
【0099】
この場合、畝センサ69は、移植機2による移植作業を開始するときには移植機2が苗を植え付ける畝102に達するよう走行してある程度の時間内で移動して到達するので、その対象の畝102の端部(始端側の端部)に到達すると接触検出板29が畝面102aに接触し、その接触時の動きを検出することになる。また、畝センサ69は、移植機2による移植作業が開始されて一定の距離を走行することで畝102の終端側の端部に到達するので、接触検出板29が畝面102aとの接触がなくなって下方回動し、その下方回動の動きを検出することになる。
【0100】
より具体的には、畝センサ69は、苗の植付け作業を行う畝102の始端側の端部に移植機2を移動させて植付け作業用の車高に調節した際、接触検出板29が畝102により押し上げられて上方回動することにより入り状態になり、畝面102aを検出した状態になる。
また移植機2では、苗を植え付けながら畝102に沿って前進しているとき、接触検出板29が畝面102aの凹凸に合わせて上下回動し、この上下回動に連動して油圧バルブの開度および送油方向がメカ的又は電子的に変更されることで昇降用油圧シリンダ27を伸縮させて移植機2の車高を逐次上下させ、これにより苗の植付け深さが設定した深さに維持される。
また畝センサ69は、移植機2が畝102の終端側の端部に到達すると、接触検出板29が押し上げられなくなって下方回動するので切りの状態になり、畝面102aを検出しない状態となる。
作業側制御装置6では、例えば、このように畝センサ69が一旦入り状態になった後に切り状態になると、ブザー59を作動させる。
【0101】
また、ブザー59の警告音としては、移植機2の操作者に聞き取れる種類や音量の音が適用される。具体的には、ブザー59の警告音は、移植機2の作業者が聞き取りやすい音や周辺への騒音とならない音になるように、通信端末8の操作部の操作又はインストールしたアプリケーションの操作アイコンにより、作業者が気付きやすい音を複数の発音パターンから選択可能にし、また音量の増減調節が可能なものにすればよい。ここでいう発音パターンとは、音の長さ、高さ、リズム、メロディ等のことを意味する。また、ブザー59の発音は通信端末8にあるスピーカーを用いて行うように構成するとよい。また、移植機2側には、ブザー59の作動条件が揃うと通信端末8に信号を送る信号装置を設け、その信号装置を作業側制御装置6にて作動させるよう構成してもよい。
ブザー59から警告音が発音されることにより、移植機2に異常が発生したことをその操作者も早期に知ることができる。
【0102】
そして実施の形態3に係る遠隔管理システム1は、通信端末8について、収音装置の一例であるマイク91が上記の警告音を収集して検知したときに、エンジン回転センサ67又は傾斜センサ68に関する動作異常情報Idの有無の検出と畝センサ69の非検出情報の有無を検出するとともにブザー59の作動の正誤を判定してその判定結果の情報を記憶保存する動作と、その判定結果の情報を管理側制御装置7に送信する動作を実行するように構成している。
【0103】
この場合、マイク91は通信端末8にあるものを使用している。また、そのマイク91は、移植機2を少なくとも稼動したときにブザー59が発する警告音を少なくとも収音可能な状態に設定されている。
また、ブザー59の作動の正誤は、管理側制御装置7にエンジン回転センサ67又は傾斜センサ68に関する動作異常情報Idがある場合と畝センサ69の入り状態から切り状態になる検出の情報がある場合に正常であると判定し、それ以外の場合にはブザー59の作動が異常(誤作動)であると判定する。
【0104】
以上の構成からなる実施の形態3に係る遠隔管理システム1では、ブザー59が作動して警告音が発生したときに、そのブザー59の誤作動の有無に関する判定結果を遠隔管理者が早期に知ることができる。
【0105】
これにより、ブザー59の誤作動であることがわかった場合は、誤った警告音の発生を速やかに停止させて警告音の無用な鳴動を解消することがき、また警告音の発生をきっかけにして移植作業を無駄に中断させることを回避することができる。さらに、ブザー59の誤作動が発生した原因の検討を速やかに行い、その原因を解決する対策を進めることが可能になり、これによっても次回以降の作業でブザー59の誤作動による作業の不要な中断を防止することができる。
【0106】
一方、警告音の発生がブザー59の誤作動でないと判定された場合は、遠隔管理者が移植機2に異常が発生したことを早期に知ることができる。このときの異常とは、エンジン23の故障や移植機2の転倒又はそのおそれが発生したことや、移植機2が移植作業をする対象の畝102において正常な植付け作業が対して正常に接近していないことなどである。
また、このとき移植作業の途中であった場合には、その警告音が発生した圃場100の地点および時間の情報から苗の植え直しが必要であることとその植え直しが必要な範囲がわかるので、その植え直し作業を効率よく適切に行うことができる。
【0107】
ちなみに、移植機2において上記したように作業側制御装置6によりブザー59が作動させられて警告音が正常に発生させられると、移植機2の作業者は、畝102の端部に到達してあと少しで苗の植付け作業を終了させるとともに、走行を停止させる必要があることを知ることができる。
これにより、作業者が畝102の終端部に到達したことに気付かず、畝102に植え付けられない位置にホッパー45から苗が落とされることが生じることを防止できる。また、その落ちた苗を拾う作業に要する時間と労力を軽減できるとともに、苗が前輪21、後輪22及び作業者に踏まれて生育できなくなることが防止される。
【0108】
またこの際、移植機2において接触検出板29をホッパー45よりも機体前側に配置している場合(
図3)は、畝センサ69が切り状態になってブザー59が作動した直後には、畝102には1~3株程度の苗の植え付け可能な部分が残されることになる。しかし、この余裕があることにより、作業者は、ブザー59が作動すると同時に走行クラッチレバー26aを操作して走行および植付への伝動を切る必要がなく、操縦が容易なものとなる。
【0109】
なお、移植機2には、畝センサ69が入り状態でないと、植付けクラッチ48が入り状態に切り替わらない制御プログラムを作業側制御装置6の記録部に組み込んでおくとよい。
この制御プログラムを採用した場合は、例えば、車高が作業に適した高さになる前に植付け作業が開始されて苗が畝102に植え付けられないことや、たとえ植え付けられても浅過ぎて簡単に倒れてしまう状態で苗の植付け作業が開始されることが防止される。
【0110】
また作業側制御装置6は、畝102に崩れた部分や著しく窪んだ部分があると、畝センサ69が切り状態と検出する角度まで接触検出板29が下方回動することになるが、このときブザー59を作動させるように構成するとよい。
このように構成した場合は、作業者および遠隔管理者が畝102に異常があることに早期に気付くことができ、苗の植付けに適さない状態で作業を続けてしまうことで時間や労力をはじめ苗を余分に(無駄に)消費することを防止できる。
但しこの場合、崩れた部分や窪んだ部分の進行方向における前後幅が短く、苗の植付けに支障が無いときにもブザー59が作動すると、ブザー59を停止させるために走行クラッチレバー26aを操作する等の余分な作業に、より時間を取られてしまうことになる。このため、作業側制御装置6は、接触検出板29が下方回動した状態が一定時間(例えば1~2秒)継続したときに、畝センサ69が切り状態になってブザー59を作動させるよう構成するとよい。
【0111】
さらに、実施の形態3における作業側制御装置6については、ブザー59を作動させて警告音を発生させる動作の実行時に、その時点におけるエンジン回転センサ67、傾斜センサ68、畝センサ69等の検出情報を管理側制御装置7に直接又は通信端末8を中継して送信する動作を行うよう構成してもよい。
この場合は、遠隔管理者が、警告音の発生時における移植機2の状況に関する情報を管理運用情報として収集することができる。
この他、通信端末8がアプリケーションによりブザー59の機能を果たすように構成するときには、ブザー59として作動した際に、そのブザー59の作動の正誤についてマイク91を介さずに上記した判定と同様の判定を行うようにすればよい。
【0112】
[実施の形態4]
実施の形態4に係る遠隔管理システム1は、実施の形態2に係る遠隔管理システム1(
図9)における通信端末8について、移植機2のうち通信端末8における撮影部92のカメラで撮影される苗植付け動作に関係する部分の正常な動きの映像が記憶部82に記憶保存されており、また、その撮影部92のカメラで撮影された映像を上記正常な動きの映像と比較して相違する部分の有無を判定してその判定結果の情報を記憶部82に記憶保存する動作と、その判定結果の情報を管理側制御装置7に送信する動作を実行するように構成している。
【0113】
この場合、移植機2のうち苗植付け動作に関係する部分は、苗供給装置30と植付け装置40におけるいずれかの部分であり、特に可動(変化、変位)する部分が好ましい。その可動する部分としては、例えば、苗供給装置30における苗置台32の苗トレイ31又はトレイ搬送路33や、植付け装置40における取出し装置41、植付け具44又は植付け駆動機構47(ソレノイド49など)が挙げられる。また、通信端末8は、その撮影部92のカメラが撮影する部分に向けた状態になるよう保持されていることが要求される。
【0114】
また、正常な動きの映像は、移植作業の前に予め用意して作成された映像や、移植作業を開始した後の実際の作業中に得られる映像である。撮影される映像と正常な動きの映像は、音を含むものであってよく、その場合には作動音の発生時期や異音の有無等の情報からも映像の相違を判定することも可能になる。また、撮影される映像と正常な動きの映像との比較は、同じ株間の設定のものどうしで行われる。また、その比較は、基準とする部分の動き又は状態の一点を合致させて行われる。
【0115】
具体的には、撮影の対象が苗供給装置30における苗置台32である場合には、例えばその苗トレイ31又はトレイ搬送路33の動きが撮影され、その苗トレイ31又はトレイ搬送路33の動きの状態やタイミング、停止する位置について、その同じ部分の正常な動きの映像との間で相違する部分があるか否かが比較して判定される。
また、撮影の対象が植付け装置40における取出し装置41であれば、例えばその取出し部材42の動きが撮影され、例えばその取出し部材42又は取出し爪42aの軌跡Kについて、その同じ部分の正常な動きの映像との間で相違する部分があるか否かが比較して判定される。
【0116】
また、撮影の対象が植付け装置40における植付け具44である場合には、例えばそのホッパー45の動きが撮影され、例えばそのホッパー45の軌跡T1について、その同じ部分の正常な動きの映像との間で相違する部分があるか否かが比較して判定される。
この場合、ホッパー45の動きが正常な軌跡T1を外れて相違することが判明したときに、そのホッパー45の動作を支配する植付けクラッチ48(
図6)の入り切り状態を制御するソレノイド49(
図6)が故障原因であるとみなす判定をして、その判定結果を管理側制御装置7に送信するように構成してもよい。
【0117】
さらに、撮影の対象が植付け装置40における植付け駆動機構47である場合には、例えばそのソレノイド49(
図6)の動きが撮影され、例えばそのソレノイド49の作動ロッドの動きについて、その同じ部分の正常な動きの映像との間で相違する部分があるか否かが比較して判定される。ここで言うソレノイド49の正否(相違の有無)の判定は、例えば、伸縮の動作が行われるかどうかや、伸長又は収縮する際の動作が完了するまでに要する時間、伸長又は収縮の動作が始まる時間、即ち作動信号が出てから実際に作動するまでの時間差が許容範囲にあるかどうかを調べることで行われる。
この場合、ソレノイド49の作動時におけるオンオフの状態について、その撮影した結果を管理側制御装置7に逐次送信して移植機2の運用情報の一部として使用するよう構成してもよい。
【0118】
以上の構成からなる実施の形態4に係る遠隔管理システム1では、管理側制御装置7に送信されて報知される判定結果を見ることで、遠隔管理者が移植機の動作中の映像結果から判定される異常の発生を早期に知ることができる。
これにより、遠隔管理者は、該当する移植機2の操作者に異常の発生を速やかに連絡することができる。また、その連絡を受けた操作者は、移植機2の異常な植付け等の動作を速やかに停止させることができ、それに伴って苗の植え直し作業に要する時間や労力を軽減することもできる。
【0119】
なお、実施の形態4に係る遠隔管理システム1においては、移植機2の苗植付け動作に関係する部分として複数箇所を採用してもよい。
この場合、カメラ等の撮影装置としては、広範囲を撮影できるものを適用するかあるいは複数の撮影装置を適用するようにすればよい。また、撮影装置としては、通信端末8に内蔵される撮影部92のカメラに限らず、通信端末8と通信接続が可能である他の独立した撮影装置を適用してもよい。他の独立した撮影装置については、必要に応じて移植機2のうち撮影が可能な場所に設置してもよい。また独立した撮影装置としては、移植機2から独立したドローン等の移動体に設ける撮影装置を適用することも可能である。この場合は、その移動体で移動して移植機2から離間した位置から撮影して映像を利用することができる。
これにより、移植機2における撮影した複数箇所の状態に関する情報が得られるので、異常が発生したときに、その異常の発生原因を特定しやすくなることもある。
【0120】
また、上記正常な動きの映像については、実写でなく、3DCG等を用いたモデリングに基づくものでもよい。
また挙動が正常であるかどうかについての判断は、判定用のデータベースあるいは人工知能が組み込まれた遠隔端末にデータを送信して正否判定を行い、その正否判定結果のデータを受信して行うように構成してもよい。このときの正否判定は、通信の負担を軽減すべく所定時間ごとに行うことが現状は望ましいが、より大容量で且つ高速の無線通信が使用可能な環境であれば、リアルタイム通信で常時監視し、問題の発生から通知までのタイムラグをより抑えるものとしてもよい。
【0121】
[他の実施の形態]
実施の形態2では、その作業側制御装置6又は管理側制御装置7において株間の設定値ごとに動作異常情報Idが発生したときの異常の発生原因となった部分を種別して管理し、次回以降の作業で支障が多く使えない問題のある株間の設定値について選択できないようにする処理を実行するように構成してもよい。
【0122】
この場合、問題のある株間の設定値とは、例えば、株間を正常に保持した植え付け作業ができないと判断される設定値である。選択できないようにする処理とは、例えば、株間増減ボタン52A,52Bを押しても操作部50の表示部53に該当する株間の値を表示させないようにする処理である。
選択できない株間の設定値が生じたときは、選択可能な他の株間の設定値に設定して暫定的な植え付け作業を行うことになる。これにより、本来所望する株間の植え付けができない場合であっても、他の株間での植え付けが可能になるので、暫定的な植え付けであるものの苗に適した移植時期や移植時の天候を逃すことを避けることができ、結果として苗の生育に悪影響が出ることを防止することができる。
【0123】
また、実施の形態2では、その作業側制御装置6又は管理側制御装置7において株間の設定値ごとに動作異常情報Idが発生したときの異常の発生回数を累積して管理し、所定の回数を超える異常が発生した株間の設定値について選択できないようにする処理を実行するように構成してもよい。
【0124】
この場合、比較的すぐに回復するような異常によっては、所定の試行操作を行った後に、上記累積する異常に含めるか否かを判別するようにしてもよい。比較的すぐに回復するような異常とは、例えば、簡単に回復できるエンジン23の一時的な故障や誤操作などである。試行操作は、例えば、作業側制御装置6等の再起動などが挙げられる。これにより、選択できない株間の設定値がいたずらに増えてしまうことが防止される。
【0125】
上記したように株間の設定値について選択できないようにする処理を実行する構成を採用する場合、その選択できない株間の設定値を有効にする復帰処理を行える操作モードを設けてもよい。
【0126】
この場合は、例えば、通信端末8に復帰処理を行う操作モードを実行するためのアプリケーションソフトを記憶部82に格納しておき、移植機2の作業者が通信端末8においてアプリケーションソフトを起動させて必要な操作をすることで復帰処理ができるように構成すればよい。
これにより、移植機2の作業者は、選択できない株間による植え付け作業を再度行うことが可能になって所望の移植作業を継続させることができる。ただし、この構成を採用する場合においても、異常の発生原因がメーカー修理を要するような大掛かりのものである株間の設定値については、その復帰が適当でないため、再度有効にして復帰できないようにする必要がある。
【0127】
実施の形態4では、通信端末8が映像の比較をして得られる判定結果の情報を管理側制御装置7に送信する際、正常な動作の映像と相違する撮影した部分に関係する設定値の情報を併せて送信する動作を実行するように構成してもよい。
このように構成した場合は、遠隔管理者が設定値の情報を参考にして異常の発生原因を詳細に確認することが可能になる。つまり、そのときの異常の発生原因が設定値によるものかどうかを把握できる。そして、発生原因が設定値による場合であったときには、例えば、遠隔管理者が遠隔管理システム1を通して移植機2の操作者に正しい設定値の情報を連絡することが早期に行うことができる。
【0128】
また、実施の形態4において上記のように構成する場合、正常な動作の映像と相違する部分があるとの判定結果の受信回数が一定の回数を超えたときに、管理側制御装置7が作業側制御装置6に直接又は通信端末8を中継して管理側制御装置7の制御動作を停止させる制御信号を送信する動作を行うように構成してもよい。この場合、一定の回数は、上記判定結果が発生した移植機2の修理を早期に行うことが必要であることを判別できる妥当な回数になる。
このように構成した場合は、管理側制御装置7の制御動作の停止により移植機2を稼動させることができなくなり、その移植機2の操作者が異常な状態であることを知ることができる。また、移植機2が使用できない状態になるので、その早めの修理を促すことができる。また、早急な修理が必要な問題のある移植機2を続けて使用することによる植え付け不良が発生することも確実に防止できる。
【0129】
また上記構成を採用する場合は、管理側制御装置7の制御動作を停止させる制御信号を送信する際に併せて、移植機2の注意喚起の動作を行わせる制御信号も送信するように構成してもよい。
このときの注意喚起の動作は、例えば、ブザー59から警告音を発生させることや、表示部53に警告表示をすることなどである。これにより、移植機2の操作者に異常の発生をより確実に知らせることができる。
【0130】
また実施の形態4では、正常な動作の映像と相違する部分があるとの判定結果を送信する場合、その相違する撮影した部分に関係する設定値の情報を管理側制御装置7又は通信端末8から作業側制御装置6に送信して移植機2の表示部53に表示させる動作を実行するように構成してもよい。
このように構成した場合は、移植機2の操作者も異常の発生したことと設定値の不適切なことを早期に知ることができる。
【0131】
また実施の形態4では、通信端末8における撮影部92のカメラや他のカメラにより移植機2におけるメインライトが点灯されたことを撮影し、その映像を管理側制御装置7に直接又は通信端末8を経由して送信する動作を行うように構成してもよい。
この場合、メインライトとは、例えば、前方照明用のヘッドライトや、操作部50にある表示部53の照明用ランプなどである。これにより、遠隔管理者は、移植機2のメインライトに関する運用情報も収集して管理することができる。
【0132】
実施の形態1~4では、作業側制御装置6に、管理側制御装置7又は通信端末8との通信機能を可能にする専用のヒューズを着脱可能に設け、そのヒューズを取り外したときに作業側制御装置6を遠隔管理システム1から独立して使用することができるように構成してもよい。
この場合、遠隔管理システム1から独立して使用するとは、管理側制御装置7又は通信端末8による遠隔操作や設定変更等ができない状態にして、作業側制御装置6のみによる移植機2の制御を行える状態である。
【0133】
これにより、作業側制御装置6について、例えば、移植機2の操作や植え付け作業を知悉している農家個人向けのもの(この場合はヒューズを外しての使用を可能にする)と、植え付け作業や圃場の知識や移植作業実績が少ない営農企業向けのもの(この場合はヒューズを外さず遠隔管理システム1の管理下のものとする)として、簡単に切り替えて使い分けることができる。
【0134】
上記した構成を採用する場合、ヒューズの着脱による切り替え方式に代えて、作業側制御装置6を起動させる電源オン時に、遠隔管理システム1から独立して使用することが選択する操作を行う切替えモードを備え、その切替えモードで切り替えることが可能な切替え方式を採用してもよい。
また上記した構成を採用する場合、ヒューズの着脱による切り替え方式や切替えモードでの切替え方式に代えて、作業側制御装置6から管理側制御装置7への送信により、作業側制御装置6を遠隔管理システム1から独立して使用することを選択することが可能な切替え方式を採用してもよい。
【0135】
このいずれかの構成を採用した場合は、特に緊急時に、作業側制御装置6について遠隔管理システム1から独立して使用することと遠隔管理システム1の管理下の使用にすることとを容易に切り替えることができる。
【0136】
この他、実施の形態1~4においては、以下に説明する構成を採用した移植機2を適用してもよい。
【0137】
移植機2としては、
図10に示されるように、エンジン23の少なくとも左右の側方に水タンク95を載置するタンク載置台94を設けたうえで、そのタンク載置台94に灌水用にも兼用できる水Wを入れた水タンク95を設置し、その水タンク95でエンジン23周りに発せられる熱Hを吸収してエンジン23の周囲における温度を低下させるように構成した移植機2を適用することができる。
【0138】
このような移植機2では、特に空冷式のエンジン23の周囲の温度を少しでも下げることが可能になり、これにより例えばオーバーヒートを生じにくくすることができる。また、このエンジン23周囲の温度を低下させるために水タンク95を設置することにより、灌水装置を装備する移植機2であれば灌水用の水の積載量を増やすことができ、また、水タンク95を重りとして機能させることができる。
【0139】
また、このような水タンク95を設置する移植機2にあっては、
図11(A)に示されるような温度低下のための専用の水タンク95Pを適用するとよい。この水タンク95Pは、エンジン23と向き合う側面部95dの厚みを相対的に厚くし、また上面部95tにはエンジン23の方に向くよう傾斜した通気路(スリット)95sを複数設けている。側面部95dは、例えば、エンジン23から発する熱Hによる加熱で確実に変形しにくいようにするため耐熱性のある部材を貼り付けてもよい。
【0140】
このような専用の水タンク95Pを適用した場合は、そのタンク内の水Wが温まって発生する水蒸気STが上面部95tの通気路95sを通してエンジン23に向かうように放出され、エンジン23の周囲の温度をより効率よく低下させることができる。
【0141】
さらに、上記専用の水タンク95Pを適用する移植機2にあっては、
図11(B)に示されるように、一端部がエンジン23に接近又は接触する状態になり、他端部がタンク内に入り込んだ状態になる金属棒等の熱伝導性部材96を組みつけた水タンク95Pを適用してもよい。この場合、熱伝導性部材96としては、ヒートシンクを採用することも可能である。また、熱伝導性部材96は、一般の水タンク95(例えばポリタンク)に組み込むよう構成してもよい。
この熱伝導性部材96を組みつけた場合は、水タンク95P内で発生する水蒸気STの量が増え、エンジン23の温度上昇を抑制すること(換言すればエンジン23の冷却を補助すること)が可能になる。
【0142】
また、移植機2としては、
図12に示されるように、予備の苗トレイ31を一時置きするための予備苗枠150を設置する場合、その予備苗枠150の一部に水の人工霧(ミスト)Msを発生する霧発生装置97を設けた移植機2を適用することもできる。
図12における符号93はエンジン23の少なくとも前面および上面を覆うカバー、符号151は予備苗枠150の支柱、符号152A,152Bは走行車体20の長手方向に沿って前後に長く設置される前後の中央枠、符号153は走行車体20の左右両側において上下に多段状に配置される両脇枠を示す。
【0143】
この場合、霧発生装置97は、移植機2の前側下方に向かって延びるミストMsのカーテンを形成するよう構成および配置される。
図12に例示される霧発生装置97は、予備苗枠150の両脇枠153の最上段の前端に配置されている。またミストMsは、移植機2の前側を向いた部分から突出して設けられるミスト発生部97aから噴霧されるようになっている。霧発生装置97で使う水は、例えば、その装置内に装着される水タンク内の水や、上記水タンク95内の水が使用される。
また、この霧発生装置97は、例えば、
図12に示されるように、その作動の入り切り操作をするための操作手段(スイッチ、ボタン又は操作画面)55を移植機2の操作者の手元付近に設けて操作者が任意に作動させて使用できるように構成するか、あるいは、作業側制御装置6によりタイマー56で所定の時間間隔で自動的に作動するように構成される。
図12では、操作手段55やタイマー56を操作部50に配置した構成例が示されている。
【0144】
このように霧発生装置97を設けた移植機2では、予備苗枠150に一時置きされる苗トレイ31の苗に対してミストMsにて水をかけることができる。また、霧発生装置97は、操作者の判断により手動で作動させることか、あるいは所定の時間間隔で自動的に作動させることが可能であるので、苗に過剰に水がかけられることがなく、水分過多で苗が弱まるおそれがない。
【0145】
さらに、移植機2としては、
図12に二点鎖線で示されるように、エンジン23から発生する熱の一部を排熱するための金属棒等の熱伝導性部材98を設けた移植機2を適用することもできる。
【0146】
この場合、熱伝導性部材98は、
図12の二点鎖線で例示するよう、一端部がエンジン23に接近又は接触する状態になり、他端部がエンジン23よりも前方側に突出した状態になるように配置される。このとき熱伝導性部材98は、その形態について特に限定されるものでないが、棒状のものであれば複数本配置するとよい。
また、熱伝導性部材98は、
図12に二点鎖線で示されるように、走行車体20の金属製の車体フレーム20Fについてエンジン23を搭載する部分から前方に突出する部分20Faを有する設け構造とし、しかも熱伝導性に優れた物性にしたものとしたものであっても構わない。
【0147】
この熱伝導性部材98を設けた場合は、エンジン23で発生する熱の一部を移植機2の前側に伝導させて外気にさらして排熱することができ、エンジン23の冷却を補助することができる。また、この場合、熱伝導性部材98は排熱を移植機2の前方に集中させて行うことになるので、移植機2の後方で植え付けられた苗が排熱の熱を強く受けてしおれてしまうことを防ぐこともできる。
【符号の説明】
【0148】
1 …遠隔管理システム
2 …移植機
6 …作業側制御装置
7 …管理側制御装置
8 …通信端末
20…走行車体
23…エンジン
40…苗植付け装置
52…株間設定ボタン(株間設定部の一例)
52A,52B…増減ボタン(操作手段の一例)
67…エンジン回転センサ
68…傾斜センサ
69…畝センサ
91…マイク、収音部(収音装置の一例)
92…カメラ、撮影部(撮影装置の一例)