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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-20
(45)【発行日】2022-09-29
(54)【発明の名称】分布型RC終端器
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/822 20060101AFI20220921BHJP
   H01L 27/04 20060101ALI20220921BHJP
   H01G 4/40 20060101ALI20220921BHJP
   H01C 13/00 20060101ALI20220921BHJP
【FI】
H01L27/04 P
H01L27/04 C
H01L27/04 D
H01G4/40 307A
H01C13/00 C
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2020502148
(86)(22)【出願日】2018-07-16
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-09-17
(86)【国際出願番号】 IB2018000742
(87)【国際公開番号】W WO2019016587
(87)【国際公開日】2019-01-24
【審査請求日】2021-06-23
(31)【優先権主張番号】17305946.0
(32)【優先日】2017-07-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】ノルマン, ニコラ
(72)【発明者】
【氏名】ブーヴィエ, ステファン
【審査官】市川 武宜
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2014/0197518(US,A1)
【文献】特開2002-124639(JP,A)
【文献】特開昭53-31934(JP,A)
【文献】特開2009-59990(JP,A)
【文献】特開平8-107186(JP,A)
【文献】特開2013-120815(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/822
H01L 27/04
H01G 4/40
H01C 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
目標負荷抵抗を有する無線周波数(RF)送電器に配置される半導体素子(300、400)であって、
低オーミック基板(302)と、
前記低オーミック基板(302)上に配置された第一の誘電体層(304、402)と、
前記第一の誘電体層(304、402)上に配置された導電層(306)と、
前記導電層(306)上に配置された第二の誘電体層(308)と、
前記第二の誘電体層(308)上に配置された抵抗層(310)と、を備え、
前記低オーミック基板(302)、前記第一の誘電体層(304、402)、及び前記導電層(306)は垂直コンデンサを形成しており、
前記第二の誘電体層(308)及び前記抵抗層(310)は抵抗素子を形成しており、
前記低オーミック基板(302)の抵抗率は、所定値より高い周波数において前記導電層(306)が基準接地を構成するように設定されており、
前記第二の誘電体層(308)及び前記抵抗層(310)は、前記抵抗素子のインピーダンスが前記基準接地に対して、前記RF送電器の前記目標負荷抵抗と整合するように構成されている、半導体素子(300、400)。
【請求項2】
前記低オーミック基板(302)の抵抗率は1mΩ・cm以下である、請求項1に記載の半導体素子(300、400)。
【請求項3】
前記低オーミック基板(302)はドープ材料を含有している、請求項1又は2に記載の半導体素子(300、400)。
【請求項4】
前記低オーミック基板(302)の厚さは100マイクロメートル以下である、請求項1~3のいずれか1項に記載の半導体素子(300、400)。
【請求項5】
前記第一の誘電体層(304、402)は、平面状であるか、前記低オーミック基板(302)内にエッチングされたトレンチ内に積層されている、請求項1~4のいずれか1項に記載の半導体素子(300、400)。
【請求項6】
前記第二の誘電体層(308)の厚さは0.2マイクロメートル以上0.3マイクロメートル以下である、請求項1~5のいずれか1項に記載の半導体素子(300、400)。
【請求項7】
前記抵抗層(310)のシート抵抗は10mΩ/□以上20Ω/□以下である、請求項1~6のいずれか1項に記載の半導体素子(300、400)。
【請求項8】
前記抵抗層(310)は、チタン、白金、又は銅で形成された金属化層に相当する、請求項1~7のいずれか1項に記載の半導体素子(300、400)。
【請求項9】
前記抵抗層(310)は窒化タンタルで形成されている、請求項1~7のいずれか1項に記載の半導体素子(300、400)。
【請求項10】
前記第二の誘電体層(308)及び前記抵抗層(310)はマイクロストリップ伝送線路を形成している、請求項1~9のいずれか1項に記載の半導体素子(300、400)。
【請求項11】
前記抵抗層(310)の側面を1つ以上囲むよう配置された第一の補助接地平面(602)を更に有しており、
前記第二の誘電体層(308)、前記第一の補助接地平面、及び前記抵抗層(310)はコプレーナ伝送線路を形成している、請求項1~9のいずれか1項に記載の半導体素子(300、400)。
【請求項12】
前記抵抗層(310)の側面を1つ以上囲むよう配置された第一の補助接地平面(602)と、前記抵抗層(310)上に配置された第二の補助接地平面(802)とを更に有しており、
前記第二の誘電体層(308)、前記第一及び第二の補助接地平面(602、802)、並びに前記抵抗層(310)はストリップライン伝送線路を形成している、請求項1~9のいずれか1項に記載の半導体素子(300、400)。
【請求項13】
前記垂直コンデンサはデカップリングコンデンサを構成し、前記抵抗素子は広帯域ダンピング抵抗器を構成する、請求項1~12のいずれか1項に記載の半導体素子(300、400)。
【請求項14】
前記RF電器の包絡線終端回路を形成している、請求項1~13のいずれか1項に記載の半導体素子(300、400)。
【請求項15】
目標負荷抵抗を有する無線周波数(RF)送電器で使用するための半導体素子を製造する方法であって、
低オーミック基板(302)を用意する工程と、
前記低オーミック基板(302)上に第一の誘電体層(304、402)を形成する工程と、
前記第一の誘電体層(304、402)上に導電層(306)を形成する工程と、
前記導電層(306)上に第二の誘電体層(308)を形成する工程と、
前記第二の誘電体層(308)上に抵抗層(310)を形成する工程と、を備え、
前記第二の誘電体層(308)及び前記抵抗層(310)は抵抗素子を形成しており、
前記低オーミック基板(302)を用意する工程は、所定値より高い周波数において前記導電層(306)が基準接地を構成するように前記低オーミック基板(302)の抵抗率を設定する工程を備え、
前記第二の誘電体層(308)を形成する工程及び前記抵抗層(310)を形成する工程は、前記抵抗素子のインピーダンスが前記基準接地に対して、前記RF送電器の前記目標負荷抵抗と整合するように前記第二の誘電体層(308)及び前記抵抗層(310)を構成する工程を備える、半導体素子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抵抗素子及び容量素子を含む集積構造に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、光トランシーバーやRF電力増幅器といった無線周波数(RF)用途等の各種用途においては、抵抗器及びコンデンサ等の受動素子が必要となることが多い。これらの用途に対しては動作帯域幅の拡大が続いており、場合によっては数GHzにまで達しているため、受動素子の挙動を制御することが望ましい。とりわけ、受動素子による帯域幅制限を管理することで、動作帯域幅全体にわたって受動素子の周波数特性をほぼ一定に保つことが望ましい。
【0003】
例えば、デカップリングコンデンサ及びダンピング抵抗器を使用してRF用途の信号終端を構成することが多い。従来、これら2つの部品は、基板特性に対して相反する要件のため、別々の基板において別々の素子(device)として実装されてきた。DCからギガヘルツ帯まで安定したインピーダンス値を有する抵抗器等の広帯域抵抗器を実現するため、典型的には高オーミック基板(高抵抗基板)を用いて基板全体に形成される寄生インピーダンスを低減する必要があった。一方、デカップリングコンデンサの接地返送路を容易に良好なものとするためには、低オーミック基板(低抵抗基板)が必要であった。
【0004】
コンデンサ及び抵抗器に対して別々の基板を用意することで各部品の性能を安定化できるものの、実装するためには回路面積をより大きくし、相互接続の数をより多くし、且つ製造プロセスをより長期化する必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、コンデンサ及び抵抗素子が同一のダイに集積された半導体素子を提供する。一実施形態において、上記コンデンサはデカップリングコンデンサを構成し、上記抵抗素子は広帯域ダンピング抵抗器を構成する。(抵抗素子ではなくコンデンサの設計留意点に対応している)低抵抗率基板を使用しているにも関わらず、広帯域幅にわたって抵抗素子の抵抗をほぼ一定に保つことができる。低抵抗率基板により、コンデンサの接地返送路を良好なものにできる。広帯域幅にわたってインピーダンスがほぼ一定となるように構成された半導体素子は、終端回路等のインピーダンス制御回路において使用するのに非常に好適なものとなる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
すなわち、本発明の第一の態様は、
基板と、
上記基板上に配置された第一の誘電体層と、
上記第一の誘電体層上に配置された導電層と、
上記導電層上に配置された第二の誘電体層と、
上記第二の誘電体層上に配置された抵抗層と、を備え、
上記基板、上記第一の誘電体層、及び上記導電層は垂直コンデンサを形成しており、
上記第二の誘電体層及び上記抵抗層は抵抗素子を形成しており、
上記基板の抵抗率は、所定値より高い周波数において上記導電層が基準接地を構成するように設定されており、
上記第二の誘電体層及び上記抵抗層は、上記抵抗素子のインピーダンスが上記基準接地に対して所定の抵抗と整合するように構成されている、半導体素子を提供する。
【0007】
典型的には、上記基板は低抵抗率となるよう構成されている。一実施形態において、上記基板の抵抗率は1mΩ・cm以下である。一実装例において、上記基板はドープ材料を含有するよう構成されている。別の実施形態において、上記基板の厚さは100マイクロメートル以下である。上記基板の抵抗率が低いことで、上記コンデンサは良好な接地返送路を有することができ、該コンデンサはデカップリングコンデンサとして非常に好適なものとなる。別の実施形態において、上記コンデンサは更に寄生成分が極めて低くなるように(すなわち、等価直列抵抗(ESR)及び等価直列インダクタンス(ESL)が極めて低くなるように)構成されているため、低周波数及び高周波数においてインピーダンスが低くなる。
【0008】
いくつかの実施形態において、上記第一の誘電体層は、平面状であるか、上記基板内にエッチングされたトレンチ内に積層されている。トレンチを形成することで垂直コンデンサの表面積を増大させることができ、ひいてはその容量を増大させることができる。一実施形態において、上記垂直コンデンサは、パッシブ集積共通基板(Passive Integrated Common substrate(PICS(登録商標)))技術を用いて形成されている。特定の一実施形態において、上記垂直コンデンサの単位面積あたり容量は6nF/mmより大きいことが好ましい。
【0009】
いくつかの実施形態において、上記第二の誘電体層の厚さは0.2マイクロメートル以上0.3マイクロメートル以下である。
【0010】
いくつかの実施形態において、上記抵抗層のシート抵抗は10mΩ/□以上20Ω/□以下である。一実施形態において、上記抵抗層は、アルミナで形成された金属化層に相当する。この実施形態は、抵抗素子の抵抗が1GHz超において約0.5Ωとなる必要があるような用途に適している。別の実施形態において、抵抗素子の目標抵抗は約50Ωである。この場合、上記抵抗層は窒化タンタルで形成されていてもよい。
【0011】
いくつかの実施形態によれば、上記第二の誘電体層及び上記抵抗層(すなわち、上記抵抗素子)は伝送線路を形成している。上記第二の誘電体層及び上記抵抗層はマイクロストリップ伝送線路を形成するように構成されていてもよく、この場合、上記抵抗層は上記第二の誘電体層の上部に配置されている。別の実施形態において、上記抵抗層の側面を1つ以上囲むようにして第一の補助接地平面を形成する材料を配置することで、上記第二の誘電体層、上記第一の補助接地平面、及び上記抵抗層は、接地されたコプレーナ伝送線路を形成している。更に別の実施形態において、上記抵抗層の側面を1つ以上囲むようにして第一の補助接地平面を形成する材料を配置し、且つ上記抵抗層の上面にわたって第二の補助接地平面を形成する材料を配置することで、上記第二の誘電体層、上記第一及び第二の補助接地平面を形成する材料、並びに上記抵抗層はストリップライン伝送線路を形成している。
【0012】
いくつかの実施形態において、上記伝送線路のインピーダンスは、所定の周波数帯にわたってほぼ一定に保たれるよう構成されている。このような構成の場合、伝送線路の構成(マイクロストリップ、コプレーナ、又はストリップライン)、上記第二の誘電体層及び上記抵抗層に使用される材料、上記抵抗層及び/又は上記第二の誘電体層の形状及び厚さ等を含む、上記伝送線路のいくつかの性質を適合させてもよい。
【0013】
上記に関連して、第二の態様によれば、本発明は、
基板を用意する工程と、
上記基板上に第一の誘電体層を形成する工程と、
上記第一の誘電体層上に導電層を形成する工程と、
上記導電層上に第二の誘電体層を形成する工程と、
上記第二の誘電体層上に抵抗層を形成する工程と、を備え、
上記第二の誘電体層及び上記抵抗層は抵抗素子を形成しており、
上記基板を用意する工程は、所定値より高い周波数において上記導電層が基準接地を構成するように上記基板の抵抗率を設定する工程を備え、
上記第二の誘電体層を形成する工程及び上記抵抗層を形成する工程は、上記抵抗素子のインピーダンスが上記基準接地に対して所定の抵抗と整合するように上記第二の誘電体層及び上記抵抗層を構成する工程を備える、半導体素子の製造方法を提供する。
【0014】
添付の図面には本発明のいくつかの実施形態が図示されており、明細書と併せて、本発明をどのように実施すればよいかについての情報を当該分野の当業者に教示している。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、無線周波数(RF)伝送システムの簡略回路図である。
図2図2は、一実施形態に係るRF伝送システムの簡略回路図である。
図3図3は、一実施形態に係る抵抗器-コンデンサ(RC)構造の断面図である。
図4図4は、一実施形態に係る別のRC構造の断面図である。
図5図5は、図3又は図4に示したRC構造の一部の三次元図である。
図6図6は、一実施形態に係る別のRC構造の一部の断面図である。
図7図7は、図6に示したRC構造部分の三次元図である。
図8図8は、一実施形態に係る別のRC構造の一部の断面図である。
図9図9は、図8に示したRC構造部分の三次元図である。
図10図10は、一実施形態に係るRC構造の抵抗素子が有する周波数特性の性能を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
添付の図面を参照して本開示を説明する。概して、ある要素が最初に登場する図面は、典型的には対応する参照番号の一番左側にある数字で示されている。
【0017】
図1は、無線周波数(RF)伝送システム100の簡略回路図である。RF伝送システム100は、例えば、RF送電器又は電力増幅器であってもよい。あるいは、RF伝送システム100は、光トランシーバーの入力段であってもよい。図1に示す通り、RF伝送システム100は、ソース抵抗102と、特性インピーダンスZcを有する伝送線路104と、抵抗器-コンデンサ(RC)回路106とを有する。RC回路106は、抵抗器108及びコンデンサ110を含む。
【0018】
一実施形態において、RF伝送システム100が包絡線(envelope)注入を用いたRF送電器である場合、RC回路106は、デカップリングコンデンサとして作用するコンデンサ110及びダンピング抵抗器として作用する抵抗器108を有する包絡線終端回路を構成する。この場合、RC回路106は、低抵抗終端器(1Ω未満)を構成することで、LCに誘導されたスパイク及び振動を排除できる。別の実施形態において、RF伝送システム100が光トランシーバーにおいて使用される場合、RC回路106は、50Ωの伝送線路と整合するよう適合された終端器(50Ω程度)を構成してもよい。
【0019】
一実施形態において、RF伝送システム100は、ソースインピーダンス、特性インピーダンス、及び負荷インピーダンスを有するインピーダンス整合線路のように取り扱われる。RC回路106は、インピーダンス整合線路の負荷として取り扱われる。インピーダンス整合は、ソースインピーダンス、伝送線路の特性インピーダンス、及び負荷インピーダンスが等しくなるように実施される。これにより、ソースから負荷への最大電力伝送を確保するとともに、負荷からの出力反射を低減できる。
【0020】
一実施形態において、コンデンサ110のデカップリング性能を高めるために、コンデンサ110は、低周波数及び高周波数の両方において寄生成分が極めて低くなるように(すなわち、等価直列抵抗(ESR)及び等価直列インダクタンス(ESL)が極めて低くなるように)設計されている。これにより、動作周波数帯の全域にわたってコンデンサ110のインピーダンスを低くすることができる。更に、コンデンサ110の接地返送路を良好なものとするため、低オーミック基板が使用される。
【0021】
上述の通り、コンデンサ性能のために使用される低オーミック基板は、典型的には抵抗器108の広帯域性能の要件とは適合しない。これは、低オーミック基板が典型的には基板全体で寄生インピーダンスを増大させ、抵抗器108に対する周波数可変実効抵抗となるためである。一実施形態においては、広い周波数範囲にわたって実効抵抗を実質的に一定とするため、抵抗の寄生成分が制御されている。集積体において、抵抗器108はコンデンサ110の上部に直接配置される。加えて、抵抗器108は、コンデンサ110の上板によって構成された基準接地に基づいて調整される伝送線路のように設計されている。これは、上記したコンデンサ設計の選択肢により、より高い周波数において、接地された広帯域分流器(shunt)としてコンデンサ110が挙動するためである。
【0022】
一実施形態においては、抵抗器108による寄生(誘導性寄生及び容量性寄生)がコンデンサの上板全体に分布して、抵抗器108のACインピーダンスがそのDC抵抗と等しい。
【0023】
抵抗器を伝送線路として取り扱うという概念を図2で更に説明する。図2は、一実施形態に係るRF伝送システム200の簡略回路図である。RF伝送システム200は、ソース抵抗202と、DC抵抗Z0と等しい特性インピーダンスZcを有する伝送線路204と、RC回路206とを有する。RC回路206は、DC抵抗がZ0に等しい抵抗器208と、コンデンサ210とを含む。コンデンサ210は、図示の通り、接地された広帯域分流器として挙動するよう設計されているため、RC回路206は、コンデンサ210が構成する基準接地に接続されたDC抵抗Z0の伝送線路212として表すことができる。
【0024】
実施形態の実装例を以下に説明する。これらの実装例は単に説明を目的としたものであり、限定するものではない。
【0025】
図3は、一実施形態に係るRC構造300の断面図である。一実施形態において、RC構造300は、包絡線注入を利用したRF送電器で使用される包絡線終端回路を形成している。一実施形態において、RC構造300は、デカップリングコンデンサ及び広帯域ダンピング抵抗器を構成する。
【0026】
図3に示す通り、RC構造300は、基板302と、基板302上に配置された第一の誘電体層304と、第一の誘電体層304上に配置された導電層306と、導電層306上に配置された第二の誘電体層308と、第二の誘電体層308上に配置された抵抗層310とを含む。
【0027】
基板302、第一の誘電体層304、及び導電層306は垂直コンデンサを形成しており、導電層306は上部コンデンサ板を構成し、基板302は底部コンデンサ板を構成する。
【0028】
一実施形態において、上記垂直コンデンサは、寄生成分が極めて低く(すなわち、ESR及びESLが低く)、且つ容量が大きくなるよう構成されている。特定の一実施形態において、上記垂直コンデンサの単位面積あたり容量は、6nF/mmより大きいことが好ましい。一実装例において、上記垂直コンデンサは、パッシブ集積共通基板(PICS(登録商標))技術を用いて形成されてもよい。
【0029】
上記垂直コンデンサの接地返送路を良好なものとするために、基板302は低オーミック基板となるよう構成されている。実施形態において、基板302の抵抗率は、所定値より高い周波数において導電層306が基準接地を構成するように設定されている。いくつかの実施形態において、基板302の抵抗率は1mΩ・cm以下である。このように低い抵抗率を達成するために、いくつかの実施形態において、基板302はドープ材料を含有している。その代わりとして又はそれに加えて、基板302は、厚さが100マイクロメートル以下であってもよい。実施形態において、基板302は、ガリウム、ヒ化ガリウム、窒化ガリウム等でN型又はP型にドープした珪素材料で形成されてもよい。
【0030】
第一の誘電体層304は珪素酸化物で形成できるが、窒化物、窒化アルミナ等の他の材料を使用してもよい。一実施形態において、第一の誘電体層304は、上記した材料の一種以上で形成された層を組み合わせたものを含む。第一の誘電体層304は、図3に示す通り、平面状であってもよい。あるいは図4に示す通り、第一の誘電体層402は、基板302内にエッチングされた一つ以上の三次元トレンチ内に積層されていてもよい。トレンチを形成することで垂直コンデンサの表面積を増大させることができ、ひいてはその容量を増大させることができる。
【0031】
導電層306はアルミナで形成できるが、アルミナ合金、チタン、白金、銅等の他の材料を使用してもよい。上述の通り、導電層306は、垂直コンデンサの上板を構成する。所定値より高い周波数において、導電層306は、後述する通り、抵抗素子を調整するのに使用される基準接地を構成する。
【0032】
第二の誘電体層308及び抵抗層310は、抵抗素子を形成する。第二の誘電体層308は、珪素酸化物、窒化物、ポリイミド等で形成できる。いくつかの実施形態、例えば、動作周波数範囲にわたって抵抗素子の目標抵抗が0.5Ωである実施形態において、第二の誘電体層308の厚さは0.2マイクロメートル以上0.3マイクロメートル以下であってもよい。
【0033】
一実施形態において、第二の誘電体層308及び抵抗層310は、上記抵抗素子のインピーダンスが、導電層306によって構成された基準接地に対して所定の抵抗と整合するように構成されている。一実施形態において、上記所定の抵抗は、各用途によって目的とされる負荷抵抗に相当する(例えば0.5Ω、50Ω等)。
【0034】
実施形態において、抵抗層310のシート抵抗は10mΩ/□以上20Ω/□以下である。1GHzを超える周波数において上記抵抗素子の抵抗が約0.5Ωとなる必要がある用途に適した一実施形態において、抵抗層310は、アルミナで形成された金属化層として形成されてもよいが、チタン、白金、銅等の他の材料を使用してもよい。別の実施形態において、抵抗層310はタンタルで形成されているが、窒化タンタル、タングステン、又はこれらの組み合わせ等の他の材料を使用してもよい。このような実施形態は、抵抗素子の目標抵抗が約50Ωとなる用途に適している。
【0035】
上述の通り、実施形態によれば、第二の誘電体層308及び抵抗層310は伝送線路を形成する。用途によって異なる伝送線路構造を使用できる。例えば、図3図4、及び図5に示す通り、第二の誘電体層308及び抵抗層310は、マイクロストリップ伝送線路を形成するよう構成してもよい。このような構造において、抵抗層310は全体が第二の誘電体層308上に配置されている。この構造は実装が容易であるという点で有利である。しかしながら、第二の誘電体層308が空気に直接触れるため、外部の電磁摂動の影響を受けやすい場合がある。
【0036】
別の実施形態において、図6の断面図及び図7の三次元図に示す通り、抵抗層310の側面を1つ以上囲むようにして、第一の補助接地平面602を形成する材料が配置されている。第二の誘電体層308を貫通して第一の補助接地平面602を導電層306へと接続するためのビア604が形成されている。これにより、接地されたコプレーナ伝送線路が形成される。コプレーナ伝送線路構造は、より低いインピーダンス(例えば、0.5Ωの範囲)が必要な実施形態において有用となり得るものである。一般には、マイクロストリップ構造等を使用した場合よりも本構造を使用した場合の方がインピーダンスを更に低減できるからである。第一の補助接地平面を形成する材料は、アルミナ又は銅で形成されていてもよい。
【0037】
更に別の実施形態において、図8の断面図及び図9の三次元図に示す通り、第一の補助接地平面を形成する材料602に加えて、抵抗層310上に第二の補助接地平面802を形成する材料が配置されている。具体的には、第一の補助接地平面602及び抵抗層310の上部に酸化物層804が配置されており、酸化物層804の上部に第二の補助接地平面802が配置されている。酸化物層804を貫通して第二の補助接地平面802を第一の補助接地平面602へと接続するためのビア806が形成されている。上記コプレーナ伝送線路構造と同様に、第一の補助接地平面602は、ビア604を用いて導電層306へと接続されている。これにより、ストリップライン伝送線路が形成される。本構造の利点としては、抵抗層310を外部の電磁摂動からより良好に保護できる点が挙げられる。第二の補助接地平面を形成する材料は、アルミナ又は銅で形成されていてもよい。
【0038】
実施形態において、上記伝送線路のインピーダンスは、所定の周波数帯にわたってほぼ一定に保持されるよう構成されている。このような構成は、上記伝送線路の性質、例えば、伝送線路の構造(マイクロストリップ、コプレーナ、又はストリップライン)、第二の誘電体層308及び抵抗層310に使用される材料、抵抗層310及び/又は第二の誘電体層308の形状及び厚さ等を含む、一つ以上の性質を適切に設定することで達成できる。
【0039】
例えば、伝送線路の抵抗成分及び誘導成分は、抵抗層310及び第二の誘電体層308の寸法及び電気的性質、並びに基準接地/補助接地平面に対する抵抗層310の配置を適切に設定することで制御できる。例えば、一実施形態において、第二の誘電体層308の厚さは選択可能であり、抵抗層310の寸法、抵抗率、及び誘電率は、第二の誘電体層308の厚さに基づいて設定できる。一実施形態において、第二の誘電体層308が厚いほど、抵抗層310の幅を狭くして伝送線路のインピーダンスを一定且つそのDC抵抗値と同じ値で保持するのにより適切である。
【0040】
一例として、DCからギガヘルツ帯までの動作周波数範囲にわたってインピーダンスを0.5Ωにほぼ等しく保持するためには、以下に例示する構造(マイクロストリップ構造)が使用できる。インピーダンスの低周波数部分(例えば、DC抵抗)は、抵抗層310の抵抗率によって駆動する。平方抵抗(Rsquare)が30mΩ、トラック幅(w)が75マイクロメートルとした場合、トラック長(L)が1250マイクロメートルであると、以下の式(1)を用いて抵抗終端は0.5Ωとなる。
【数1】
【0041】
インピーダンスのより高周波部分又はAC部分については、マイクロストリップ伝送線路の設計式(例えば、Brian C.Wadell、「Transmission Line Design Handbook」、Artech House、1991年を参照)を用いて必要な伝送線路パラメータを算出できる。この例の場合、抵抗層310の上記パラメータ(すなわち、平方抵抗、トラック長L、及びトラック幅w)を用いて、第二の誘電体層308の誘電率及び厚さを約3.9及び約0.2マイクロメートルとすれば、GHz帯における抵抗終端は0.5Ωとなる。
【0042】
別の実施形態において、DCからギガヘルツ帯までの動作周波数範囲にわたって目標抵抗50Ωを達成するためには、上記と同様のアプローチで構造を得てもよい。構造の一例において、抵抗層310の抵抗率が10Ω/□、トラック長(L)が5.5マイクロメートル、トラック幅(w)が0.5μmであってもよく、第二の誘電体層308の誘電率が約3.9、厚さが3マイクロメートルであってもよい。
【0043】
当業者であれば容易に理解できることであるが、上記実施例において、上記実施例とは異なるものの依然として式(1)を満たす平方抵抗、トラック幅(w)、及びトラック長(L)の値を有する抵抗層310を使用しても、DC抵抗の目標値(それぞれ0.5Ω又は50Ω)が得られる。抵抗層310の平方抵抗、トラック幅(w)、及びトラック長(L)が、実施例で与えられた値と異なる場合、伝送線路のパラメータ(及び、特に、第二の誘電体層308の特性)は、必要に応じてマイクロストリップ伝送線路の設計式を用いて調整することで、ギガヘルツ帯までのインピーダンスを所望の0.5Ω又は50Ωとすることができる。
【0044】
図10は、一実施形態に係る例示的RC構造の抵抗素子が有する周波数特性の性能を示す図である。上記例示的RC構造は5nFの垂直コンデンサを構成し、DCから5GHzまでの周波数帯にわたって抵抗素子の目標抵抗を0.5Ωとした。抵抗素子にはマイクロストリップ伝送線路構造を使用した。
【0045】
図10の曲線1002に示す通り、本実施形態に係る上記抵抗素子は、目標周波数帯の全体にわたって抵抗が約0.5Ωでほぼ一定である。従って、動作周波数帯にわたって素子の性能を均一にできる。
【0046】
一方、曲線1004は、インピーダンスを制御していない抵抗器の性能を示す。インピーダンスを制御していない抵抗器は、高オーミック基板の上部に配置されており、伝送線路としての寸法合わせが実施されていない。図示の通り、制御していないインピーダンスは10Hz(100MHz)付近で急激に上昇し始め、約10Hz(1GHz)でほぼ2倍の値になる。この結果から、動作周波数帯にわたって素子の性能が均一ではないことがわかる。
【0047】
上記実施形態の説明により、本開示の一般的な性質は十分明らかになったので、当該技術の知識を適用することで、過度の実験を実施することなく、本開示の一般的概念から逸脱することなく、各種用途に合わせて実施形態を容易に改変及び/又は適合できるであろう。本明細書中の表現又は用語は説明を目的としたものであって限定するためのものではなく、本明細書中の用語又は表現は、教示及び指示を鑑みて当業者が解釈すべきものである。
【0048】
本開示に係る実施形態の広さ及び範囲は、上述した例示的な実施形態によって限定されるものではなく、特許請求の範囲に従ってのみ規定されるものである。
【符号の説明】
【0049】
100、200:無線周波数(RF)伝送システム
102、202:ソース抵抗
104、204:伝送線路
106、206:抵抗器-コンデンサ(RC)回路
108、208:抵抗器
110、210:コンデンサ
300、400:RC構造
302:基板
304、402:第一の誘電体層
306:導電層
308:第二の誘電体層
310:抵抗層
602:第一の補助接地平面
604、806:ビア
802:第二の補助接地平面
804:酸化物層
1002、1004:曲線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10