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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-20
(45)【発行日】2022-09-29
(54)【発明の名称】ハイブリッド車両の発電制御装置
(51)【国際特許分類】
   B60W 10/08 20060101AFI20220921BHJP
   B60K 6/442 20071001ALI20220921BHJP
   B60L 58/12 20190101ALI20220921BHJP
   B60L 58/16 20190101ALI20220921BHJP
   B60W 20/13 20160101ALI20220921BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20220921BHJP
   H02J 7/02 20160101ALI20220921BHJP
   H02J 7/14 20060101ALI20220921BHJP
【FI】
B60W10/08 900
B60K6/442 ZHV
B60L58/12
B60L58/16
B60W20/13
H02J7/00 P
H02J7/02 B
H02J7/14 A
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020509910
(86)(22)【出願日】2019-03-14
(86)【国際出願番号】 JP2019010651
(87)【国際公開番号】W WO2019188362
(87)【国際公開日】2019-10-03
【審査請求日】2021-04-27
(31)【優先権主張番号】P 2018059564
(32)【優先日】2018-03-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006286
【氏名又は名称】三菱自動車工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089875
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 茂
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 勇輔
(72)【発明者】
【氏名】生駒 憲彦
(72)【発明者】
【氏名】清水 亮
(72)【発明者】
【氏名】山崎 聖悟
(72)【発明者】
【氏名】田中 純雄
(72)【発明者】
【氏名】田脇 達也
【審査官】岩田 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-022118(JP,A)
【文献】特開2008-168700(JP,A)
【文献】特開2017-140869(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 10/08
B60K 6/442
B60L 58/12
B60L 58/16
B60W 20/13
H02J 7/00
H02J 7/02
H02J 7/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンで駆動される車載発電機の発電電力および車載バッテリに蓄積された電力の少なくともいずれか一方を用いてモータを駆動して走行可能であり、
所定量以上のアクセル操作により前記エンジンが駆動する第1モードと、
前記所定量よりも小さいアクセル操作で前記エンジンが駆動する第2モードと、
を有するハイブリッド車両の発電制御装置であって、
前記第2モードにおける前記車載発電機での発電量を制限可能な発電制限部を備え、
当該発電制限部は、前記車載バッテリの充電率が第1の所定値以上のときに前記エンジンを駆動させる場合には、前記車載発電機での発電量を、前記第1モードにおいて前記エンジンを駆動させる場合の前記車載発電機での発電量よりも少なくする、
ことを特徴とするハイブリッド車両の発電制御装置。
【請求項2】
前記車載発電機での発電量を制御する発電制御部を更に備え、
前記発電制御部は、前記発電制限部による前記発電量の非制限時には、運転者からの前記モータへの要求出力を出すのに必要な電力である要求電力を前記車載発電機での目標発電量として設定し、前記発電制限部による前記発電量の制限時には、前記要求電力よりも少ない電力を前記車載発電機での目標発電量として設定し、
前記要求電力の不足分は、前記車載バッテリから前記モータへと供給される、
ことを特徴とする請求項記載のハイブリッド車両の発電制御装置。
【請求項3】
前記発電制限部は、前記車載バッテリの前記充電率に基づいて前記発電量の制限度合いを変更する、
ことを特徴とする請求項1または2に記載のハイブリッド車両の発電制御装置。
【請求項4】
前記発電制限部は、前記車載バッテリの前記充電率が高いほど前記発電量の制限度合いを大きくする、
ことを特徴とする請求項記載のハイブリッド車両の発電制御装置。
【請求項5】
前記発電制限部は、前記車載バッテリの前記充電率が前記第1の所定値よりも小さい第2の所定値以下となった場合、前記発電量の制限を漸近的に解除する、
ことを特徴とする請求項1からのいずれか1項記載のハイブリッド車両の発電制御装置。
【請求項6】
前記車載バッテリの出力性能を検知するバッテリ性能検知部を更に備え、
前記発電制限部は、前記車載バッテリの出力性能が低下している場合には前記発電量の制限度合いを小さくする、
ことを特徴とする請求項1からのいずれか1項記載のハイブリッド車両の発電制御装置。
【請求項7】
前記バッテリ性能検知部は、前記車載バッテリの劣化度合いを検知し、
前記発電制限部は、前記車載バッテリの前記劣化度合いが大きいほど前記発電量の制限度合いを小さくする、
ことを特徴とする請求項記載のハイブリッド車両の発電制御装置。
【請求項8】
前記バッテリ性能検知部は、前記車載バッテリのバッテリ温度を検知し、
前記発電制限部は、前記車載バッテリの前記バッテリ温度が低いほど前記発電量の制限度合いを小さくする、
ことを特徴とする請求項記載のハイブリッド車両の発電制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハイブリッド車両の発電制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、エンジンとモータとを搭載したハイブリッド車両では、減速時や下り坂等でモータを回生運転させることにより制動力(回生制動力)を発生させ、エネルギーロスを低減している。ここで、回生運転時はモータにより発電を行うが、バッテリの充電率が高い状態では回生運転により発生した電力の受け入れ量が少なくなり、回生制動力が小さくなるという解題がある。
これを解決するため、例えば、下記特許文献1には、エンジンと、このエンジンに連結された発電機と、電力を蓄える蓄電器と、電力によって駆動力を発生する走行モータとを備え、車両減速時に生じるエネルギを上記走行モータの発電運転により電力エネルギに変換して上記蓄電器に蓄えるエネルギ回生動作が可能なハイブリッド型電気自動車において、上記エネルギ回生動作時に上記蓄電器の充電量が所定値を越えた場合に電力エネルギを消費する電力消費装置を二つ以上備えたハイブリッド型電気自動車が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2002-238105号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般に、ハイブリッド車両は、バッテリの充電率が高い間はモータのみを駆動して走行するEV走行モードで走行し、バッテリの充電率が低下するとエンジンで発電機を駆動してモータに電力を供給して走行するHV走行モードに移行する。すなわち、ハイブリッド車両でエンジンが駆動するのは、基本的にはバッテリの充電率が低い状態である。
一方で、例えば走行時の操作応答性の良いスポーツモードに設定された場合やエアコンで暖房を効かせたい場合、ユーザから充電要求があった場合(チャージスイッチが操作された場合)などには、バッテリの充電率に関わらずエンジンが始動する。
エンジンが始動し発電機が駆動されると、発電された電力はモータに供給され、バッテリからモータへの供給電力は低減する。このため、バッテリの充電率が高い状態でエンジンが始動すると、回生制動が効きにくい状態が長時間継続してしまうという課題がある。
上述した従来技術では、回生運転で発生した電力を電力消費装置(排ガス浄化装置や発電機)で消費するようにしているが、上記のようにエンジンが稼働している状態では、発電機によるエンジンのモータリングを行うことができない。
本発明は、このような事情に鑑みなされたものであり、その目的は、バッテリが高充電率状態にある際にエンジンが始動した場合でも、高い回生制動力を得ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述の目的を達成するため、本発明にかかるハイブリッド車両の発電制御装置は、エンジンで駆動される車載発電機の発電電力および車載バッテリに蓄積された電力の少なくともいずれか一方を用いてモータを駆動して走行可能であり、所定量以上のアクセル操作により前記エンジンが駆動する第1モードと、前記所定量よりも小さいアクセル操作で前記エンジンが駆動する第2モードと、を有するハイブリッド車両の発電制御装置であって、前記第2モードにおける前記車載発電機での発電量を制限可能な発電制限部を備え、当該発電制限部は、前記車載バッテリの充電率が第1の所定値以上のときに前記エンジンを駆動させる場合には、前記車載発電機での発電量を、前記第1モードにおいて前記エンジンを駆動させる場合の前記車載発電機での発電量よりも少なくする、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、第2モード中、車載バッテリの充電率が第1の所定値以上の際にエンジンを駆動させる場合、車載発電機での発電量を制限するので、発電量の非制限時と比較して車載バッテリからの出力電力(放電量)が多くなる。この結果、モータの回生運転時に車載バッテリで受け入れ可能な電力量が増加し、より大きい回生制動力を得る上で有利となる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】実施の形態にかかる発電制御装置10を搭載したハイブリッド車両12の構成を示す説明図である。
図2】ECU60の機能的構成を示すブロック図である。
図3】ジェネレータ31の発電電力と要求電力との関係を示すグラフである。
図4】発電量の制限度合いを模式的に示すグラフである。
図5】バッテリ50の充電率と発電電力との関係を示すグラフである。
図6】バッテリ50の出力性能低下時における制御を模式的に示す説明図である。
図7】発電制御装置10の処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に添付図面を参照して、本発明にかかるハイブリッド車両の発電制御装置(以下、単に「発電制御装置」という)の好適な実施の形態を詳細に説明する。
図1は、実施の形態にかかる発電制御装置10を搭載したハイブリッド車両12の構成を示す説明図である。
図1に示すように、ハイブリッド車両12は、走行システム20と、発電システム30と、ECU60とを備えている。
走行システム20は、ハイブリッド車両12の駆動機構であり、前輪21および後輪22と、モータ23と、インバータ24と、エンジン25と、モータ23の出力軸23Aの回転とエンジン25の出力軸25Aの回転とを前輪21に伝達する伝達機構26と、燃料タンク40と、バッテリ(車載バッテリ)50とを備えている。
【0009】
前輪21および後輪22は、それぞれ車幅方向で対となった2つの車輪で構成されている。本実施の形態では、前輪21がモータ23およびエンジン25で駆動される駆動輪となっている。
モータ23は、バッテリ50に蓄積された電力を用いて駆動し、出力軸23Aから回転力(トルク)を出力する。なお、モータ23は、ハイブリッド車両12の減速時(アクセルペダルの戻し時など)に回生運転を行い回生発電することも可能である。回生発電により発生した電力はインバータ24を介してバッテリ50に供給され、バッテリ50を充電する。
【0010】
インバータ24は、バッテリ50に蓄積された電力、または後述するジェネレータ31で発電した電力を運転者の要求出力に合わせて調整してモータ23に供給する。運転者の要求出力は、例えばアクセルペダルやブレーキペダル、シフトレバー(図示なし)等の操作状態や車速センサによって計測された車速などに基づいて、後述するECU60が算出する。ECU60は、算出した運転者からの要求出力に基づいてインバータ24を制御する。
【0011】
エンジン25は、燃料タンク40から供給される燃料を燃焼室内で燃焼することによって駆動する。エンジン25は、一例として、ガソリンを燃料とするレシプロエンジンである。エンジン25の駆動は、後述するECU60によって制御される。
【0012】
伝達機構26は、モータ23の出力軸23Aの回転を前輪21に伝達するとともに、エンジン25の出力軸25Aの回転を前輪21に伝達する。伝達機構26は、クラッチ装置27を備えている。クラッチ装置27は、一対のクラッチ板27A,27Bと、クラッチ板27A,27Bを互いに接触可能とさせ、かつ、接触状態を解除可能とする駆動部27Cを備えている。
【0013】
クラッチ板27Aは、エンジン25の出力軸25Aと一体に回転する。クラッチ板27Bは、モータ23の出力軸23Aと一体に回転する。駆動部27Cによってクラッチ板27A,27Bどうしが互いに接触すると、クラッチ板27A,27Bは互いに一体に回転する。このことによって、エンジン25の出力軸25Aの回転が前輪21に伝達される。駆動部27Cによってクラッチ板27A,27Bが互いに離れた状態になると、エンジン25の出力軸25Aの回転は前輪21に伝達されなくなる。駆動部27Cは、後述するECU60によって制御される。
【0014】
燃料タンク40は、エンジン25の動力源である燃料(例えばガソリン)を蓄積する。
バッテリ50は、モータ23の動力源である電力を蓄積する。バッテリ50の充電は、後述するジェネレータ31による発電、モータ23による回生発電、およびハイブリッド車両12の車体に設けられた充電コネクタ(図示なし)から外部電源の供給等によって行うことができる。
バッテリ50にはBMU(Battery Monitoring Unit)50Aが接続されている。BMU50Aは、バッテリ50の電圧や温度、入出力される電流等を検出し、充電率(SOC:State Of Charge)を含むバッテリ50の状態を検出する。BMU50Aは、バッテリ50の状態(充電率やバッテリ電圧、バッテリ温度等)をECU60に送信する。
【0015】
発電システム30は、バッテリ50を充電するための機構であり、エンジン25と、ジェネレータ(車載発電機)31と、インバータ24とを備えている。
【0016】
ジェネレータ31の回転軸31Aには、第2の伝達機構32を介してエンジン25の出力軸25Aの回転が伝達される。ジェネレータ31は、ECU60の制御によって発電可能な状態になると、エンジン25の出力軸25Aの回転を受けて回転軸31Aが回転し、発電する。ジェネレータ31は、インバータ24に接続されており、ジェネレータ31が発電した交流電力はインバータ24によって直流電力に変換されてバッテリ50に充電される。
また、後述するHV走行モードでは、ジェネレータ31が発電した交流電力がそのままモータ23の駆動に用いられる。この場合、ジェネレータ31の発電電力はインバータ24で適宜周波数が変換された上でモータ23に供給される。
【0017】
ジェネレータ31は、エンジン25を始動する際の電動機(スタータ)としても機能する。ECU60は、エンジン25を始動するときは、インバータ24を制御してジェネレータ31を駆動する。ジェネレータ31が駆動することによって回転軸31Aが回転する。回転軸31Aは第2の伝達機構32を介してエンジン25の出力軸25Aに連結されているので、ジェネレータ31が駆動されて回転軸31Aが回転すると、エンジン25の出力軸25Aを回転することができる。
【0018】
ECU60は、ハイブリッド車両12全体を制御する制御部であり、ハイブリッド車両12の発電制御装置10として機能する。
ECU60は、CPU、制御プログラムなどを格納・記憶するROM、制御プログラムの作動領域としてのRAM、各種データを書き換え可能に保持するEEPROM、周辺回路等とのインターフェースをとるインターフェース部などを含んで構成される。
【0019】
図2は、発電制御装置10(ECU60)の機能的構成を示すブロック図である。
ECU60は、上記CPUが上記制御プログラムを実行することにより、駆動制御部602、エンジン始動要求検知部604、バッテリ性能検知部606、発電制御部608、発電制限部610として機能する。
【0020】
駆動制御部602は、例えばハイブリッド車両12のバッテリ50の充電率やハイブリッド車両12への要求出力などのパラメータに基づいて、ハイブリッド車両12の各部、例えばモータ23、エンジン25、ジェネレータ31、クラッチ装置27の駆動部27C等を制御する。
駆動制御部602は、ハイブリッド車両12の走行モードを、例えばモータ23のみを駆動して走行するEV走行モードと、モータ23とエンジン25とを駆動しバッテリ50の充電率を所定範囲に維持して走行するHV走行モードと、の間で切り替えることが可能である。
EV走行モード中は、エンジン25は停止し、モータ23の駆動力で車軸を回転させて走行する。EV走行モードでモータ23に供給される電力は、バッテリ50に蓄積された蓄積電力であり、モータ23の回生運転時以外はバッテリ50内の電力が消費され、バッテリ50の充電率が徐々に低下する。
HV走行モード(シリーズ走行モード)中は、エンジン25でジェネレータ31を駆動しながら、モータ23の駆動力で車軸を回転させて走行する。HV走行モード中は、ジェネレータ31で発電された発電電力がモータ23に供給されるため、バッテリ50の充電率は一定範囲に保たれる。
【0021】
駆動制御部602は、バッテリ50の充電率が所定のモード切替充電率以下となるまではEV走行モードで、バッテリ50の充電率がモード切替充電率以下となった場合はHV走行モードでハイブリッド車両12を走行させる。
バッテリ50が高充電率の状態(モード切替充電率以上)からハイブリッド車両12が走行を開始すると、駆動制御部602は、まずEV走行モードハイブリッド車両12を走行させる。EV走行モードでは、バッテリ50の充電率は徐々に低下する。そして、バッテリ50の充電率がモード切替充電率になると、走行モードをHV走行モードに切り替える。
HV走行モードでは、モータ23に加えてエンジン25が駆動し、エンジン25の動力によりジェネレータ31を駆動して発電を行ってモータ23に電力を供給することにより、バッテリ50の充電率が一定範囲に保たれる。
【0022】
エンジン始動要求検知部604は、エンジン25が駆動状態にないEV走行モードでの走行中にエンジン25の始動要求があったことを検知し、エンジン25を始動させる。
エンジン始動要求検知部604は、例えば所定量以上のアクセル操作(アクセルペダルの踏み込み)があった場合にエンジン25を始動させ、ジェネレータ31による発電を行わせる。これは、所定量以上のアクセル操作が行われた場合には、モータ23に高い出力が要求されており、モータ23に供給する電力をバッテリ50の電力のみではまかない切れない(瞬間的な出力増大にバッテリ放電が追い付かない)可能性があるためである。
ここで、エンジン25が始動するアクセル操作量は、車両へのモード設定(本実施の形態ではノーマルモードおよびスポーツモード)により変更される。すなわち、ノーマルモードが設定されている場合には、上記のように所定量以上のアクセル操作が行われた場合にエンジン25が始動するのに対して、スポーツモードが設定されている場合には、所定量より小さいアクセル操作が行われた段階でエンジン25が始動する。スポーツモードの設定により、ユーザによるアクセル操作への加速応答性を向上させることができる。
すなわち、ハイブリッド車両12は、所定量以上のアクセル操作によりエンジン25が駆動するノーマルモード(第1モード)と、所定量よりも小さいアクセル操作でエンジンが駆動する第2モード(スポーツモード)とを有する。
なお、スポーツモードの設定は、例えば運転席に設けられた操作部(スポーツモード設定用スイッチなど)をユーザが操作することによって行う。
また、エンジン始動要求検知部604は、例えば暖房要求や充電要求(チャージスイッチの操作)などがあった場合に、エンジン始動要求があったものとし、エンジン25を始動させてもよい。
【0023】
バッテリ性能検知部606は、バッテリ50の出力性能を検知する。なお、バッテリ性能検知部606の機能をBMU50Aに設けてもよい。
バッテリ性能検知部606は、例えばバッテリ50の劣化度合い(SOH:State Of Health)やバッテリ温度を検知する。バッテリ50の劣化度合いは、例えばバッテリ50の使用開始からの経過時間、積算通電量、バッテリ温度の経時変化などを記録し、バッテリ50の性能特性に基づいて予め定められている劣化度推定マップや計算式等に基づいて推定することができる。また、バッテリ温度は、BMU50Aから取得することができる。
一般に、バッテリ50の劣化度合いが大きいほど、またバッテリ温度が低いほどバッテリ50の出力性能が低下することが知られている。バッテリ50の出力性能が低下するとは、バッテリ50の充電率に関わらず単位時間あたりに出力できる電力量が低下することを指す。
【0024】
発電制御部608は、ジェネレータ31での目標発電量を設定し、目標発電量に基づいてエンジン25の駆動状態を制御する。
本実施の形態では、基本的にエンジン25の駆動中は、モータ23が運転者からの要求出力を出すのに必要な電力(要求電力)をジェネレータ31で発電してモータ23に供給する。この場合、モータ23での消費電力はジェネレータ31の発電電力でまかなわれ、バッテリ50の充電率は減少しない。
一方、後述する発電制限部610により発電量が制限される場合には、要求電力のうち一部をジェネレータ31で発電するとともに、残りはバッテリ50に蓄積された電力をモータ23に供給する。この場合、モータ23でバッテリ50の蓄積電力の一部が使用され、バッテリ50の充電率が減少する。
すなわち、発電制御部608は、発電制限部610による発電量の非制限時(通常時)には、運転者からのモータ23への要求出力を出すのに必要な電力である要求電力をジェネレータ31での目標発電量として設定し、発電制限部610による発電量の制限時には、要求電力よりも少ない電力をジェネレータ31での目標発電量として設定する。このとき、要求電力の不足分は、バッテリ50からモータ23へと供給される。
また、要求電力がジェネレータ31の上限発電電力以上の場合には、不足分をバッテリ50に蓄積された電力で補う。この場合も、バッテリ50の充電率が減少する。
【0025】
図3は、ジェネレータ31の発電電力と要求電力との関係を示すグラフである。
図3において、縦軸はモータ23への供給電力およびジェネレータ31の発電電力、横軸は要求電力である。図3には3つの項目、すなわち発電電力+バッテリ出力電力を示すラインL1、発電量の非制限時(通常時)における発電電力を示すラインL2、発電量の制限時における発電電力を示すラインL3を示している。また、網掛け部分がバッテリ50の出力電力となる。
ラインL1は、ジェネレータ31の発電電力とバッテリ50からの出力電力との和であり、最終的にモータ23に供給される電力を示している。ラインL1は、全領域に渡って要求電力と等しくなっている。
ラインL2は、後述する発電量の制限が行われていない場合(通常時)のジェネレータ31の発電電力を示している。ラインL2は、ジェネレータ31の上限発電電力WMまでは要求電力と等しくなっており、上限発電電力WM以上の領域では上限発電電力WMでの発電を維持している。すなわち、通常時は、要求電力が上限発電電力WM以下の領域では、要求電力を全てジェネレータ31で発電してモータ23に供給し、要求電力が上限発電電力WMを超える領域では、ジェネレータ31で上限発電電力WMを発電するとともに、バッテリ50の出力電力によって要求電力との不足分を補っている。
ラインL3は、後述する発電量の制限が行われている場合(発電制限時)のジェネレータ31の発電電力を示している。ラインL3では、全領域に渡って、ジェネレータ31の発電電力が要求電力よりも小さい値となっており、通常時と比較してジェネレータ31の発電電力が少なくなっている。すなわち、発電制限時は、全ての領域においてジェネレータ31での発電量が要求電力よりも少なく、バッテリ50の出力電力によって要求電力との不足分を補っている。例えば、要求電力が70Whの場合、通常時はジェネレータ31で70Wh発電するのに対して、発電制限時は40Whしか発電せず、残りの30Whはバッテリ50から供給する。このため、発電制限時には通常時よりもバッテリ50の消費電力が大きくなり、充電率が下がりやすくなる。
【0026】
図2の説明に戻り、発電制限部610は、スポーツモード(第2モード)におけるジェネレータ31での発電量を制限可能である。より詳細には、発電制限部610は、スポーツモード設定中にバッテリ50の充電率が第1の所定値以上のときにエンジン25を駆動させる場合には、ジェネレータ31での発電量を、バッテリ50の充電率が第1の所定値未満のときにエンジン25を駆動させる場合のジェネレータ31での発電量よりも少なくする。
第1の所定値は、例えば比較的高充電率の値(充電率80%など)とする。
このような発電制限を行うのは、高充電率状態でジェネレータ31の発電電力のみを用いて走行すると、バッテリ50の充電率が高い状態が長時間継続し、回生制動力が得られにくい状態が継続するためである。上述のように、通常、HV走行モードに際してハイブリッド車両12のエンジン25が駆動するのは、バッテリ50の充電率が低くなった場合である。一方、EV走行中にエンジン25の始動要求があった場合(所定量以上のアクセル操作が行われた場合など、エンジン始動要求検知部604でエンジン25の始動要求を検知した場合)には、バッテリ50の充電率に関わらずエンジン25が始動し、ジェネレータ31の発電が開始される。特に、スポーツモード設定時には、ノーマルモードと比較して頻繁にエンジン25が駆動することになり、バッテリ50の充電率が上がりやすくなる。
発電制限部610を用いて、スポーツモード設定中におけるジェネレータ31での発電量を制限することによって、バッテリ50の充電率を意図的に下げ、回生制動力を得られやすい状態とすることができる。
【0027】
なお、ノーマルモード(第1モード)設定中は、発電制限部610による制限を行わなくてもよい。例えば、ノーマルモード設定中は図3のラインL2に沿って発電電力が移行するのに対して、スポーツモード設定中かつバッテリの充電率がバッテリ50の充電率が第1の所定値以上の場合には図3のラインL3に沿って発電電力が移行する。
すなわち、発電制限部610は、スポーツモード設定中にバッテリ50の充電率が第1の所定値以上のときにエンジン25を駆動させる場合には、ジェネレータ31での発電量を、ノーマルモードにおいてエンジン25を駆動させる場合のジェネレータ31での発電量よりも制限する。
【0028】
発電制限部610は、例えばバッテリ50の充電率に基づいて発電量の制限度合いを変更するようにしてもよい。具体的には、例えばバッテリ50の充電率が大きいほど発電量の制限度合いを大きくする。
図4は、発電量の制限度合いを模式的に示すグラフである。
図4の各項目は図3と同様であるが、発電量の制限時における発電電力を示すラインとしてラインL3とラインL4とを示している。ラインL3は、例えばバッテリ50の充電率が100%の場合の発電電力を示しており、ラインL4は、例えばバッテリ50の充電率が80%の場合の発電電力を示している。
ラインL3とラインL4とを比較すると、充電率100%における発電電力の方が、充電率80%における発電電力よりも少なくなっており、通常時における発電電力(ラインL2)との差分が大きくなっている。これにより、充電率100%の時の方が充電率80%の時よりもバッテリ50からの出力電力が多くなり、バッテリ50の充電率を早期に低減することができる。
【0029】
また、発電制限部610は、バッテリ50の充電率が第2の所定値以下となった場合に、発電量の制限を漸近的に解除するようにしてもよい。なお、第2の所定値(発電制限解除充電率)は、第1の所定値(発電制限開始充電率)以下の値とする。
すなわち、発電制限部610は、十分な回生制動力を得られるだけバッテリ50の充電率が低下した場合には発電制限を解除するが、その際に例えば図3のラインL3からラインL2へと垂直的に発電量を変化させると、エンジン25の回転数が急激に高まってユーザに違和感を与える。このため、発電制限の解除時には発電量を徐々に変化させるようにする。
【0030】
図5は、バッテリ50の充電率と発電電力との関係を示すグラフであり、図5Aはバッテリ50の充電率、図5Bは発電電力(要求電力は一定と仮定)を示す。
図5の例では、充電率70%が第2の所定値となっている。充電率100%(図示なし)から充電率70%までの領域では、発電制限部610は、発電電力を例えば図3のラインL3に沿った値N1とする。また、充電率60%以下の領域では、発電電力を例えば図3のラインL2に沿った値N2(>N1)とする。この間の充電率70%から充電率60%までの領域では、充電率と反比例して発電電力を値N1から値N2へと徐々に増加させる。
このようにすることで、エンジン25の回転数の急激な変化を生じさせることなく、発電量の制限を解除することができる。
【0031】
また、発電制限部610は、バッテリ性能検知部606で検知されたバッテリ50の出力性能に基づいて発電量の制限度合いを変更してもよい。この場合、発電制限部610は、バッテリ50の出力性能が低下している場合には発電量の制限度合いを小さくする。これは、バッテリ50の出力性能が低下している場合には、発電量の制限によって不足した発電量をバッテリ50からの出力電力で補うことができない可能性があるためである。
上述のように、バッテリ50の出力性能に関わる指標としては、例えばバッテリ50の劣化度合いやバッテリ温度が挙げられ、バッテリ50の劣化度合いが大きいほど、またバッテリ温度が低いほどバッテリ50の出力性能が低下することが知られている。
このため、発電制限部610は、バッテリ50の劣化度合いが大きいほど発電量の制限度合いを小さく、また、バッテリ温度が低いほど発電量の制限度合いを小さくする。なお、発電量の制限度合いを小さくするとは、図4を用いて説明した通りである。
【0032】
図6は、バッテリ50の出力性能低下時における制御を模式的に示す説明図である。
図6Aは、バッテリ50の出力性能が十分高い場合を示す。バッテリ50の出力性能が十分高い場合には、要求電力WAに対して、例えば図3のラインL3に沿った制限時発電電力WBを設定し、不足分をバッテリ出力電力WCとして設定する(WA=WB+WC)。
図6Bは、バッテリ50の出力性能が低下した場合を示す。この場合のバッテリ出力電力WDは、図6Aに示すバッテリ出力電力WCよりも少なくなる。よって、図6Aと同様の制限時発電電力WBでは要求電力WAに足りなくなってしまう。この場合、発電制限部610は、不足する電力WEの分だけ発電電力を増加させ、ジェネレータ31の発電電力をWF=WB+WEとする。
これにより、バッテリ50の出力性能低下時におけるモータ23への供給電力不足を防止することができる。
【0033】
図7は、発電制御装置10の処理を示すフローチャートである。
ハイブリッド車両12の走行中、駆動制御部602は、バッテリ50の充電率がモード切替充電率以上か否かを判断し(ステップS700)、モード切替充電率以上の場合は(ステップS700:Yes)、エンジン25を停止して走行するEV走行モードでハイブリッド車両12を走行させ(ステップS702)、モード切替充電率未満の場合は(ステップS700:No)、エンジン25を駆動して発電を行いながら走行するHV走行モードでハイブリッド車両12を走行させる(ステップS704)。
【0034】
EVモードでの走行中、ノーマルモードで走行している場合には(ステップS705:No)、所定量以上のアクセル操作が行われた場合、すなわちアクセル操作量が第1の所定量α以上となった場合にエンジン25が始動する(ステップS706)。この場合、発電制御部608は、通常通り(図3のラインL2に沿って)ジェネレータ31の発電量を設定する(ステップS712)。
【0035】
一方、EVモードでの走行中、スポーツモードが設定されている場合には(ステップS705:Yes)、上記所定量より小さいアクセル操作により、すなわちアクセル操作量が第1の所定量αよりも小さい第2の所定量β以上となった場合にエンジン25が始動する(ステップS708)。
【0036】
スポーツモード設定中、発電制御部608は、バッテリ50の充電率が第1の所定値以上か否かを判断する(ステップS710)。バッテリ50の充電率が第1の所定値未満の場合(ステップS710:No)、モータ23が回生運転した場合に発生する電力をバッテリ50が受け入れ可能な状態であるため、通常通り(図3のラインL2に沿って)ジェネレータ31の発電量を設定する(ステップS712)。
一方、バッテリ50の充電率が第1の所定値以上の場合(ステップS710:Yes)、モータ23が回生運転した場合に発生する電力をバッテリ50が受け入れられず、十分な回生制動力が得られないと判断し、発電制限部610でジェネレータ31の発電量を制限する(ステップS714)。この場合、発電制限部610は、例えば図3のラインL3に沿ってジェネレータ31の発電量を設定したり、バッテリ50の出力性能や充電率に基づいて適宜発電量の制限度合いを変更する。
バッテリ50の充電率が第2の所定値以下になるまでは(ステップS716:Noのループ)、ステップS714に戻り、発電量の制限を継続する。バッテリ50の充電率が第2の所定値以下になると(ステップS716:Yes)、発電量の制限を漸次的に解除する。すなわち、ジェネレータ31の発電量を漸次的に増加させ、通常時の発電量と一致させる。
【0037】
以上説明したように、実施の形態にかかる発電制御装置10は、スポーツモード設定中にバッテリ50の充電率が第1の所定値以上の際にエンジン25を駆動させる場合、ジェネレータ31での発電量を制限するので、発電量の非制限時と比較してバッテリ50からの出力電力(放電量)が多くなる。この結果、モータ23の回生運転時にバッテリ50で受け入れ可能な電力量が増加し、より大きい回生制動力を得る上で有利となる。
また、発電制御装置10において、バッテリ50の充電率に基づいて発電量の制限度合いを変更するようにすれば、ジェネレータ31の発電量を適切に設定する上で有利となる。例えば、バッテリ50の充電率が高いほど発電量の制限度合いを大きくするので、より短時間にバッテリ50の充電率を低減させる上で有利となる。ひいては、回生制動力を得る上でさらに有利となる。
また、発電制御装置10において、バッテリ50の充電率が第2の所定値以下となった場合、発電量の制限を漸近的に解除するようにすれば、ユーザに違和感を与えることなく発電量を通常通りに戻す上で有利となる。
また、発電制御装置10において、バッテリ50の出力性能が低下している場合に発電量の制限度合いを小さくするようにすれば、バッテリ50からの出力電力不足によりモータ23への供給電力が不足するのを防止することができる。
また、発電制御装置10において、バッテリ50の劣化度合いが大きいほど発電量の制限度合いを小さくしたり、バッテリ50のバッテリ温度が低いほど発電量の制限度合いを小さくしたりすれば、車載バッテリの劣化やバッテリ温度低下による出力性能の低下時にモータへの供給電力が不足するのを防止することができる。
【符号の説明】
【0038】
10 発電制御装置
12 ハイブリッド車両
23 モータ
25 エンジン
31 ジェネレータ
50 バッテリ
60 ECU
602 駆動制御部
604 エンジン始動要求検知部
606 バッテリ性能検知部
608 発電制御部
610 発電制限部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7