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特許7143904航空機用ガスタービンエンジンの冷却システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-20
(45)【発行日】2022-09-29
(54)【発明の名称】航空機用ガスタービンエンジンの冷却システム
(51)【国際特許分類】
   F02C 7/18 20060101AFI20220921BHJP
   F02C 6/08 20060101ALI20220921BHJP
   F01D 25/30 20060101ALI20220921BHJP
【FI】
F02C7/18 Z
F02C6/08
F01D25/30 F
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020572153
(86)(22)【出願日】2020-01-30
(86)【国際出願番号】 JP2020003293
(87)【国際公開番号】W WO2020166342
(87)【国際公開日】2020-08-20
【審査請求日】2021-06-24
(31)【優先権主張番号】P 2019023511
(32)【優先日】2019-02-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000099
【氏名又は名称】株式会社IHI
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 史典
(72)【発明者】
【氏名】関 直喜
(72)【発明者】
【氏名】小林 敏和
【審査官】中村 大輔
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2014/0079530(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0051702(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0227371(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0133336(US,A1)
【文献】特開2018-184162(JP,A)
【文献】米国特許第06092360(US,A)
【文献】米国特許第05265408(US,A)
【文献】特表2005-507044(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02C 7/12- 7/18
F01D 25/24-25/30
B64D 33/00
B64D 41/00
H02K 7/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
航空機用ガスタービンエンジンの冷却システムであって、
コンプレッサ、燃焼室及びタービンを収容するコアケーシングと、
前記コアケーシングと共に前記タービンの排気流路の少なくとも一部を形成するテールコーンと、
前記コアケーシングと前記テールコーンの支持体とを連結するストラットと、
前記テールコーン内に設置され、電気機器を収容するハウジングと、
前記ストラットのうちの少なくとも1つと前記コアケーシングの径方向外側とを経由して、前記コンプレッサの出口流路又は前記ガスタービンエンジンに設置されるブロアの排気口と前記ハウジングの内部空間とを連通させる少なくとも1つの主ダクトと
電気機器に接続する電線と
を備え
前記主ダクトは、
前記コンプレッサの前記出口流路又は前記ブロアの前記排気口に接続する前側主ダクトと、
前記ハウジングに接続する後側主ダクトと、
前記コアケーシングの径方向外側に設けられ、前記前側主ダクト及び前記後側主ダクトを連通且つ連結する中継器と
を含み、
前記中継器は端子盤を備え、
前記電線は、前記端子盤から前記後側主ダクトを通じて前記電気機器に接続されている冷却システム。
【請求項2】
前記ハウジングは排気口を有する
請求項に記載の冷却システム。
【請求項3】
前記後側主ダクトは、前記燃焼室及び前記タービンからの熱に対する遮蔽構造を有する
請求項またはに記載の冷却システム。
【請求項4】
航空機用ガスタービンエンジンの冷却システムであって、
コンプレッサ、燃焼室及びタービンを収容するコアケーシングと、
前記コアケーシングと共に前記タービンの排気流路の少なくとも一部を形成するテールコーンと、
前記コアケーシングと前記テールコーンの支持体とを連結するストラットと、
前記テールコーン内に設置され、電気機器を収容するハウジングと、
前記ストラットのうちの少なくとも1つと前記コアケーシングの径方向外側とを経由して、前記コンプレッサの出口流路又は前記ガスタービンエンジンに設置されるブロアの排気口と前記ハウジングの内部空間とを連通させる少なくとも1つの主ダクトと、
前記コアケーシングの径方向外側と前記ストラットのうち前記主ダクトが経由するストラット以外のストラットとを経由して、ファン後方のバイパス流路と前記ハウジングの前記内部空間とを連通させる副ダクト
を備え、
前記副ダクトは、当該副ダクトが敷設される前記ストラットよりも径方向外方の位置で分岐し、前記排気流路に向けて開口している
冷却システム。
【請求項5】
前記副ダクトに収容され、前記電気機器に接続する電線を更に備え、
前記副ダクトは、
前記バイパス流路に接続する前側副ダクトと、
前記前側副ダクトから前記ハウジングまで延伸する後側副ダクトと、
を含み、
前記後側副ダクトは、前記燃焼室及び前記タービンからの熱に対する遮蔽構造を有する
請求項に記載の冷却システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、航空機用ガスタービンエンジンの冷却システムに関する。
【背景技術】
【0002】
航空機用ガスタービンエンジンは、コンプレッサ及びタービン等の推進機構に加え、発電機を搭載している。発電機は、機体の電気系統に電力を供給する。一般的な発電機は、ファンケースの近傍に設けられたアクセサリ・ギアボックス(AGB: Accessory-drive Gearbox)に搭載されている。
【0003】
多軸式ガスタービンエンジンは、コンプレッサおよびタービンを複数段備えている。このエンジンでは、低圧コンプレッサと低圧タービンは低圧軸によって連結され、高圧コンプレッサと高圧タービンは高圧軸によって連結されている。また、上述の発電機は、高圧軸に、ギアボックス及びドライブシャフト等を介して接続されている。高圧軸の回転エネルギーの一部は、このギアボックス等を介して発電機に伝達され、これにより発電機は駆動される。
【0004】
近年では、航空機の電動化(MEA: More Electric Aircraft)等からの要請に伴い、機内の電力需要が増大している。この需要の増大に伴って、これまで一般的であった高圧軸からの抽出力を利用する発電方式だけでなく、低圧軸からの抽出力を利用する発電方式も提案されている(特許文献1参照)。特許文献1の発電方式では、発電機は低圧タービンの後方に設置され、低圧軸とのスプライン結合によって駆動されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2006-153013号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
稼働中に発熱する発電機等の電気機器は、当該熱による損傷を防止するために定常的に冷却する必要がある。このような電気機器が低圧タービンの後方に設置される場合、当該電気機器は環状の排気流路よりも径方向内方に位置することになる。つまり、電気機器は、排気流路を流れる高温の排気ガスに囲まれる。このような電気機器を冷却するには、油冷システムを用いることが最も一般的である。ただし、油冷システムは予め冷却対象の形状に合わせて設計する必要があり、構造が複雑化しやすい。
【0007】
本開示は、上述の事情を鑑みて成されたものである。即ち、本開示は、航空機用ガスタービンエンジンにおいて、簡便な構成でタービン後方に設置される電気機器を冷却することが可能な冷却システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の一態様は航空機用ガスタービンエンジンの冷却システムであって、コンプレッサ、燃焼室及びタービンを収容するコアケーシングと、前記コアケーシングと共に前記タービンの排気流路の少なくとも一部を形成するテールコーンと、前記コアケーシングと前記テールコーンの支持体とを連結するストラットと、前記テールコーン内に設置され、電気機器を収容するハウジングと、前記ストラットのうちの少なくとも1つと前記コアケーシングの径方向外側とを経由して、前記コンプレッサの出口流路又は前記ガスタービンエンジンに設置されるブロアの排気口と前記ハウジングの内部空間とを連通する少なくとも1つの主ダクトと、電気機器に接続する電線とを備え、前記主ダクトは、前記コンプレッサの前記出口流路又は前記ブロアの前記排気口に接続する前側主ダクトと、前記ハウジングに接続する後側主ダクトと、前記コアケーシングの径方向外側に設けられ、前記前側主ダクト及び前記後側主ダクトを連通且つ連結する中継器とを含み、前記中継器は端子盤を備え、前記電線は、前記端子盤から前記後側主ダクトを通じて前記電気機器に接続されていることを要旨とする。
【0009】
前記冷却システムは、前記電気機器に接続する電線を更に備えてもよい。前記主ダクトは、前記コンプレッサの前記出口流路又は前記ブロアの前記排気口に接続する前側主ダクトと、前記ハウジングに接続する後側主ダクトと、前記コアケーシングの径方向外側に設けられ、前記前側主ダクト及び前記後側主ダクトを連通且つ連結する中継器とを含んでもよい。前記中継器は端子盤を備えてもよい。前記電線は、前記端子盤から前記後側主ダクトを通じて前記電気機器に接続されてもよい。
【0010】
前記ハウジングは排気口を有してもよい。
【0011】
前記後側主ダクトは、前記燃焼室及び前記タービンからの熱に対する遮蔽構造を有してもよい。
【0012】
本開示の他の一態様は航空機用ガスタービンエンジンの冷却システムであって、コンプレッサ、燃焼室及びタービンを収容するコアケーシングと、前記コアケーシングと共に前記タービンの排気流路の少なくとも一部を形成するテールコーンと、前記コアケーシングと前記テールコーンの支持体とを連結するストラットと、前記テールコーン内に設置され、電気機器を収容するハウジングと、前記ストラットのうちの少なくとも1つと前記コアケーシングの径方向外側とを経由して、前記コンプレッサの出口流路又は前記ガスタービンエンジンに設置されるブロアの排気口と前記ハウジングの内部空間とを連通させる少なくとも1つの主ダクトと、前記コアケーシングの径方向外側と前記ストラットのうち前記主ダクトが経由するストラット以外のストラットとを経由して、ファン後方のバイパス流路と前記ハウジングの前記内部空間とを連通する副ダクトを備え前記副ダクトは、当該副ダクトが敷設される前記ストラットよりも径方向外方の位置で分岐し、前記排気流路に向けて開口している
【0013】
前記冷却システムは、前記副ダクトに収容され、前記電気機器に接続する電線を更に備えてもよい。前記副ダクトは、前記バイパス流路に接続する前側副ダクトと、前記前側副ダクトから前記ハウジングまで延伸する後側副ダクトと、を含んでもよい。前記後側副ダクトは、前記燃焼室及び前記タービンからの熱に対する遮蔽構造を有してもよい。
【発明の効果】
【0014】
本開示によれば、航空機用ガスタービンエンジンにおいて、簡便な構成でタービン後方に設置される電気機器を冷却することが可能な冷却システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、本開示の第1実施形態に係る航空機用ガスタービンエンジン(エンジン)の構成図である。
図2図2は、第1実施形態に係る冷却システムを説明するための図である。
図3図3は、第1実施形態に係る前側主ダクト、中継器、及び後側主ダクトを示す部分断面図である。
図4図4(a)及び図4(b)は、第1実施形態に係る前側主ダクト及び後側主ダクトを説明するための図であり、図4(a)は図3における前側主ダクトのIVA-IVA断面図、図4(b)は図3における後側主ダクトのIVB-IVB断面図である。
図5図5は、本開示の各実施形態に係るストラットの分解斜視図である。
図6図6は、本開示の第2実施形態に係る航空機用ガスタービンエンジン(エンジン)の構成図である。
図7図7は、第2実施形態に係る冷却システムを説明するための図である。
図8図8(a)~図8(c)は、第2実施形態に係る副ダクトを説明するための図であり、図8(a)は副ダクト全体の斜視図、図8(b)は図8(a)における前側副ダクトのVIIIA-VIIIA断面図、図8(c)は図8(a)における後側副ダクトのVIIIB-VIIIB断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本開示の実施形態に係る冷却システムについて添付図面に基づいて説明する。なお、各図において共通する部分には同一の符号を付し、重複した説明を省略する。
【0017】
本開示に係る冷却システムを搭載する航空機用ガスタービンエンジンは、例えば、ターボファンエンジン、ターボジェットエンジン、ターボプロップエンジン、ターボシャフトエンジン、などである。本実施形態に係るガスタービンエンジンは、コンプレッサおよびタービンを複数段備える多軸式のガスタービンエンジンである。以下の説明では、航空機用多軸式ガスタービンエンジンの一例としてターボファンエンジンを挙げる。また、説明の便宜上、ターボファンエンジンを単にエンジンと称する。
【0018】
(第1実施形態)
本開示の第1実施形態について説明する。
図1は、本実施形態に係るエンジン10Aの構成図である。図2は、本実施形態に係る冷却システムを説明するための図である。図1に示すように、エンジン10Aは二軸式のターボファンエンジンである。エンジン10Aは、ファン11と、低圧コンプレッサ(コンプレッサ)12と、高圧コンプレッサ(コンプレッサ)13と、燃焼室14と、高圧タービン(タービン)15、低圧タービン(タービン)16とを備えている。また、これらは、記載順に、前方から後方に向けて中心軸Z上に配列している。エンジン10AのホットセクションHは燃焼室14から後方に位置する。エンジン10Aの稼働中、ホットセクションHは、燃焼室14に伴う燃焼ガスや輻射熱によって加熱される。
【0019】
エンジン10Aは、ファンケーシング17と、ファンケーシング17の後方に設けられるコアケーシング18とを備える。ファンケーシング17はファン11を収容する。一方、コアケーシング18は、低圧コンプレッサ12、高圧コンプレッサ13、燃焼室14、高圧タービン15、及び低圧タービン16を収容する。さらに、コアケーシング18の周りはカバー(コアカウル)19で覆われている。
【0020】
ファン11の後方には、出口案内翼20が設けられている。出口案内翼20は、ファンケーシング17とコアケーシング18を連結する。これにより両者の相対的な位置が維持され、バイパス流路21が形成される。バイパス流路21は、エンジン10Aを収容するナセル(図示せず)とカバー19の間を延伸する。一方、コアケーシング18の内側にはコア流路22が形成される。コア流路22内の気体は、作動流体として低圧コンプレッサ12に流入する。このように、コアケーシング18及びカバー19は、ファン11よりも後側の流路を、バイパス流路21とコア流路22に区切っている。
【0021】
エンジン10Aの基本的な構成及び動作(即ち、気体の圧縮、燃焼、圧力エネルギーから運動(回転)エネルギーへの変換など)は、従来のものと同一でもよい。即ち、ファン11は気体(作動流体)を吸入し、後方へ排出する。ファン11を通過した気体の一部は、コア流路22を介して低圧コンプレッサ12に流入し、その残りはバイパス流路21を経由してエンジン10Aから後方に排出される。低圧コンプレッサ12は、ファン11から流入した気体を圧縮し、高圧コンプレッサ13に排出する。高圧コンプレッサ13は、低圧コンプレッサ12によって圧縮された気体を更に圧縮し、燃焼室14に供給する。
【0022】
燃焼室14は、高圧コンプレッサ13によって圧縮された気体と燃料との混合ガスを燃焼し、高圧タービン15に排出する。燃焼ガスは、高圧タービン15を通過する間に膨張しつつ、高圧タービン15を回転させる。この回転エネルギーが高圧軸25を介して、高圧コンプレッサ13に伝達され、高圧コンプレッサ13が回転する。
【0023】
高圧タービン15を通過した燃焼ガスは、低圧タービン16を通過する間に更に膨張しつつ、低圧タービン16を回転させる。この回転エネルギーが低圧軸24を介して低圧コンプレッサ12及びファン11に伝達され、低圧コンプレッサ12及びファン11が回転する。低圧タービン16を通過した燃焼ガスは、排気流路23を経てエンジン10Aの外部に排出される。
【0024】
低圧コンプレッサ12と低圧タービン16は、低圧軸24を介して連結され、高圧コンプレッサ13と高圧タービン15は、高圧軸25を介して連結されている。なお、本開示に係るエンジンは、中圧コンプレッサ(図示せず)と中圧タービン(図示せず)を更に備える三軸式のものでもよい。
【0025】
図1に示すように、低圧タービン16の後部には、エグゾースト・フレーム26が取り付けられている。エグゾースト・フレーム26は中心軸Zに対して同心状に配置された内側ケース26aと外側ケース26bとによって構成され、低圧タービン16及びテールコーン28の支持体として機能する。
【0026】
ストラット27は、内側ケース26aと外側ケース26bの間で中心軸Zに対して放射状に設けられ、内側ケース26aと外側ケース26bとを連結する。ストラット27は内側ケース26aと外側ケース26bの間隔を維持し、両者の間に排気流路23を形成する。外側ケース26bはコアケーシング18に取り付けられ、内側ケース26aはテールコーン28を支持する。即ち、ストラット27は、コアケーシング18とテールコーン28の支持体(即ち、内側ケース26a)とを連結している。
【0027】
エグゾースト・フレーム26の後部にはテールコーン28が取り付けられている。テールコーン28は略円錐状に形成され、コアケーシング18と共に排気流路23の少なくとも一部を形成する。
【0028】
エンジン10Aは、発熱する電気機器の一例としての発電機30を備える。発電機30はテールコーン28内に設置され、ハウジング31に収容されている。発電機30は、例えば、機体及びエンジン10Aのための電力を発生する。
【0029】
発電機30は、回転子30aと、回転子30aの周りに設けられる固定子30bとを備える。回転子30aは、低圧軸24の回転エネルギーによって回転する界磁(即ち磁界の発生源)である。固定子30bは、回転子30aの磁界によって電力を発生する電機子である。
【0030】
回転子30aは、回転子コア(図示せず)と、回転子コアに保持された複数の磁石(図示せず)とを備えている。回転子30aには、低圧軸24の回転エネルギーが伝達される。この回転エネルギーの伝達によって、回転子30aは回転する。
【0031】
固定子30bは巻線(図示せず)と、磁気回路を構成する固定子コア(図示せず)とからなる。固定子30bは、ハウジング31の内部空間に曝された状態で、当該ハウジング31内に設置されている。
【0032】
発電機30の出力側(即ち固定子30b)は、電線32を介して電力変換器33の入力側に接続している。電力変換器33は、例えば、ファンケーシング17の外周に設置されている。この場合、電線32はハウジング31から引き出され、主ダクト40(後述)、及び出口案内翼20を介して、電力変換器33に接続する。
【0033】
なお、電線32は、例えば棒状の金属部材である。電線32の外周は絶縁材料で被覆されている。ただし、ホットセクションHに位置する部分は、ポリイミド樹脂やセラミック等の耐熱性をもつ絶縁材料で被覆されている。その他の部分の被覆材料については耐熱性を問わない。
【0034】
図1及び図2に示すように、エンジン10Aは主ダクト40を備える。主ダクト40は、エンジン10Aの前方から後方に向けて延伸する管状部材であり、気体の流路を構成する。主ダクト40は、耐熱合金によって形成される。ただし、ホットセクションHよりも前方の部分(例えば後述の前側主ダクト41)は可撓性を持つ樹脂(例えば炭素繊維強化プラスチック(CFRP))、エラストマーなどの弾性材料、或いはその他の非金属材料によって形成されていてもよい。
【0035】
主ダクト40は、コアケーシング18の径方向外側とストラット27のうちの少なくとも1つのストラット27aとを経由して、低圧コンプレッサ12の出口流路12aとハウジング31の内部空間とを連通させる。換言すれば、主ダクト40は、コアケーシング18とカバー19との間の空間及び複数のストラット27のうちの少なくとも1つのストラット27aを介して、出口流路12aからテールコーン28内のハウジング31まで延伸している。
【0036】
エンジン10Aが稼働している間、出口流路12a内の気圧は、ハウジング31内の気圧よりも十分に高い。また、出口流路12a内の温度は、稼働時の発電機30の温度よりも十分に低い。従って、出口流路12aから抽出された冷却気体CGは、主ダクト40を介してハウジング31に流入し、発電機30を冷却することができる。
【0037】
なお、主ダクト40のうち、ストラット27aを通る部分が最も加熱されやすい。従って、ストラット27aは後述の遮蔽構造56(図5参照)を有してもよい。主ダクト40の一部であるストラット27aが遮蔽構造56を有することにより、ストラット27aの内部への熱の流入を抑制し、冷却気体CGの温度上昇を抑制することができる。
【0038】
図1及び図2の点線で示すように、主ダクト40は、低圧コンプレッサ12の出口流路12aに接続する代わりに、ブロア34の排気口に接続してもよい。即ち、主ダクト40は、ブロア34の排気口とハウジング31の内部空間とを連通させてもよい。ブロア34は、例えば電力変換器33を空冷する吸気ファンであり、電力変換器33と共にファンケーシング17の外周に設置されている。従って、主ダクト40がブロア34の排気口に接続する場合、主ダクト40は出口案内翼20の内部を延伸することになる。
【0039】
ブロア34から排出される気体の温度も、稼働時の発電機30の温度より十分に低い。従って、ブロア34から排出された気体を、主ダクト40を介してハウジング31に流入させることで、発電機30を冷却することができる。
【0040】
上述の通り、ハウジング31には主ダクト40からの冷却気体CGが流入する。この気体の排出を促すため、本実施形態の冷却システムは、排出口31a及び排気ダクト40aのうちの少なくとも一方を有してもよい。図1に示すように、排出口31aはハウジング31の壁面に形成される。一方、排気ダクト40aは、ハウジング31から、主ダクト40が設けられたストラット27(ストラット27a)以外のストラット27(ストラット27b)内を延伸し、コアケーシング18の外面に開口する。
【0041】
エンジン10Aの稼働中、ホットセクションHは燃焼室14の燃焼に伴って加熱される。一方、上述の電線32はホットセクションHの近傍に敷設されている。従って、電線32はホットセクションHからの熱による損傷を受けやすい。このような電線32の熱損傷を防ぐため、主ダクト40は、電線32のうち、少なくともホットセクションHに位置する部分を収容してもよい。上述の通り、主ダクト40には比較的低温の気体が流れている。また、主ダクト40自体も熱を遮蔽する。従って、ホットセクションHの熱から電線32を保護することできる。
【0042】
図1に示すように、主ダクト40は、前側主ダクト41と、後側主ダクト42と、中継器43とを含んでもよい。前側主ダクト41の上流側は、低圧コンプレッサ12の出口流路12a又はブロア34の排気口に接続する。後側主ダクト42は、少なくともホットセクションHに設けられ、その下流側はハウジング31に接続する。そして、中継器43は、コアケーシング18の径方向外側に設けられ、前側主ダクト41の下流側及び後側主ダクト42の上流側の間を連通且つ連結する。換言すれば、主ダクト40は、中継器43を挟んで、前側のダクトと後側のダクトとに分割されてもよい。
【0043】
図3は、本実施形態に係る前側主ダクト41、中継器43、及び後側主ダクト42を示す部分断面図である。図4(a)及び図4(b)は前側主ダクト41及び後側主ダクト42を説明するための図であり、図4(a)は図3における前側主ダクト41のIVA-IVA断面図、図4(b)は図3における後側主ダクト42のIVB-IVB断面図である。
【0044】
図3に示すように、中継器43は中空の箱体44と、箱体44の内部に設置された端子盤45と、箱体44(例えば箱体44の外面44a)に取り付けられたレセプタクル(メスコネクタ)46、47、48とを備える。箱体44は、前側主ダクト41から後側主ダクト42への気体の流動を許容すると共に、それ以外の箇所からの気体の漏出を極力抑えるように構成されている。
【0045】
レセプタクル46には、前側主ダクト41のプラグ(オスコネクタ)49が接続される。レセプタクル47には、後側主ダクト42のプラグ(オスコネクタ)50が接続される。レセプタクル46及びレセプタクル47には、対応するダクトと箱体44の内部空間との間を連通する貫通穴(図示せず)が形成され、これにより、中継器43を介した前側主ダクト41から後側主ダクト42への冷却気体CGの流動が許容されている。
【0046】
後側主ダクト42内には、発電機30に接続する電線32が収容されている。電線32は、レセプタクル47から中継器43内に引き出され(即ち、露出し)、端子盤45に接続される。即ち、電線32は、端子盤45から後側主ダクト42を通じて発電機30に接続されている。
【0047】
レセプタクル48には、電線32のプラグ(オスコネクタ)51が接続され、当該電線32は端子盤45に接続される。これにより、発電機30の出力側と電力変換器33の入力側は、中継器43(端子盤45)を介して電気的に接続される。
【0048】
図4(a)に示すように、前側主ダクト41は、管状の本体部52を有する。前側主ダクト41は、ホットセクションHよりも前方に位置し、熱の損傷を受けにくい。従って、本体部52は、後側主ダクト42と同様に耐熱合金によって形成されてもよく、可撓性を持つ樹脂(例えば炭素繊維強化プラスチック(CFRP))、エラストマー等の弾性材料、或いはその他の非金属材料によって形成されてもよい。
【0049】
図4(b)に示すように、後側主ダクト42は、管状の本体部53と、本体部53の内側に設けられる断熱材54と、断熱材54の内側に設けられるシース55とを有する。本体部53とシース55は管状に形成され、断熱材54が設けられる空間をそれらの間に置いて、同心状に位置する。即ち、本体部53とシース55は二重壁構造を構成する。本体部53とシース55は、耐熱性を有する材料によって形成される。このような材料は例えば耐熱合金である。断熱材54は、本体部53の内面とシース55の外面との間に設けられる。断熱材54はシース55共に、電線32への熱の過剰な伝達(放射)を阻止する。つまり、主ダクト40(後側主ダクト42)は、ホットセクションHからの熱に対する遮蔽構造56を有し、電線32を保護している。
【0050】
シース55は、その内側に空洞部57を形成する。空洞部57は電線32を収容すると共に、気体の流動を確保する。即ち、後側主ダクト42の長手方向に直交する空洞部57の断面積は、電線32の断面積よりも大きく、且つ、気体の流動を確保できる値に設定されている。
【0051】
なお、ストラット27のうちの少なくとも1つのストラット27aは、後側主ダクト42の本体部53として機能する。図5は、主ダクト40(後側主ダクト42)を兼ねたストラット27aの分解斜視図である。なお、ストラット27aを含め、ストラット27は何れも、翼型の断面を有し、径方向に延伸している。また、ストラット27は、耐熱合金で構成されており、内側ケース26aと外側ケース26bを安定に連結するために十分な機械的強度を有する。
【0052】
図5に示すように、ストラット27aは主ダクト40(後側主ダクト42)の本体部53として機能し、電線32を収容する。従って、ストラット27aの内側には断熱材54が設けられ、断熱材54の内側にはシース55が設けられる。
【0053】
シース55のうち、ストラット27a内に設けられる部分は、ストラット27aと同様の扁平な断面をもつ。これに合わせて、電線32も扁平な断面(例えば長方形の断面)を有してもよい。
【0054】
上述の通り、電線32のうち、ホットセクションHに敷設される部分は、主ダクト40(後側主ダクト42)に収容されている。一方、主ダクト40(後側主ダクト42)には、冷却気体CGがハウジング31に向けて流れている。従って、電線32のうち、ホットセクションHに敷設される部分は、主ダクト40(後側主ダクト42)によってホットセクションHの熱から遮蔽されるともに、冷却気体CGによって冷却されている。これにより、電線32の熱損傷を防止することができる。
【0055】
なお、ストラット27aに収容される電線32の本数は1本に限らず、複数本でもよい。同様に、主ダクト40の本数は1本に限られない。即ち、本実施形態に係る冷却システムは、少なくとも1つの主ダクト40を備える。主ダクト40が複数設けられる場合、各主ダクト40に収容される電線32の本数を減らすことができる。その結果、主ダクト40のサイズ(例えば外径)が小さくなり、敷設箇所の自由度が向上する。また、主ダクト40が複数設けられる場合は、その本数に応じてストラット27aの本数も増やしてもよい。
【0056】
(第2実施形態)
本開示の第2実施形態について説明する。
図6は、第2実施形態に係るエンジン10Bの構成図である。図7は、第2実施形態に係る冷却システムを説明するための図である。図8(a)~図8(c)は、第2実施形態に係る副ダクト60を説明するための図であり、図8(a)は副ダクト60全体の斜視図、図8(b)は図8(a)における前側副ダクト61のVIIIA-VIIIA断面図、図8(c)は図8(a)における後側副ダクト62のVIIIB-VIIIB断面図である。
【0057】
第2実施形態に係る冷却システムは、上述の主ダクト(第1ダクト)40に加えて、副ダクト(第2ダクト)60を備える。また、第2実施形態では、副ダクト60が、発電機30と電力変換器33との間を接続する電線32を収容する。さらに、ハウジング31は、テールコーン28の内部に開口する冷却気体CGの排気口を持たない。その他の構成は、第1実施形態と同様であるため、重複する構成については同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0058】
主ダクト40と同じく、副ダクト60も気体の流路を構成する。また、副ダクト60も耐熱合金によって形成される。ただし、ホットセクションHよりも前方の部分(例えば後述の前側副ダクト61)は、可撓性を持つ樹脂(例えば炭素繊維強化プラスチック(CFRP))、エラストマーなどの弾性材料、或いはその他の非金属材料によって形成されていてもよい。
【0059】
図6及び図7に示すように、副ダクト60は、コアケーシング18の径方向外側と、ストラット27のうち主ダクト40が経由するストラット27a以外のストラット27bとを経由して、ファン11後方のバイパス流路21とハウジング31の内部空間とを連通させる。換言すれば、副ダクト60は、コアケーシング18の径方向外側とストラット27bとを介して、バイパス流路21からハウジング31まで延伸している。
【0060】
図6図7及び図8(a)に示すように、副ダクト60は吸気口60aを有する。吸気口60aは、例えば、バイパス流路21に面するコアケーシング18の外周面において、出口案内翼20の前方に開口している。また、副ダクト60は、当該副ダクト60が敷設されるストラット27bよりも径方向外方の位置で分岐し、排気口60bとして排気流路23に向けて開口している。
【0061】
図8(a)及び図8(b)に示すように、副ダクト60は、コアケーシング18とカバー19との間で、エンジン10Bの前方から後方に向けて延伸するチャネル部材を含む。チャネル部材はカバー19に向けて開口するC字状の断面を有する。カバー19に向かったチャネル部材の開口はカバー19によって覆われ、これにより、副ダクト60内の空間は、副ダクト60とカバー19によって囲まれることになる。電線32は、ハウジング31から引き出され、副ダクト60及び出口案内翼20を介して、電力変換器33に接続する。
【0062】
副ダクト60のうち、ストラット27bからハウジング31までの部分は、主ダクト40のうち、ストラット27aからハウジング31までの部分と同様の構成である。従って、ストラット27bは、ストラット27aと同一の構成(図5参照)を有する。
【0063】
エンジン10Bが稼働している間、低圧コンプレッサ12の出口流路12aから抽出された冷却気体CGは、主ダクト40を介してハウジング31に流入し、発電機30を冷却する。上述の通り、ハウジング31は、ハウジング31は、テールコーン28の内部に開口する冷却気体CGの排気口を持たない。その代りに、ハウジング31には副ダクト60が接続されている。従って、発電機30を冷却した冷却気体CGは、副ダクト60に流入し、当該副ダクト60の一部を構成するストラット27bを経由して、排気口60bから排出される。
【0064】
このように、冷却気体CGは、ハウジング31からストラット27bを経由して、排気口60bまで流れている。この冷却気体CGの流通によって、電線32のうち、ハウジング31からストラット27bまでの部分も冷却される。
【0065】
また、ファン11の排出気体EGは吸気口60aに流入し、排気口60bから排出される。この排出気体EGの流通によっても、電線32は冷却される。つまり、副ダクト60に収容された電線32全体が、冷却気体CG又は排出気体EGによって冷却される。これにより、ホットセクションHからの熱による電線32の熱損傷を防止することができる。
【0066】
図8(a)に示すように、副ダクト60は、バイパス流路21に接続する前側副ダクト61と、前側副ダクト61からハウジング31に延伸する後側副ダクト62とを含んでもよい。後側副ダクト62は、少なくともホットセクションHに設けられる。図8(c)に示すように、後側副ダクト62は、上述の遮蔽構造56を有してもよい。即ち、後側副ダクト62の内面に断熱材54が設けられ、断熱材54の内面にシース55が設けられる。断熱材54及びシース55の何れもが、後側副ダクト62と相似する断面を有し、電線32への熱の過剰な伝達(放射)を阻止する。
【0067】
前側副ダクト61は、耐熱性が要求されない部位に設けられる。前側副ダクト61は、例えば、可撓性を持つ樹脂(例えば炭素繊維強化プラスチック(CFRP))、エラストマーなどの弾性材料、或いはその他の非金属材料によって形成されてもよい。この場合、後側副ダクト62よりも軽量となる。
【0068】
副ダクト60に収容される電線32の本数は任意である。例えば、図8(b)及び図8(c)に示すように複数本の電線32が収容されてもよい。
【0069】
第1実施形態と同じく、主ダクト40は、低圧コンプレッサ12の出口流路12a、或いは、ブロア34の排気口に接続する。ただし、主ダクト40がブロア34の排気口に接続する場合、副ダクト60もブロア34の排気口に接続してもよい。また、主ダクト40が低圧コンプレッサ12の出口流路12aに接続する場合、副ダクト60がブロア34の排気口に接続してもよい。つまり、主ダクト40(前側主ダクト41の上流側)と副ダクト60(前側副ダクト61の上流側)うちの少なくとも一方が、ブロア34の排気口に接続してもよい。
【0070】
副ダクト60がブロア34の排気口に接続する場合、副ダクト60は、出口案内翼20の内部を延伸し、ブロア34の排気口に接続する。上述の電線32は、副ダクト60内に収容されることになる。
【0071】
なお、ブロア34は複数設けられてもよい。この場合、主ダクト40と副ダクト60は、対応するブロア34の排気口に個別に接続してもよい。各ブロア34の用途は冷却に限られず、例えば送風や換気でもよい。
【0072】
上述の通り、各実施形態に係る冷却システムは、ダクトを用いた空冷を採用している。従って、油冷システムよりも簡便な構成でタービン後方に設置される電気機器を冷却することができる。ただし、上述した冷却システムは、油冷システムを排除するものではない。即ち、本実施形態の冷却システムは、油冷システムと併用することも可能である。
【0073】
なお、本開示は上述した実施形態に限定されず、特許請求の範囲の記載によって示され、さらに特許請求の範囲の記載と均等の意味および範囲内でのすべての変更を含むものである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8