(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-20
(45)【発行日】2022-09-29
(54)【発明の名称】調光素子
(51)【国際特許分類】
G02F 1/155 20060101AFI20220921BHJP
【FI】
G02F1/155
(21)【出願番号】P 2021515856
(86)(22)【出願日】2020-03-06
(86)【国際出願番号】 JP2020009811
(87)【国際公開番号】W WO2020217736
(87)【国際公開日】2020-10-29
【審査請求日】2021-08-24
(31)【優先権主張番号】P 2019086728
(32)【優先日】2019-04-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成30年度、国立研究開発法人科学技術振興機構、研究成果展開事業「ミラー・透明・黒・カラーの状態可変技術による省エネ調光窓の開発」委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】000005821
【氏名又は名称】パナソニックホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104732
【氏名又は名称】徳田 佳昭
(74)【代理人】
【識別番号】100164035
【氏名又は名称】村山 正人
(72)【発明者】
【氏名】小川 正太郎
【審査官】横井 亜矢子
(56)【参考文献】
【文献】特開昭63-094297(JP,A)
【文献】特開平01-227126(JP,A)
【文献】米国特許第09658508(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F 1/15-1/19
G02F 1/133,1/1343-1/1345
G02F 1/135-1/1368
G09G 3/00-3/08,3/12
G09G 3/16,3/19-3/26
G09G 3/34,3/38
G09F 9/00,9/30-9/46
Japio-GPG/FX
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
透光性を有し、並列に配置された複数の矩形状の第1電極と、
前記複数の第1電極と対向して並列に配置された複数の矩形状の第2電極と、
前記複数の第1電極と前記複数の第2電極との間に配置された、金属を含む電解液と、を備え、
前記電解液は、印加電圧に応じて前記複数の第1電極および前記複数の第2電極のいずれか一方に金属を析出可能であり、
前記第1電極および前記第2電極のうち少なくとも一方は、幅方向の端部において、幅方向の中央位置よりも高い抵抗値を有し、
前記第1電極および前記第2電極のうち少なくとも一方は、前記中央位置から前記端部に向かって少なくとも3段階の異なる抵抗値を有する、
調光素子。
【請求項2】
透光性を有し、並列に配置された複数の矩形状の第1電極と、
前記複数の第1電極と対向して並列に配置された複数の矩形状の第2電極と、
前記複数の第1電極と前記複数の第2電極との間に配置された、金属を含む電解液と、を備え、
前記電解液は、印加電圧に応じて前記複数の第1電極および前記複数の第2電極のいずれか一方に金属を析出可能であり、
前記第1電極および前記第2電極のうち少なくとも一方は、幅方向の端部において、幅方向の中央位置よりも高い抵抗値を有し、
前記第1電極および前記第2電極のうち少なくとも一方は、高抵抗電極部材と、前記幅方向の位置に応じて大きさが異なる複数の低抵抗電極部材とを含んで形成される、
調光素子。
【請求項3】
透光性を有し、並列に配置された複数の矩形状の第1電極と、
前記複数の第1電極と対向して並列に配置された複数の矩形状の第2電極と、
前記複数の第1電極と前記複数の第2電極との間に配置された、金属を含む電解液と、を備え、
前記電解液は、印加電圧に応じて前記複数の第1電極および前記複数の第2電極のいずれか一方に金属を析出可能であり、
前記第1電極および前記第2電極のうち少なくとも一方は、幅方向の端部において、幅方向の中央位置よりも高い抵抗値を有し、
前記第1電極および前記第2電極のうち少なくとも一方は、高抵抗電極部材と、前記幅方向の位置に応じて配置密度が異なる複数の低抵抗電極部材とを含んで形成される、
調光素子。
【請求項4】
透光性を有し、並列に配置された複数の矩形状の第1電極と、
前記複数の第1電極と対向して並列に配置された複数の矩形状の第2電極と、
前記複数の第1電極と前記複数の第2電極との間に配置された、金属を含む電解液と、を備え、
前記電解液は、印加電圧に応じて前記複数の第1電極および前記複数の第2電極のいずれか一方に金属を析出可能であり、
前記第1電極および前記第2電極のそれぞれは、前記幅方向の中央位置において最も低く、前記幅方向の端部において前記中央位置より
も高い抵抗値を有する、
調光素子。
【請求項5】
透光性を有し、並列に配置された複数の矩形状の第1電極と、
前記複数の第1電極と対向して並列に配置された複数の矩形状の第2電極と、
前記複数の第1電極と前記複数の第2電極との間に配置された、金属を含む電解液と、を備え、
前記電解液は、印加電圧に応じて前記複数の第1電極および前記複数の第2電極のいずれか一方に金属を析出可能であり、
前記第1電極および前記第2電極のうち少なくとも一方は、幅方向の端部において、幅方向の中央位置よりも高い抵抗値を有し、
前記複数の第1電極のうち少なくとも1つに隣接して、電圧印加時に前記金属が析出しない第1非表示電極を更に有し、
前記複数の第2電極のうち少なくとも1つに隣接して、電圧印加時に前記金属が析出しない第2非表示電極を更に有する、
調光素子。
【請求項6】
透光性を有し、並列に配置された複数の矩形状の第1電極と、
前記複数の第1電極と対向して並列に配置された複数の矩形状の第2電極と、
前記複数の第1電極と前記複数の第2電極との間に配置された、金属を含む電解液と、を備え、
前記電解液は、印加電圧に応じて前記複数の第1電極および前記複数の第2電極のいずれか一方に金属を析出可能であり、
前記第1電極および前記第2電極のうち少なくとも一方は、幅方向の端部において、幅方向の中央位置よりも高い抵抗値を有し、
前記第1電極および前記第2電極は、それぞれの長手方向に沿って複数の切り欠き部を有し、
前記複数の切り欠き部のそれぞれは、前記長手方向に直交する前記幅方向に向かって切り欠かれている、
調光素子。
【請求項7】
透光性を有し、並列に配置された複数の矩形状の第1電極と、
前記複数の第1電極と対向して並列に配置された複数の矩形状の第2電極と、
前記複数の第1電極と前記複数の第2電極との間に配置された、金属を含む電解液と、を備え、
前記電解液は、印加電圧に応じて前記複数の第1電極および前記複数の第2電極のいずれか一方に金属を析出可能であり、
前記第1電極および前記第2電極のうち少なくとも一方は、幅方向の端部において、幅方向の中央位置よりも高い抵抗値を有し、
複数の絶縁膜、を更に備え、
前記第2電極は、隣接する前記第2電極との間に所定の空隙を有して配置され、
前記複数の絶縁膜のそれぞれは、前記所定の空隙を跨ぐように配置される、
調光素子。
【請求項8】
前記複数の絶縁膜は、前記複数の第1電極において前記複数の第2電極と対向する面に設けられる、
請求項
7に記載の調光素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、調光素子に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、第1電気導電層および第2電気導電層の少なくとも一方は絶縁性材料から成るパターン層および抵抗性材料から成る層を有するパターン導電層を有し、第1電気導電層および第2電気導電層のそれぞれの対向端部に設けられたバスバーのそれぞれからの距離に応じて抵抗値を変化させたエレクトロクロミックデバイスが開示されている。このエレクトロクロミックデバイスは、それぞれのバスバーから最も遠い位置で抵抗値が最小となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【0004】
本開示は、EC(エレクトロクロミック)素子を駆動する際の電極の幅方向のエッジ部の電界を抑制して表示ムラを低減し、高品位な表示を実現する調光素子を提供することを目的とする。
【0005】
本開示の調光素子は、透光性を有し、並列に配置された複数の矩形状の第1電極と、前記複数の第1電極と対向して並列に配置された複数の矩形状の第2電極と、前記複数の第1電極と前記複数の第2電極との間に配置された、金属を含む電解液と、を備える。前記電解液は、印加電圧に応じて前記複数の第1電極および前記複数の第2電極のいずれか一方に金属を析出可能である。前記複数の第1電極のそれぞれは第1電極であり、前記複数の第2電極のそれぞれは第2電極であり、前記第1電極および前記第2電極のうち少なくとも一方は、幅方向の端部において、幅方向の中央位置よりも高い抵抗値を有する。
【0006】
本開示によれば、EC(エレクトロクロミック)素子を駆動する際の電極の幅方向のエッジ部の電界を抑制して表示ムラを低減し、高品位な表示を実現する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】実施の形態1に係るEC素子の構造例を説明する図
【
図2】実施の形態1に係る調光装置の構造例を説明する図
【
図4】実施の形態1に係るEC素子の構造例を説明する図
【
図5】
図3に示すB-B´断面におけるEC素子の構造例を説明する図
【
図6】
図3に示すB-B´断面におけるEC素子の電界分布図
【
図9】
図3に示すA-A´断面における低抵抗電極部材の配置例を示す図
【
図11】低抵抗電極部材および高抵抗電極部材を含む電極の製造手順例を説明する図
【
図12】大きさが異なる低抵抗電極部材の配置例を示す図
【
図13】画素領域内における低抵抗電極部材の配置パターン例を示す図
【
図14】第1電極群および第2電極群の形状の一例を示す図
【
図15】第1電極群および第2電極群の形状の一例を示す図
【
図16】第1電極群および第2電極群の形状の一例を示す図
【
図17】低抵抗電極部材の配置パターンに応じた電極抵抗値曲線の一例を示す図
【
図18】低抵抗電極部材の配置パターンに応じた電極抵抗値曲線の一例を示す図
【
図23】第3構成例におけるEC素子の金属析出例を示す図
【
図26】第4構成例におけるEC素子の金属析出例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0008】
(実施の形態1の内容に至る経緯)
従来、第1電気導電層および第2電気導電層の少なくとも一方は絶縁性材料から成るパターン層および抵抗性材料から成る層を有するパターン導電層を有し、第1電気導電層および第2電気導電層のそれぞれの対向端部に設けられたバスバーのそれぞれからの距離に応じて抵抗値を変化させたエレクトロクロミックデバイス(以下、EC素子と表記)が提供されている。このEC素子は、それぞれのバスバーから最も遠い位置で抵抗値が最小となり、EC素子の外周に生じる表示ムラを低減することができた。しかし、このようなEC素子をパッシブマトリクス駆動する場合には、一対の電極に対して複数のEC表示画素(以下、表示画素と表記)を有するため、複数の表示画素のそれぞれのエッジ部に表示ムラが発生するおそれがあった。
【0009】
そこで、以下の実施の形態1においては、EC(エレクトロクロミック)素子をパッシブマトリクス駆動する際の電極の幅方向のエッジ部の電界を抑制して表示ムラを低減し、高品位な表示を実現するEC素子の例を説明する。
【0010】
以下、適宜図面を参照しながら、本開示に係る調光素子の一例としてEC素子の構成および作用を具体的に開示した各実施の形態を詳細に説明する。但し、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細説明や実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。これは、以下の説明が不必要に冗長になることを避け、当業者の理解を容易にするためである。なお、添付図面及び以下の説明は、当業者が本開示を十分に理解するために提供されるものであって、これらにより請求の範囲に記載の主題を限定することは意図されていない。
【0011】
(実施の形態1)
図1を参照して、実施の形態1に係るEC(エレクトロクロミック)素子100の構造について説明する。
図1に示す矢印Kは、ユーザ(例えば、EC素子の利用者)の視線の向きを示す。また、
図1に示す金属OB1は、析出した状態であり、第1電極群110の表面に金属薄膜を形成している。
【0012】
図1に示すように、EC素子100は、第1電極群110と、第1基板111と、第1電極接続部112と、第2電極群210と、第2基板211と、第2電極接続部212と、電解液EL1と、スペーサ300と、を含んで構成され、EC素子駆動回路500により駆動される。
【0013】
第1電極群110は、透光性を有する導電膜であり、例えば、ITO(Indium Tin Oxide)などの透明電極である。なお、第1電極群110は、ITOに限らず、例えば酸化亜鉛または酸化スズ等を材料とする透明電極(導電膜)であってもよい。
【0014】
第1基板111は、ガラスまたは樹脂などの絶縁性を有する材料を用いて形成される。第1基板111は、例えば透光性を有する矩形状の板体であり、第1電極群110上に第2基板211と互いに対向して設けられる。
【0015】
第1電極接続部112は、第1電極群110とEC素子駆動回路500との間を接続する。第1電極接続部112は、電解液EL1と接触せず、かつスペーサ300と複数の第1電極110a,110b,110c,…,110Nのそれぞれ(
図2参照)との間の露出部に接続される。
【0016】
第2電極群210は、透光性を有する導電膜であり、例えば、ITO(Indium Tin Oxide)などの透明電極である。なお、第2電極群210は、ITOに限らず、例えば酸化亜鉛または酸化スズ等を材料とする透明導電膜であってもよい。
【0017】
第2基板211は、ガラスまたは樹脂などの絶縁性を有する材料を用いて形成される。第2基板211は、例えば透光性を有する矩形状の板体であり、第2電極群210上に第1基板111と互いに対向して設けられる。
【0018】
第2電極接続部212は、第2電極群210とEC素子駆動回路500との間を接続する。第2電極接続部212は、電解液EL1と接触せず、かつスペーサ300との間の外部に露出した複数の第2電極210a,210b,210c,…,210Nのそれぞれ(
図2参照)との間の露出部に接続される。
【0019】
電解液EL1は、第1電極群110、第2電極群210およびスペーサ300によって形成された空間内に備えられる。電解液EL1は、金属イオン状態にある金属OB1を含み、電気伝導性を有する溶液である。電解液EL1は、例えば銀を含む溶液である。電解液EL1に含まれる金属OB1は、第1電極群110および第2電極群210に印加された電圧によって生じる電界に応じて、第1電極群110または第2電極群210のいずれか一方に析出する。析出した金属OB1は、第1電極群110または第2電極群210のいずれかの一方の面の表面に金属薄膜を形成する。金属OB1が析出する電極は、後述するEC素子駆動回路500によって印加される電圧の極性に応じて変化する。
図1において、金属OB1は、第1電極群110に析出して金属薄膜を形成している。
【0020】
なお、金属OB1は、上述した銀に限らない。金属OB1は、例えばアルミニウム、プラチナ、クロムあるいは金等の貴金属を含む他の金属であってよい。金属OB1は、光に対して高い反射率を有する金属である場合には析出時にミラー(反射状態)として機能し、反射しない金属である場合には遮光材(遮光状態)として機能する。
【0021】
また、上述した実施の形態1に係るEC素子100は、ユーザが
図1に示す矢印Kから第1基板111を見ることを想定している。このため、第2電極群210および第2基板211は、不透明であってもよい。例えば、第2基板211は、シリコン基板などでもよい。また、同様に、第2電極群210は、銅などの金属電極でもよい。
【0022】
スペーサ300は、例えば、熱硬化性樹脂などの樹脂材料を環状に塗布して、硬化させて形成される。スペーサ300は、対向して配置される第1電極群110および第2電極群210のそれぞれの周縁に沿って、環状に設けられる。なお、スペーサ300は、第1電極群110の一方の端部が第1電極接続部112と、第2電極群210の一方の端部が第2電極接続部212とそれぞれ接続可能な露出部を除いて設けられる。
【0023】
EC素子駆動回路500は、第1電極群110および第2電極群210に電圧を印加するための電源部である。EC素子駆動回路500は、リード線を介して、第1電極接続部112および第2電極接続部212のそれぞれに接続され、第1電極群110および第2電極群210に電圧を印加する。EC素子駆動回路500は、第1電極群110および第2電極群210のそれぞれに印加する電圧の極性に応じて金属OB1を析出させる電極を制御する。
【0024】
以下、EC素子100の光学状態の動作方法について説明する。EC素子100の光学状態として、透明状態、反射状態および遮光状態がある。
【0025】
まず、EC素子100が、金属OB1の析出および溶解によって光学状態を透明状態から反射状態に切替える際の動作方法について説明する。なお、以下の説明においては、金属OB1が第1電極群110側に析出する動作を反射状態あるいは遮光状態とした動作方法について説明するが、金属OB1が析出する電極について限定するものではない。
【0026】
EC素子駆動回路500は、第1電極群110が低電位となり第2電極群210が高電位となるようにEC素子100に電圧を印加する。このとき、EC素子駆動回路500の印加電圧によって生じる電界の向きは、第2電極群210から第1電極群110に向かう方向となる。
【0027】
電解液EL1に含まれる金属OB1は、溶解した状態において、例えば銀イオンである。金属OB1は、EC素子100に電圧が印加されると第1電極群110(低電位側の電極)の表面に析出して、金属薄膜(例えば、銀薄膜)を形成する。析出した金属OB1(例えば、銀薄膜)は、高い反射率を有しており、矢印K方向から見た場合にミラー(反射状態)として機能する。なお、金属OB1が光を反射しにくい金属である場合には、析出した金属OB1は、遮光材(遮光状態)として機能する。
【0028】
EC素子駆動回路500は、後述するEC素子駆動回路制御部400から入力される制御信号によって制御される。EC素子駆動回路500は、入力される制御信号に基づいてEC素子100の光学状態を透明状態から反射状態あるいは遮光状態に切替える。また、EC素子駆動回路500は、反射状態あるいは遮光状態のまま動作を維持する場合には、電圧の印加を継続する。
【0029】
次に、EC素子100が金属OB1の析出および溶解によって光学状態を反射状態から透明状態に切替える際の動作方法について説明する。
【0030】
EC素子駆動回路500は、析出した金属OB1を再度溶解させるために電圧の印加を停止する。これにより、金属OB1はイオン状態に戻ることができる。
【0031】
EC素子100をより短時間で透明状態に切替える場合、EC素子駆動回路500は、逆の極性を有する電圧を印加する。具体的には、EC素子駆動回路500は、第1電極群110を高電位、かつ第2電極群210を低電位とする電圧をEC素子100に印加する。これにより、EC素子駆動回路500は、金属OB1が第2電極群210側に析出を開始し、第1電極群110側に析出した金属OB1をより短時間で溶解させることができる。
【0032】
EC素子駆動回路500が逆の極性を有し、かつ同じ大きさ電圧を印加すると、金属OB1は、第2電極群210側に析出して金属薄膜を形成する。よって、EC素子100の光学状態を透明状態にする場合には、EC素子駆動回路500は、第2電極群210に金属OB1が析出を開始する電圧未満の印加電圧をEC素子100に印加して、再度第1電極群110に金属OB1が析出して金属薄膜を形成する時間を短くする。これにより、EC素子駆動回路500は、第1電極群110における金属OB1の金属薄膜の形成速度を維持して、EC素子100の光学状態を透明状態と反射状態(あるいは遮光状態)とに切替えることができる。
【0033】
次に、
図2を参照して、実施の形態1に係る調光装置1000の構造例について説明する。調光装置1000は、EC素子100と、EC素子駆動回路制御部400と、EC素子駆動回路500と、を含んで構成される。なお、
図2に示すEC素子100は、複数の第1電極110a,110b,110c,…,110Nのそれぞれおよび複数の第2電極210a,210b,210c,…,210Nのそれぞれの配置の様子を分かりやすくするために、第1電極接続部112、第2電極接続部212、電解液EL1およびスペーサ300を図示していない。
【0034】
EC素子100は、複数の第1電極110a,…,110Nからなる第1電極群110と、複数の第2電極210a,…,210Nなる第2電極群210と、電解液EL1と、スペーサ300と、によって構成される。EC素子100は、印加電圧に応じて第1電極群110および第2電極群210の複数の交差部(以下、表示画素)のそれぞれに金属OB1が析出して、金属薄膜を形成する。
【0035】
複数の第1電極110a,…,110Nのそれぞれと複数の第2電極210a,…,210Nのそれぞれとは、直交して配置される。なお、複数の第1電極110a,…,110Nと複数の第2電極210a,…,210Nとは、上述した直交配置に限らず、例えば120°の角度を成して配置されてもよい。言い換えると、複数の表示画素のそれぞれに析出する金属OB1の形状は、正方形状に限らず、例えばひし形などの四角形であってもよい。
【0036】
EC素子駆動回路制御部400は、プロセッサ(不図示)とメモリ(不図示)とを備えて構成される。プロセッサは、例えばCPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)またはFPGA(Field Programmable Gate Array)を用いて構成される。
【0037】
EC素子駆動回路制御部400のプロセッサ(不図示)は、メモリと協働して、各種の処理および制御を行う。具体的には、プロセッサは、メモリに保持されたプログラムおよびデータを参照し、そのプログラムを実行することにより、EC素子駆動回路制御部400の機能を実現する。例えば、プロセッサは、EC素子駆動回路500によってEC素子100が備える第1電極群110および第2電極群210のそれぞれに印加する電圧を変更するタイミング、印加する電圧の極性および印加電圧の大きさなどを制御するための制御信号をEC素子駆動回路500に出力する。
【0038】
EC素子駆動回路制御部400のメモリ(不図示)は、例えばEC素子駆動回路制御部400の処理時に用いられるワークメモリとしてのRAM(Random Access Memory)と、EC素子駆動回路制御部400の動作を規定したプログラムおよびデータを格納するROM(Read Only Memory)とを有する。RAMには、プロセッサにより生成あるいは取得されたデータもしくは情報が一時的に保存される。ROMには、EC素子駆動回路制御部400の動作(例えば、実施の形態1に係るEC素子駆動回路500により実行されるEC素子100の駆動方法)を規定するプログラムが書き込まれている。
【0039】
EC素子駆動回路500は、EC素子駆動回路制御部400から出力された制御信号に基づいて、第1電極接続部112を介して複数の第1電極110a,…,110Nのそれぞれに電圧を印加し、第2電極接続部212を介して複数の第2電極210a,…,210Nのそれぞれに電圧を印加する。
【0040】
図3は、EC素子100の断面線を示す図である。以降に示す各図の説明において使用される断面図は、
図3に示すA-A´断面線、B-B´断面線およびC-C´断面線のそれぞれにおける断面図である。
【0041】
A-A´断面線は、第1電極110aの幅方向を切り口とした断面線である。A-A´断面線によって示されるA-A´断面は、第1電極群110を構成する複数の第1電極110a,…,110Nのそれぞれの幅方向の断面図に等しい。B-B´断面線は、第1電極110aの幅方向の中央位置において長手方向を切り口としたEC素子100の断面図である。B-B´断面線によって示されるB-B´断面は、第1電極群110を構成する複数の第1電極110a,…,110Nのそれぞれの幅方向の中央位置における長手方向の断面図に等しい。C-C´断面線は、第2電極210aの幅方向を切り口とした断面線である。C-C´断面線によって示されるC-C´断面は、第2電極群210を構成する複数の第2電極210a,…,210Nのそれぞれの幅方向の断面図に等しい。
【0042】
なお、上述した幅方向とは、複数の第1電極110a,…,110Nまたは複数の第2電極210a,…,210Nが並列配置される方向であり、矩形状に形成される複数の第1電極110a,…,110Nのそれぞれおよび複数の第2電極210a,…,210Nのそれぞれの短手方向である。
【0043】
また、
図3に示すX方向は、EC素子100の第1電極群110における長手方向または第2電極群210における幅方向を示す。また
図3に示すY方向は,EC素子100の第1電極群110における幅方向または第2電極群210における長手方向を示す。
【0044】
次に、
図4および
図5を参照してEC素子100の構造例について説明する。
図4はEC素子100の立体斜視図であり、
図5はB-B´断面におけるEC素子100の断面図である。
【0045】
図4は、実施の形態1に係るEC素子100の構造例を説明する図である。
図5は、B-B´断面におけるEC素子100の構造例を説明する図である。
図4に示すZ方向は、第1電極群110と第2電極群210とが対向する方向を示す。なお、
図4では、説明を分かりやすくするためにEC素子100の立体斜視図の一部を用いて説明する。
【0046】
第1電極群110を構成する複数の第1電極110a,110b,110c,…,110Nは、所定の空隙を有してY方向に並列に配置される。第1電極群110は、-X方向における端部に露出部を備える。第1電極群110は、露出部に第1電極接続部112が接続されて、EC素子駆動回路500によって電圧を印加される。なお、
図4および
図5において、第1電極接続部112は省略されている。
【0047】
第1基板111は、第1電極群110において第2電極群210と対向する面と反対方向(以下、Z方向)の面に、第1電極群110を覆うように一体に設けられる。
【0048】
第2電極群210を構成する複数の第2電極210a,210b,210c,…,210Nは、所定の空隙を有して第1電極群110と対向してX方向に並列に配置される。第2電極群210は、-Y方向における端部に露出部を備える。第2電極群210は、露出部に第2電極接続部212が接続されて、EC素子駆動回路500によって電圧を印加される。なお、
図4および
図5において、第2電極接続部212は省略されている。
【0049】
第2基板211は、第2電極群210において第1電極群110と対向する方向と反対方向(以下、-Z方向)の面に、第2電極群210を覆うように一体に設けられる。
【0050】
スペーサ300は、第1電極群110の一方の端部に備えられる露出部と第2電極群210の一方の端部に備えられる露出部とを除いて、第1電極群110および第2電極群210の周縁に沿って、環状に設けられる。なお、
図4においてはスペーサ300を省略している。
【0051】
電解液EL1は、第1電極群110、第2電極群210およびスペーサ300によって形成された空間内に備えられる。
【0052】
図6は、B-B´断面におけるEC素子100の電界分布
図EMである。
図6は、金属OB1が析出可能な電圧を印加した際のB-B´断面における第1基板111と第2基板211との間の電界強度を示す図である。なお、
図6に示す複数の第2電極の数は3本であるが、これに限らないことは言うまでもない。
【0053】
図6に示す電界分布
図EMにおいて、ポイントR1,R2,R3,R4,R5,R6,R7,R8のそれぞれは、電界が集中する部分を示す。
【0054】
ポイントR1,R2のそれぞれは、第1電極群110の長手方向における両端部に集中した電界を示す。ポイントR3,R4は、複数の第2電極210a,…,210Nのそれぞれのうち両端に設置され、かつ隣り合う電極が存在しない電極(例えば、第2電極210a,210N)の幅方向における両端部に集中した電界を示す。ポイントR5,R6,R7,R8のそれぞれは、複数の第2電極210a,…,210Nのそれぞれが有する端部と空隙との間に集中した電界を示す。また、ポイントR5,R6,R7,R8のそれぞれの電界は、複数の第2電極210a,…,210Nのそれぞれが隣接する第2電極との間の空隙が小さいため、ポイントR3,R4のそれぞれの電界と比較すると、電界が集中する範囲が小さい。
【0055】
上述したポイントR1~R8のそれぞれに示す電界強度が高い部分は、後述する
図19および
図21に示す表示画素Pac,Pca,Pbbのように第1電極群110および第2電極群210が交差する領域を超えて金属OB1が析出、あるいは領域内の一部に金属OB1が集中して析出することにより、表示ムラが発生する。また、ポイントR1~R8のそれぞれに示す電界強度が高い部分は、電界が集中しやすいため、金属OB1が析出するまでの時間が早い。また、これらのポイントR1~R8のそれぞれは、電界強度が強くより多くの金属OB1が析出するため、EC素子100を透明状態に切替える際には多くの時間を要する。
【0056】
このようなポイントR1~R8のそれぞれに示す電界強度を低減させるEC素子100について、
図7~
図26を参照して説明する。
【0057】
<第1構成例>
実施の形態1に係るEC素子100の第1構成例について説明する。第1構成例において、EC素子100を構成する複数の第1電極110a,…,110Nのそれぞれおよび複数の第2電極210a,…,210Nのそれぞれは、幅方向の位置に応じて電極抵抗値が異なるように形成される。第1構成例について、
図7~
図18を参照して説明する。なお、以下で説明する第1構成例~第4構成例において、第1電極群110は、複数の第1電極110a,…,110Nのそれぞれを示してよい。また同様に、第1構成例における第2電極群210は、複数の第2電極210a,…,210Nのそれぞれを示してよい。
【0058】
図7は理想の電極抵抗値曲線Gr1の一例を示す図である。電極抵抗値曲線Gr1は、第1電極群110および第2電極群210のそれぞれが幅方向に有する電極抵抗値を示す図である。
図7に示す第1電極群110および第2電極群210は、それぞれA-A´断面における第1電極群110の幅方向およびC-C´断面における第2電極群210の幅方向の位置に応じて電極抵抗値が異なる。また、
図7に示す電極抵抗値曲線Gr1は、第1電極群110および第2電極群210のそれぞれの理想電極抵抗値を示した図である。
【0059】
第1電極群110は、Z方向の面に第1基板111を備える。第2電極群210は、-Z方向の面に第2基板211を備える。第1電極群110および第2電極群210のそれぞれは、幅方向の位置によって異なる大きさの電極抵抗値を有する。中央Laにおける電極抵抗値VRaは、第1電極110aの幅方向で最小値となる。中間Lbにおける電極抵抗値VRbは、電極抵抗値VRaより大きく、かつ電極抵抗値VRcよりも小さい。端部Lcにおける電極抵抗値VRcは、第1電極110aの幅方向で最大値(無限大)となる。なお、中央Laにおける電極抵抗値VRaは、例えば0.01Ωである。
【0060】
図7に示す電極抵抗値曲線Gr1を有する第1電極群110および第2電極群210のそれぞれは、幅方向における中央Laの電極抵抗値が小さく、かつ端部Lcの電極抵抗値が無限大に大きいため、電界が端部(エッジ)に集中しにくくなる。また、電極抵抗値曲線Gr1に示す電極抵抗値は、第1電極群110および第2電極群210のそれぞれの幅方向において、中央Laから端部Lcに向かって電極抵抗値が滑らかに変化する。これにより、EC素子100は、中央Laから端部Lcに向かって電極抵抗値の差に基づく金属OB1の析出量の増減(表示ムラ)を低減することができる。
【0061】
図8は、第1電極群110および第2電極群210のそれぞれの幅方向における電位の時間変化グラフVt1を示す図である。
図8に示す第1電極群110および第2電極群210のそれぞれは、
図7に示す電極抵抗値曲線Gr1を有する。
【0062】
時間変化グラフVt1は、電極抵抗値曲線Gr1を有する第1電極群110および第2電極群210のそれぞれの幅方向の中央La,中間Lbおよび端部Lcのそれぞれの電極抵抗値における電位の時間変化の様子を示す。析出開始電位V0は、金属OB1が析出を開始する電位である。印加電圧V1は、第1電極群110および第2電極群210のそれぞれに印加する電圧を示す。
【0063】
電極抵抗値曲線Gr1を有する第1電極群110および第2電極群210のそれぞれの幅方向における電位の時間変化について説明する。中央Laにおける電位は、印加電圧V1を印加してから時間t1で析出開始電位V0に到達し、さらに時間t2で印加電圧V1と同値の電位に達する。中間Lbにおける電位は、印加電圧V1を印加してから時間t3で析出開始電位V0に到達し、さらに時間t5で印加電圧V1と同値の電位に達する。端部Lcにおける電位は、印加電圧V1を印加してから時間t4で析出開始電位V0に到達し、さらに時間t6で印加電圧V1と同値の電位に達する。
【0064】
電極抵抗値曲線Gr1を有する第1電極群110および第2電極群210のそれぞれは、金属OB1が中央Laから端部Lcに向かって、所定の時間差で析出を開始する。また、電極抵抗値曲線Gr1を有する第1電極群110および第2電極群210のそれぞれは、中央Laにおける電位と端部Lcにおける電位とを比較すると、中央Laよりも端部Lcの方が同じ電位(印加電圧V1)に到達するまでより多くの時間を要する。これにより、電極抵抗値曲線Gr1を有する第1電極群110および第2電極群210のそれぞれは、金属OB1が析出を開始するまでの時間および金属OB1の析出量を制御し、表示ムラの発生を低減することができる。
【0065】
図9は、A-A´断面における低抵抗電極部材LRの配置例を示す図である。
図9に示す第1電極群110は、複数の低抵抗電極部材LRのそれぞれと高抵抗電極部材HRとからなり、電極抵抗値曲線Gr1に近しい電極抵抗値を有する。なお、
図9には第1電極群110のみを示しているが、第2電極群210も同様の構成であってよい。
【0066】
複数の低抵抗電極部材LRのそれぞれは、透光性を有する電極部材であり、例えばITOを材料とする。複数の低抵抗電極部材LRのそれぞれは、
図7の電極抵抗値曲線Gr1に示す電極抵抗値を得るために、第1電極群110の幅方向において異なる配置密度で配置される。複数の低抵抗電極部材LRのそれぞれは、第1電極群110の幅方向において中央位置において最も密度が大きくなるように配置され、端部において最も密度が小さくなるように配置される。
【0067】
高抵抗電極部材HRは、透光性を有する電極部材であり、例えばITOにSiO2またはSnO2などをドープしたものを材料とする。高抵抗電極部材HRは、複数の低抵抗電極部材LRのそれぞれを覆うように備えられて、矩形状の第1電極群110を形成する。
【0068】
以上により、
図8に示す第1電極群110は、複数の低抵抗電極部材LRのそれぞれの配置密度が小さい端部においては、高抵抗電極部材HRが占める割合が大きくなり、電極抵抗値が大きくなる。一方、第1電極群110は、複数の低抵抗電極部材LRのそれぞれの配置密度が大きい中央位置においては、高抵抗電極部材HRが占める割合が小さくなり、電極抵抗値が小さくなる。これにより、第1電極群110は、
図7に示す電極抵抗値曲線Gr1に近しい電極抵抗値を有することができる。したがって、EC素子100は、駆動する際の電極の幅方向のエッジ部(端部)の電界を抑制して表示ムラを低減し、高品位な表示を実現することができる。
【0069】
図10は、低抵抗電極部材LRの配置の一例を示す図である。
図10の(A)は、第1電極群110における複数の低抵抗電極部材LRのそれぞれの配置の様子を示す。
図10の(B)は、第2電極群210における複数の低抵抗電極部材LRのそれぞれの配置の様子を示す。
【0070】
第1電極群110は、電極の幅方向に配置密度が異なる複数の低抵抗電極部材LRのそれぞれを含んで形成される。第1電極群110は、画素領域T1において
図10の(B)に示す第2電極群210と交差する。
【0071】
第2電極群210は、電極の幅方向に配置密度が異なる複数の低抵抗電極部材LRのそれぞれを含んで形成される。第2電極群210は、画素領域T2において
図10の(A)に示す第1電極群110と交差する。なお、第2電極群210は、複数の低抵抗電極部材LRのそれぞれと高抵抗電極部材HRとを含んで形成されてもよいし、異なる抵抗値を有する他の抵抗電極部材によって一体に形成されてもよい。
【0072】
図11は、低抵抗電極部材LRおよび高抵抗電極部材HRを含む電極の製造手順例を説明する図である。
図11を参照して説明する第1電極群110は、複数の低抵抗電極部材LRのそれぞれと高抵抗電極部材HRとを含んで形成され、電極抵抗値曲線Gr1で示される電極抵抗値を有する。なお、
図9と同様に、
図11には第1電極群110のみを示しているが、第2電極群210についても同様の構成および製造方法であってよい。
【0073】
ステップSt1に示す製造手順において、低抵抗電極部材LRは、スパッタリングされて、基材Pr1上に積層される。基材Pr1は、例えばガラス材である。なお、実施の形態1に係る基材Pr1は、寸法安定性が高いガラスを一例として説明するが、これに限らず他の材料であってもよい。
【0074】
ステップSt2に示す製造手順において、フォトレジストPr2は、低抵抗電極部材LRの表面(基材Pr1が備えられた面と反対の面)に塗布される。表面にフォトレジストPr2を塗布された低抵抗電極部材LRは、さらに上面にフォトマスクPMを備えて、
図11に示す矢印の方向から、紫外線などの光を照射される(レジスト現像)。
【0075】
上述したフォトレジストPr2は、感光性耐食被膜である。フォトレジストPr2は、低抵抗電極部材LRの表面に塗布されて備えられる。フォトレジストPr2は、光を照射された部分が硬化する。硬化したフォトレジストPr2は、現像液(有機溶剤)に溶解せずに低抵抗電極部材LRの表面に残る。なお、実施の形態1に係る第1電極群110の製造手順例では、ネガ型のフォトレジストPr2を使用した製造手順例について説明しているが、ネガ型に限らずポジ型であってよい。
【0076】
また、フォトマスクPMは、フォトレジストPr2が塗布された低抵抗電極部材LR上に配置される。フォトマスクPMは、透光性を有し、例えばガラスまたは石英などを用いて板状に形成される。また、フォトマスクPMは、所定のパターンを有するパターン原版である。フォトマスクPMは、光の照射により、フォトレジストPr2にパターンを形成する。
【0077】
ステップSt3に示す製造手順において、フォトレジストPr2は、フォトマスクPMが有するパターンに応じて、光が照射された部分のみが硬化する。フォトレジストPr2は、硬化していない部分のみが現像液(有機溶媒)によって溶解し、硬化した部分のみが低抵抗電極部材LR上に残る。
【0078】
ステップSt4に示す製造手順において、低抵抗電極部材LRは、フォトレジストPr2が残った部分が除去されて、複数の低抵抗電極部材LRのそれぞれが残る。なお、残った複数の低抵抗電極部材LRのそれぞれは、中央位置において密度が最も大きい。
【0079】
ステップSt5に示す製造手順において、スパッタリングにより高抵抗電極部材HRは複数の低抵抗電極部材LRのそれぞれに積層される。これにより、複数の低抵抗電極部材LRのそれぞれは、低抵抗電極部材LRよりも高い抵抗値を有する高抵抗電極部材HRが積層することにより覆われ、矩形状(板状)を有する第1電極群110または第2電極群210を形成する。
【0080】
第1電極群110に含まれる複数の低抵抗電極部材LRのそれぞれの他の配置例について、
図12を参照して説明する。
図12は、大きさが異なる低抵抗電極部材LRの配置例を示す図である。
図12に示す複数の低抵抗電極部材LRは、第1電極群110の幅方向の中央位置で最も大きく形成され、端部で最も小さく形成される。
【0081】
図12に示す、大きさが異なる複数の低抵抗電極部材LRのそれぞれは、複数の低抵抗電極部材LRのそれぞれの配置数を少なくできるため、
図11に示す製造手順で使用されるフォトマスクPMに形成されるパターンを簡略化することができる。
【0082】
第1電極群110および第2電極群210のそれぞれに含まれる複数の低抵抗電極部材LRのそれぞれの他の配置パターンの一例について、
図13を参照して説明する。
図13は、画素領域T3,T4内における低抵抗電極部材LRの配置パターン例を示す図である。
【0083】
図13に示す複数の低抵抗電極部材LRは、画素領域T3,T4のそれぞれの領域に示す所定の配置パターンを有する。画素領域T3,T4内における低抵抗電極部材LRの配置パターンは、長手方向に繰り返される。複数の低抵抗電極部材LRのそれぞれは、画素領域T1の幅方向における中央位置の電極抵抗値が小さくなるように配置される。また、
図13に示す低抵抗電極部材LRの配置パターンは、第1電極群110の長手方向におけるエッジ部に複数の低抵抗電極部材LRのそれぞれを並べて配置する。したがって、複数の低抵抗電極部材LRのそれぞれは、画素領域T3,T4のそれぞれの幅方向および長手方向におけるエッジ部の電界を抑制して表示ムラを低減し、高品位な表示を実現することができる。
【0084】
また
図14には、
図7に示す理想の電極抵抗値曲線Gr1と近似する電極抵抗値曲線Gr2を得るための第1電極群110および第2電極群210のそれぞれの形状の変形例を示す。
【0085】
図14に示す第1電極群110および第2電極群210のそれぞれは、第1基板111および第2基板211のそれぞれを備える面と反対の面が凸形状を有する。第1電極群110および第2電極群210のそれぞれの電極抵抗値は、第1電極群110および第2電極群210のそれぞれの厚みに応じて変化し、厚みが大きいほど電極抵抗値は小さくなる。第1電極群110および第2電極群210のそれぞれが有する厚みは、中央Laの厚みが最も大きく、端部Lcに向かって小さくなる。これにより、第1電極群110および第2電極群210のそれぞれの幅方向における電極抵抗値は、電極抵抗値曲線Gr2のようになる。したがって、第1構成例に係るEC素子100は、駆動する際の電極の幅方向のエッジ部(端部)の電界を抑制して表示ムラを低減し、高品位な表示を実現できる。
【0086】
なお、
図14には第1電極群110および第2電極群210のそれぞれを示しているが、用途に応じて第1電極群110および第2電極群210のうちいずれか一方が凸形状を有して形成されてもよい。例えば、EC素子100は、ユーザが利用する面(例えば、第1電極群110)にのみ、凸形状を有して形成してもよい。また、例えばEC素子100の光学状態を遮光状態にして使用する場合には、第2電極群210のみに凸形状を有して形成してもよい。
【0087】
図15には、
図7に示す理想の電極抵抗値曲線Gr1を近似的に得ることを目的とした第1電極群110および第2電極群210のそれぞれの他の形状を示す。
【0088】
図15に示す第1電極群110および第2電極群210のそれぞれは、幅方向において複数の異なる電極の厚みとなるように、複数の段部を形成する。第1電極群110および第2電極群210のそれぞれの幅方向における電極抵抗値は、電極の厚みに応じて変化する。電極抵抗値は、電極の厚みが大きいほど小さくなる。
【0089】
電極抵抗値線Gr3は、第1電極群110および第2電極群210のそれぞれに形成された段部に応じて異なる大きさの電極抵抗値を有する。中央付近Ldにおける電極抵抗値VRdは、第1電極群110および第2電極群210のそれぞれの幅方向において最小値となる。中間部Leにおける電極抵抗値VReは、電極抵抗値VRdより大きく、かつ電極抵抗値VRfよりも小さい。端部Lfにおける電極抵抗値VRfは、第1電極群110および第2電極群210のそれぞれの幅方向において最大値となる。これにより、第1電極群110および第2電極群210のそれぞれの幅方向における電極抵抗値は、電極抵抗値線Gr3のようになる。
【0090】
図15に示す複数の段部が形成された第1電極群110および第2電極群210のそれぞれは、
図14に示した凸形状に形成する場合と比較して、製造がより容易である。複数の段部のそれぞれは、高抵抗電極部材HRを段部の数に応じて積層することで形成可能である。また、
図15には3段の段部を形成した例を示しているが、段数は3段より多くてもよい。これにより、第1電極群110および第2電極群210のそれぞれの電極抵抗値は、幅方向に対してより滑らかに変化する。したがって、第1構成例におけるEC素子100は、駆動する際の電極の幅方向のエッジ部(端部)の電界を抑制して表示ムラを低減し、高品位な表示を実現できる。
【0091】
さらに
図16は、他の形状で形成された第1電極群110および第2電極群210のそれぞれの例を示す。
【0092】
図16には、第1電極群110および第2電極群210のそれぞれの断面形状が、三角形形状となるように形成された例を示す。
図16に示す第1電極群110および第2電極群210のそれぞれの幅方向の電極抵抗値は、中央Lgから端部Lhに向かって電極抵抗値線Gr4のように変化する。中央Lgにおける電極抵抗値VRgは、第1電極群110および第2電極群210のそれぞれの幅方向において最小値となる。端部Lhにおける電極抵抗値VRhは、第1電極群110および第2電極群210のそれぞれの幅方向において最大値となる。これにより、第1電極群110および第2電極群210のそれぞれの電極抵抗値は、幅方向に対して直線的に変化する。したがって、第1構成例におけるEC素子100は、駆動する際の電極の幅方向のエッジ部(端部)の電界を抑制して表示ムラを低減し、高品位な表示を実現できる。
【0093】
図17および
図18に示す電極抵抗値曲線Gr5,Gr6のそれぞれは、複数の低抵抗電極部材LRおよび高抵抗電極部材HRのそれぞれを含んで形成された第1電極群110および第2電極群210のそれぞれの幅方向における電極抵抗値の変化を示す。
【0094】
図17は、低抵抗電極部材LRの配置パターンに応じた電極抵抗値曲線Gr5の一例を示す図である。
図17に示す電極抵抗値曲線Gr5は、第1電極群110および第2電極群210のそれぞれに含まれる複数の低抵抗電極部材LRのそれぞれの大きさ、配置密度および配置パターンに応じた幅方向における電極抵抗値の変化を示す。
図17に示す第1電極群110および第2電極群210のそれぞれは、幅方向の中央位置において複数の低抵抗電極部材LRのそれぞれの配置密度が大きく、端部において配置密度が小さい。よって、電極抵抗値曲線Gr5に示すように、第1電極群110および第2電極群210のそれぞれの幅方向における電極抵抗値は、中央位置の電極抵抗値よりも端部の電極抵抗値が相対的に大きい値となる。
【0095】
図18は、低抵抗電極部材LRの配置パターンに応じた電極抵抗値曲線Gr6の一例を示す
図である。
図18に示す電極抵抗値曲線Gr6は、例えば
図12に示すような第1電極群110に含まれる複数の低抵抗電極部材LRのそれぞれの大きさおよび配置パターンによって実現される。電極抵抗値曲線Gr6も電極抵抗値曲線Gr5と同様に、第1電極群110および第2電極群210のそれぞれの幅方向における電極抵抗値は、中央位置の電極抵抗値よりも端部の電極抵抗値が相対的に大きい値となる。
【0096】
<第2構成例>
実施の形態1に係る第2構成例におけるEC素子100について説明する。第2構成例において、EC素子100は、
図19の(B)に示すような表示ムラW1,W2を低減させるための構造を有する。以下、第2構成例について、
図19および
図20を参照して説明する。
【0097】
図19は、EC素子100の表示ムラW1,W2の一例を示す図である。
図19の(A)は、EC素子100を構成する複数の第1電極110a,…,110Nのそれぞれおよび複数の第2電極210a,…,210Nのそれぞれをパッシブマトリクス駆動する前の状態を示す。第1電極群110と第2電極群210とは、垂直方向に対向して配置される。
図19の(B)は、EC素子100をパッシブマトリクス駆動した後に発生した表示ムラW1,W2のそれぞれの様子を示す。
【0098】
図19の(B)に示すEC素子100は、パッシブマトリクス駆動して、表示画素Pca,Pacのそれぞれに金属OB1が析出している。表示画素Pcaと隣接する画素には、表示ムラW1が発生している。表示画素Pcaは、画素のエッジ部に電界が局所的に集中しており、金属OB1が析出するために十分な電位となり、余分な金属OB1が析出して表示ムラW1が発生している。表示画素Pacでは、画素のエッジ部に表示ムラW2が発生している。表示画素Pacは、部分的に集中して析出した金属OB1が部分的に厚い金属膜を形成し、表示ムラW2が発生している。
【0099】
図20は、
図19の(B)に示す表示ムラW1,W2を低減させるためのEC素子100の第2構成例を示す。
図20の(A)は、第2構成例を適用する前のEC素子100を示す。
【0100】
図20の(B)は、透光性を有し、かつ電圧印加時に金属OB1が析出しない複数の非表示電極群150,250を備えたEC素子100を示す。複数の非表示電極群150,250のそれぞれは、第1電極110aおよび第2電極210aよりも小さい幅を有する。複数の非表示電極群150,250のそれぞれの電極抵抗値は、実質的に無限大である。
【0101】
非表示電極群150のうち非表示電極150aは、第1電極110aと隣り合って、かつEC素子100の最外周(エッジ部)に配置される。また、非表示電極群250のうち非表示電極250aは、第2電極210aと隣り合って、かつEC素子100の最外周(エッジ部)に沿って配置される。また、非表示電極群150の非表示電極150bは、第1電極110cと第1電極110d(不図示)との間に配置される。また、非表示電極群250の非表示電極250bは、第2電極210cと第2電極210d(不図示)との間に配置される。なお、
図20の(B)では説明を簡単にするために、4枚の非表示電極150a,150b,250a,250bを示し、他の非表示電極を省略している。
【0102】
非表示電極は、第1電極群110および第2電極群210のそれぞれに複数設けられてもよく、例えば所定の電極の数ごとに配置されてもよい。これにより、EC素子100は、
図19の(B)に示す表示画素Pca,Pacのエッジ部において電界集中を抑制し、表示ムラW1,W2を低減して高品位な表示を実現できる。
【0103】
なお、
図19および
図20に示す第1電極群110および第2電極群210は、説明を簡単にするために第1電極および第2電極をそれぞれ3枚ずつ図示しているが、これに限定されないことはいうまでもない。
【0104】
<第3構成例>
実施の形態1に係るEC素子100の第3構成例について説明する。第3構成例において、EC素子100を構成する複数の第1電極110a,…,110Nのそれぞれおよび複数の第2電極210a,…,210Nのそれぞれは、
図21の(B)に示すような表示ムラW3,W4を低減させるための構造を有する。以下、第3構成例について、
図21~
図26のそれぞれを参照して説明する。
【0105】
図21は、EC素子100の表示ムラW3,W4の一例を示す図である。
図21の(A)は、EC素子100を構成する複数の第1電極110a,…,110Nのそれぞれおよび複数の第2電極210a,…,210Nのそれぞれをパッシブマトリクス駆動する前の状態を示す。第1電極群110と第2電極群210とは、垂直方向に対向して配置される。
図21の(B)は、EC素子100をパッシブマトリクス駆動した後に発生した表示ムラW3,W4のそれぞれの様子を示す。
【0106】
図21の(B)に示す、EC素子100は、パッシブマトリクス駆動して、表示画素Pbbの表示領域外に金属OB1が析出している。表示画素Pbbでは、隣接する画素に表示ムラW3,W4が発生している。表示画素Pbbの4つのコーナ部には、電界が局所的に集中しており、隣接する画素に金属OB1が析出して表示ムラW3,W4が発生している。
【0107】
図22は、
図21の(B)に示す表示ムラW3,W4を低減させるためのEC素子100の第3構成例を示す。
図22の(A)は、長手方向に沿って複数の切り欠き部160a,…,160M(切り欠き部群160)を設けた第1電極群110を示す図である。
図22の(B)は、長手方向に沿って複数の切り欠き部260a,…,260M(切り欠き部群260)を設けた第2電極群210を示す図である。
図22の(C)は、第1電極群110と第2電極群210とを対向して配置した際に、切り欠き部群160,260が形成する空隙部Brを示す図である。なお、切り欠き部群160,260は、空隙部Brの形成時にラウンド形状になるように第1電極群110および第2電極群210にそれぞれ設けられる。
【0108】
図23は、第3構成例におけるEC素子100の空隙部Brおよび表示画素Pbbにおける金属OB1の析出の様子を示す。
【0109】
図23の(A)は、第3構成例を適用したEC素子100が、パッシブマトリクス駆動する前の様子を示す。EC素子100は、第1電極群110および第2電極群210のそれぞれが垂直方向(Z方向)に対向して配置される。EC素子100は、第1電極群110および第2電極群210にそれぞれ設けられた切り欠き部群160,260によって、複数の空隙部Br1,Br2,Br3,Br4,Br5,Br6が形成される。これにより、表示画素は、電位が集中しやすい四隅に対して、複数の空隙部Br1,Br2,Br3,Br4,Br5,Br6のそれぞれがラウンド形状に形成されて、電位を分散することができる。したがって、第3構成例におけるEC素子100は、隣接画素に対する金属OB1が析出(干渉)することを抑制することができる。
【0110】
図23の(B)は、第3構成例におけるEC素子100が、パッシブマトリクス駆動した際の様子を示す。表示画素Pbbは、複数の空隙部Br2,Br3,Br5,Br6のそれぞれによって、隣接画素に対する金属OB1の析出(干渉)が抑制される。以上により、第3構成例におけるEC素子100は、駆動する際の電極のエッジ部(画素の四隅)の電界を抑制して表示ムラを低減し、高品位な表示を実現できる。
【0111】
<第4構成例>
実施の形態1に係るEC素子100の第4構成例について説明する。第4構成例において、EC素子100は、
図21の(B)に示すような表示ムラW3,W4のそれぞれを低減させるための構造を有する。以下、第4構成例について、
図24~
図26のそれぞれを参照して説明する。なお、
図21の(B)に示す表示ムラW3,W4については、第3構成例で説明した内容と同一であるため、以下の説明において省略する。
【0112】
図24および
図25には、
図21の(B)に示す表示ムラW3,W4を低減させるためのEC素子100の第4構成例を示す。
【0113】
図24の(A)は、第4構成例における第1電極群110をユーザ(
図1参照,矢印K)から見た図である。
図24の(B)は、
図24の(A)に示す第1電極群110を反対側(第2電極群210側)から見た図である。また、
図24の(C)は、第4構成例における第1電極群110のB-B´断面図である。第4構成例において、第1電極群110には、絶縁膜群170が配置される。
【0114】
図25の(A)は、第4構成例におけるEC素子100をユーザ(
図1参照,矢印K)から見た図である。
図25の(B)は、第4構成例のEC素子100における表示画素Pbbの様子を示す図である。
【0115】
第1電極群110は、一方の面に第1基板111を備え、第2電極群210と対向するもう一方の面に絶縁膜群170を備える。絶縁膜群170は、複数の絶縁膜170a,170b,…,170Lによって構成される。また、複数の第2電極210a,…,210Nのそれぞれは、第2電極との間に所定の空隙を有して配置される。複数の絶縁膜170a,…170Lは、対向する複数の第2電極210a,…,210N同士の間に形成された複数の空隙をそれぞれ跨ぐように配置される。これにより、複数の第1電極110a,…,110Nのそれぞれは、複数の第2電極210a,…,210Nによって形成される空隙部分に対する電界の集中を抑制することができる。したがって、第4構成例のEC素子100は、表示画素Pbbに隣接する第1電極群110の長手方向の表示画素に対する複数の表示ムラW3,W4のそれぞれを低減することができる。
【0116】
また、絶縁膜群170を構成する絶縁膜の数は、第2電極群を構成する第2電極の数より1つ多いことが好ましい。このような場合、絶縁膜170aは、第2電極210aとスペーサ300との間を跨ぐように配置される。また、絶縁膜170Lは、第2電極210Nとスペーサ300との間を跨ぐように配置される。これにより、第4構成例のEC素子100は、電界が最も集中しやすい最外周に配置された第2電極とスペーサ300とによって形成されたエッジ部の電界の集中を抑制することができる。
【0117】
図26を参照して、第4構成例における金属OB1の析出の様子について説明する。
図26は、第4構成例におけるEC素子100の金属OB1析出例を示す図である。
【0118】
第1電極群110の第2電極群210と対向する面には、複数の絶縁膜170a,170b,…,170Lが配置される。複数の絶縁膜170a,…,170Lは、対向する複数の第2電極210a,…,210N同士の間に形成される複数の空隙にそれぞれ対応して配置される。
【0119】
第4構成例における第1電極群110は、複数の絶縁膜170a,…,170Lが配置された場所を除く面に、印加電圧に応じた負の電荷を蓄積する。電解液EL1に含まれる金属OB1は、第1電極群110の面のうち、負の電荷が蓄積された部分にのみ析出を開始する。よって、金属OB1は、
図26の(B)に示すように第1電極群110の表面、かつ複数の絶縁膜170a,…,170Lのそれぞれが配置されていない場所に析出して金属薄膜を形成する。これにより、第1電極群110に対向して配置される複数の第2電極210a,…,210Nのそれぞれの幅方向のエッジ部に対応する第1電極群110における電界の集中を抑制することができる。
【0120】
なお、実施の形態1に係る第1電極群110を構成する第1電極の数と、第2電極群210を構成する第2電極の数は、同数でなくてもよい。
【0121】
また、複数の第1電極110a,…,110Nのそれぞれ、および複数の第2電極210a,…,210Nのそれぞれの電極の幅は、同一幅でなくてよい。
【0122】
また、実施の形態1に係るEC素子100は、パッシブマトリクス駆動することを想定して説明したが、パッシブマトリクス駆動するEC素子100に限定しない。例えば、EC素子100は、第1電極110aおよび第2電極210aによって構成され、アクティブマトリクス駆動してよい。
【0123】
また、実施の形態1に係るEC素子100は、各構成例のみを単独で適用したEC素子100に限らず、複数の構成例を適用したEC素子100であってもよい。
【0124】
また、EC素子100および調光装置1000の用途に応じて、第1電極群110および第2電極群210のうちいずれか一方は、透光性を有さない電極であってもよいし、透明電極でなくてもよい。さらに、EC素子100は、第1電極群110および第2電極群210のうちいずれか一方にのみ、実施の形態1に係る各構成例を適用されてもよい。これにより、EC素子100は、製造コストが低減され、ユーザの希望用途に応じたEC素子100を提供することができる。
【0125】
以上により、実施の形態1に係るEC素子100は、透光性を有し、並列に配置された複数の矩形状の第1電極110a,…,110Nと、複数の第1電極110a,…,110Nと対向して並列に配置された複数の矩形状の第2電極210a,…,210Nと、複数の第1電極110a,…,110Nと複数の第2電極210a,…,210Nとの間に配置された、金属OB1を含む電解液EL1と、を備える。電解液EL1は、印加電圧に応じて複数の第1電極110a,…,110Nおよび複数の第2電極210a,…,210Nのいずれか一方に金属OB1を析出可能であり、第1電極110a,…,110Nおよび第2電極210a,…,210Nのうち少なくとも一方は、幅方向の端部において、幅方向の中央位置よりも高い電極抵抗値を有する。
【0126】
これにより、EC素子100は、駆動する際の電極の幅方向のエッジ部の電界を抑制して表示ムラを低減し、高品位な表示を実現できる。
【0127】
また、第1電極110a,…,110Nおよび第2電極210a,…,210Nのうち少なくとも一方は、中央位置から端部に向かって少なくとも3段階の異なる抵抗値を有する。これにより、EC素子100は、駆動する際の電極の幅方向のエッジ部の電界を抑制して表示ムラを低減し、高品位な表示を実現できる。
【0128】
また、第1電極110a,…,110Nおよび第2電極210a,…,210Nのうち少なくとも一方は、高抵抗電極部材HRと、幅方向の位置に応じて大きさが異なる複数の低抵抗電極部材LRとを含んで形成される。これにより、EC素子100は、駆動する際の電極の幅方向のエッジ部の電界を抑制して表示ムラを低減し、高品位な表示を実現できる。
【0129】
また、第1電極110a,…,110Nおよび第2電極210a,…,210Nのうち少なくとも一方は、高抵抗電極部材HRと、幅方向の位置に応じて配置密度が異なる複数の低抵抗電極部材LRとを含んで形成される。これにより、EC素子100は、駆動する際の電極の幅方向のエッジ部の電界を抑制して表示ムラを低減し、高品位な表示を実現できる。
【0130】
また、第1電極110a,…,110Nおよび第2電極210a,…,210Nのそれぞれは、幅方向の中央位置において最も低く、幅方向の端部において中央位置よりも相対的に高い抵抗値を有する。これにより、EC素子100は、駆動する際の電極の幅方向のエッジ部の電界を抑制して表示ムラを低減し、高品位な表示を実現できる。
【0131】
また、EC素子100は、複数の第1電極110a,…,110Nのうち少なくとも1つに隣接して、電圧印加時に金属OB1が析出しない第1非表示電極の一例としての非表示電極群150を更に有し、複数の第2電極210a,…,210Nのうち少なくとも1つに隣接して、電圧印加時に金属OB1が析出しない第2非表示電極の一例としての非表示電極群250を更に有する。これにより、EC素子100は、第1電極群110および第2電極群210のそれぞれの最外周とスペーサ300との間のエッジ部に、電界が集中することを抑制できる。したがって、EC素子100は、駆動する際の電極の幅方向のエッジ部および電極の最外周に発生する表示ムラを低減し、高品位な表示を実現できる。
【0132】
また、第1電極110a,…,110Nおよび第2電極210a,…,210Nは、それぞれの長手方向に沿って、複数の切り欠き部160a,…,160Mおよび複数の切り欠き部260a,…,260Mをそれぞれ有する。複数の切り欠き部160a,…,160Mおよび複数の切り欠き部260a,…,260Mは、長手方向に直交する幅方向に向かって切り欠かれている。これにより、EC素子100は、金属OB1が析出する複数の表示画素のそれぞれが有する複数の角部をラウンド形状に形成することができる。したがって、EC素子100は、駆動する際の表示画素の角部に発生する表示ムラを低減し、高品位な表示を実現できる。
【0133】
また、EC素子100は、複数の絶縁膜170a,…,170Lを更に備える。複数の第2電極210a,…,210Nのそれぞれは、隣接する第2電極との間で所定の空隙を有して配置される。複数の絶縁膜170a,…,170Lのそれぞれは、所定の空隙を跨ぐように配置される。これにより、EC素子100はそれぞれ隣接する第2電極同士の空隙部分に対する電界の集中を抑制することができる。したがって、EC素子100は、駆動する際の第2電極群210の空隙のエッジ部に発生する表示ムラを低減し、高品位な表示を実現できる。
【0134】
また、複数の絶縁膜170a,…,170Lは、複数の第1電極110a,…,110Nにおいて複数の第2電極210a,…,210Nと対向する面に設けられる。これにより、EC素子100は、駆動する際の第2電極群210の空隙のエッジ部に発生する表示ムラを低減し、高品位な表示を実現できる。
【0135】
以上、添付図面を参照しながら各種の実施の形態について説明したが、本開示はかかる例に限定されない。当業者であれば、請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例、修正例、置換例、付加例、削除例、均等例に想到し得ることは明らかであり、それらについても本開示の技術的範囲に属すると了解される。また、発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上述した各種の実施の形態における各構成要素を任意に組み合わせてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0136】
本開示は、調光素子の表示においてEC(エレクトロクロミック)素子を駆動する際の電極の幅方向のエッジ部の電界を抑制して表示ムラを低減し、高品位な表示を実現する調光素子として有用である。
【符号の説明】
【0137】
100 EC素子
110 第1電極群
110a,110b,110c,110d,110N 第1電極
111 第1基板
150 非表示電極群
150a,150b 非表示電極
160 切り欠き部群
160a,160M 切り欠き部
170 絶縁膜群
170a,170b,170L 絶縁膜
210 第2電極群
210a,210b,210c,210d,210N 第2電極
211 第2基板
250 非表示電極群
250a,250b 非表示電極
260 切り欠き部群
260a,260M 切り欠き部
300 スペーサ
400 EC素子駆動回路制御部
500 EC素子駆動回路
1000 調光装置
Br,Br1,Br2,Br3,Br4,Br5,Br6 空隙部
EL1 電解液
Gr1,Gr2,Gr5,Gr6 電極抵抗値曲線
Gr3,Gr4 電極抵抗値線
LR 低抵抗電極部材
HR 高抵抗電極部材
OB1 金属
La,Lg 中央
Lb 中間
Lc,Lf,Lh 端部
Ld 中央付近
Le 中間部
VRa,VRb,VRc,VRd,VRe,VRf,VRg,VRh 電極抵抗値