(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-20
(45)【発行日】2022-09-29
(54)【発明の名称】伝送線路基板および電子機器
(51)【国際特許分類】
H05K 1/02 20060101AFI20220921BHJP
H05K 1/14 20060101ALI20220921BHJP
H05K 3/28 20060101ALI20220921BHJP
H01P 3/08 20060101ALI20220921BHJP
H01L 23/12 20060101ALI20220921BHJP
【FI】
H05K1/02 N
H05K1/14 C
H05K3/28 C
H01P3/08 200
H01L23/12 Q
(21)【出願番号】P 2021536858
(86)(22)【出願日】2020-07-02
(86)【国際出願番号】 JP2020025996
(87)【国際公開番号】W WO2021020019
(87)【国際公開日】2021-02-04
【審査請求日】2021-10-04
(31)【優先権主張番号】P 2019141239
(32)【優先日】2019-07-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000970
【氏名又は名称】弁理士法人 楓国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大井 康丞
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 慎悟
(72)【発明者】
【氏名】小山 展正
(72)【発明者】
【氏名】加藤 元郎
(72)【発明者】
【氏名】三島 孝太郎
【審査官】小林 大介
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3173143(JP,U)
【文献】国際公開第2019/098012(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/088592(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 1/02
H05K 1/14
H05K 3/28
H01P 3/08
H01L 23/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
線路部および接続部を有する伝送線路基板であって、
互いに対向する第1主面および第2主面を有する基材と、
前記第1主面側に形成される第1グランド導体と、
前記第2主面側に形成される第2グランド導体と、
前記基材に形成され、伝送方向に延伸する信号線と、
前記接続部の前記第1主面側に形成され、前記信号線に接続される入出力電極と、
を備え、
前記線路部における前記信号線は、前記基材の厚み方向において前記第1グランド導体と前記第2グランド導体との間に配置され、
前記線路部における前記第1グランド導体は、平面視で前記信号線に重なる位置に、導体のない第1導体非形成部が設けられ、
前記線路部における前記第2グランド導体は、平面視で前記信号線に重なる位置に、導体のない第2導体非形成部が設けられ、
前記第2導体非形成部の合計面積は、前記第1導体非形成部の合計面積よりも小さ
く、
前記信号線は、前記線路部において互いに並走する部分を有した、複数の信号線を有し、
前記第1導体非形成部の数は複数であり、
複数の前記第1導体非形成部のうち、隣接する2つの前記信号線にそれぞれ重なる第1導体非形成部同士は、前記伝送方向にずれて配置されている、伝送線路基板。
【請求項2】
線路部および接続部を有する伝送線路基板であって、
互いに対向する第1主面および第2主面を有する基材と、
前記第1主面側に形成される第1グランド導体と、
前記第2主面側に形成される第2グランド導体と、
前記基材に形成され、伝送方向に延伸する信号線と、
前記接続部の前記第1主面側に形成され、前記信号線に接続される入出力電極と、
を備え、
前記線路部における前記信号線は、前記基材の厚み方向において前記第1グランド導体と前記第2グランド導体との間に配置され、
前記線路部における前記第1グランド導体は、平面視で前記信号線に重なる位置に、導体のない第1導体非形成部が設けられ、
前記線路部における前記第2グランド導体は、導体のない導体非形成部が設けられて
おらず、
前記信号線は、前記線路部において互いに並走する部分を有した、複数の信号線を有し、
前記第1導体非形成部の数は複数であり、
複数の前記第1導体非形成部のうち、隣接する2つの前記信号線にそれぞれ重なる第1導体非形成部同士は、前記伝送方向にずれて配置されている、伝送線路基板。
【請求項3】
線路部および接続部を有する伝送線路基板であって、
互いに対向する第1主面および第2主面を有する基材と、
前記第1主面側に形成される第1グランド導体と、
前記第2主面側に形成される第2グランド導体と、
前記基材に形成され、伝送方向に延伸する信号線と、
前記接続部の前記第1主面側に形成され、前記信号線に接続される入出力電極と、
を備え、
前記線路部における前記信号線は、前記基材の厚み方向において前記第1グランド導体と前記第2グランド導体との間に配置され、
前記線路部における前記第1グランド導体は、平面視で前記信号線に重なる位置に、導体のない第1導体非形成部が設けられ、
前記線路部における前記第2グランド導体は、平面視で前記信号線に重なる位置に、導体のない第2導体非形成部が設けられ、
前記第2導体非形成部の合計面積は、前記第1導体非形成部の合計面積よりも小さ
く、
前記線路部の前記第1主面側に形成される補助電極を備え、
前記接続部の数は複数であり、
前記補助電極は、平面視で、2つの前記接続部の間に配置され、
前記補助電極は、前記伝送方向に対して斜め方向に延伸する平面形状である、伝送線路基板。
【請求項4】
線路部および接続部を有する伝送線路基板であって、
互いに対向する第1主面および第2主面を有する基材と、
前記第1主面側に形成される第1グランド導体と、
前記第2主面側に形成される第2グランド導体と、
前記基材に形成され、伝送方向に延伸する信号線と、
前記接続部の前記第1主面側に形成され、前記信号線に接続される入出力電極と、
を備え、
前記線路部における前記信号線は、前記基材の厚み方向において前記第1グランド導体と前記第2グランド導体との間に配置され、
前記線路部における前記第1グランド導体は、平面視で前記信号線に重なる位置に、導体のない第1導体非形成部が設けられ、
前記線路部における前記第2グランド導体は、導体のない導体非形成部が設けられて
おらず、
前記線路部の前記第1主面側に形成される補助電極を備え、
前記接続部の数は複数であり、
前記補助電極は、平面視で、2つの前記接続部の間に配置され、
前記補助電極は、前記伝送方向に対して斜め方向に延伸する平面形状である、伝送線路基板。
【請求項5】
前記第2主面に形成され、前記基材よりも比誘電率の高い第2保護層を備え、
前記第2保護層は、平面視で、前記第2導体非形成部を覆う位置に配置される、請求項1
または3に記載の伝送線路基板。
【請求項6】
前記第1主面に形成され、前記基材よりも比誘電率の高い第1保護層を備え、
前記第1保護層は、平面視で、前記第1導体非形成部を覆う位置に配置される、請求項1から
5のいずれかに記載の伝送線路基板。
【請求項7】
前記信号線は、前記線路部において互いに並走する部分を有した、複数の信号線を有し、
前記第1導体非形成部の数は複数であり、
複数の前記第1導体非形成部のうち、隣接する2つの前記信号線にそれぞれ重なる第1導体非形成部同士は、前記伝送方向に直交する幅方向に隣接して配置されていない、請求項1
または2に記載の伝送線路基板。
【請求項8】
前記補助電極の数は複数であり、
複数の前記補助電極は、前記伝送方向に沿って配置されている、請求項
3または
4に記載の伝送線路基板。
【請求項9】
請求項1から8のいずれかに記載の伝送線路基板と、
前記伝送線路基板が実装される回路基板と、を備える、電子機器。
【請求項10】
前記線路部の前記第1主面よりも前記第2主面に近接する能動素子を備える、請求項9に記載の電子機器。
【請求項11】
前記線路部の前記第1主面よりも前記第2主面に近接するアンテナを備える、請求項9に記載の電子機器。
【請求項12】
前記線路部の前記第1主面よりも前記第2主面に近接する、回路用の導体を備える、請求項9に記載の電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、信号線と、信号線を間に挟む2つのグランド導体とを有する伝送線路基板、およびそれを備えた電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、基材と、基材に形成される複数の導体パターン(信号線、信号線を間に挟む第1グランド導体および第2グランド導体)と、を備えた伝送線路基板(フラットケーブル)が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、実装面側に第1グランド導体が配置され、実装面とは反対側の天面側に第2グランド導体が配置された、伝送線路基板が開示されている。上記伝送線路基板では、天面側の第2グランド導体のみに、平面視で信号線に重なる位置に開口(導体非形成部)が設けられている。上記構成によれば、信号線と第2グランド導体との間隙を狭くしても所定の特性を有する回路を構成できるため、伝送線路基板(基材)を薄型化(低背化)できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記構成の伝送線路基板を電子機器に組み込んだ場合(回路基板等に実装した場合)、天面側に位置する第2グランド導体に導体非形成部が設けられているため、伝送線路(信号線)が外部からのノイズの影響を受けやすくなってしまう。
【0006】
本発明の目的は、グランド導体に導体非形成部が設けられた構成でも、外部からのノイズの影響を抑制できる薄型の伝送線路基板、およびそれを備える電子機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の伝送線路基板は、
線路部および接続部を有する伝送線路基板であって、
互いに対向する第1主面および第2主面を有する基材と、
前記第1主面側に形成される第1グランド導体と、
前記第2主面側に形成される第2グランド導体と、
前記基材に形成され、伝送方向に延伸する信号線と、
前記接続部の前記第1主面側に形成され、前記信号線に接続される入出力電極と、
を備え、
前記線路部における前記信号線は、前記基材の厚み方向において前記第1グランド導体と前記第2グランド導体との間に配置され、
前記線路部における前記第1グランド導体は、平面視で前記信号線に重なる位置に、導体のない第1導体非形成部が設けられ、
前記線路部における前記第2グランド導体は、平面視で前記信号線に重なる位置に、導体のない第2導体非形成部が設けられ、
前記第2導体非形成部の合計面積は、前記第1導体非形成部の合計面積よりも小さいことを特徴とする。
【0008】
本発明の伝送線路基板は、
線路部および接続部を有する伝送線路基板であって、
互いに対向する第1主面および第2主面を有する基材と、
前記第1主面側に形成される第1グランド導体と、
前記第2主面側に形成される第2グランド導体と、
前記基材に形成され、伝送方向に延伸する信号線と、
前記接続部の前記第1主面側に形成され、前記信号線に接続される入出力電極と、
を備え、
前記線路部における前記信号線は、前記基材の厚み方向において前記第1グランド導体と前記第2グランド導体との間に配置され、
前記線路部における前記第1グランド導体は、平面視で前記信号線に重なる位置に、導体のない第1導体非形成部が設けられ、
前記線路部における前記第2グランド導体は、導体のない導体非形成部が設けられていないことを特徴とする。
【0009】
上記構成によれば、相対的に導体比率の低い第1グランド導体が実装面(第1主面)側に配置され、相対的に導体比率の高い第2グランド導体が天面(第2主面)側に配置されている。そのため、相対的に導体比率の低い第1グランド導体が天面側に位置する場合に比べて、伝送線路(信号線)への外部(特に、第2主面側)からのノイズの影響は抑制できる。また、この構成により、伝送線路からの高周波の不要輻射も抑制される。
【0010】
また、上記構成によれば、第1グランド導体のうち平面視で信号線に重なる位置に、第1導体非形成部が形成されている。そのため、所定の回路を伝送線路基板に構成する場合に、信号線の線幅を太くでき、上記回路の導体損を低減できる。また、所定の特性を有する回路を伝送線路基板に構成する場合に、信号線の線幅を細くしなくても基材層を薄くでき、伝送線路基板を薄型(低背化)できる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、グランド導体に導体非形成部が設けられた構成でも、外部からのノイズの影響を抑制できる薄型の伝送線路基板、およびそれを備える電子機器を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、第1の実施形態に係る伝送線路基板101の外観斜視図である。
【
図2】
図2は、伝送線路基板101の分解平面図である。
【
図5】
図5は、第1の実施形態に係る電子機器301の主要部を示す断面図である。
【
図6】
図6は、第2の実施形態に係る伝送線路基板102の外観斜視図である。
【
図7】
図7は、伝送線路基板102の分解平面図である。
【
図8】
図8(A)は第3の実施形態に係る伝送線路基板103の外観斜視図であり、
図8(B)は
図8(A)におけるD-D断面図である。
【
図9】
図9(A)は第4の実施形態に係る伝送線路基板104の外観斜視図であり、
図9(B)は伝送線路基板104の平面図である。
【
図11】
図11(A)は第5の実施形態に係る伝送線路基板105の外観斜視図であり、
図11(B)は
図11(A)のF-F断面図である。
【
図12】
図12は、第6の実施形態に係る伝送線路基板106の線路部SLを示した拡大平面図である。
【
図13】
図13は、伝送線路基板106の線路部SLの分解平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以降、図を参照して幾つかの具体的な例を挙げて、本発明を実施するための複数の形態を示す。各図中には同一箇所に同一符号を付している。要点の説明または理解の容易性を考慮して、便宜上実施形態を分けて示すが、異なる実施形態で示した構成の部分的な置換または組み合わせが可能である。第2の実施形態以降では第1の実施形態と共通の事柄についての記述を省略し、異なる点についてのみ説明する。特に、同様の構成による同様の作用・効果については実施形態毎には逐次言及しない。
【0014】
《第1の実施形態》
図1は、第1の実施形態に係る伝送線路基板101の外観斜視図である。
図2は、伝送線路基板101の分解平面図である。
図3は、
図1におけるA-A断面図である。
図4(A)は
図1におけるB-B断面図であり、
図4(B)は
図1におけるC-C断面図である。
【0015】
本実施形態に係る伝送線路基板101は、例えば、単一の回路基板上に実装される電子部品、または複数の回路基板同士を接続するケーブルである。
【0016】
伝送線路基板101は、接続部CN1,CN2および線路部SLを有する。接続部CN1,CN2は、他の回路基板に接続される部分である。後に詳述するように、線路部SLには、接続部CN1,CN2間を繋ぐ伝送線路(ストリップライン)が構成されている。伝送線路基板101では、接続部CN1、線路部SLおよび接続部CN2が、+X方向にこの順に配置されている。
【0017】
伝送線路基板101は、基材10、入出力電極P1,P2、複数のグランド電極P31,P32、複数の補助電極P40、導体パターン(信号線31、第1グランド導体41、第2グランド導体42、複数の中間グランド導体43)、層間接続導体V1,V2,VG11,VG12,VG13、第1保護層1および第2保護層2等を備える。
【0018】
基材10は、長手方向がX軸方向に一致する略矩形の平板であり、互いに対向する第1主面VS1および第2主面VS2を有する。第1主面VS1および第2主面VS2は、XY平面に平行な面である。入出力電極P1および複数のグランド電極P31は、接続部CN1の第1主面VS1側に形成されており、入出力電極P2および複数のグランド電極P32は、接続部CN2の第1主面VS1側に形成されている。複数の補助電極P40は、線路部SLの第1主面VS1側に形成されている。第1グランド導体41および第1保護層1は、第1主面VS1に形成されている。第2グランド導体42および第2保護層2は、第2主面VS2に形成されている。信号線31、複数の中間グランド導体43、層間接続導体V1,V2および複数の層間接続導体VG11,VG12,VG13は、基材10の内部に形成されている。
【0019】
基材10は、複数の基材層11,12,13がこの順に積層されて形成されている。複数の基材層11~13は、長手方向がX軸方向に一致する略矩形の樹脂(熱可塑性樹脂)平板であり、それぞれ可撓性を有する。基材層11~13は、例えば液晶ポリマー(LCP)またはポリエーテルエーテルケトン(PEEK)を主材料とするシートである。
【0020】
基材層11の裏面には、入出力電極P1,P2および第1グランド導体41が形成されている。入出力電極P1は、基材層11の長手方向の第1端(
図2における基材層11の左端)付近に配置される矩形の導体パターンである。入出力電極P2は、基材層11の長手方向の第2端(
図2における基材層11の右端)付近に配置される矩形の導体パターンである。第1グランド導体41は、基材層11の略全面に形成される導体パターンである。第1グランド導体41は、3つの第1導体非形成部NP1を有する。第1導体非形成部NP1は、矩形の開口(導体のない部分)である。3つの第1導体非形成部NP1は、X軸方向に配列されている。入出力電極P1,P2および第1グランド導体41は、例えばCu箔等の導体パターンである。また、基材層11には、層間接続導体V1,V2および複数の層間接続導体VG11が形成されている。
【0021】
基材層12の裏面には、信号線31および複数の中間グランド導体43が形成されている。信号線31は、伝送方向(X軸方向)に延伸する線状の導体パターンである。複数の中間グランド導体43は、基材層12の長手方向の両端付近にそれぞれ配置される矩形の導体パターンである。具体的には、3つの中間グランド導体43が、基材層12の長手方向の第1端(
図2における基材層12の左端)付近に配置されている。また、3つの中間グランド導体43が、基材層12の長手方向の第2端(
図2における基材層12の右端)付近に配置されている。信号線31および複数の中間グランド導体43は、例えばCu箔等の導体パターンである。また、基材層12には、複数の層間接続導体VG12が形成されている。
【0022】
基材層13の表面には、第2グランド導体42が形成されている。第2グランド導体42は、基材層13の略全面に形成される導体パターンである。第2グランド導体42は、2つの第2導体非形成部NP2を有する。第2導体非形成部NP2は、矩形の開口(導体のない部分)である。2つの第2導体非形成部NP2は、X軸方向に配列されている。第2グランド導体42は、例えばCu箔等の導体パターンである。また、基材層13には、複数の層間接続導体VG13が形成されている。
【0023】
第1保護層1は、基材層11の裏面(基材10の第1主面)に形成される保護膜である。第1保護層1は、平面形状が基材層11と略同じである。第1保護層1は、例えばカバーレイフィルムやソルダーレジスト膜、またはエポキシ樹脂膜等である。
【0024】
第1保護層1は、矩形の開口部AP1,AP2、および矩形の複数の開口部AP31,AP32,AP40を有する。開口部AP1および複数の開口部AP31は、第1保護層1の第1端(
図2における第1保護層1の左端)付近に配置されている。開口部AP2および複数の開口部AP32は、第1保護層1の第2端(
図2における第1保護層1の右端)付近に配置されている。複数の開口部AP40は、第1保護層1の長手方向の中央付近に配置され、X軸方向に配列されている。
【0025】
なお、開口部AP1は、入出力電極P1の位置に応じた位置に形成されており、開口部AP2は、入出力電極P2の位置に応じた位置に形成されている。そのため、基材層11の裏面に第1保護層1が形成された場合でも、開口部AP1から入出力電極P1が外部に露出し、開口部AP2から入出力電極P2が外部に露出する。また、複数の開口部AP31,AP32,AP40は、第1グランド導体41の位置に応じた位置に形成されている。そのため、基材層11の裏面に第1保護層1が形成された場合でも、複数の開口部AP31,AP32,AP40から第1グランド導体41の一部が外部に露出する。本実施形態では、開口部AP31から露出する第1グランド導体41の一部がグランド電極P31であり、開口部AP32から露出する第1グランド導体41の一部がグランド電極P32であり、開口部AP40から露出する第1グランド導体41の一部が補助電極P40である。
【0026】
第2保護層2は、基材層13の表面(基材10の第2主面VS2)に形成される保護膜である。第2保護層2は、平面形状が基材層13と略同じである。第2保護層2は、例えばカバーレイフィルムやソルダーレジスト膜、またはエポキシ樹脂膜等である。
【0027】
入出力電極P1,P2は、信号線31に電気的に接続されている。具体的には、
図3等に示すように、信号線31の一端が、層間接続導体V1を介して入出力電極P1に接続され、信号線31の他端が、層間接続導体V2を介して入出力電極P2に接続される。また、第1グランド導体41および第2グランド導体42は、それぞれ中間グランド導体43および層間接続導体VG11,VG12,VG13を介して、互いに電気的に接続されている。
【0028】
また、
図4(A)および
図4(B)に示すように、線路部SLにおける信号線31は、Z軸方向において第1グランド導体41と第2グランド導体42との間に配置されている。伝送線路基板101の線路部SLには、信号線31と、第1グランド導体41と、第2グランド導体42と、を含んだ伝送線路(ストリップライン)が構成されている。なお、Z軸方向における信号線31と第1グランド導体41との間隙D1は、Z軸方向における信号線31と第2グランド導体42との間隙D2よりも小さい(D1<D2)。
【0029】
さらに、
図2および
図4(A)等に示すように、複数の第1導体非形成部NP1は、第1主面VS1および第2主面VS2の平面視で(Z軸方向から視て)、信号線31に重なる位置に配置されている。また、
図2および
図4(B)等に示すように、複数の第2導体非形成部NP2は、Z軸方向から視て、信号線31に重なる位置に配置されている。第1導体非形成部NP1の幅(Y軸方向の幅)および第2導体非形成部NP2の幅は、信号線31の線幅(Y軸方向の幅)よりも太い。そして、複数の第2導体非形成部NP2の合計面積は、複数の第1導体非形成部NP1の合計面積よりも大きい。
【0030】
なお、本実施形態の第1保護層1および第2保護層2は、基材10(基材層11~13)よりも比誘電率が高い材料からなる。また、
図4(A)に示すように、第1保護層1は、Z軸方向から視て、第1導体非形成部NP1を覆う位置に配置されている。さらに、
図4(B)に示すように、第2保護層2は、Z軸方向から視て、第2導体非形成部NP2を覆う位置に配置されている。
【0031】
伝送線路基板101は、例えば次のように用いられる。
図5は、第1の実施形態に係る電子機器301の主要部を示す断面図である。
【0032】
電子機器301は、伝送線路基板101、回路基板201,202および能動素子51,52等を備える。電子機器301はこれ以外の素子も備えるが、
図5では図示省略している。回路基板201,202は、例えばガラス/エポキシ基板である。能動素子51,52は、例えば半導体素子やIC等である。
【0033】
図5に示すように、回路基板201,202は対向配置されている。具体的には、回路基板201の第1面PS1が、回路基板202の第2面PS2に対向している。回路基板201の第1面PS1には、基板側電極EP1,EP2,EP31,EP32,EP40および保護層3が設けられている。回路基板202の第2面PS2には、複数の基板側電極EP5,EP6が設けられている。なお、保護層3は、比誘電率が基材10(または、回路基板201の基材)よりも高い。保護層3は、例えばカバーレイフィルムやソルダーレジスト膜、またはエポキシ樹脂等である。
【0034】
伝送線路基板101は、第1主面VS1が回路基板201の第1面PS1に対向した状態で、回路基板201に面実装されている。具体的には、伝送線路基板101の入出力電極P1,P2が、はんだ等の導電性接合材を介して、回路基板201の基板側電極EP1,EP2にそれぞれ接合される。また、伝送線路基板101の他の電極(グランド電極P31,P32および補助電極P40)は、導電性接合材を介して、回路基板201の基板側電極EP31,EP32,EP40にそれぞれ接合される。
【0035】
回路基板202の第2面PS2には、能動素子51,52が実装されている。具体的には、能動素子51の入出力端子が、回路基板202の基板側電極EP5に接合され、能動素子52の入出力端子が、回路基板202の基板側電極EP6に接続される。なお、
図5に示すように、能動素子51,52は、線路部SLの第1主面VS1よりも第2主面VS2に近接して配置されている。
【0036】
本実施形態に係る伝送線路基板101、および電子機器301によれば、次のような効果を奏する。
【0037】
(a)本実施形態では、天面(第2主面VS2)側に位置する第2グランド導体42の第2導体非形成部NP2の合計面積が、実装面(第1主面VS1)側に位置する第1グランド導体41の第1導体非形成部NP1の合計面積よりも小さい。すなわち、本実施形態に係る伝送線路基板101では、相対的に導体比率の低い第1グランド導体41が実装面側に配置され、相対的に導体比率の高い第2グランド導体42が天面側に配置されている。この構成によれば、相対的に導体比率の低い第1グランド導体が天面側に位置する場合に比べて、伝送線路(信号線31)への外部(特に、第2主面VS2側)からのノイズの影響は抑制できる。また、この構成により、伝送線路からの高周波の不要輻射も抑制される。
【0038】
(b)また、上記構成によれば、相対的な導体非形成部の合計面積が大きいグランド導体が、天面側に配置される場合(第2主面VS2を実装面とし、第1主面VS1側を天面側とする場合)に比べて、外部からのノイズの影響を抑制した薄型の伝送線路基板101を備えた電子機器301を実現できる。
【0039】
(c)本実施形態では、第1グランド導体41のうちZ軸方向から視て信号線31に重なる位置に、複数の第1導体非形成部NP1が形成されている。また、本実施形態では、第2グランド導体42のうちZ軸方向から視て信号線31に重なる位置に、複数の第2導体非形成部NP2が形成されている。この構成によれば、所定の回路を伝送線路基板に構成する場合に、信号線31の線幅を太くでき、上記回路の導体損を低減できる。また、所定の特性を有する回路を伝送線路基板に構成する場合に、信号線31の線幅を細くしなくても基材層を薄くでき、伝送線路基板を薄型(低背化)できる。
【0040】
(d)本実施形態では、伝送線路基板101が回路基板201に面実装されるため、伝送線路基板101全体が回路基板201に固定されている。この構成によれば、コネクタ等を用いて伝送線路基板を回路基板に接続する場合と比べて、伝送線路基板101が備える導体パターンと、回路基板201の回路を構成する導体との距離は変動し難く、回路の特性変化を起こり難くできる。
【0041】
(e)また、本実施形態では、基材10よりも比誘電率の高い第1保護層1が第1主面VS1に形成されている。この構成によれば、第1導体非形成部NP1から第1主面VS1側(外部。回路基板201側)への不要輻射や、第1主面VS1側からの不要輻射を抑制できる。特に、本実施形態のように、第1保護層1を、Z軸方向から視て第1導体非形成部NP1を覆う位置に配置することで、不要輻射の抑制効果が高まる。さらに、本実施形態では、回路基板201の第1面PS1に形成された保護層3の比誘電率が、基材10(または、回路基板201の基材)よりも高いため、回路基板201からの不要輻射(または回路基板201への不要輻射)はさらに抑制される。
【0042】
(f)なお、本実施形態に係る電子機器301では、ノイズを生じやすい能動素子51,52が、第2主面VS2(伝送線路基板102の天面)側に位置している。しかし、第2主面VS2側に位置する第2グランド導体42の、導体非形成部の面積は相対的に小さいため、第2主面VS2側に位置するグランド導体の導体非形成部の面積が大きい場合と比較して、能動素子51,52からのノイズの影響は受け難い。
【0043】
(g)また、本実施形態では、基材10よりも比誘電率の高い第2保護層2が第2主面VS2に形成されている。この構成によれば、第2導体非形成部NP2から第2主面VS2側(外部)への不要輻射や、第2主面VS2側からの不要輻射を抑制できる。特に、本実施形態のように、第2保護層2を、Z軸方向から視て第2導体非形成部NP2を覆う位置に配置することで、不要輻射の抑制効果はさらに高まる。
【0044】
(h)さらに、本実施形態では、第1導体非形成部NP1および第2導体非形成部NP2が、Z軸方向から視て、重なっていない。この構成により、線路部SL(伝送線路)における特性インピーダンスの急激な変化を抑制できる。すなわち、線路部SLにおける特性インピーダンスの連続性を確保しやすい。
【0045】
(i)本実施形態では、補助電極P40が、Z軸方向から視て、接続部CN1,CN2間に配置されている。この構成によれば、補助電極P40と基板側電極EP40とを接合する導電性接合材のセルフアライメント機能によって、線路部SLの位置ずれを起こり難くできる。さらに、本実施形態では、複数の補助電極P40が伝送方向に沿って設けられているため、接続部CN1,CN2間(線路部SL)が長い形状であっても、すなわち変形しやすい形状であっても、伝送線路基板101(特に線路部SL)の形状を一定に保ったまま、回路基板201に対して伝送線路基板101を高精度に実装できる。
【0046】
なお、本発明の「接続部」とは、伝送線路基板の入出力電極等を、別基板(他の回路基板や他の伝送線路基板等)に接続する部分であって、別基板へ信号を伝送する部分を言う。具体的に「接続部」とは、Z軸方向から視て、グランド導体の開口部分(信号線に接続される入出力電極を内側に配置した開口部分)を言う。また、本発明の「線路部」とは、伝送方向(信号線に沿った方向)の両端を接続部としたときに、それら接続部以外の領域を言う。なお、「接続部」は、外部の回路基板に直接はんだ実装する場合や、コネクタを実装する場合が想定されるため、線路部よりも幅が広いことが好ましい。
【0047】
また、本発明の「第1グランド導体」および「第2グランド導体」は、Z軸方向(積層方向、または厚み方向)から視て、重なるものと考える。つまり、本発明の「第1導体非形成部」は、Z軸方向から視て、第2グランド導体に重なる部分、且つ、第1グランド導体の無い部分を言う。また、本発明の「第2導体非形成部」は、Z軸方向から視て、第1グランド導体に重なる部分、且つ、第2グランド導体の無い部分を言う。
【0048】
また、本実施形態では、能動素子51,52が、線路部SLの第1主面VS1よりも第2主面VS2に近接した電子機器301を示したが、この構成に限定されるものではない。例えば、アンテナまたは他の回路用の導体が、線路部SLの第1主面VS1よりも第2主面VS2に近接する場合でも、同様の作用・効果を奏する。
【0049】
本実施形態に係る伝送線路基板101は、例えば次の工程で製造される。
【0050】
(1)まず、複数の基材層11,12,13を準備する。基材層11~13は、例えば液晶ポリマー(LCP)またはポリエーテルエーテルケトン(PEEK)等の熱可塑性樹脂を主材料とするシートである。
【0051】
(2)次に、複数の基材層11~13に、入出力電極P1,P2および導体パターン(信号線31、第1グランド導体41、第2グランド導体42、複数の中間グランド導体43)をそれぞれ形成する。具体的には、基材層11~13の一方面に金属箔(例えばCu箔)をラミネートし、その金属箔をフォトリソグラフィでパターニングする。これにより、基材層11の裏面に入出力電極P1,P2および第1グランド導体41を形成し、基材層12の裏面に信号線31および複数の中間グランド導体43を形成し、基材層13の表面に第2グランド導体42を形成する。
【0052】
なお、第1グランド導体41の所定の位置には、複数の第1導体非形成部NP1が設けられる。また、第2グランド導体42の所定の位置には、複数の第2導体非形成部NP2が設けられる。複数の第2導体非形成部NP2の合計面積は、複数の第1導体非形成部NP1の合計面積よりも小さい。
【0053】
(3)また、基材層11~13に、層間接続導体V1,V2および複数の層間接続導体VG11,VG12,VG13をそれぞれ形成する。これら層間接続導体は、基材層11~13にそれぞれ孔(貫通孔)を設けた後、その孔にCu,Snもしくはそれらの合金等の金属粉と樹脂材料とを含む導電性ペーストを配設(充填)し、後の加熱プレス処理によって導電性ペーストを固化させることにより設ける。
【0054】
(4)次に、複数の基材層11,12,13の順に積層(載置)し、積層した複数の基材層11~13を加熱プレス(一括プレス)することにより、基材10を形成する。複数の基材層11~13を積層する際、信号線31は、Z軸方向において第1グランド導体41と第2グランド導体42との間に配置される。また、複数の第1導体非形成部NP1および複数の第2導体非形成部NP2は、Z軸方向から視て、それぞれ信号線31に重なる位置に配置される。
【0055】
(5)その後、基材10の第1主面VS1(基材層11の裏面)に第1保護層1を形成し、基材10の第2主面VS2(基材層13の表面)に第2保護層2を形成して伝送線路基板101を得る。第1保護層1および第2保護層2は、例えばカバーレイフィルムやソルダーレジスト膜、またはエポキシ樹脂等である。
【0056】
この製造方法によれば、グランド導体に導体非形成部が設けられた構成でも、外部からのノイズの影響を抑制できる薄型の伝送線路基板を容易に製造できる。
【0057】
また、上記製造方法によれば、熱可塑性樹脂を主材料とする複数の基材層11~13を積層して加熱プレス(一括プレス)することで、基材10を容易に形成できるため、製造工程が削減され、コストを低く抑えることができる。
【0058】
さらに、上記製造方法によれば、基材層に設けた孔に導電性ペーストを配設し、加熱プレス(一括プレス)によって導電性ペーストを固化させるため、層間接続導体を形成する工程を削減できる。
【0059】
《第2の実施形態》
第2の実施形態では、第2グランド導体に導体非形成部が設けられていない伝送線路基板の例を示す。
【0060】
図6は、第2の実施形態に係る伝送線路基板102の外観斜視図である。
図7は、伝送線路基板102の分解平面図である。
【0061】
伝送線路基板102は、導体非形成部が設けられていないベタ状の第2グランド導体42Aを備える点で、第1の実施形態に係る伝送線路基板101と異なる。伝送線路基板102の他の構成については、伝送線路基板101と同じである。
【0062】
本実施形態に係る伝送線路基板102では、第2グランド導体42Aがベタ状の導体パターンである。この構成によれば、導体非形成部が設けられた第2グランド導体を備えた伝送線路基板(第1の実施形態に係る伝送線路基板101を参照)に比べて、線路部SLの電磁界の遮蔽効果は高まる。
【0063】
《第3の実施形態》
第3の実施形態では、複数の信号線を備える伝送線路基板の例を示す。
【0064】
図8(A)は第3の実施形態に係る伝送線路基板103の外観斜視図であり、
図8(B)は
図8(A)におけるD-D断面図である。
【0065】
伝送線路基板103は、基材10A、入出力電極P11,P12,P13,P14,P21,P22,P23,P24、複数の信号線31,32,33,34、第1グランド導体41A、第2グランド導体42A、4つの補助電極P41、複数の層間接続導体VG21,VG22,VG23を備える点で、第1の実施形態に係る伝送線路基板101と異なる。伝送線路基板103の他の構成については、伝送線路基板101と同じである。
【0066】
以下、第1の実施形態に係る伝送線路基板101と異なる部分について説明する。
【0067】
基材10Aは、第1の実施形態で説明した基材10よりも幅方向(Y軸方向)の幅が広い。基材10Aの他の構成は、基材10と同じである。
【0068】
入出力電極P11~P14および3つのグランド電極P31は、接続部CN1の第1主面VS1側に形成されている。入出力電極P21~P24および3つのグランド電極P32は、接続部CN2の第1主面VS1側に形成されている。4つの補助電極P41は、線路部SLの第1主面VS1側に形成されている。信号線31~34、第1グランド導体41A、第2グランド導体42A、中間グランド導体43および層間接続導体VG21,VG22,VG23は、線路部SL(基材10A)の内部に形成されている。
【0069】
複数の信号線31~34は、いずれも伝送方向(X軸方向)に延伸する線状の導体パターンである。複数の信号線31~34は、線路部SLにおいて互いに並走する部分を有する。また、信号線31,32,33,34は、+Y方向にこの順に配列されている。また、本実施形態では、信号線31~34がZ軸方向(積層方向、または厚み方向)における同じ層に配置されている。
【0070】
第1グランド導体41Aは、第1導体非形成部NP11,NP12が設けられている点で、第1の実施形態で説明した第1グランド導体41と異なる。第1導体非形成部NP11,NP12は、X軸方向に延伸する長尺状の開口(凹み部)であり、第1グランド導体41Aの外周に形成されている。第1導体非形成部NP11,NP12は、+Y方向にこの順に配列されている。具体的には、第1グランド導体41Aは、伝送方向に延伸する線状の導体パターンである。
【0071】
第2グランド導体42Aは、導体非形成部が形成されていない点で、第1の実施形態で説明した第2グランド導体42と異なる。第2グランド導体42Aの他の構成については、第2グランド導体42と同じである。
【0072】
4つの補助電極P41は、それぞれ線路部SLの幅方向(Y軸方向)の中央付近に配置され、伝送方向(X軸方向)に配列されている。また、複数の層間接続導体VG21~VG23は、それぞれ線路部SLの幅方向の中央付近に配置されている。図示省略するが、複数の層間接続導体VG21~VG23は、伝送方向(X軸方向)に配列されている。
【0073】
図示省略するが、入出力電極P11,P21は信号線31に電気的に接続され、入出力電極P12,P22は信号線32に電気的に接続され、入出力電極P13,P23は信号線33に電気的に接続され、入出力電極P14,P24は信号線34に電気的に接続される。また、第1グランド導体41Aおよび第2グランド導体42Aは、中間グランド導体43および層間接続導体VG21,VG22,VG23を介して、線路部SLにおいて互いに電気的に接続されている。
【0074】
図8(B)に示すように、線路部SLにおける信号線31~34は、Z軸方向において第1グランド導体41Aと第2グランド導体42Aとの間に配置されている。伝送線路基板102の線路部SLには、信号線31~34と、第2グランド導体42Aと、を含んだ伝送線路(マイクロストリップライン)が構成されている。なお、Z軸方向における信号線31~34と第1グランド導体41Aとの間隙D1は、Z軸方向における信号線31~34と第2グランド導体42Aとの間隙D2よりも小さい(D1<D2)。
【0075】
また、本実施形態では、
図8(B)に示すように、グランド(中間グランド導体43および層間接続導体VG21~VG23)が、信号線31,32と信号線33,34との間に配置されている。この構成により、信号線31,32と信号線33,34との間のアイソレーションが確保され、クロストークが抑制される。
【0076】
さらに、本実施形態では、4つの補助電極P41が伝送方向に等間隔で配置されている。この構成によれば、線路部SL(接続部CN1,CN2間)が長くても、リフローはんだ法等による接合時に回路基板に対する線路部SLの異常な移動を抑制できる。
【0077】
なお、本実施形態では、複数の信号線31~34が、Z軸方向における同じ層に配置されている例を示したが、この構成に限定されるものではない。複数の信号線は、Z軸方向における異なる層にそれぞれ配置されていてもよい。
【0078】
《第4の実施形態》
第4の実施形態では、補助電極が、基材の第1主面、第2主面および側面に亘って形成された伝送線路基板の例を示す。
【0079】
図9(A)は第4の実施形態に係る伝送線路基板104の外観斜視図であり、
図9(B)は伝送線路基板104の平面図である。
図10は、
図9(A)におけるE-E断面図である。
【0080】
伝送線路基板104は、基材10B、入出力電極P11,P12,P13,P14,P21,P22,P23,P24、複数の信号線31,32,33,34、第1グランド導体41B、第2グランド導体42B、複数の補助電極P41S,P42S等を備える点で、第1の実施形態に係る伝送線路基板104と異なる。
【0081】
以下、第1の実施形態に係る伝送線路基板101と異なる部分について説明する。
【0082】
基材10Bは、長手方向がX軸方向に一致する矩形の平板である。基材10Bは、第1主面VS1および第2主面VS2、側面SS1,SS2を有する。側面SS1,SS2は、第1主面VS1および第2主面VS2に隣接する、XZ平面に平行な面である。基材10Bの他の構成については、第1の実施形態で説明した基材10と同じである。
【0083】
入出力電極P11~P14は、接続部CN1の第1主面VS1側に形成されている。入出力電極P21~P24は、接続部CN2の第1主面VS1側に形成されている。信号線31~34は、基材10Bの内部に形成されている。
【0084】
補助電極P41Sは、第1主面VS1、側面SS1および第2主面VS2に跨って形成されている。補助電極P42Sは、第1主面VS1、側面SS2および第2主面VS2に跨って形成されている。3つの補助電極P41Sおよび3つの補助電極P42Sは、それぞれ+X方向に配列されている。補助電極P41S,P42Sは、例えば無電界めっき等によって側面SS1,SS2に形成されるCu等のめっき膜である。また、補助電極P41S,P42Sは、スパッタリング法によって成膜されたCu等の金属膜でもよい。
【0085】
複数の信号線31~34は、いずれも伝送方向(X軸方向)に延伸する線状の導体パターンである。複数の信号線31~34は、線路部SLにおいて互いに並走する部分を有する。また、信号線31,32,33,34は、+Y方向にこの順に配列されている。また、本実施形態では、信号線31~34がZ軸方向における同じ層に配置されている。
【0086】
第1グランド導体41Bは、第1導体非形成部NP10が設けられている点で、第1の実施形態で説明した第1グランド導体41と異なる。第1グランド導体41Bは、矩形の導体パターンである。第1導体非形成部NP10は、第1グランド導体41Aの中央付近に配置された開口である。
【0087】
第2グランド導体42Bは、導体非形成部が形成されていない点で、第1の実施形態で説明した第2グランド導体42と異なる。第2グランド導体42Bは、矩形の導体パターンである。第2グランド導体42Bの他の構成については、第2グランド導体42と同じである。
【0088】
図示省略するが、入出力電極P11,P21は信号線31に電気的に接続され、入出力電極P12,P22は信号線32に電気的に接続され、入出力電極P13,P23は信号線33に電気的に接続され、入出力電極P14,P24は信号線34に電気的に接続される。また、第1グランド導体41Bおよび第2グランド導体42Bは、補助電極P41S,P42S等を介して、互いに電気的に接続されている。
【0089】
図10に示すように、信号線31~34は、Z軸方向において第1グランド導体41Bと第2グランド導体42Bとの間に配置されている。伝送線路基板104の線路部SLには、信号線31~34と、第2グランド導体42Aと、を含んだ伝送線路(マイクロストリップライン)が構成されている。なお、Z軸方向における信号線31~34と第1グランド導体41Bとの間隙D1は、Z軸方向における信号線31~34と第2グランド導体42Bとの間隙D2よりも小さい(D1<D2)。
【0090】
《第5の実施形態》
第5の実施形態では、線路部に、グランド導体同士を接続する複数の層間接続導体が形成された伝送線路基板の例を示す。
【0091】
図11(A)は第5の実施形態に係る伝送線路基板105の外観斜視図であり、
図11(B)は
図11(A)のF-F断面図である。
【0092】
伝送線路基板105は、第1グランド導体41C、第2グランド導体42A、4つの補助電極P41,P42,P43等を備える点で、第3の実施形態に係る伝送線路基板103と異なる。伝送線路基板105の他の構成については、伝送線路基板103と同じである。
【0093】
以下、第3の実施形態に係る伝送線路基板103と異なる部分について説明する。
【0094】
第1グランド導体41Cは、第1導体非形成部NP11A,NP12Aが設けられている点で、第3の実施形態で説明した第1グランド導体41Aと異なる。第1導体非形成部NP11A,NP12Aは、X軸方向に延伸する長尺状の開口である。第1導体非形成部NP11A,NP12Aは、+Y方向にこの順に配列されている。
【0095】
補助電極P41,P42,P43は、+Y方向にこの順に配列されている。具体的には、補助電極P41は線路部SLの幅方向(Y軸方向)の中央付近に配置され、の補助電極P42は線路部SLの側面SS1付近に配置され、補助電極P43は線路部SLの側面SS2付近に配置されている。補助電極P41は、第3の実施形態で説明したものと同じである。それぞれ4つの補助電極P41,P42,P43は、伝送方向(X軸方向)に配列されている。
【0096】
第1グランド導体41Cおよび第2グランド導体42Aは、中間グランド導体43および層間接続導体VG21~VG23を介して、互いに電気的に接続されている。
【0097】
本実施形態では、
図11(B)に示すように、信号線31,32は周囲3方向にグランド(第2グランド導体42A、中間グランド導体43および層間接続導体VG21~VG23)が配置されている。すなわち、信号線31,32は周囲3方向に亘ってグランドで囲まれている。また、信号線33,34は周囲3方向がグランド(第2グランド導体42A、中間グランド導体43および層間接続導体VG21~VG23)によって囲まれている。すなわち、信号線33,34は周囲3方向に亘ってグランドで囲まれている。この構成によれば、信号線31,32と信号線33,34との間のアイソレーションが十分に確保され、クロストークの抑制効果もさらに高まる。
【0098】
《第6の実施形態》
第6の実施形態では、補助電極が、伝送方向に対して斜め方向に延伸する平面形状である例を示す。
【0099】
図12は、第6の実施形態に係る伝送線路基板106の線路部SLを示した拡大平面図である。
図13は、伝送線路基板106の線路部SLの分解平面図である。
図13では、構造を分かりやすくするため、信号線31,32,33,34,35,36をドットパターンで示している。
【0100】
伝送線路基板106は、複数の補助電極P46、6つの信号線31,32,33,34,35,36、第1グランド導体41Dおよび中間グランド導体43D等を備える点で、第3の実施形態に係る伝送線路基板103と異なる。伝送線路基板103の他の構成については、伝送線路基板103と同じである。
【0101】
以下、第3の実施形態に係る伝送線路基板103と異なる部分について説明する。
【0102】
複数の補助電極P46は、線路部SLの第1主面VS1側に形成されている。
図12等に示すように、複数の補助電極P46は、伝送方向(X軸方向)に対して斜め方向に延伸する平面形状をしている。
【0103】
6つの信号線31~36は、いずれも伝送方向(概略的にX軸方向)に延伸する線状の導体パターンである。6つの信号線31~36は、線路部SLにおいて互いに並走する部分を有する。信号線31,32,33,34,35,36は、+Y方向にこの順に配列されている。
【0104】
中間グランド導体43Dは、Z軸方向において信号線31~36と同じ層に配置されている。また、中間グランド導体43Dは、複数の信号線31~36のうち隣接する2つの信号線の間に配置され、線路部SLにおいて複数の信号線31~36に並走している。
【0105】
第1グランド導体41Dは、複数の第1導体非形成部NP10Dが設けられたメッシュ状である点で、第3の実施形態で説明した第1グランド導体41Aと異なる。第1導体非形成部NP10Dは、概略的にX軸方向に長手方向を有する長尺状の開口である。なお、本実施形態では、略同一形状の複数の第1導体非形成部NP10Dが、周期的に配置されている。より具体的には、複数の第1導体非形成部NP10Dは、Z軸方向から視て、千鳥配置されている。
【0106】
本実施形態では、複数の補助電極P46が、伝送方向(X軸方向)に対して斜め方向に延伸する平面形状をしている。この構成によれば、補助電極が幅方向(Y軸方向)に延伸する平面形状である場合に比べて、伝送方向におけるGND電位の変動幅を小さくできる。
【0107】
また、本実施形態では、略同一形状の複数の第1導体非形成部NP10Dが、周期的に配置されている。この構成によれば、伝送方向におけるGND電位の変動幅を小さくでき、線路部SLにおける特性インピーダンスの連続性を確保しやすい。このことは、第2グランド導体に設けられた複数の第2導体非形成部でも同様である。
【0108】
なお、本実施形態では、異なる信号線にそれぞれ重なる第1導体非形成部NP10D同士が幅方向に隣接して配置される(重なっている)例を示したが、この構成に限定されるものではない。Z軸方向から視て、(異なる信号線にそれぞれ重なる)複数の第1導体非形成部同士は、幅方向に隣接して配置されていない(重なっていない)ことが好ましい。この構成によれば、複数の信号線間のクロストークを抑制できる。このことは、第2グランド導体に設けられた複数の第2導体非形成部でも同様である。
【0109】
《その他の実施形態》
以上に示した各実施形態では、接続部に設けられた入出力電極およびグランド電極が、導電性接合材を介して回路基板の基板側電極に接合された例を示したが、この構成に限定されるものではない。伝送線路基板の接続部には、例えばコネクタ(プラグ)が設けられていてもよく、回路基板のレセプタクルに接続される構成でもよい。
【0110】
以上に示した各実施形態では、2つの接続部CN1,CN2および1つの線路部SLを有する伝送線路基板の例を示したが、この構成に限定されるものではない。伝送線路基板が有する接続部の数および線路部の数は、本発明の作用・効果を奏する範囲において適宜変更可能であり、接続部の数および線路部の数は1つでもよい。例えば、伝送線路基板がアンテナを有する場合、+X方向にアンテナ、線路部SLおよび接続部の順に配置される構造でもよい。
【0111】
以上に示した各実施形態では、伝送線路基板が備える基材が矩形または略矩形の平板である例を示したが、この構成に限定されるものではない。積層体の形状は、本発明の作用・効果を奏する範囲において適宜変更可能である。積層体の平面形状は、例えば多角形、円形、楕円形、L字形、T字形、Y字形、U字形、クランク形等でもよい。
【0112】
また、以上に示した各実施形態では、3つの基材層を積層して形成される基材を備える伝送線路基板の例を示したが、この構成に限定されるものではない。基材に含まれる基材層の積層数は、本発明の作用・効果を奏する範囲において適宜変更可能である。なお、伝送線路基板において第1保護層1および第2保護層2は必須ではない。
【0113】
以上に示した各実施形態では、基材が、熱可塑性樹脂からなる複数の基材層を有する例を示したが、この構成に限定されるものではない。複数の基材層は、熱硬化性樹脂からなるシートでもよい。また、複数の基材層は、低温同時焼成セラミックス(LTCC)の誘電体セラミックシートでもよい。また、基材は、複数の樹脂の複合積層体でもよく、例えばガラス/エポキシ基板等の熱硬化性樹脂シートと、熱可塑性樹脂シートとが積層されて形成される構成でもよい。さらに、基材は、複数の基材層を加熱プレス(一括プレス)してその表面同士を融着するものに限らず、各基材層間に接着層を有していてもよい。
【0114】
なお、以上に示した各実施形態では、Z軸方向における信号線と第1グランド導体との間隙D1が、Z軸方向における信号線と第2グランド導体との間隙D2よりも小さい伝送線路基板の例を示したが、この構成に限定されるものではない。上記間隙D1は上記間隙D2よりも大きくてもよく、上記間隙D1,D2が等しくてもよい。
【0115】
以上に示した各実施形態では、(信号線が延伸する)伝送方向がX軸方向に一致する例について示したが、本発明の伝送方向はこれに限定されるものではない。伝送方向は、例えばY軸方向でもよく、X軸方向およびY軸方向に折れ曲がっていてもよい。
【0116】
また、伝送線路基板に形成される回路は、以上に示した各実施形態の構成に限定されるものではなく、本発明の作用・効果を奏する範囲において適宜変更可能である。伝送線路基板に形成される回路は、例えば導体パターンで構成されるコイルや、導体パターンで構成されるキャパシタ、各種フィルタ(ローパスフィルタ、ハイパスフィルタ、バンドパスフィルタ、バンドエリミネーションフィルタ)等の周波数フィルタが構成されていてもよい。また、伝送線路基板には、マイクロストリップラインの伝送線路に加えて、例えば他の各種伝送線路(ミアンダ、コプレーナ等)が構成されていてもよい。さらに、伝送線路基板には、チップ部品等の各種電子部品が実装または埋設されていてもよい。
【0117】
以上に示した各実施形態では、線路部に1つ、4つまたは6つの信号線が配置された伝送線路基板の例を示したが、この構成に限定されるものではない。信号線(伝送線路)の数は、伝送線路基板の回路構成によって適宜変更可能である。なお、複数の信号線は、それぞれ同一のシステム(同一の周波数帯)で利用してもよく、それぞれ異なるシステム(異なる周波数帯)で利用されていてもよい。
【0118】
最後に、上述の実施形態の説明は、すべての点で例示であって、制限的なものではない。当業者にとって変形および変更が適宜可能である。本発明の範囲は、上述の実施形態ではなく、特許請求の範囲によって示される。さらに、本発明の範囲には、特許請求の範囲内と均等の範囲内での実施形態からの変更が含まれる。
【符号の説明】
【0119】
CN1,CN2…接続部
SL…線路部
VS1…基材の第1主面
VS2…基材の第2主面
SS1,SS2…基材の側面
PS1…回路基板の第1面
PS2…回路基板の第2面
EP1,EP2,EP31,EP32,EP40,EP5,EP6…基板側電極
NP1,NP10,NP10D,NP11,NP11A,NP12,NP12A…第1導体非形成部
NP2…第2導体非形成部
P1,P2,P11,P12,P13,P14,P21,P22,P23,P24…入出力電極
P31,P32…グランド電極
P40,P41,P41S,P42,P42S,P43,P46…補助電極
AP1,AP2,AP31,AP32,AP40…開口部
V1,V2,VG11,VG12,VG13,VG21,VG22,VG23…層間接続導体
1…第1保護層
2…第2保護層
3…回路基板の保護層
10,10A,10B…基材
11,12,13…基材層
31,32,33,34,35,36…信号線
41,41A,41B,41C,41D…第1グランド導体
42,42A,42B…第2グランド導体
43,43D…中間グランド導体
51,52…能動素子
101,102,103,104,105,106…伝送線路基板
201,202…回路基板
301…電子機器