(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-20
(45)【発行日】2022-09-29
(54)【発明の名称】口腔内粘膜保護フィルム
(51)【国際特許分類】
A61L 15/22 20060101AFI20220921BHJP
A61K 9/70 20060101ALI20220921BHJP
A61K 47/36 20060101ALI20220921BHJP
A61K 47/14 20060101ALI20220921BHJP
A61K 47/12 20060101ALI20220921BHJP
A61K 47/10 20060101ALI20220921BHJP
A61K 47/38 20060101ALI20220921BHJP
A61K 47/32 20060101ALI20220921BHJP
A61K 47/02 20060101ALI20220921BHJP
A61L 15/24 20060101ALI20220921BHJP
A61L 15/26 20060101ALI20220921BHJP
A61L 15/20 20060101ALI20220921BHJP
A61L 15/28 20060101ALI20220921BHJP
A61L 15/18 20060101ALI20220921BHJP
【FI】
A61L15/22 310
A61K9/70
A61K47/36
A61K47/14
A61K47/12
A61K47/10
A61K47/38
A61K47/32
A61K47/02
A61L15/24 100
A61L15/26 100
A61L15/20 100
A61L15/28 100
A61L15/18 100
(21)【出願番号】P 2018006890
(22)【出願日】2018-01-19
【審査請求日】2021-01-13
(73)【特許権者】
【識別番号】591069570
【氏名又は名称】東洋化学株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】391048049
【氏名又は名称】滋賀県
(74)【代理人】
【識別番号】100142365
【氏名又は名称】白井 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100146064
【氏名又は名称】吉田 玲子
(72)【発明者】
【氏名】矢野 昌彦
(72)【発明者】
【氏名】単 錦宇
(72)【発明者】
【氏名】宇古 学
(72)【発明者】
【氏名】那須 喜一
(72)【発明者】
【氏名】谷村 泰宏
(72)【発明者】
【氏名】平尾 浩一
(72)【発明者】
【氏名】土田 裕也
(72)【発明者】
【氏名】白井 伸明
(72)【発明者】
【氏名】中島 啓嗣
(72)【発明者】
【氏名】大山 雅寿
(72)【発明者】
【氏名】中居 直浩
【審査官】石井 裕美子
(56)【参考文献】
【文献】特公平07-029915(JP,B2)
【文献】特開昭64-090121(JP,A)
【文献】特開2016-011293(JP,A)
【文献】特開2007-308443(JP,A)
【文献】特開平01-226823(JP,A)
【文献】特開平02-237916(JP,A)
【文献】特開昭63-060924(JP,A)
【文献】特公平07-094384(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61L 15/00-33/18
A61K 9/00- 9/72
A61K 47/00-47/69
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
単層の口腔内粘膜保護フィルムであって、
アクリル系水溶性粘膜粘着性ポリマーからなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物である第1の化合物と、第2の化合物とを含み、
前記第1の化合物が、カルボキシビニルポリマーであり、
前記第2の化合物が、セルロース系化合物、ビニル系化合物、脂肪酸、脂肪酸エステル、および、これらの混合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の水不溶性化合物であり、
前記第1の化合物に対する前記第2の化合物の含有量が、0重量%を超えて25重量%未満の範囲内にあり、
前記第1の化合物の含有量が、53重量%以上であることを特徴とする口腔内粘膜保護フィルム。
【請求項2】
前記第2の化合物の含有量が、1.7重量%以上16.2重量%以下の範囲内にある、請求項1記載の口腔内粘膜保護フィルム。
【請求項3】
前記第2の化合物が、エチルセルロース、メタクリル酸コポリマー、ポリ酢酸ビニル、リノール酸、オレイン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、べへニン酸、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、オレイン酸エチル、リノール酸エチル、リノール酸イソプロピル、ショ糖脂肪酸エステル、および、これらの混合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物である、請求項1または2記載の口腔内粘膜保護フィルム。
【請求項4】
キシリトール、グリセリン、分子量600以下のポリエチレングリコール、および、これらの混合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物である第3の化合物を含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の口腔内粘膜保護フィルム。
【請求項5】
前記第1の化合物に対する前記第3の化合物の含有量が、0重量%を超えて60重量%未満の範囲内にある、請求項4記載の口腔内粘膜保護フィルム。
【請求項6】
さらに、第4の化合物としてヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、サンジェロース、ポリビニルピロリドン、澱粉、無機充填剤、およびこれらの混合物からなる群から選ばれる少なくとも1つを含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の口腔内粘膜保護フィルム。
【請求項7】
前記第1の化合物に対する前記第4の化合物の含有量が、0重量%を超えて60重量%未満の範囲内にある、請求項6記載の口腔内粘膜保護フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、口腔内粘膜保護フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、皮膚損傷部の保護、湿潤環境の維持、治癒促進等を目的として、ドレッシング材や絆創膏が使用されている。しかし、口腔内等の粘膜損傷に使用できるドレッシング材は市場に存在せず、手術創や粘膜潰瘍であっても、何も覆わずにそのまま放置しているのが現状である。しかし、絆創膏のような保護材で口腔内の粘膜の傷を覆い、痛みなく飲食をしたり、刺激を和らげたいという要望が、医療現場、介護施設あるいは、個人ケアの領域で存在している。
【0003】
粘膜は特殊的に湿潤な面であるため、粘膜に貼付するためには、通常の粘着剤と異なり、ポリアクリル酸、架橋ポリアクリル酸、カルボキシビニルポリマー、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ポリビニルピロリドン(PVP)、プルランなど水溶性の粘膜粘着性物質を使用することが多く知られていた。これらの物質は口の中で瞬時に溶けてなくなるので、溶解を遅らせるために、水難溶・不溶性物質の混合、多層化(例えば、特許文献1参照)、粘着層の上に全く溶解しない防水性能を有する層を設ける(例えば、特許文献2~5参照)などの方法で貼付時間の延長と貼付性能の向上を図った貼付材が提案されている。口腔内溶解性を有する貼付材として、水難溶・不溶性物質の混合、多層化などを行ったものは、貼付時間が数分から十数分であり、すぐに溶解・崩壊するため、保護性、使用感など口腔内粘膜保護材としての要求を満たさない。一方、水難溶・不溶性物質を混合した粘着層の上に防水性能を有する層を設けると、貼付時間は延長されるが、口腔内での違和感が強いなどの問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2005-263704号公報
【文献】特開昭63-160649号公報
【文献】特開平1-226823号公報
【文献】特開平2-237917号公報
【文献】特開昭61-249473号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記課題を解決するものであり、粘膜に対する持続的な粘着力を有するとともに、口腔内での違和感が軽減可能な口腔内粘膜保護フィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の口腔内粘膜保護フィルムは、単層の口腔内粘膜保護フィルムであって、アクリル系水溶性粘膜粘着性ポリマーからなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物である第1の化合物と、第2の化合物とを含み、前記第1の化合物が、カルボキシビニルポリマーであり、前記第2の化合物が、セルロース系化合物、ビニル系化合物、脂肪酸、脂肪酸エステル、および、これらの混合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の水不溶性化合物であり、前記第1の化合物に対する前記第2の化合物の含有量が、0重量%を超えて25重量%未満の範囲内にあり、前記第1の化合物の含有量が、53重量%以上であることを特徴とする。
【0007】
本発明の口腔内粘膜保護フィルムにおいて、前記第2の化合物の含有量が、1.7重量%以上16.2重量%以下の範囲内にあることが好ましい。
【0008】
本発明の口腔内粘膜保護フィルムにおいて、前記第2の化合物が、エチルセルロース、メタクリル酸コポリマー、ポリ酢酸ビニル、リノール酸、オレイン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、べへニン酸、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、オレイン酸エチル、リノール酸エチル、リノール酸イソプロピル、ショ糖脂肪酸エステル、および、これらの混合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物であることが好ましい。
【0009】
本発明の口腔内粘膜保護フィルムにおいて、キシリトール、グリセリン、分子量600以下のポリエチレングリコール、および、これらの混合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物である第3の化合物を含むことが好ましい。
【0010】
本発明の口腔内粘膜保護フィルムにおいて、前記第1の化合物に対する前記第3の化合物の含有量が、0重量%を超えて60重量%未満の範囲内にあることが好ましい。
【0011】
また、本発明の口腔内粘膜保護フィルムにおいて、第4の化合物としてヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、サンジェロース、ポリビニルピロリドン、澱粉、無機充填剤、およびこれらの混合物からなる群から選ばれる少なくとも1つを含むことが好ましい。
【0012】
本発明の口腔内粘膜保護フィルムにおいて、前記第1の化合物に対する前記第4の化合物の含有量が、0重量%を超えて60重量%未満の範囲内にあることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、粘膜に対する持続的な粘着力を有するとともに、口腔内での違和感が軽減可能な口腔内粘膜保護フィルムを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明をさらに具体的に述べる。本発明の口腔内粘膜保護フィルムは、アクリル系水溶性粘膜粘着性ポリマーからなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物である第1の化合物と、セルロース系化合物、ビニル系化合物、脂肪酸、脂肪酸エステル、および、これらの混合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の水不溶性化合物である第2の化合物とを含み、前記第1の化合物に対する前記第2の化合物の含有量が、0重量%を超えて25重量%未満の範囲内にある。疎水性の強い物質である第2の化合物(水不溶性物質)をエタノールなどの溶媒に溶解し、そこに水溶性粘膜粘着性ポリマーである水溶性のアクリル系高分子化合物を前記所定の割合で分散させることで、疎水性物質の網目構造の中に水溶性高分子が分散した、海島構造のフィルムを形成することができる。このようなフィルムは、粘膜への貼付性に優れるとともに、口腔内で徐々に溶解していくという特性を有する。
【0015】
口腔内等における粘膜には、表面の水分の影響のため、通常の粘着剤を粘着させることは困難である。そこで、第1の化合物として選ばれるアクリル系水溶性粘膜粘着性ポリマーは、水素結合を形成しやすい親水性ポリマーを用いることが好ましい。前記親水性ポリマーは、粘膜表面の水分を吸着して、粘液層との相互作用により付着する。そして、前記親水性ポリマーは、水分を吸収するにつれて溶解していく。第1の化合物として選ばれるアクリル系水溶性粘膜粘着性ポリマーは、カルボキシビニルポリマーである。
【0016】
第2の化合物として、セルロース系化合物、ビニル系化合物、脂肪酸、脂肪酸エステル、および、これらの混合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の水不溶性化合物を所定の割合となるよう用いることで、得られるフィルムを口腔内で徐溶化させることができる。
【0017】
本発明の口腔内粘膜保護フィルムにおいて、前記第1の化合物に対する前記第2の化合物の含有量は、0重量%を超えて25重量%未満の範囲内にある。前記第2の化合物の割合が多すぎると、得られるフィルムが不溶性のものとなったり、均一にならなかったりする場合がある。前記含有量は、好ましくは0重量%を超えて20重量%未満の範囲内である。
【0018】
前記第2の化合物であるセルロース系化合物としては、エチルセルロース等を好ましく用いることができる。また、ビニル系化合物としては、メタクリル酸コポリマーおよびポリ酢酸ビニル等を好ましく用いることができる。脂肪酸としては、リノール酸、オレイン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸およびべへニン酸等を好ましく用いることができる。脂肪酸エステルとしては、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、オレイン酸エチル、リノール酸エチル、リノール酸イソプロピルおよびショ糖脂肪酸エステル等を好ましく用いることができる。
【0019】
さらに、第3の化合物として、キシリトール、グリセリン、分子量600以下のポリエチレングリコール、および、これらの混合物等の低分子量水溶性化合物から選ばれる少なくとも1種の化合物を添加することも好ましい。前記第3の化合物を添加することで、フィルムが柔軟化しやすくなるため、口腔内での違和感(異物感)を軽減させることができ、よりよい貼付感を得ることができる。一方、同じく低分子量水溶性化合物でも、例えばプロピレングリコール、PEG1000等の化合物を添加した場合には貼付感を向上することができず、添加量によっては粘着力が低下したり、不溶となることがある。また、貼付しにくくなることがある。
【0020】
また、第4の化合物としてヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、サンジェロース、ポリビニルピロリドンおよび澱粉等の第1化合物以外の水溶性ポリマー、ならびに、タルク、二酸化ケイ素等の無機充填剤、ならびに、これらの混合物からなる群から選ばれる少なくとも1つを含むことが好ましい。
【0021】
前記第4の化合物としては、フィルム形成時に使用する溶媒に対し、可溶であるものも不溶であるものも、用いることができる。前記第4の化合物として前記溶媒に可溶性の化合物を用いた場合、前記第4の化合物の添加によって、全体厚みにあまり影響を与えることなく、前記第4の化合物を添加しない場合とほぼ同程度厚みの平滑なフィルムを得ることができる。例えば、前記溶媒としてエタノールを用いた場合に厚み40~60μmの平滑フィルムが得られる系において、エタノール溶解性であるヒドロキシプロピルセルロースおよびポリビニルピロリドンを、前記第1の化合物に対して0.1~30重量%程度添加した場合には、同程度の厚みの平滑フィルムが得られる。一方、前記第4の化合物として前記溶媒に不溶性の化合物を用いた場合には、系の中に粒として分散するので、前記第4の化合物を添加しない場合と比べてフィルムの厚みを増加させることができる。例えば、前記溶媒としてエタノールを用いた場合に厚み40~60μmの平滑フィルムが得られる系において、エタノール非溶解性であるヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、サンジェロース、澱粉および無機充填剤を、前記第1の化合物に対して0.1~40重量%程度添加した場合には、粒子が分散していることが目視で確認できる厚み50~150μmの半透明フィルムが得られる。
【0022】
前記第4の化合物を用いると、口腔内の湿潤状態における強度(フィルムの湿潤強度)と摩擦耐性を向上でき、粘膜貼付性により優れた丈夫なフィルムを得ることができる。なお、第2の化合物としてエチルセルロースを用いた場合、前記第4の化合物を単独で(前記第3の化合物を添加することなく)追加すると、溶解性の点で好ましくない結果となることがあるが、その場合には、前記第3の化合物と同時に含むことで上記効果を得ることができ、好ましい。
【0023】
前記第1~前記第3の化合物を含有する場合、あるいは、前記第1~前記第4の化合物を含有する場合において、前記第1の化合物に対する前記第2の化合物の含有量が、0重量%を超えて25重量%未満の範囲内にあり、前記第1の化合物に対する前記第3の化合物の含有量が、0重量%を超えて60重量%未満の範囲内にあることが好ましく、より好ましくは、0.1重量%から35重量%の範囲である。前記第3の化合物の添加量が多くなりすぎると、湿潤状態の強度と摩擦耐性が低下する傾向がある。
【0024】
また、前記第1~前記第4の化合物を含有する場合において、前記第1の化合物に対する前記第4の化合物の含有量が、0重量%を超えて60重量%未満の範囲内にあることが好ましく、より好ましくは、0.1重量%から40重量%の範囲である。前記第4の化合物の添加量が多くなりすぎると、割れやすくなったり、貼付性能が低下する傾向がある。
【0025】
本発明の口腔内粘膜保護フィルムは、厚みが30μm以上200μm以下の範囲にあることが好ましく、より好ましくは、40μm以上120μm以下の範囲である。厚みが薄すぎると、破れやすく取扱いにくく、貼付時の飲食に対しての耐性が不十分となりやすい。厚すぎると、口腔内での貼付状態で違和感が生じやすく、またはがれやすくなる場合もある。
【0026】
本発明の口腔内粘膜保護フィルムには、本発明で得られる特性を損なわない範囲で、例えば、可塑剤、増量剤、滑沢剤、矯味剤、着色剤、着香剤、防腐剤、安定剤等の添加物を含有させることも可能である。また、口腔からの投与可能な薬剤を添加しておき、徐放性製剤として用いたり、あるいは、貼付部の粘膜から吸収させて投与する貼付製剤とすることもできる。
【0027】
また、本発明の口腔内粘膜保護フィルムは、単層として十分に粘膜の保護フィルムとして使えるが、表面に難溶性の保護層を設けることや複層化することも可能であり、貼付時間の延長が期待できる。
【実施例】
【0028】
以下、本発明を実施例により具体的に説明する。
【0029】
[実施例1]
第1の化合物であるアクリル系水溶性粘膜粘着性ポリマーとしてカルボキシビニルポリマー(Carbopol、「Carbopol 971」、LUBRIZOL社製)を17g、第2の化合物としてエチルセルロース(EC、ダウ・ケミカル社製医薬用グレード)を0.3g用いた。第1の化合物に対する第2の化合物の含有量は、1.8重量%である。エタノール250gを攪拌しながら、カルボキシビニルポリマーの粉末とエチルセルロースの粉末とを加え、室温にて1時間攪拌し、白濁の分散液を作製した。これを40℃に加温しながら24時間攪拌した。この液をアプリケーターにてPETセパレーターに1mmの厚みで塗工し、室温で5分、さらに40℃で20分乾燥し、厚み約40μmの透明平滑フィルムを得た。
【0030】
[実施例2]
第2の化合物としてエチルセルロース(EC)を0.6g用いた他は、実施例1と同様にして厚み約40μmの透明平滑フィルムを得た。本例における第1の化合物に対する第2の化合物の含有量は、3.5重量%である。
【0031】
[実施例3]
第2の化合物としてアミノアルキルメタクリレートコポリマー(Eudragit、「Eudragit」L100、Evonik社製)を0.6g用いた他は、実施例1と同様にして厚み約40μmの透明平滑フィルムを得た。本例における第1の化合物に対する第2の化合物の含有量は、3.5重量%である。
【0032】
[実施例4]
第2の化合物としてポリ酢酸ビニル(「ゴーセニール」NZ-2、日本合成化学工業株式会社製)を0.6g用いた他は、実施例1と同様にして厚み約40μmの半透明平滑フィルムを得た。本例における第1の化合物に対する第2の化合物の含有量は、3.5重量%である。
【0033】
[実施例5]
第1の化合物であるアクリル系水溶性粘膜粘着性ポリマーとしてカルボキシビニルポリマー(Carbopol)を17g、第2の化合物としてエチルセルロース(EC)を3.9g、第3の化合物としてキシリトール(三菱商事フードテック株式会社製)を5.6g、第4の化合物としてヒドロキシプロピルメチルセルロース(ヒプロメロース、信越化学工業株式会社製 日本薬局方)を5.6g用いた。本例における第1の化合物に対する第2の化合物の含有量は、22.9重量%である。エタノール200gを攪拌しながら、カルボキシビニルポリマーの粉末とエチルセルロースの粉末とを加え、室温にて1時間攪拌し、白濁の分散液を作製した。ヒドロキシプロピルメチルセルロースとキシリトールの粉末をエタノール50gに投入し、ホモジナイザーでよく分散させた。上記2液を混合し、これを40℃に加温しながら24時間攪拌した。この液をアプリケーターにてPETセパレーターに1mmの厚みで塗工し、室温で5分、さらに40℃で20分乾燥し、厚み約100μmのフィルムを得た。得られたフィルムは、粒子が分散していることが目視で確認できる半透明フィルムであった。
【0034】
[実施例6]
キシリトールを2.2gとした他は、実施例5と同様にして厚み約100μmのフィルムを得た。得られたフィルムは、粒子が分散していることが目視で確認できる半透明フィルムであった。本例における第1の化合物に対する第2の化合物の含有量は、22.9重量%である。
【0035】
[実施例7]
エチルセルロースを1.1g、キシリトールを2.2g、ヒドロキシプロピルメチルセルロースを2.2gとした他は、実施例5と同様にして厚み約100μmのフィルムを得た。得られたフィルムは、粒子が分散していることが目視で確認できる半透明フィルムであった。本例における第1の化合物に対する第2の化合物の含有量は、6.5重量%である。
【0036】
[実施例8]
ヒドロキシプロピルメチルセルロースを添加しなかった他は、実施例5と同様にして厚み約40μmの透明平滑フィルムを得た。本例における第1の化合物に対する第2の化合物の含有量は、22.9重量%である。
【0037】
[実施例9]
ヒドロキシプロピルメチルセルロースを2.2gとした他は、実施例5と同様にして厚み約100μmのフィルムを得た。得られたフィルムは、粒子が分散していることが目視で確認できる半透明フィルムであった。本例における第1の化合物に対する第2の化合物の含有量は、22.9重量%である。
【0038】
[実施例10]
エチルセルロースを2.8gとした他は、実施例5と同様にして厚み約100μmのフィルムを得た。得られたフィルムは、粒子が分散していることが目視で確認できる半透明フィルムであった。本例における第1の化合物に対する第2の化合物の含有量は、16.5重量%である。
【0039】
[実施例11]
第1の化合物であるアクリル系水溶性粘膜粘着性ポリマーとしてカルボキシビニルポリマー(Carbopol)を17g、第2の化合物としてエチルセルロース(EC)を2.8g、第3の化合物として分子量400のポリエチレングリコール(PEG400、WAKO純薬工業株式会社製 試薬規格)を2.2g、第4の化合物としてヒドロキシプロピルメチルセルロース(ヒプロメロース)を5.6g用いた。本例における第1の化合物に対する第2の化合物の含有量は、16.5重量%である。エタノール200gを攪拌しながら、カルボキシビニルポリマーの粉末とエチルセルロースの粉末とを加え、室温にて1時間攪拌し、白濁の分散液を作製した。PEG400とヒドロキシプロピルメチルセルロースをエタノール50gに投入し、ホモジナイザーでよく分散させた。上記2液を混合し、これを40℃に加温しながら24時間攪拌した。この液をアプリケーターにてPETセパレーターに1mmの厚みで塗工し、室温で5分、さらに40℃で20分乾燥し、厚み約100μmのフィルムを得た。得られたフィルムは、粒子が分散していることが目視で確認できる半透明フィルムであった。
【0040】
[実施例12]
第1の化合物であるアクリル系水溶性粘膜粘着性ポリマーとしてカルボキシビニルポリマー(Carbopol)を17g、第2の化合物として、エチルセルロース(EC)を2.8gおよびオレイン酸(日油株式会社製 薬添規格)を0.6g、第4の化合物として、タルク(小堺製薬株式会社製 薬局方)を2.8g用いた。本例における第1の化合物に対する第2の化合物の含有量は、20.0重量%である。エタノール200gを攪拌しながら、カルボキシビニルポリマーの粉末とエチルセルロースの粉末とを加え、室温にて1時間攪拌し、白濁の分散液を作製した。オレイン酸とタルクをエタノール50gに投入し、ホモジナイザーでよく分散させた。上記2液を混合し、これを40℃に加温しながら24時間攪拌した。この液をアプリケーターにてPETセパレーターに1mmの厚みで塗工し、室温で5分、さらに40℃で20分乾燥し、厚み約50μmの半透明白濁フィルムを得た。
【0041】
[実施例13]
第4の化合物として、タルクに代えて、二酸化ケイ素(日本アエロジル株式会社製)を0.6gとした他は、実施例12と同様にして厚み約110μmのフィルムを得た。得られたフィルムは、粒子が分散していることが目視で確認できる半透明フィルムであった。本例における第1の化合物に対する第2の化合物の含有量は、16.5重量%である。
【0042】
[実施例14]
第3の化合物として、PEG400に代えてグリセリン(WAKO純薬工業株式会社製 試薬規格)を2.2gとした他は、実施例11と同様にして厚み約100μmのフィルムを得た。得られたフィルムは、粒子が分散していることが目視で確認できる半透明フィルムであった。本例における第1の化合物に対する第2の化合物の含有量は、16.5重量%である。
【0043】
[実施例15]
第1の化合物であるアクリル系水溶性粘膜粘着性ポリマーとしてカルボキシビニルポリマー(Carbopol)を17g、第2の化合物として、エチルセルロース(EC)を1.0gおよびオレイン酸エチル(WAKO純薬工業株式会社製 試薬規格)を0.6g、第4の化合物として、タルクを2.2g用いた。本例における第1の化合物に対する第2の化合物の含有量は、9.4重量%である。エタノール200gを攪拌しながら、カルボキシビニルポリマーの粉末とエチルセルロースの粉末とを加え、室温にて1時間攪拌し、白濁の分散液を作製した。オレイン酸エチルとタルクをエタノール50gに投入し、ホモジナイザーでよく分散させた。上記2液を混合し、これを40℃に加温しながら24時間攪拌した。この液をアプリケーターにてPETセパレーターに1mmの厚みで塗工し、室温で5分、さらに40℃で20分乾燥し、厚み約50μmの半透明白濁フィルムを得た。
【0044】
[実施例16]
第1の化合物であるアクリル系水溶性粘膜粘着性ポリマーとしてカルボキシビニルポリマー(Carbopol)を17g、第2の化合物として、エチルセルロース(EC)を0.7gおよびミリスチン酸イソプロピル(日光ケミカルズ株式会社製)を0.6g、第4の化合物として、タルクを2.2g用いた。本例における第1の化合物に対する第2の化合物の含有量は、7.6重量%である。エタノール200gを攪拌しながら、カルボキシビニルポリマーの粉末とエチルセルロースの粉末とを加え、室温にて1時間攪拌し、白濁の分散液を作製した。ミリスチン酸イソプロピルとタルクをエタノール50gに投入し、ホモジナイザーでよく分散させた。上記2液を混合し、これを40℃に加温しながら24時間攪拌した。この液をアプリケーターにてPETセパレーターに1mmの厚みで塗工し、室温で5分、さらに40℃で20分乾燥し、厚み約50μmの半透明白濁フィルムを得た。
【0045】
[実施例17]
第1の化合物であるアクリル系水溶性粘膜粘着性ポリマーとしてカルボキシビニルポリマー(Carbopol)を17g、第2の化合物として、エチルセルロース(EC)を0.7gおよびパルミチン酸イソプロピル(WAKO純薬工業株式会社 試薬規格)を0.6g、第4の化合物として、タルクを2.8g用いた。本例における第1の化合物に対する第2の化合物の含有量は、7.6重量%である。エタノール200gを攪拌しながら、カルボキシビニルポリマーの粉末とエチルセルロースの粉末とを加え、室温にて1時間攪拌し、白濁の分散液を作製した。パルミチン酸イソプロピルとタルクをエタノール50gに投入し、ホモジナイザーでよく分散させた。上記2液を混合し、これを40℃に加温しながら24時間攪拌した。この液をアプリケーターにてPETセパレーターに1mmの厚みで塗工し、室温で5分、さらに40℃で20分乾燥し、厚み約50μmの半透明白濁フィルムを得た。
【0046】
[実施例18(参考例)]
第1の化合物であるカルボキシビニルポリマーに替えてポリアクリル酸ナトリウム(「アクアリック」AS58、株式会社日本触媒製)を17g用いた他は、実施例1と同様にして厚み約40μmの透明平滑フィルムを得た。本例における第1の化合物に対する第2の化合物の含有量は、1.8重量%である。
【0047】
[実施例19(参考例)]
第3の化合物として分子量400のポリエチレングリコール(PEG400、WAKO純薬工業株式会社製 試薬規格)を8.3g用いた他は、実施例11と同様にして厚み約100μmのフィルムを得た。得られたフィルムは、粒子が分散していることが目視で確認できる半透明フィルムであった。本例における第1の化合物に対する第2の化合物の含有量は、16.5重量%である。また、第1の化合物に対する第3の化合物の含有量は48.8重量%、第1の化合物に対する第4の化合物の含有量は32.9重量%である。
【0048】
[実施例20]
第4の化合物としてヒドロキシプロピルメチルセルロース(ヒプロメロース)を8.3g用いた他は、実施例11と同様にして厚み約100μmのフィルムを得た。得られたフィルムは、粒子が分散していることが目視で確認できる半透明フィルムであった。本例における第1の化合物に対する第2の化合物の含有量は、16.5重量%である。また、第1の化合物に対する第3の化合物の含有量は12.9重量%、第1の化合物に対する第4の化合物の含有量は48.8重量%である。
【0049】
[比較例1]
エタノール250gを攪拌しながら、カルボキシビニルポリマー(Carbopol)の粉末17gを加え、室温にて1時間攪拌し、白濁の分散液を作製した。これを40℃に加温しながら24時間攪拌した。この液をアプリケーターにてPETセパレーターに1mmの厚みで塗工し、室温で5分、さらに40℃で20分乾燥し、厚み約30μmの透明フィルムを得た。このフィルムは、乾燥状態で脆くて割れやすい性質をもっているが、口腔内に貼付すると柔らかくて粘膜にぴったりくっついた。しかし、溶解が速く、口腔内に貼付すると、数分で溶けてなくなってしまった。
【0050】
[比較例2]
ひまし油(WAKO純薬工業株式会社製 試薬規格)1.7gを溶かしたエタノール70gを攪拌しながら、エチルセルロース(EC)を4.0gを加え、完全に溶解するまで室温にて2~3時間攪拌した。この液をアプリケーターにてPETセパレーターに500μmの厚みで塗工し、50℃で10分乾燥し、厚み約15~20μmの透明フィルムを得た。このフィルムは、口腔内で硬く、全く粘膜粘着性はなく、貼付できなかった。
【0051】
[比較例3]
水溶性粘膜粘着性ポリマーとしてカルボキシビニルポリマー(Carbopol)を17g、第2の化合物としてエチルセルロース(EC)を5.6g用いた。本例における第1の化合物に対する第2の化合物の含有量は、32.9重量%である。エタノール250gを攪拌しながら、カルボキシビニルポリマーの粉末とエチルセルロースの粉末とを加え、室温にて1時間攪拌し、白濁の分散液を作製した。これを40℃に加温しながら24時間攪拌した。この液をアプリケーターにてPETセパレーターに1mmの厚みで塗工し、室温で5分、さらに40℃で20分乾燥し、厚み約40μmの半透明フィルムを得た。このフィルムは、粘膜に対する粘着性はあったが、口腔内で不溶性であった。
【0052】
[比較例4]
水溶性粘膜粘着性ポリマーとしてカルボキシビニルポリマー(Carbopol)を17g、第2の化合物としてエチルセルロース(EC)を11.3g用いた。本例における第1の化合物に対する第2の化合物の含有量は、66.5重量%である。エタノール250gを攪拌しながら、カルボキシビニルポリマーの粉末とエチルセルロースの粉末とを加え、室温にて1時間攪拌し、白濁の分散液を作製した。これを40℃に加温しながら24時間攪拌した。この液をアプリケーターにてPETセパレーターに1mmの厚みで塗工し、室温で5分、さらに40℃で20分乾燥し、厚み約45μmの半透明フィルムを得た。このフィルムは、硬めで、粘膜に対する粘着性は弱く、口腔内で不溶性であった。
【0053】
実施例および比較例について、以下の評価を行った。各例の組成を表1~表5に、評価結果を表6~10に示す。表1~表5においては、各成分の組成の単位はgであり、第1の化合物の含有量に対する第2の化合物の含有量を「含有量比(%)」で示している。
【0054】
(粘着力)
被着体としての粘膜モデル(ムチンゲル)を設定し、得られたフィルムを一定圧力で押し当てた後、引き剥がすときの力を引張試験機で測定し、引き剥がし時の最大剥離力を粘着力(N)として求めた。測定は、特開2012-72166号公報第0068段落に記載の粘膜接着力の測定方法に準じて、下記の条件で行った。ムチンゲルは、表面状態を整えるため、23℃で水飽和した密閉容器中で24時間保存したものを使用した。
使用機器:EZテスター(株式会社島津製作所製)
適用速度:3mm/min
押し当て圧力:1.47N
押し当て時間:60秒
引き剥がし速度:2mm/min
サンプル:直径20mm
ムチンゲル:3.25%gellan gum、1.6%ムチンの含水ゲル
【0055】
(貼付テスト 食事なし)
片側の頬内側の粘膜の水分をティッシュペーパーで軽く拭き取り、φ15mmの得られたフィルムを貼付した。貼付中食事はとらず、水は自由に飲む条件で、貼付強さ(粘着強さ)、違和感、貼付時間を確認した。4人のデータを平均したものを結果とした。
【0056】
(貼付テスト 食事あり)
食事直前に、片側の頬内側の粘膜の水分をティッシュペーパーで軽く拭き取り、φ15mmの得られたフィルムを貼付した。なるべく貼付箇所とは逆側で咀嚼するように食事し、貼付強さ(粘着強さ)、違和感、貼付時間を確認した。4人のデータを平均したものを結果とした。表中の平均貼付時間の欄に示した括弧内の数値は、4人の食事に要した時間を平均した値(分)である。
【0057】
表中の粘着強さについては、以下のとおりである。
◎:貼付中よくくっつく
○:貼付中くっつく
△:何とかくっついている
×:剥離しやすい
【0058】
表中の違和感については、以下のとおりである。
◎:違和感なく快適
○:ほぼ違和感はない
△:若干気になる
×:かなり気になる
【0059】
【0060】
【0061】
【0062】
【0063】
【0064】
【0065】
【0066】
【0067】
【0068】
【0069】
表6~表9に示すように、実施例では、粘膜に対する持続的な粘着力を有するとともに、口腔内では違和感が非常に小さい口腔内粘膜保護フィルムを達成できていることがわかる。実施例では、組成によって貼付時間と貼付感が異なるが、いずれも最終的には徐々に溶解して消失した。したがって、睡眠中であっても、口腔内で剥離して喉に詰まるといったリスクがなく、安心して貼付できる。貼付テストを繰り返し行った結果、平均で3時間程度も貼付できるサンプルも得ることができた。これに対して、比較例のフィルムでは、口腔内で瞬時に溶解して保護フィルムとしての機能を果たさないか、不溶であり口腔内貼付中に剥離してしまったり、違和感を感じたりするものであった(表10参照)。
【0070】
以上のように、本発明では、粘膜に対する持続的な粘着力を有するとともに、口腔内での違和感が軽減可能な口腔内粘膜保護フィルムが得られることがわかる。