(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-20
(45)【発行日】2022-09-29
(54)【発明の名称】回転体の組立方法
(51)【国際特許分類】
E04G 21/14 20060101AFI20220921BHJP
F03D 13/10 20160101ALI20220921BHJP
【FI】
E04G21/14
F03D13/10
(21)【出願番号】P 2018166966
(22)【出願日】2018-09-06
【審査請求日】2021-08-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000000549
【氏名又は名称】株式会社大林組
(73)【特許権者】
【識別番号】000153605
【氏名又は名称】株式会社巴技研
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】三輪 敏明
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 正明
(72)【発明者】
【氏名】江副 誉典
(72)【発明者】
【氏名】江沢 迪和
(72)【発明者】
【氏名】五十畑 登
(72)【発明者】
【氏名】矢ノ目 祥
【審査官】荒井 隆一
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-192070(JP,A)
【文献】特開2003-184730(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G 21/14-21/22
F03D 1/00-80/80
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
昇降部を備えたリフトアップ装置を用いて構築される塔状構造物に取り付けられ、中心部及びこれに取り付けられる複数の長尺状部を備えた回転体の組立方法であって、
前記昇降部には、
前記中心部を回転可能に載置し着脱可能なテーブル部材と、
前記テーブル部材に対して前記塔状構造物の反対側に位置し、複数の柱部を有する第1門型フレームを備えた取付部とが設けられており、
前記リフトアップ装置は、前記取付部の一部を前記昇降部に取り付けた状態で、前記柱部の一部又は全部を、前記テーブル部材に載置される前記中心部に取り付けられた前記長尺状部が回転する領域から移動可能に構成し、
前記取付部の一部を前記昇降部に残したまま、前記柱部の一部又は全部を移動させた後、前記長尺状部を取り付けた前記中心部の前記テーブル部材を回動させて、前記中心部に新たな長尺状部を取り付けることを特徴とする回転体の組立方法。
【請求項2】
前記
取付部には、前記テーブル部材に対して前記塔状構造物側に位置する第2門型フレームが更に設けられており、
前記リフトアップ装置は、ガイドタワーを備えており、
前記柱部の一部又は全部を移動させる前に、
前記取付部の一部となる前記第2門型フレームを前記ガイドタワーに連結して支持する支持部を設け、
前記中心部にすべての長尺状部が取り付けられた場合に、前記支持部を取り外すことを特徴とする請求項1に記載の回転体の組立方法。
【請求項3】
前記柱部が、前記第1門型フレームの水平部に支持されて昇降可能に設けられており、
前記テーブル部材に載置した前記中心部に前記長尺状部を取り付けた後、前記柱部を上昇させた状態で、前記テーブル部材を回転させることにより、前記長尺状部を、前記柱部の上昇により生じた通過スペースを通過させ、
前記長尺状部が前記通過スペースを通過した後に、上昇させていた前記柱部を降下させることを特徴とする請求項1又は2に記載の回転体の組立方法。
【請求項4】
前記柱部の一部又は全部が、回動可能に設けられており、
前記テーブル部材に載置した前記中心部に前記長尺状部を取り付けた後、前記柱部の一部又は前記柱部を回動させて倒した状態で、前記テーブル部材を回転させることにより、前記長尺状部を、前記柱部の一部又は前記柱部の回動により生じた通過スペースを通過させ、
前記長尺状部が前記通過スペースを通過した後に、前記柱部の一部又は全部を逆方向に回動させることを特徴とする請求項1又は2に記載の回転体の組立方法。
【請求項5】
前記第1門型フレームが、取り外し可能に設けられており、
前記第1門型フレームを取り外した後、前記テーブル部材に載置した前記中心部に前記長尺状部を取り付け、
前記中心部にすべての長尺状部が取り付けられた場合に、取り外していた前記第1門型フレームを取り付けることを特徴とする請求項1又は2に記載の回転体の組立方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、風力発電装置の回転体等、中心部及びこれに取り付けられる複数の長尺状部を備える回転体の組立方法に関する。
【背景技術】
【0002】
風力発電機の設置においては、強風時の施工性や施工に用いるクレーンの設置場所確保が課題にある。そこで、これら課題を解決するために、風力発電機の発電機タワーの周囲にガイドタワーを配置し、このガイドタワーに取り付けた昇降部を用いて、風力発電機を設置する技術が検討されている(例えば、非特許文献1参照。)。この非特許文献に記載のリフトアップ装置においては、発電機タワーの周囲に配置したガイドタワーに昇降部を取り付ける。この昇降部には、発電機タワーの一部やナセルを取り付けて持ち上げるための取付部が設けられる。そして、昇降部を用いて、発電機タワーを組立て、この発電機タワーの最上部にナセルを持ち上げて設置する。更に、立木上空の高さに配置した昇降部の上で回転体を組立てて、この回転体を持ち上げながら立て起こす。これにより、回転体の立て起こしに必要であった大型クレーンを不要にする。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【文献】株式会社大林組 「空中で巨大風車の羽根を起こす OBAYASHI Thinking」、[online]、[平成30年8月8日検索]、インターネット〈URL:https://www.obayashi.co.jp/thinking/detail/project46.html〉
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した非特許文献においては、取付部は、発電機タワーの一部やナセルを吊るすために、複数の門型フレームを備える。そして、回転体を組み立てる場合には、回転体のハブを回転させながら、ブレードを一方向から(取付作業を行なう同じ位置から)取り付ける作業を繰り返す。しかしながら、ブレードの回転時に門型フレームが邪魔になるため、門型フレームを含む取付部を取り外していた。そして、回転体の組立が完成した後に、昇降部に取付部を再び取り付け、この取付部に回転体を吊るして昇降部を上昇させる。このため、取付部の取り外し作業や取り付け作業に時間がかかり、効率的に塔状構造物を設置することが難しかった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決する回転体の組立方法は、昇降部を備えたリフトアップ装置を用いて構築される塔状構造物に取り付けられ、中心部及びこれに取り付けられる複数の長尺状部を備えた回転体の組立方法であって、前記昇降部には、前記中心部を回転可能に載置し着脱可能なテーブル部材と、前記テーブル部材に対して前記塔状構造物の反対側に位置し、複数の柱部を有する第1門型フレームを備えた取付部とが設けられており、前記柱部の一部又は全部を、前記テーブル部材に載置される前記中心部に取り付けられた前記長尺状部が回転する領域から移動可能に構成し、前記柱部の一部又は全部を移動させた後、前記長尺状部を取り付けた前記中心部の前記テーブル部材を回動させて、前記中心部に新たな長尺状部を取り付ける。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、効率的に塔状構造物を設置することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】第1実施形態における風力発電機及びリフトアップ装置の説明図であって、(a)は風力発電機の斜視図、(b)はリフトアップ装置の斜視図。
【
図2】第1実施形態における昇降部の構成を説明する斜視図であって、(a)は昇降部の斜視図、(b)は昇降部に載置される取付部の斜視図。
【
図3】第1実施形態における塔状構造物の設置方法の説明図であって、(a)は昇降部を取り付けた状態、(b)は発電機タワーの中間部を持ち上げた状態、(c)はナセルを取付部に取り付けた状態を示す側面図。
【
図4】第1実施形態における回転体の組立方法を説明する斜視図。
【
図5】第1実施形態における回転体の組立方法を説明する斜視図であって、(a)は一方の柱を上げた状態、(b)は両方の柱を下した状態、(c)は両方の柱を上げた状態を示す斜視図。
【
図6】第1実施形態における回転体の組立方法を説明する斜視図。
【
図7】第1実施形態における回転体の組立方法を説明する図であって、(a)は回転体の立て起こし途中の要部の斜視図、(b)は回転体を持ち上げた状態の側面図。
【
図9】第2実施形態における回転体の組立方法を説明する斜視図であって、(a)は柱を立設させた状態、(b)は柱を回動させて横に倒した状態を示す斜視図。
【
図10】第3実施形態における回転体の組立方法を説明する斜視図であって、(a)は回転体の組立開始前の状態、(b)は外側の門型フレームを外した状態を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
(第1実施形態)
以下、
図1~
図7を用いて、回転体の組立方法を具体化した第1実施形態を説明する。本実施形態では、塔状構造物としての風力発電機に取り付けられる回転体の組立方法を説明する。
【0009】
図1(a)に示すように、風力発電機10は、基礎の上に設置された発電機タワー11と、この発電機タワー11の上に取り付けられたナセル12と、このナセル12に取り付けられた回転体13とを備える。回転体13は、中心部としてのハブ13hと、3枚の長尺状部としてのブレード13bとを備える。また、発電機タワー11は、複数の筒体を積み上げて構成される。ここでは、発電機タワー11は、最下部11a、中間部11b及び最上部11cから構成される。
【0010】
図1(b)に示すように、風力発電機10を構築するために用いるリフトアップ装置は、ガイドタワー20と、このガイドタワー20に取り付けられる昇降部30とを備える。ガイドタワー20は、発電機タワー11の近傍で、発電機タワー11を囲むように設けられる。ガイドタワー20は、発電機タワー11の周囲に立設された支柱21,22,23,24を備える。各支柱21~24は、四角柱形状のトラス構造により構成される。各支柱21~24は、隣接する支柱21~24と複数のトラス梁25等によって連結される。
【0011】
更に、ガイドタワー20の各支柱21~24と、発電機タワー11との間には、複数の支持機構26を設ける。各支持機構26は、上下方向に離間して取り付ける。複数の支持機構26を介して、ガイドタワー20は発電機タワー11に支持される。
昇降部30は、支柱23,24に取り付けられる。この昇降部30には、取付部40が搭載されている。
【0012】
図2(a)に示すように、昇降部30は、同じ形状をした1対(2つ)のユニット部材31と、これらユニット部材31を連結する連結部32,33とを備える。
【0013】
ユニット部材31は、垂直部31aと水平部31bとからなる略T字形状のフレームと、斜材31sとを備える。
斜材31sは、垂直部31aの下端部と、水平部31bの端部のそれぞれとを連結する。ユニット部材31の垂直部31a及び水平部31bと、連結部32,33とは、四角柱形状のトラス構造により構成される。
【0014】
各ユニット部材31の垂直部31aは、昇降部30を昇降させるための昇降機構35を備える。この昇降機構35は、シリンダ36及びピストン37からなるジャッキを備える。ピストン37は、シリンダ36の下方から伸縮可能に延在して配置される。更に、シリンダ36の上端部及びピストン37の下端部には、ピン35aを備える。このピン35aは、支柱23,24側に突出可能である。ここでは、一方のピン35aを突出させて、支柱23,24のトラス梁の孔に係合させた状態で、他方のピン35aを引っ込めて、昇降機構35のジャッキのピストン37を伸縮させることを繰り返す。これにより、尺取り虫的な間欠動作により、ガイドタワー20に沿って、昇降部30は昇降する。
【0015】
連結部32,33は、ユニット部材31の水平部31b同士を、両端部でそれぞれ連結する。連結部33は、取り外し可能に構成される。連結部33の中央には、円筒形状のテーブル部材34が、着脱可能に設置される。テーブル部材34は、回転体13を組み立てる組立台として用いられる。このテーブル部材34は、図示しない回転駆動装置によって回転可能に構成される。
【0016】
各ユニット部材31の水平部31bの上面には、板部材で構成される走行部39を設ける。各走行部39には、取付部40の台車41がそれぞれ載置される。走行部39に沿って台車41を走行させることにより、取付部40は水平方向(横方向)に移動する。
【0017】
<取付部40の構成>
図2(b)は、取付部40の斜視図である。取付部40は、複数の車輪が取り付けられた台車41、1対の門型フレーム43,50と、1対の小梁47、治具取付梁48、取付部材44,54、及びチェーンブロック46,56を備える。
1対の台車41を跨ぐように、門型フレーム43,50が、台車41の上面に、離間して固定されている。門型フレーム50が第1門型フレームとして機能し、門型フレーム43が第2門型フレームとして機能する。
【0018】
支柱21~24側(内側)に配置される門型フレーム43は、1対の柱部と、これら柱部の上端部を連結する水平部43aとを備える。門型フレーム43の各柱部は、各台車41の端部に立設される。更に、門型フレーム43の水平部43aは、中央で分割できるように連結されている。
【0019】
支柱21~24と反対側(外側)に配置される門型フレーム50は、1対の柱部51,52と、これら柱部51,52の上端部を連結する水平部53とを備える。水平部53の両端部53a,53bは、柱部51,52を内嵌する筒状部材であり、柱部51,52を上下方向に摺動可能に支持する。更に、各両端部53a,53bは、各柱部51,52を昇降する昇降駆動部(図示せず)を備える。この昇降駆動部としては、例えばジャッキ等を用いる。
【0020】
門型フレーム43,50の水平部43a,53の上面には、これらを連結する1対の小梁47が着脱可能に取り付けられる。1対の小梁47の間には、治具取付梁48が取り付けられる。治具取付梁48の下部には、吊り下げ部としての吊り治具(図示せず)が、治具取付梁48の延在方向に沿って移動可能に取り付けられる。
【0021】
門型フレーム43の一方の柱部には、その上面に取付部材44が水平面において回動可能に設けられる。また、門型フレーム50の柱部51には、その上面に取付部材54が、水平面において回動可能で着脱可能に設けられる。各取付部材44,54の上端部には、大梁45,55の端部がそれぞれ設けられる。各大梁45,55の下部には、大梁45,55の延在方向に沿って摺動可能なチェーンブロック46,56が設けられる。
【0022】
<風力発電機の設置方法>
次に、
図3~
図7を用いて、上述した構成のリフトアップ装置を用いて風力発電機を設置する方法について説明する。この場合、回転体13を組み立てる前に、発電機タワー11及びナセル12を設置する。
【0023】
具体的には、
図3(a)に示すように、発電機タワー11の最下部11aを囲むように、ガイドタワー20の各支柱21~24の最上部21a,22a,23a,24a及び中間部21b,22b,23b,24bをそれぞれ接続して配置する。そして、ガイドタワー20の支柱21~24を囲むように支柱23,24に昇降部30を取り付け、この昇降部30の走行部39の上に取付部40を配置する。
【0024】
次に、
図3(b)に示すように、発電機タワー11の中間部11bを取付部40に吊るし、昇降機構35を動作させて昇降部30を上昇させる。ガイドタワー20の最上部において、中間部11bを取付部40のチェーンブロック46,56に付け替え、取付部40を水平移動させて、最下部11aの上に中間部11bを接続する。その後、取付部40を水平移動させた後、昇降部30を降下させる。次に、中間部21b~24bを上昇させて、この下に最下部21c,22c,23c,24cを台車80に載せて移動させて挿入し、中間部21b~24bの下側に最下部21c~24cを接合する。そして、トラス梁25及び支持機構26を配置する。これら工程を繰り返して、発電機タワー11及びガイドタワー20を必要な高さまで構築する。
【0025】
次に、
図3(c)に示すように、昇降部30の取付部40にナセル12を取り付け、ナセル12を発電機タワー11の最上部11cまで持ち上げて、ナセル12を水平方向に180度回転させて最上部11cの上に取り付ける。その後、昇降部30を降下させる。
【0026】
(回転体13の組立方法)
次に、
図4~
図6を用いて、回転体13の組立方法について説明する。
図4に示すように、まず、支持部としてのステーS1を取り付ける。このステーS1は、門型フレーム43の水平部43aの中央と、支柱23,24のトラス構造の柱とを連結する。ステーS1は、例えば円筒の鋼管管等で構成される。そして、昇降部30の連結部33の上にテーブル部材34を設置し、このテーブル部材34上に回転体13のハブ13hを載置する。更に、門型フレーム50の柱部51の上面に設けられた取付部材54を取り外す。
【0027】
そして、1枚目のブレード13bをハブ13hに取り付ける。この場合、ブレード13bの一端部を、取付部40の門型フレーム43,50の間から差し込み、ハブ13hに取り付ける。
【0028】
次に、
図5(a)に示すように、門型フレーム50の水平部53の端部53aに設けた昇降駆動部を駆動して、柱部51を上昇させて、その高さ(位置)で保持する。そして、テーブル部材34を回転させて、柱部51を上昇させて作った通過スペース(柱部51を取り除いて生成した空間)に、ブレード13bを通過させる。この場合、テーブル部材34を120度回転させる。これにより、ハブ13hにおいて次に取り付ける(2枚目の)ブレード13bの取付位置を、1枚目のブレード13bの取付作業を行なった位置に配置することができる。
【0029】
そして、
図5(b)に示すように、昇降駆動部を駆動して柱部51を降下させて台車41に連結する。そして、2枚目のブレード13bの一端部を、取付部40の門型フレーム43,50の間から差し込み、ハブ13hに取り付ける。
【0030】
次に、
図5(c)に示すように、門型フレーム50の水平部53の端部53a,53bに設けた昇降駆動部を駆動して、柱部51,52を上昇させて、その高さで維持する。そして、テーブル部材34を120度回転させて、1枚目及び2枚目のブレード13bを、柱部52,51を上昇させて作った通過スペースを通過させる。
そして、
図6に示すように、3枚目のブレード13bの一端部を、取付部40の門型フレーム43,50の間から差し込み、ハブ13hに取り付ける。その後、
図6に示した状態から、門型フレーム50の柱部51の上面に取付部材54を回動可能に取り付け、ステーS1を取り外す。
【0031】
以上により、ブレード13bのハブ13hの組立てが完了する。そして、テーブル部材34に載置されている回転体13を、取付部40の吊り治具に取り付ける。この吊り治具は、ハブ13hの外周部(重心の真上からずれした位置)に設けられている。具体的には、回転体13を立て起こした場合、ナセル12への取付時の傾きとなる位置で、回転体13を吊るす。
【0032】
その後、門型フレーム50から外側(支柱21~24とは反対側)に突出したブレード13b(回転体13を立て起こした場合に下方になるブレード13b)の先端部を、ワイヤW1を介して、クレーン(図示せず)で支持する。
【0033】
次に、昇降部30のユニット部材31から、テーブル部材34及び連結部33を取り外す。この場合、吊り下げられた回転体13は、吊り位置と重心との関係で鉛直状態に立て起きようとするが、ワイヤW1を介してクレーンに引っ張られるため、水平状態を維持する。
【0034】
そして、昇降機構35を駆動させて昇降部30を上昇させると、ブレード13bはワイヤW1により引っ張られながら、回転体13の吊り位置が上昇する。そして、
図7(a)に示すように、介錯されたブレード13bの先端が回転体13の下方となるように徐々に回転して、回転体13が立て起こされる。
【0035】
その後、
図7(b)に示すように、昇降部30を発電機タワー11の最上部まで持ち上げる。この場合、回転体13は、ナセル12への取付時の傾きとなる。そして、持ち上げた回転体13を、チェーンブロック46,56に付け替えた後、取付部40を水平移動させて、回転体13をナセル12に取り付ける。そして、昇降部30を降下させてガイドタワー20から取り外し、ガイドタワー20を解体する。
【0036】
本実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1-1)本実施形態では、リフトアップ装置の昇降部30は、回転可能なテーブル部材34と、外側の門型フレーム50の柱部51,52が昇降可能な取付部40とを備える。そして、柱部51,52を上昇させて、その位置で柱部51,52を保持した後、テーブル部材34の上のハブ13hに取り付けたブレード13bを回転させる。これにより、内側の門型フレーム43、小梁47、治具取付梁48及び門型フレーム50の水平部53を残した状態で、ブレード13bをハブ13hに順次、取り付けることができる。更に、同じ場所で各ブレードをハブ13hに取り付け作業を行なうことができるため、効率的に作業を行なうことができる。
【0037】
(1-2)本実施形態では、テーブル部材34を回転させる前に、内側の門型フレーム43の水平部43aと、支柱23,24のトラス構造の柱とを連結するステーS1を取り付ける。これにより、柱部51,52を移動させた場合でも、取付部40を安定して支持することができる。
【0038】
(1-3)本実施形態では、外側の門型フレーム50の水平部53の両端部53a,53bには、各柱部51,52を昇降する昇降駆動部が設けられる。これにより、柱部51,52を昇降させて、ブレード13bを効率的に組み立てることができる。また、柱部51,52を通過スペースから移動させても、柱部51,52は門型フレーム50に取り付けてあるので、元の位置に容易に戻すことができる。
【0039】
(第2実施形態)
次に、
図8及び
図9を用いて、回転体の組立方法を具体化した第2実施形態を説明する。上記第1実施形態では門型フレーム50の柱部51,52を上昇させたが、本実施形態では門型フレームの柱を回動させる。本実施形態では、第1実施形態と、外側の門型フレームのみを変更した構造であり、それ以外の上記実施形態と同様な部分については、同一の符号を用いることにより、その詳細な説明を省略する。
【0040】
図8に示すように、第1実施形態と同様に、取付部40は、1対の台車41を跨ぐように、門型フレーム43,60が、台車41の上面に、離間して設けられている。そして、支柱21~24と反対側(外側)に配置される門型フレーム60は、1対の柱部61,62と、これら柱部61,62の上端部を連結する水平部63とを備える。
【0041】
各柱部61,62は、台車41側の端部(に水平方向に貫通する軸)を中心として、2点鎖線で示すように、外側に回動可能に取り付けられている。柱部61,62の下部(台車41側の端部)には、柱部61,62を回動させる回動機構部(図示せず)が設けられる。また、各柱部61,62の上端部は、柱部61,62の回動の障害にならない形状(例えば、円弧形状)で上に突出形成されている。
【0042】
門型フレーム60の水平部63の両端部には、垂直部63a,63bがそれぞれ固定されている。垂直部63a,63bは、柱部61,62と一直線上になるように整合する。水平部63の各垂直部63a,63bの下部には、柱部61,62の上端部61a,62aが回動可能に係合する形状(窪み)が形成されている。
【0043】
更に、門型フレーム43,60の水平部43a,63の上面には、これらを連結する1対の小梁47が着脱可能に取り付けられている。また、1対の小梁47の間には、治具取付梁48が取り付けられる。
そして、水平部63の端部には、取付部材44が、水平面において回動可能に設けられる。
【0044】
<回転体13の組立方法>
次に、
図9を用いて、本実施形態における回転体13の組立方法について説明する。この回転体13の組立は、上記実施形態と同様に、発電機タワー11及びナセル12の設置後に行なう。
【0045】
図9(a)に示すように、上記実施形態と同様に、支持部としてのステーS1を取り付け、連結部33の上にテーブル部材34を設置し、このテーブル部材34上にハブ13hを設置し、このハブ13hに1枚目のブレード13bを取り付ける。
【0046】
次に、
図9(b)に示すように、門型フレーム60の柱部61の下部に設けた回動機構を駆動して、柱部61を回転させて横に倒す。そして、テーブル部材34を回転させて、柱部61を回動させて作った通過スペースに、ブレード13bを通過させる。
【0047】
そして、回動機構を駆動して柱部61を逆方向に回動させて柱部61を立て起こす。この場合、柱部61の上端部61aを、垂直部63aの下面に連結する。そして、2枚目のブレード13bの一端部を取り付ける。
【0048】
次に、門型フレーム60の柱部61,62の下部に設けた回動機構を駆動して、柱部61,62を回動させて、柱部61,62を横に倒す。そして、テーブル部材34を回転させて、ハブ13hに取り付けたブレード13bを、それぞれ柱部61,62の配置空間(柱部61,62を回動させて作った通過スペース)を通過させる。次に、柱部61,62を逆方向に回動させて立設させた後、3枚目のブレード13bの一端部をハブ13hに取り付ける。そして、ステーS1を取り外して、回転体13の組立が完了する。
【0049】
その後、上記第1実施形態と同様に、回転体13を立て起こしながら持ち上げてナセル12に取り付け、昇降部30を取り外し、ガイドタワー20を解体する。
【0050】
従って、本実施形態によれば、上記(1-2)に記載の効果と同様な効果に加えて、以下の効果を得ることができる。
(2-1)本実施形態では、リフトアップ装置の昇降部30は、回転可能なテーブル部材34と、外側の門型フレーム60の柱部61,62が回動可能な取付部40とを備える。そして、柱部61,62を外側に回動させて横に倒して、柱部61,62を移動させた後、テーブル部材34の上のハブ13hに取り付けたブレード13bを回転させる。これにより、内側の門型フレーム43、小梁47、治具取付梁48及び門型フレーム60の水平部63を残した状態で、ブレード13bをハブ13hに順次、取り付けることができる。更に、同じ場所で各ブレードをハブ13hに取り付け作業を行なうことができるため、効率的に作業を行なうことができる。
【0051】
(2-2)本実施形態では、外側の門型フレーム60の柱部61,62の下部には、柱部61,62を回動させる回動機構部が設けられる。これにより、柱部61,62を移動させることができ、ブレード13bを効率的に組み立てることができる。また、柱部61,62を通過スペースから移動させても、柱部61,62は門型フレーム60に取り付けてあるので、元の位置に容易に戻すことができる。
【0052】
(第3実施形態)
次に、
図10を用いて、回転体の組立方法を具体化した第3実施形態を説明する。上記第1及び第2実施形態ではブレード13bを通過させる前に、門型フレーム50,60の柱部51,52,61,62を移動させたが、本実施形態では、ブレード13bを取り付ける前に、外側の門型フレーム全体を取り外す。本実施形態の取付部40は、上記各実施形態と、外側の門型フレーム及びこれに連結する連結部を変更した構造であり、それ以外の上記実施形態と同様な部分については、同一の符号を用いることにより、その詳細な説明を省略する。
【0053】
図10(a)及び
図10(b)は、外側の門型フレーム70を取り外す前後の斜視図である。
図10(a)に示すように、上記実施形態と同様に、取付部40は、1対の台車41を跨ぐように、門型フレーム43,70が、台車41の上面に、離間して設けられている。
【0054】
支柱21~24と反対側(外側)に配置される門型フレーム70は、台車41の上に着脱可能に取り付けられている。門型フレーム70は、1対の柱部71,72と、これら柱部の上端部を連結する水平部73とを備える。
【0055】
門型フレーム43,70の水平部43a,73の上面には、これらを連結する1対の小梁77が取り付けられている。1対の小梁77は、内側の門型フレーム43の水平部43aに固定され、外側の門型フレーム70とは着脱可能になっている。更に、1対の小梁77の間には、治具取付梁48が取り付けられる。
【0056】
そして、門型フレーム70の柱部71の上(水平部73の端部73aの上面)には、取付部材74が、水平面において回動可能に設けられる。この取付部材74の上端部には、大梁55の端部が設けられ、この大梁55の下部には、大梁55の延在方向に沿って摺動可能なチェーンブロック56が設けられる。
【0057】
<回転体13の組立方法>
次に、本実施形態における回転体13の組立方法について説明する。この回転体13の組立は、上記実施形態と同様に、発電機タワー11及びナセル12の設置後に行なう。
【0058】
図10(b)に示すように、回転体13の組立前には、上記実施形態と同様に、支持部としてのステーS1を取り付ける。そして、外側の門型フレーム70を取り外す。この場合、小梁77は、門型フレーム43に固定され、門型フレーム43は、ステーS1に支持される。
【0059】
次に、昇降部30の連結部33の上にテーブル部材34を設置し、テーブル部材34上に、回転体13のハブ13hを設置する。そして、このハブ13hに1枚目のブレード13bを取り付けた後、テーブル部材34を回転させて、同じ取付場所において2枚目のブレード13bを取り付ける。更に、テーブル部材34を回転させて、3枚目のブレード13bを同じ取付場所において取り付ける。
【0060】
その後、上記各実施形態と同様に、回転体13を立て起こしながら持ち上げてナセル12に取り付ける。そして、昇降部30を取り外し、ガイドタワー20を解体する。
【0061】
従って、本実施形態によれば、上記(1-2)に記載の効果と同様な効果に加えて、以下の効果を得ることができる。
(3-1)本実施形態では、リフトアップ装置の昇降部30は、回転可能なテーブル部材34と、取り外し可能な外側の門型フレーム70と、内側の門型フレーム43に固定され外側の門型フレーム70に載置される小梁77とを備える。そして、門型フレーム70を取り外した後、テーブル部材34の上のハブ13hに取り付けたブレード13bを回転させながら、残りのブレード13bをハブ13hに取り付ける。これにより、内側の門型フレーム43、小梁77、治具取付梁48及び門型フレーム70の水平部73を残した状態で、ブレード13bをハブ13hに順次、取り付けることができる。
【0062】
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
・上記第1実施形態では、門型フレーム50には、柱部51,52を昇降する昇降駆動部(図示せず)を設けた。門型フレームの柱部51,52を昇降させる機構は、これに限られない。例えば、門型フレームに昇降駆動部を設けずに、柱部の上昇時又は降下時に、ジャッキ等の昇降駆動機構を臨時に用いて、柱部を昇降させてもよい。そして、上昇させた柱部にピン等を挿入して、柱部を上昇させた状態で、ブレード13bを、柱部の配置空間を通過させてもよい。また、柱部の上端部をクレーン等で吊り上げることにより、柱部を上昇させてもよい。
【0063】
・上記第2実施形態では、門型フレーム60の柱部61,62は、台車41側の端部を中心として回動可能に取り付けられる。柱部は、台車41側の端部(下端部)を中心として回動する構成に限定されない。例えば、水平部63の垂直部63a,63bの端部(柱部の上端部)を中心として、柱部を回動可能に設けてもよい。また、柱部61,62の全体を回動させる場合に限れず、ブレード13bが通過する領域に対応する部分(柱部の中央部分)のみを回動させる構成にしてもよい。更に、柱部61,62が回動する方向は、支柱21~24と反対側(外側)に限られず、連結部33が延在する方向に倒れるように回動してもよい。
【0064】
・上記第3実施形態では、門型フレーム70を取り外し可能とした。外側の門型フレーム70全体ではなく、外側の門型フレームの柱部及び柱部の一部を取り外してもよい。例えば、第2実施形態における回動する柱部61,62を、着脱可能にしてもよい。
【0065】
・上記各実施形態では、テーブル部材34を回転させる前に、支持部としてのステーS1を取り付ける。このステーS1は、内側の門型フレーム43の水平部43aと、支柱23,24のトラス構造の柱とを連結する。取付部40を支持する支持部は、水平部43aと支柱23,24とを連結する部材に限定されない。例えば、門型フレーム43をユニット部材31の水平部31bやトラス梁25に固定してもよいし、外側の門型フレームの大梁を、支柱23,24やトラス梁25に取り付けて固定してもよい。
【0066】
・上記第1実施形態では、門型フレーム50の柱部51,52を昇降させた。上記第2実施形態では、門型フレーム60の柱部61,62を回動させた。上記第3実施形態では、門型フレーム70を取り外した。ブレード13bを通過させる領域から柱部の一部又は全部を移動させる方法は、昇降、回動及び取り外しに限定されない。例えば、複数の入れ子状部材を伸長させて柱部として構成し、入れ子状部材を収縮させて通過スペースを形成し、この通過スペースに、ブレード13bを通過させる構成としてもよい。
【符号の説明】
【0067】
S1…ステー、W1…ワイヤ、10…風力発電機、11…発電機タワー、11a,21c,22c,23c,24c…最下部、11b,21b,22b,23b,24b…中間部、11c,21a,22a,23a,24a…最上部、12…ナセル、13…回転体、13b…ブレード、13h…ハブ、20…ガイドタワー、21,22,23,24…支柱、25…トラス梁、26…支持機構、30…昇降部、31…ユニット部材、31a,63a,63b…垂直部、31b,43a,53,63,73…水平部、31s…斜材、32,33…連結部、34…テーブル部材、35…昇降機構、35a…ピン、36…シリンダ、37…ピストン、39…走行部、40…取付部、41,80…台車、43,50,60,70…門型フレーム、44,54,74…取付部材、45,55…大梁、46,56…チェーンブロック、47,77…小梁、48…治具取付梁、51,52,61,62,71,72…柱部、53a,53b…端部、61a,62a…上端部。