(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-20
(45)【発行日】2022-09-29
(54)【発明の名称】ピストン圧縮機及びこのようなピストン圧縮機を使用する方法
(51)【国際特許分類】
F04B 35/01 20060101AFI20220921BHJP
【FI】
F04B35/01 C
(21)【出願番号】P 2021533288
(86)(22)【出願日】2019-12-03
(86)【国際出願番号】 IB2019060400
(87)【国際公開番号】W WO2020128697
(87)【国際公開日】2020-06-25
【審査請求日】2021-06-23
(32)【優先日】2018-12-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】BE
(73)【特許権者】
【識別番号】593074329
【氏名又は名称】アトラス コプコ エアーパワー,ナームローゼ フェンノートシャップ
【氏名又は名称原語表記】ATLAS COPCO AIRPOWER,naamloze vennootschap
(73)【特許権者】
【識別番号】521251567
【氏名又は名称】ヴリジェ ユニヴェルシテイ ブリュッセル
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100144451
【氏名又は名称】鈴木 博子
(74)【代理人】
【識別番号】100170634
【氏名又は名称】山本 航介
(72)【発明者】
【氏名】フェレルスト ビョルン
(72)【発明者】
【氏名】ベッカーズ ジャール
【審査官】嘉村 泰光
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-059475(JP,A)
【文献】特表平08-508558(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04B 25/00-37/00
F04B 41/00-41/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮チャンバー(13)を有するハウジング(8)を備えた少なくとも1つのピストン圧縮機要素(3)を含むピストン圧縮機であって、ピストン(10)が、回転モーター(6)によって駆動されるドライブシャフト(5)を用いて上死点と下死点との間で軸方向(X-X’)に前後に移動可能に配置され、前記ピストン(10)の1次ドライブのために前記ドライブシャフト(5)と前記ピストン(10)との間に運動学的トランスミッション(20)が提供される、ピストン圧縮機において、
前記ピストン(10)は、電磁リニアドライブの形で
の相補的ドライブ(25)を備えている、ことを特徴とする、ピストン圧縮機。
【請求項2】
前記相補
的ドライブ(25)が、前記圧縮チャンバ(13)の周り又はこれに沿って配置された1又は複数の電気コイル(26)を有して、前記ピストン(10)の直接電磁ドライブを含み、前記電気コイル(26)が前記ピストン(10)と誘導的に相互作用することができる、ことを特徴とする請求項1に記載のピストン圧縮機。
【請求項3】
前記ピストン(10)及び/又はシリンダマントル(9)が、1又は2以上の磁石を備えている、ことを特徴とする、請求項2に記載のピストン圧縮機。
【請求項4】
前記相補
的ドライブ(25)が
、リニアガイド又はエンクロージャ(30)において前後に移動可能に配置された又は前記圧縮チャンバー(13)の軸方向(X-X’)に平行に延びるプランジャー(29)を備えた前記ピストン(10)の間接的電磁ドライブと、前記リニアガイド又はエンクロージャ(30)の周り又はこれに沿って配置され、それぞれの前記プランジャー(29)と誘導的に相互作用することができる1又は複数のコイル(26)と、を含む、ことを特徴とする、請求項1~3の何れか1項に記載のピストン圧縮機。
【請求項5】
前記プランジャー(29)が、1又は2以上の磁石を備えている、ことを特徴とする、請求項2に記載のピストン圧縮機。
【請求項6】
前記プランジャー(29)の前記リニアガイド又はエンクロージャ(30)が、前記圧縮チャンバー(13)の軸方向延長部(X-X’)に配置され、前記プランジャー(29)が、前記ピストン(10)と機械的に固定接続され且つ前記ピストン(10)の直線運動と同期して前後に移動するロッド(18)上に配置されている、ことを特徴とする、請求項4又は5に記載のピストン圧縮機。
【請求項7】
前記ピストン(10)が、ピストン(10)の軸方向延長部(X-X’)に配置されたリニアピストンロッド(18)を用いて運動学的トランスミッション(20)と機械的に接続されており、前記相補
的ドライブ(25)は、前記ピストンロッド(18)に取り付けられた内部プランジャー(29)を含む、ことを特徴とする、請求項4~6の何れか1項に記載のピストン圧縮機。
【請求項8】
前記
相補的ドライブ(25)が、圧縮チャンバー(13)を通って延び且つ前記圧縮チャンバー(13)の外側に到達する接続ロッド(32)を用いて前記ピストン(10)と機械的に接続される外部プランジャー(29)を備え、前記接続ロッド(32)には、前記外部プランジャー(29)が取り付けられる、ことを特徴とする、請求項4又は5に記載のピストン圧縮機。
【請求項9】
前記相補
的ドライブ(25)が、1又は2以上の内部及び/又は外部プランジャー(29)を備えた直接電磁ドライブ及び/又は間接的電磁ドライブを含む、ことを特徴とする、請求項4~8の何れか1項に記載のピストン圧縮機。
【請求項10】
前記ピストン(10)及び/又は前記プランジャー(29
)内の磁石が永久磁石である、ことを特徴とする、請求項3及び/又は5に記載のピストン圧縮機。
【請求項11】
前記ピストン圧縮機(1)が、少なくとも前記ピストン(10)の下死点から上死点までの前記ピストン(10)の圧縮ストロークの一部の間、前記
相補的ドライブ(25)を作動させるための制御装置(27)を備えている、ことを特徴とする、上述の請求項の何れか1項に記載のピストン圧縮機。
【請求項12】
前記制御装置(27)が、少なくとも前記圧縮チャンバー(13)における圧力が最も高い前記ピストン(10)の圧縮ストロークの段階中に前記
相補的ドライブ(25)を作動させるようにプログラム又は設定される、ことを特徴とする、請求項11に記載のピストン圧縮機。
【請求項13】
前記制御装置(27)は、前記圧縮ストローク又はその一部の間に、必要な前記圧縮出力の少なくとも20~30%が前記相補
的ドライブ(25)によって供給され、残りは回転モーター(6)によって供給されるようなものである、ことを特徴とする、請求項1~12の何れか1項に記載のピストン圧縮機。
【請求項14】
前記制御装置(27)は、前記圧縮ストローク又はその一部の間に、必要な前記圧縮出力の少なくとも80~90%が
前記相補
的ドライブ(25)によって供給され、残りは回転モーター(6)によって供給されるようなものである、ことを特徴とする、請求項1~13の何れか1項に記載のピストン圧縮機。
【請求項15】
前記運動学的トランスミッション(20)が、クランク及びロッド機構(21~22)を含み、前記回転モーター(6)が電気モーターである、ことを特徴とする、請求項1~14の何れか1項に記載のピストン圧縮機。
【請求項16】
前記クランク及びロッド機構が、閉じたボール軸受(33)を用いて排他的に支持される、クランクシャフト(5)、クランクピン(23)、及びピストンピン(24)を備える、ことを特徴とする、請求項15に記載のピストン圧縮機。
【請求項17】
前記ピストン圧縮機が、少なくとも2つの別個のピストン圧縮機要素(3)を備えた多段ピストン圧縮機(1)であって、前記ピストン圧縮機要素が各々、圧縮チャンバー(13)の軸方向(X-X’)で前後に移動可能であり且つジョイントドライブシャフト(5)及び回転モーター(6)によって駆動されるピストン(10)を有し、別個の運動学的トランスミッション(20)が、前記ドライブシャフト(5)及びピストン(10)を駆動するための少なくとも2つの別個のピストン圧縮機要素(3)の各々の間に設けられ、前記相補
的ドライブ(25)が、少なくとも2つの前記ピストン圧縮機要素(3)の各々に提供される、ことを特徴とする、請求項1~16の何れか1項に記載のピストン圧縮機。
【請求項18】
前記ピストン圧縮機は、ジョイントドライブグループ(2)及びそこに取り付けられた2又は3以上の別個のピストン圧縮機要素(3)からモジュール式に構成され、前記ジョイントドライブグループ(2)は、ハウジング(4)前記ジョイントドライブシャフト(5)が支持され且つ前記2又は3以上のピストン圧縮機要素(3)の別個の運動学的トランスミッション(20)と
、を備えるハウジング(4)を含む、請求項17に記載のピストン圧縮機。
【請求項19】
前記ジョイントドライブシャフト(5)が、ボール軸受(33)を用いて前記ジョイントドライブグループ(2)のハウジング内で支持される、ことを特徴とする、請求
項18に記載のピストン圧縮機。
【請求項20】
ベルトドライブ(7)が、前記ジョイントドライブシャフト(5)と前記回転モーター(6)との間に設けられる、ことを特徴とする、請求項1~19の何れか1項に記載のピストン圧縮機。
【請求項21】
前記ピストン圧縮機が、30kWを超える最大圧縮出力を有するピストン圧縮機(1)である、ことを特徴とする、請求項1~20の何れか1項に記載のピストン圧縮機。
【請求項22】
作動時には、回転モーター(6)によって駆動される運動学的トランスミッション(20)を用いて上死点と下死点との間で圧縮チャンバー(13)内で軸方向(X-X’)に前後に周期的に移動するピストン(10)を備えたピストン圧縮機要素(3)を用いてガスを圧縮する方法であって、
前記ピストン(10)は更に、前記ピストン(10)の前後移動の期間の少なくとも一部の間、相補
的ドライブ(25)を用いて駆動される、
ことを特徴とする、方法。
【請求項23】
前記ピストン(10)が、少なくとも、前記圧縮チャンバー(13)内の圧力が最も高い前記ピストン(10)の圧縮ストロークの段階中に電磁的に駆動される、ことを特徴とする、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記圧縮ストローク又はその一部の間に、所要の圧縮出力の少なくとも20~30%が、前記相補
的ドライブ(25)によって供給され、残りが前記回転モーター(6)によって供給される、ことを特徴とする、請求項22又は23に記載の方法。
【請求項25】
前記圧縮ストローク又はその一部の間に、前記所要の圧縮出力の少なくとも80~90%が、前記相補
的ドライブ(25)によって供給され、残りが前記回転モーター(6)によって供給される、ことを特徴とする、請求項22~24の何れか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ピストン圧縮機に関する。
【0002】
より具体的には、限定ではないが、本発明は、高出力、例えば、30kWを超えて600kW以上の出力のピストン圧縮機に関する。
【背景技術】
【0003】
このようなピストン圧縮機は、例えば、極めて高い動作圧力、例えば、2000kPa以上でのガスの圧縮に使用される。
【0004】
一般的に知られているように、ピストン圧縮機は、圧縮チャンバーを有するハウジングを備えたピストン圧縮機要素を含み、ここでピストンは、回転モーターによって駆動されるドライブシャフトを用いて上死点と下死点との間で軸方向に前後に移動可能に配置され、クランク及びロッド機構の形で、及び場合によってはピストンと共に直線移動しピストンとクランク及びロッド機構との間に接続を形成する追加のピストンロッドの形で、このドライブシャフトとピストンとの間に運動学的トランスミッションが提供される。
【0005】
このような高いガス圧を実現するために、通常、多段ピストン圧縮機は、ガス入口及びガス出口を介して互いに直列に接続される前述のピストン圧縮機要素の2つ以上と共に使用され、ここでピストン圧縮機要素は、ジョイントドライブシャフトが支持されるハウジングの形態で接合部ドライブグループ上に取り付けられ、各ピストン圧縮機要素に接続されたクランク及びロッド機構、並びに場合によってはピストンとクランク及びロッド機構との間の接続のためのピストンロッドを備える。
【0006】
ドライブグループは、ほとんどの場合はベルトドライブを介して、ジョイントドライブシャフトを駆動するための単一の回転モーター、通常は電気モーターを備えている。このようなベルトドライブは、比較的安価であるという利点があるが、モーターの供給電力の最大で3~5%の比較的大きな電力損失の原因となるという欠点もある。
【0007】
言うまでもなく、ドライブグループは、モーターの全出力、従ってその全圧縮出力を処理するように設計する必要があるため、高出力のピストン圧縮機の場合には比較的重量があり嵩高となる。
【0008】
所要出力の関数として、このようなピストン圧縮機のコンストラクターは、それぞれが異なる出力を有する別個の一連のドライブグループを提供し、ここに圧縮ガスの供給可能な流量及び圧力の点でユーザの要求を満たすために、複数の標準化されたピストン圧縮機要素が取り付けられる。
【0009】
ドライブグループの選択肢が限定されることを考えると、中出力の場合、常にドライブグループがより高い出力の系統から選択する必要があるという欠点があり、これは明らかにより高価となり、また、例えば軸受の位置でより多くの損失をもたらすことになる。
【0010】
高い機械的力を考慮して、通常は、油膜軸受が使用され、これは、5~10%の電力損失の原因となる可能性がある。
【0011】
ドライブグループとピストン圧縮機要素の適切な組み合わせを選択する際の最も重要な制限要因は、クランク及びロッド機構の間の接続の機械的負荷、より具体的にはピストンロッドとクランク及びロッド機構との間、或いは、ピストンロッドがない場合は、ピストンとクランク及びロッド機構との間の連接部の臨界負荷であり、これは、ガス力及び慣性力の影響の結果である。
【0012】
この制限要因は、より高価な過大寸法のドライブグループ、又は流量及び圧力要件を満たすために、より高いコストで複数のドライブグループを適用するための選択をもたらす可能性がある。
【0013】
また、従来知られているのは、圧縮チャンバー内のガスを圧縮するために、電磁リニア作動によってピストンが前後に移動する用途である。しかしながら、この用途は低出力に限定されている。高出力の学術研究により、例えば、30kWの出力に対して400kgのピストンを備えた極めて重量があり嵩高の圧縮機につながった。
【0014】
更に、この用途では、圧縮ストロークの終了時にピストンのヘッドと圧縮チャンバーの端壁との衝突を防ぐために、広い安全マージンを備えた複雑な運動学的制御が必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明の目的は、上述及び/又は他の欠点のうちの1又は2以上についての解決策を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
この目的のために、本発明は、圧縮チャンバーを有するハウジングを備えた少なくとも1つのピストン圧縮器要素を含むピストン圧縮機であって、ピストンが、回転モーターによって駆動されるドライブシャフトを用いて上死点と下死点との間で軸方向に前後に移動可能に配置され、ピストンの1次ドライブにおいてこのドライブシャフトとピストンとの間に運動学的トランスミッションが提供され、ピストンは、電磁リニアドライブの形で相補的駆動部を備える、ピストン圧縮機に関する。
【0017】
クランク及びロッド機構による従来のドライブに加えて、ピストンはまた、回転モーターと組み合わせて第2の独立した方法で相補的に駆動されるので、従来のクランク及びロッド機構又は別の運動学的トランスミッションは、圧縮段階の適切なタイミングで、上死点の方向でピストンに相補的な電磁力を加えることにより、一時的に解放することができる。
【0018】
従って、運動学的トランスミッションとピストン、場合によってはそのピストンロッドとの間の機械的トランスミッションの臨界負荷は、回転モーターの1次ドライブ及びベルトドライブに対する相補的ドライブの分担率に応じて部分的となる可能性があり、従って、それほど重要ではなくなる。
【0019】
このことはまた、所望の流量及び所望の圧力を得るためのドライブグループ及びピストン圧縮機要素の最適且つ最も費用効果の高い組み合わせを決定するための設計の自由度を付加する。
【0020】
通常、これには、ピストンロッドを十分に解放するために、総出力要件の20~30%の相補的電磁出力注入を必要とする。
【0021】
本発明により、例えば、運動学的トランスミッションを断念することなく、相補的電磁ドライブの分担を、例えば総出力要件の80~90%にまで更に増加させることによって、更に一歩前進させることが今や可能である。
【0022】
相補的電磁ドライブの分担がより大きくなることに起因して、所与の所望の流量及び所与の所望の圧力に対して、より小さな、従ってより安価なドライブグループ及びモーターを選択することができ、その結果、軸受の損失を低減することができると共に、より安価で損失の少ない従来のボール軸受を選択することができる。
【0023】
モーターが小さいことに起因して、より軽量のベルトトランスミッションを使用でき、損失もより少なくなる。
【0024】
運動学的トランスミッションを維持することで、圧縮ストロークの終わりにピストンが上死点で圧縮チャンバーの端壁と衝突できなくなるリスクがなくなり、ピストンがこの端壁に極めて接近するまで移動でき、2つの間に最小限のヘッドルームが存在することが確保される。これは、ヘッドルームが小さいほど、圧縮チャンバー内のガスの有益な生成圧力が大きくなり、圧縮機の体積効率がより高くなるので、有用である。
【0025】
更に、最小限のヘッドルームを維持するために複雑な制御は必要ではなく、大きな安全マージンを考慮に入れる必要はない。
【0026】
相補的電磁ドライブは、圧縮チャンバーの周り又はこれに沿って1又は複数の電気コイルを介してピストンに直接電磁的影響を与える直接電磁ドライブを備えることができる。
【0027】
更に又は代替的に、相補的電磁ドライブは、ピストンの間接的電磁ドライブを備えることができ、ピストンに接続されて圧縮チャンバーの軸方向に平行に延びる、リニアガイド内でピストンと同期して前後に移動するプランジャーを有し、また、それぞれのプランジャーと誘導的に相互作用することができる、リニアガイドの周り又はこれに沿って配置された1つ又は複数のコイルを有する。
【0028】
ピストン圧縮機は、少なくとも2つの別個のピストン圧縮機要素を備えた多段圧縮機とすることができ、各要素は、圧縮チャンバー内で軸方向に前後に移動可能であり、ジョイントドライブシャフト及び回転モーターを用いて駆動されるピストンを有し、及びピストンを駆動するための別個の運動学的トランスミッションが、このドライブシャフトと少なくとも2つの別個のピストン圧縮機要素の各々との間に設けられ、ピストンの上記相補的なリニア電磁ドライブが、少なくとも2つのピストン圧縮機要素の各々に設けられている。
【0029】
本発明はまた、上記のようなピストン圧縮機が使用される方法に関する。
【0030】
本発明は、ピストンを備えたピストン圧縮機要素を用いてガスを圧縮する方法に関し、ピストンは、動作時には、回転モーターによって駆動される運動学的トランスミッションを用いて上死点と下死点との間で圧縮チャンバー内で軸方向に周期的に前後に移動し、ピストンは、ピストンの前後の移動期間の少なくとも一部の間に相補的な電磁リニアドライブを用いて更に駆動される。
【0031】
本発明の利点は、上述の通りである。
【0032】
好ましくは、ピストンは、少なくともピストンの圧縮ストローク段階の間、電磁的に駆動され、この間、圧縮チャンバー内の圧力が最も高くなる。
【0033】
好ましくは、圧縮ストロークの間又はその一部の間、所要の圧縮出力の少なくとも20~30%及び最大で80~90%が、相補的なリニア電磁ドライブによって供給され、残りは回転モーター(6)によって供給される。本発明の特徴をより良好に示すために、ピストン圧縮機及び本発明による方法の幾つかの実施例について、限定的な特徴なしに例示的な方法で添付図を参照して以下で説明する。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1】本発明によるピストン圧縮機の概略図である。
【
図2】本発明を使用していない、
図1のピストン圧縮機が使用されたときに作用する力のグラフを表す。
【
図3】本発明を使用した、
図1のピストン圧縮機が使用されたときに作用する力のグラフを表す。
【
図4】本発明によるピストン圧縮機の変形例を表す図である。
【
図5】
図4のピストン圧縮機の場合の
図3と同様のグラフを表す。
【
図6】本発明によるピストン圧縮機の異なる変形例を表す図である。
【
図7】
図6のピストン圧縮機の場合の
図5と同様のグラフを表す。
【
図8】本発明によるピストン圧縮機の他の実施形態を示す図である。
【
図9】本発明によるピストン圧縮機の他の実施形態を示す図である。
【
図10】本発明によるピストン圧縮機の他の実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
図1に示されるピストン圧縮機1は、ドライブグループ2と、これに取り付けられたピストン圧縮機要素3とを備える。
【0036】
ドライブグループ2は、ハウジング4を備え、ここでドライブシャフト5は、回転可能に支持され、ベルトトランスミッション7を介して電気回転モーター6を用いて駆動される。
【0037】
ピストン圧縮機要素3は、ドライブグループ2のハウジング4に取り付けられたハウジング8を備え、ピストン10が軸方向X-X’に前後に移動可能に配置されたシリンダマントル9を備え、マントルは一方の側が端壁11によって閉鎖されている。
【0038】
ピストンクラウン12、上述の端壁11、及びピストン圧縮機要素3のシリンダマントル9との間には、圧縮チャンバー13が、入口弁15とシール可能な入口14を介して、及び矢印Iで示されるように圧縮されるガスを吸引するため、及び矢印Oの方向に圧縮ストロークの終わりにガスを排出するための周囲を有する出口弁17とシール可能な出口16を介して一般に知られた方法で接続されて密閉される。
【0039】
圧縮ストローク中、ピストン10は、端壁11から端壁11の方向で最も離れたいわゆる下死点から、端壁11に最も近接したいわゆる上死点まで移動し、閉じた入口及び出口バルブ15及び17を用いて行う。
【0040】
上死点では、圧縮チャンバー13の容積、いわゆるデッドボリュームが最小であり、この時点での圧縮チャンバー13内のガスの圧力が最高である。
【0041】
ピストン10に接続されているのは、軸方向X-X’に延在し、ピストン圧縮機要素3のハウジング8とドライブグループ2のハウジング4との間にガスシールを形成するハウジングのシールガイド19内でピストン10と同期して前後に移動することができるピストンロッド18である。
【0042】
ピストンロッド18とドライブシャフト5との間には、ドライブシャフト5の回転運動をピストン10の前後移動に変換するため、運動学的トランスミッション20が設けられている。
【0043】
図1の場合、これは、ドライブシャフト5と共に回転する半径方向に配向されたクランク21と、クランクピン23を用いて一端がクランク21に枢動可能に取り付けられ、他端がピストンピン24を用いてピストン10又はピストンロッド18に枢動可能に取り付けられた取り付けドライブロッド22と、を備えたクランク及びロッド機構である。
【0044】
モーター6及び運動学的トランスミッション20を用いたピストンの1次ドライブに加えて、シリンダチャンバ13の周り又はこれに沿って配置された1又は複数の電気コイル26によって形成される電磁リニアドライブの形態のピストン10の相補的ドライブ25も存在し、コイルが、制御装置27によって励起された場合に、適切な磁気伝導材料において当該目的のために設計されたピストン10と誘導的に直接相互作用することができ、又は例えば1又は複数の永久磁石を備えていることは、本発明に特有のことである。
【0045】
代替的に、又は相補的に、ピストン10はまた、電磁材料で作られ又は永久磁石を備えたシリンダマントルと誘導的に相互作用することができるコイルを備えることができる。
【0046】
ピストン圧縮機の動作は、以下の通り簡単である。
【0047】
相補ドライブ25を励起することなく、ピストン圧縮機1の動作は、モーター6を用いてのみ主に駆動される従来のピストン圧縮機の動作と完全に類似している。
【0048】
この場合、ドライブシャフト5は、モーター6によって一方向に駆動されて、クランク21が回転運動状態になり、ピストン10が前後に移動するようになる。
【0049】
上死点から下死点への何れかの吸引ストロークでは、ガスは、入口14を介して圧縮チャンバー13内に吸引される、下死点から上死点への反対方向への何れかの移動では、入口バルブ15及び出口バルブ17が閉じられると、吸引されたガスが圧縮される。
【0050】
動作中、ピストンロッド18及びピストンピン24は、
図1に示すように、ガス力Fgと正弦波慣性力Fi及び実施可能な高調波の影響を受け、その瞬間的な値は、クランク21の枢動角Aの関数として
図2のグラフに示されている。言うまでもなく、ガス力Fgは、ピストン圧縮機1の所要の動作圧力に比例する。
【0051】
このグラフには、力FgとFiの合計である、ピストンロッド18及びピストンピン24に加わる合力Frも示されている。ピストン10の圧縮ストローク中、この合力は、ピストンロッド18が圧縮される圧縮力である。
【0052】
構成上、この合力は、ピストンロッド18の圧縮強度及び/又はピストンピン24及びその軸受の強度によって主に決定される特定の最大値Frmaxより高くないものとすることができる。
【0053】
図2の場合、相補ドライブがない場合、ピストン圧縮機1の特定の動作圧力に対応する強いガス力Fgが値Frmaxを超えることが確立されている。
【0054】
従って、相補的ドライブ25の励起がなければ、ピストン圧縮機1は、このようなガス圧力及び対応する動作圧力には好適ではなく、従って、ピストン圧縮機1は、より大きな型式及びより大きな出力を有するよう選択されるべきである。
【0055】
これを回避するために、本発明によれば、コイル26は、ピストン10の圧縮ストローク中に励起されて、ピストン10に反対の電気機械的牽引力Feを誘導することができ、これもまた、ピストンロッド18及びピストンピン24上に転置され、これにより、ピストンロッド18及びピストンピン22に対する圧力除去が確実に行われる。
【0056】
この牽引力Feは、
図2の合力Fg+Fiに加えられ、
図3のグラフに示すように、より低い合力Fg+Fi+Feとなり、ここではまた、相補的な誘導電気機械力Feに加えて
図2の力Fg+Fiも示されている。
【0057】
この場合、合力Fg+Fi+Feは、限界Frmax未満のままである。
【0058】
従って、相補的な電磁ドライブ25に起因して、動作圧力を制限することなく、より重量のあるピストン圧縮機1への切り替えを回避することができ、それぞれのピストン圧縮機1をより広い動作分野で使用することができるようになる。
【0059】
通常、これに対しては、所要の相補的な電磁電力の20%から30%の分担が推奨されることになる。
【0060】
コイルを励起するために、好ましくは圧縮ストローク又はその一部の間のみ、制御装置27は、クランク21の瞬間位置を決定するための手段、例えば角度Aを測定するためのプローブを備えている。
【0061】
図4は、本発明によるピストン圧縮機1の変形形態を示し、この場合、ピストン10は、シリンダマントル9の周りにコイル26のない従来のピストンであるが、ピストンの相補的ドライブ25は、ピストンロッド18に取り付けられた内部プランジャー29を用いて実現され、リニアガイド30又はエンクロージャ内で前後に移動可能に配置され、その周囲又はこれに沿って1又は複数のコイル26を有し、励起されたときに、それぞれのプランジャー29と誘導的に相互作用して、圧縮ストローク中にピストン10を間接的に電磁的に駆動することができる。
【0062】
ガイド30又はエンクロージャは、シリンダマントル9の軸方向延長部に配置されている。
【0063】
図4の場合、プランジャー29と電磁的に相互作用することができる2つのコイル26があり、これらのコイル26が励起されたときに、2つの独立した電磁力Fe1及びFe2が、
図5のグラフに示される進行に応じて生成することができる。
【0064】
図6は、
図4の実施形態に相当する本発明によるピストン圧縮機1の更に別の実施形態を示しているが、この場合、プランジャー29は、圧縮チャンバー13及び上述の端壁11を通って外部に延びる接続ロッド32を介してプランジャー29に電磁力を誘導するためのコイル26によって囲まれる外部リニアガイド31において外部に配置されているという差異があり、従って、その力は、ピストン10にも間接的に加えられる。
【0065】
更に、この場合、
図7のグラフに示されるように、圧縮段階中に加えられた電磁力のより良好な変調を可能にするために、3つのコイル26が設けられる。
【0066】
ピストン10の直接励起と、内部又は外部プランジャー29を介した間接励起との組み合わせも可能であることは明らかである。
【0067】
更に、ピストン10及び1又は2以上のプランジャー29をリニアモーターとして、より具体的にはリニアステップモーターとして実行することが可能である。
【0068】
本発明はまた、
図8の場合のように、ピストン10と運動学的トランスミッション20との間にピストンロッド18がないピストン圧縮機1にも適用可能であり、ここでピストン10は、ピストンピン24を用いてドライブロッド22に直接接続されており、電磁ドライブ25がピストン10の位置に配置されている。
【0069】
この場合、電磁ドライブ25を使用して、電磁出力の20~30%の分担でピストンピン24を解放することができる。
【0070】
例えば、80~90%の電磁力のより大きな分担は、このより大きな出力分担が、遙かに小さな出力のドライブグループ2及びモーター6を選択できるようにするという意味で、ピストンロッド18及び/又はピストンピン24の解放を引き起こし、追加の利点の実現につながる可能性があり、これによりスペース及びコスト節減をもたらし、更にベルトドライブ及び軸受33の損失の大幅な削減をもたらすことができ、例えば、高出力ピストン圧縮機で従来使用されていた油膜軸受の代わりにボール軸受に置き換えることができる。
【0071】
この場合、ピストンロッド18及びピストンピン24における力の制限のための支持と比較して、出力の最大分担が電磁ドライブ25によって供給される出力サポートについて述べることができ、このためより小さな分担、例えば電磁ドライブ25の20~30%で十分である。
【0072】
図9及び10は、ジョイントモーター6及びドライブシャフト5を備えたジョイントドライブグループ2にモジュール式に取り付けられた、2つ、それぞれ4つの別個のピストン圧縮機要素3を備えた本発明による多段圧縮機1である。
【0073】
個々のピストン圧縮機要素3ごとに、ピストン10を駆動するための個々の運動学的トランスミッション20が提供され、各ピストン圧縮機要素3について、上述の相補的リニア電磁ドライブ25が提供される。
【0074】
このような多段ピストン圧縮機を取得する場合、ユーザは、異なる出力の一連のドライブグループから選択されている。選択は、ユーザにより必要とされる動作圧力に大きく依存し、これにより、ピストンロッド18とピストンピン24が受けることになる負荷が最終的に決定される。
【0075】
ピストンロッド18及びピストンピン24を解放するために相補的な電磁支持体を使用することにより、最終的に、この電磁支持体なしで必要とされるものよりも小さい電力でこの系統からドライブグループの有利な選択が可能になる。
【0076】
本発明は、上記に記載され、図示されている実施形態に限定されない。むしろ、本発明によるピストン圧縮機は、本発明の範囲を超えることなく、異なる変形例で実現することができる。
【符号の説明】
【0077】
3 ピストン圧縮機要素
5 ドライブシャフト
6 回転モーター
8 ハウジング
10 ピストン
13 圧縮チャンバー
25 相補的ドライブ