(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-20
(45)【発行日】2022-09-29
(54)【発明の名称】シール材及び容器
(51)【国際特許分類】
A61J 1/18 20060101AFI20220921BHJP
A61J 1/05 20060101ALI20220921BHJP
A61J 1/10 20060101ALI20220921BHJP
B65D 51/24 20060101ALI20220921BHJP
B65D 51/00 20060101ALI20220921BHJP
B65D 75/58 20060101ALI20220921BHJP
B65D 55/02 20060101ALI20220921BHJP
【FI】
A61J1/18
A61J1/05 315Z
A61J1/10 335Z
B65D51/24 600
B65D51/00 100
B65D75/58
B65D55/02
(21)【出願番号】P 2017163768
(22)【出願日】2017-08-28
【審査請求日】2020-08-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000149435
【氏名又は名称】株式会社大塚製薬工場
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【氏名又は名称】清水 義憲
(72)【発明者】
【氏名】永田 泰士
(72)【発明者】
【氏名】尾崎 友紀
(72)【発明者】
【氏名】元木 佳孝
【審査官】今関 雅子
(56)【参考文献】
【文献】特開昭58-173548(JP,A)
【文献】特開2018-082757(JP,A)
【文献】特開2018-139752(JP,A)
【文献】特開平08-301322(JP,A)
【文献】特開平09-323377(JP,A)
【文献】特開2018-138083(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61J 1/00-19/06
B65D 55/02-55/14
B65D 50/00
B65D 51/00
B65D 75/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内容物を収容する容器本体の開口を被覆するシール材であって、
前記開口の周縁と剥離可能に接着するシーラント層と、該シーラント層の前記開口に対向する面とは反対の面側に形成された機能層とを有しており、
前記機能層は、針状物による穿刺及び/又はその後の抜針によって小片
となるように切込み又は目打ちが形成されており、
前記機能層の小片は、抜針の際に、前記針状物に付着して前記シーラント層から剥離可能である、シール材。
【請求項2】
前記開口は、前記容器本体に一端が接続された前記内容物の流出用のポートの他端に形成されたものである、請求項1記載のシール材。
【請求項3】
前記シーラント層に対向する面とは反対の前記機能層の面側に形成された保護層を備え、
前記機能層及び前記保護層は、針状物による穿刺及び/又はその後の抜針によって
小片となるように切込み又は目打ちが形成されており、
前記保護層が積層された状態の前記機能層の前記小片は、抜針の際に、前記針状物に付着して前記シーラント層から剥離可能である、請求項1または2記載のシール材。
【請求項4】
前記機能層には、前記小片を区画する格子状の
前記切込み又は
前記目打ちが形成されて
いる、請求項
1または2に記載のシール材。
【請求項5】
前記機能層及び前記保護層には、前記小片を区画する格子状の
前記切込み又は
前記目打ちが形成されて
いる、請求項
3に記載のシール材。
【請求項6】
内容物を収容する容器本体の開口をシール材で被覆した容器であって、
前記シール材は、請求項1~
5のいずれか一項に記載のシール材である、容器。
【請求項7】
内容物として薬剤を収容する容器本体と、該容器本体に一端が接続され前記薬剤を流出入させるポートとを備える容器であって、
前記ポートの他端には開口が形成されており、
前記ポートの他端は、請求項1~
5のいずれか一項に記載のシール材で被覆されている容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シール材及び容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、水・電解質の補給、栄養の補給、血管の確保、病態の治療等を目的として輸液が広く用いられている。輸液は、輸液バッグに収容して用いられるが、輸液バッグとしては、輸液を内包する容器本体と輸液排出用のポートとを有するものが一般的である。ポートの内部には、輸液の流出を防止するためのゴム栓等の封止体が配置されており、ポートの開口部はシール材で被覆され、輸液バッグの使用時にはシール材の少なくとも一部が剥離される。
【0003】
輸液がアミノ酸や特定の抗生物質を含有する場合、酸素の影響を受けやすいためポートは酸素の侵入を防御可能なものである必要があり、ある種の薬剤を含む輸液では、解離平衡を維持するために、封止体とシール材の間のポート内スペース(ヘッドスペース)を窒素ガスで置換することがある。輸液が特殊な組成でない場合であっても、ポート内の清浄のためにポートの開口部をシール材で覆うのが通常である。このように、輸液バッグにおいては、ポートをシール材で被覆することで密閉状態に保つ必要があり、密閉状態が損なわれたときにはそれを外部から検知する必要がある。
【0004】
密閉状態の検知が可能な輸液バッグとしては、例えば、ヘッドスペース内にガス検知体を配設し、密閉性が損なわれたときのガス検知体の反応を外部から目視で確認できるようにしたものが知られている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、ポートから輸液バッグ内部へ意図的な異物混入が行われた事件が発生しており、異物が混入されたことを、人体に処方する前に容易に検知可能にする必要性が高まっている。
【0007】
そこで、本発明の目的は、針状物等で容器のシール材を穿刺することで、容器本体に異物が混入された場合や異物を混入させる試みがされた場合であっても、容易にその事実を検知可能な手段を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、内容物を収容する容器本体の開口を被覆するシール材であって、上記開口の周縁と剥離可能に接着するシーラント層と、このシーラント層の上記開口に対向する面とは反対の面側に形成された機能層とを有しており、上記機能層は、針状物による穿刺及び/又はその後の抜針により、視認可能な欠陥及び/又は隣接する層からの剥離を生じる、シール材を提供する。
【0009】
本発明のシール材は上記構成を有することから、このシール材で開口部が被覆された容器について、シール材への穿刺で容器本体に異物が混入された場合や、異物を混入させる試みがされた場合であっても、機能層における視認可能な欠陥や隣接する層からの剥離により、容易にその事実を検知可能である。なお、視認可能な欠陥は、亀裂及び/又は小片化であり得る。
【0010】
上記開口部は、上記容器に一端が接続された上記内容物の流出用のポートの他端に形成されたものであってもよい。すなわち、本発明は、薬剤を収容する容器本体に一端が接続された上記薬剤の流出入用のポートの、他端を被覆するシール材であって、上記他端と剥離可能に接着するシーラント層と、このシーラント層の上記ポートと接する面とは反対の面上に形成された機能層とを有しており、上記機能層は、針状物による穿刺及び/又はその後の抜針により、視認可能な欠陥及び/又は隣接する層からの剥離を生じる、シール材を提供する。
【0011】
上記シール材によれば、針状物等で薬剤容器のシール材を穿刺することで、ポートから容器本体に異物が混入された場合や異物を混入させる試みがされた場合であっても、容易にその事実を検知可能となる。意図的に異物を混入させようとする者は、異物混入の痕跡を消そうとするために、容器本体を直接穿刺するのではなく、ポート側から容器本体へ異物を混入させる。すなわち、容器本体をニードル等の針状物で穿刺した場合、抜針後に薬剤が漏れ出すことから、ポートにシール材が貼り付けられた状態のまま、針状物をシール材及び封止体(ゴム栓)に突き刺して貫通させ、容器本体内部へ異物を混入させた後抜針する。抜針の結果生じた穿孔のサイズが小さかったり目立たなかった場合には、医療関係者は、シール材が貼られたままであるため未使用であると誤解して、そのまま使用してしまう可能性がある。
【0012】
本発明のシール材は、針状物による穿刺やその後の抜針により、機能層に視認可能な欠陥や隣接する層からの剥離が生じるため、ポートから容器本体に異物が混入されたことや、異物を混入させる試みがされたことが明らかとなり、異常が生じていることが容易に視認できる。
【0013】
上記シール材においては、上記シーラント層と接する面とは反対の上記機能層の面側に、保護層を備え、上記機能層及び上記保護層は、針状物による穿刺及び/又はその後の抜針により、視認可能な欠陥及び/又は隣接する層からの剥離を生じるようにしてもよい。
【0014】
機能層としては、欠陥や層剥離の生じやすいものを使用しているため、これが露出していると、異物混入目的の針状物以外のものと接触したときに、欠陥や層剥離が生じてしまうことも考えられるため、機能層を保護層で被覆することで想定外の欠陥や層剥離が生じることを防止でき、異物が混入されたこと、或いは異物を混入させる試みがされたことを確実に検出できる。
【0015】
剥離は、上記シーラント層と上記機能層との間で生じるように構成することが可能である。シール材がシーラント層と機能層のみを有するときは、両層の間で剥離が生じるが、シール材がこれらの層に加えて保護層を有する場合は、剥離はシーラント層と機能層との間で生じても、機能層と保護層との間で生じても、これらが同時に起こってもよい。しかし、上記のように保護層を機能層における想定外の欠陥や層剥離の防止に役立たせるためには、これらの層の間で剥離が生じるよりも、シーラント層と機能層との間で生じさせることが好ましい。
【0016】
剥離は、剥離する層の一部又は全部で生じるようにすることができる。シール材がシーラント層と機能層のみからなる場合は、針状物による穿刺やその後の抜針により、機能層全体が剥離するように層間の積層強度を調整することもできる。また、層間強度を部分的に相違させること等により、機能層の一部だけが剥離するようにすることもできる。シール材がシーラント層、機能層、保護層を有する場合は、保護層のみが層の一部又は全部で剥離するか、機能層と保護層の2層が一体となって剥離する。後者の場合、機能層と保護層の2層の全体が剥離しても、機能層と保護層の2層の一部だけが剥離してもよい。
【0017】
シール材においては、機能層及び/又は保護層には、切込み又は目打ちが形成されており、視認可能な欠陥及び/又は隣接する層からの剥離は、この切込み又は目打ちに沿って生じることが好ましい。機能層や保護層に切込みを入れるか、目打ち(連続した細孔)を機能層に形成させると、針状物による穿刺やその後の抜針により、これらに沿って容易に亀裂や小片化が生じたり、剥離したりするため、異物が混入されたこと、異物を混入させる試みがされたことの検出がより確実になる。
【0018】
本発明は上述したシール材の他、容器も提供する。すなわち、本発明は、内容物を収容する容器本体の開口部をシール材で被覆した容器であって、上記シール材は、上述したシールである容器を提供する。本発明はまた、内容物として薬剤を収容する容器本体と、この容器本体に一端が接続され上記薬剤を流出入させるポートとを備える容器であって、上記ポートの他端は、上述したシール材で被覆されている容器(「薬剤容器」に相当する。)を提供する。
【0019】
すなわち、本発明のシール材は、バイアル瓶等の薬剤容器、及びゼリー、豆腐、インスタントコーヒーのビン、サプリメントボトル等の食品容器の開口を封止するものとしても適用できる。
【0020】
これらの容器は、本発明のシール材で開口が被覆されていることから、開口から容器本体に異物が混入された場合や異物を混入させる試みがされた場合に、層の欠陥や層剥離が生じることから、その事実を目視により容易に検出することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、針状物等で容器のシール材を穿刺することで、容器本体に異物が混入された場合や異物を混入させる試みがされた場合であっても、容易にその事実を検知可能な手段を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図4】ポートからニードルによる穿刺が行われたところを示す断面図である。
【
図5】第1実施形態のシール材からニードルの抜針が行われたところを示す断面図である。
【
図6】(a)は切込みを設けたシール材の上面図、(b)は層を貫通しないように切込みを設けた場合の断面図、(c)は層を貫通するように切込みを設けた場合の断面図である。
【
図7】第2実施形態のシール材からニードルの抜針が行われたところを示す断面図である。
【
図9】第3実施形態のシール材からニードルの抜針が行われたところを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態について詳細に説明する。本説明において、同一要素には同一符号を用いることとし、重複する説明は省略する。また、各図面の寸法比率は、必ずしも実際の寸法比率とは一致していない。
【0024】
図1は、容器本体とシール材で被覆されたポートとを備える容器(後述のように第1実施形態の薬剤容器に該当する。)の上面図であり、
図2は
図1のAで示される部分の断面図である。
図1に示す薬剤容器30は、薬剤32を収容する容器本体34と、容器本体34に一端が接続されたポート20と、ポート20の他端を被覆するシール材1とを備えている。ポート20は筒状部22と口部24とから構成されており、
図2に示すようにポート20の内部には、薬剤32の流出を防止するための封止体26が配置されている。
【0025】
図3は第1実施形態のシール材の断面図である。
図3に示すシール材1は、ポート20の他端と剥離可能に接着されるシーラント層16と、シーラント層16のポート20に対向する面とは反対の面上に形成された機能層17とを有している。なお、シーラント層16と機能層17とは弱シール(弱い接着強度)で接着していることが好ましく、層間には、弱シールのための接着剤又は粘着剤からなる接着剤層を有していてもよい。
【0026】
図4は、ポート20からニードルによる穿刺が行われたところを示す断面図である。
図4においては、シリンジ本体44とニードル46とから構成されるシリンジ40の内部に異物42が導入され、これを用いて異物42を混入させているところが示されている。ニードル46は、封止体26、シーラント層16及び機能層17を貫通しており、容器本体34の内部に異物42が混入されている。ニードル46によるシール材1への穿刺により、シール材1の平面で部分的な圧力が印加され、これによりシール材1内に応力が発生し、シール材1の平面的な応力により機能層17が破断小片化し、またシール材1の断面方向の応力が弱シールの強度に勝ることにより剥離が発生する。この小片化した機能層17は、ニードル46の抜針の後でもシーラント層16上に残るか、抜針に従ってシーラント層16上から除去される。このような状況は抜針後に視認することができることから、異物混入がなされたことが検出可能となる。
【0027】
図5は、抜針に際して機能層の剥離が生じたところを示す断面図である。
図5においては、ニードル46が、封止体26、シーラント層16及び機能層17を貫通して、容器本体34の内部に異物42が導入された後に、抜針されたところが示されている。ニードル46の抜針に伴って、小片化した機能層17がシーラント層16から剥離し、ニードル46に付着して除去されている。シール材1から小片化した機能層17が除去されたことは抜針後に視認することができることから、異物混入がなされたことが容易に検出可能となる。なお、抜針後に小片化した機能層17が剥離・除去されない場合であっても、機能層に発生する亀裂又は小片化は視認可能であり、異物混入がなされたことが容易に検出可能である。
【0028】
図4及び
図5に示すように第1実施形態のシール材1が用いられる場合、機能層17に、格子状等の切込みを層の厚さ方向に設けるか、格子状等の目打ち(連続した細孔)を設けることが好ましい。このような構造にすることで、針状物による穿刺又は抜針に伴って、切込みや目打ちに沿って機能層17が容易に切り離されるようになる。なお、切込みや目打ちは、機能層17及びシーラント層16の少なくとも一方に設けるようにしてもよい。
【0029】
図6は、第1実施形態のシール材1の機能層17に切込みを設けたものを示しており、(a)は切込みを設けたシール材の上面図、(b)は層を貫通しないように切込みを設けた場合の断面図、(c)は層を貫通するように切込みを設けた場合の断面図である。
図6(a)に示すシール材においては、機能層17に切込み62が格子状に設けられている。
図6(a)では、切込み62は、機能層17のシーラント層16と接する面と反対の面側(上面側)から形成されているが、切込み62はシーラント層16側から層を貫通しないように設けてもよい。なお、層を貫通しない切込みと貫通する切込みは混在していてもよく、この場合において、層を貫通しない上面側から設けた切込みと、層を貫通しない下面側から設けた切込みとが混在していてもよい。なお、上記はシーラント層16に切込みを設けた場合にも相当する。
【0030】
図5においては、機能層17の一部が剥離されているが、剥離は機能層17の全部で生じてもよい。機能層17全部で剥離が生じるシール材は、第2実施形態のシール材であり、このシール材は、シーラント層16と、シーラント層16に対して全体が剥離可能に積層された機能層17とから構成される。
図7は、第2実施形態のシール材において、機能層17全体が剥離しているところを示す断面図である。
図7においては、封止体26、シーラント層16及び機能層17を貫通したニードル46により、異物42が容器本体34内部に混入された後に、ニードル46を抜針したところが示されている。この場合において、ニードル46によるシール材1への穿刺及び抜針により、シーラント層16と機能層17との間に剥離が生じ、抜針に従ってシーラント層16上から全体が除去される。このような状況は抜針後に視認することができることから、異物混入がなされたことが検出可能となる。なお、第2実施形態のシール材においては、機能層17に切込みや目打ちを設けない方が好ましい。
【0031】
図8は、第3実施形態のシール材の断面図である。
図8に示すシール材1はシーラント層16、機能層17及び保護層14がこの順で積層されており、第1実施形態の機能層17上に保護層14が形成された構造を有している。なお、シーラント層16と機能層17とは弱シール(弱い接着強度)で接着していることが好ましく、機能層17と保護層14とは弱シールで接着していても強シール(強い接着強度)で接着していてもよい。シーラント層16と機能層17との接着は、接着剤等を用いず、互いに離間性が高い異なる材料のフィルムを熱圧着する等の方法で実現されることが好ましい。
【0032】
図8に示す第3実施形態のシール材においては、シーラント層16、機能層17及び保護層14のうち少なくとも1層に切込み又は目打ちを形成してもよい。このような構造にすることで、針状物による穿刺又は抜針に伴って、切込みや目打ちに沿って機能層17が容易に切り離される。切込みは層を貫通するものであっても貫通しないものであってもよい。後者の場合、切込みは、シール材1の、ポート20と対向する面とは反対側の面側(上面側)から設けても、ポート20と対向する面側(下面側)から設けてもよい。シーラント層16、機能層17及び保護層14のうち少なくとも1層に切込みを設ける場合において、切込みは層を貫通するものと貫通しないものとが混在していてもよい。層を貫通しない場合は、各層の上面側から形成されたものと下面側から形成されたものが混在していてもよい。
【0033】
図9は、抜針に際して機能層及び保護層の剥離が生じたところを示す断面図である。
図9においては、ニードル46が、封止体26、シーラント層16、機能層17及び保護層14を貫通して、容器本体34の内部に異物42が導入された後に、抜針されたところが示されている。ニードル46の抜針に伴って、小片化した機能層17及び保護層14がシーラント層16から剥離し、ニードル46に付着して除去されている。シール材1から小片化した機能層17及び保護層14が除去されたことは抜針後に視認することができることから、異物混入がなされたことが容易に検出可能となる。
【0034】
第1及び第2実施形態のシール材1において、シーラント層16は、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン等の高分子物質で形成させることができ、機能層17は、例えば、セルロース、紙、ポリエチレンテレフタレート、ナイロン、ポリプロピレン等で形成させることができる。
【0035】
第3実施形態のシール材1において、シーラント層16は、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン等の高分子物質で形成させることができる。例えばシーラント層にポリエチレンを用いた場合は、機能層17としてはポリエチレンと熱圧着等で接着し互いに離間性が高いナイロン、環状ポリオレフィン、メチルペンテンポリマー、ポリエチレンテレフタレート等を選択できる。保護層14は、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ナイロン等の高分子物質で形成させることができる。なお、保護層14は単層であっても、複数の層からなる積層体であってもよい。
【0036】
第1及び第2実施形態のシール材は、シール材を構成する各層を個別に製造しておき、接着剤層等を介し貼り合わせる等の公知の技術によって製造可能である。
【0037】
第3実施形態のシール材は、シーラント層の材料と機能層との材料との共押し出し形成することにより製造できる他、シール材を構成する各層を個別に製造しておき、全体を熱ラミネートする等の公知の技術によっても製造可能である。
【0038】
上述したシール材を用いて薬剤容器を提供することができる。
図1は、そのような薬剤容器を示す上面図である。
図1に示す第1実施形態の薬剤容器30は、薬剤32を収容する容器本体34と、容器本体34に一端が接続され薬剤32を流出入させるポート20とを備え、ポート20の他端は、実施形態のシール材1で被覆されている。なお、ポート20はその内部に、薬剤32の流出を防止する封止体26を備えている。第1実施形態の薬剤容器30は、薬剤32を収容する収容部(薬剤収容部)が1つであるため、単室バッグに相当する。
【0039】
図10は、第2実施形態の容器(薬剤容器30)を示す上面図である。
図10に示す薬剤容器30は、薬剤を収容する収容部(薬剤収容部)を2つにしたこと、すなわち、ポート20側の第1薬剤収容部に第1薬剤32aを、ポート20から離れた側の第2薬剤収容部に第2薬剤32bを収容させたこと以外は、第1実施形態の薬剤容器と同様の構成を有する。第1薬剤収容部と第2薬剤収容部の間は、易剥離性を有する弱シール部36で仕切られており、薬剤容器30の使用の直前に弱シール部36を剥離して、第1薬剤32aと第2薬剤32bとを混合させる。なお、薬剤収容部を3以上にしたものであっても、実施形態のシール材1を適用可能である。
【0040】
第1及び第2実施形態の薬剤容器において、容器本体34に収容される、薬剤32、第1薬剤32a、第2薬剤32bとしては、電解質液(生理食塩水、リンゲル液)、ブドウ糖液、アミノ酸液、ビタミン液、微量元素液等が挙げられる。薬剤は、液状であっても非液状(固形状等)であってもよい。
【0041】
容器本体34は、耐熱性、シール強度、透明性、不透湿性、柔軟性等に優れる高分子フィルムで構成させることができ、この高分子フィルムは上記性能向上のため積層体であってもよい。高分子フィルムに用いられる高分子としては、オレフィンの単独又は共重合体、オレフィンとオレフィン以外のエチレン性不飽和結合を有する化合物との共重合体、オレフィン以外のエチレン性不飽和結合を有する化合物の単独又は共重合体が挙げられる。オレフィン共重合体の例としては、エチレン・α-オレフィン共重合体があり、異なる密度を有するエチレン・α-オレフィン共重合体を複数積層した積層体で容器本体34を構成することも可能である。
【0042】
ポート20は、口部24と、口部24の一端に嵌め込まれた筒状部22と、筒状部22内部に密着して配置され薬剤32の流出を防止する封止体26とから構成される。口部24の他端は開口を覆うようにシール材1で被覆される。筒状部22は容器本体34と隙間なく接着(密着接合)されるが、筒状部22を構成する部材と容器本体34を構成する最内層とを同一の樹脂として、ヒートシール等により密着接合することが好ましい。
【0043】
ポート20は、筒状部22の上部に封止体26を挿入した後に、加熱した治具を用いて封止体26に対して口部24をプレスして被嵌させることで製造できる。また、シール材1の口部24への接着は、ヒートシール又は接着剤塗布による接着で実現可能である。
【0044】
第1実施形態の薬剤容器30の製造方法としては、以下の方法がある。すなわち、容器本体34を構成する1組の高分子フィルムについて、ポート20が挿入される辺以外の3辺の周縁部をヒートシールする。次いで、筒状部22をヒートシールされていない箇所に挿入した後に、筒状部22と高分子フィルムとをヒートシールして隙間なく接着させる。筒状部22を通して薬剤32を容器本体34内部に充填し、筒状部22の上部に封止体26を挿入した後に、加熱した治具を用いて封止体26に対して口部24をプレスして被嵌させる。次いで、シール材1を口部24にヒートシールするか接着剤塗布で接着する。
【0045】
第1実施形態の薬剤容器30の他の製造方法としては、以下の方法がある。すなわち、筒状部22を、容器本体34を構成する1組の高分子フィルムで挟み、ヒートシールで隙間なく接着させる。次いで、筒状部22の上部に封止体26を挿入した後に、加熱した治具を用いて封止体26に対して口部24をプレスして被嵌させ、シール材1を口部24にヒートシールするか接着剤塗布で接着する。これと同時又はこの後に、ポート20が挿入されていない1辺を残して、残りの3辺の周縁部をヒートシールする。ヒートシールされていない1辺から薬剤32を容器本体34内部に充填し、その後、この辺をヒートシールする。
【0046】
実施形態の薬剤容器30は、シール材1でポート20が被覆されていることから、ポート20から容器本体34内部に異物が混入された場合や異物を混入させる試みがされた場合に、機能層に視認可能な欠陥や隣接する層からの剥離が生じるため、異物が混入されたか混入させる試みがされた薬剤容器30を正常品と誤認して使用することがなくなる。
【符号の説明】
【0047】
1…シール材、14…保護層、16…シーラント層、17…機能層、20…ポート、22…筒状部、24…口部、26…封止体、30…薬剤容器、32…薬剤、32a…第1薬剤、32b…第2薬剤、34…容器本体、36…弱シール部、40…シリンジ、42…異物、44…シリンジ本体、46…ニードル、62…切込み。