IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ オカ株式会社の特許一覧

特許7144038立体型便座クッションおよびその製造方法
<>
  • 特許-立体型便座クッションおよびその製造方法 図1
  • 特許-立体型便座クッションおよびその製造方法 図2
  • 特許-立体型便座クッションおよびその製造方法 図3
  • 特許-立体型便座クッションおよびその製造方法 図4
  • 特許-立体型便座クッションおよびその製造方法 図5
  • 特許-立体型便座クッションおよびその製造方法 図6
  • 特許-立体型便座クッションおよびその製造方法 図7
  • 特許-立体型便座クッションおよびその製造方法 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-20
(45)【発行日】2022-09-29
(54)【発明の名称】立体型便座クッションおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   A47K 13/14 20060101AFI20220921BHJP
【FI】
A47K13/14
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018148225
(22)【出願日】2018-08-07
(65)【公開番号】P2020022599
(43)【公開日】2020-02-13
【審査請求日】2021-03-24
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】591205684
【氏名又は名称】オカ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087815
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 昭二
(72)【発明者】
【氏名】小川 正貢
【審査官】神尾 寧
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-131073(JP,A)
【文献】登録実用新案第3212226(JP,U)
【文献】登録実用新案第3178688(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2012/0131740(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47K 13/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
便座に装着して用いる、対称的な左右一対の本体を有する便座クッション(1)であり、
各便座クッション(1)は、前記便座の立体形状に沿うようにかぶせて取り付けられる立体的な形状であり、
前記便座クッション(1)の裏面に滑り止め用の固定部(3)が取り付けられており、
前記便座クッション(1)の裏面と前記固定部(3)の間に部分的に非固定部分(35)が設けられている
ことを特徴とする便座クッション。
【請求項2】
前記各便座クッション(1)は、平面状にして計測したとき、Hが380mm~450mm、Wが170mm~210mm、W1が100 mm~140mm、W2が110 mm~140mm、W3が100 mm~130mmであり、ここで、Hは前記便座クッション(1)の縦方向の長さ、Wは前記便座クッション(1)の横方向の長さ、W1は便座の0点から前方へ100mm地点(a)における前記便座クッション(1)の幅方向長さ、W2は前記便座の0点から前方へ200mm地点(b)における前記便座クッション(1)の幅方向長さ、W3は前記便座の中央線より平行に40mmずらした地点(c)における前記便座クッション(1)の幅方向長さであり、0点は便座中心線と便座中央開口が交差する後方側である、請求項1記載の便座クッション。
【請求項3】
便座に装着して用いる、対称的な左右一対の本体を有する便座クッション(1)であって、各便座クッション(1)は、前記便座の立体形状に沿うようにかぶせて取り付けられる立体的な形状であるものを製造する方法であって、
(a)表布(6)にスポンジ層(7)を貼りあわせる工程と、
(b)不織布層(8)を貼りあわせる工程であって、ここで使用する不織布層(8)は、不織布にホットメルト綿を混紡したものである工程と、
(c)便座クッションの形状に打ち抜く工程と、
(d)前記打ち抜かれた便座クッションに縁取りする工程と、
(e)前記縁取られた便座クッションを便座形状の型に合わせて加熱成形を行う工程を有する
ことを特徴とする、便座クッションの製造方法。
【請求項4】
前記不織布と前記ホットメルト綿の混紡比率は30~50重量%:70~50重量%である請求項記載の方法。
【請求項5】
前記加熱成形工程を、100~160℃で30秒~3分行う請求項3又は4記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洋式便器の便座の上部を被覆する立体型の便座クッションおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、合成樹脂製の便座に直接座ったときの冷たい感触を避けるため便座を覆うカバーが用いられてきた。
【0003】
近年は便座表面に貼り付けて使用する一対の三日月形の基布タイプのカバーが主流である。これは「便座シート」と呼ばれることが多い。便座シートを便座表面に貼り付ける方法としては、自己粘着性を有する樹脂を基布に積層する方法(例:特開2002-233476)が一般的である。便座シートは、洗濯や取り付けが容易である等の利点があるが、平面的であるためシートの縁部において人体と便座とが直接接触してしまうことがあるのを避けられず、十分満足できるものではなかった。
【0004】
この問題を解決するために、本出願人は、太腿と便座が接触する範囲を覆い、なおかつ洗浄ノズルの動作の妨げとならない程度に、十分な大きさと形状を有する、新規な構造の便座シートを提案し(特開2015―131073)、「便座クッション」と名付けた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2002-233476
【文献】特開2015―131073
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特開2015―131073の製品は好評を博しているが、本発明者はさらに便座への取付を容易にすると共に製造コストを削減することを考えた。これらの改良は便座クッションと便座を結びつける取付紐をなくすことで達成可能であることを発見し、本発明に到達した。
【0007】
すなわち、本発明は、太腿と便座が接触する範囲が実質的にカバーされると共に、便座クッションを便座に結びつける取付紐がなくても便座にしっかりと固定されるような便座クッションを提供することを目的とする。本発明はまたそのような便座クッションの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、便座に装着して用いる、対称的な左右一対の本体を有する便座クッションであり、各便座クッションは、前記便座の立体形状に沿うようにかぶせて取り付けられる立体的な形状であることを特徴とする(請求項1)。前記各便座クッションは、平面状にして計測したとき、Hが380mm~450mm、Wが170mm~210mm、W1が100 mm~140mm、W2が110 mm~140mm、W3が100 mm~130mmであり、ここで、Hは前記便座クッションの縦方向の長さ、Wは前記便座クッションの横方向の長さ、W1は便座の0点から前方へ100mm地点(a)における前記便座クッションの幅方向長さ、W2は前記便座の0点から前方へ200mm地点(b)における前記便座クッションの幅方向長さ、W3は前記便座の中央線より平行に40mmずらした地点(c)における前記便座クッションの幅方向長さであり、0点は便座中心線と便座中央開口が交差する後方側である(請求項2)。
【0009】
さらに好ましくは、便座クッションの位置がずれたりせずに安定的に取り付けられるように便座クッションの裏面に滑り止め用の固定部を取り付けることである(請求項3)。
【0010】
さらに好ましくは、さまざまな便座メーカーの便座と適合させるために、前記便座クッションの裏面と前記固定部の間に部分的に非固定部分が設けられていることである(請求項4)

【0011】
本発明の便座クッションの製造方法は、(a)表布にスポンジ層を貼りあわせる工程と、(b)不織布層を貼りあわせる工程であって、ここで使用する不織布層は、不織布にホットメルト綿を混紡したものである工程と、(c)便座クッションの形状に打ち抜く工程と、(d)前記打ち抜かれた便座クッションに縁取りする工程と、(e)前記縁どられた便座クッションを便座形状の型に合わせて加熱成形を行う工程を有することを特徴とする(請求項5)。
【0012】
好ましくは、前記不織布と前記ホットメルト綿の混紡比率は30~50重量%:70~50重量%である(請求項6)。
【0013】
また好ましくは、前記加熱工程を、100~160℃で30秒~3分行う(請求項7)。
【発明の効果】
【0014】
本発明の請求項1の便座クッションは立体的であり、便座クッションを便座に結びつける取付紐がなくても便座としっかりと固定される。
【0015】
本発明の請求項2の便座クッションは、太腿と便座が接触する範囲が実質的にカバーされる大きさと形状を有するものであり、請求項1の効果に加えて、便座に直接座ったときの冷たい感触を避けることができる。
【0016】
本発明の請求項5~7の方法によれば、前記するような立体的な便座クッションが得られる。
【0017】
以下、添付の図面に基づいて、本発明の実施例を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の1実施例に係る便座クッションを便座に装着した状態の斜視図である。
図2】同便座クッションの(a)正面図、(b)左側面図、(c)平面図、(d)右側面図、(e)背面図、(f)底面図である。
図3図2(c)の矢視断面図である。
図4図2(f)の矢視拡大図である。
図5図4の矢視断面図である。
図6】同便座クッションの寸法計測基準を示す便座クッション平面図である。
図7】(a)(b)は同便座クッションの製造過程を示す斜視図である。
図8】(a)~(c)は同便座クッションの製造過程を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1に示すように、この便座クッション1は左右対称で一対になったものであり、便器4上端の便座5の上に取り付けて使用する。洗浄ノズル(図示せず)の動作の妨げとならないように配置する。
【0020】
図2~5に示すように、便座クッション1は変形三日月状の本体2と、便座に装着するための固定部3からなる。図2各図からはっきり見て取れるように、この便座クッション1は立体的であり、便座5の立体形状に沿うようにこれにかぶせて取り付けられる。
【0021】
本体2の大きさは、図6に示すように、平面状にして計測したとき、Hが380mm~450mm、Wが170mm~210mm、W1が100 mm~140mm、W2が110 mm~140mm、W3が100 mm~130mmである。ここで、Hは前記便座クッション1の縦方向の長さ、Wは前記便座クッション1の横方向の長さ、W1は便座の0点から前方へ100mm地点(a)における前記便座クッション1の幅方向長さ、W2は前記便座の0点から前方へ200mm地点(b)における前記便座クッション1の幅方向長さ、W3は前記便座の中央線より平行に40mmずらした地点(c)における前記便座クッション1の幅方向長さであり、0点は便座中心線と便座中央開口が交差する後方側である。この大きさは、便座メーカーが過去に販売し、または本願出願時に販売している各種便座及びその同等物において、少なくとも太腿と便座5が接触する範囲を覆うのに十分な大きさと形状である。その根拠については、本出願人の特開2015―131073の明細書[0009]~[0014]を参照されたい。
【0022】
本体2の裏面には、図2(f)、図4図5に示すような滑り止め用の固定部3であるゴムベルトが2個所設けられている。固定部3は、便座クッション1側から外側に向かって順に、接着剤層31、基布層32、吸着材層33、離型紙層34からなる。
【0023】
図5に示したように、固定部3の中央部35は接着剤層により便座クッション本体2と接着されていない非固定部分となっている。これは複数の便座メーカーにより製造される便座の形状が微妙に相違するのに対応するためのものである。すなわち、中央部35が接着剤層により便座クッション本体2と密着していると、あるメーカーの製品には適合するが、別のメーカーの製品では密着性が悪く、吸着面が確保できずに十分な固定力が得られない、というような事態を避けるためである。
【0024】
この立体的な便座クッション1は次のようにして製造される。
【0025】
まず、図7に示すように、表布6にスポンジ層7を貼りあわせ(a)、続いて不織布層8を貼りあわせる(b)。
【0026】
本体2の表布6は、人体に直接接触する部分であるから、不快感を与えないよう、パイル地やシャーリング加工したものであることが好ましい。図3において符号61は表布6のバッキング層である。
【0027】
スポンジ層7のスポンジとしては、例えば、ポリウレタンスポンジ、ポリエチレンスポンジ、クロロプレンラバー等を用いることができる。スポンジ層7の厚みは1~10mm程度が適当である。
【0028】
不織布層8は、不織布(例えば、ポリエステル)にホットメルト綿(例えば、低融点ポリエチレンを鞘成分とした低温熱接着用原綿)を混紡して、PP(ポリプロピレン)シート(図示せず)とともにパンチングしたものである。不織布とホットメルト綿の混紡比率は30~50重量%:70~50重量%である。最も好ましいのは、混紡比率50:50重量%であり、ホットメルト綿の目つきが約400g/mであることである。
【0029】
続いて、図7(b)に二点鎖線で示す位置で打ち抜きを行い、図8(a)に示すような平面状の材料9を得る。この平面材料9に対して図8(b)に示すような縁取り21を施すとともに、便座形状の型(図示せず)に合わせて加熱成形を行う。このとき使用する型は複数の便座メーカーの便座を産業用X線CTでスキャンして3Dデータ化したうえで合成して制作したものである。加熱は、前記不織布層8が立体成型物となる条件で行う必要があり、100~160℃、より好ましくは130~150℃で30秒~3分、より好ましくは1~2分、行うのが適当である。最も好ましいのは、約150℃で約1分行うことである。
【0030】
このようにして、図7(b)に示すような立体的な便座クッション1が得られる。その後、前記したような裏面の固定部3を取り付けて完成させる。
【0031】
実験してみたところ、この下記実施例の便座クッションは、約50回の洗濯にも耐えて、立体形状を維持し続け、縮みも発生しないことが分かった。さらに取付紐を使用しないことにより、コストダウンを図ることができた。
【符号の説明】
【0032】
1 便座クッション
2 本体
21 縁取り部
3 固定部
31 接着剤層
32 基布層
33 吸着材層
34 離型紙層
35 中央部(非固定部分)
4 便器
5 便座
6 表布
7 スポンジ層
8 不織布層
9 平面材料

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8