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  • 特許-検査装置及び検査方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-20
(45)【発行日】2022-09-29
(54)【発明の名称】検査装置及び検査方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/89 20060101AFI20220921BHJP
【FI】
G01N21/89 Z
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018166523
(22)【出願日】2018-09-06
(65)【公開番号】P2020038177
(43)【公開日】2020-03-12
【審査請求日】2021-06-21
(73)【特許権者】
【識別番号】305021650
【氏名又は名称】株式会社近藤研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100135460
【弁理士】
【氏名又は名称】岩田 康利
(74)【代理人】
【識別番号】100084043
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 喜多男
(74)【代理人】
【識別番号】100142240
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 優
(72)【発明者】
【氏名】近藤 健人
【審査官】赤木 貴則
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-204899(JP,A)
【文献】国際公開第2017/134710(WO,A1)
【文献】特開2010-181254(JP,A)
【文献】特開昭58-053740(JP,A)
【文献】特開昭61-151409(JP,A)
【文献】特開平04-188051(JP,A)
【文献】特開平11-211442(JP,A)
【文献】国際公開第03/069182(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/84-G01N 21/958
G01B 11/00-G01B 11/30
G01M 13/00-G01M 13/045
G01M 99/00
F16D 49/00-F16D 71/04
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
中央部に中央空隙部を有し、当該中央空隙部に連続し、かつ当該中央空隙部から外周に向かって放射状に複数の通路部が設けられて前記通路部が外周面に開放されている本体部を主体とするワークに対して、前記通路部内が適正形状であるか否かを検査する検査装置であって、
前記ワークを所定の検査位置に固定する固定部と、
前記固定部によって前記検査位置に固定された前記ワークの前記中央空隙部に位置する発光部と、
前記検査位置に固定された前記ワークの前記外周面の外側に配されており、前記発光部から発せられて各通路部を通過した光が、すべての前記通路部において照射されることとなるリング状の照射面部と、
を備え、
前記照射面部に映し出されたすべての前記通路部における光のパターンに基づいて前記通路部内が適正形状であるか否かを検査するものであり、
さらに、
前記照射面部の全周が撮影可能であって前記照射面部に映し出された光のパターンの映像が入力される光パターン入力手段としてのカメラと、
前記光パターン入力手段としての前記カメラに入力された光のパターンの映像が視認可能に出力されて前記照射面部の全周を一度に視認することができる光パターン出力手段と、
を備えている
ことを特徴とする検査装置。
【請求項2】
前記ワークを所定の搬送方向に沿って搬送する搬送手段と、
前記搬送手段で搬送される前記ワークを、前記搬送方向に交わる方向に移送して前記ワークを前記検査位置に位置させる検査用移送手段と、
を備える
請求項1に記載の検査装置。
【請求項3】
前記検査用移送手段は、
前記ワークを上下方向に移送するジャッキ部で構成されており、前記ジャッキ部に前記発光部が配設されている
請求項2に記載の検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば車両用ディスクブレーキのディスクロータのような、中央部に中央空隙部を有し、当該中央空隙部から外周に向かって放射状に複数の通路部が設けられて前記通路部が外周面に開放された本体部を有するワークについて、当該通路部内が適正形状であるか否かを検査する検査装置及び検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ディスクロータに設けられた通路部(冷却穴)を検査する装置には、例えば特許文献1のような、ディスクロータの内外周側のいずれか一方に発光部を、他方に受光部を設け、ディスクロータを回転させながらそのディスクロータの回転に伴う断続的な通光時間を連続して計測し、実測通光データをもとに信号処理装置にて所定の演算を行うことで開口度合いが適正でない冷却穴の有無を判定するものが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2004-204899号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1の構成にあっては、ワークであるディスクロータを回転させながら計測を行う必要があるため、計測するために要する回転のための時間がロスとなる問題があると共に、加えて、回転が安定するまでの時間や計測が終了して回転を止めるまでの時間等も必要であるという問題があった。
【0005】
本発明は、かかる現状に鑑みてなされたものであり、ワークを回転させることなく当該ワークに設けられた通路部の形状が適正であるか否かを非常に短時間で検査することのできる検査装置及び検査方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、中央部に中央空隙部を有し、当該中央空隙部に連続し、かつ当該中央空隙部から外周に向かって放射状に複数の通路部が設けられて前記通路部が外周面に開放されている本体部を主体とするワークに対して、前記通路部内が適正形状であるか否かを検査する検査装置であって、前記ワークを所定の検査位置に固定する固定部と、前記固定部によって前記検査位置に固定された前記ワークの前記中央空隙部に位置する発光部と、前記検査位置に固定された前記ワークの前記外周面の外側に配されており、前記発光部から発せられた光が前記通路部を通過して照射される照射面部と、を備え、前記照射面部に映し出された光のパターンに基づいて前記通路部内が適正形状であるか否かを検査するものであることを特徴とする検査装置である。
【0007】
かかる構成にあっては、前記ワークを回転させることなく固定した状態で前記照射面部に映し出された光のパターンに基づいて前記通路部の検査を行うため、検査にかかる時間を非常に短時間とすることができる。
【0008】
また、前記ワークを所定の搬送方向に沿って搬送する搬送手段と、前記搬送手段で搬送される前記ワークを、前記搬送方向に交わる方向に移送して前記ワークを前記検査位置に位置させる検査用移送手段と、を備える構成が提案される。
【0009】
かかる構成とすることにより、搬送過程のワークを適時に検査することができるため、検査効率を飛躍的に向上させることができる。
【0010】
また、前記検査用移送手段は、前記ワークを上下方向に移送するジャッキ部で構成されており、前記ジャッキ部に前記発光部が配設されている構成が提案される。
【0011】
かかる構成とすることにより、装置の簡素化を図ることができる。
【0012】
また、前記照射面部に映し出された光のパターンの映像が入力される光パターン入力手段と、前記光パターン入力手段に入力された光のパターンの映像が視認可能に出力される光パターン出力手段と、を備えている構成が提案される。
【0013】
かかる構成とすることにより、作業者が検査内容を、前記光パターン出力手段を通して目視で確認することにより、瞬時に判断することができる。
【0014】
また、本発明は、中央部に中央空隙部を有し、当該中央空隙部に連続し、かつ当該中央空隙部から外周に向かって放射状に複数の通路部が設けられて前記通路部が外周面に開放された本体部を主体とするワークに対して、前記通路部内が適正形状であるか否かを検査する検査方法であって、前記ワークを所定の検査位置に固定し、前記検査位置に固定された前記ワークの前記中央空隙部に発光部を位置させ、前記ワークの前記外周面の外側に配された照射面部に、前記発光部から発せられた光を前記通路部を通過させて照射し、前記照射面部に映し出された光のパターンに基づいて前記通路部内が適正形状であるか否かを検査することを特徴とする検査方法である。
【発明の効果】
【0015】
以上に述べたように、本発明は、ワーク内の通路部の形状について、従来に比して短時間のうちに検査を行うことができる優れた効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】実施例にかかる検査装置の斜視図である。
図2】実施例にかかる検査装置の遮光壁部を取り外した状態を示す斜視図である。
図3】実施例にかかる検査装置の縦断面図である。
図4】実施例にかかる検査部を示す説明図である。
図5】実施例にかかるディスクロータとスクリーンとを示す説明図であり、(a)は通路部内に異物がない状態を示し、(b)は通路部内に異物がある状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の実施形態を、以下の実施例に従って説明する。なお、本実施例は、ワークとしてのディスクロータ90内が適正形状であるかを確認する検査装置1である。具体的には、鋳砂の詰まりや内部構造の成形不良の有無を確認することができる。
【0018】
前記ワークとしてのディスクロータ90は、図5に示すように、周知である自動車用のディスクロータ90であって、中央部に中央空隙部92を有した円盤形状の本体部91を備えている。また、本体部91には、中央空隙部92から外周に向かって放射状に複数の通路部95が貫通状に設けられており、通路部95は外周面に開放されている。
【0019】
次に、図1等に従って検査装置1を説明する。
検査装置1は、ディスクロータ90を横方向に搬送する搬送手段としてのコンベア30上に配設される。かかる構成とすることにより、搬送過程のディスクロータ90に対して効率良く検査を実施できる。
【0020】
さらに詳述すると、検査装置1は、設置床面に載置された本体フレーム部2を備えている。かかる本体フレーム部2は、金属製の棒材を組み合わせてなり、遮光性を有する板材で構成された遮光壁部3が取り付けられている。そして、遮光壁部3によって囲まれた直方体状の内部領域が、外部から光が入り込まない検査部10とされている。
【0021】
また、図2に示すように検査部10には、本体フレーム部2から吊り下げられたスクリーン保持部11が設けられている。そして、スクリーン保持部11に、照射面部としてのスクリーン12がリング状に取り付けられている。
【0022】
また、スクリーン12の外側には、当該スクリーン12を外側から撮影することのできる光パターン入力手段としてのカメラ15が等間隔に8個配設されている。なお、本実施例にあっては、8個のカメラ15によってスクリーン12の全周が撮影可能となっている。
【0023】
また、本体フレーム部2の上面を遮光する遮光壁部3の上方には、光パターン出力手段としてのディスプレイ20が設置されている。なお、ディスプレイ20は、画面が8分割されており、各部において8個のカメラ15から入力された画像データが同時に出力表示可能となっている。
【0024】
次に、搬送手段としてのコンベア30について詳述する。
【0025】
コンベア30の中央部であって上述の検査部10の直下には、上下方向に開口した貫通孔部31が形成されている。また、コンベア30の下側には、検査用移送手段である柱状のジャッキ部40が、前記貫通孔部31を介して昇降自在に自動制御されるように上下方向に沿って配設されている。
【0026】
かかる構成にあって、図3に示すように、前記貫通孔部31の位置に搬送されてきたディスクロータ90は、制御されて上昇するジャッキ部40の上端部によって下側から支持されて、スクリーン12に全方位を囲繞された検査部10へ移送される。具体的には、ディスクロータ90の中央空隙部92にジャッキ部40の上端部が嵌合し、ディスクロータ90が非回転状体でジャッキ部40に固定される。なお、ジャッキ部40の上端部により、本発明にかかる固定部が構成される。
【0027】
一方、ディスクロータ90が支持された状態でジャッキ部40が制御されて下降すると、ディスクロータ90は検査部10からコンベア30上へ戻されることとなる。
【0028】
なお、遮光壁部3のうち、下側を遮光する遮光壁部3には、ディスクロータ90が通過可能な開口が形成されている。
【0029】
また、ジャッキ部40の上端部であってディスクロータ90の中央空隙部92に位置する部位には、発光部であるLEDライト41が取り付けられている。
【0030】
次に、上述した検査装置1によるディスクロータ90の検査方法について説明する。
【0031】
ジャッキ部40が上昇して、検査部10内に定められた所定の検査位置にディスクロータ90が位置すると、LEDライト41が全方位に発光し、ディスクロータ90の通路部95内には、中央空隙部92から光が入光する。そして、その光はディスクロータ90の外周面を介してスクリーン12を照らすこととなる。そうすると、スクリーン12には、通路部95内を通過した光のパターンが映し出され、その光のパターンがカメラ15によって撮影されてディスプレイ20に出力表示される。
【0032】
このとき、図5(a)に示したように、通路部95内に鋳砂等の異物が存在しておらず、通路部95が適正形状である場合には、通過した光が、通路部95の適正な形状に対応した整緻な形状の光パターンとしてディスプレイ20に表示される。
【0033】
一方、仮に通路部95内に鋳砂等の異物Xが存在する場合には、図5(b)に示したように、通過した光が異物Xによって遮られて、いびつな形状の光パターンとしてディスプレイ20に表示される。
【0034】
したがって、検査作業者は、ディスプレイ20に表示された映像を見て、通路部95内に異物Xが存在するか否かを瞬時に判定することができる。なお、8個のカメラ15によってスクリーン12の全周が撮影されているため、8分割されたディスプレイ20によって一度にスクリーン12の全周を瞬時に視認することが可能である。
【0035】
そして、検査が一通り完了すると、ジャッキ部40が下降してディスクロータ90はコンベア30へ戻される。かかる検査工程は、順次、繰り返し実行される。
【0036】
上記実施例において、各部の寸法形状は適宜自由に選択可能である。
【0037】
また、カメラ15は、機能に応じて単数であってもよいし、複数であってもよい。
【0038】
ディスプレイ20には一度に全てのカメラ15から得られた画像を表示する必要はないが、検査時間を短くするために、一度にスクリーン12の全容を見ることができることが望ましい。ただし、スクリーン12は、切れ目無く全周(360度)が連続している必要は無く、非連続でも適正位置に配置されていればよい。
【0039】
また、本発明の搬送手段は、上述のコンベア30の構造に限定されない。また、本発明の検査用移送手段も、上述のジャッキ部40の構造に限定されない。
【0040】
また、上述の本体フレーム部2には、検査位置に位置するディスクロータ90を例えば水平に保持するためのワーク姿勢調整手段が設けられていてもよい。例えば、本体フレーム部2の上面を遮光する遮光壁部3の下面に、コイルスプリング等の弾性体からなるショックアブソーバー(ワーク姿勢調整手段)が取り付けられており、ディスクロータ90が検査位置に位置した際にディスクロータ90と前記ショックアブソーバーとが接触して、ディスクロータ90が適正な姿勢に矯正される構成が提案される。なお、適正な姿勢には、水平姿勢だけでなく、所望角度で傾斜した姿勢も含まれる。
【0041】
また、ディスプレイ20には、スクリーン12の画像以外にも、所要の情報を出力表示してもよい。例えば、見本となる光パターンを常時表示させて、作業者が適宜見本の光パターンと対比しながら検査できる構成でも構わない。また、仮にディスプレイ20を省略し、カメラから取り込まれた画像データに基づいて検査結果を判定するシステムとしてもよい。
【0042】
また、ワークとしてのディスクロータ90の冷却用の通路部95は、各々が独立した管状の貫通孔で構成されていてもよいし、複数の仕切壁部で区画形成された空隙部で構成されていてもよい。
【0043】
また、ワークは、ディスクロータ90に限定されることはなく、照射されて映し出された光パターンに基づいて通路部の形状を検査することができるものであればよい。
【符号の説明】
【0044】
1 検査装置
12 スクリーン(照射面部)
15 カメラ(光パターン入力手段)
20 ディスプレイ(光パターン出力手段)
30 コンベア
40 ジャッキ部(検査用移送手段、固定部)
41 LEDライト(発光部)
90 ディスクロータ(ワーク)
91 本体部
92 中央空隙部
95 通路部
図1
図2
図3
図4
図5