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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-20
(45)【発行日】2022-09-29
(54)【発明の名称】エアチャック
(51)【国際特許分類】
   B23Q 3/06 20060101AFI20220921BHJP
   C08K 3/013 20180101ALI20220921BHJP
   C08K 7/14 20060101ALI20220921BHJP
   C08L 81/02 20060101ALI20220921BHJP
   C08L 27/18 20060101ALI20220921BHJP
   C08L 59/00 20060101ALI20220921BHJP
   C08K 3/04 20060101ALI20220921BHJP
   B25J 15/08 20060101ALI20220921BHJP
   B23Q 7/04 20060101ALN20220921BHJP
【FI】
B23Q3/06 304J
C08K3/013
C08K7/14
C08L81/02
C08L27/18
C08L59/00
C08K3/04
B23Q3/06 303B
B25J15/08 C
B23Q7/04 J
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018205113
(22)【出願日】2018-10-31
(65)【公開番号】P2020069585
(43)【公開日】2020-05-07
【審査請求日】2021-10-04
(73)【特許権者】
【識別番号】592127965
【氏名又は名称】NKE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100167438
【弁理士】
【氏名又は名称】原田 淳司
(74)【代理人】
【識別番号】100166800
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 裕治
(72)【発明者】
【氏名】東 知行
【審査官】亀田 貴志
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-206861(JP,A)
【文献】特開平11-062976(JP,A)
【文献】特開平11-060949(JP,A)
【文献】特開平07-016738(JP,A)
【文献】特開2011-104757(JP,A)
【文献】特表2006-504885(JP,A)
【文献】特開平02-168072(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23Q 3/06
B25J 1/00 - 21/02
B23Q 7/04
B23P 19/04
C08K 3/013
C08K 7/14
C08L 81/02
C08L 27/18
C08L 59/00
C08K 3/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エアチャック本体内のピストンを圧縮空気により摺動し、該ピストンの摺動力により一対のフィンガーを開閉させるエアチャックであって、
前記エアチャック本体は、ポリフェニレンサルファイドと、ガラス繊維と、無機フィラーとを含有し、前記ポリフェニレンサルファイドの含有量が29.5重量%以上の樹脂組成物を用いて形成され、
前記フィンガーは、ポリフェニレンサルファイドと、ガラス繊維と、ポリテトラフルオロエチレンとを含有し、前記ポリフェニレンサルファイドの含有量が53.7重量%以上の樹脂組成物を用いて形成され、
前記ピストンは、ポリオキシメチレンの含有量が98.5重量%以上の樹脂組成物を用いて形成されていることを特徴とするエアチャック。
【請求項2】
前記エアチャック本体は、さらにカーボンブラックを含有する樹脂組成物を用いて形成されている
請求項1に記載のエアチャック。
【請求項3】
前記フィンガーは、さらにカーボンブラックを含有する樹脂組成物を用いて形成されている
請求項1または2に記載のエアチャック。
【請求項4】
前記ピストンは、さらにカーボンブラックを含有する樹脂組成物を用いて形成されている
請求項1~3のいずれか一項に記載のエアチャック。
【請求項5】
前記エアチャックは、前記一対のフィンガーが平行移動する平行タイプである
請求項1~のいずれか一項に記載のエアチャック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被把持物(ワーク)を把持するエアチャックに関するものであり、詳しくは平行タイプのエアチャックに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ワークを把持するハンドリング機器としては、エアチャック等が用いられている。エアチャックとしては、平行タイプ、レバータイプ等が知られている(例えば非特許文献1)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【文献】NKE株式会社のホームページ(エアチャックについての製品案内)http://www.nke.co.jp/product/list/parts/airchuck/
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、非特許文献1に記載のエアチャックは、主要部品がアルミ合金やステンレス鋼等で作製されている合金製のエアチャックである。具体的には、エアチャック本体(ボディともいう場合がある。)やフィンガーがアルミ合金で作製され、ピストンはステンレス鋼で作製されている。そのため、軽量化が要求される場合には、改良の余地があった。
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、合金製のエアチャックの性能を損なわずに、軽量化を図ることができるエアチャックを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係るエアチャックは、エアチャック本体内のピストンを圧縮空気により摺動し、該ピストンの摺動力により一対のフィンガーを開閉させるエアチャックであって、前記エアチャック本体は、ポリフェニレンサルファイドと、ガラス繊維と、無機フィラーとを含有し、前記ポリフェニレンサルファイドの含有量が29.5重量%以上の樹脂組成物を用いて形成され、前記フィンガーは、ポリフェニレンサルファイドと、ガラス繊維と、ポリテトラフルオロエチレンとを含有し、前記ポリフェニレンサルファイドの含有量が53.7重量%以上の樹脂組成物を用いて形成され、前記ピストンは、ポリオキシメチレンの含有量が98.5重量%以上の樹脂組成物を用いて形成されている。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、エアチャック本体、フィンガーおよびピストンが所定の樹脂組成物を用いて形成されいるため、合金製のエアチャックの性能を損なわずに、軽量化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本実施形態に係るエアチャックの斜視図(一部断面)である。
図2】本実施形態に係るエアチャックの斜視図(一部断面)である。
図3】本実施形態に係るエアチャックの平面図である。
図4】実施例1および比較例1のエアチャックにおける、フィンガーの直角方向のガタの推移を示すグラフ図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<概要>
本発明の一態様に係るエアチャックは、エアチャック本体内のピストンを圧縮空気により摺動し、該ピストンの摺動力により一対のフィンガーを開閉させるエアチャックであって、前記エアチャック本体は、ポリフェニレンサルファイドと、ガラス繊維と、無機フィラーとを含有する樹脂組成物を用いて形成され、前記フィンガーは、ポリフェニレンサルファイドと、ガラス繊維と、ポリテトラフルオロエチレンとを含有する樹脂組成物を用いて形成され、前記ピストンは、ポリオキシメチレンを含有する樹脂組成物を用いて形成されている。これにより、従来の合金製のエアチャックの性能を損なわずに、大幅に軽量化を図ることができる。
【0010】
<実施形態>
以下に実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
実施形態では、エアチャックの一例として、一対のフィンガーが平行移動する平行タイプの角型エアチャックについて説明する。
【0011】
1.全体
主に、図1図3を用いて説明する。
【0012】
エアチャック100は、圧縮空気によりピストン5を摺動し、ピストン5の摺動力により一対のフィンガー10を開閉させて被把持物(ワーク)を把持する。
【0013】
エアチャック100は、作業機械等に取り付け可能なエアチャック本体(ボディと呼ぶ場合もある。)1と、エアチャック100の作動部であり、被把持物(ワーク)を把持するツメ(図示しない。)を固定するフィンガー10と、フィンガーを開閉するピストン5とを少なくとも備えている。
【0014】
図1図3において、8はガイドロッド、9はアタッチメント(ツメ)取付けタップ、11は六角穴付止めねじ、12はエアポート、13はレバー、14はピン、15はベアリングをそれぞれ示す。
【0015】
エアチャック本体1は、一面が開口し且つピストン5の摺動方向に長い直方箱状をしている。ピストン5の摺動方向を長手方向とし、開口面と直交する方向を高さ方向とし、長手方向と高さ方向に直交する方向を幅方向とする。
【0016】
ピストン5は、エアチャック本体1の底側で長手方向に延伸し且つその中間部分が開口する貫通部分に移動自在に収容され、その中間部分に高さ方向に延伸するレバーピン4が取り付けられている。レバーピン4は、エアチャック本体1の開口側に支持されたガイドロッド8に長手方向に摺動可能に支持されたフィンガー10に固定されている。
【0017】
これにより、ピストン5が長手方向に摺動することで、フィンガー10がガイドロッド8に沿って移動する。
【0018】
一対のフィンガー10のレバーピン4は、エアチャック本体1の中心のピン14に回転自在に支持されたレバー13であってピン14に対しての点対称の位置に形成された貫通孔を挿通する。これにより、一対のフィンガー10がピン14に対して対象に移動する。
【0019】
以下、主要部について説明する。
本実施形態のエアチャック100は、主要部であるエアチャック本体1、フィンガー10およびピストン5を合成樹脂で作製することにより、従来の合金製のエアチャックに比べて大幅に軽量化を図るとともに、同等もしくは同等以上の性能を得ることができる。
【0020】
2.各部
(1)エアチャック本体
本実施形態におけるエアチャック本体1は、ポリフェニレンサルファイド(PPS)と、ガラス繊維と、無機フィラーとを含有する樹脂組成物を用いて形成されている。
【0021】
ポリフェニレンサルファイドは、ベンゼン環と硫黄の交互結合からなる結晶性の耐熱性熱可塑性樹脂である。
【0022】
ポリフェニレンサルファイドとしては、例えば、分子構造上多数の分岐鎖や架橋構造を含む分岐状のものや、実質的に分岐鎖や架橋構造を含まない直鎖状のもの等があげられるが、強靭性の点から直鎖状のものが好ましい。
【0023】
なお、エアチャック本体用樹脂組成物には、本発明の効果を阻害しない範囲において、加工安定性、表面性状、靱性等の改良や、着色、帯電防止等の目的で、必要に応じて適量の各種安定剤、流動性改良剤、表面改質剤、着色剤、帯電防止剤、各種の樹脂、無機類または有機類の補強用充填剤等を添加してもよい。これらは単独でもしくは二種以上を併用してもよい。
【0024】
エアチャック本体用樹脂組成物には、具体的にはカーボンブラックを配合することが好ましい。
【0025】
エアチャック本体用樹脂組成物におけるポリフェニレンサルファイドの含有量は、特に限定はないが、寸法安定性の点から、29.5重量%以上が好ましく、特に好ましくは35重量%以上である。
【0026】
エアチャック本体用樹脂組成物の好ましい具体例としては、ポリプラスチックス株式会社より市販されている「ジュラファイド(登録商標)」等を例示できる。
【0027】
エアチャック本体用樹脂組成物の各成分の配合手段は、特に限定はなく、例えば、各成分を各々別々に溶融混合機に供給してもよく、もしくは予め各成分をヘンシェルミキサー、リボンブレンダー等の混合機で予備混合してから、単軸または二軸押し出し機、混合ロール、加圧ニーダー等の任意の混合機に供給してもよい。
【0028】
エアチャック本体は、エアチャック本体用樹脂組成物を射出成形することにより作製できる。
【0029】
(2)フィンガー
本実施形態におけるフィンガー10は、ポリフェニレンサルファイド(PPS)と、ガラス繊維と、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)を含有する樹脂組成物を用いて形成されている。
【0030】
なお、フィンガー用樹脂組成物には、本発明の効果を阻害しない範囲において、加工安定性、表面性状、靱性等の改良や、着色、帯電防止等の目的で、必要に応じて適量の各種安定剤、流動性改良剤、表面改質剤、着色剤、帯電防止剤、各種の樹脂、無機類または有機類の補強用充填剤等を添加してもよい。これらは単独でもしくは二種以上を併用してもよい。
【0031】
フィンガー用樹脂組成物には、具体的にはカーボンブラックを配合することが好ましい。
【0032】
フィンガー用樹脂組成物におけるポリフェニレンサルファイドの含有量は、特に限定はないが、53.7重量%が好ましく、特に好ましくは60重量%以上である。
【0033】
フィンガー用樹脂組成物の好ましい具体例としては、ポリプラスチックス株式会社より市販されている「ジュラファイド(登録商標)」等を例示できる。
【0034】
フィンガー用樹脂組成物の各成分の配合手段は、特に限定はなく、例えば、各成分を各々別々に溶融混合機に供給してもよく、もしくは予め各成分をヘンシェルミキサー、リボンブレンダー等の混合機で予備混合してから、単軸または二軸押し出し機、混合ロール、加圧ニーダー等の任意の混合機に供給してもよい。
【0035】
フィンガーは、フィンガー用樹脂組成物を射出成形することにより作製できる。
【0036】
(3)ピストン
本実施形態におけるピストン5は、ポリオキシメチレン(ポリアセタール樹脂)を含有する樹脂組成物を用いて形成されている。
【0037】
なお、ピストン用樹脂組成物には、本発明の効果を阻害しない範囲において、加工安定性、表面性状、靱性等の改良や、着色、帯電防止等の目的で、必要に応じて適量の各種安定剤、流動性改良剤、表面改質剤、着色剤、帯電防止剤、各種の樹脂、無機類または有機類の補強用充填剤等を添加してもよい。これらは単独でもしくは二種以上を併用してもよい。
【0038】
ピストン用樹脂組成物には、具体的にはカーボンブラックを配合することが好ましい。
【0039】
ピストン用樹脂組成物におけるポリオキシメチレンの含有量は、特に限定はないが、98.5重量%以上が好ましく、特に好ましくは99重量%以上である。
【0040】
ピストン用樹脂組成物の好ましい具体例としては、ポリプラスチックス株式会社より市販されている「ジュラコン(登録商標)」等を例示できる。
【0041】
ピストン用樹脂組成物の各成分の配合手段は、特に限定はなく、例えば、各成分を各々別々に溶融混合機に供給してもよく、もしくは予め各成分をヘンシェルミキサー、リボンブレンダー等の混合機で予備混合してから、単軸または二軸押し出し機、混合ロール、加圧ニーダー等の任意の混合機に供給してもよい。
【0042】
ピストンは、ピストン用樹脂組成物を射出成形することにより作製できる。
【実施例
【0043】
以下、実施例および比較例を示して本発明をより具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り以下の実施例に限定されるものではない。
【0044】
〔比較例1〕
市販の平行タイプ角型のエアチャック(NKE株式会社製、CH91A)を用意した。このエアチャックは、エアチャック本体がアルミ合金、フィンガーがアルミ合金、ピストンがステンレス鋼で作製されている。また、ピストンパッキンはニトリルゴム、レバーピンは軸受鋼、マグネットは希土類、キャップはウレタンゴム、ガイドロッドは炭素鋼、レバーは炭素鋼、ピンは軸受鋼、ベアリングは軸受鋼でそれぞれ形成されている。
【0045】
〔実施例1〕
比較例1のエアチャックの、エアチャック本体、ピストンおよびフィンガーを樹脂で作製する以外は、比較例1と同様のエアチャックを作製した。すなわち、エアチャック本体、ピストンおよびフィンガー用樹脂組成物として、下記の樹脂組成を調製した。そして、各樹脂組成物を射出成形して、エアチャック本体、ピストンおよびフィンガーをそれぞれ作製し、エアチャックを得た。なお、実施例1のエアチャックは、比較例1のエアチャックと同寸法である。
(エアチャック本体用樹脂組成物)
ポリフェニレンサルファイド29.5重量%、カーボンブラック0.5重量%、ガラス繊維および無機フィラー70重量%を含有する樹脂組成物を調製した。
(ピストン用樹脂組成物)
ポリオキシメチレン98.5重量%、カーボンブラック0.5重量%、その他1重量%を含有する樹脂組成物を調製した。
(フィンガー用樹脂組成物)
ポリフェニレンサルファイド53.7重量%、カーボンブラック0.3重量%、ガラス繊維およびポリテトラフルオロエチレン(PTFE)46重量%を含有する樹脂組成物を調製した。
【0046】
〔重量の測定〕
実施例1および比較例1のエアチャックを用いて、重量を測定した。その結果を、下記の表1に示した。
【0047】
【表1】
【0048】
表1の結果から、実施例1は比較例1に比べて、大幅に軽量化を図ることができた。
【0049】
〔ガタの測定〕
実施例1および比較例1のエアチャックを用いて、以下の基準に従い、フィンガーの直角方向のガタの推移を測定した。その結果を、下記の表2および図4に示した。
【0050】
(測定条件・測定方法)
フィンガーにアタッチメント(ツメ)(長さ:フィンガー先端から24mm、質量:31g)を取り付けて、フィンガーの開閉動作(動作速度:130回/分、動作圧力:0.7MPa)を行った。そして、エアチャック本体を固定し、フィンガー先端に横からダイヤルゲージを当て、フィンガーを500gfの力で押し引きしてダイヤルゲージで最大の振れ(mm)を読み取った。
【0051】
【表2】
【0052】
表2の結果から、比較例1は動作回数71万回でフィンガーの直角方向(ガイドロッド8と直交する方向)のガタが0.305mmで、動作回数566万回ではガタは0.41mmであった。なお、比較例1は動作回数566万回以降は、ガタの測定はしなかった。
【0053】
これに対して、実施例1は、動作回数1050万回でのガタが0.215mmと小さかった。
【0054】
〔比較例2〕
ピストン用樹脂組成物を、下記の樹脂組成物に変更した以外は、実施例1と同様にしてエアチャックを作製した。
(ピストン用樹脂組成物)
ポリフェニレンサルファイド29.5重量%、カーボンブラック0.5重量%、ガラス繊維および無機フィラー70重量%を含有する樹脂組成物を調製した。
【0055】
〔比較例3〕
ピストン用樹脂組成物を、下記の樹脂組成物に変更した以外は、実施例1と同様にしてエアチャックを作製した。
(ピストン用樹脂組成物)
ポリフェニレンサルファイド53.7重量%、カーボンブラック0.3重量%、ガラス繊維およびポリテトラフルオロエチレン(PTFE)46重量%を含有する樹脂組成物を調製した。
【0056】
〔比較例4〕
ピストンの形成材料をSUSに変更した以外は、実施例1と同様にしてエアチャックを作製した。
【0057】
〔エア漏れ動作発生回数の測定〕
実施例1および比較例1~4のエアチャックを用いて、以下の基準に従い、エア漏れ動作発生回数を測定した。その結果を、下記の表3に示した。
【0058】
(測定条件・測定方法)
前述のガタの測定と同様にして、0.7MPaの圧力のエアを封入し、圧力ゲージで圧力を測定し、エア漏れ発生回数をカウントした。
【0059】
【表3】
【0060】
表3の結果から、実施例1は比較例2~4に比べてエア漏れ動作発生回数が多く、エア漏れが発生しにくいことがわかった。
【0061】
一方、比較例2および比較例3は、エアチャック本体、フィンガーおよびピストンを樹脂で作製しているが、ピストン用樹脂組成物の違いにより、実施例1よりも著しくエア漏れ動作発生回数が少なく、エア漏れが早期に発生したことがわかる。これは、比較例2および比較例3は、ボディのシリンダとピストンとの摺動によりいずれも摩耗し、ピストンに装着してあるピストンパッキンが摩耗して、エア漏れが早期に発生したと考えられる。
【0062】
〔比較例5〕
フィンガー用樹脂組成物を、下記の樹脂組成物に変更した以外は、実施例1と同様にしてエアチャックを作製した。
(フィンガー用樹脂組成物)
ポリフェニレンサルファイド29.5重量%、カーボンブラック0.5重量%、ガラス繊維および無機フィラー70重量%を含有する樹脂組成物を調製した。
【0063】
〔摩耗量の測定〕
実施例1および比較例5のエアチャックを用いて、以下の基準に従い、摩耗量を測定した。その結果を、下記の表4に示した。
【0064】
(測定条件・測定方法)
前述のガタの測定と同様にして、100万回における摩耗量(mm)をダイヤルゲージを用いて測定した。
【0065】
【表4】
【0066】
表4の結果から、実施例1は比較例5に比べて、摩耗量が少ないことがわかる。
【0067】
比較例5は、ガイドロッド(SK-4DR、塩浴窒化処理)に対してフィンガーの摩耗が多いためであると思われる。
【0068】
<変形例>
以上、一実施形態に係るエアチャックについて説明したが、この実施形態に限られるものではなく、例えば、以下のような変形例であってもよい。また、実施形態と変形例とを組み合わせたものでもよいし、変形例同士を組み合わせたものでもよい。また、実施形態や変形例に記載していない例や要旨を逸脱しない範囲の設計変更があっても本発明に含まれる。
【0069】
1.エアチャック
実施形態では、エアチャックの一例として平行タイプのエアチャックについて説明したが、本実施形態のエアチャックはこれに限定されず、例えばレバータイプのエアチャックであっても差し支えない。
【0070】
2.グリース
本実施形態のエアチャックに使用するグリースは特に限定はないが、水酸化リチウムと2種類の脂肪酸を組み合わせて複合(コンプレックス)化したリチウム石けんを増ちょう剤に使用したグリース(例えば、JXTGエネルギー社製、タフリックスグリースRB)が、耐水性の点から好ましい。
【符号の説明】
【0071】
1 エアチャック本体(ボディ)
5 ピストン
10 フィンガー
100 エアチャック
図1
図2
図3
図4