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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-20
(45)【発行日】2022-09-29
(54)【発明の名称】移動体、及び高空移動システム
(51)【国際特許分類】
   B64C 39/02 20060101AFI20220921BHJP
   B64B 1/50 20060101ALI20220921BHJP
   B64C 31/06 20200101ALI20220921BHJP
   B64D 27/24 20060101ALI20220921BHJP
   B64F 1/12 20060101ALI20220921BHJP
【FI】
B64C39/02
B64B1/50
B64C31/06
B64D27/24
B64F1/12
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2018215489
(22)【出願日】2018-11-16
(65)【公開番号】P2020082788
(43)【公開日】2020-06-04
【審査請求日】2021-07-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000003609
【氏名又は名称】株式会社豊田中央研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079049
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳
(72)【発明者】
【氏名】市毛 敬介
(72)【発明者】
【氏名】河上 充佳
(72)【発明者】
【氏名】深川 建
(72)【発明者】
【氏名】板倉 英二
【審査官】林 政道
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-222241(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0174932(US,A1)
【文献】特開2018-114980(JP,A)
【文献】特開2014-019535(JP,A)
【文献】特開2016-005944(JP,A)
【文献】特開平08-198188(JP,A)
【文献】特開平11-092059(JP,A)
【文献】特表2001-526603(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0176432(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B64C 39/00-39/02
B64B 1/50
B64C 31/06
B64D 27/24
B64F 1/12
B61B 9/00
B66B 9/02
B66B 1/00- 1/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
地上または海上と高空との間に架け渡された索道に係合する移動体本体と、
前記移動体本体に設けられ、前記索道に密着して前記索道へ回転駆動力を伝達し、前記移動体本体を前記索道に沿って移動させる駆動力伝達部と、
前記移動体本体に設けられ、風を受けて揚力により前記移動体本体へ上方向の移動力を作用させる、揚力発生部と、
前記揚力発生部からの揚力による移動中、及び、下方向への重力による移動中に、前記駆動力伝達部からの回転駆動力を受けて発電する発電部と、
電力により回転駆動力を発生させ、前記駆動力伝達部を介して前記移動体本体を前記索道に沿って移動させる駆動部と、
前記発電部による発電により得られた電力を蓄電すると共に、電力を前記駆動部へ供給する蓄電部と、
を備えた移動体。
【請求項2】
前記駆動力伝達部は、前記索道を挟持するように外周面が配置されたローラー対と、前記ローラー対の外周面を前記索道へ押し付ける押付部と、を有する、請求項1に記載の移動体。
【請求項3】
前記発電部及び前記駆動部は、モータジェネレータで兼用とされている、請求項1に記載の移動体。
【請求項4】
前記揚力発生部は、受ける風に対する迎角を変えて、前記移動体本体へ作用させる移動力の方向を上方向または下方向に切換える切換部を有している、請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の移動体。
【請求項5】
前記移動体本体に設けられ、前記索道をグリップして前記索道と前記移動体本体との相対移動を阻止して前記移動体本体の高度を保持する落下防止装置、を備えた、請求項1~4のいずれか1項に記載の移動体。
【請求項6】
前記移動体本体の上端及び下端の少なくとも一方から延出されつつ前記索道に沿って配置され、前記移動体本体の前記索道と離れる方向の移動を規制する索道姿勢安定部、を備えた、請求項1~5のいずれか1項に記載の移動体。
【請求項7】
前記揚力発生部により前記移動体本体へ上方向の移動力を作用させる風力が発生している風力有状態か否かを判断する風力判断部と、
前記風力判断部により風力有状態であると判断された場合には、前記駆動部の駆動を停止すると共に前記揚力発生部からの揚力により前記移動体本体を前記索道に沿って移動させる制御部と、
を備えた、請求項1~請求項6のいずれか1項に記載の移動体。
【請求項8】
前記風力判断部により風力有状態であると判断された場合、または、前記移動体本体の移動方向が下方向である場合に、前記制御部は、前記駆動力伝達部からの回転駆動力を受けて前記発電部で発電するように前記駆動力伝達部及び前記発電部を制御する、請求項7に記載の移動体。
【請求項9】
地上または海上に設置されたベース施設と、
高空に配置された高空飛翔体と、
前記ベース施設と前記高空飛翔体との間に架け渡された索道と、
前記索道に係合し、前記ベース施設と前記高空飛翔体との間を移動する、請求項1~請求項8のいずれか1項に記載の移動体と、
を備えた高空移動システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、風力と電力を動力源として移動する移動体、及び、この移動体を備えた高空移動システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、高空に基地を設置し、通信、観測、輸送、発電などに使用するアイデアが提案されている。例えば、特許文献1では、飛行船を成層圏プラットフォームとして活用される技術が開示されている。成層圏では、地上付近と比較して風が強いため、飛行船を滞空させるために大量のエネルギーを消費してしまう。
【0003】
一方、特許文献2には、高空の空気静力浮揚体と地上設備を固定用のケーブルでつなぐ技術が開示されている。地上設備に固定用ケーブルで係留することにより、高空の空気静力浮揚体を滞空させるためのエネルギー消費量を低減することができる。また、特許文献2では、輸送用ケーブルの巻き出し、巻き込みにより、輸送用ケーブルに固定したキャビンを、高空と地上の間で移動させ、乗客輸送用として用いている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2004-098721号公報
【文献】特表2001-526603号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このように、高空と地上の間で、物資や人の輸送のために移動体を移動させる場合、移動のための動力が必要であり、どのように動力を確保するかについて、工夫が必要である。
【0006】
本発明は、上記事実を考慮して成されたものであり、省エネルギーで、地上と高空との間を移動することが可能な移動体、及び高空移動システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の移動体は、地上または海上と高空との間に架け渡された索道に係合する移動体本体と、前記移動体本体に設けられ、前記索道に密着して前記索道へ回転駆動力を伝達し、前記移動体本体を前記索道に沿って移動させる駆動力伝達部と、前記移動体本体に設けられ、風を受けて揚力により前記移動体本体へ上方向の移動力を作用させる、揚力発生部と、前記揚力発生部からの揚力による移動中、及び、下方向への重力による移動中に、前記駆動力伝達部からの回転駆動力を受けて発電する発電部と、電力により回転駆動力を発生させ、前記駆動力伝達部を介して前記移動体本体を前記索道に沿って移動させる駆動部と、前記発電部による発電により得られた電力を蓄電すると共に、電力を前記駆動部へ供給する蓄電部と、を備えている。
【0008】
請求項1に係る移動体は、移動体本体を備えている。移動体本体は、地上または海上と高空との間に架け渡された索道に係合している。移動体本体には、駆動力伝達部、揚力発生部が設けられている。駆動力伝達部は、索道に密着して索道へ回転駆動力を伝達し、移動体本体を索道に沿って移動させる。揚力発生部は、風を受けて揚力により移動体本体へ上方向の移動力を作用させる。
【0009】
また、移動体は、発電部、駆動部、蓄電部を備えている。発電部は、揚力発生部からの揚力による移動中、及び、下方向への重力による移動中に、駆動力伝達部からの回転駆動力を受けて発電する。駆動部は、電力により回転駆動力を発生させ、駆動力伝達部を介して移動体本体を索道に沿って移動させる。蓄電部は、発電部による発電により得られた電力を蓄電すると共に、電力を駆動部へ供給する。
【0010】
本発明の移動体は、揚力発生部を有しているので、風力を利用して、移動体本体を上方向へ移動させることができる。また、駆動部を有しているので、風力を利用できない時には、電力により移動体を索道に沿って移動させることができる。すなわち、風力の有無により、移動体本体を移動させるための動力源を切り換えて、省エネルギーで、地上と高空との間で移動体を移動させることができる。
【0011】
また、揚力発生部からの揚力による移動中、及び、下方向への重力による移動中に発電部で発電し、発電により得られた電力を蓄電部に蓄電して、当該電力を駆動部へ供給する。したがって、移動中の運動エネルギーを電力に変換して、効率的に電力を蓄えることができる。
【0012】
請求項2に記載の移動体は、前記駆動力伝達部は、前記索道を挟持するように外周面が配置されたローラー対と、前記ローラー対の外周面を前記索道へ押し付ける押付部と、を有する。
【0013】
請求項2に係る移動体では、駆動力伝達部が、ローラー対と、押付部を有している。ローラー対は、索道を挟持するように外周面が配置されている。押付部でローラー対の外周面を索道へ押し付けることにより、移動体本体に駆動部からの回転駆動力を伝達することができると共に、移動体本体の移動により発生する回転駆動力を受けることもできる。
【0014】
請求項3に記載の移動体は、前記発電部及び前記駆動部は、モータジェネレータで兼用とされている。
【0015】
請求項3に係る移動体では、発電部及び駆動部を、モータジェネレータで兼用することにより、部品点数を少なくすることができる。
【0016】
請求項4に記載の移動体は、前記揚力発生部は、受ける風に対する迎角を変えて、前記移動体本体へ作用させる移動力の方向を上方向または下方向に切換える切換部を有している。
【0017】
請求項4に係る移動体によれば、切換部により風を動力として移動する場合の移動方向を切り換えることができる。
【0018】
請求項5に記載の移動体は、前記移動体本体に設けられ、前記索道をグリップして前記索道と前記移動体本体との相対移動を阻止して前記移動体本体の高度を保持する落下防止装置、を備えている。
【0019】
請求項5に係る移動体によれば、落下防止装置により、移動体本体の落下を阻止することができる。
【0020】
請求項6に記載の移動体は、前記移動体本体の上端及び下端の少なくとも一方から延出されつつ前記索道に沿って配置され、前記移動体本体の前記索道と離れる方向の移動を規制する索道姿勢安定部、を備えている。
【0021】
請求項6に係る移動体によれば、索道姿勢安定部を備えているので、移動体本体が索道と離れる方向の移動が移動体本体の上端及び下端から延出された位置で規制され、索道に対する移動体本体の姿勢を安定させることができる。
【0022】
請求項7に記載の移動体は、前記揚力発生部により前記移動体本体へ上方向の移動力を作用させる風力が発生している風力有状態か否かを判断する風力判断部と、前記風力判断部により風力有状態であると判断された場合には、前記駆動部の駆動を停止すると共に前記揚力発生部からの揚力により前記移動体本体を前記索道に沿って移動させる制御部と、を備えている。
【0023】
請求項7に記載の移動体では、風力判断部により風力有状態であると判断された場合には、駆動部の駆動を停止すると共に揚力発生部からの揚力により移動体本体を索道に沿って移動させる。したがって、風力の状態に応じて、適切に移動体の動力源を用いることができる。
【0024】
請求項8に記載の移動体は、前記風力判断部により風力有状態であると判断された場合、または、前記移動体本体の移動方向が下方向である場合に、前記制御部は、前記駆動力伝達部からの回転駆動力を受けて前記発電部で発電するように前記駆動力伝達部及び前記発電部を制御する。
【0025】
請求項8に記載の移動体では、風力判断部により風力有状態であると判断された場合、または、移動体本体の移動方向が下方向である場合に、駆動力伝達部からの回転駆動力を受けて発電部で発電する。したがって、移動体の移動状態に応じて、適切に移動体での発電を行うことができる。
【0026】
請求項9に記載の高空移動システムは、地上または海上に設置されたベース施設と、高空に配置された高空飛翔体と、前記ベース施設と前記高空飛翔体との間に架け渡された索道と、前記索道に係合し、前記ベース施設と前記高空飛翔体との間を移動する、請求項1~請求項8のいずれか1項に記載の移動体と、を備えている。
【0027】
請求項9に記載の高空移動システムは、風力を利用して、移動体本体を上方向へ移動させると共に、風力を利用できない時には、電力により索道に沿って移動させることができる移動体を有しているので、移動体本体を移動させるための動力源を切り換えて、省エネルギーで、地上(海上)と高空との間で移動体を移動させることができる。
【0028】
また、揚力発生部からの揚力による移動中、及び、下方向への重力による移動中に発電部で発電し、発電により得られた電力を蓄電部に蓄電して、当該電力を駆動部へ供給するので、移動中の運動エネルギーを電力に変換して、効率的に電力を蓄えることができる。
【発明の効果】
【0029】
以上説明したように、本発明によれば、省エネルギーで、地上と高空との間を移動することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】本実施形態に係る高空移動システムの概略図である。
図2】本実施形態に係る移動体の正面図である。
図3】本実施形態に係る移動体の側面図である。
図4】本実施形態に係る移動体の上面図である。
図5】本実施形態に係る移動体の制御系の構成を示すブロック図である。
図6】本実施形態の主翼部の(A)は上昇位置に配置された状態、(B)は下降位置に配置された状態、を示す説明図である。
図7】本実施形態に係る移動体の上面図であり、主翼部が移動体本体に対して回転した状態を示す図である。
図8】本実施形態の駆動伝達部とケーブルとの関係を示す図であり、(A)はケーブルの長さ方向から見た図であり、(B)はケーブルの側方から見た図である。
図9】本実施形態のブレーキ機構の説明図である。
図10】本実施形態の駆動モードを説明する表である。
図11】本実施形態の駆動モードの駆動エネルギーの流れを示す説明図である。
図12】本実施形態の移動運転処理のフローチャートである。
図13】本実施形態の空気力駆動非発電モード処理のフローチャートである。
図14】本実施形態の空気力駆動発電モード処理のフローチャートである。
図15】本実施形態の電気力駆動非発電モード処理のフローチャートである。
図16】本実施形態の落下駆動発電モード処理のフローチャートである。
図17】本実施形態の第1ローラー及び第2ローラーがケーブルとの間で相対移動する動作を説明する図である。
図18】本実施形態の変形例であり、第1ローラーにケーブルが巻き架けられた状態を示す図である。
図19】本実施形態の変形例の落下駆動非発電モードのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本実施形態の高空移動システム10について、図面を参照して説明する。なお、図中の矢印UPは鉛直上方向を示し、矢印DNは鉛直下方向を示している。図1に示すように、本実施形態の高空移動システム10は、地上ステーション12、高空飛翔体14、ケーブル16、を備えている。
【0032】
地上ステーション12は、地上に設置されている。高空飛翔体14は、成層圏に浮遊する飛翔体であり、成層圏プラットフォームとして機能する。ケーブル16は、地上ステーション12と高空飛翔体14の間にかけ渡され、両者を接続し、高空飛翔体14を地上ステーション12に係留している。なお、地上ステーションは、海上に設置された海上ステーションであってもよい。
【0033】
ケーブル16には、移動体20が係合されている。移動体20は、図2図4に示すように、移動体本体22、揚力発生部30、駆動力伝達部40、モータジェネレータ50、バッテリー58、制御部60を備えている。
【0034】
移動体本体22は、筐体24、ベース部26を備えている。筐体24は、中空の箱状とされている。筐体24内には、駆動力伝達部40、モータジェネレータ50、バッテリー58、高度計59、制御部60が配置されている。ベース部26は、板状とされており、板面で筐体24の上部開口を閉鎖するように筐体24の上部に配置されている。筐体24及びベース部26には、ケーブル16を挿通するための孔24H、26Hが、各々形成されている。
【0035】
ベース部26の上側で孔26Hを避けた位置には、回転台27が配置されている。回転台27は、円板状とされ、円板の中心O周りに回転可能にベース部26へ取り付けられている。
【0036】
図5に示されるように、制御部60は、CPU(Central Processing Unit:プロセッサ)60A、ROM(Read Only Memory)60B、RAM(Random Access Memory)60C、ストレージ60D、入出力インターフェース(I/F)60E、を有する。各構成は、バス62を介して相互に通信可能に接続されている。
【0037】
CPU60Aは、中央演算処理ユニットであり、各種プログラムを実行したり、各部を制御したりする。すなわち、CPU60Aは、ROM60Bまたはストレージ60Dからプログラムを読み出し、RAM60Cを作業領域としてプログラムを実行する。CPU60Aは、ROM60Bまたはストレージ60Dに記録されているプログラムにしたがって、上記各構成の制御および各種の演算処理を行う。
【0038】
ROM60Bは、各種プログラムおよび各種データを格納する。RAM60Cは、作業領域として一時的にプログラムまたはデータを記憶する。ストレージ60Dは、HDD(Hard Disk Drive)またはSSD(Solid State Drive)により構成され、オペレーティングシステムを含む各種プログラム、および各種データを格納する。本実施形態では、ROM60Bまたはストレージ60Dには、後述する移動体運転処理を実行するためのプログラム等が格納されている。入出力I/F60Eは、信号線を介して翼アクチュエーター36、伝達アクチュエーター46、ブレーキアクチュエーター72、モータジェネレータ50、スイッチ45、バッテリー58、風速計57、及び高度計59と接続されている。
【0039】
回転台27の上には、一対の支持部28が立設されており、支持部28に揚力発生部30が取り付けられている。揚力発生部30は、翼状とされ、図2に示されるように、正面から見て支持部28の両外側へ延出される主翼部32と、主翼部32の両端部から上方へ屈曲する垂直翼部34を有している。主翼部32には、正面から見て左右方向の中央部に長尺円柱状の軸部32Aが形成されている。軸部32Aは、一対の支持部28に形成された軸受孔28Aに挿通され、軸受孔28Aに回転可能に軸支持されている。
【0040】
主翼部32の前方上部には、風速計57が設けられている。風速計57は、前方から受ける風速を計測する。風速計57は、制御部60と接続されており、制御部60へ風速を出力する。
【0041】
回転台27の回転により、揚力発生部30は、ベース部26に対して中心O周りに回転可能となっている。揚力発生部30における前後方向は、主翼部32の前後方向となり、図6に矢印Fで前方が示され、矢印Rで後方が示されている。
【0042】
図3に示されるように、回転台27上には、支持部28を挟んでベース部26の孔26Hと反対側に、翼アクチュエーター36が設けられている。翼アクチュエーター36は、箱状の本体部36A、及び本体部36Aから上方へ立設された上下動軸36Bを有している。本体部36Aの内部には、駆動源となるアクチュエーターや配線等が配置されている。アクチュエーターとしては、例えば、電気系のソレノイドを用いることができる。翼アクチュエーター36は、制御部60と接続されており、制御部60からの信号によりオン/オフが制御される。
【0043】
上下動軸36Bは、アクチュエーターによる駆動力を上下動に変換する。上下動軸36Bは、連結プレート32Bに取り付けられている。連結プレート32Bは、図4に示されるように、一対の板で形成されており、一端が上下動軸36Bに対して回転可能に取り付けられており、主翼部32の前方へ延出されている。延出された前部は、軸部32Aに固定されている。上下動軸36Bが上下方向に移動することにより、揚力発生部30は軸部32Aを中心に回動し、主翼部32の迎角が調整される。
【0044】
図6(A)に示すように、上下動軸36Bが下方向に移動して、主翼部32が矢印Z1方向へ回転して前側が上向きとなると、前方からの風Wを受けて主翼部32へ鉛直方向上向きの空気力(揚力)(矢印UP)が作用する。一方、図6(B)に示すように、上下動軸36Bが上方向に移動して、主翼部32が矢印Z2方向へ回転しての前側が下向きとなると、前方からの風Wを受けて主翼部32へ鉛直方向下向きの空気力(矢印DN)が作用する。主翼部32へ鉛直方向上向きの空気力(揚力)を作用させる主翼部32の位置を「上昇位置P1」と称し、主翼部32へ鉛直方向下向きの空気力を作用させる主翼部32の位置を「下降位置P2」と称する。なお、上昇位置P1、下降位置P2は、迎角を調整することで、各々風の強さに応じて複数の位置をとることができる。
【0045】
垂直翼部34は、主翼部32に対して、回転台27の中心Oよりも後方に配置されている。垂直翼部34には、風に対して正対するように空気力が作用し、回転台27が中心Oを中心に回転する。すなわち、垂直翼部34により、主翼部32が風に対して常に正対する方向へ向くように、ヨーモーメントが発生する。例えば、図7に示されるように、矢印W1方向の風向きであった場合、ベース部26に対して位置Y1に配置されていた主翼部32は、矢印Y方向に回転して、位置Y2に配置される。
【0046】
図2及び図3に示されるように、ケーブル16は、筐体24及びベース部26を貫通し、駆動力伝達部40は、筐体24の内部でケーブル16を保持している。図8(A)(B)に示されるように、駆動力伝達部40は、 第1ローラー42、 第2ローラー43、ローラー保持部44、伝達アクチュエーター46、 コイルスプリング48、を備えている。第1ローラー42は、後述するモータジェネレータ50の軸部52に取り付けられており、当該軸部52を中心に軸部52と共に回転可能となっている。第1ローラー42は、外周に溝42Aが形成されており、溝42Aにケーブル16が係合されている。
【0047】
第2ローラー43は、第1ローラー42と外周が対向するように配置されており、第1ローラー42の外周と第2ローラー43の外周との間で、ケーブル16を挟持する。第2ローラー43の回転軸43Aは、ローラー保持部44に軸支持されている。ローラー保持部44は、互いに離間配置された一対の受部44A、一対の受部44A同士を連結する保持本体44Bを有している。
【0048】
保持本体44Bの第1ローラー42と反対側には、伝達アクチュエーター46が配置されている。伝達アクチュエーター46は、一例として、電気系アクチュエーターとして、ソレノイドを用いることができる。伝達アクチュエーター46は、アクチュエーター本体部46A、及び軸部46Bを有している。アクチュエーター本体部46Aは、筐体24に固定されている。軸部46Bは、伝達アクチュエーター46の駆動により、第1ローラー42と近づく方向及び離間する方向に移動可能となっている。軸部46Bの一端側は、アクチュエーター本体部46Aに固定され、軸部46Bの他端側は、保持本体44Bに固定されている。
【0049】
軸部46Bの外周には、コイルスプリング48が配置されている。コイルスプリング48は、軸部46Bの軸方向に弾性変形可能とされており、一端側がアクチュエーター本体部46Aに固定され、他端側が保持本体44Bに固定されている。コイルスプリング48により、保持本体44Bは、アクチュエーター本体部46Aと離れる方向、すなわち、第1ローラー42へ近づく方向へ付勢される。アクチュエーターがオフ状態のとき、軸部46Bは、コイルスプリング48により付勢され、保持本体44Bに当接されている。
【0050】
アクチュエーター本体部46Aは、作動により、第1ローラー42側へ移動された状態が維持される。これにより、ローラー保持部44が軸部46Bにより、第2ローラー43と共に第1ローラー42側へ押圧され、第1ローラー42の外周と第2ローラー43の外周との間で、ケーブル16が挟持される。この状態において、第1ローラー42及び第2ローラー43が回転すると、ケーブル16と第1ローラー42及び第2ローラー43の間にはトラクションが発生し、移動体本体22がケーブル16に沿って移動する。当該状態を「伝達オン状態S-ON」と称する。一方、伝達アクチュエーター46が非作動の状態で、ケーブル16と第1ローラー42及び第2ローラー43の間にトラクションが発生しない状態を「伝達オフ状態S-OFF」と称する。伝達アクチュエーター46は、制御部60と接続されており、制御部60からの信号によりオン/オフが制御される。
【0051】
モータジェネレータ50は、電気モーター(電動機)としての機能を有し、回転子、固定子、回転軸、軸受などの一般的なモータの部材を備えている。直流モータであっても交流モータであってもよい。モータジェネレータ50は、軸部52が回転することにより発電機としても機能する。図8(A)に示されるように、モータジェネレータ50には、充電路51A及び電力供給路51Bを介してバッテリー58が接続されている。充電路51Aは、モータジェネレータ50が発電する際に、モータジェネレータ50からの電力をバッテリー58へ送って充電するためのラインである。一方、電力供給路51Bは、バッテリー58からモータジェネレータ50へ電力を供給するためのラインである。モータジェネレータ50は、制御部60と接続されており、制御部60からの信号により、電気の供給を受けて駆動する電力駆動モードと、軸部52を外部からの力を受けて回転させることにより発電する発電モードと、に切り換えられる。
【0052】
充電路51A及び電力供給路51Bは、切り換え用のスイッチ45を介してモータジェネレータ50と接続されている。スイッチ45は、制御部60と接続されている。モータジェネレータ50とバッテリー58は、制御部60からの指示に応じて、スイッチ45が切り換えられ、充電路51Aまたは電力供給路51Bのいずれか一方を介して接続される。バッテリー58は、モータジェネレータ50が発電モードの時には、モータジェネレータ50からの電力を蓄える。一方、モータジェネレータ50が電力駆動モードの時には、モータジェネレータ50へ駆動のための電力を供給する。
【0053】
バッテリー58は、制御部60と接続されており、バッテリー58の残量が制御部60へ出力される。また、バッテリー58は、翼アクチュエーター36、伝達アクチュエーター46、ブレーキアクチュエーター72と接続されており、これらの作動に必要な電力を供給している。
【0054】
高度計59は、移動体20の高度を計測する。高度計59は、制御部60と接続されており、計測した高度データを制御部60へ出力する。
【0055】
ベース部26の上部で穴26Hに対応する部分には、ブレーキ機構70が設けられている。図9に示されるように、ブレーキ機構70は、ブレーキアクチュエーター72及びブレーキパッド74を備えている。ブレーキアクチュエーター72は、一例として電気系アクチュエーター、例えばソレノイドを用いることができる。ブレーキアクチュエーター72は、ブレーキアクチュエーター本体部72A及び軸部72Bを有している。ブレーキパッド74は、筐体76内に配置されている。筐体76には、ケーブル16を挿通するための孔76A、76Bが形成されている。ケーブル16は、筐体76を貫通するように配置されており、一対のブレーキパッド74でケーブル16を挟持可能とされている。
【0056】
一対のブレーキパッド74の一方(パッド74A)は、筐体76に固定されており、他方(パッド74B)は、ブレーキアクチュエーター72の軸部72Aに固定されている。軸部72Bは、ブレーキアクチュエーター72の駆動により、パッド74Aと近づく方向及び離間する方向に移動可能となっている。
【0057】
軸部72Bの外周には、コイルスプリング78が配置されている。コイルスプリング78は、軸部72Bの軸方向に弾性変形可能とされており、一端側がブレーキアクチュエーター本体部72Aに固定され、他端側がパッド74Bに固定されている。コイルスプリング78により、パッド74Bは、ブレーキアクチュエーター本体部72Aと離れる方向、すなわち、ケーブル16へ近づく方向へ付勢される。アクチュエーターがオフ状態のとき、軸部72Bは、コイルスプリング78により付勢され、パッド74Aは、ケーブル16に近い非接触位置に配置されている。
【0058】
ブレーキアクチュエーター72が作動すると、軸部72Bの移動により、パッド74Bがパッド74A側へ移動された状態が維持される。これにより、パッド74A、74Bの間にケーブル16が挟持され、移動体本体22とケーブル16との相対移動が阻止される。当該状態を「落下防止オン状態D-ON」と称する。一方、ブレーキアクチュエーター72が非作動の時のブレーキアクチュエーター72の状態を「落下防止オフ状態D-OFF」と称する。ブレーキアクチュエーター72を作動させることにより、移動体20の落下を防止することができる。
【0059】
筐体76の孔76Aに対応する部分には、ガイドパイプ80が立設されている。ガイドパイプ80は、長尺筒状とされ、筐体76に固定されている。ガイドパイプ80の内部に、ケーブル16が挿通されている。ガイドパイプ80により、ケーブル16に対する移動体20の水平方向に対して傾く動き(図2の矢印C参照)が抑制され、姿勢の安定化を図ることができる。
【0060】
次に、本実施形態の移動体20の移動の動作モードについて説明する。
【0061】
移動体20は、図10に示されるように、移動時において、駆動源、移動の方向、及び発電の有無により、電気力駆動非発電モードM1、空気力駆動非発電モードM2、空気力駆動発電モードM3、落下駆動発電モードM4、の4つの動作モードを有している。電気力駆動非発電モードM1は、バッテリー58からの電力を駆動源とし、移動の方向は上昇及び下降のいずれにも適用され、移動中の発電は行われない。空気力駆動非発電モードM2は、自然の風力を駆動源とし、移動の方向は上昇及び下降のいずれにも適用され、移動中の発電は行われない。空気力駆動発電モードM3は、自然の風力を駆動源とし、移動の方向は上昇及び下降のいずれにも適用され、移動中の発電が行われる。落下駆動発電モードM4は、位置エネルギーを駆動源都市、移動の方向は下降、移動中の発電が行われる。
【0062】
図11(A)~(D)には、各動作モードについて、エネルギーの流れの概略が示されている。図11(A)に示されるように、電気力駆動非発電モードM1では、バッテリー58からの電力でモータジェネレータ50が駆動し、駆動力伝達部40によりモータジェネレータ50の回転駆動力がケーブル16に伝達される。これにより、移動体20は、ケーブル16との間でトラクションを発生させることにより移動(上昇または下降)する。図11(B)に示されるように、空気力駆動非発電モードM2では、風力を受けた揚力発生部30は、空気力を発生させ、空気力により、駆動力伝達部40を介することなく移動体20が移動(上昇または下降)する。
【0063】
図11(C)に示されるように、空気力駆動発電モードM3では、風力を受けた揚力発生部30は、空気力を発生させ、空気力により、移動体20が移動(上昇または下降)する。移動により駆動力伝達部40を介して、モータジェネレータ50の軸部52を回転させ、モータジェネレータ50で発電が行われ、得られた電力がバッテリー58に充電される。図11(D)に示されるように、落下駆動発電モードM4では、位置エネルギー(重力)により、移動体20が下降する。下降により駆動力伝達部40を介して、モータジェネレータ50の軸部52を回転させ、モータジェネレータ50で発電が行われ、得られた電力がバッテリー58に充電される。
【0064】
次に、移動体20の動作について説明する。
移動体20の運転が開始されると、制御部60により、図12に示される移動体運転処理が実行される。
【0065】
まず、ステップS10で移動するかどうかの判断を行う。移動を行わないと判断した場合には、ステップS19で、ブレーキアクチュエーター72を作動させ、「落下防止オン状態D-ON」とする。これにより、パッド74A、74Bの間にケーブル16が挟持され、移動体本体22とケーブル16との相対移動が阻止される。
【0066】
移動すると判断した場合には、ステップS12で、風速計57から取得した風速が所定の値V[m/s]よりも大きいかどうかを判断する。ここでの風速V[m/s]は、揚力発生部30により移動体20を上昇させることができる揚力を発生させることができる程度の風速が設定される。風速がV[m/s]よりも大きいと判断された場合には、ステップS14へ進み、バッテリー58から得られる残量データに基づき、バッテリー58の残量がX[%]よりも大きいかどうかを判断する。バッテリー58の残量がX[%]よりも大きいと判断された場合には、ステップS20へ進み、空気力駆動非発電モードM2処理が実行される。
【0067】
空気力駆動非発電モードM2処理は、図13に示されるように、ステップS22で移動方向が上かどうかを判断する。移動方向が上であると判断された場合には、ステップS24で、翼アクチュエーター36へ信号を出力し、主翼部32が上昇位置P1へ配置されるように制御する。ステップS22で移動方向が上でない、すなわち、移動方向が下であると判断された場合には、ステップS26で、翼アクチュエーター36へ信号を出力し、主翼部32が下降位置P2へ配置されるように制御する。
【0068】
次に、ステップS28で、伝達アクチュエーター46へ信号を出力し、伝達アクチュエーター46をオフにして、伝達オフ状態S-OFFとする。これにより、上昇の場合には、ケーブル16と第1ローラー42及び第2ローラー43の間にトラクションが発生しない状態で、主翼部32が風を受けることによる揚力で、移動体20がケーブル16に沿って上昇する。また、下降の場合には、ケーブル16と第1ローラー42及び第2ローラー43の間にトラクションが発生しない状態で、主翼部32が風を受けることによる空気力、及び重力により、移動体20がケーブル16に沿って下降する。
【0069】
空気力駆動非発電モードM2処理によれば、風により得られる空気力により、移動体20をケーブル16に沿って上昇または下降させることができ、省エネルギーでの移動を実現することができる。
【0070】
ステップS14で、バッテリーの残量がX[%]よりも多くないと判断された場合には、ステップS30で、空気力駆動発電モードM3処理が実行される。空気力駆動発電モード M3処理は、図14に示されるように、ステップS22、ステップS24、ステップS26が、空気力駆動非発電モードM2と同様に行われる。次に、ステップS32で、伝達アクチュエーター46へ信号を出力し、伝達アクチュエーター46をオンにして、伝達オン状態S-ONとする。
【0071】
これにより、上昇の場合には、ケーブル16と第1ローラー42及び第2ローラー43の間にトラクションを発生させながら、主翼部32が風を受けることによる揚力で、移動体20がケーブル16に沿って上昇する。また、下降の場合には、ケーブル16と第1ローラー42及び第2ローラー43の間にトラクションを発生させながら、主翼部32が風を受けることによる空気力、及び重力により、移動体20がケーブル16に沿って下降する(図17参照)。
【0072】
次に、ステップS34で、スイッチ45へ信号を出力し、充電路51Aを介してモータジェネレータ50とバッテリー58が接続されるように、スイッチ45を切り換える。そして、ステップS36で、モータジェネレータ50を、発電モードに切り換える。これにより、移動体20の移動によって生じるケーブル16との間のトラクションにより、第1ローラー42と共にモータジェネレータ50の軸部52が回転し、これにより発電が行われる。発電により得られた電力は、充電路51Aを経てバッテリー58に蓄えられる。
【0073】
空気力駆動発電モードM3処理によれば、風により得られる揚力により、移動体20をケーブル16に沿って上昇または下降させることができ、省エネルギーでの移動を実現することができる。さらに、上昇または下降の際に、移動のエネルギーをモータジェネレータ50へ伝達して発電し、バッテリー58へ蓄電する。したがって、移動体20の運転に必要な電力の外部からの供給量を少なくする、または、供給をなくして自己発電で賄うことができる。
【0074】
ステップS12で、風速がV[m/s]よりも大きくないと判断された場合には、ステップS16へ進み、バッテリー58から得られる残量データに基づき、バッテリー58の残量がX[%]よりも大きいかどうかを判断する。バッテリー58の残量がX[%]よりも大きいと判断された場合には、ステップS40へ進み、電気力駆動非発電モードM1処理が実行される。
【0075】
電気力駆動非発電モードM1処理は、図15に示されるように、ステップS22、ステップS24、ステップS26が、空気力駆動非発電モードM2処理と同様に行われ、ステップS32が、電気力駆動発電モードM3処理と同様に行われる。ステップS42で、スイッチ45へ信号を出力し、電力供給路51Bを介してモータジェネレータ50とバッテリー58が接続されるように、スイッチ45を切り換える。そして、ステップS44で、モータジェネレータ50を、駆動モードに切り換える。これにより、第1ローラー42及び第2ローラー43の間でケーブル16が挟持された状態で、第1ローラー42及び第2ローラー43が回転し、トラクションにより、移動体20がケーブル16に沿って移動する。
【0076】
電気力駆動非発電モードM1処理によれば、風力が得られない場合でも、電力により、移動体20をケーブル16に沿って上昇または下降させることができる。
【0077】
ステップS16で、バッテリー58の残量がX[%]よりも大きくないと判断された場合には、ステップS18へ進む。ステップS18では、高度計59からの高度データに基づき、移動体20の高度がH[m]よりも高いかどうかを判断する。移動体20の高度がH[m]よりも高いと判断された場合には、ステップS50へ進み、落下駆動発電モードM4処理が実行される
【0078】
落下駆動発電モードM4処理は、図16に示されるように、ステップS26で、空気力駆動非発電モードM2処理と同様に、主翼部32を下降位置P2に配置する。ステップS32で、電気力駆動発電モードM3処理と同様に、伝達アクチュエーター46を伝達オン状態S-ONとし、ステップS34で、スイッチ45へ信号を出力し、充電路51Aを介してモータジェネレータ50とバッテリー58が接続されるように、スイッチ45を切り換える。そして、ステップS36で、モータジェネレータ50を、発電モードに切り換える。
【0079】
落下駆動発電モードM4処理によれば、風力が得られない場合でも、位置エネルギーにより落下させることにより、移動体20を下降させることができる。また、移動体20を、位置エネルギーにより下降させつつ、バッテリー58の充電を行うことができる。
【0080】
ステップS18で、高度がH[m]よりも高くないと判断された場合には、ステップS19へ進む。前述のように、ステップS19では、ブレーキアクチュエーター72を作動させ、「落下防止オフ状態D-OFF」とする。これにより、パッド74A、74Bの間にケーブル16が挟持され、移動体本体22とケーブル16との相対移動が阻止される。
【0081】
ステップS20、S30、S40、S50、S19の後、ステップS60で運転を終了するかどうかを判断し、運転を終了しない場合には、ステップS10へ戻る。運転を終了する場合には、本移動体運転処理を終了する。
【0082】
上記の移動体運転処理によれば、風力が利用できるときには、風力を利用して移動体20を移動させ、風力が利用できないときには、電力を利用してモータジェネレータ50を駆動することにより、移動体20を移動させる。このように、風力の有無により、移動体20を移動させるための動力源を切り換えることにより、省エネルギーで、地上と高空との間で移動体20を移動させることができる。
【0083】
また、風力や位置エネルギーを利用して移動体20を移動させている時に、モータジェネレータ50により、運動エネルギーを電力に変換し、得られた電力をバッテリー58に蓄電するので、効率的に電力を蓄えることができる。
【0084】
なお、本実施形態では、モータジェネレータ50を用いたが、モータとジェネレータを別々に備えていてもよい。本実施形態のモータジェネレータ50は、駆動部として機能すると共に、発電部としても機能するので、移動体20に搭載する部品点数を少なくすることができる。
【0085】
また、本実施形態では、第1ローラー42にケーブル16を巻き架けないで第1ローラー42と第2ローラー43との間にケーブル16を挟持したが、第1ローラー42にケーブル16を巻き架けてもよい。この場合には、図18(A)、(B)に示すように、第1ローラー42の溝42Aを螺旋状に形成し、第1ローラー42の溝42Aにケーブル16を巻き架けることができる。
【0086】
また、本実施形態では、風力がV[m/s]以下で、バッテリー58の残量がX[%]より多い場合、移動方向が下降する場合でも、電力駆動非発電モードM1で運転を行ったが、下降する場合には、落下駆動非発電モードM5で運転してもよい。落下駆動非発電モードM5は、図19に示されるように、ステップS26で、主翼部32を下降位置P2へ配置し、ステップS28で、伝達オフ状態S-OFFとする。これにより、ケーブル16と第1ローラー42及び第2ローラー43の間にトラクションが発生しない状態で、重力により、移動体20がケーブル16に沿って下降する。落下駆動非発電モードM5では、電力を用いることなく、重力により移動体20を移動させるので、バッテリー58の残量が確保され、省エネルギーで運転を行うことができる。
【符号の説明】
【0087】
10 高空移動システム
12 地上ステーション(ベース施設)
14 高空飛翔体
16 ケーブル(索道)
20 移動体
22 移動体本体
30 揚力発生部
36 翼アクチュエーター(切換部)
40 駆動力伝達部
42 第1ローラー(ローラー)
43 第2ローラー(ローラー)
46 伝達アクチュエーター(押付部)
46A アクチュエーター本体部
50 モータジェネレータ(駆動部、発電部)
57 風速計(風力判断部)
58 バッテリー(蓄電部)
60 制御部(風力判断部)
70 ブレーキ機構(落下防止装置)
80 ガイドパイプ(索道姿勢安定部)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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