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特許7144063肺がんを治療するための組成物および方法
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  • 特許-肺がんを治療するための組成物および方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-20
(45)【発行日】2022-09-29
(54)【発明の名称】肺がんを治療するための組成物および方法
(51)【国際特許分類】
   C07K 16/18 20060101AFI20220921BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20220921BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20220921BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20220921BHJP
   C12P 21/08 20060101ALN20220921BHJP
   C12N 15/13 20060101ALN20220921BHJP
【FI】
C07K16/18 ZNA
A61K39/395 N
A61P11/00
A61P35/00
C12P21/08
C12N15/13
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2019553351
(86)(22)【出願日】2018-03-30
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-04-23
(86)【国際出願番号】 EP2018058346
(87)【国際公開番号】W WO2018178364
(87)【国際公開日】2018-10-04
【審査請求日】2021-02-22
(31)【優先権主張番号】17305382.8
(32)【優先日】2017-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】518230511
【氏名又は名称】プロガストリン、エ、カンセル、エス、アー エル、エル
【氏名又は名称原語表記】PROGASTRINE ET CANCERS S.A R.L.
(74)【代理人】
【識別番号】100107342
【弁理士】
【氏名又は名称】横田 修孝
(74)【代理人】
【識別番号】100155631
【弁理士】
【氏名又は名称】榎 保孝
(74)【代理人】
【識別番号】100137497
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 未知子
(74)【代理人】
【識別番号】100207907
【弁理士】
【氏名又は名称】赤羽 桃子
(72)【発明者】
【氏名】アレクサンドル、プリュール
【審査官】小田 浩代
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-516438(JP,A)
【文献】国際公開第2008/076454(WO,A1)
【文献】特表2008-513536(JP,A)
【文献】特表2004-536835(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K 1/00-19/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
UniProt/GeneSeq
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロガストリン結合抗体またはその抗原結合断片を含んでなる、肺がんの予防または治療のための組成物であって、前記抗体は、
-それぞれ配列番号4、5および6のアミノ酸配列のCDR-H1、CDR-H2およびCDR-H3を含んでなる重鎖と、それぞれ配列番号7、8および9のアミノ酸配列のCDR-L1、CDR-L2およびCDR-L3を含んでなる軽鎖とを含んでなる、抗体、
-それぞれ配列番号10、11および12のアミノ酸配列のCDR-H1、CDR-H2およびCDR-H3を含んでなる重鎖と、それぞれ配列番号13、14および15のアミノ酸配列のCDR-L1、CDR-L2およびCDR-L3を含んでなる軽鎖とを含んでなる、抗体、
-それぞれ配列番号16、17および18のアミノ酸配列のCDR-H1、CDR-H2およびCDR-H3を含んでなる重鎖と、それぞれ配列番号19、20および21のアミノ酸配列のCDR-L1、CDR-L2およびCDR-L3を含んでなる軽鎖とを含んでなる、抗体、
-それぞれ配列番号22、23および24のアミノ酸配列のCDR-H1、CDR-H2およびCDR-H3を含んでなる重鎖と、それぞれ配列番号25、26および27のアミノ酸配列のCDR-L1、CDR-L2およびCDR-L3を含んでなる軽鎖とを含んでなる、抗体、
-それぞれ配列番号28、29および30のアミノ酸配列のCDR-H1、CDR-H2およびCDR-H3を含んでなる重鎖と、それぞれ配列番号31、32および33のアミノ酸配列のCDR-L1、CDR-L2およびCDR-L3を含んでなる軽鎖とを含んでなる、抗体、並びに、
-それぞれ配列番号34、35および36のアミノ酸配列のCDR-H1、CDR-H2およびCDR-H3を含んでなる重鎖と、それぞれ配列番号37、38および39のアミノ酸配列のCDR-L1、CDR-L2およびCDR-L3を含んでなる軽鎖とを含んでなる、抗体
からなる群から選択される、組成物
【請求項2】
請求項1に記載の組成物であって、前記プロガストリン結合抗体またはその抗原結合断片が、1本鎖抗体、ラクダ化抗体、IgA1抗体、IgA2抗体、IgD抗体、IgE抗体、IgG1抗体、IgG2抗体、IgG3抗体、IgG4抗体、およびIgM抗体から選択される、組成物
【請求項3】
請求項1または2に記載の組成物であって、前記プロガストリン結合抗体またはその抗原結合断片が、
・配列番号2により表される配列を有する、プロガストリンのドメインに位置するエピトープに結合する抗体、および
・配列番号3により表される配列を有する、プロガストリンのドメインに位置するエピトープに結合する抗体
から選択される、組成物
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載の組成物であって、前記プロガストリン結合抗体またはその抗原結合断片が、中和抗体である、組成物
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載の組成物であって、前記抗体が、
・配列番号41のアミノ酸配列の重鎖と、配列番号42のアミノ酸配列の軽鎖とを含んでなる、モノクローナル抗体、
・配列番号43のアミノ酸配列の重鎖と、配列番号44のアミノ酸配列の軽鎖とを含んでなる、モノクローナル抗体、
・配列番号45のアミノ酸配列の重鎖と、配列番号46のアミノ酸配列の軽鎖とを含んでなる、モノクローナル抗体、
・配列番号47のアミノ酸配列の重鎖と、配列番号48のアミノ酸配列の軽鎖とを含んでなる、モノクローナル抗体、
・配列番号49のアミノ酸配列の重鎖と、配列番号50のアミノ酸配列の軽鎖とを含んでなる、モノクローナル抗体、および
・配列番号51のアミノ酸配列の重鎖と、配列番号52のアミノ酸配列の軽鎖とを含んでなる、モノクローナル抗体
からなる群から選択される、組成物
【請求項6】
請求項1~3のいずれか一項に記載の組成物であって、前記抗体がヒト化抗体である、組成物
【請求項7】
請求項6に記載の組成物であって、前記抗体が、
・配列番号53のアミノ酸配列の重鎖可変領域と、配列番号54のアミノ酸配列の軽鎖可変領域とを含んでなる、ヒト化抗体、
・配列番号55のアミノ酸配列の重鎖可変領域と、配列番号56のアミノ酸配列の軽鎖可変領域とを含んでなる、ヒト化抗体、
・配列番号57、58、および59の間で選択されるアミノ酸配列の重鎖可変領域と、配列番号60、61、および62の間で選択されるアミノ酸配列の軽鎖可変領域とを含んでなる、ヒト化抗体、
・配列番号63、64、および65の間で選択されるアミノ酸配列の重鎖可変領域と、配列番号66、67、および68の間で選択されるアミノ酸配列の軽鎖可変領域とを含んでなる、ヒト化抗体、
・配列番号69および71の間で選択されるアミノ酸配列の重鎖可変領域と、配列番号70および72の間で選択されるアミノ酸配列の軽鎖可変領域とを含んでなる、ヒト化抗体、並びに
・配列番号75および76の間で選択されるアミノ酸配列の重鎖可変領域と、配列番号77および78の間で選択されるアミノ酸配列の軽鎖可変領域とを含んでなる、ヒト化抗体
からなる群から選択され、
前記抗体が、ヒト抗体に由来する軽鎖および重鎖の定常領域も含む、組成物
【請求項8】
請求項6または7に記載の組成物であって、前記抗体が、配列番号71のアミノ酸配列の重鎖可変領域と、配列番号72のアミノ酸配列の軽鎖可変領域とを含み、前記抗体が、ヒト抗体に由来する軽鎖および重鎖の定常領域も含んでなる、組成物
【請求項9】
請求項6~8のいずれか一項に記載の組成物であって、前記抗体が、配列番号73のアミノ酸配列の重鎖と、配列番号74のアミノ酸配列の軽鎖とを含む、組成物
【請求項10】
学的に許容される担体および/または賦形剤をさらに含んでなる、請求項1~9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
第2の治療剤をさらに含んでなる、請求項10に記載の使用のための組成物。
【請求項12】
請求項11に記載の組成物であって、前記剤が、生物学的剤または化学療法剤である、組成物。
【請求項13】
記生物学的剤が、抗EGFRモノクローナル抗体または抗VEGFモノクローナル抗体である、請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
記化学療法剤が、アルキル化剤、代謝拮抗物質、抗腫瘍抗生物質、有糸分裂阻害物質、クロマチン機能阻害物質、抗血管新生剤、抗エストロゲン物質、抗アンドロゲン物質および免疫調節物質の群から選択される、請求項13に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、がんの予防および治療に関し、特に、肺がんの予防および治療のための方法および組成物に関する。本発明による組成物は、プロガストリン結合分子、特に抗hPG抗体を含み、一方、本発明による方法は、プロガストリン結合分子の使用、特に抗hPG抗体の使用を含む。
【背景技術】
【0002】
肺がんは、依然として、世界の中で最も致死的な悪性腫瘍である。外科的治療、全身療法、および放射線療法の向上にもかかわらず、肺がんと診断された全ての患者における5年生存率は、15から20%の間にとどまっている。
【0003】
肺がんは、2つの主なタイプの腫瘍、すなわち、小細胞肺がん(SCLC)および非小細胞肺がん(NSCLC)を含む。SCLCは、全ての肺がんの15~18%に相当し、一方NSCLCは、肺がんの約80%~85%を占める。その他のタイプの肺がん、例えば、腺様嚢胞がん、リンパ腫、および肉腫、さらに過誤腫などの良性肺腫瘍は、稀である。
【0004】
小細胞肺がんおよび非小細胞肺がんの治療は異なる。具体的には、SCLCは、他の細胞タイプの肺がんよりも化学療法および放射線療法に対する応答性が高い。しかし、SCLCは、診断時までに広範囲に播種される傾向があるため、治癒の達成が難しい。これまでのところ、幅広い肺がんの医療現場に移行された分子的バイオマーカーは存在しない。治療はがんの発生に依存し、治療としては、通常、小さな限局性の腫瘍については手術、または化学療法(場合によっては放射線療法と組み合わせる)が挙げられる。
【0005】
そのため、肺がんの予防または治療のための新たな組成物および方法が依然必要とされている。
【0006】
これが、本発明の目的である。
【発明の概要】
【0007】
ここで、本発明は、肺がんの予防または治療で使用するための、プロガストリンに対し特異的に結合する抗体を提供する。また、本発明は、肺がんの予防または治療で使用するための組成物であって、プロガストリンに対し特異的に結合する抗体を含む組成物、並びに肺がんの予防または治療のための方法であって、プロガストリンに結合する抗体を含んでなる組成物の単独での使用、または任意の他の公知の肺がんに対する予防もしくは治療方法と組み合わせての使用を含んでなる、方法も提供する。
【0008】
本明細書で説明される抗hPG抗体、特に中和抗hPG抗体は、肺腫瘍細胞のPG依存的増殖を阻害することで、肺がんの治療のための有用な治療剤となる。したがって、抗hPG抗体を含んでなる組成物と、肺がんを治療するための抗hPG抗体および/または医薬組成物を使用する方法も提供される。医薬組成物は、例えば、非経口、皮下または静脈内注射を含めた、任意の好都合な投与経路向けに製剤化することができ、この医薬組成物は、典型的には、抗hPG抗体、および1つ以上の許容される担体、賦形剤、および/または所望の投与様式に好適な希釈剤を含み、また、以下でさらに説明されるような他の任意選択の構成要素を含んでもよい。組成物は、治療的使用向けに、使用しやすいように単位剤形にパッケージングされてもよい。
【0009】
概して、治療方法は、治療を必要とする対象、例えば、肺がんと診断された対象に、治療的利益をもたらすのに有効な量の抗PG抗体および/またはその医薬組成物を投与することを含む。治療的利益としては、以下でさらに詳細に説明されるが、肺がんの任意の緩和、例えば、肺がんの進行の緩徐化もしくは停止、肺がんの重症度の低減、肺がんの成長もしくは肺がん細胞の増殖の阻害、肺腫瘍のサイズの低減、および/または肺がん患者におけるPG血清レベルの低減が挙げられる。対象は、ヒトであっても、または家畜化動物(例えば、ネコ、イヌ、ウシ、ブタ、ウマ)もしくは非家畜化動物を含めた非ヒトであってもよい。好ましくは、治療される対象は、ヒトである。抗hPG抗体療法が有用である対象は、任意の疾患進行ステージにある患者(例えば、肺がんステージ0、I、II、III、もしくはIV)、肺がん向け療法を受けている患者(例えば、化学療法、放射線療法、外科的切除)、またはその他の肺がん向け療法を受けている患者であり得る。
【0010】
また、肺がん幹細胞の成長の阻害を必要とする患者に、当該肺がん幹細胞を阻害するのに有効な量の抗PG抗体および/またはその医薬組成物を投与することにより、患者における肺がん幹細胞の成長を阻害するための方法も提供される。
【0011】
複数の態様において、抗PG抗体は、肺がん幹細胞の増殖の低減、または肺がん幹細胞の分化もしくは細胞死の速度の増殖、または治療される患者におけるプロガストリン血中濃度の低減に有効である。他の態様において、抗PG抗体および/またはその医薬組成物は、結腸直腸がん幹細胞の成長の阻害に有効な第2の治療剤、例えば、プロガストリン以外に対する特異性を有する抗体、と同時にまたはその後に、投与することができる。
【0012】
本明細書で説明されるような抗hPG抗体を用いた治療は、他の療法と組み合わせても他の療法に付属してもよい。その他の肺がん向け療法における非限定的な例としては、化学療法処置、放射線療法、外科的切除、および本明細書で説明されるような抗体療法が挙げられる。具体的な例において、抗hPG抗体は、化学療法剤と組み合わせて投与される。別の具体的な例において、抗hPG抗体は、外科的切除に付属して投与される。
【0013】
また、本発明は、抗PG抗体と好ましくは薬学的に許容される担体および/または賦形剤とを含む医薬組成物にも関する。一部の態様において、医薬組成物は、第2の治療剤をさらに含む。一部の態様において、第2の治療剤は、生物学的剤または化学療法剤である。生物学的剤の例としては、抗EGFRモノクローナル抗体および抗VEGFモノクローナル抗体が挙げられ、一方、化学療法剤は、例えば、アルキル化剤、代謝拮抗物質、抗腫瘍抗生物質、有糸分裂阻害物質、クロマチン機能阻害物質、抗血管新生剤、抗エストロゲン物質、抗アンドロゲン物質、および免疫調節物質などの化合物を含む。
【0014】
ヒトプレプロガストリンの101アミノ酸ペプチド(アミノ酸配列参照:AAB19304.1)は、ガストリン遺伝子の一次翻訳産物である。プロガストリンは、プレプロガストリンから最初の21アミノ酸(シグナルペプチド)を切断することによって形成される。プロガストリンの80アミノ酸鎖は、さらに、切断および修飾酵素によって処理されて、いくつかの生物学的活性ガストリンホルモン形態:プロガストリンのアミノ酸38~71を含む、ガストリン34(G34)およびグリシン伸長ガストリン34(G34-Gly)、プロガストリンのアミノ酸55~71を含む、ガストリン17(G17)およびグリシン伸長ガストリン17(G17-Gly)となる。
【0015】
抗ヒトプロガストリン(抗hPG)モノクローナル抗体および、診断または療法のためのその使用は、以下の文書:結腸直腸がんについてはWO2011/083088、乳がんについてはWO2011/083090、膵臓がんについてはWO2011/083091、結腸直腸および胃腸がんについてはWO2011/116954、並びに肝臓病態についてはWO2012/013609およびWO2011/083089で説明されている。
【0016】
本発明は、本明細書に示される詳細な説明と付属の図面とから、より十分に理解されよう。ただし、これらの説明および図面は、例示として示されるに過ぎず、本発明の意図されている範囲を限定しない。
【発明を実施するための形態】
【0017】
第1の側面において、本発明は、肺がんの予防または治療で使用するためのプロガストリン結合分子に関する。また、本開示は、前立腺がんの予防または治療における使用のための組成物であって、プロガストリン結合抗体またはその抗原結合断片を含む組成物も提供する。
【0018】
「プロガストリン結合分子」とは、本明細書において、プロガストリンに結合するが、ガストリン17(G17)、ガストリン34(G34)、グリシン伸長ガストリン17(G17-Gly)、またはグリシン伸長ガストリン34(G34-Gly)には結合しない任意の分子を意味する。本発明のプロガストリン結合分子は、任意のプロガストリン結合分子、例えば、抗体分子または受容体分子であり得る。好ましくは、プロガストリン結合分子は、抗プロガストリン抗体(抗PG抗体)またはその抗原結合断片である。
【0019】
「プロガストリン」という用語は、哺乳類プロガストリンペプチド、特にヒトプロガストリンを指す。誤解を避けるため、いかなる指定も伴わない「ヒトプロガストリン」または「hPG」という表現は、配列番号1の配列のヒトPGを意味する。ヒトプロガストリンは、注目すべきことに、上述の生物学的活性ガストリンホルモン形態には存在しないN末端およびC末端ドメインを含む。好ましくは、当該N末端ドメインの配列は、配列番号2によって表される。別の好ましい態様において、当該C末端ドメインの配列は、配列番号3によって表される。
【0020】
したがって、第1の態様において、本発明は、プロガストリンに結合するが、他のガストリン遺伝子由来産物のいずれにも結合しない、肺がんの治療における使用のための抗体に関する。
【0021】
「結合する」、「結合」などは、抗体またはその抗原結合断片が、生理的条件下で比較的安定性である抗原との複合体を形成することを意図している。2つの分子が結合するかどうかを定量するための方法は、当分野で周知されており、例えば、平衡透析法、表面プラズモン共鳴法などが挙げられる。特定の態様において、当該抗体またはその抗原結合断片は、BSAまたはカゼインなどの非特異的分子に対する結合における親和性よりも少なくとも2倍大きい親和性で、プロガストリンに結合する。より特定の態様において、当該抗体またはその抗原結合断片は、プロガストリンのみに結合する。
【0022】
「肺がん」という表現は、肺の組織内、通常は気道の内側を覆う細胞内で生じるがんを指す。本明細書で使用する「肺がん」とは、特定の、小細胞肺がん(SCLC)(小細胞がんおよび混合型小細胞がんを含む)並びに非小細胞肺がん(NSCLC)(扁平上皮がん、大細胞がん、および腺がん)を包含する。また、その他のタイプの肺がん、例えば、腺様嚢胞がん、リンパ腫、および肉腫、さらに過誤腫などの良性肺腫瘍も、本明細書で使用する肺がんに含まれる。
【0023】
具体的な態様において、本発明は、肺がんの予防または治療における使用のための抗PG抗体であって、プロガストリンのアミノ酸配列に対応するアミノ酸配列を含むエピトープを認識する、抗PG抗体を提供する。
【0024】
より具体的な態様において、肺がんの予防または治療における使用のための当該抗PG抗体は、プロガストリンのエピトープを認識し、当該エピトープは、プロガストリンのN末端部分のアミノ酸配列に対応するアミノ酸配列を含み、当該アミノ酸配列は、hPGの残基10~14、hPGの残基9~14、hPGの残基4~10、hPGの残基2~10、またはhPGの残基2~14に対応するアミノ酸配列を含み得、hPGのアミノ酸配列は、配列番号1である。
【0025】
より具体的な態様において、肺がんの予防または治療における使用のための抗PG抗体は、プロガストリンのエピトープを認識し、当該エピトープは、プロガストリンのC末端部分のアミノ酸配列に対応するアミノ酸配列を含み、当該アミノ酸配列は、hPGの残基71~74、hPGの残基69~73、hPGの残基71~80(配列番号40)、hPGの残基76~80、またはhPGの残基67~74に対応するアミノ酸配列を含み得、hPGのアミノ酸配列は、配列番号1である。
【0026】
より特定の態様において、肺がんの予防または治療における使用のための抗PG抗体は、上述のような方法による定量で、少なくとも5000nM、少なくとも500nM、100nM、80nM、60nM、50nM、40nM、30nM、20nM、10nM、7nM、5nM、4nM、3nM、2nM、1nM、0.5nM、0.1nM、50pM、10pM、5pM、1pM、または少なくとも0.1pMのプロガストリンに対する親和性を有する。
【0027】
好ましくは、肺がんの予防または治療における使用のための抗PG抗体は、中和抗PG抗体である。
【0028】
「中和抗PG抗体」という表現は、PGに結合しPG依存的シグナリングをブロックして、腫瘍細胞における、特に肺腫瘍細胞におけるPG誘導応答の阻害をもたらす抗体を指す。肺がん細胞のPG誘導応答の阻害は、細胞分化の抑制、細胞死の抑制、および/または細胞増殖の刺激によって媒介され得る。
【0029】
本明細書で使用する「抗体」とは、ポリクローナルおよびモノクローナル抗体を含むように意図されている。抗体(または「免疫グロブリン」)は、ジスルフィド結合によって相互接続された少なくとも2つの重(H)鎖および2つの軽(L)鎖を含む糖タンパク質からなる。各重鎖は、重鎖可変領域(またはドメイン)(本明細書ではHCVRまたはVHと略される)および重鎖定常領域を含む。重鎖定常領域は、3つのドメイン、CH1、CH2およびCH3を含む。各軽鎖は、軽鎖可変領域(本明細書ではLCVRまたはVLと略される)および軽鎖定常領域を含む。軽鎖定常領域は、1つのドメイン、CLを含む。VHおよびVL領域は、「相補性決定領域」(CDR)または「超可変領域」と称される超可変性の領域にさらに再分割され得、これらの領域は、主に抗原のエピトープへの結合を担い、これらの領域の間には、フレームワーク領域(FR)と称される、より保存的な領域が散在する。抗体の軽鎖および重鎖内のCDRを同定し、これらの配列を決定する方法は、当業者に周知されている。誤解を避けるため、反対の内容が示されない場合、CDRという表現は、IMGTにより定義される抗体の重鎖および軽鎖の超可変領域を意味する。IMGTユニークナンバリングは、フレームワーク領域および相補性決定領域(CDR1-IMGT:27~38、CDR2)の標準化された境界を提供する。
【0030】
IMGTユニークナンバリングは、任意の抗原受容体、鎖のタイプ、または種における可変ドメインを比較するために定義された[Lefranc M.-P.,Immunology Today 18,509(1997)/Lefranc M.-P.,The Immunologist,7,132-136(1999)/Lefranc,M.-P.,Pommie,C.,Ruiz,M.,Giudicelli,V.,Foulquier,E.,Truong,L.,Thouvenin-Contet,V.and Lefranc,Dev.Comp.Immunol.,27,55-77(2003)]。IMGTユニークナンバリングにおいて、保存アミノ酸は常に同じ位置にあり、例えば、システイン23(1st-CYS)、トリプトファン41(CONSERVED-TRP)、疎水アミノ酸89、システイン104(2nd-CYS)、フェニルアラニンまたはトリプトファン118(J-PHEまたはJ-TRP)となる。IMGTユニークナンバリングは、フレームワーク領域(FR1-IMGT:位置1~26、FR2-IMGT:位置39~55、FR3-IMGT:66~104、およびFR4-IMGT:118~128)および相補性決定領域(CDR1-IMGT:27~38、CDR2-IMGT:56~65、およびCDR3-IMGT:105~117)の標準化された境界を提供する。ギャップは、占有されていない位置に相当するため、CDR-IMGTの長さ(括弧の間に示され、ドットで区切られる(例えば、[8.8.13]))は決定的な情報になる。IMGTユニークナンバリングは、IMGT Colliers de Perlesという名称の2D図式表現[Ruiz,M.and Lefranc,M.-P.,Immunogenetics,53,857-883(2002)/Kaas,Q.and Lefranc,M.-P.,Current Bioinformatics,2,21-30(2007)]およびIMGT/3Dstructure-DBにおける3D構造[Kaas,Q.,Ruiz,M.and Lefranc,M.-P.,T cell receptor and MHC structural data.Nucl.Acids.Res.,32,D208-D210(2004)]で使用されている。
【0031】
各VHおよびVLは3つのCDRおよび4つのFRから構成され、アミノ末端からカルボキシ末端にかけて以下の順:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4に並んでいる。重鎖および軽鎖の可変領域は、抗原と相互作用する結合ドメインを含有する。抗体の定常領域は、免疫グロブリンが、宿主組織または因子(免疫システムの様々な細胞(例えば、エフェクター細胞)および古典的相補システムの第1の構成要素(Clq)を含む)に結合するのを媒介し得る。抗体は、異なるアイソタイプのもの(すなわち、IgA、IgD、IgE、IgG、またはIgM)であってもよい。
【0032】
特定の態様において、当該プロガストリン結合抗体またはその抗原結合断片は、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、キメラ抗体、1本鎖抗体、ラクダ化抗体、IgA1抗体、IgA2抗体、IgD抗体、IgE抗体、IgG1抗体、IgG2抗体、IgG3抗体、IgG4抗体、およびIgM抗体からなる群より選択される。
【0033】
「ポリクローナル抗体」とは、1つ以上の他の同一ではない抗体の中で、またはこのような抗体の存在下で産生された抗体である。概して、ポリクローナル抗体は、Bリンパ球から、同一ではない抗体を産生するいくつかの他のBリンパ球の存在下で産生される。通常、ポリクローナル抗体は、免疫化された動物から直接取得される。
【0034】
「モノクローナル抗体」という用語は、ほぼ同質な抗体集団から生じる抗体を指し、この抗体集団は、最小限の割合で見いだされ得るいくつかの考えられる天然存在の変異を除き、同一な抗体を含む。モノクローナル抗体は、ハイブリドーマなどの単一の細胞クローンの成長から生じ、1つのクラスおよびサブクラスの重鎖と、1つのタイプの軽鎖とによって特徴づけられる。
【0035】
抗体の「抗原結合断片」という表現は、当該抗体の標的(概して抗原とも呼ばれる)、概して同じエピトープに結合する能力を保持し、かつ、抗体のアミノ酸配列のうちの、少なくとも5個の隣接するアミノ酸残基、少なくとも10個の隣接するアミノ酸残基、少なくとも15個の隣接するアミノ酸残基、少なくとも20個の隣接するアミノ酸残基、少なくとも25個の隣接するアミノ酸残基、少なくとも40個の隣接するアミノ酸残基、少なくとも50個の隣接するアミノ酸残基、少なくとも60個の隣接するアミノ酸残基、少なくとも70個の隣接するアミノ酸残基、少なくとも80個の隣接するアミノ酸残基、少なくとも90個の隣接するアミノ酸残基、少なくとも100個の隣接するアミノ酸残基、少なくとも125個の隣接するアミノ酸残基、少なくとも150個の隣接するアミノ酸残基、少なくとも175個の隣接するアミノ酸残基、または少なくとも200個の隣接するアミノ酸残基のアミノ酸配列を含む、任意のペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質を示すように意図している。
【0036】
特定の態様において、当該抗原結合断片は、由来抗体における少なくとも1つのCDRを含む。さらに好ましい態様において、当該抗原結合断片は、由来抗体における2、3、4、または5つのCDR、より好ましくは由来抗体における6つのCDRを含む。
【0037】
「抗原結合断片」は、以下に限定されないが、Fv、scFv(scは1本鎖を指す)、Fab、F(ab′)、Fab′、scFv-Fc断片もしくはダイアボディー、またはXTEN(伸長組換えポリペプチド)もしくはPASモチーフなどの不規則なペプチドを伴う融合タンパク質、または化学修飾により、例えば、ポリ(アルキレン)グリコールの付加、例えば、ポリ(エチレン)グリコールの付加(「PEG化」)(ペグ化断片は、Fv-PEG、scFv-PEG、Fab-PEG、F(ab′)-PEG、もしくはFab′-PEGと呼ばれる)(「PEG」はポリ(エチレン)グリコールを指す)により、もしくはリポソーム内の取込みにより、半減期が増加する任意の断片からなる群において選択され得、当該断片は、本発明における抗体の特徴的CDRのうちの少なくとも1つを有する。好ましくは、当該「抗原結合断片」は、由来する抗体の可変重鎖または可変軽鎖の部分的配列を含み、当該部分的配列は、由来する抗体と同じ結合特異性と、由来する抗体の標的に対する親和性の、好ましくは少なくとも1/100、より好ましい方式では少なくとも1/10に等しい十分な親和性とを保持するのに十分である。
【0038】
別の特定の態様において、本発明における肺がんの診断のための方法において、対象からの生体試料は、プロガストリンに結合する抗体に接触され、当該抗体は、当業者に公知の免疫化法によって得られたものであり、アミノ酸配列がプロガストリンのアミノ酸配列の全体または一部を含むペプチドを、免疫原として使用する。特に、当該免疫原は、
・アミノ酸配列が、全長プロガストリンのアミノ酸配列、特に、配列番号1の全長ヒトプロガストリンを含むまたはそれからなる、ペプチド、
・アミノ酸配列が、プロガストリンのアミノ酸配列の一部、特に、配列番号1の全長ヒトプロガストリンの一部に対応する、ペプチド、
・アミノ酸配列が、プロガストリンのN末端部分の一部または全体のアミノ酸配列に対応する、ペプチド、特に、アミノ酸配列:SWKPRSQQPDAPLG(配列番号2)を含むまたはそれからなる、ペプチド、並びに
・アミノ酸配列が、プロガストリンのC末端部分の一部または全体のアミノ酸配列に対応する、ペプチド、特に、アミノ酸配列:QGPWLEEEEEAYGWMDFGRRSAEDEN(配列番号3)を含むまたはそれからなる、ペプチド、
・アミノ酸配列が、プロガストリンのC末端部分の一部のアミノ酸配列に対応する、ペプチド、特に、プロガストリンのアミノ酸71~80に対応するアミノ酸配列FGRRSAEDEN(配列番号40)を含む、ペプチド
の中で選択されるペプチドを含む。
【0039】
当業者は、このような免疫化が、所望されるポリクローナルまたはモノクローナル抗体の生成に使用され得ることを了解するであろう。これらのタイプの抗体の各々を取得する方法は、当技術分野で周知されている。したがって、当業者は、任意の所与の抗原に対するポリクローナルおよび/またはモノクローナル抗体の生成方法を容易に選択および実装するであろう。
【0040】
ヒトプロガストリンのアミノ酸配列1~14(N末端)に対応するアミノ酸配列「SWKPRSQQPDAPLG」を含む免疫原を使用することにより生成されたモノクローナル抗体の例としては、以下に限定されないが、以下の表1~表4に記載されるようなmAb3、mAb4、mAb16、およびmAb19、およびmAb20という名称のモノクローナル抗体が挙げられる。その他のモノクローナル抗体も説明されているが、これらが実際にプロガストリンに結合するかどうかは明確でない(WO2006/032980)。エピトープマッピングの実験結果からは、mAb3、mAb4、mAb16、およびmAb19、およびmAb20が当該hPG N末端アミノ酸配列内のエピトープに特異的に結合することが示されている。配列番号2によって表されるプロガストリンのN末端内のエピトープを特異的に認識するポリクローナル抗体は、当技術分野で説明されている(例えば、WO2011/083088を参照)。
【0041】
【表1】
【0042】
【表2】
【0043】
【表3】
【0044】
【表4】
【0045】
ヒトプロガストリンのアミノ酸配列55~80に対応するアミノ酸配列「QGPWLEEEEEAYGWMDFGRRSAEDEN」(プロガストリンのC末端部分)を含む免疫原を使用することにより生成され得るモノクローナル抗体の例としては、以下に限定されないが、以下の表5および表6にあるようなmAb8およびmAb13という名称の抗体が挙げられる。エピトープマッピングの実験結果からは、mAb13が当該hPG C末端アミノ酸配列内のエピトープに特異的に結合することが示されている。
【0046】
【表5】
【0047】
【表6】
【0048】
その他の例としては、配列番号40のアミノ酸配列を含む免疫原を使用することにより生成される抗hPGモノクローナルおよび/またはポリクローナル抗体が挙げられる。
【0049】
「N末端抗hPG抗体」および「C末端抗hPG抗体」という用語は、それぞれ、hPGのN末端部分に位置するアミノ酸を含むエピトープ、またはhPGのC末端部分に位置するアミノ酸を含むエピトープに結合する抗体を指す。好ましくは、「N末端抗hPG抗体」という用語は、配列が配列番号2によって表されるプロガストリンのドメインに位置するエピトープに結合する抗体を意味する。別の好ましい態様において、「C末端抗hPG抗体」という用語は、配列が配列番号3によって表されるプロガストリンのドメインに位置するエピトープに結合する抗体を意味する。
【0050】
「エピトープ」という用語は、抗体が結合する抗原の領域を意味する。エピトープは、構造的または機能的なものとして定義され得る。機能的エピトープは、概して、構造的エピトープのサブセットであり、相互作用の親和性に直接寄与するアミノ酸を有する。エピトープは、立体構造的でもあり得る。ある態様において、エピトープは、アミノ酸、糖側鎖、ホスホリル基、またはスルホニル基などの分子の化学的活性表面グルーピングである決定基を含むことがあり、またある態様において、エピトープは、特定の3次元構造特性、および/または特定の電荷特性を有することがある。抗体が結合するエピトープの決定は、当業者には公知のエピトープマッピング技法によって実施することができる。エピトープは、タンパク質のアミノ酸配列内に連続的に配置された異なるアミノ酸を含むことがある。また、エピトープは、タンパク質のアミノ酸配列内に連続的に配置されていないアミノ酸を含むこともある。
【0051】
特定の態様において、当該抗体はモノクローナル抗体であって、
・配列番号4、5、および6のアミノ酸配列のそれぞれCDR-H1、CDR-H2、およびCDR-H3のうちの少なくとも1つ、優先的には少なくとも2つ、優先的には3つを含んでなる重鎖、または、配列番号4、5、および6の配列それぞれに対し、最適アラインメント後に少なくとも80%、好ましくは85%、90%、95%、および98%の同一性を有する配列を含む重鎖と、配列番号7、8、および9のアミノ酸配列のそれぞれCDR-L1、CDR-L2、およびCDR-L3のうちの少なくとも1つ、優先的には少なくとも2つ、優先的には3つを含んでなる軽鎖、または、配列番号7、8、および9の配列それぞれに対し、最適アラインメント後に少なくとも80%、好ましくは85%、90%、95%、および98%の同一性を有する配列を含んでなる軽鎖とを含んでなる、モノクローナル抗体、
・配列番号10、11、および12のアミノ酸配列のそれぞれCDR-H1、CDR-H2、およびCDR-H3のうちの少なくとも1つ、優先的には少なくとも2つ、優先的には3つを含んでなる重鎖、または、配列番号10、11、および12の配列それぞれに対し、最適アラインメント後に少なくとも80%、好ましくは85%、90%、95%、および98%の同一性を有する配列を含む重鎖と、配列番号13、14、および15のアミノ酸配列のそれぞれCDR-L1、CDR-L2、およびCDR-L3のうちの少なくとも1つ、優先的には少なくとも2つ、優先的には3つを含んでなる軽鎖、または、配列番号13、14、および15の配列それぞれに対し、最適アラインメント後に少なくとも80%、好ましくは85%、90%、95%、および98%の同一性を有する配列を含んでなる軽鎖とを含んでなる、モノクローナル抗体、
・配列番号16、17、および18のアミノ酸配列のそれぞれCDR-H1、CDR-H2、およびCDR-H3のうちの少なくとも1つ、優先的には少なくとも2つ、優先的には3つを含んでなる重鎖、または、配列番号16、17、および18の配列それぞれに対し、最適アラインメント後に少なくとも80%、好ましくは85%、90%、95%、および98%の同一性を有する配列を含む重鎖と、配列番号19、20、および21のアミノ酸配列のそれぞれCDR-L1、CDR-L2、およびCDR-L3のうちの少なくとも1つ、優先的には少なくとも2つ、優先的には3つを含んでなる軽鎖、または、配列番号19、20、および21の配列それぞれに対し、最適アラインメント後に少なくとも80%、好ましくは85%、90%、95%、および98%の同一性を有する配列を含んでなる軽鎖とを含んでなる、モノクローナル抗体、
・配列番号22、23、および24のアミノ酸配列のそれぞれCDR-H1、CDR-H2、およびCDR-H3のうちの少なくとも1つ、優先的には少なくとも2つ、優先的には3つを含んでなる重鎖、または、配列番号22、23、および24の配列それぞれに対し、最適アラインメント後に少なくとも80%、好ましくは85%、90%、95%、および98%の同一性を有する配列を含む重鎖と、配列番号25、26、および27のアミノ酸配列のそれぞれCDR-L1、CDR-L2、およびCDR-L3のうちの少なくとも1つ、優先的には少なくとも2つ、優先的には3つを含んでなる軽鎖、または、配列番号25、26、および27の配列それぞれに対し、最適アラインメント後に少なくとも80%、好ましくは85%、90%、95%、および98%の同一性を有する配列を含んでなる軽鎖とを含んでなる、モノクローナル抗体、
・配列番号28、29、および30のアミノ酸配列のそれぞれCDR-H1、CDR-H2、およびCDR-H3のうちの少なくとも1つ、優先的には少なくとも2つ、優先的には少なくとも3つを含んでなる重鎖、または、配列番号28、29、および30の配列それぞれに対し、最適アラインメント後に少なくとも80%、好ましくは85%、90%、95%、および98%の同一性を有する配列を含む重鎖と、配列番号31、32、および33のアミノ酸配列のそれぞれCDR-L1、CDR-L2、およびCDR-L3のうちの少なくとも1つ、優先的には少なくとも2つ、優先的には3つを含んでなる軽鎖、または、配列番号31、32、および33の配列それぞれに対し、最適アラインメント後に少なくとも80%、好ましくは85%、90%、95%、および98%の同一性を有する配列を含んでなる軽鎖とを含んでなる、モノクローナル抗体、並びに
・配列番号34、35、および36のアミノ酸配列のそれぞれCDR-H1、CDR-H2、およびCDR-H3のうちの少なくとも1つ、優先的には少なくとも2つ、優先的には3つを含んでなる重鎖、または、配列番号34、35、および36の配列それぞれに対し、最適アラインメント後に少なくとも80%、好ましくは85%、90%、95%、および98%の同一性を有する配列を含む重鎖と、配列番号37、38、および39のアミノ酸配列のそれぞれCDR-L1、CDR-L2、およびCDR-L3のうちの少なくとも1つ、優先的には少なくとも2つ、優先的には3つを含んでなる軽鎖、または、配列番号37、38、および39の配列それぞれに対し、最適アラインメント後に少なくとも80%、好ましくは85%、90%、95%、および98%の同一性を有する配列を含んでなる軽鎖とを含んでなる、モノクローナル抗体
からなる群において選択される、モノクローナル抗体である。
【0052】
本発明の意味において、核酸またはアミノ酸の2つの配列間における「パーセンテージ同一性」または「%同一性」とは、最適アラインメントの後に得られる、比較対象となる2つの配列間における同一なヌクレオチドまたはアミノ酸残基のパーセンテージを意味し、このパーセンテージは純粋に統計的であり、2つの配列間における違いはそれらの長さに従ってランダムに分布する。2つの核酸またはアミノ酸配列の比較は、従来的には、最適にアラインメントした後に配列を比較することによって実施し、当該比較は、セグメントにより、または「アラインメントウインドウ」を使用することにより、行うことができる。比較のための配列の最適アラインメントは、手作業による比較に加え、当業者に公知の方法によって実施することができる。
【0053】
参照アミノ酸配列に対する少なくとも80%、好ましくは85%、90%、95%、および98%の同一性を示すアミノ酸配列については、好ましい例としては、参照配列、ある修飾、特に、少なくとも1つのアミノ酸の欠失、付加、もしくは置換、短縮または伸長を含有するアミノ酸配列が挙げられる。1つ以上の連続したまたは連続していないアミノ酸の置換の場合において、置換されるアミノ酸が「等価」アミノ酸によって置き換えられる置換が好ましい。ここでの「等価アミノ酸」という表現は、構造的アミノ酸のうちの1つに対し置換される可能性があり、ただし対応する抗体および以下に定義される具体例の生物学的活性を変更しない、任意のアミノ酸を示すように意図されている。
【0054】
等価アミノ酸は、置換対象のアミノ酸に対する構造的相同性に基づいて、または生成される可能性がある様々な抗体間における生物学的活性の比較試験の結果に基づいて、決定することができる。
【0055】
より特定の態様において、当該抗体は、
・配列番号41のアミノ酸配列の重鎖と、配列番号42のアミノ酸配列の軽鎖とを含んでなる、モノクローナル抗体、
・配列番号43のアミノ酸配列の重鎖と、配列番号44のアミノ酸配列の軽鎖とを含んでなる、モノクローナル抗体、
・配列番号45のアミノ酸配列の重鎖と、配列番号46のアミノ酸配列の軽鎖とを含んでなる、モノクローナル抗体、
・配列番号47のアミノ酸配列の重鎖と、配列番号48のアミノ酸配列の軽鎖とを含んでなる、モノクローナル抗体、
・配列番号49のアミノ酸配列の重鎖と、配列番号50のアミノ酸配列の軽鎖とを含んでなる、モノクローナル抗体、および
・配列番号51のアミノ酸配列の重鎖と、配列番号52のアミノ酸配列の軽鎖とを含んでなる、モノクローナル抗体
からなる群において選択される、モノクローナル抗体である。
【0056】
別の特定の態様において、本発明の方法で使用される抗体は、ヒト化抗体である。
【0057】
本明細書で使用する「ヒト化抗体」という表現は、非ヒト起源の抗体に由来するCDR領域を含有し、抗体分子の他の部分は1つまたはいくつかのヒト抗体に由来する抗体を意味する。加えて、骨格セグメント残基(フレームワークについてはFRと呼ばれる)のいくつかは、当業者に公知の技法(Jones et al.,Nature,321:522-525,1986)に従って、結合親和性を保存するように修飾されてもよい。ヒト化の目的は、ヒトに導入するための異種抗体、例えば、マウス抗体の免疫原性を低減し、その一方で抗体の十分な抗原結合親和性および特異性を維持することである。
【0058】
本発明のヒト化抗体またはその断片は、当業者に公知の技法(例えば、Singer et al.,J.Immun.,150:2844-2857,1992の文書で説明されている技法)によって調製することができる。このようなヒト化抗体は、in vitroでの診断またはin vivoでの予防的および/もしくは治療的処置を伴う方法で使用するのが好ましい。その他のヒト化技法も、当業者に公知である。実際に、抗体は、CDRグラフティング(EP0 451 261;EP0 682 040;EP0 939 127;EP0 566 647;US5,530,101;US6,180,370;US5,585,089;US5,693,761;US5,639,641;US6,054,297;US5,886,152;およびUS5,877,293)、ベニヤリング(veneering)またはリサーフェシング(resurfacing)(EP0 592 106;EP0 519 596;Padlan E.A.,1991,Molecular Immunology 28(4/5):489-498;Studnicka G.M.et al.,1994,Protein Engineering 7(6):805-814;Roguska M.A.et al.,1994,Proc.Natl.Acad.ScL U.S.A.,91:969-973)、および鎖シャッフリング(chain shuffling)(米国特許第5,565,332号)を含めた様々な技法を用いて、ヒト化することができる。ヒト抗体は、ファージディスプレイ法を含めた様々な公知の方法によって作製することができる。米国特許第4,444,887号、第4,716,111号、第5,545,806号、および第5,814,318号;並びに国際特許出願公開番号WO98/46645、WO98/50433、WO98/24893、WO98/16654、WO96/34096、WO96/33735、およびWO91/10741も参照。
【0059】
より特定の態様において、当該抗体は、
・配列番号4、5、および6のアミノ酸配列のそれぞれCDR-H1、CDR-H2、およびCDR-H3のうちの少なくとも1つ、優先的には少なくとも2つ、優先的には3つを含んでなる重鎖、または、配列番号4、5、および6の配列それぞれに対し、最適アラインメント後に少なくとも80%、好ましくは85%、90%、95%、および98%の同一性を有する配列を含む重鎖と、配列番号7、8、および9のアミノ酸配列のそれぞれCDR-L1、CDR-L2、およびCDR-L3のうちの少なくとも1つ、優先的には少なくとも2つ、優先的には3つを含んでなる軽鎖、または、配列番号7、8、および9の配列それぞれに対し、最適アラインメント後に少なくとも80%、好ましくは85%、90%、95%、および98%の同一性を有する配列を含んでなる軽鎖とを含んでなる、ヒト化抗体、
・配列番号10、11、および12のアミノ酸配列のそれぞれCDR-H1、CDR-H2、およびCDR-H3のうちの少なくとも1つ、優先的には少なくとも2つ、優先的には3つを含んでなる重鎖、または、配列番号10、11、および12の配列それぞれに対し、最適アラインメント後に少なくとも80%、好ましくは85%、90%、95%、および98%の同一性を有する配列を含む重鎖と、配列番号13、14、および15のアミノ酸配列のそれぞれCDR-L1、CDR-L2、およびCDR-L3のうちの少なくとも1つ、優先的には少なくとも2つ、優先的には3つを含んでなる軽鎖、または、配列番号13、14、および15の配列それぞれに対し、最適アラインメント後に少なくとも80%、好ましくは85%、90%、95%、および98%の同一性を有する配列を含んでなる軽鎖とを含んでなる、ヒト化抗体、
・配列番号16、17、および18のアミノ酸配列のそれぞれCDR-H1、CDR-H2、およびCDR-H3のうちの少なくとも1つ、優先的には少なくとも2つ、優先的には3つを含んでなる重鎖、または、配列番号16、17、および18の配列それぞれに対し、最適アラインメント後に少なくとも80%、好ましくは85%、90%、95%、および98%の同一性を有する配列を含む重鎖と、配列番号19、20、および21のアミノ酸配列のそれぞれCDR-L1、CDR-L2、およびCDR-L3のうちの少なくとも1つ、優先的には少なくとも2つ、優先的には3つを含んでなる軽鎖、または、配列番号19、20、および21の配列それぞれに対し、最適アラインメント後に少なくとも80%、好ましくは85%、90%、95%、および98%の同一性を有する配列を含んでなる軽鎖とを含んでなる、ヒト化抗体、
・配列番号22、23、および24のアミノ酸配列のそれぞれCDR-H1、CDR-H2、およびCDR-H3のうちの少なくとも1つ、優先的には少なくとも2つ、優先的には3つを含んでなる重鎖、または、配列番号22、23、および24の配列それぞれに対し、最適アラインメント後に少なくとも80%、好ましくは85%、90%、95%、および98%の同一性を有する配列を含む重鎖と、配列番号25、26、および27のアミノ酸配列のそれぞれCDR-L1、CDR-L2、およびCDR-L3のうちの少なくとも1つ、優先的には少なくとも2つ、優先的には3つを含んでなる軽鎖、または、配列番号25、26、および27の配列それぞれに対し、最適アラインメント後に少なくとも80%、好ましくは85%、90%、95%、および98%の同一性を有する配列を含んでなる軽鎖とを含んでなる、ヒト化抗体、
・配列番号28、29、および30のアミノ酸配列のそれぞれCDR-H1、CDR-H2、およびCDR-H3のうちの少なくとも1つ、優先的には少なくとも2つ、優先的には3つを含んでなる重鎖、または、配列番号28、29、および30の配列それぞれに対し、最適アラインメント後に少なくとも80%、好ましくは85%、90%、95%、および98%の同一性を有する配列を含む重鎖と、配列番号31、32、および33のアミノ酸配列のそれぞれCDR-L1、CDR-L2、およびCDR-L3のうちの少なくとも1つ、優先的には少なくとも2つ、優先的には3つを含んでなる軽鎖、または、配列番号31、32、および33の配列それぞれに対し、最適アラインメント後に少なくとも80%、好ましくは85%、90%、95%、および98%の同一性を有する配列を含んでなる軽鎖とを含んでなる、ヒト化抗体、並びに
・配列番号34、35、および36のアミノ酸配列のそれぞれCDR-H1、CDR-H2、およびCDR-H3のうちの少なくとも1つ、優先的には少なくとも2つ、優先的には3つを含んでなる重鎖、または、配列番号34、35、および36の配列それぞれに対し、最適アラインメント後に少なくとも80%、好ましくは85%、90%、95%、および98%の同一性を有する配列を含む重鎖と、配列番号37、38、および39のアミノ酸配列のそれぞれCDR-L1、CDR-L2、およびCDR-L3のうちの少なくとも1つ、優先的には少なくとも2つ、優先的には3つを含んでなる軽鎖、または、配列番号37、38、および39の配列それぞれに対し、最適アラインメント後に少なくとも80%、好ましくは85%、90%、95%、および98%の同一性を有する配列を含んでなる軽鎖とを含んでなる、ヒト化抗体
からなる群において選択され、
ヒト抗体に由来する軽鎖および重鎖の定常領域も含んでなる、ヒト化抗体である。
【0060】
より特定の別の態様において、当該抗体は、
・配列番号53のアミノ酸配列の重鎖可変領域と、配列番号54のアミノ酸配列の軽鎖可変領域とを含んでなる、ヒト化抗体、
・配列番号55のアミノ酸配列の重鎖可変領域と、配列番号56のアミノ酸配列の軽鎖可変領域とを含んでなる、ヒト化抗体、
・配列番号57、58、および59の間で選択されるアミノ酸配列の重鎖可変領域と、配列番号60、61、および62の間で選択されるアミノ酸配列の軽鎖可変領域とを含んでなる、ヒト化抗体、
・配列番号63、64、および65の間で選択されるアミノ酸配列の重鎖可変領域と、配列番号66、67、および68の間で選択されるアミノ酸配列の軽鎖可変領域とを含んでなる、ヒト化抗体、
・配列番号69および71の間で選択されるアミノ酸配列の重鎖可変領域と、配列番号70および72の間で選択されるアミノ酸配列の軽鎖可変領域とを含んでなる、ヒト化抗体、並びに
・配列番号75および76の間で選択されるアミノ酸配列の重鎖可変領域と、配列番号77および78の間で選択されるアミノ酸配列の軽鎖可変領域とを含んでなる、ヒト化抗体
からなる群において選択され、
ヒト抗体に由来する軽鎖および重鎖の定常領域も含んでなる、ヒト化抗体である。
【0061】
より好ましくは、当該抗体は、配列番号71のアミノ酸配列の重鎖可変領域と、配列番号72のアミノ酸配列の軽鎖可変領域とを含み、当該抗体は、ヒト抗体に由来する軽鎖および重鎖の定常領域も含んでなる。
【0062】
いっそうより好ましくは、当該抗体は、配列番号73のアミノ酸配列の重鎖と、配列番号74のアミノ酸配列の軽鎖とを含む。
【0063】
別の側面において、本発明は、さらに、本明細書で説明されるようなプロガストリン結合抗体を含む免疫結合体(互換的に「抗体-薬物結合体」または「ADC」と呼ばれる)であって、当該抗体が、1つ以上の細胞傷害性剤、例えば、化学療法剤、薬物、成長阻害剤、毒素(例えば、タンパク質毒素、細菌、真菌、植物、もしくは動物起源の酵素活性毒素、またはこれらの断片)、あるいは放射性同位体(すなわち、放射性結合体)に結合している、免疫結合体も提供する。
【0064】
免疫結合体は、がんの治療における細胞傷害性剤(すなわち、細胞の成長または増殖を殺滅または阻害する薬物)の局所的送達に使用されている(Lambert,J.(2005)Curr.Opinion in Pharmacology 5:543-549;Wu et al(2005)Nature Biotechnology 23(9):1137-1146;Payne,G.(2003)i 3:207-212;Syrigos and Epenetos(1999)Anticancer Research 19:605-614;Niculescu-Duvaz and Springer(1997)Adv.Drug Deliv.Rev.26:151-172;米国特許第4,975,278号)。非結合薬物の全身投与は、除去を試みる対象の腫瘍細胞だけでなく、正常細胞に対し許容されないレベルの毒性をもたらす恐れがあるが、免疫結合体は、薬物部分を腫瘍に対し標的化送達すること、および腫瘍内での細胞内蓄積を可能にする(Baldwin et al,Lancet(Mar.15,1986) pp.603-05;Thorpe(1985)“Antibody Carriers Of Cytotoxic Agents In Cancer Therapy:A Review,”(Monoclonal Antibodies’84:Biological And Clinical Applications(A.Pinchera et al.,eds)pp.475-506))。ポリクローナル抗体およびモノクローナル抗体の両方が、このような戦略に有用であると報告されている(Rowland et al.,(1986) Cancer Immunol.Immunother.21:183-87)。これらの方法で使用される薬物としては、ダウノマイシン、ドキソルビシン、メトトレキサート、およびビンデシン(Rowland et al.,(1986)上記参照)が挙げられる。抗体-毒素結合体で使用される毒素としては、ジフテリア毒素などの細菌毒素、リシンなどの植物毒素、ゲルダナマイシンなどの小分子毒素(Mandler et al(2000) J.Nat.Cancer Inst.92(19):1573-1581;Mandler et al(2000) Bioorganic & Med.Chem.Letters 10:1025-1028;Mandler et al(2002) Bioconjugate Chem.13:786-791)、マイタンシノイド(EP1391213;Liu et al.,(1996) Proc.Natl.Acad.Sci.USA 93:8618-8623)、およびカリチアマイシン(Lode et al(1998) Cancer Res.58:2928;Hinman et al(1993) Cancer Res.53:3336-3342)が挙げられる。毒素は、チューブリン結合、DNA結合、またはトポイソメラーゼ阻害を含めた機構により、その細胞傷害効果を発揮し得る。一部の細胞傷害性薬物は、大きな抗体またはタンパク質受容体リガンドに結合した場合は不活性になるまたは活性が低くなる傾向がある。
【0065】
ある態様において、免疫結合体は、抗体と、化学療法剤またはその他の毒素とを含む。免疫結合体の生成に有用な化学療法剤は、本明細書に記載されている(例えば、上記)。使用され得る酵素活性毒素およびその断片としては、ジフテリアA鎖、ジフテリア毒素の非結合活性断片、外毒素A鎖(Pseudomonas aeruginosa由来)、リシンA鎖、アブリンA鎖、モデシンA鎖、アルファ-サルシン、Aleurites fordiiタンパク質、ジアンシンタンパク質、Phytolaca americanaタンパク質(PAPI、PAPII、およびPAP-S)、momordica charantia阻害物質、クルシン、クロチン、sapaonaria officinalis阻害物質、ゲロニン、ミトゲリン、レストリクトシン、フェノマイシン、エノマイシン、およびトリコテセンが挙げられる。例えば、1993年10月28日に発行されたWO93/21232を参照。放射性結合抗体の産生には様々な放射性核種が利用可能である。例としては、212Bi、131I、131In、90Y、および186Reが挙げられる。抗体と細胞傷害性剤との結合体は、様々な二官能性タンパク質カップリング剤、例えば、N-サクシンイミジル-3-(2-ピリジルジチオール)プロピオナート(SPDP)、イミノチオラン(IT)、イミノジエステルの二官能性誘導体(例えば、アジプイミド酸ジメチルHCl)、活性エステル(例えば、スベリン酸ジサクシンイミジル)、アルデヒド(例えば、グルタルアルデヒド)、ビス-アジド化合物(例えば、ビス(p-アジドベンゾイル)ヘキサンジアミン)、ビス-ジアゾニウム誘導体(例えば、ビス(p-ジアゾニウムベンゾイル)-エチレンジアミン)、ジイソシアナート(例えば、トルエン2,6-ジイソシアナート)、およびビスー活性フッ素化合物(例えば、1,5-ジフルオロ-2,4-ジニトロベンゼン)を用いて、作製される。例えば、リシン免疫毒素は、Vitetta et ah,Science,238:1098(1987)で説明されているように調製することができる。炭素14標識1-イソチオシアナトベンジル-3-メチルジエチレントリアミン五酢酸(MX-DTPA)は、放射性核種と抗体との結合のための例示的なキレート剤である。WO94/11026を参照。
【0066】
抗体の結合体および1つ以上の小分子毒素、例えば、カリチアマイシン、マイタンシノイド、ドラスタチン、アウロスタチン、トリコテセン、およびCC1065、並びに毒素活性を有するこれらの毒素の誘導体も、本明細書で企図されている。
【0067】
本発明の免疫結合体は、さらにリンカーを含むことができる。
【0068】
「リンカー」、「リンカー単位」、または「連結」とは、結合タンパク質を少なくとも1つの細胞傷害性剤と共有結合的に付着させる共有結合または原子鎖を含む化学的部分を意味する。
【0069】
リンカーは、様々な二官能性タンパク質カップリング剤、例えば、N-サクシンイミジル-3-(2-ピリジルジチオール)プロピオナート(SPDP)、サクシンイミジル-4-(N-マレイミドメチル)シクロヘキサン-1-カルボキシレート(SMCC)、イミノチオラン(IT)、イミノジエステルの二官能性誘導体(例えば、アジプイミド酸ジメチルHCl)、活性エステル(例えば、スベリン酸ジサクシンイミジル)、アルデヒド(例えば、グルタルアルデヒド)、ビス-アジド化合物(例えば、ビス(p-アジドベンゾイル)ヘキサンジアミン)、ビス-ジアゾニウム誘導体(例えば、ビス(p-ジアゾニウムベンゾイル)-エチレンジアミン)、ジイソシアナート(例えば、トルエン2,6-ジイソシアナート)、およびビスー活性フッ素化合物(例えば、1,5-ジフルオロ-2,4-ジニトロベンゼン)を用いて、作製される。炭素-14標識1-イソチオシアナトベンジル-3-メチルジエチレントリアミン五酢酸(MX-DTPA)は、細胞傷害性剤と対処システムとの結合のための例示的なキレート剤である。その他の架橋試薬は、BMPS、EMCS、GMBS、HBVS、LC-SMCC、MBS、MPBH、SBAP、SIA、SIAB、SMCC、SMPB、SMPH、スルホ-EMCS、スルホ-GMBS、スルホ-KMUS、スルホ-MBS、スルホ-SIAB、スルホ-SMCC、およびスルホ-SMPB、並びにSVSB(サクシンイミジル-(4-ビニルスルホン)ベンゾエート)であり得、これらは商業的に入手可能である(例えば、Pierce Biotechnology,Inc.,Rockford,Ill.,U.S.Aから入手可能)。
【0070】
リンカーは、「切断不可能」であっても「切断可能」であってもよい。
【0071】
別の側面において、本発明は、肺がんの予防または治療における使用のための組成物であって、当該組成物はプロガストリンのアミノ酸配列に対応するアミノ酸配列を含むエピトープを認識する抗体を含んでなる、組成物を提供する。
【0072】
より具体的な態様において、肺がんの予防または治療における使用のための当該組成物は、プロガストリンのエピトープを認識する抗体を含み、当該エピトープは、プロガストリンのN末端部分のアミノ酸配列に対応するアミノ酸配列を含み、当該アミノ酸配列は、hPGの残基10~14、hPGの残基9~14、hPGの残基4~10、hPGの残基2~10、またはhPGの残基2~14に対応するアミノ酸配列を含み得、hPGのアミノ酸配列は、配列番号1である。
【0073】
より具体的な態様において、肺がんの予防または治療における使用のための組成物は、プロガストリンのエピトープを認識する抗体を含み、当該エピトープは、プロガストリンのC末端部分のアミノ酸配列に対応するアミノ酸配列を含み、当該アミノ酸配列は、hPGの残基71~74、hPGの残基69~73、hPGの残基71~80(配列番号40)、hPGの残基76~80、またはhPGの残基67~74に対応するアミノ酸配列を含み得、hPGのアミノ酸配列は、配列番号1である。
【0074】
より特定の態様において、肺がんの予防または治療における使用のための組成物は、上述のような方法による定量で、少なくとも5000nM、少なくとも500nM、100nM、80nM、60nM、50nM、40nM、30nM、20nM、10nM、7nM、5nM、4nM、3nM、2nM、1nM、0.5nM、0.1nM、50pM、10pM、5pM、1pM、または少なくとも0.1pMのプロガストリンに対する親和性を有するプロガストリン結合抗体またはその抗原結合断片を含む。
【0075】
いっそうより特定の態様において、肺がんの予防または治療における使用のための組成物は、プロガストリン結合抗体を含み、当該プロガストリン結合分子またはその抗原結合断片は、中和抗体である。
【0076】
別の特定の態様において、肺がんの予防または治療における使用のための組成物は、プロガストリン結合抗体を含み、当該プロガストリン結合分子またはその抗原結合断片は、ヒト化抗体である。
【0077】
特定の態様において、肺がんの予防または治療における使用のための組成物は、プロガストリン結合抗体を含み、当該プロガストリン結合分子またはその抗原結合断片は、1つ以上の細胞傷害性剤に結合しており、例えば、上述のように、化学療法剤、薬物、成長阻害剤、毒素(例えば、タンパク質毒素、細菌、真菌、植物、もしくは動物起源の酵素活性毒素、またはこれらの断片)、あるいは放射性同位体(すなわち、放射性結合体)に結合している。
【0078】
別の特定の態様において、患者に対する肺がんの予防または治療における使用のための組成物は、プロガストリン結合抗体を含み、当該患者は肺がんと診断されており、プロガストリンの濃度は当該患者からの生体試料の方が参照試料よりも高い。好ましくは、当該患者は、抗PG抗体を当該患者の生体試料に接触させることにより、肺がんと診断されている。
【0079】
本明細書で使用する「生体試料」とは、核酸またはポリペプチド、例えば、肺がんのタンパク質、ポリヌクレオチド、または転写物の核酸またはポリペプチドを含有する、生体組織または生体液の試料である。このような試料は、プロガストリンの発現レベルの決定を可能にするものでなければならない。プロガストリンは、分泌タンパク質であることが知られている。したがって、プロガストリンタンパク質のレベルを決定するための好ましい生体試料としては、生体液が挙げられる。本明細書で使用する「生体液」とは、生体起源の物質を含む任意の液体を意味する。本発明における使用のための好ましい生体液としては、動物、例えば、哺乳類、好ましくはヒト対象の体液が挙げられる。体液は、以下に限定されないが、血液、血漿、血清、リンパ液、脳脊髄液(CSF)、唾液、汗、および尿を含めた任意の体液とすることができる。好ましくは、このような好ましい液体の生体試料としては、血液試料、血漿試料、または血清試料などの試料が挙げられる。より好ましくは、生体試料は、血液試料である。実際に、このような血液試料は、完全に無害な採血によって患者から取得することができるため、対象が腫瘍を発生するリスクに対する非侵襲的なアセスメントが可能である。
【0080】
また、がんが固形がんである場合、本明細書で使用する「生体試料」には、試験対象となる患者の固形がん試料も含まれる。このような固形がん試料により、当業者は、本発明のバイオマーカーのレベルに対する任意のタイプの測定を実施することができる。一部の場合において、本発明における方法はさらに、患者から固形がん試料を採取する予備ステップを含み得る。「固形がん試料」とは、腫瘍組織試料を意味する。がん患者であっても、腫瘍の部位である組織は、依然として健康な非腫瘍組織を含む。したがって、「がん試料」は、患者から採取される腫瘍組織に限定されるべきである。当該「がん試料」は、生検試料であっても外科的切除療法から採取された試料であってもよい。
【0081】
生体試料は、典型的には、真核生物から取得され、最も好ましくは哺乳類、または鳥類、爬虫類、もしくは魚類から取得される。実際に、本明細書で説明される方法に供され得る「対象」は、ヒト、イヌ、ネコ、ウシ、ヤギ、ブタ(pig)、ブタ(swine)、ヒツジ、およびサルを含めた哺乳類動物のいずれか、または鳥類、爬虫類、もしくは魚類とすることができる。好ましくは、対象はヒトであり、ヒト対象は「患者」と呼ばれることがある。
【0082】
「生体試料を取得する」とは、本明細書では、本発明で説明される方法における使用のための生体試料を取得することを意味する。最も多くの場合、これは、動物から細胞の試料を取り出すことによって行われるが、さらに、予め単離した細胞(例えば、別の者により、別のときに、および/もしくは別の目的で単離されたもの)を使用することにより、または本発明の方法をイン・ビボ(in vivo)で実施することにより、遂行することもできる。治療または治療結果の履歴を有する保管組織は、とりわけ有用となる。
【0083】
この試料は、取得することができ、必要な場合は、当業者に公知の方法に従って調製することができる。特に、この試料が空腹時の対象から採取すべきであることは、当技術分野で周知されている。
【0084】
より特定の側面において、本発明は、本発明における肺がんの予防または治療における使用のための組成物であって、当該プロガストリン結合抗体またはその抗原結合断片が、N末端抗プロガストリン抗体およびC末端抗プロガストリン抗体の中で選択される、組成物に関する。
【0085】
本発明の方法における使用のための抗体組成物は、異なる製剤(以下に限定されないが、水性懸濁液が挙げられる)として、様々な経路(以下に限定されないが、非経口、髄腔内、皮下、静脈内、筋肉内、腹腔内、点滴、またはボーラス投与が挙げられる)による投与向けに調製することができる。一部の態様において、組成物は、非経口投与向けに、一部の具体的な態様では点滴による静脈内注入向けに、製剤化される。
【0086】
特定の態様において、本発明における肺がんの予防または治療における使用のための組成物は、本発明の抗プロガストリン抗体が0.001mg/kg~約250mg/kgの範囲である有効用量を含み、この用量は、1回投与で、または複数回の間隔を空けた投与にわたり、もたらされ得る。
【0087】
特定の態様において、本発明における肺がんの予防または治療における使用のための組成物は、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、キメラ抗体、1本鎖抗体、ラクダ化抗体、IgA1抗体、IgA2抗体、IgD抗体、IgE抗体、IgG1抗体、IgG2抗体、IgG3抗体、IgG4抗体、およびIgM抗体の中で選択されるプロガストリン結合抗体またはその抗原結合断片を含む。好ましくは、当該抗体は、上述された抗体である。より好ましくは、当該抗体は、ヒト化抗体である。
【0088】
好ましくは、本発明は、本発明における肺がんの予防または治療における使用のための組成物と、薬学的に許容される担体とを含んでなる、医薬組成物に関する。より具体的には、本発明における肺がんの予防または治療における使用のための医薬組成物は、上述のような抗体と、薬学的に許容される担体とを含む。
【0089】
より特定の側面において、本発明は、本発明における肺がんの予防または治療における使用のための組成物と、薬学的に許容される担体とを含んでなる医薬組成物であって、当該抗プロガストリン抗体が、0.001mg/kg~250mg/kg、好ましくは、少なくとも0.005mg/kg、少なくとも0.01mg/kg、少なくとも0.05mg/kg、少なくとも0.1mg/kg、少なくとも0.5mg/kg、少なくとも1mg/kg、少なくとも5mg/kg、少なくとも10mg/kg、少なくとも50mg/kg、または少なくとも100mg/kgの用量で投与される、医薬組成物に関する。別の側面において、本発明は、本発明における肺がんの予防または治療における使用のための組成物と、抗がん療法分子とを含んでなる、部分のキットに関する。
【0090】
実際に、本明細書で説明されるような抗PGモノクローナル抗体を用いた治療は、他の療法と組み合わせても他の療法に付属してもよい。その他の療法の非限定的な例としては、化学療法処置、放射線療法、外科的切除、および抗体療法が挙げられる。
【0091】
別の側面において、本発明は、本発明における肺がんの予防または治療における使用のための組成物と、化学療法分子、標的療法分子の中で選択される抗がん療法分子とを含んでなる、部分のキットに関する。
【0092】
特定の態様において、本発明は、同時、順次、または別々の投与向けに、本発明における肺がんの治療のための組成物と、化学療法分子とを含んでなる、部分のキットに関する。この目的のために有用な化学療法分子としては、以下に限定されないが、葉酸拮抗物質、プリン拮抗物質、ピリミジン拮抗物質、DNAアルキル化分子、DNA架橋薬物、抗生物質、白金錯体、プロテアソーム阻害物質、紡錘体毒物、トポイソメラーゼ阻害物質、チロシンキナーゼ阻害物質などが挙げられる。
【0093】
別の特定の態様において、本発明は、同時、順次、または別々の投与向けに、本発明における組成物と、別の標的療法分子を含む組成物とを含んでなる、部分のキットに関する。このような標的療法分子としては、以下に限定されないが、EGFRを標的とする抗体、例えば、セツキシマブまたはパニツムマブ、VEGFを標的とする抗体、例えば、ベバシズマブ、HER2を標的とする抗体、例えば、トラスツズマブまたはペルツズマブ、PD-1およびPDL-1を標的とする抗体、例えば、ペムブロリズマブ、CTLA-4を標的とする抗体、例えば、イピリムマブ、EGFRを標的とする小分子薬物、例えば、エルロチニブ、BRAFを標的とする小分子薬物、例えば、ベムラフェニブまたはダブラフェニブ、VEGFを標的とする組換え融合タンパク質、例えば、アフリベルセプトが挙げられる。
【0094】
別の特定の側面において、本発明は、肺がんの診断のための、プロガストリン結合抗体またはその抗原結合断片の使用に関する。
【0095】
別の特定の側面において、本発明は、肺がんの予防または治療のための、プロガストリン結合抗体またはその抗原結合断片の使用に関する。
【0096】
より特定の側面において、本発明は、患者に対する肺がんの予防または治療のための、プロガストリン結合抗体またはその抗原結合断片の使用であって、当該患者の生体試料中のプロガストリン濃度が定量されており、該濃度が参照生体試料のプロガストリン濃度よりも高い、使用に関する。
【0097】
別の特定の側面において、本発明は、肺がんの再発を予防するための本発明の医薬組成物の使用に関する。したがって、本開示は、ヒトを含めた動物における肺がんの治療および肺がんの再発の予防に有用な方法および組成物を提供する。治療の方法は、肺がんと診断された対象に対し、治療効果をもたらすのに有効な量の、プロガストリンに特異的に結合する抗体を投与することを伴う。抗PG抗体は、単独で、単剤療法として、または他の治療モダリティー、例えば、腫瘍切除、放射線療法、化学療法、別の抗体を用いた療法などと共に、もしくはそれに付属して、投与することができる。
【0098】
固形腫瘍は、必ずしも均質な組織ではない。むしろ、一部の腫瘍は、別個の表現型的および機能的特徴を有する複数の異常な細胞タイプを含む。この点において、このような腫瘍は、異常な臓器に類似する。固形腫瘍を含む細胞は、同じ宿主の新たな部位に、または同じまたは異なる種の新たな宿主に移植された場合の、新たな腫瘍の形成を開始可能な程度に関して異なる。この特徴を有する細胞は、腫瘍またはがん開始細胞、または代替的に、腫瘍またはがん幹細胞として知られている。例えば、Hardavella et al.,2016,“Lung cancer stem cells-characteristics,phenotype,” Transl Lung Cancer Res.2016,5(3):272-279を参照。このような細胞は、腫瘍形成性が高い。
【0099】
概して、がん幹細胞は、2つの特徴:自己再生する能力と、非幹細胞に分化する娘細胞を生じる能力とによって定義される。自己再生とは、細胞分割を経て、それによって一方または両方の娘細胞が未分化のままとどまり、親細胞と同様の増殖能力を有するまた別のがん幹細胞を生じる産出力を保持する能力である。この特徴により、がん幹細胞は、最終的に、成長する腫瘍を含む多数の細胞を生じさせることができる。また、がん幹細胞は、娘細胞を産生する能力も有し、娘細胞は、分化して多くの固形腫瘍に見いだされるさらに分化した非幹細胞性またはバルクの腫瘍細胞を生じる。したがって、がん幹細胞は、移植されると、複数回の連続移植の後であっても、起源となった腫瘍のタイプを再構成し得る。さらに、がん幹細胞は、増殖パターンの改変および/またはアポトーシス率の低下をもたらす遺伝子変異および/またはエピジェネティックな変化を有すると考えられている。
【0100】
がん幹細胞は、バルク腫瘍細胞からがん幹細胞を識別する複数の表現型特性に従って同定することができる。腫瘍または細胞株ががん幹細胞を含有するかどうかの評価のために有用な方法は、当業者にはよく知られている。このような方法は、例えば、Hardavella et al.,2016,“Lung cancer stem cells-characteristics,phenotype,” Transl Lung Cancer Res.2016,5(3):272-279、およびWO2012/013609で説明されている。これらの方法の特定の事例は、本出願の実施例でも説明されている。
【0101】
より特定の側面において、本発明は、患者に対する肺がんの予防または治療のための、プロガストリン結合抗体またはその抗原結合断片の使用であって、当該患者が転移を示す、使用に関する。
【0102】
いっそうより特定の側面において、本発明は、患者に対する肺がんの予防または治療のための、プロガストリン結合抗体またはその抗原結合断片の使用であって、当該患者が転移を示し、当該患者の生体試料中のプロガストリン濃度が定量されており、その濃度が参照生体試料のプロガストリン濃度よりも高い、使用に関する。
【0103】
この組合せを構成する構成成分は、組合せの最大限の有効性を得るように、同時に、別々に、または順次に投与することができ、各投与の持続時間は、急速投与から持続的灌流まで変動する可能性がある。
【0104】
本明細書で使用する「同時投与」とは、組成物の2つの化合物を、単一かつ一意の医薬形態で投与することを意味する。本明細書で使用する「別々の投与」とは、本発明における組成物の2つの化合物を、別個の医薬形態で同時に投与することを意味する。本明細書で使用する「順次投与」とは、本発明における組成物の2つの化合物を、それぞれ別個の医薬形態で連続して投与することを意味する。
【0105】
本明細書で使用する「治療有効量」とは、疾患の症状の予防、軽減、低減、もしくは緩和、または治療対象の患者の生存期間の延長に有効である、化合物(1つまたは複数)の最小限の濃度または量を意味する。
【0106】
別の側面において、本開示は、前立腺がん再発を予防するための方法であって、予防を必要とする対象に、有効量の抗PG抗体を投与することを含む、方法を提供する。本開示における肝がん再発を予防する方法は、肺がん再発のリスクがある個体に、上述されるPGを中和可能な1つ以上の抗PG抗体を投与することによって遂行される。
【0107】
前立腺がん再発の予防を必要とする対象は、過去に肺がんの治療を受け、再び肺がんと診断されるリスクがあるがまだそのように診断されていない個体である。好適な対象としては、過去に、外科的切除、化学療法、または他の任意の療法を含めた任意の手段によって肺がんの治療を受けた対象が挙げられる。
【0108】
肺がん再発の有効な予防としては、以下に限定されないが、完全かつ継続中である肺がん再発の不在が挙げられる。一部の態様において、有効な予防は、肺がん再発のリスクがある対象から取得される肺がん腫瘍または肺がん幹細胞が存在しないことによって判定される。一部の態様において、有効な予防は、肺がん再発のリスクがある対象におけるPGの血中濃度が増加しないことによって決定される。
【0109】
抗PG治療は、単独で、単剤療法として、または1つ以上の他の治療と組み合わせてもしくはそれに付属して、行うことができる。他の治療としては、以下に限定されないが、外科的切除、および第2の治療剤を用いた治療、例えば、上述のような化学療法剤または抗体を用いた治療が挙げられる。本明細書で提供される併用療法は、患者に少なくとも2つの治療を行うことを含み、その一方は、少なくとも1つの抗PG抗体を用いた抗PG治療であり、もう一方は、治療剤または手順を用いた治療である。
【0110】
抗PG抗体および第2の剤は、同時に、連続的に、または別々に投与することができる。本明細書で使用する場合、抗PG抗体および第2の剤が、同じ日に、例えば、同じ患者の来院時に患者に投与される場合、連続的に投与されるものとされる。連続的な投与は、1、2、3、4、5、6、7、または8時間空けて生じ得る。これに対し、抗PG抗体および第2の剤が、異なる日に患者に投与される場合は別々に投与されるものとされ、例えば、抗PG抗体および第2の治療剤は、1日、2日、もしくは3日、1週間、2週間、または1ヵ月の間隔にて投与され得る。本開示の方法において、本開示の抗PG抗体の投与は、第2の剤の投与の前であっても後であってもよい。非限定的な例として、抗PG抗体および第2の剤は、ある時間期間の間は同時に投与され、次に第2の時間期間の間、抗PG抗体および第2の剤の投与が交互に行われてもよい。
【0111】
本発明は以下の通りである。
[1]肺がんの予防または治療における使用のための、プロガストリン結合抗体またはその抗原結合断片。
[2]上記[1に記載の使用のためのプロガストリン結合抗体またはその抗原結合断片であって、前記プロガストリン結合抗体またはその抗原結合断片が、1本鎖抗体、ラクダ化抗体、IgA1抗体、IgA2抗体、IgD抗体、IgE抗体、IgG1抗体、IgG2抗体、IgG3抗体、IgG4抗体、およびIgM抗体から選択される、プロガストリン結合抗体またはその抗原結合断片。
[3]上記[1]または[2]に記載の使用のためのプロガストリン結合抗体またはその抗原結合断片であって、前記プロガストリン結合抗体またはその抗原結合断片が、N末端抗プロガストリン抗体およびC末端抗プロガストリン抗体から選択される、プロガストリン結合抗体またはその抗原結合断片。
[4]上記[1]~[3]のいずれかに記載の使用のためのプロガストリン結合抗体またはその抗原結合断片であって、前記プロガストリン結合抗体またはその抗原結合断片が、中和抗体である、プロガストリン結合抗体またはその抗原結合断片。
[5]上記[1]~[4]のいずれかに記載の使用のためのプロガストリン結合抗体またはその抗原結合断片であって、前記抗体が、
・配列番号4、5、および6のアミノ酸配列のそれぞれCDR-H1、CDR-H2、およびCDR-H3のうちの少なくとも1つ、優先的には少なくとも2つ、優先的には3つを含んでなる重鎖と、配列番号7、8、および9のアミノ酸配列のそれぞれCDR-L1、CDR-L2、およびCDR-L3のうちの少なくとも1つ、優先的には少なくとも2つ、優先的には3つを含んでなる軽鎖とを含んでなる、抗体、
・配列番号10、11、および12のアミノ酸配列のそれぞれCDR-H1、CDR-H2、およびCDR-H3のうちの少なくとも1つ、優先的には少なくとも2つ、優先的には3つを含んでなる重鎖と、配列番号13、14、および15のアミノ酸配列のそれぞれCDR-L1、CDR-L2、およびCDR-L3のうちの少なくとも1つ、優先的には少なくとも2つ、優先的には3つを含んでなる軽鎖とを含んでなる、抗体、
・配列番号16、17、および18のアミノ酸配列のそれぞれCDR-H1、CDR-H2、およびCDR-H3のうちの少なくとも1つ、優先的には少なくとも2つ、優先的には3つを含んでなる重鎖と、配列番号19、20、および21のアミノ酸配列のそれぞれCDR-L1、CDR-L2、およびCDR-L3のうちの少なくとも1つ、優先的には少なくとも2つ、優先的には3つを含んでなる軽鎖とを含んでなる、抗体、
・配列番号22、23、および24のアミノ酸配列のそれぞれCDR-H1、CDR-H2、およびCDR-H3のうちの少なくとも1つ、優先的には少なくとも2つ、優先的には3つを含んでなる重鎖と、配列番号25、26、および27のアミノ酸配列のそれぞれCDR-L1、CDR-L2、およびCDR-L3のうちの少なくとも1つ、優先的には少なくとも2つ、優先的には3つを含んでなる軽鎖とを含んでなる、抗体、
・配列番号28、29、および30のアミノ酸配列のそれぞれCDR-H1、CDR-H2、およびCDR-H3のうちの少なくとも1つ、優先的には少なくとも2つ、優先的には3つを含んでなる重鎖と、配列番号31、32、および33のアミノ酸配列のそれぞれCDR-L1、CDR-L2、およびCDR-L3のうちの少なくとも1つ、優先的には少なくとも2つ、優先的には3つを含んでなる軽鎖とを含んでなる、抗体、並びに
・配列番号34、35、および36のアミノ酸配列のそれぞれCDR-H1、CDR-H2、およびCDR-H3のうちの少なくとも1つ、優先的には少なくとも2つ、優先的には3つを含んでなる重鎖と、配列番号37、38、および39のアミノ酸配列のそれぞれCDR-L1、CDR-L2、およびCDR-L3のうちの少なくとも1つ、優先的には少なくとも2つ、優先的には3つを含んでなる軽鎖とを含んでなる、抗体
からなる群から選択される、プロガストリン結合抗体またはその抗原結合断片。
[6]上記[1]~[5]のいずれかに記載の使用のためのプロガストリン結合抗体またはその抗原結合断片であって、前記抗体が、
・配列番号41のアミノ酸配列の重鎖と、配列番号42のアミノ酸配列の軽鎖とを含んでなる、モノクローナル抗体、
・配列番号43のアミノ酸配列の重鎖と、配列番号44のアミノ酸配列の軽鎖とを含んでなる、モノクローナル抗体、
・配列番号45のアミノ酸配列の重鎖と、配列番号46のアミノ酸配列の軽鎖とを含んでなる、モノクローナル抗体、
・配列番号47のアミノ酸配列の重鎖と、配列番号48のアミノ酸配列の軽鎖とを含んでなる、モノクローナル抗体、
・配列番号49のアミノ酸配列の重鎖と、配列番号50のアミノ酸配列の軽鎖とを含んでなる、モノクローナル抗体、および
・配列番号51のアミノ酸配列の重鎖と、配列番号52のアミノ酸配列の軽鎖とを含んでなる、モノクローナル抗体
からなる群から選択される、プロガストリン結合抗体またはその抗原結合断片。
[7]上記[1]~[5]のいずれかに記載の使用のためのプロガストリン結合抗体またはその抗原結合断片であって、前記抗体がヒト化抗体である、プロガストリン結合抗体またはその抗原結合断片。
[8]上記[7]に記載の使用のためのプロガストリン結合抗体またはその抗原結合断片であって、前記抗体が、
・配列番号53のアミノ酸配列の重鎖可変領域と、配列番号54のアミノ酸配列の軽鎖可変領域とを含んでなる、ヒト化抗体、
・配列番号55のアミノ酸配列の重鎖可変領域と、配列番号56のアミノ酸配列の軽鎖可変領域とを含んでなる、ヒト化抗体、
・配列番号57、58、および59の間で選択されるアミノ酸配列の重鎖可変領域と、配列番号60、61、および62の間で選択されるアミノ酸配列の軽鎖可変領域とを含んでなる、ヒト化抗体、
・配列番号63、64、および65の間で選択されるアミノ酸配列の重鎖可変領域と、配列番号66、67、および68の間で選択されるアミノ酸配列の軽鎖可変領域とを含んでなる、ヒト化抗体、
・配列番号69および71の間で選択されるアミノ酸配列の重鎖可変領域と、配列番号70および72の間で選択されるアミノ酸配列の軽鎖可変領域とを含んでなる、ヒト化抗体、並びに
・配列番号75および76の間で選択されるアミノ酸配列の重鎖可変領域と、配列番号77および78の間で選択されるアミノ酸配列の軽鎖可変領域とを含んでなる、ヒト化抗体
からなる群において選択され、
前記抗体が、ヒト抗体に由来する軽鎖および重鎖の定常領域も含む、プロガストリン結合抗体またはその抗原結合断片。
[9]上記[7]または[8]に記載の使用のためのプロガストリン結合抗体またはその抗原結合断片であって、前記抗体が、配列番号71のアミノ酸配列の重鎖可変領域と、配列番号72のアミノ酸配列の軽鎖可変領域とを含み、前記抗体が、ヒト抗体に由来する軽鎖および重鎖の定常領域も含んでなる、プロガストリン結合抗体またはその抗原結合断片。
[10]上記[7]~[9]のいずれかに記載の使用のためのプロガストリン結合抗体またはその抗原結合断片であって、前記抗体が、配列番号73のアミノ酸配列の重鎖と、配列番号74のアミノ酸配列の軽鎖とを含む、プロガストリン結合抗体またはその抗原結合断片。
[11]肺がんの予防または治療のための、上記[1]~[10]のいずれかに記載のプロガストリン結合抗体またはその抗原結合断片並びに薬学的に許容される担体および/または賦形剤を含んでなる、医薬組成物。
[12]第2の治療剤をさらに含んでなる、上記[11]に記載の使用のための医薬組成物。
[13]上記[12]に記載の使用のための医薬組成物であって、前記剤が、生物学的剤または化学療法剤である、医薬組成物。
[14]上記[13]に記載の使用のための医薬組成物であって、前記生物学的剤が、抗EGFRモノクローナル抗体または抗VEGFモノクローナル抗体である、医薬組成物。
[15]上記[14]に記載の使用のための医薬組成物であって、前記化学療法剤が、アルキル化剤、代謝拮抗物質、抗腫瘍抗生物質、有糸分裂阻害物質、クロマチン機能阻害物質、抗血管新生剤、抗エストロゲン物質、抗アンドロゲン物質および免疫調節物質の群において選択される、医薬組成物。
本発明の態様の特徴は、以下の実施例の詳細な説明からさらに明らかとなる。
【図面の簡単な説明】
【0112】
図1】細胞増殖アッセイ:NCI-H358細胞を、対照抗体、またはC末端抗hPGヒト化抗体である抗hPG Hz 8CV2(PG Hz)で処置した。
【実施例
【0113】
実施例1:抗hPG抗体のがん細胞株に対する中和活性
1.1.抗hPGモノクローナル抗体の中和活性
PGに対するモノクローナル抗体を、肺がんの研究に一般的に使用されプロガストリンを産生および分泌するいくつかの細胞株の増殖を阻害する能力について試験する。異なる抗hPGモノクローナル抗体を用いて、これらの細胞株の各々からの細胞の生存率を試験する。
【0114】
各実験について、6ウェルプレートのウシ胎仔血清を含有する培地中に50,000細胞を播種し、8時間インキュベートする。細胞を一晩血清飢餓状態にし、播種の24時間後(「T0」時間)から、細胞を、ウシ胎仔血清の不在下で、6連で12時間ごとに48時間の間、1~20μg/mlのモノクローナル対照抗体(モノクローナル抗体抗ピューロマイシン)(CT mAb)、または1~20μg/mlの抗hPG mAbで処置する(当該mAbは、C末端抗hPGモノクローナル抗体またはN末端抗hPGモノクローナル抗体である)。
【0115】
当該mAbは、
・配列番号28、29、および30のアミノ酸配列のCDR-H1、CDR-H2、およびCDR-H3を含んでなる重鎖と、配列番号31、32、および33のアミノ酸配列のCDR-L1、CDR-L2、およびCDR-L3を含んでなる軽鎖とを含んでなる、抗体、
・配列番号34、35、および36のアミノ酸配列のCDR-H1、CDR-H2、およびCDR-H3を含んでなる重鎖と、配列番号37、38、および39のアミノ酸配列のCDR-L1、CDR-L2、およびCDR-L3を含んでなる軽鎖とを含んでなる、抗体
の中から選択される、C末端抗hPG抗体であるか、
または、
・配列番号4、5、および6のアミノ酸配列のそれぞれCDR-H1、CDR-H2、およびCDR-H3を含んでなる重鎖と、配列番号7、8、および9のアミノ酸配列のそれぞれCDR-L1、CDR-L2、およびCDR-L3を含んでなる軽鎖とを含んでなる、モノクローナル抗体、
・配列番号10、11、および12のアミノ酸配列のそれぞれCDR-H1、CDR-H2、およびCDR-H3を含んでなる重鎖と、配列番号13、14、および15のアミノ酸配列のそれぞれCDR-L1、CDR-L2、およびCDR-L3を含んでなる軽鎖とを含んでなる、抗体、
・配列番号16、17、および18のアミノ酸配列のそれぞれCDR-H1、CDR-H2、およびCDR-H3を含んでなる重鎖と、配列番号19、20、および21のアミノ酸配列のそれぞれCDR-L1、CDR-L2、およびCDR-L3を含んでなる軽鎖とを含んでなる、抗体、
・配列番号22、23、および24のアミノ酸配列のそれぞれCDR-H1、CDR-H2、およびCDR-H3を含んでなる重鎖と、配列番号25、26、および27のアミノ酸配列のそれぞれCDR-L1、CDR-L2、およびCDR-L3を含んでなる軽鎖とを含んでなる、抗体
の中から選択される、N末端抗hPG抗体である。
【0116】
各実験について、T0における対照ウェル中の細胞数を計数する。
【0117】
具体的には、48時間時に対照ウェルおよび抗hPG mAb処置ウェル両方の生細胞の数を計数し、次に、それぞれの細胞数とT0時に定量された細胞数との間の差を計算する。次に、得られた抗hPG mAb処置細胞の数を、対照mAb処置細胞の数のパーセンテージとして表現する。
【0118】
抗hPGモノクローナル抗体を用いた処置は、対照抗体を用いた処置と比較して細胞数を低減する。一元配置ANOVAをテューキー事後検定と共に用いて、統計的有意性を決定する:=p<0.05、**=p<0.01、および***=p<0.001。各細胞株において、抗hPG抗体は細胞生存率を低減する。
【0119】
1.2.抗hPGヒト化抗体の細胞生存率に対する中和活性
PGに対するヒト化抗体を、肺がんの研究に一般的に使用されプロガストリンを産生および分泌するいくつかの細胞株の増殖を阻害する能力について試験する。異なる抗hPGモノクローナル抗体を用いて、これらの細胞株の各々からの細胞の生存率を試験する。
【0120】
各実験について、6ウェルプレートのウシ胎仔血清を含有する培地中に50,000細胞を播種し、8時間インキュベートする。細胞を一晩血清飢餓状態にし、播種の24時間後(「T0」時間)から、細胞を、ウシ胎仔血清の不在下で、6連で12時間ごとに48時間の間、1~20μg/mlのヒト化対照抗体(BioXCell製の抗ヒトFcG1)(CT Hz)、または1~20μg/mlの抗hPG Hzで処置する(当該Hzは、C末端抗hPGヒト化抗体またはN末端抗hPGヒト化抗体である)。各実験について、T0における対照ウェル中の細胞数を計数する。
【0121】
具体的には、48時間時に対照ウェルおよび抗hPG Hz処置ウェル両方の生細胞の数を計数し、次に、それぞれの細胞数とT0時に定量された細胞数との間の差を計算する。次に、得られた抗hPG Hz処置細胞の数を、対照mAb処置細胞の数のパーセンテージとして表現する。
【0122】
抗hPG Hz抗体を用いた処置は、対照抗体を用いた処置と比較して細胞数を低減する。一元配置ANOVAをテューキー事後検定と共に用いて、統計的有意性を決定する:=p<0.05、**=p<0.01、および***=p<0.001。各細胞株において、抗hPG抗体は細胞生存率を低減する。
【0123】
1.3.抗hPGモノクローナル抗体のがん幹細胞頻度に対する中和活性
PGに対するモノクローナル抗体におけるがん幹細胞(CSC)頻度を低減する能力を、極限限界希釈アッセイ(Extreme Limiting Dilution Assay)(ELDA)を用いて、肺がんの研究に一般的に使用されプロガストリンを産生および分泌するいくつかの細胞株において試験する。異なる抗hPGモノクローナル抗体を用いて、これらの細胞株の各々からのCSC頻度を試験する。
【0124】
各実験について、FACS Ariaフローサイトメーターを用いて、ウェル当たりの固定された細胞濃度にて超低接着(ULA)P96(96ウェルプレート)に細胞を播種し、濃度の範囲はウェル当たり1~500細胞を使用する。細胞を最大11日間、M11培地(Macari et al,Oncogene,2015)を有するULAプレートで培養し、3日または4日ごとに1~20μg/mlのモノクローナル対照抗体(モノクローナル抗体抗ピューロマイシン)(CT mAb)、または1~20μg/mlの抗hPG mAbで処置する(当該mAbは、C末端抗hPGモノクローナル抗体またはN末端抗hPGモノクローナル抗体である)。
【0125】
具体的には、インキュベートフェーズの最後に、位相差顕微鏡を用いてプレートを観察し、細胞濃度当たりの陽性細胞の数を評価する。最後に、ELDAウェブツール(http://www.bioinf.wehi.edu.au/software/elda/)を使用して、各処置群のCSC頻度を計数し、群間の任意の統計的差について検定する(修正カイ2乗検定)。
【0126】
抗hPGモノクローナル抗体を用いた処置は、対照抗体を用いた処置と比較してCSC頻度を低減する。
【0127】
1.4.抗hPGヒト化抗体のがん幹細胞頻度に対する中和活性
・球形成アッセイ
PGに対するヒト化抗体におけるがん幹細胞(CSC)頻度を低減する能力を、球形成アッセイを用いて、肺がんの研究に一般的に使用されプロガストリンを産生および分泌するいくつかの細胞株において試験する。
【0128】
各実験について、24ウェルの超低接着プレート(ULA:ultra-low attachment)に700細胞を播種する。細胞を最大7日間、M11培地(Macari et al,Oncogene,2015)を有するULAプレートで培養し、3日または4日ごとに20μg/mlのヒト化対照抗体(BioXCell製の抗ヒトFcG1)(CT Hz)、または20μg/mlの抗hPG Hz(PG Hz)で処置する(当該Hzは、C末端抗hPGヒト化抗体またはN末端抗hPGヒト化抗体である)。
【0129】
具体的には、インキュベートフェーズの最後に明視野顕微鏡でウェルを撮影し、写真を解析し、平均直径が25μmを上回る球を計数する。
【0130】
抗hPGヒト化抗体を用いた処置は、対照抗体を用いた処置と比較してCSC頻度を低減する。
【0131】
・極限限界希釈アッセイ
PGに対するヒト化抗体におけるがん幹細胞(CSC)頻度を低減する能力を、極限限界希釈アッセイ(ELDA)を用いて、肺がんの研究に一般的に使用されプロガストリンを産生および分泌するいくつかの細胞株において試験する。異なる抗hPGヒト化抗体を用いて、これらの細胞株の各々からのCSC頻度を試験する。
【0132】
各実験について、FACS Ariaフローサイトメーターを用いて、ウェル当たりの固定された細胞濃度にて超低接着(ULA)P96(96ウェルプレート)に細胞を播種し、濃度の範囲はウェル当たり1~500細胞を使用する。細胞を最大11日間、M11培地(Macari et al,Oncogene,2015)を有するULAプレートで培養し、3日または4日ごとに1~20μg/mlのヒト化対照抗体(BioXCell製の抗ヒトFcG1)(CT Hz)、または1~20μg/mlの抗hPG Hzで処置する(当該Hzは、C末端抗hPGヒト化抗体またはN末端抗hPGヒト化抗体である)。
【0133】
具体的には、インキュベートフェーズの最後に、位相差顕微鏡を用いてプレートを観察し、細胞濃度当たりの陽性細胞の数を評価する。最後に、ELDAウェブツール(http://www.bioinf.wehi.edu.au/software/elda/)を使用して、各処置群のCSC頻度を計数し、群間の任意の統計的差について検定する(修正カイ2乗検定)。
【0134】
抗hPGヒト化抗体を用いた処置は、対照抗体を用いた処置と比較してCSC頻度を低減する。
【0135】
1.5.抗hPGモノクローナル抗体のWNT/βカテニン経路に対する中和活性
PGに対するモノクローナル抗体におけるWNT/βカテニン経路を阻害する能力を、肺がんの研究に一般的に使用されプロガストリンを産生および分泌するいくつかの細胞株において、読出しとして、周知のWNT/βカテニン経路標的化遺伝子であるタンパク質サバイビンの発現を用いて試験する。異なる抗hPGモノクローナル抗体を用いて、これらの細胞株の各々からのサバイビン発現を試験する。
【0136】
各実験について、6ウェルプレートのウシ胎仔血清を含有する培地中に50,000細胞を播種し、8時間インキュベートする。細胞を一晩血清飢餓状態にし、播種の24時間後から、細胞を、ウシ胎仔血清の不在下で、4連で12時間ごとに72時間の間、1~20μg/mlのモノクローナル対照抗体(モノクローナル抗体抗ピューロマイシン)(CT mAb)、または1~20μg/mlの抗hPG mAbで処置する(当該mAbは、C末端抗hPGモノクローナル抗体またはN末端抗hPGモノクローナル抗体である)。
【0137】
具体的には、処置の72時間後に細胞を採取し、RIPA緩衝液を用いて総タンパク質を抽出する。次に、CT mAbまたは抗hPG mAb処置細胞からの同じ量のタンパク質を、抗サバイビン抗体(モノクローナル抗体、Cell Signaling製の#2802)およびローディング対照としての抗アクチン抗体(モノクローナル抗体、SIGMA製の#A4700)を用いてウェスタンブロットに供する。Syngene製のGBOX chemi systemを用いて定量化を実施する。
【0138】
抗hPGモノクローナル抗体を用いた処置は、対照抗体を用いた処置と比較してサバイビン発現を低減する。対応のないスチューデントT検定を用いて統計的有意性を決定する:=p<0.05、**=p<0.01、および***=p<0.001。
【0139】
1.6.抗hPGヒト化抗体のWNT/βカテニン経路に対する中和活性
PGに対するヒト化抗体におけるWNT/βカテニン経路を阻害する能力を、肺がんの研究に一般的に使用されプロガストリンを産生および分泌するいくつかの細胞株において、読出しとして、周知のWNT/βカテニン経路標的化遺伝子であるタンパク質サバイビンの発現を用いて試験する。異なる抗hPGヒト化抗体を用いて、これらの細胞株の各々からのサバイビン発現を試験する。
【0140】
各実験について、6ウェルプレートのウシ胎仔血清を含有する培地中に50,000細胞を播種し、8時間インキュベートする。細胞を一晩血清飢餓状態にし、播種の24時間後から、細胞を、ウシ胎仔血清の不在下で、4連で12時間ごとに72時間の間、1~20μg/mlのヒト化対照抗体(BioXCell製の抗ヒトFcG1)(CT Hz)、または1~20μg/mlの抗hPG Hzで処置する(当該Hzは、C末端抗hPGヒト化抗体またはN末端抗hPGヒト化抗体である)。
【0141】
具体的には、処置の72時間後に細胞を採取し、RIPA緩衝液を用いて総タンパク質を抽出する。次に、CT Hzまたは抗hPG Hz処置細胞からの同じ量のタンパク質を、抗サバイビン抗体(モノクローナル抗体、Cell Signaling製の#2802)およびローディング対照としての抗アクチン抗体(モノクローナル抗体、SIGMA製の#A4700)を用いてウェスタンブロットに供する。Syngene製のGBOX chemi systemを用いて定量化を実施する。
【0142】
抗hPGヒト化抗体を用いた処置は、対照抗体を用いた処置と比較してサバイビン発現を低減する。対応のないスチューデントT検定を用いて統計的有意性を決定する:=p<0.05、**=p<0.01、および***=p<0.001。
【0143】
実施例2:抗hPG抗体のがん細胞株に対する中和活性
抗hPGヒト化抗体の細胞生存率に対する中和活性
PGに対するヒト化抗体を、肺がんの研究に一般的に使用されプロガストリンを産生および分泌するいくつかの細胞株(すなわち、NCI-H358、A549、またはNCI-H460)の増殖を阻害する能力について試験した。異なる抗hPGモノクローナル抗体を用いて、これらの細胞株の各々からの細胞の生存率をアッセイした。
【0144】
6ウェルプレートのウシ胎仔血清を含有する培地中に200,000個のNCI-H358細胞を播種し、8時間インキュベートした。細胞を一晩血清飢餓状態にした。播種の24時間後(「T0」時間)から、細胞を、ウシ胎仔血清の不在下で、12時間ごとに48時間の間、20μg/mlのヒト化対照抗体(BioXCell製の抗ヒトFcG1)(CT Hz)、または20μg/mlの抗hPG Hz 8CV2(PG Hz)で処置した(当該Hzは、C末端抗hPGヒト化抗体である)。各実験について、T0における対照ウェル中の細胞数を計数した。
【0145】
具体的には、48時間時に対照および抗hPG Hz処置細胞の両方における生細胞の数を計数した。次に、各細胞数と、T0における細胞数との間の差を計算した。
【0146】
抗hPG Hz抗体を用いた処置は、対照抗体を用いた処置と比較して細胞数を低減した。t検定を用いて統計的有意差を決定した(**=p<0.01)。各細胞株において、抗hPG抗体は、細胞生存率を低減した(図1を参照)。
【0147】
参考文献
Yanaoka et al, Cancer Epidemiol Biomarkers Prev, 2008, 17(4)
Pepe et al, J Natl Cancer Inst, 2008, Oct., 100(20)
Leja et al, Best Practice & Research Clinical Gastroenterology, 2014, Dec., 28(6)
図1
【配列表】
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