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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-20
(45)【発行日】2022-09-29
(54)【発明の名称】有機発光ダイオードに用いられる組成物
(51)【国際特許分類】
   C07D 401/14 20060101AFI20220921BHJP
   C07D 417/14 20060101ALI20220921BHJP
   C07D 519/00 20060101ALI20220921BHJP
   C09K 11/06 20060101ALI20220921BHJP
   G09F 9/00 20060101ALI20220921BHJP
   G09F 9/30 20060101ALI20220921BHJP
   H01L 27/32 20060101ALI20220921BHJP
   H05B 33/04 20060101ALI20220921BHJP
   H05B 33/10 20060101ALI20220921BHJP
   H05B 33/12 20060101ALI20220921BHJP
   H01L 51/50 20060101ALI20220921BHJP
   H05B 33/22 20060101ALI20220921BHJP
【FI】
C07D401/14 CSP
C07D417/14
C07D519/00
C07D519/00 311
C09K11/06 645
C09K11/06 650
C09K11/06 655
G09F9/00 338
G09F9/30 365
H01L27/32
H05B33/04
H05B33/10
H05B33/12 B
H05B33/14 B
H05B33/22 Z
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2019570920
(86)(22)【出願日】2018-06-25
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-08-27
(86)【国際出願番号】 US2018039337
(87)【国際公開番号】W WO2018237393
(87)【国際公開日】2018-12-27
【審査請求日】2021-05-14
(31)【優先権主張番号】62/523,948
(32)【優先日】2017-06-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/524,094
(32)【優先日】2017-06-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/653,880
(32)【優先日】2018-04-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】P 2017168885
(32)【優先日】2017-09-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成28年度、国立研究開発法人科学技術振興機構、研究成果展開事業、研究成果最適展開支援プログラム、産業技術力強化法第19条の適用を受けるもの
(73)【特許権者】
【識別番号】516003621
【氏名又は名称】株式会社Kyulux
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】特許業務法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】能塚 直人
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 善丈
(72)【発明者】
【氏名】ヤン ユソク
(72)【発明者】
【氏名】チェン ショウシェン
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 礼隆
(72)【発明者】
【氏名】那須 圭朗
(72)【発明者】
【氏名】クエン ザン ピン
(72)【発明者】
【氏名】アギレラ イパラギレ ホルヘ
(72)【発明者】
【氏名】ゴメス ボンバレリ ラファエル
(72)【発明者】
【氏名】ヒルツェル ティモシー ディー
【審査官】谷尾 忍
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/181773(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0126474(US,A1)
【文献】国際公開第2012/005363(WO,A1)
【文献】特開2017-197481(JP,A)
【文献】国際公開第2013/165192(WO,A1)
【文献】国際公開第2013/157515(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D 401/14
C07D 417/14
C07D 519/00
C09K 11/06
G09F 9/00
G09F 9/30
H01L 27/32
H05B 33/04
H05B 33/10
H05B 33/12
H01L 51/50
H05B 33/22
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(I)で表される化合物。
【化1】
[一般式(I)において、
、R、R、RおよびRは、水素、重水素、A、ArおよびDから独立して選択され、
、R、R、RおよびRのうちのRのみが、Aであり、
、R、RおよびRのうちの少なくとも3つが、Dであり、
Aは下記一般式から独立して選択され、
【化2】
は、O、SおよびNRA’から独立して選択され、
は、水素、重水素、ハロゲン、シアノ、置換もしくは無置換のアルキル、置換もしくは無置換のアルコキシ、置換もしくは無置換のアリール、置換もしくは無置換のアリールオキシ、置換もしくは無置換のヘテロアリール、置換もしくは無置換のヘテロアリールオキシおよびシリルから独立して選択され、
A’は、水素、重水素、置換もしくは無置換のアルキル、置換もしくは無置換のアリールおよび置換もしくは無置換のヘテロアリールから独立して選択され、
Dは、下記一般式(D1)~(D4)から独立して選択され、
【化3】
一般式(D3)のXは、O、S、NRD’、C(O)、置換もしくは無置換のメチレン、置換もしくは無置換のエチレン、置換もしくは無置換のビニレン、置換もしくは無置換のオルト-アリーレンおよび置換もしくは無置換のオルト-ヘテロアリーレンから独立して選択され、メチレン、エチレン、ビニレン、オルト-アリーレンまたはオルト-ヘテロアリーレンの各々は、重水素、置換もしくは無置換のアルキル、置換もしくは無置換のアリールおよび置換もしくは無置換のヘテロアリールから独立して選択される1つ以上の置換基で置換されることができ、
一般式(D1)、(D3)および(D4)のRは、水素、重水素、置換もしくは無置換のアルキル、置換もしくは無置換のアルコキシ、置換もしくは無置換のアミノ、置換もしくは無置換のアリール、置換もしくは無置換のアリールオキシ、置換もしくは無置換のヘテロアリール、置換もしくは無置換のヘテロアリールオキシおよびシリルから独立して選択され、一般式(D2)のRは、水素、重水素、置換もしくは無置換のアルキル、置換もしくは無置換のアルコキシ、置換もしくは無置換のアミノ、置換もしくは無置換のアリールオキシ、置換もしくは無置換のヘテロアリール、置換もしくは無置換のヘテロアリールオキシおよびシリルから独立して選択され、
一般式(D1)~(D4)において、2つの隣り合うR同士が結合して下記のいずれかの環構造を形成することができ、下記環構造中のXはO、S、N(C )、C(CH 、C(C 、N(=O)およびCH -CH から選択され、下記環構造中の#は一般式(D1)~(D4)において隣り合うR が結合している各炭素原子を表し、
【化4】
一般式(D3)のXにおけるRD’は、水素、重水素、置換もしくは無置換のアルキル、置換もしくは無置換のアミノ、置換もしくは無置換のアリールおよび置換もしくは無置換のヘテロアリールから独立して選択され、
は、単結合であり、
一般式(D1)、(D3)および(D4)のLは、単結合および置換もしくは無置換のアリーレンから独立して選択され、アリーレンは、重水素、置換もしくは無置換のアルキル、置換もしくは無置換のアリールおよび置換もしくは無置換のヘテロアリールから独立して選択される1つ以上の置換基で置換されることができ、一般式(D2)のLは単結合であり、
Arは、置換もしくは無置換のアリールから独立して選択され、アリールは、重水素、アルキルおよびアリールから独立して選択される1つ以上の置換基で置換されることができ、
各「*」は、一般式(I)との結合点を表す。]
【請求項2】
Dは、下記一般式(D1)で表される、請求項1に記載の化合物。
【化5】
【請求項3】
Dは、下記一般式(D2)で表される、請求項1に記載の化合物。
【化6】
【請求項4】
Aは、下記一般式から選択される、請求項1に記載の化合物。
【化7】
【請求項5】
Aは、下記一般式である、請求項1に記載の化合物。
【化8】
【請求項6】
がAのとき、RおよびRは、両方ともHではない、請求項1に記載の化合物。
【請求項7】
Arは、下記一般式から独立して選択される、請求項1に記載の化合物。
【化9】
【請求項8】
一般式(I)で表される前記化合物は、下記一般式(Ia)で表される、請求項1に記載の化合物。
【化10】
【請求項9】
下記一般式(I’)で表される化合物からなる、発光材料。
【化11】
[一般式(I’)において、
、R、R、RおよびRは、水素、重水素、A、ArおよびDから独立して選択され、
、R、R、RおよびRのうちのRのみが、Aであり、
、R、RおよびRのうちの少なくとも3つが、Dであり、
Aは下記一般式から独立して選択され、
【化12】
は、O、SおよびNRA’から独立して選択され、
は、水素、重水素、ハロゲン、シアノ、置換もしくは無置換のアルキル、置換もしくは無置換のアルコキシ、置換もしくは無置換のアリール、置換もしくは無置換のアリールオキシ、置換もしくは無置換のヘテロアリール、置換もしくは無置換のヘテロアリールオキシおよびシリルから独立して選択され、
A’は、水素、重水素、置換もしくは無置換のアルキル、置換もしくは無置換のアリールおよび置換もしくは無置換のヘテロアリールから独立して選択され、
Dは、下記一般式から独立して選択され、
【化13】
は、O、S、NRD’、C(O)、置換もしくは無置換のメチレン、置換もしくは無置換のエチレン、置換もしくは無置換のビニレン、置換もしくは無置換のオルト-アリーレンおよび置換もしくは無置換のオルト-ヘテロアリーレンから独立して選択され、メチレン、エチレン、ビニレン、オルト-アリーレンまたはオルト-ヘテロアリーレンの各々は、重水素、置換もしくは無置換のアルキル、置換もしくは無置換のアリールおよび置換もしくは無置換のヘテロアリールから独立して選択される1つ以上の置換基で置換されることができ、
は、水素、重水素、置換もしくは無置換のアルキル、置換もしくは無置換のアルコキシ、置換もしくは無置換のアミノ、置換もしくは無置換のアリール、置換もしくは無置換のアリールオキシ、置換もしくは無置換のヘテロアリール、置換もしくは無置換のヘテロアリールオキシおよびシリルから独立して選択され、
2つの隣り合うR同士が結合して下記のいずれかの環構造を形成することができ、下記環構造中のXはO、S、N(C )、C(CH 、C(C 、N(=O)およびCH -CH から選択され、下記環構造中の#はDが表す上記一般式において隣り合うR が結合している各炭素原子を表し、
【化14】
D’は、水素、重水素、置換もしくは無置換のアルキル、置換もしくは無置換のアミノ、置換もしくは無置換のアリールおよび置換もしくは無置換のヘテロアリールから独立して選択され、
は、単結合であり、
は、単結合および置換もしくは無置換のアリーレンから独立して選択され、アリーレンは、重水素、置換もしくは無置換のアルキル、置換もしくは無置換のアリールおよび置換もしくは無置換のヘテロアリールから独立して選択される1つ以上の置換基で置換されることができ、
Arは、置換もしくは無置換のアリールから独立して選択され、アリールは、重水素、アルキルおよびアリールから独立して選択される1つ以上の置換基で置換されることができ、
各「*」は、一般式(I)との結合点を表す。]
【請求項10】
下記一般式(I’)で表される化合物からなる、遅延蛍光体。
【化15】
[一般式(I’)において、
、R、R、RおよびRは、水素、重水素、A、ArおよびDから独立して選択され、
、R、R、RおよびRのうちのRのみが、Aであり、
、R、RおよびRのうちの少なくとも3つが、Dであり、
Aは下記一般式から独立して選択され、
【化16】
は、O、SおよびNRA’から独立して選択され、
は、水素、重水素、ハロゲン、シアノ、置換もしくは無置換のアルキル、置換もしくは無置換のアルコキシ、置換もしくは無置換のアリール、置換もしくは無置換のアリールオキシ、置換もしくは無置換のヘテロアリール、置換もしくは無置換のヘテロアリールオキシおよびシリルから独立して選択され、
A’は、水素、重水素、置換もしくは無置換のアルキル、置換もしくは無置換のアリールおよび置換もしくは無置換のヘテロアリールから独立して選択され、
Dは、下記一般式から独立して選択され、
【化17】
は、O、S、NRD’、C(O)、置換もしくは無置換のメチレン、置換もしくは無置換のエチレン、置換もしくは無置換のビニレン、置換もしくは無置換のオルト-アリーレンおよび置換もしくは無置換のオルト-ヘテロアリーレンから独立して選択され、メチレン、エチレン、ビニレン、オルト-アリーレンまたはオルト-ヘテロアリーレンの各々は、重水素、置換もしくは無置換のアルキル、置換もしくは無置換のアリールおよび置換もしくは無置換のヘテロアリールから独立して選択される1つ以上の置換基で置換されることができ、
は、水素、重水素、置換もしくは無置換のアルキル、置換もしくは無置換のアルコキシ、置換もしくは無置換のアミノ、置換もしくは無置換のアリール、置換もしくは無置換のアリールオキシ、置換もしくは無置換のヘテロアリール、置換もしくは無置換のヘテロアリールオキシおよびシリルから独立して選択され、
2つの隣り合うR同士が結合してシクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニル、アリール、ヘテロアリールまたはヘテロシクリルを形成することができ、
2つの隣り合うR同士が結合して下記のいずれかの環構造を形成することができ、下記環構造中のXはO、S、N(C )、C(CH 、C(C 、N(=O)およびCH -CH から選択され、下記環構造中の#はDが表す上記一般式において隣り合うR が結合している各炭素原子を表し、
【化18】
D’は、水素、重水素、置換もしくは無置換のアルキル、置換もしくは無置換のアミノ、置換もしくは無置換のアリールおよび置換もしくは無置換のヘテロアリールから独立して選択され、
は、単結合であり、
は、単結合および置換もしくは無置換のアリーレンから独立して選択され、アリーレンは、重水素、置換もしくは無置換のアルキル、置換もしくは無置換のアリールおよび置換もしくは無置換のヘテロアリールから独立して選択される1つ以上の置換基で置換されることができ、
Arは、置換もしくは無置換のアリールから独立して選択され、アリールは、重水素、アルキルおよびアリールから独立して選択される1つ以上の置換基で置換されることができ、
各「*」は、一般式(I)との結合点を表す。]
【請求項11】
請求項1~8のいずれか一項に記載の化合物を含有する、有機発光ダイオード(OL
ED)。
【請求項12】
陽極と、陰極と、前記陽極と前記陰極との間に発光層を含む少なくとも1つの有機層と
、を含む有機発光ダイオード(OLED)であって、
前記発光層は、
ホスト材料と、
下記一般式(I’)で表される化合物と、を含む、
有機発光ダイオード(OLED)。
【化19】
[一般式(I’)において、
、R、R、RおよびRは、水素、重水素、A、ArおよびDから独立して選択され、
、R、R、RおよびRのうちのRのみが、Aであり、
、R、RおよびRのうちの少なくとも3つが、Dであり、
Aは下記一般式から独立して選択され、
【化20】
は、O、SおよびNRA’から独立して選択され、
は、水素、重水素、ハロゲン、シアノ、置換もしくは無置換のアルキル、置換もしくは無置換のアルコキシ、置換もしくは無置換のアリール、置換もしくは無置換のアリールオキシ、置換もしくは無置換のヘテロアリール、置換もしくは無置換のヘテロアリールオキシおよびシリルから独立して選択され、
A’は、水素、重水素、置換もしくは無置換のアルキル、置換もしくは無置換のアリールおよび置換もしくは無置換のヘテロアリールから独立して選択され、
Dは、下記一般式から独立して選択され、
【化21】
は、O、S、NRD’、C(O)、置換もしくは無置換のメチレン、置換もしくは無置換のエチレン、置換もしくは無置換のビニレン、置換もしくは無置換のオルト-アリーレンおよび置換もしくは無置換のオルト-ヘテロアリーレンから独立して選択され、メチレン、エチレン、ビニレン、オルト-アリーレンまたはオルト-ヘテロアリーレンの各々は、重水素、置換もしくは無置換のアルキル、置換もしくは無置換のアリールおよび置換もしくは無置換のヘテロアリールから独立して選択される1つ以上の置換基で置換されることができ、
は、水素、重水素、置換もしくは無置換のアルキル、置換もしくは無置換のアルコキシ、置換もしくは無置換のアミノ、置換もしくは無置換のアリール、置換もしくは無置換のアリールオキシ、置換もしくは無置換のヘテロアリール、置換もしくは無置換のヘテロアリールオキシおよびシリルから独立して選択され、
2つの隣り合うR同士が結合して下記のいずれかの環構造を形成することができ、下記環構造中のXはO、S、N(C )、C(CH 、C(C 、N(=O)およびCH -CH から選択され、下記環構造中の#はDが表す上記一般式において隣り合うR が結合している各炭素原子を表し、
【化22】
D’は、水素、重水素、置換もしくは無置換のアルキル、置換もしくは無置換のアミノ、置換もしくは無置換のアリールおよび置換もしくは無置換のヘテロアリールから独立して選択され、
は、単結合であり、
は、単結合および置換もしくは無置換のアリーレンから独立して選択され、アリーレンは、重水素、置換もしくは無置換のアルキル、置換もしくは無置換のアリールおよび置換もしくは無置換のヘテロアリールから独立して選択される1つ以上の置換基で置換されることができ、
Arは、置換もしくは無置換のアリールから独立して選択され、アリールは、重水素、アルキルおよびアリールから独立して選択される1つ以上の置換基で置換されることができ、
各「*」は、一般式(I)との結合点を表す。]
【請求項13】
請求項1~8のいずれか一項に記載の化合物を含む、スクリーンまたはディスプレイ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本願は、2017年6月23日出願の米国仮特許出願番号62/523,948、2017年6月23日出願の米国仮特許出願番号62/524,094、2018年4月6日出願の米国仮特許出願番号62/653,880、および2017年9月1日出願の日本特許出願番号2017-168885の優先権を主張する。
【背景技術】
【0002】
有機発光ダイオード(OLED)は、励起(例えば電流)に反応して光を発する有機化合物のフィルムが2つの導体の間に配置された発光ダイオード(LED)である。OLEDは、テレビ画面、コンピューターのモニター、携帯電話およびタブレットなどのディスプレイおよび照明において有用である。OLEDディスプレイに固有の問題は、有機化合物の寿命が短いことである。特に、青色光を発するOLEDは、緑色もしくは赤色のOLEDと比較し、顕著に早い速度で劣化する。
【0003】
OLED材料は、ホスト輸送材料中の電子と正孔との再結合によって発生する分子励起状態(励起子)の放射性失活に依存する。励起の性質により、電子と正孔との間に相互作用が生じ、励起状態は明るい一重項(全スピンが0)と暗い三重項(全スピンが1)とに分割される。電子と正孔との再結合により統計的に4つのスピン状態(1つの一重項副準位と3つの三重項副準位)の混合物が生じるため、従来のOLEDは理論上で最大25%の効率となる。
【0004】
これまでOLED材料のデザインでは、通常の暗い三重項から残りのエネルギーの回収に注力されていた。通常の暗い三重項状態から光を発する、効率の高い燐光体を開発するための近年の研究により、緑色および赤色のOLEDが得られている。しかしながら、他の色(例えば青色)の場合、より高いエネルギー励起状態が必要となるため、OLEDの劣化プロセスが加速される。
【0005】
三重項-一重項の遷移速度に対する基本的な律速要因は、パラメータ|Hfi/Δ|の値である(式中、Hfiは超微細またはスピン軌道相互作用による結合エネルギーであり、Δは一重項と三重項状態との間のエネルギー分裂である)。従来の燐光OLEDは、スピン軌道(SO)相互作用による一重項および三重項状態を混合し、Hfiを増加させ、重金属原子と有機配位子との間で共有される最低の発光状態をもたらすことを拠り所としていた。これは、全ての高い一重項および三重項状態からのエネルギー回収、およびそれに続く燐光(励起三重項からの比較的短寿命の発光)につながる。この短縮された三重項寿命は、電荷および他の励起子による三重項励起子消滅を減少させる。他のグループによる最近の研究は、燐光材料の性能が限界に達したことを示唆するものである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本開示は、OLED用の新規材料に関する。ある実施形態において、OLEDは、急速な劣化を生じることなく高い励起状態に到達することができる。Hfiの最大化と反対のΔの最小化に基づく熱活性化遅延蛍光(TADF)により、適当な時間スケール(例えば1μ秒~10m秒)において一重項準位と三重項副準位との間での分布遷移が可能になることが明らかとなった。本発明で記載される化合物は、前述の化合物よりも高いエネルギー励起状態で発光することができる。
【0007】
一態様では、本開示は、下記一般式(I)で表される化合物を提供する。
【化1】
一般式(I)において、
、R、R、RおよびRは、水素、重水素、A、ArおよびDから独立して選択され、
、R、R、RおよびRのうちの1つのみが、Aであり、
、R、R、RおよびRのうちの少なくとも1つが、Dであり、
Aは下記一般式から独立して選択され、
【化2】
は、O、SおよびNRA’から独立して選択され、
は、水素、重水素、ハロゲン、シアノ、置換もしくは無置換のアルキル、置換もしくは無置換のアルコキシ、置換もしくは無置換のアリール、置換もしくは無置換のアリールオキシ、置換もしくは無置換のヘテロアリール、置換もしくは無置換のヘテロアリールオキシおよびシリルから選択され、
2つ以上のR同士で環系を形成することができ、
A’は、水素、重水素、置換もしくは無置換のアルキル、置換もしくは無置換のアリールおよび置換もしくは無置換のヘテロアリールから独立して選択され、
2つ以上のRA’およびR同士で環系を形成することができ、
Dは、下記一般式から独立して選択され、
【化3】
は、O、S、NRD’、C(O)、置換もしくは無置換のメチレン、置換もしくは無置換のエチレン、置換もしくは無置換のビニレン、置換もしくは無置換のオルト-アリーレンおよび置換もしくは無置換のオルト-ヘテロアリーレンから独立して選択され、メチレン、エチレン、ビニレン、オルト-アリーレンまたはオルト-ヘテロアリーレンの各々は、重水素、置換もしくは無置換のアルキル、置換もしくは無置換のアリールおよび置換もしくは無置換のヘテロアリールから独立して選択される1つ以上の置換基で置換されることができ、
2つ以上のX同士で環系を形成することができ、
は、水素、重水素、置換もしくは無置換のアルキル、置換もしくは無置換のアルコキシ、置換もしくは無置換のアミノ、置換もしくは無置換のアリール、置換もしくは無置換のアリールオキシ、置換もしくは無置換のヘテロアリール、置換もしくは無置換のヘテロアリールオキシおよびシリルから独立して選択され、
2つ以上のR同士で環系を形成することができ、
D’は、水素、重水素、置換もしくは無置換のアルキル、置換もしくは無置換のアミノ、置換もしくは無置換のアリールおよび置換もしくは無置換のヘテロアリールから独立して選択され、
2つ以上のRD’およびR同士で環系を形成することができ、
およびLは、単結合、置換もしくは無置換のアリーレンおよび置換もしくは無置換のヘテロアリーレンから独立して選択され、アリーレンおよびヘテロアリーレンの各々は、重水素、置換もしくは無置換のアルキル、置換もしくは無置換のアリールおよび置換もしくは無置換のヘテロアリールから独立して選択される1つ以上の置換基で置換されることができ、2つ以上のこれら置換基同士で環系を形成することができ、
Arは、置換もしくは無置換のアリールおよび置換もしくは無置換のヘテロアリールから独立して選択され、前記置換もしくは無置換のヘテロアリールは、窒素原子を含有せず、アリールおよびヘテロアリールの各々は、重水素、置換もしくは無置換のアルキル、置換もしくは無置換のアリールおよび置換もしくは無置換のヘテロアリールから独立して選択される1つ以上の置換基で置換されることができ、2つ以上のこれら置換基同士で環系を形成することができ、
各「*」は、一般式(I)との結合点を表す。
【0008】
一態様では、本開示は、下記一般式(II)で表される化合物を提供する。
【化4】
一般式(II)において、
、R、R、RおよびRは、A、D、HおよびPhからなる群から独立して選択され、
、R、R、RおよびRのうちの少なくとも1つは、Aであり、
、R、R、RおよびRのうちの少なくとも1つは、Dであり、
Aは、下記一般式で表され、
【化5】
Dは、独立して、下記一般式D1、D2またはD3で表され、
【化6】
Yは、C(H)またはNであり、
Zは、独立して、H、MeまたはPhである。
【0009】
一態様では、本開示は、下記一般式(III)で表される化合物を提供する。
【化7】
一般式(III)において、
Aは下記一般式A1~A11から独立して選択され、
【化8】
、R、RおよびRは、H、PhおよびDから独立して選択され、
Dは、下記一般式D1~D11から独立して選択され、
【化9】
Zは、アルキル、アリールおよびヘテロアリールから独立して選択され、
Xは、O、S、N(Ph)、C(CH、C(Ph)、N(=O)およびCH-CHから選択され、
mおよびnは、0、1、2、3および4から独立して選択され、
、R、RおよびRのうちの少なくとも2つは、Dである。
【0010】
ある実施形態では、陽極と、陰極と、前記陽極と前記陰極との間に発光層を含む少なくとも1つの有機層と、を含む有機発光ダイオード(OLED)が本発明では提供され、前記発光層は、
ホスト材料と、
一般式(I)、(II)又は(III)で表される化合物と、を含む。
【0011】
別の態様では、本開示は、デバイスにおける化合物の使用を提供する。ある実施形態では、陽極と、陰極と、前記陽極と前記陰極との間に発光層を含む少なくとも1つの有機層と、を含む有機発光ダイオード(OLED)が本発明で提供され、前記発光層は、
ホスト材料と、
一般式(I)、(II)又は(III)で表される化合物と、を含み、
一般式(I)、(II)または(III)で表される前記化合物は、発光材料である。
【0012】
ある実施形態では、一般式(I)、(II)又は(III)の前記化合物は、スクリーンまたはディスプレイで用いられる。
【0013】
更に別の態様では、本開示は、OLEDディスプレイの製造方法に関し、当該方法は、
マザーパネルのベース基材上に障壁層を形成する工程と、
前記障壁層上にセルパネル単位で複数のディスプレイユニットを形成する工程と、
前記セルパネルの前記ディスプレイユニットのそれぞれの上にカプセル化層を形成する工程と、
前記セルパネル間のインタフェース部に有機フィルムを塗布する工程と、を含む。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、1が基材を示し、2が陽極を示し、3が正孔注入層を示し、4が正孔輸送層を示し、5が発光層を示し、6が電子輸送層を示し、7が陰極を示す図である。
図2図2は、337nmの励起光による化合物2のニート膜の過渡減衰曲線を示す図である。
図3図3は、337nmの励起光による化合物2のドープ膜の過渡減衰曲線を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
一態様において、本開示は、下記一般式(I)で表される化合物を提供する。
【化10】
一般式(I)において、
、R、R、RおよびRは、水素、重水素、A、ArおよびDから独立して選択され、
、R、R、RおよびRのうちの1つのみが、Aであり、
、R、R、RおよびRのうちの少なくとも1つが、Dであり、
Aは下記一般式から独立して選択され、
【化11】
は、O、SおよびNRA’から独立して選択され、
は、水素、重水素、ハロゲン、シアノ、置換もしくは無置換のアルキル、置換もしくは無置換のアルコキシ、置換もしくは無置換のアリール、置換もしくは無置換のアリールオキシ、置換もしくは無置換のヘテロアリール、置換もしくは無置換のヘテロアリールオキシおよびシリルから独立して選択され、
2つ以上のR同士で環系を形成することができ、
A’は、水素、重水素、置換もしくは無置換のアルキル、置換もしくは無置換のアリールおよび置換もしくは無置換のヘテロアリールから独立して選択され、
2つ以上のRA’およびR同士で環系を形成することができ、
Dは、下記一般式から独立して選択され、
【化12】
は、O、S、NRD’、C(O)、置換もしくは無置換のメチレン、置換もしくは無置換のエチレン、置換もしくは無置換のビニレン、置換もしくは無置換のオルト-アリーレンおよび置換もしくは無置換のオルト-ヘテロアリーレンから独立して選択され、メチレン、エチレン、ビニレン、オルト-アリーレンまたはオルト-ヘテロアリーレンの各々は、重水素、置換もしくは無置換のアルキル、置換もしくは無置換のアリールおよび置換もしくは無置換のヘテロアリールから独立して選択される1つ以上の置換基で置換されることができ、
2つ以上のX同士で環系を形成することができ、
は、水素、重水素、置換もしくは無置換のアルキル、置換もしくは無置換のアルコキシ、置換もしくは無置換のアミノ、置換もしくは無置換のアリール、置換もしくは無置換のアリールオキシ、置換もしくは無置換のヘテロアリール、置換もしくは無置換のヘテロアリールオキシおよびシリルから独立して選択され、
2つ以上のR同士で環系を形成することができ、
D’は、水素、重水素、置換もしくは無置換のアルキル、置換もしくは無置換のアミノ、置換もしくは無置換のアリールおよび置換もしくは無置換のヘテロアリールから独立して選択され、
2つ以上のRD’およびR同士で環系を形成することができ、
およびLは、単結合、置換もしくは無置換のアリーレンおよび置換もしくは無置換のヘテロアリーレンから独立して選択され、アリーレンおよびヘテロアリーレンの各々は、重水素、置換もしくは無置換のアルキル、置換もしくは無置換のアリールおよび置換もしくは無置換のヘテロアリールから独立して選択される1つ以上の置換基で置換されることができ、2つ以上のこれら置換基同士で環系を形成することができ、
Arは、置換もしくは無置換のアリールおよび置換もしくは無置換のヘテロアリールから独立して選択され、前記置換もしくは無置換のヘテロアリールは、窒素原子を含有せず、アリールおよびヘテロアリールの各々は、重水素、置換もしくは無置換のアルキル、置換もしくは無置換のアリールおよび置換もしくは無置換のヘテロアリールから独立して選択される1つ以上の置換基で置換されることができ、2つ以上のこれら置換基同士で環系を形成することができ、
各「*」は、一般式(I)との結合点を表す。
【0016】
一態様において、本開示は、下記一般式(II)で表される化合物を提供する。
【化13】
一般式(II)において、
、R、R、RおよびRは、A、D、HおよびPhからなる群から独立して選択され、
、R、R、RおよびRのうちの少なくとも1つは、Aであり、
、R、R、RおよびRのうちの少なくとも1つは、Dであり、
Aは、下記一般式で表され、
【化14】
Dは、独立して、下記一般式D1、D2またはD3で表され、
【化15】
Yは、C(H)またはNであり、
Zは、独立して、H、MeまたはPhである。
【0017】
一態様において、本開示は、下記一般式(III)で表される化合物を提供する。
【化16】
一般式(III)において、
Aは下記一般式A1~A11から選択され、
【化17】
、R、RおよびRは、H、PhおよびDから独立して選択され、
Dは、下記一般式D1~D11から独立して選択され、
【化18】
Zは、アルキル、アリールおよびヘテロアリールから独立して選択され、
Xは、O、S、N(Ph)、C(CH、C(Ph)、N(=O)およびCH-CHから選択され、
mおよびnは、0、1、2、3および4から独立して選択され、
、R、RおよびRのうちの少なくとも2つは、Dである。
【0018】
開示内容の説明を目的として例を以下に示すが、それらに開示内容が限定されるものではない。実際、本開示により、開示される範囲または技術思想から逸脱することなく様々な改変および変形が可能であることは、当業者にとって自明である。例えば、1つの実施形態の一部として例示もしくは記載される特徴が、別の実施形態において用いられることにより、更なる実施形態が得られる。すなわち、本開示では、添付の特許請求の範囲およびそれらと同等の物の範囲内に含まれる改変および変形が包含されることが意図されている。本開示に係る他の課題、特徴および態様は、以下の詳細な説明に開示されているか、またはそれに由来して派生しうるものである。本開示における考察は、典型的な実施形態を説明するだけのものであり、本開示の更に広い態様を除外するものとして解釈すべきでないことは、当業者が理解するとおりである。
【0019】
定義:
本明細書中で特に定義されない限り、本願で用いられる科学的および専門的用語は、当業者により一般的に理解されている意味を有する。全般的には、本明細書に記載の化学物質に関する命名法および技術は、当該技術分野において周知であり、一般的に用いられている。
【0020】
「アシル」という用語は、当該技術分野で公知であり、一般式ヒドロカルビルC(O)-、好ましくはアルキルC(O)-で表される基を指す。
【0021】
「アシルアミノ」という用語は、当該技術分野で公知であり、アシル基で置換されたアミノ基を指し、例えば、式ヒドロカルビルC(O)NH-で表すことができる。
【0022】
「アシルオキシ」という用語は、当技術分野で公知であり、一般式ヒドロカルビルC(O)O-、好ましくはアルキルC(O)O-で表される基を指す。
【0023】
「アルコキシ」という用語は、酸素原子が結合したアルキル基を指す。ある実施形態では、アルコキシは1~20個の炭素を有する。ある実施形態(embodimens)では、アルコキシは1~12個の炭素原子を有する。代表的なアルコキシ基として、メトキシ基、トリフルオロメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、tert-ブトキシ基などを挙げることができる。
【0024】
「アルコキシアルキル」という用語は、アルコキシ基で置換されたアルキル基を指し、一般式アルキル-O-アルキルで表すことができる。
【0025】
本明細書で用いられる「アルケニル」という用語は、少なくとも1つの二重結合を含む脂肪族基を指し、「無置換アルケニル」および「置換アルケニル」両方が含まれるものとし、後者については、アルケニル基の一つ以上の炭素原子上の水素原子を置換する置換基を有するアルケニル部分を指す。典型的には、直鎖状もしくは分岐鎖状のアルケニル基は、特に定義されない限り、1~約20個、好ましくは1~約12個の炭素原子を有する。そのような置換基は、1つ以上の二重結合に含まれるかもしくは含まれない1つ以上の炭素原子に存在しうる。更に、そのような置換基には、安定性を損なわない限りにおいて、後述するように、アルキル基として考えられる全てのものが含まれる。例えば、1つ以上のアルキル基、カルボシクリル基、アリール基、ヘテロシクリル基またはヘテロアリール基によるアルケニル基の置換が考えられる。
【0026】
「アルキル」基または「アルカン」は、完全に飽和した、直鎖状もしくは分岐鎖状の非芳香族炭化水素である。典型的には、直鎖状もしくは分岐鎖状のアルキル基は、特に定義されない限り、1~約20個、好ましくは1~約12個の炭素原子を有する。ある実施形態では、アルキル基は、1~8個の炭素原子、1~6個の炭素原子、1~4個の炭素原子、または1~3個の炭素原子を有する。直鎖状もしくは分岐鎖状のアルキル基の例として、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソ-プロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ペンチル基およびオクチル基が挙げられる。
【0027】
更に、明細書、実施例および特許請求の範囲全体を通じて用いられる「アルキル」という用語には、「無置換アルキル」および「置換アルキル」両方が含まれるものとし、後者については、炭化水素骨格中の1つ以上の置換可能な炭素上の水素を置換する置換基を有するアルキル部分を指す。そのような置換基としては、特定されない限り、例えばハロゲン基(例えばフルオロ基)、ヒドロキシル基、カルボニル基(例えばカルボキシル、アルコキシカルボニル、ホルミルまたはアシル基)、チオカルボニル基(例えばチオエステル、チオアセテートまたはチオホルメート基)、アルコキシ基、ホスホリル基、ホスフェート基、ホスホネート基、ホスフィネート基、アミノ基、アミド基、アミジン基、イミン基、シアノ基、ニトロ基、アジド基、スルフヒドリル基、アルキルチオ基、スルフェート基、スルホネート基、スルファモイル基、スルホンアミド基、スルホニル基、ヘテロシクリル基、アラルキル基または芳香族もしくは複素環式芳香族部分を挙げることができる。好ましい実施形態では、置換アルキル基上の置換基は、C1-6アルキル基、C3-6シクロアルキル基、ハロゲン基、カルボニル基、シアノ基またはヒドロキシ基から選択される。より好ましい実施形態では、置換アルキル基上の置換基は、フルオロ基、カルボニル基、シアノ基またはヒドロキシル基から選択される。炭化水素鎖上の置換された部分が、それ自身必要に応じて置換されうることは、当業者に理解されるとおりである。例えば、置換アルキルの置換基としては、置換および無置換のアミノ基、アジド基、イミノ基、アミド基、ホスホリル基(ホスホネート基およびホスフィネート基を含む)、スルホニル基(スルフェート基、スルホンアミド基、スルファモイル基およびスルホネート基を含む)およびシリル基、並びに、エーテル基、アルキルチオ基、カルボニル基(ケトン基、アルデヒド基、カルボキシレート基およびエステルを含む)、-CF、-CNなどを挙げることができる。典型的な置換アルキル基については後述する。シクロアルキル基は更に、アルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アミノアルキル基、カルボニル基で置換されたアルキル基、-CF、-CNなどで更に置換されうる。
【0028】
「Cx-y」という用語は、化学基部分(例えばアシル基、アシルオキシ基、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基またはアルコキシ基)に関連して用いられるときは、鎖中にx~y個の炭素を含む基を包含することを意味する。例えば、「Cx-yアルキル基」という用語が指すものは、置換もしくは無置換の飽和炭化水素基であって、鎖中にx~y個の炭素を含む直鎖状アルキル基および分岐鎖状アルキル基が含まれ、またハロアルキル基が含まれる。好ましいハロアルキル基としては、トリフルオロメチル基、ジフルオロメチル基、2,2,2-トリフルオロエチル基およびペンタフルオロエチル基が挙げられる。Cアルキル基とは、基が末端の位置に存在する場合には水素原子を、内部に存在する場合には結合を示す。用語「C2-yアルケニル」および「C2-yアルキニル」は、長さおよび置換可能性において上記のアルキル基と類似する、置換もしくは無置換の不飽和脂肪族基であるが、但し、それぞれ、少なくとも1つの二重または三重結合を有する基を指す。
【0029】
本明細書で用いられる「アルキルアミノ」という用語は、少なくとも1つのアルキル基で置換されたアミノ基を指す。
【0030】
本明細書で用いられる「アルキルチオ」という用語は、アルキル基で置換されたチオール基を指し、一般式アルキルS-で表されうる。
【0031】
本明細書で用いられる「アリールチオ」という用語は、アルキル基で置換されたチオール基を指し、一般式アリールS-で表されうる。
【0032】
本明細書で用いられる「アルキニル」という用語は、少なくとも1つの三重結合を含んでいる脂肪族基を指し、「無置換アルキニル」および「置換アルキニル」両方が含まれるものとし、後者については、アルキニル基の1つ以上の炭素原子上の水素を置換する置換基を有するアルキニル部分を指す。典型的には、特に定義されない限り、直鎖状もしくは分岐鎖状のアルキニル基は、1~約20個、好ましくは1~約10個の炭素原子を有する。そのような置換基は、1つ以上の三重結合に含まれるかもしくは含まれない1つ以上の炭素上に存在しうる。更に、そのような置換基には、安定性を損なわない限りにおいて、後述するように、アルキル基として考えられる全てのものが含まれる。例えば、1つ以上のアルキル基、カルボシクリル基、アリール基、ヘテロシクリル基またはヘテロアリール基によるアルキニル基の置換が考えられる。
【0033】
本明細書で用いられる「アミド」という用語は、下記一般式で表される基を指し、
【化19】
式中、Rは各々独立に水素またはヒドロカルビル基を表すか、あるいは、2つのRは、それらが結合するN原子と共に環構造中に4~8個の原子を有する複素環を形成する。
【0034】
用語「アミン」および「アミノ」は、当技術分野で周知であり、無置換および置換のアミンおよびその塩を指し、例えば、下記一般式のいずれかで表される基を指し、
【化20】
式中、Rは各々独立に水素またはヒドロカルビル基を表すか、または、2つのRは、それらが結合するN原子と共に環構造中に4~8の原子を有する複素環を形成する。
【0035】
本明細書で用いられる「アミノアルキル」という用語は、アミノ基で置換されたアルキル基を指す。
【0036】
本明細書で用いられる「アラルキル」という用語は、アリール基で置換されたアルキル基を指す。
【0037】
本明細書で用いられる「アリール」という用語には、環の各原子が炭素原子である、置換もしくは無置換の単環式芳香族基が含まれる。好ましくは、環は6または20員環、より好ましくは6員環である。好ましくは、アリールは6~40個の炭素原子を有し、より好ましくは6~25個の炭素原子を有する。
【0038】
「アリール」という用語にはまた、2つ以上の炭素原子が2つの隣接する環に共有される2つ以上の環式環を有する多環系が含まれ、当該環のうちの少なくとも1つが芳香族であり、他の環が、例えばシクロアルキル基、シクロアルケニル基、シクロアルキニル基、アリール基、ヘテロアリール基および/またはヘテロシクリル基であってもよい。アリール基としては、ベンゼン、ナフタレン、フェナントレン、フェノール、アニリン等が挙げられる。
【0039】
「カルバメート」という用語は、当技術分野で公知であり、下記一般式のいずれかで表される基を指し、
【化21】
式中、Rは各々独立に水素またはヒドロカルビル基(例えばアルキル基)を意味するか、または両方のRは、介在する共通する原子と共に、環構造中に4~8の原子を有する複素環を形成する。
【0040】
本明細書で用いられる用語「炭素環」および「炭素環式」は、環の各原子が炭素原子である、飽和もしくは不飽和環を指す。好ましくは、炭素環式基は、3~20個の炭素原子を有する。用語「炭素環」には、芳香族の炭素環および非芳香族の炭素環の両方が含まれる。非芳香族の炭素環には、全ての炭素原子が飽和したシクロアルカン環と、少なくとも1つの二重結合を含むシクロアルケン環が含まれる。炭素環には、5~7員の単環式環および8~12員の二環式環が含まれる。二環式炭素環の各環は、飽和、不飽和および芳香族の環から選択されうる。炭素環には、1個、2個または3個以上の原子が2つの環で共有された二環式分子が含まれる。「縮合炭素環」という用語は、環の各々が2個の隣接する原子を他の環と共有する二環式炭素環を指す。縮合炭素環の各環は、飽和、不飽和および芳香族の環から選択されうる。典型的な実施形態では、芳香環(例えばフェニル(Ph)基)は、飽和もしくは不飽和環(例えばシクロヘキサン、シクロペンタンまたはシクロヘキセン)と縮合してもよい。価数の許す限り、飽和、不飽和および芳香族二環式環のいかなる組合せも、炭素環式の定義に含まれる。典型的な「炭素環」としては、シクロペンタン、シクロヘキサン、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、1,5-シクロオクタジエン、1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン、ビシクロ[4.2.0]オクタ-3-エン、ナフタレンおよびアダマンタンが挙げられる。縮合炭素環の例としては、デカリン、ナフタレン、1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン、ビシクロ[4.2.0]オクタン、4,5,6,7-テトラヒドロ-1H-インデンおよびビシクロ[4.1.0]ヘプタ-3-エンが挙げられる。「炭素環」は、水素原子を保持できる1つ以上のいかなる位置で置換(susbstituted)されてもよい。
【0041】
「シクロアルキル」基は、完全に飽和した環状炭化水素である。「シクロアルキル」には、単環式および二環式の環が含まれる。好ましくは、シクロアルキル基は3~20個の炭素原子を有する。典型的には、単環式シクロアルキル基は、3~約10個の炭素原子を有し、より典型的には、特に定義されない限り、3~8個の炭素原子を有する。二環式シクロアルキル基の第2の環は、飽和、不飽和および芳香族の環から選択されうる。シクロアルキル基には、1つ、2つまたは、3つ以上の原子が2つの環で共有された二環式分子が含まれる。「縮合シクロアルキル」という用語は、環の各々が2個の隣接する原子を他の環と共有する二環式シクロアルキルを指す。縮合二環式シクロアルキルの第2の環は、飽和、不飽和および芳香族の環から選択されうる。「シクロアルケニル」基は、1つ以上の二重結合を含む環状炭化水素である。
【0042】
本明細書で用いられる「カルボシクリルアルキル」という用語は、炭素環基で置換されたアルキル基を指す。
【0043】
本明細書で用いられる「カーボネート」という用語は、-OCO-R基を指し、式中、-Rはヒドロカルビル基を表す。
【0044】
本明細書で用いられる「カルボキシ」という用語は、式-COHで表される基を指す。
【0045】
本明細書で用いられる「エステル」という用語は、-C(O)OR基を指し、式中、Rはヒドロカルビル基を表す。
【0046】
本明細書で用いられる「エーテル」という用語は、ヒドロカルビル基が酸素原子を介してもう1つのヒドロカルビル基に連結した基を指す。従って、ヒドロカルビル基のエーテル置換基は、ヒドロカルビル-O-でありうる。エーテルは対称型であっても非対称型であってもよい。エーテルの例としては、限定されないが、複素環-O-複素環およびアリール-O-複素環が挙げられる。エーテルには「アルコキシアルキル」基が含まれ、一般式アルキル-O-アルキルで表されうる。
【0047】
本明細書で用いられる用語「ハロ」および「ハロゲン」は、ハロゲンを意味し、塩素、フッ素、臭素およびヨウ素が含まれる。
【0048】
本明細書で用いられる用語「ヘタルアルキル(hetaralkyl)」および「ヘテロアラルキル」は、ヘタリール基で置換されたアルキル基を指す。
【0049】
本明細書で用いられる「ヘテロアルキル」という用語は、炭素原子と少なくとも1つのヘテロ原子の飽和もしくは不飽和の鎖であって、2つのヘテロ原子が隣接していないものを指す。
【0050】
用語「ヘテロアリール」および「ヘタリール」には、置換もしくは無置換、好ましくは5~20員環、より好ましくは5~6員環の芳香族単環構造が含まれ、その環構造中には、少なくとも1個のヘテロ原子、好ましくは1~4個のヘテロ原子、より好ましくは1または2個のヘテロ原子が含まれる。好ましくは、ヘテロアリールは2~40個の炭素原子を有し、より好ましくは、2~25個の炭素原子を有する。用語「ヘテロアリール」および「ヘタリール」にはまた、2つ以上の炭素原子が2つの隣接する環に共有される2つ以上の環式環を有する多環系が含まれ、環のうちの少なくとも1つは複素環であり、他の環は、例えばシクロアルキル基、シクロアルケニル基、シクロアルキニル基、アリール基、ヘテロアリール基および/またはヘテロシクリル基であってもよい。ヘテロアリール基としては、例えばピロール、フラン、チオフェン、イミダゾール、オキサゾール、チアゾール、ピラゾール、ピリジン、ピラジン、ピリダジン、ピリミジンおよびカルバゾールなどが挙げられる。
【0051】
「アリールオキシ」という用語は、酸素原子が結合したアリール基を指す。好ましくは、アリールオキシは6~40個の炭素原子を有し、より好ましくは、6~25個の炭素原子を有する。
【0052】
「ヘテロアリールオキシ」という用語は、酸素原子が結合したアリール基を指す。好ましくは、ヘテロアリールオキシは3~40個の炭素原子を有し、より好ましくは、3~25個の炭素原子を有する。
【0053】
本明細書で用いられる「ヘテロ原子」という用語は、炭素原子または水素原子以外のあらゆる元素の原子を意味する。好ましいヘテロ原子は、窒素、酸素および硫黄原子である。
【0054】
用語「ヘテロシクリル」、「複素環」および「複素環式」は、置換もしくは無置換の、好ましくは3~20員環、より好ましくは3~7員環の非芳香環構造を指し、その環構造には、少なくとも1個のヘテロ原子、好ましくは1~4個のヘテロ原子、より好ましくは1または2個のヘテロ原子が含まれる。用語「ヘテロシクリル」および「複素環式」にはまた、2つ以上の炭素が2つの隣接する環に共有された2つ以上の環式環を有する多環系が含まれ、環のうちの少なくとも1つは複素環式であり、他の環は、例えばシクロアルキル基、シクロアルケニル基、シクロアルキニル基、アリール基、ヘテロアリール基および/またはヘテロシクリル基であってもよい。ヘテロシクリル基としては、例えばピペリジン、ピペラジン、ピロリジン、モルホリン、ラクトン、ラクタムなどが挙げられる。
【0055】
本明細書で用いられる「ヘテロシクリルアルキル」という用語は、複素環基で置換されたアルキル基を指す。
【0056】
本明細書で用いられる「ヒドロカルビル」という用語は、炭素原子を介して結合し、当該炭素原子が=Oまたは=S置換基を有さない基を指す。ヒドロカルビルは、ヘテロ原子を任意に含んでもよい。ヒドロカルビル基としては、限定されないが、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシアルキル基、アミノアルキル基、アラルキル基、アリール基、アラルキル基、カルボシクリル基、シクロアルキル基、カルボシクリルアルキル基、ヘテロアラルキル基、炭素原子を介して結合したヘテロアリール基、炭素原子を介して結合したヘテロシクリル基、ヘテロシクリルアルキル基またはヒドロキシアルキル基が挙げられる。すなわち、メチル基、エトキシエチル基、2-ピリジル基およびトリフルオロメチル基などの基はヒドロカルビル基であるが、アセチル基(連結する炭素原子上に=O置換基を有する)およびエトキシ基(炭素原子ではなく酸素原子を介して連結する)などの置換基は該当しない。
【0057】
本明細書で用いられる「ヒドロキシアルキル」という用語は、ヒドロキシ基で置換されたアルキル基を指す。
【0058】
用語「低級」は、例えばアシル基、アシルオキシ基、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基またはアルコキシ基などの化学部分に関連して用いられるとき、6個以下の非水素原子が置換基中に存在する基を含むことを意味する。「低級アルキル基」は、例えば6個以下の炭素原子を含有するアルキル基を指す。ある実施形態では、アルキル基は1~6個の炭素原子、1~4個の炭素原子、または1~3個の炭素原子を有する。特定の実施形態では、本発明で定義される置換基である、アシル基、アシルオキシ基、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基またはアルコキシ基は、それらが単独でまたは他の置換基との組み合わせ(例えばヒドロキシアルキルおよびアラルキル基(この場合、例えば、アルキル置換基の炭素原子数をカウントする場合にはアリール基内の原子はカウントしない))で存在する場合、それぞれ低級アシル基、低級アシルオキシ基、低級アルキル基、低級アルケニル基、低級アルキニル基または低級アルコキシ基である。
【0059】
用語「ポリシクリル」、「多環」および「多環式」は、例えばシクロアルキル基、シクロアルケニル基、シクロアルキニル基、アリール基、ヘテロアリール基および/またはヘテロシクリル基などの2つ以上の環を指し、2個以上の原子が2つの隣接する環に共有され、当該環は例えば「縮合環」となる。多環に存在する各環は、置換されてもよく、または無置換であってもよい。特定の実施形態では、多環に存在する各環は、環中に3~10個、好ましくは5~7個の原子を含む。
【0060】
用語「ポリ(メタフェニレンオキシド)」中、「フェニレン」という用語は、包括的には、6員のアリールまたは6員のヘテロアリール部分を指す。典型的なポリ(メタフェニレンオキシド)は、本開示における第1~第20番目の態様として記載する。
【0061】
「シリル」という用語は、3つのヒドロカルビル部分が結合したケイ素部分を指す。
【0062】
「置換された」という用語は、主鎖中の1つ以上の炭素上の水素を置換する置換基を有する部分を指す。当然ながら、「置換」または「~で置換された」というときは、そのような置換が、置換される原子と置換基との許される価数に従うものであって、当該置換により化合物が安定である(例えば、転位、環化、脱離などの変化が自発的に生じない)ことを暗に含むものである。置換されてもよい部分には、本明細書に記載のあらゆる適切な置換基が含まれ、例えばアシル基、アシルアミノ基、アシルオキシ基、アルコキシ基、アルコキシアルキル基、アルケニル基、アルキル基、アルキルアミノ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルキニル基、アミド基、アミノ基、アミノアルキル基、アラルキル基、カルバメート基、カルボシクリル基、シクロアルキル基、カルボシクリルアルキル基、カーボネート基、エステル基、エーテル基、ヘテロアラルキル基、ヘテロシクリル基、ヘテロシクリルアルキル基、ヒドロカルビル基、シリル基、スルホン基またはチオエーテル基が挙げられる。本明細書において、「置換された」という用語は、有機化合物に存在しうる全ての置換基が含まれるものとする。広義には、存在しうる置換基には、非環式および環式の、分岐鎖状および非分岐鎖状の、炭素環式および複素環式の、芳香族および非芳香族の、有機化合物の置換基が含まれる。存在し得る置換基は、適切な有機化合物に対して、1以上の、同じまたは異なるものでありうる。本発明の目的においては、窒素などのヘテロ原子は、水素置換基、および/または、本明細書に記載の、当該ヘテロ原子の価数を満たす、有機化合物に存在しうるあらゆる置換基を有してもよい。置換基には、本明細書に記載のあらゆる置換基が含まれ、例えばハロゲン、ヒドロキシル基、カルボニル基(例えばカルボキシル、アルコキシカルボニル、ホルミルまたはアシル基)、チオカルボニル基(例えばチオエステル、チオアセテートまたはチオホルメート基)、アルコキシ基、ホスホリル基、リン酸基、ホスホン酸基、ホスフィネート基、アミノ基、アミド基、アミジン基、イミン基、シアノ基、ニトロ基、アジド基、スルフヒドリル基、アルキルチオ基、スルフェート基、スルホネート基、スルファモイル基、スルホンアミド基、スルホニル基、ヘテロシクリル基、アラルキル基または芳香族もしくは複素環式芳香族部分が含まれる。好ましい実施形態では、置換されたアルキル基の置換基は、C1-6アルキル基、C3-6シクロアルキル基、ハロゲン基、カルボニル基、シアノ基、またはヒドロキシル基から選択される。より好ましい実施形態では、置換されたアルキル基の置換基は、フルオロ基、カルボニル基、シアノ基またはヒドロキシル基から選択される。当業者であれば、当該置換基はそれら自身適宜置換されうることを理解するであろう。「無置換の」として特に記載のない限り、本明細書中の化学基部分に関する言及には、置換されたバリアントが含まれるものとして理解される。例えば、「アリール」基または部分に関する言及には、置換および無置換のバリアント両方が暗に含まれる。
【0063】
「スルホネート」という用語は、当技術分野で公知であり、SOH基またはその薬学的に許容できる塩を指す。
【0064】
「スルホン」という用語は、当技術分野で公知であり、-S(O)-R基を指し、式中、Rはヒドロカルビル基を表す。
【0065】
本明細書で用いられる「チオエーテル」という用語は、酸素が硫黄で置換されたエーテルと同等である。
【0066】
本明細書で用いられる「対称性分子」という用語は、群対称または合成対称である分子を指す。本明細書で用いられる「群対称」という用語は、分子対称性の群論に従い対称である分子を指す。本明細書で用いられる「合成対称」という用語は、レギオ選択的な合成経路が必要とならないように選択される分子を指す。
【0067】
本明細書で用いられる「供与体」という用語は、有機発光ダイオードで使用でき、励起により、その最高被占分子軌道から電子を受容体に供与する性質を有する分子フラグメントを指す。好ましい実施形態では、供与体は置換アミノ基を含有する。例示的実施形態では、供与体は-6.5eV以上のイオン化ポテンシャルを有する。
【0068】
本明細書で用いられる「受容体」という用語は、有機発光ダイオードで使用でき、励起した供与体から電子をその最低空軌道に受容する性質を有する分子フラグメントを指す。例示的な実施形態では、受容体は-0.5eV以下の電子親和力を有する。
【0069】
本明細書で用いられる「ブリッジ」という用語は、受容体と供与体部分との間で共有結合する分子に含まれうる分子フラグメントを指す。ブリッジは、例えば受容体部分、供与体部分またはその両方と更に共役しうる。特定の理論に拘束されないが、ブリッジ部分が受容体と供与体部分とを、特異的な立体配置に立体的に制限でき、それにより、供与体と受容体部分とのπ共役系部分が生じるのを防止すると考えられる。適切なブリッジ部分の例としては、フェニル、エテニルおよびエチニル部分が挙げられる。
【0070】
本明細書で用いられる「多価」という用語は、分子断片が少なくとも2つの他の分子断片と結合することを指す。例えば、ブリッジ部分は多価である。
【0071】
本明細書で用いられる「~~~」または「*」は、2個の原子間の結合点を指す。
【0072】
「正孔輸送層(HTL)」および同様の用語は、正孔を輸送する材料から作製された層を意味する。高い正孔輸送能を有することが推奨される。HTLは、発光層により輸送される電子の通過をブロックするのに用いられる。低い電子親和力は、典型的には電子のブロックに必要となる。HTLは、隣接する発光(emisse)層(EML)からの励起子移動をブロックするため、好ましくは高い三重項を有するべきである。HTL化合物の例としては、限定されないがジ(p-トリル)アミノフェニル]シクロヘキサン(TPAC)、N,N-ジフェニル-N,N-ビス(3-メチルフェニル)-1,1-ビフェニル-4,4-ジアミン(TPD)、およびN,N’-ジフェニル-N,N’-ビス(1-ナフチル)-(1,1’-ビフェニル)-4,4’-ジアミン(NPB、α-NPD)が挙げられる。
【0073】
「発光層」および同様の用語は、発光する(emit)層を意味する。ある実施形態では、発光層はホスト材料およびゲスト材料からなる。ゲスト材料はドーパント材料とも呼ばれるが、本開示はそれに限定されない。ホスト材料はバイポーラ性またはユニポーラ性であってもよく、それ単独または2以上のホスト材料の組合せで用いられてもよい。ホスト材料の光-電気的特性は、いずれのタイプのゲスト材料(TADF、燐光または蛍光)が用いられるかにより異なりうる。蛍光ゲスト材料の場合、ホスト材料は、ゲスト材料への良好なフェルスター移動を誘導するために、ゲスト材料の吸収とホスト材料の放出との良好なスペクトル重複部分を有するべきである。燐光ゲスト材料の場合、ホスト材料は、ゲスト材料の三重項を閉じ込めるために、高い三重項エネルギーを有するべきである。TADFゲスト材料の場合、ホスト材料はスペクトル重複部分と高い三重項エネルギーとの両方を有するべきである。
【0074】
「ドーパント」および同様の用語は、キャリア輸送層、発光層または他の層のための添加物を指す。キャリア輸送層において、ドーパントおよび同様の用語は、添加物として有機層に添加されたとき、有機電子デバイスの有機層の伝導率を増加させる電子受容体または供与体のことを指す。ドープにより、有機半導体は、それらの電気伝導度に関して同様に影響されうる。そのような有機半導体マトリックス材料は、電子供与特性を有する化合物、または電子受容特性を有する化合物から作製されうる。または発光層において、ドーパントおよび同様の用語は、例えば、ホストといったマトリックス中に分散される発光材料を意味する。励起子生成効率を上げるために三重項回収材料が発光層または隣接層にドープされるとき、それはアシストドーパントと呼ばれる。
【0075】
本発明の化合物において、特定のアイソトープとして特定されないいかなる原子も、当該原子のいずれかの安定なアイソトープを表すことを意味する。特に明記しない限り、「H」または「水素」として位置が指定されるとき、その位置は、その天然存在度におけるアイソトープ組成の水素を有するものとして理解される。また、特に明記しない限り、位置が「d」または「重水素」として特定されるとき、その位置は、天然存在度における重水素0.015%より少なくとも3340倍高い存在度の重水素を有する(すなわち、少なくとも重水素の含量が50.1%の)ものとして理解される。
【0076】
本明細書で用いられる「アイソトープ濃縮率」という用語は、アイソトープ存在度と、天然における特定のアイソトープ存在度との比率を意味する。
【0077】
様々な実施形態において、本発明の化合物は、少なくとも3500(各所定の重水素原子の重水素の含量が52.5%)、少なくとも4000(重水素の含量が60%)、少なくとも4500(重水素の含量が67.5%)、少なくとも5000(重水素の含量が75%)、少なくとも5500(重水素の含量が82.5%)、少なくとも6000(重水素の含量が90%)、少なくとも6333.3(重水素の含量が95%)、少なくとも6466.7(重水素の含量が97%)、少なくとも6600(重水素の含量が99%)または少なくとも6633.3(重水素の含量が99.5%)のアイソトープ濃縮率(各所定の重水素原子)を有する。
【0078】
「同位体置換体」という用語は、アイソトープ組成だけが本発明の具体的化合物と異なる種のことを指す。
【0079】
本発明の化合物に言及する場合、「化合物」という用語は、同一の化学構造を有する分子の集まりを指すが、但し、分子の構成原子間にアイソトープ変動が存在する場合がある。ゆえに、当業者に自明であるように、所定の重水素原子を含有する特定の化学構造で表される化合物は、当該構造内の所定の重水素のうちの1つ以上の位置において水素原子を有する、同位体置換体を若干含むこともありうる。本発明の化合物におけるそのような同位体置換体の相対量は、化合物の調製に用いられる重水素化試薬のアイソトープ純度、および化合物を調製するための様々な合成ステップにおける重水素の取り込み効率などの多くの要因に依存する。しかしながら、前述のように、そのような同位体置換体の相対量は、全体で化合物の49.9%未満である。他の実施形態では、そのような同位体置換体の相対量は、全体で化合物の47.5%未満、40%未満、32.5%未満、25%未満、17.5%未満、10%未満、5%未満、3%未満、1%未満または0.5%未満である。
【0080】
「重水素で置換された」とは、1つ以上の水素原子が対応する数の重水素原子により、置換されたことを指す。
【0081】
OLEDの原理:
OLEDは典型的には、2つの電極(陽極および陰極)の間の有機材料または化合物の層から構成される。有機分子は、当該分子の一部または全部の共役に起因するπ電子(electronics)の非局在化の結果として電気伝導性を有する。電圧が印加されるとき、陽極に存在する最高被占軌道(HOMO)からの電子が、陰極に存在する有機分子の最低空軌道(LUMO)に流入する。HOMOからの電子の除去は、電子正孔をHOMOに注入することとも称される。静電力は、電子および正孔をお互いに向かわせ、再結合させて励起子(電子と正孔の結合状態)を形成させる。励起状態が失活し、電子のエネルギー準位が緩和したとき、可視スペクトルの周波数を有する放射線が放出される。この放射線の周波数は、材料のバンドギャップ、すなわちHOMOとLUMOとの間のエネルギー差に依存する。
【0082】
電子および正孔が半整数スピンを有するフェルミオンであるとき、励起子は、電子および正孔のスピンが結合する様態に依存し、一重項状態または三重項状態となりうる。統計学的に、3つの三重項励起子が、一重項励起子ごとに形成される。三重項状態からの失活はスピン禁制であり、それは遷移の時間スケールの増大をもたらし、蛍光デバイスの内部効率を制限する。燐光有機発光ダイオードは、スピン軌道相互作用を利用することにより一重項状態と三重項状態とにまたがる項間交差を促進し、それにより一重項状態および三重項状態両方からの発光を生じさせ、内部効率を向上させる。
【0083】
1つの原型的な燐光材料はイリジウムトリス(2-フェニルピリジン)(Ir(ppy))であり、それによると、Ir原子から有機配位子への電荷移動が励起状態となる。そのようなアプローチにより、三重項寿命を、蛍光などの完全許容された遷移による放射寿命よりも数桁遅い約数μ秒まで減少させてきた。Irベースの燐光体は、多くのディスプレイ用途において許容できることが証明されたが、高い三重項密度による損失が生じることにより、OLEDの高輝度固体照明への応用が妨げられている。
【0084】
熱活性化遅延蛍光(TADF)は、一重項状態と三重項状態との間のエネルギー分裂(Δ、ΔEST)を最小化するものである。0.4~0.7eVの典型値から熱エネルギー(kBTに比例、kBはボルツマン定数を表し、Tは温度を表す)のオーダーのギャップへの交換分裂の減少は、たとえ状態間のカップリングが小さくとも、熱撹拌により、適切なタイムスケールで一重項準位と三重項副準位との間の分布遷移ができることを意味する。
【0085】
TADF分子は、共有結合によって直接に、または共役リンカー(または「ブリッジ」)を介して連結される供与体および受容体部分からなる。「供与体」部分は、励起により、そのHOMOからの電子を「受容体」部分へ輸送する性質を有する。「受容体」部分は、「供与体」部分からの電子をそのLUMOに受容する性質を有する。TADF分子の供与体-受容体の性質により、非常に低いΔを示す電荷移動性質を示す低励起状態がもたらされる。熱分子運動により供与体-受容体システムの光学特性がランダムに変化しうるため、供与体および受容体部分の強固な立体的配置を利用することにより、励起寿命の間、内部変換による電荷移動状態での無放射失活を制限することができる。
【0086】
従って、Δを減少させ、三重項励起子を利用できる逆項間交差(RISC)の高いシステムを開発することが有効である。そのようなシステムは、量子効率の増大と発光寿命の減少をもたらすと考えられる。これらの特徴を有するシステムは、今日知られているOLEDで通常みられる急速な劣化を生じさせることなく、光を発することができる。
【0087】
本開示の化合物:
ある実施形態では、化合物は、下記一般式(I)で表される構造を有する。
【化22】
一般式(I)において、
、R、R、RおよびRは、水素、重水素、A、ArおよびDから独立して選択され、
、R、R、RおよびRのうちの1つのみが、Aであり、
、R、R、RおよびRのうちの少なくとも1つが、Dであり、
Aは下記一般式から独立して選択され、
【化23】
は、O、SおよびNRA’から独立して選択され、
は、水素、重水素、ハロゲン、シアノ、置換もしくは無置換のアルキル、置換もしくは無置換のアルコキシ、置換もしくは無置換のアリール、置換もしくは無置換のアリールオキシ、置換もしくは無置換のヘテロアリール、置換もしくは無置換のヘテロアリールオキシおよびシリルから独立して選択され、
2つ以上のR同士で環系を形成することができ、
A’は、水素、重水素、置換もしくは無置換のアルキル、置換もしくは無置換のアリールおよび置換もしくは無置換のヘテロアリールから独立して選択され、
2つ以上のRA’およびR同士で環系を形成することができ、
Dは、下記一般式から独立して選択され、
【化24】
は、O、S、NRD’、C(O)、置換もしくは無置換のメチレン、置換もしくは無置換のエチレン、置換もしくは無置換のビニレン、置換もしくは無置換のオルト-アリーレンおよび置換もしくは無置換のオルト-ヘテロアリーレンから独立して選択され、メチレン、エチレン、ビニレン、オルト-アリーレンまたはオルト-ヘテロアリーレンの各々は、重水素、置換もしくは無置換のアルキル、置換もしくは無置換のアリールおよび置換もしくは無置換のヘテロアリールから独立して選択される1つ以上の置換基で置換されることができ、
2つ以上のX同士で環系を形成することができ、
は、水素、重水素、置換もしくは無置換のアルキル、置換もしくは無置換のアルコキシ、置換もしくは無置換のアミノ、置換もしくは無置換のアリール、置換もしくは無置換のアリールオキシ、置換もしくは無置換のヘテロアリール、置換もしくは無置換のヘテロアリールオキシおよびシリルから独立して選択され、
2つ以上のR同士で環系を形成することができ、
D’は、水素、重水素、置換もしくは無置換のアルキル、置換もしくは無置換のアミノ、置換もしくは無置換のアリールおよび置換もしくは無置換のヘテロアリールから独立して選択され、
2つ以上のRD’およびR同士で環系を形成することができ、
およびLは、単結合、置換もしくは無置換のアリーレンおよび置換もしくは無置換のヘテロアリーレンから独立して選択され、アリーレンおよびヘテロアリーレンの各々は、重水素、置換もしくは無置換のアルキル、置換もしくは無置換のアリールおよび置換もしくは無置換のヘテロアリールから独立して選択される1つ以上の置換基で置換されることができ、2つ以上のこれら置換基同士で環系を形成することができ、
Arは、置換もしくは無置換のアリールおよび置換もしくは無置換のヘテロアリールから独立して選択され、前記置換もしくは無置換のヘテロアリールは、窒素原子を含有せず、アリールおよびヘテロアリールの各々は、重水素、置換もしくは無置換のアルキル、置換もしくは無置換のアリールおよび置換もしくは無置換のヘテロアリールから独立して選択される1つ以上の置換基で置換されることができ、2つ以上のこれら置換基同士で環系を形成することができ、
各「*」は、一般式(I)との結合点を表す。
【0088】
ある実施形態では、アルキルは、C1~C20のアルキルである。ある実施形態では、アルキルは、C1~C12のアルキルである。ある実施形態では、アリールは、C6~C40のアリールである。ある実施形態では、アリールは、C6~C25のアリールである。ある実施形態では、ヘテロアリールは、C2~C40のヘテロアリールである。ある実施形態では、ヘテロアリールは、C2~C25のヘテロアリールである。ある実施形態では、アルコキシは、C1~C20のアルコキシである。ある実施形態では、アルコキシは、C1~C12のアルコキシである。ある実施形態では、アリールオキシは、C6~C40のアリールオキシである。ある実施形態では、アリールオキシは、C6~C25のアリールオキシである。ある実施形態では、ヘテロアリールオキシは、C3~C40のヘテロアリールオキシである。ある実施形態では、ヘテロアリールオキシは、C3~C25のヘテロアリールオキシである。
【0089】
ある実施形態では、Dは下記一般式で表される。
【化25】
【0090】
ある実施形態では、Dは、下記一般式で表される。
【化26】
【0091】
ある実施形態では、Dは、下記一般式で表される。
【化27】
【0092】
ある実施形態では、Dは、下記一般式で表される。
【化28】
【0093】
ある実施形態では、Dは、下記一般式で表される
【化29】
【0094】
ある実施形態では、Dは、下記一般式から選択される。
【化30】
【0095】
ある実施形態では、XはOである。ある実施形態では、XはSである。ある実施形態では、XはNRD’である。ある実施形態では、XはC(O)である。ある実施形態では、Xは置換もしくは無置換のメチレンである。ある実施形態では、Xは置換もしくは無置換のエチレンである。ある実施形態では、Xは置換もしくは無置換のビニレンである。ある実施形態では、Xは置換もしくは無置換のオルト-アリーレンである。ある実施形態では、Xは置換もしくは無置換のオルト-ヘテロアリーレンである。ある実施形態では、メチレン、エチレン、ビニレン、オルト-アリーレンおよびオルト-ヘテロアリーレンは、重水素、置換もしくは無置換のアルキル、置換もしくは無置換のアリールおよび置換もしくは無置換のヘテロアリールで置換することができる。ある実施形態では、2つ以上のX同士で環系を形成することができる。
【0096】
ある実施形態では、Rは水素である。ある実施形態では、Rは重水素である。ある実施形態では、Rは置換もしくは無置換のアルキルである。ある実施形態では、Rは置換もしくは無置換のアルコキシである。ある実施形態では、Rは置換もしくは無置換のアミノである。ある実施形態では、Rは置換もしくは無置換のアリールである。ある実施形態では、Rは置換もしくは無置換のアリールオキシである。ある実施形態では、Rは置換もしくは無置換のヘテロアリールである。ある実施形態では、Rは置換もしくは無置換のヘテロアリールオキシである。ある実施形態では、Rはシリルである。ある実施形態では、2つ以上のR同士で環系を形成することができる。
【0097】
ある実施形態では、RD’は水素である。ある実施形態では、RD’は重水素である。ある実施形態では、RD’は置換もしくは無置換のアルキルである。ある実施形態では、RD’は置換もしくは無置換のアミノである。ある実施形態では、RD’は置換もしくは無置換のアリールである。ある実施形態では、RD’は置換もしくは無置換のヘテロアリールである。ある実施形態では、2つ以上のRD’およびR同士で環系を形成することができる。
【0098】
ある実施形態では、Lは単結合である。ある実施形態では、Lは置換もしくは無置換のアリーレンである。ある実施形態では、Lは置換もしくは無置換のヘテロアリーレンである。
【0099】
ある実施形態では、Lは単結合である。ある実施形態では、Lは置換もしくは無置換のアリーレンである。ある実施形態では、Lは置換もしくは無置換のヘテロアリーレンである。
【0100】
ある実施形態では、LまたはLが置換されると、各置換基は重水素、置換もしくは無置換のアルキル、置換もしくは無置換のアリール、および置換もしくは無置換のヘテロアリールから独立して選択され、2つ以上のこれら置換基同士で環系を形成することができる。
【0101】
ある実施形態では、Arは置換もしくは無置換のアリールである。ある実施形態では、Arは置換もしくは無置換のヘテロアリールである。ある実施形態では、置換もしくは無置換のヘテロアリールは窒素原子を含有せず、各置換基は重水素、置換もしくは無置換のアルキル、置換もしくは無置換のアリールおよび置換もしくは無置換のヘテロアリールから独立して選択され、2つ以上のこれら置換基同士で環系を形成することができる。
【0102】
ある実施形態では、Arは、下記一般式から独立して選択される。
【化31】
【0103】
ある実施形態では、Arは置換もしくは無置換のフェニル、置換もしくは無置換のビフェニルおよび置換もしくは無置換のターフェニルから独立して選択される。
【0104】
ある実施形態では、Aは、下記一般式で表される。
【化32】
【0105】
ある実施形態では、Aは、下記一般式で表される。
【化33】
【0106】
ある実施形態では、Aは、下記一般式で表される。
【化34】
【0107】
ある実施形態では、Aは、下記一般式で表される。
【化35】
【0108】
ある実施形態では、Aは、下記一般式で表される。
【化36】
【0109】
ある実施形態では、Aは、下記一般式で表される。
【化37】
【0110】
ある実施形態では、Aは、下記一般式で表される。
【化38】
【0111】
ある実施形態では、Aは、下記一般式で表される。
【化39】
【0112】
ある実施形態では、Aは、下記一般式で表される。
【化40】
【0113】
ある実施形態では、Aは、下記一般式で表される。
【化41】
【0114】
ある実施形態では、Aは、下記一般式のいずれかで表される。
【化42】
【0115】
ある実施形態では、Aは、下記一般式から選択される。
【化43】
【0116】
ある実施形態では、Aは、下記一般式のいずれかである。
【化44】
【0117】
ある実施形態では、Rは水素である。ある実施形態では、Rは重水素である。ある実施形態では、RはAである。ある実施形態では、RはArである。ある実施形態では、RはDである。
【0118】
ある実施形態では、Rは水素である。ある実施形態では、Rは重水素である。ある実施形態では、RはAである。ある実施形態では、RはArである。ある実施形態では、RはDである。
【0119】
ある実施形態では、Rは水素である。ある実施形態では、Rは重水素である。ある実施形態では、RはAである。ある実施形態では、RはArである。ある実施形態では、RはDである。
【0120】
ある実施形態では、Rは水素である。ある実施形態では、Rは重水素である。ある実施形態では、RはAである。ある実施形態では、RはArである。ある実施形態では、RはDである。
【0121】
ある実施形態では、Rは水素である。ある実施形態では、Rは重水素である。ある実施形態では、RはAである。ある実施形態では、RはArである。ある実施形態では、RはDである。
【0122】
ある実施形態では、RがAのとき、RおよびRは、両方ともHではない。ある実施形態では、RがAのとき(is)、RおよびRは、両方ともHではない。
【0123】
ある実施形態では、RからRのうちのちょうど4つは、Hではない。ある実施形態では、R~Rの全ては、Hではない。
【0124】
ある実施形態(embodimenst)では、一般式(I)で表される化合物は、下記一般式(Ia)で示される。
【化45】
【0125】
ある実施形態では、一般式(I)で表される化合物は、下記一般式から選択される。
【化46】
【0126】
ある実施形態では、一般式(I)で表される化合物は、下記一般式から選択される。
【化47】
【0127】
ある実施形態では、一般式(I)で表される化合物は、下記一般式から選択される。
【化48】
【0128】
ある実施形態では、一般式(I)で表される化合物は、下記一般式で表される。
【化49】
【0129】
ある実施形態では、一般式(I)で表される化合物は、下記一般式から選択される。
【化50】
【0130】
ある実施形態では、一般式(I)で表される化合物は、下記一般式から選択される。
【化51】
【0131】
ある実施形態では、一般式(I)で表される化合物は、下記一般式から選択される。
【化52】
【0132】
ある実施形態では、一般式(I)で表される化合物は、下記一般式から選択される。
【化53】
【0133】
ある実施形態では、一般式(I)で表される化合物は、下記一般式から選択される。
【化54】
【0134】
ある実施形態では、一般式(I)で表される化合物は、下記一般式から選択される。
【化55】
【0135】
ある実施形態では、一般式(I)で表される化合物は、下記一般式から選択される。
【化56】
【0136】
ある実施形態では、一般式(I)で表される化合物は、下記一般式から選択される。
【化57】
【0137】
ある実施形態では、一般式(I)で表される化合物は、下記一般式から選択される。
【化58】
【0138】
ある実施形態では、一般式(I)で表される化合物は、下記一般式から選択される。
【化59】
【0139】
ある実施形態では、一般式(I)で表される化合物は、下記一般式から選択される。
【化60】
【0140】
ある実施形態では、一般式(I)で表される化合物は、下記一般式から選択される。
【化61】
【0141】
ある実施形態では、一般式(I)で表される化合物は、下記一般式から選択される。
【化62】
【0142】
ある実施形態では、一般式(I)で表される化合物は、下記一般式から選択される。
【化63】
【0143】
ある実施形態では、一般式(I)で表される化合物は、下記一般式から選択される。
【化64】
【0144】
ある実施形態では、一般式(I)で表される化合物は、下記一般式から選択される。
【化65】
【0145】
ある実施形態では、一般式(I)で表される化合物は、下記一般式から選択される。
【化66】
【0146】
ある実施形態では、一般式(I)で表される化合物は、下記一般式から選択される。
【化67】
【0147】
ある実施形態では、一般式(I)で表される化合物は、下記一般式から選択される。
【化68】
【0148】
ある実施形態では、一般式(I)で表される化合物は、下記一般式から選択される。
【化69】
【0149】
ある実施形態では、化合物は、下記一般式(II)で表される構造を有する。
【化70】
一般式(II)において、
、R、R、RおよびRは、A、D、HおよびPhからなる群から独立して選択され、
、R、R、RおよびRのうちの少なくとも1つは、Aであり、
、R、R、RおよびRのうちの少なくとも1つは、Dであり、
Aは、下記一般式で表され、
【化71】
Dは、独立して、下記一般式D1、D2またはD3で表され、
【化72】
Yは、C(H)またはNであり、
Zは、独立して、H、MeまたはPhである。
【0150】
ある実施形態では、DはD1である。ある実施形態では、DはD2である。ある実施形態では、DはD3である。
【0151】
ある実施形態では、ZはHである。ある実施形態では、ZはMeである。ある実施形態では、ZはPhである。
【0152】
ある実施形態では、RはAである。ある実施形態では、RはDである。ある実施形態では、RはHである。ある実施形態では、RはPhである。
【0153】
ある実施形態では、RはAである。ある実施形態では、RはDである。ある実施形態では、RはHである。ある実施形態では、RはPhである。
【0154】
ある実施形態では、RはAである。ある実施形態では、RはDである。ある実施形態では、RはHである。ある実施形態では、RはPhである。
【0155】
ある実施形態では、RはAである。ある実施形態では、RはDである。ある実施形態では、RはHである。ある実施形態では、RはPhである。
【0156】
ある実施形態では、RはAである。ある実施形態では、RはDである。ある実施形態では、RはHである。ある実施形態では、RはPhである。
【0157】
ある実施形態では、R、R、R、RおよびRのうちの少なくとも1つは、Hである。ある実施形態では、R、R、R、RおよびRのうちの少なくとも1つは、Phである。ある実施形態では、R、R、R、RおよびRのうちの少なくとも1つは、Hであり、かつ、R、R、R、RおよびRのうちの少なくとも1つは、Phである。
【0158】
ある実施形態では、1つのみのAが存在する。ある実施形態では、2つのAが存在する。ある実施形態では、3つのAが存在する。ある実施形態では、4つのAが存在する。
【0159】
ある実施形態では、2つのDが存在する。ある実施形態では、3つのDが存在する。ある実施形態では、4つのDが存在する。
【0160】
ある実施形態では、複数のAが存在し、かつ、2つのDが存在する。ある実施形態では、1つのAが存在し、かつ、3つのDが存在する。ある実施形態では、3つのAが存在し、かつ、2つのDが存在する。ある実施形態では、2つのAが存在し、かつ、3つのDが存在する。
【0161】
ある実施形態では、化合物は、下記一般式(III)で表される構造を有する。
【化73】
一般式(III)において、
Aは下記一般式A1~A11から選択され、
【化74】
、R、RおよびRは、H、PhおよびDから独立して選択され、
Dは、下記一般式D1~D11から独立して選択され、
【化75】
Zは、アルキル、アリールおよびヘテロアリールから独立して選択され、
Xは、O、S、N(Ph)、C(CH、C(Ph)、N(=O)およびCH-CHから選択され、
mおよびnは、0、1、2、3および4から独立して選択され、
、R、RおよびRのうちの少なくとも2つは、Dである。
【0162】
ある実施形態では、AはA1、A2、A3、A4、A5、A6、A7、A8、A9、A10およびA11から選択される。ある実施形態では、AはA1、A2、A3、A4およびA5から選択される。ある実施形態では、AはA6、A7、A8、A9、A10およびA11から選択される。
【0163】
ある実施形態では、DはD1、D2、D3、D4およびD5から選択される。ある実施形態では、DはD6、D7、D8、D9、D10およびD11から選択される。
【0164】
ある実施形態では、ZはHである。ある実施形態では、Zはアルキルである。ある実施形態では、Zはアリールである。ある実施形態では、Zはヘテロアリールである。
【0165】
ある実施形態では、XはOである。ある実施形態では、XはSである。ある実施形態では、XはN(Ph)である。ある実施形態では、SはC(CH)である。 ある実施形態では、XはC(Ph)である。ある実施形態では、XはN(=O)である。ある実施形態では、XはCH-CHである。
【0166】
ある実施形態では、R、R、RおよびRのうちの2つはDである。ある実施形態では、R、R、RおよびRのうちの3つはDである。ある実施形態では、RおよびRはDである。ある実施形態では、そしてRはDである。ある実施形態では、RおよびRはDである。ある実施形態では、RおよびRはDである。ある実施形態では、R、R、RおよびRのうちの1つはHである。ある実施形態では、R、R、RおよびRのうちの1つはPhである。ある実施形態では、R、R、RおよびRのうちの2つはHである。ある実施形態では、R、R、RおよびRのうちの2つはPhである。
【0167】
ある実施形態では、mは0である。ある実施形態では、mは1である。ある実施形態では、mは2である。
【0168】
ある実施形態では、nは0である。ある実施形態では、nは1である。ある実施形態では、nは2である。
【0169】
ある実施形態では、一般式(I)で表される化合物は下記から選択される。
【表1】
【0170】
ある実施形態では、一般式(I)で表される化合物は、以下一般式から選択される。
【化76】
【0171】
ある実施形態では、一般式(I)、(II)または(III)で表される化合物は少なくとも1つの重水素で置換されている。
【0172】
ある実施形態では、一般式(I)、(II)または(III)で表される化合物は発光材料である。
【0173】
ある実施形態では、一般式(I)、(II)または(III)で表される化合物は、遅延蛍光を発することができる化合物である。
【0174】
ある実施形態では、一般式(I)、(II)または(III)で表される化合物は発光材料である。
【0175】
ある実施形態では、一般式(I)、(II)または(III)で表される化合物は、遅延蛍光を発することができる化合物である。
【0176】
本開示のある実施形態では、一般式(I)、(II)または(III)で表される化合物は、熱的または電子的手段で励起されるとき、UV領域、可視スペクトルのうち青色、緑色、黄色、オレンジ色、もしくは赤色領域(例えば約420nm~約500nm、約500nm~約600nmまたは約600nm~約700nm)または近赤外線領域で光を発することができる。
【0177】
本開示のある実施形態では、一般式(I)、(II)または(III)で表される化合物は、熱的または電子的手段で励起されるとき、可視スペクトルのうち赤色またはオレンジ色領域(例えば約620nm~約780nm、約650nm)で光を発することができる。
【0178】
本開示のある実施形態では、一般式(I)、(II)または(III)で表される化合物は、熱的または電子的手段で励起されるとき、可視スペクトルのうちオレンジ色または黄色領域(例えば約570nm~約620nm、約590nm、約570nm)で光を発することができる。
【0179】
本開示のある実施形態では、一般式(I)、(II)または(III)で表される化合物は、熱的または電子的手段で励起されるとき、可視スペクトルのうち緑色領域(例えば約490nm~約575nm、約510nm)で光を発することができる。
【0180】
本開示のある実施形態では、一般式(I)、(II)または(III)で表される化合物は、熱的または電子的手段で励起されるとき、可視スペクトルのうち青色領域(例えば約400nm~約490nm、約475nm)で光を発することができる。
【0181】
小分子の化学物質ライブラリの電子的特性は、公知のab initioによる量子化学計算を用いて算出することができる。例えば、基底系として、6-31G*、およびベッケの3パラメータ、Lee-Yang-Parrハイブリッド汎関数として知られている関数系を用いた時間依存的な密度汎関数理論を使用してHartree-Fock式(TD-DFT/B3LYP/6-31G*)を解き、特定の閾値以上のHOMOおよび特定の閾値以下のLUMOを有する分子断片(部分)をスクリーニングすることができ、当該部分の算出された三重項状態は2.75eV超である。
【0182】
それにより、例えば-6.5eV以上のHOMOエネルギー(例えばイオン化ポテンシャル)があるときは、供与体部分が選抜できる。また例えば、-0.5eV以下のLUMOエネルギー(例えば電子親和力)があるときは、受容体部分(「A」)が選抜できる。ブリッジ部分(「B」)は、例えば受容体と供与体部分を特異的な立体配置に立体的に制限できる強固な共役系であることにより、供与体および受容体部分のπ共役系間の重複が生じるのを防止する。
【0183】
ある実施形態では、化合物ライブラリは、以下の特性のうちの1つ以上を用いて選別される。
1.特定の波長付近における発光、
2.算出された、特定のエネルギー準位より上の三重項状態、
3.特定値より下のΔEST値、
4.特定値より上の量子収率、
5.HOMO準位、および
6.LUMO準位。
【0184】
ある実施形態では、77Kにおける最低の一重項励起状態と最低の三重項励起状態との差(ΔEST)は、約0.5eV未満、約0.4eV未満、約0.3eV未満、約0.2eV未満または約0.1eV未満である。ある実施形態ではΔEST値は、約0.09eV未満、約0.08eV未満、約0.07eV未満、約0.06eV未満、約0.05eV未満、約0.04eV未満、約0.03eV未満、約0.02eV未満または約0.01eV未満である。
【0185】
ある実施形態では、一般式(I)、(II)または(III)で表される化合物は、25%超の、例えば約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%またはそれ以上の量子収率を示す。
【0186】
本開示の化合物を用いた組成物:
ある実施形態では、一般式(I)、(II)または(III)で表される化合物と組み合わせ、同化合物を分散させ、同化合物と共有結合し、同化合物をコーティングし、同化合物を担持し、あるいは同化合物と会合する1つ以上の材料(例えば小分子、ポリマー、金属、金属錯体等)によって、固体状のフィルムまたは層を形成させる。例えば、一般式(I)、(II)または(III)で表される化合物を電気活性材料と組み合わせてフィルムを形成することができる。いくつかの場合、一般式(I)、(II)または(III)で表される化合物を正孔輸送ポリマーと組み合わせてもよい。いくつかの場合、一般式(I)、(II)または(III)で表される化合物を電子輸送ポリマーと組み合わせてもよい。いくつかの場合、一般式(I)、(II)または(III)で表される化合物を正孔輸送ポリマーおよび電子輸送ポリマーと組み合わせてもよい。いくつかの場合、一般式(I)、(II)または(III)で表される化合物を、正孔輸送部と電子輸送部との両方を有するコポリマーと組み合わせてもよい。以上のような実施形態により、固体状のフィルムまたは層内に形成される電子および/または正孔を、一般式(I)、(II)または(III)で表される化合物と相互作用させることができる。
【0187】
本開示の化合物の使用の例:
有機発光ダイオード:
本発明の一態様は、有機発光デバイスの発光材料としての、本発明の一般式(I)、(II)または(III)で表される化合物の使用に関する。ある実施形態では、本発明の一般式(I)、(II)または(III)で表される化合物は、有機発光デバイスの発光層における発光材料として効果的に使用できる。ある実施形態では、一般式(I)、(II)または(III)で表される化合物は、遅延蛍光を発する遅延蛍光材料(遅延蛍光体)を含む。ある実施形態では、本発明は一般式(I)、(II)または(III)で表される構造を有する遅延蛍光体を提供する。ある実施形態では、本発明は遅延蛍光体としての一般式(I)、(II)または(III)で表される化合物の使用に関する。ある実施形態では、一般式(I)、(II)または(III)で表される化合物は、ホスト材料として使用することができ、かつ、1つ以上の発光材料と共に使用することができ、発光材料は蛍光材料、燐光材料またはTADF材料でよい。ある実施形態では、一般式(I)、(II)または(III)で表される化合物は、正孔輸送材料として使用することもできる。ある実施形態では、一般式(I)、(II)または(III)で表される化合物は、電子輸送材料として使用することができる。ある実施形態では、本発明は一般式(I)、(II)または(III)で表される化合物から遅延蛍光を生じさせる方法に関する。ある実施形態では、化合物を発光材料として含む有機発光デバイスは、遅延蛍光を発し、高い光放射効率を示す。
【0188】
ある実施形態では、発光層は一般式(I)で表される化合物を含み、一般式(I)、(II)または(III)で表される化合物は、基材と平行に配向される。ある実施形態では、基材はフィルム形成表面である。ある実施形態では、フィルム形成表面に対する一般式(I)、(II)または(III)で表される化合物の配向は、整列させる化合物によって発せられる光の伝播方向に影響を与えるか、あるいは、当該方向を決定づける。ある実施形態では、一般式(I)、(II)または(III)で表される化合物によって発される光の伝播方向を整列させることで、発光層からの光抽出効率が改善される。
【0189】
本発明の一態様は、有機発光デバイスに関する。ある実施形態では、有機発光デバイスは発光層を含む。ある実施形態では、発光層は発光材料として一般式(I)、(II)または(III)で表される化合物を含む。ある実施形態では、有機発光デバイスは有機光ルミネッセンスデバイス(有機PLデバイス)である。ある実施形態では、有機発光デバイスは、有機エレクトロルミネッセンスデバイス(有機ELデバイス)である。ある実施形態では、一般式(I)、(II)または(III)で表される化合物は、発光層に含まれる他の発光材料の光放射を(いわゆるアシストドーパントとして)補助する。ある実施形態では、発光層に含まれる一般式(I)、(II)または(III)で表される化合物は、その最低の励起一重項エネルギー準位にあり、発光層に含まれるホスト材料の最低励起一重項エネルギー準位と発光層に含まれる他の発光材料の最低励起一重項エネルギー準位との間に含まれる。
【0190】
ある実施形態では、有機光ルミネッセンスデバイスは、少なくとも1つの発光層を含む。ある実施形態では、有機エレクトロルミネッセンスデバイスは、少なくとも陽極、陰極、および前記陽極と前記陰極との間の有機層を含む。ある実施形態では、有機層は、少なくとも発光層を含む。ある実施形態では、有機層は、発光層のみを含む。ある実施形態では、有機層は、発光層に加えて1つ以上の有機層を含む。有機層の例としては、正孔輸送層、正孔注入層、電子障壁層、正孔障壁層、電子注入層、電子輸送層および励起子障壁層が挙げられる。ある実施形態では、正孔輸送層は、正孔注入機能を有する正孔注入輸送層であってもよく、電子輸送層は、電子注入機能を有する電子注入輸送層であってもよい。有機エレクトロルミネッセンスデバイスの例を図1に示す。
【0191】
基材:
ある実施形態では、本発明の有機エレクトロルミネッセンスデバイスは基材により保持され、当該基材は特に限定されず、有機エレクトロルミネッセンスデバイスで一般的に用いられるもの、例えばガラス、透明プラスチック、クォーツおよびシリコンにより形成されたもののいずれかを用いればよい。
【0192】
陽極:
ある実施形態では、有機エレクトロルミネッセンスデバイスの陽極は、金属、合金、導電性化合物またはそれらの組み合わせから製造される。ある実施形態では、金属、合金または導電性化合物は高い仕事関数(4eV以上)を有する。ある実施形態では、金属はAuである。ある実施形態では、導電性の透明材料は、CuI、酸化インジウムスズ(ITO)、SnOおよびZnOから選択される。ある実施形態では、IDIXO(In-ZnO)などの、透明な導電性フィルムを形成できるアモルファス材料を使用する。ある実施形態では、陽極は薄膜である。ある実施形態では、薄膜は蒸着またはスパッタリングにより作製される。ある実施形態では、フィルムはフォトリソグラフィー方法によりパターン化される。ある実施形態では、パターンが高精度である必要がない場合(例えば約100μm以上)、当該パターンは、電極材料への蒸着またはスパッタリングに好適な形状のマスクを用いて形成してもよい。ある実施形態では、有機導電性化合物などのコーティング材料を塗布しうるとき、プリント法やコーティング法などの湿式フィルム形成方法が用いられる。ある実施形態では、放射光が陽極を通過するとき、陽極は10%超の透過度を有し、当該陽極は、数百オーム/スクエア以下のシート抵抗を有する。ある実施形態では、陽極の厚みは10~1,000nmである。ある実施形態では、陽極の厚みは10~200nmである。ある実施形態では、陽極の厚みは用いる材料に応じて変動する。
【0193】
陰極:
ある実施形態では、陰極は、低い仕事関数を有する金属(4eV以下)(電子注入金属と称される)、合金、導電性化合物またはその組み合わせの電極材料で作製される。ある実施形態では、電極材料は、ナトリウム、ナトリウム-カリウム合金、マグネシウム、リチウム、マグネシウム-銅混合物、マグネシウム-銀混合物、マグネシウム-アルミニウム混合物、マグネシウム-インジウム混合物、アルミニウム-酸化アルミニウム(Al)混合物、インジウム、リチウム-アルミニウム混合物および希土類元素から選択される。ある実施形態では、電子注入金属と、電子注入金属より高い仕事関数を有する安定な金属である第2の金属との混合物が用いられる。ある実施形態では、混合物は、マグネシウム-銀混合物、マグネシウム-アルミニウム混合物、マグネシウム-インジウム混合物、アルミニウム-酸化アルミニウム(Al)混合物、リチウム-アルミニウム混合物およびアルミニウムから選択される。ある実施形態では、混合物は電子注入特性および酸化に対する耐性を向上させる。ある実施形態では、陰極は、蒸着またはスパッタリングにより電極材料を薄膜として形成させることによって製造される。ある実施形態では、陰極は数百オーム/スクエア以下のシート抵抗を有する。ある実施形態では、陰極の厚みは10nm~5μmである。ある実施形態では、陰極の厚みは50~200nmである。ある実施形態では、放射光を透過させるため、有機エレクトロルミネッセンスデバイスの陽極および陰極のいずれか1つは透明または半透明である。ある実施形態では、透明または半透明のエレクトロルミネッセンスデバイスは光放射輝度を向上させる。
【0194】
ある実施形態では、陰極を、陽極に関して前述した導電性の透明な材料で形成することにより、透明または半透明の陰極が形成される。ある実施形態では、デバイスは陽極と陰極とを含むが、いずれも透明または半透明である。
【0195】
発光層:
ある実施形態では、発光層は、陽極および陰極からそれぞれ注入された正孔および電子が再結合して励起子を形成する層である。ある実施形態では、層は光を発する。
【0196】
ある実施形態では、発光材料のみが発光層として用いられる。ある実施形態では、発光層は発光材料とホスト材料とを含む。ある実施形態では、発光材料は、一般式(I)、(II)または(III)の1つ以上の化合物である。ある実施形態では、有機エレクトロルミネッセンスデバイスおよび有機光ルミネッセンスデバイスの光放射効率を向上させるため、発光材料において発生する一重項励起子および三重項励起子を、発光材料内に閉じ込める。ある実施形態では、発光層中に発光材料に加えてホスト材料を用いる。ある実施形態では、ホスト材料は有機化合物である。ある実施形態では、有機化合物(orgarnic compounds)は励起一重項エネルギーおよび励起三重項エネルギーを有し、その少なくとも1つは、本発明の発光材料のそれらよりも高い。ある実施形態では、本発明の発光材料中で発生する一重項励起子および三重項励起子は、本発明の発光材料の分子中に閉じ込められる。ある実施形態では、一重項および三重項の励起子は、光放射効率を引き出すために十分に(sufficient)閉じ込められる。ある実施形態では、高い光放射効率が未だ得られるにもかかわらず、一重項励起子および三重項励起子は十分に閉じ込められず、すなわち、高い光放射効率を達成できるホスト材料は、特に限定されることなく本発明で使用されうる。ある実施形態では、本発明のデバイスの発光層中の発光材料において、光放射が生じる。ある実施形態では、放射光は蛍光および遅延蛍光の両方を含む。ある実施形態では、放射光は、ホスト材料からの放射光を含む。ある実施形態では、放射光は、ホスト材料からの放射光からなる。ある実施形態では、放射光(emitted light light)は、一般式(I)、(II)または(III)で表される化合物からの放射光と、ホスト材料からの放射光とを含む。ある実施形態では、TADF分子とホスト材料とが用いられる。ある実施形態では、TADFはアシストドーパントである。
【0197】
ある実施形態では、ホスト材料を用いるとき、発光層に含まれる発光材料としての本発明の化合物の量は、0.1重量%以上である。ある実施形態では、ホスト材料を用いるとき、発光層に含まれる発光材料としての本発明の化合物の量は、1重量%以上である。ある実施形態では、ホスト材料を用いるとき、発光層に含まれる発光材料としての本発明の化合物の量は、50重量%以下である。ある実施形態では、ホスト材料を用いるとき、発光層に含まれる発光材料としての本発明の化合物の量は、20重量%以下である。ある実施形態では、ホスト材料を用いるとき、発光層に含まれる発光材料としての本発明の化合物の量は、10重量%以下である。
【0198】
ある実施形態では、発光層のホスト材料は、正孔輸送機能および電子輸送機能を有する有機化合物である。ある実施形態では、発光層のホスト材料は、放射光の波長が増加することを防止する有機化合物である。ある実施形態では、発光層のホスト材料は、高いガラス転移温度を有する有機化合物である。
【0199】
注入層:
注入層は、電極と有機層との間の層である。ある実施形態では、注入層は駆動電圧を減少させ、光放射輝度を増強する。ある実施形態では、注入層は、正孔注入層と電子注入層とを含む。注入層は、陽極と発光層または正孔輸送層との間、並びに陰極と発光層または電子輸送層との間に配置することができる。ある実施形態では、注入層が存在する。ある実施形態では、注入層が存在しない。
【0200】
障壁層:
障壁層は、発光層に存在する電荷(電子または正孔)および/または励起子が、発光層の外側に拡散することを阻止できる層である。ある実施形態では、電子障壁層は、発光層と正孔輸送層との間に存在し、電子が発光層を通過して正孔輸送層へ至ることを阻止する。ある実施形態では、正孔障壁層は、発光層と電子輸送層との間に存在し、正孔が発光層を通過して電子輸送層へ至ることを阻止する。ある実施形態では、障壁層は、励起子が発光層の外側に拡散することを阻止する。ある実施形態では、電子障壁層および正孔障壁層は励起子障壁層である。本明細書で用いる用語「電子障壁層」または「励起子障壁層」には、電子障壁層および励起子障壁層両方の機能を有する層が含まれる。
【0201】
正孔障壁層:
正孔障壁層は、電子輸送層として機能する。ある実施形態では、電子の輸送の間、正孔障壁層は正孔が電子輸送層に至ることを阻止する。ある実施形態では、正孔障壁層は、発光層における電子と正孔との再結合の確率を高める。正孔障壁層に用いる材料は、電子輸送層について前述したのと同じ材料であってもよい。
【0202】
電子障壁層:
電子障壁層は、正孔を輸送する。ある実施形態では、正孔の輸送の間、電子障壁層は電子が正孔輸送層に至ることを阻止する。ある実施形態では、電子障壁(barrie)層は、発光層における電子と正孔との再結合の確率を高める。
【0203】
励起子障壁層:
励起子障壁層は、発光層における正孔と電子との再結合を通じて生じた励起子が電荷輸送層まで拡散することを阻止する。ある実施形態では、励起子障壁層は、発光層における励起子の有効な閉じ込めを可能にする。ある実施形態では、デバイスの光放射効率が向上する。ある実施形態では、励起子障壁層は、陽極の側と陰極の側のいずれかで、かつ、その両側で、発光層に隣接する。ある実施形態では、励起子障壁層が陽極側に存在するとき、当該層は、正孔輸送層と発光層との間に存在し、当該発光層に隣接してもよい。ある実施形態では、励起子障壁層が陰極側に存在するとき、当該層は、発光層と陰極との間に存在し、当該発光層に隣接してもよい。ある実施形態では、正孔注入層、電子障壁層または同様の層は、陽極と、陽極側の発光層に隣接する励起子障壁層との間に存在する。ある実施形態では、正孔注入層、電子障壁層、正孔障壁層または同様の層は、陰極と、陰極側の発光層に隣接する励起子障壁層との間に存在する。ある実施形態では、励起子障壁層は、励起一重項エネルギーと励起三重項エネルギーを含み、その少なくとも1つが、発光材料の励起一重項エネルギーと励起三重項エネルギーそれぞれより高い。
【0204】
正孔輸送層:
正孔輸送層は、正孔輸送材料を含む。ある実施形態では、正孔輸送層は単層である。ある実施形態では、正孔輸送層は複数の層を有する。
【0205】
ある実施形態では、正孔輸送材料は、正孔の注入または輸送特性および電子の障壁特性のうちの1つを有する。ある実施形態では、正孔輸送材料は有機材料である。ある実施形態では、正孔輸送材料は無機材料である。本明細書で用いることができる公知の正孔輸送材料の例としては、限定されないが、トリアゾール誘導体、オキサジアゾール誘導剤、イミダゾール誘導体、カルバゾール誘導体、インドロカルバゾール誘導体、ポリアリールアルカン誘導剤、ピラゾリン誘導体、ピラゾロン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、アリールアミン誘導体、アミノ置換カルコン誘導体、オキサゾール誘導体、スチリルアントラセン誘導体、フルオレノン誘導体、ヒドラゾン誘導体、スチルベン誘導体、シラザン誘導体、アニリンコポリマーおよび導電性ポリマーオリゴマー(特にチオフェンオリゴマー)、またはその組合せが挙げられる。ある実施形態では、正孔輸送材料はポルフィリン化合物、芳香族三級アミン化合物およびスチリルアミン化合物から選択される。ある実施形態では、正孔輸送材料は芳香族三級アミン化合物である。
【0206】
電子輸送層:
電子輸送層は、電子輸送材料を含む。ある実施形態では、電子輸送層は単層である。ある実施形態では、電子輸送層は複数の層を有する。
【0207】
ある実施形態では、電子輸送材料は、陰極から注入された電子を発光層に輸送する機能さえあればよい。ある実施形態では、電子輸送材料はまた、正孔障壁材料としても機能する。本明細書で用いることができる電子輸送層の例としては、限定されないが、ニトロ置換フルオレン誘導体、ジフェニルキノン誘導体、チオピランジオキシド誘導体、カルボジイミド、フルオレニリデンメタン誘導体、アントラキノジメタン、アントロン誘導体、オキサジアゾール誘導体、アゾール誘導体、アジン誘導体もしくはその組合せ、またはそのポリマーが挙げられる。ある実施形態では、電子輸送材料はチアジアゾール誘導体またはキノキサリン誘導体である。ある実施形態では、電子輸送材料はポリマー材料である。
【0208】
ある実施形態では、一般式(I)、(II)または(III)で表される化合物は本発明のデバイスの発光層に含まれる。ある実施形態では、一般式(I)、(II)または(III)で表される化合物は、発光層および少なくとも1つの他の層に含まれる。ある実施形態では、一般式(I)、(II)または(III)で表される化合物は、各層(each layers)毎に独立して選択される。ある実施形態では、一般式(I)、(II)または(III)で表される化合物は同じものである。ある実施形態では、一般式(I)、(II)または(III)で表される化合物は各々異なる。例えば、一般式(I)、(II)または(III)で表される化合物は、前述した注入層、障壁層、正孔障壁層、電子障壁層、励起子障壁層、正孔輸送層および電子輸送層などで使用できる。層のフィルム形成方法は特に限定されず、層は乾式工程および湿式工程のいずれかにより製造されうる。
【0209】
有機エレクトロルミネッセンスデバイスで使用できる材料の具体例を以下に示すが、本発明で使用できる材料はこれらの例示に係る化合物に限定されるものと解釈すべきでない。ある実施形態では、特定の機能を有する材料は、他の機能を有することもあり得る。
【0210】
ある実施形態では、ホスト材料は下記一般式からなる群から選択される。
【化77】
【0211】
デバイス:
ある実施形態では、本開示の化合物はデバイス中に組み込まれる。例えば、デバイスには、OLEDバルブ、OLEDランプ、テレビ用ディスプレイ、コンピューター用モニター、携帯電話およびタブレットが含まれるが、これらに限定されない。
【0212】
ある実施形態では、電子デバイスは、陽極、陰極、および前記陽極と前記陰極との間の発光層を含む少なくとも1つの有機層を含むOLEDを含み、前記発光層は、
ホスト材料と、
一般式(I)、(II)または(III)で表される化合物と、を含む。
【0213】
ある実施形態では、OLEDの発光層は、一般式(I)、(II)または(III)で表される化合物が蛍光体のために三重項を一重項に変換する蛍光材料を更に含む。
【0214】
ある実施形態では、本明細書に記載の組成物は、OLEDまたは光電子デバイスなどの、様々な感光性または光活性化デバイスに組み込まれうる。ある実施形態では、組成物はデバイス内の電荷移動またはエネルギー移動の促進に、および/または正孔輸送材料として有用でありうる。デバイスとしては、例えば有機発光ダイオード(OLED)、有機集積回線(OIC)、有機電界効果トランジスタ(O-FET)、有機薄膜トランジスタ(O-TFT)、有機発光トランジスタ(O-LET)、有機太陽電池(O-SC)、有機光学検出デバイス、有機光受容体、有機磁場クエンチ(field-quench)デバイス(O-FQD)、発光電気化学電池(LEC)または有機レーザダイオード(O-レーザー)が挙げられる。
【0215】
バルブまたはランプ:
ある実施形態では、電子デバイスは、陽極、陰極、および前記陽極と前記陰極との間の発光層を含む少なくとも1つの有機層を含むOLEDと、OLEDドライバ回路とを含み、前記発光層は、
ホスト材料と、
発光材料である一般式(I)、(II)または(III)で表される化合物とを含む。
【0216】
ある実施形態では、デバイスは色彩の異なるOLEDを含む。ある実施形態では、デバイスはOLEDの組合せを含むアレイを含む。ある実施形態では、OLEDの組合せは、3色の組合せ(例えばRGB)である。ある実施形態では、OLEDの組合せは、赤色でも緑色でも青色でもない色(例えばオレンジ色および黄緑色)の組合せである。ある実施形態では、OLEDの組合せは、2色、4色またはそれ以上の色の組合せである。
【0217】
ある実施形態では、デバイスはOLEDライトであって、当該OLEDライトは、
取り付け面を有する第1面と、それと反対の第2面とを有し、少なくとも1つの開口部を画定する回路基板と、
前記取り付け面上の少なくとも1つのOLEDであって、光を発するように構成される当該少なくとも1つのOLEDは、陽極、陰極、および前記陽極と前記陰極との間の発光層を含む少なくとも1つの有機層を含み、当該発光層がホスト材料と、発光材料である一般式(I)、(II)または(III)で表される化合物とを含む、少なくとも1つのOLEDと、
回路基板用のハウジングと、
前記ハウジングの端部に配置された少なくとも1つのコネクターであって、前記ハウジングおよび前記コネクターが照明設備への取付けに適するパッケージを画定する、少なくとも1つのコネクターと、を備える。
【0218】
ある実施形態では、OLEDライトは、複数の方向に光が放射されるように回路基板に取り付けられた複数のOLEDを有する。ある実施形態では、第1方向に発せられた一部の光は偏光されて第2方向に放射される。ある実施形態では、反射器を用いて第1方向に発せられた光を偏光する。
【0219】
ディスプレイまたはスクリーン:
ある実施形態では、一般式(I)、(II)または(III)で表される化合物は、スクリーンまたはディスプレイにおいて使用できる。ある実施形態では、一般式(I)、(II)または(III)で表される化合物は、限定されないが真空蒸発、堆積、蒸着または化学蒸着(CVD)などの工程を用いて基材上へ堆積させる。ある実施形態では、基材は、2面エッチングにおいて有用なフォトプレート構造であり、独特のアスペクト比のピクセルを提供する。スクリーン(またマスクとも呼ばれる)は、OLEDディスプレイの製造工程で用いられる。対応するアートワークパターンの設計により、垂直方向ではピクセルの間の非常に急な狭いタイバーと、水平方向では大きな広範囲の斜角開口部を可能にする。これにより、TFTバックプレーン上への化学蒸着を最適化しつつ、高解像度ディスプレイに必要とされるピクセルの微細なパターニングが可能となる。
【0220】
ピクセルの内部パターニングにより、水平および垂直方向での様々なアスペクト比の三次元ピクセル開口部を構成することが可能となる。更に、ピクセル領域中の画像化された「ストライプ」またはハーフトーン円の使用は、これらの特定のパターンをアンダーカットし基材から除くまで、特定の領域におけるエッチングが保護される。その時、全てのピクセル領域は同様のエッチング速度で処理されるが、その深さはハーフトーンパターンにより変化する。ハーフトーンパターンのサイズおよび間隔を変更することにより、ピクセル内での保護率が様々異なるエッチングが可能となり、急な垂直斜角を形成するのに必要な局在化された深いエッチングが可能となる。
【0221】
蒸着マスク用の好ましい材料はインバーである。インバーは、製鉄所で長い薄型シート状に冷延された金属合金である。インバーは、ニッケルマスクとして回転マンドレル上へ電着することができない。蒸着用マスク内に開口領域を形成するための適切かつ低コストの方法は、湿式化学エッチングによる方法である。
【0222】
ある実施形態では、スクリーンまたはディスプレイパターンは、基材上のピクセルマトリックスである。ある実施形態では、スクリーンまたはディスプレイパターンは、リソグラフィー(例えばフォトリソグラフィーおよびeビームリソグラフィー)を使用して加工される。ある実施形態では、スクリーンまたはディスプレイパターンは、湿式化学エッチングを使用して加工される。更なる実施形態では、スクリーンまたはディスプレイパターンは、プラズマエッチングを使用して加工される。
【0223】
本開示の化合物を用いた、デバイスの製造方法:
OLEDディスプレイは、一般的には、大型のマザーパネルを形成し、次に当該マザーパネルをセルパネル単位で切断することによって製造される。通常は、マザーパネル上の各セルパネルは、ベース基材上に、活性層とソース/ドレイン電極とを有する薄膜トランジスタ(TFT)を形成し、TFTに平坦化フィルムを塗布し、ピクセル電極、発光層、対電極およびカプセル化層を順に形成し、マザーパネルから切断することにより形成される。
【0224】
OLEDディスプレイは、一般的には、大型のマザーパネルを形成し、次に当該マザーパネルをセルパネル単位で切断することによって製造される。通常は、マザーパネル上の各セルパネルは、ベース基材上に、活性層と、ソース/ドレイン電極とを有する薄膜トランジスタ(TFT)を形成し、TFTに平坦化フィルムを塗布し、ピクセル電極、発光層、対電極およびカプセル化層を順に形成し、マザーパネルから切断することにより形成される。
【0225】
本発明の他の態様では、有機発光ダイオード(OLED)ディスプレイの製造方法を提供し、当該方法は、
マザーパネルのベース基材上に障壁層を形成する工程、
前記障壁層上にセルパネル単位で複数のディスプレイユニットを形成する工程、
前記セルパネルの前記ディスプレイユニットのそれぞれの上にカプセル化層を形成する工程、
前記セルパネル間のインタフェース部に有機フィルムを塗布する工程、を含む。
【0226】
ある実施形態では、障壁層は、例えばSiNxで形成された無機フィルムであり、障壁層の端部は、ポリイミドまたはアクリルで形成された有機フィルムで被覆される。ある実施形態では、有機フィルムは、マザーパネルがセルパネル単位でソフトに切断されるように補助する。
【0227】
ある実施形態では、薄膜トランジスタ(TFT)層は、発光層と、ゲート電極と、ソース/ドレイン電極と、を有する。複数のディスプレイユニットの各々は、薄膜トランジスタ(TFT)層と、TFT層上に形成された平坦化フィルムと、平坦化フィルム上に形成された発光ユニットとを有してもよく、インタフェース部に塗布された有機フィルムは、平坦化フィルムの材料と同じ材料で形成され、平坦化フィルムの形成と同時に形成される。ある実施形態では、発光ユニットは、不動態化層と、その間の平坦化フィルムと、発光ユニットを被覆し保護するカプセル化層とによりTFT層に連結される。製造方法のある実施形態では、有機フィルムは、ディスプレイユニットにもカプセル化層にも接触されない。
【0228】
有機フィルムと平坦化フィルムの各々は、ポリイミドおよびアクリルのいずれか1つを含んでもよい。ある実施形態では、障壁層は無機フィルムであってもよい。ある実施形態では、ベース基材はポリイミドで形成されてもよい。方法は更に、ポリイミドで形成されたベース基材の1つの表面に障壁層を形成する前に、ベース基材のもう1つの表面にガラス材料で形成されたキャリア基材を取り付ける工程と、インタフェース部に沿った切断の前に、キャリア基材をベース基材から分離する工程と、を含んでもよい。ある実施形態では、OLEDディスプレイはフレキシブルなディスプレイである。
【0229】
ある実施形態では、不動態化層は、TFT層の被覆のためにTFT層上に配置された有機フィルムである。ある実施形態では、平坦化フィルムは、不動態化層上に形成された有機フィルムである。ある実施形態では、平坦化フィルムは、障壁層の端部に形成された有機フィルムと同様、ポリイミドまたはアクリルで形成される。ある実施形態では、OLEDディスプレイの製造の際、平坦化フィルムおよび有機フィルムは同時に形成される。ある実施形態では、有機フィルムは、障壁層の端部に形成されてもよく、それにより、有機フィルムの一部が直接ベース基材と接触し、有機フィルムの残りの部分が障壁層の端部を囲みつつ、障壁層と接触する。
【0230】
ある実施形態では、発光層は、ピクセル電極と、対電極と、ピクセル電極と対電極との間に配置された有機発光層とを有する。ある実施形態では、ピクセル電極は、TFT層のソース/ドレイン電極に連結している。
【0231】
ある実施形態では、TFT層を通じてピクセル電極に電圧が印加されるとき、ピクセル電極と対電極との間に適切な電圧が形成され、それにより有機発光層が光を放射し、それにより画像が形成される。以下、TFT層と発光ユニットとを有する画像形成ユニットを、ディスプレイユニットと称する。
【0232】
ある実施形態では、ディスプレイユニットを被覆し、外部の水分の浸透を防止するカプセル化層は、有機フィルムと無機フィルムとが交互に積層する薄膜状のカプセル化構造に形成されてもよい。ある実施形態では、カプセル化層は、複数の薄膜が積層した薄膜状カプセル化構造を有する。ある実施形態では、インタフェース部に塗布される有機フィルムは、複数のディスプレイユニットの各々と間隔を置いて配置される。ある実施形態では、有機フィルムは、一部の有機フィルムが直接ベース基材と接触し、有機フィルムの残りの部分が障壁層の端部を囲む一方で障壁層と接触する態様で形成される。
【0233】
一実施形態では、OLEDディスプレイはフレキシブルであり、ポリイミドで形成された柔軟なベース基材を使用する。ある実施形態では、ベース基材はガラス材料で形成されたキャリア基材上に形成され、次にキャリア基材が分離される。
【0234】
ある実施形態では、障壁層は、キャリア基材の反対側のベース基材の表面に形成される。一実施形態では、障壁層は、各セルパネルのサイズに従いパターン化される。例えば、ベース基材がマザーパネルの全ての表面上に形成される一方で、障壁層が各セルパネルのサイズに従い形成され、それにより、セルパネルの障壁層の間のインタフェース部に溝が形成される。各セルパネルは、溝に沿って切断できる。
【0235】
ある実施形態では、製造方法は、インタフェース部に沿って切断する工程を更に含み、溝が障壁層に形成され、少なくとも一部の有機フィルムが溝に形成され、溝はベース基材まで侵入しない。ある実施形態では、各セルパネルのTFT層が形成され、無機フィルムである不動態化層と有機フィルムである平坦化フィルムが、TFT層上に配置され、TFT層を被覆する。例えばポリイミドまたはアクリル製の平坦化フィルムが形成されるのと同時に、インタフェース部の溝は、例えばポリイミドまたはアクリル製の有機フィルムで被覆される。これは、各セルパネルがインタフェース部で溝に沿って切断されるとき、生じた衝撃を有機フィルムに吸収させることによってひびが生じるのを防止する。すなわち、全ての障壁層が有機フィルムなしで完全に露出している場合、各セルパネルがインタフェース部で溝に沿って切断されるとき、生じた衝撃が障壁層に伝達され、それによりひびが生じるリスクが増加する。しかしながら、一実施形態では、障壁層間のインタフェース部の溝が有機フィルムで被覆されて、有機フィルムがなければ障壁層に伝達されうる衝撃を吸収するため、各セルパネルをソフトに切断し、障壁層でひびが生じるのを防止してもよい。一実施形態では、インタフェース部の溝を被覆する有機フィルムおよび平坦化フィルムは、互いに間隔を置いて配置される。例えば、有機フィルムおよび平坦化フィルムが1つの層として相互に接続している場合には、平坦化フィルムと、有機フィルムが残っている部分とを通じてディスプレイユニットに外部の水分が浸入する恐れがあるため、有機フィルムおよび平坦化フィルムは、有機フィルムがディスプレイユニットから間隔を置いて配置されるように、相互に間隔を置いて配置される。
【0236】
ある実施形態では、ディスプレイユニットは、発光ユニットの形成により形成され、カプセル化層は、ディスプレイユニットを被覆するためディスプレイユニット上に配置される。これにより、マザーパネルが完全に製造された後、ベース基材を担持するキャリア基材がベース基材から分離される。ある実施形態では、レーザー光線がキャリア基材へ放射されると、キャリア基材は、キャリア基材とベース基材との間の熱膨張率の相違により、ベース基材から分離される。
【0237】
ある実施形態では、マザーパネルは、セルパネル単位で切断される。ある実施形態では、マザーパネルは、カッターを用いてセルパネル間のインタフェース部に沿って切断される。ある実施形態では、マザーパネルが沿って切断されるインタフェース部の溝が有機フィルムで被覆されているため、切断の間、当該有機フィルムが衝撃を吸収する。ある実施形態では、切断の間、障壁層でひびが生じるのを防止できる。
【0238】
ある実施形態では、前記方法は製品の不良率を減少させ、その品質を安定させる。
【0239】
他の態様は、ベース基材上に形成された障壁層と、障壁層上に形成されたディスプレイユニットと、ディスプレイユニット上に形成されたカプセル化層と、障壁層の端部に塗布された有機フィルムと、を有するOLEDディスプレイである。
【実施例
【0240】
本開示の実施形態では、適切な材料を使用して、以下の実施例の手順に従い、一般式(I)、(II)、(III)で表される化合物の調製がなされる。当業者であれば、以下の調製手順のための条件および工程の既知の変形を使用してこれらの化合物を調製できることを理解するであろう。更に、当業者であれば、詳細に記載する手順を応用することによって、本開示に係る更なる化合物を調製することができる。
【0241】
分析方法に関する一般的情報:
本発明の特徴が以下の実施例を参照してより具体的に記載される。以下に示す材料、工程、手順などは、発明の本質から逸脱しない限り、適切に改変されうる。従って、本発明の範囲は、以下に示す特定の実施形態に限定されるものとして解釈されない。サンプルの特徴はNMR(Bruker社製の核磁気共鳴500MHz)、LC/MS(Waters社製液体クロマトグラフィー質量分析計)、AC3(理研計器社製)、高性能UV/Vis/NIR分光光度計(PerkinElmer社製Lambda950)、蛍光分光光度計(ホリバ社製FluoroMax-4)、フォトニックマルチチャネルアナライザー(浜松ホトニクス社製PMA-12 C10027-01)、絶対PL量子収率測定システム(浜松ホトニクス社製C11347)、自動電流電圧輝度測定システム(システム技研社製ETS-170)、寿命測定システム(システム技研社製EAS-26C)およびストリークカメラ(浜松ホトニクス社製モデルC4334)を用いて評価された。
【0242】
実施例1:
例示する有機エレクトロルミネッセンスデバイスについて、その特徴に関する原理を以下のとおり示す。
【0243】
有機エレクトロルミネッセンスデバイスでは、陽極および陰極から発光材料へキャリアを注入して発光材料において励起状態を形成させ、それにより光を放射させる。キャリア注入型有機エレクトロルミネッセンスデバイスの場合、通常では、励起一重項状態を生じさせるように励起される励起子は、発生した全励起子の25%であり、その残りの75%は、励起三重項状態を生じさせるように励起される。従って、燐光の使用は、励起三重項状態からの光放射であり、高いエネルギー利用が可能となる。しかしながら、励起三重項状態は寿命が長く、従って、励起状態の飽和と、励起三重項状態における励起子との相互動作を通じたエネルギー不活性化を生じさせ、それにより、燐光の量子収量は通常、高くない場合がしばしばある。遅延蛍光材料が発光するメカニズムでは、励起子のエネルギーが項間交差等を通じて励起三重項状態に遷移し、次に三重項-三重項消滅に起因する逆項間交差または熱エネルギーの吸収を通じて励起一重項状態に遷移することによって、蛍光を発する。材料の中でも、特に熱活性化タイプの、熱エネルギーの吸収を通して光を放射する遅延蛍光材料が、有機エレクトロルミネッセンスデバイスに有用であると考えられる。遅延蛍光材料が有機エレクトロルミネッセンスデバイスで用いられる場合には、励起一重項状態の励起子は通常、蛍光を発する。一方で、励起三重項状態の励起子は、デバイスで発生する熱を吸収することによって、励起一重項状態への項間交差を通じて蛍光を発する。このとき、励起三重項状態から励起一重項状態への逆項間交差を通じて放射される光は、励起一重項状態からの光放射であるため、蛍光と同じ波長であるが、通常の蛍光および燐光よりも長い寿命(光放射寿命)であり、ゆえにその光は、通常の蛍光および燐光から遅延した蛍光として観察される。前記の光は、遅延蛍光と定義されうる。熱活性化型の励起子の遷移メカニズムの使用により、励起一重項状態の化合物の比率を、通常25%の比率で形成されているものから、キャリア注入後の熱エネルギー吸収を通じての25%以上まで上昇させることが可能となる。100℃未満の低温で強い蛍光と遅延蛍光とを放射する化合物は、デバイスの熱により十分に、励起三重項状態から励起一重項状態まで項間交差し、それにより遅延蛍光を放射するため、前記化合物の使用は、光放射効率を大幅に強化することができる。
【0244】
実施例2:
本発明の化合物は、当業者に公知のいかなる方法によっても合成できる。化合物は、一般に入手可能な開始材料から合成されうる。様々な部分は、直線的または分枝的な合成経路を経て構築できる。
【0245】
化合物L1
【化78】
9H-カルバゾール(1.31g,7.85mmol)、KCO(1.63g,11.7mmol)、中間体(intermidiate)A(0.60g,1.57mmol)、および1-メチル-2-ピロリドン(NMP,30mL)の混合物を100℃で20時間撹拌した。室温で冷却後に、反応溶液を水でクエンチした。濾別した沈殿物をメタノールで洗浄し、トルエン/メタノールで再結晶化し、それから白色固体が得られた(1.19g,1.22mmol,77.7%。1H-NMR(500 MHz, CDCl3, δ):7.81(d,J=8.0Hz, 4H), 7.61-7.58(m,4H), 7.53(d,J=8.0Hz,4H), 7.20-6.94(m,30H), 6.54(s,1H). ASAP MS:969.8(M+). Calcd for C69H43N7: 969.4
【0246】
化合物L2
【化79】
2-ブロモ-4,6-ジフェニルピリミジン(1.00g,3.21mmol)、1,10-フェナントロリン(phenanthrorine)(60mg,0.30mmol)、ヨウ化銅(I)(60mg,0.30mmol)、KPO(1.36g,6.43mmol)、2,3,5,6-テトラフルオロピリジン(0.72g,4.82mmol)、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF,25mL)、およびキシレン(25mL)の混合物を、100℃で12時間撹拌した。室温で冷却後に、反応溶液を水で洗浄し、酢酸エチルで抽出し、蒸発濃縮した。混合物をトルエンで再結晶化し、それから白色固体が得られた(0.96g,2.5mmol,78%)。1H-NMR (500 MHz, CDCl3,δ): 8.21-8.19(m,5H), 7.58-7.57(m,6H). ASAP MS:381.1(M+). Calcd for C21H11F4N3: 382.1
【0247】
【化80】
9H-カルバゾール(0.66g,3.93mmol)、KCO(0.93g,6.72mmol)、中間体(intermidiate)B(0.25g,0.65mmol)、および1-メチル-2-ピロリドン(NMP,8mL)の混合物を、100℃で24時間撹拌した。室温で冷却後に、反応溶液を水でクエンチした。濾別した沈殿物をシリカクロマトグラフィー(トルエン)によって精製し、ジクロロメタン/メタノールで再結晶化し、それから薄黄色固体が得られた(059g,0.61mmol,92%)。1H-NMR (500 MHz, CDCl3, δ):7.82(d, J=7Hz, 4H), 7.58-7.55(m, 8H), 7.24-7.22(m, 2H), 7.18-7.16(m, 4H), 7.42(td, J=7.5, J=1.0Hz, 4H), 7.05-7.01(m, 9H), 6.94-6.89(m, 8H), 6.74(dd, J=7.5, J=1.0Hz, 4H). ASAP MS:969.4(M+). Calcd for C69H43N7: 969.4
【0248】
化合物L3
【化81】
9H-カルバゾール(0.79g,4.71mmol)、KCO(1.12g,8.10mmol)、中間体(intermidiate)C(0.30g,0.79mmol)、および1-メチル-2-ピロリドン(NMP,10mL)の混合物を、100℃で24時間撹拌した。室温で冷却後に、反応溶液を水でクエンチした。濾別した沈殿物をシリカクロマトグラフィー(トルエン)によって精製し、ジクロロメタン/メタノールで再結晶化し、それから薄黄色固体が得られた(0.66g,0.68mmol,86.6%。1H-NMR (500 MHz, CDCl3,δ): 7.82(d,J=6.5Hz,4H),7.57(d,J=8Hz,4H),7.53-7.51(m,4H),7.31(t,2H),7.22(dd,J=8.2,J=1.0Hz,4H),7.16(dd,J=7.5,J=1.2Hz,4H),7.09(td,J=7.5,J=1.0Hz,4H)7.06-7.02(m,8H),6.97-6.91(m,8H). ASAP MS:971.2(M+). Calcd for C68H42N8: 970.4
【0249】
化合物L4
【化82】
NMP(30mL)中のKCO(2.54g,18.3mmol)および9H-カルバゾール(2.20g,13.1mmol)の混合物をr.t.で1h撹拌し、それから中間体(intermidiate)D(1.00g,2.63mmol)を加えた。混合物を100℃で15h撹拌した。反応混合物をHOでクエンチした。沈殿した生成物を濾別し、MeOHで洗浄し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:トルエン=2:1)によって精製して、化合物4(1.99g,2.05mmol)を78%収率で白色粉末として得た。1H-NMR (500 MHz, CDCl3, δ): 7.80 (d, J=8.0 Hz, 4H), 7.69-7.66 (m, 4H), 7.50 (d, J=8.0 Hz, 4H), 7.27-7.24 (m, 2H), 7.10-6.98 (m, 24H), 6.80 (dd, J=8.0, 1.5 Hz, 4H), 6.61 (s, 2H). MS (ASAP): 968.5 (M+). Calcd for C70H44N6: 968.4.
【0250】
化合物L5
【化83】
9H-カルバゾール(1.06g,6.33mmol)、KCO(1.50g,10.9mmol)、中間体E(0.30g,1.06mmol)、および1-メチル-2-ピロリドン(NMP,12mL)の混合物を、100℃で24時間撹拌した。室温で冷却後に、反応溶液を水でクエンチした。濾別した沈殿物をシリカクロマトグラフィー(トルエン)によって精製し、ジクロロメタン/メタノールで再結晶化し、それから薄黄色固体が得られた(0.70g,0.90mol,85%)。1H-NMR (500 MHz,CDCl3,δ): 7.77(d, J=7.5Hz, 4H), 7.66(dd, J=8.0, J=1.5Hz, 4H), 7.44(d, J=8.0Hz, 4H), 7.24 (dd, J=7.5, J=1.5Hz, 1H), 7.12 (dd, J=7.5, 1.5Hz, 1H),7.09-7.05 (m, 8H), 7.03-6.96(m, 6H), 7.77(d, J=7.5Hz, 4H), 7.66(dd, J=8.0, J=1.5Hz, 4H), 7.44(d, J=8.0Hz, 4H), 7.24 (dd, J=7.5, J=1.5Hz, 1H), 7.12 (dd, J=7.5, 1.5Hz, 1H),7.09-7.05 (m, 8H), 7.03-6.96(m, 6H), 6.94-6.89 (m, 8H). ASAP MS:873.8(M+). Calcd for C60H36N6S: 872.3
【0251】
化合物L6およびL7
【化84】
【0252】
化合物F
THF(80mL)中のNaH(油中に60%,0.54g,13.6mmol)および9H-カルバゾール(1.75g,10.4mmol)の混合物に、中間体(intermidiate)C(2.00g,5.23mmol)を-50℃で加えた。反応混合物をrtまで14h徐々に温め、NHClaqでクエンチし、EtOAcで抽出し、MgSOによって乾燥した。溶媒をロータリーエバポレーションによって除去し、残りの混合物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:CHCl=2:1)で精製して、化合物F(1.14g,1.68mmol)を31%収率で白色粉末として得た。
1H-NMR (500 MHz, CDCl3, δ): 8.17 (d, J=8.0 Hz, 2H), 8.01 (dd, J=8.0, 1.0 Hz, 4H), 7.92 (d, J=8.0 Hz, 2H), 7.79 (d, J=8.0Hz, 1H), 7.78 (d, J=8.0Hz, 1H), 7.54 (dt, J=8.0Hz, 2H), 7.51 (dt, J=8.0Hz, 2H), 7.43-7.32 (m, 10H), 7.25-7.22 (m, 2H).
MS (ASAP): 676.2 (M+). Calcd for C44H26F2N6: 676.2.
【0253】
化合物L6
NMP(15mL)中のKCO(0.39g,2.81mmol)および3,6-ジフェニルカルバゾール(0.59g,1.84mmol)の混合物をr.t.で1h撹拌し、それから中間体(intermidiate)F(0.50g,0.73mmol)を加えた。混合物を140℃で19h撹拌した。化合物L6の形成がMSによって確認された。
MS (ASAP): 1274.5 (M+). Calcd for C92H58N8: 1274.5.
【0254】
化合物L7
NMP(15mL)中のKCO(0.39g,2.81mmol)および11H-ベンゾ[a]カルバゾール(0.40g,1.84mmol)の混合物をr.t.で1h撹拌し、それから中間体(intermidiate)F(0.50g,0.73mmol)を加えた。混合物を140℃で19h撹拌した。化合物L7の形成がMSによって確認された。
MS (ASAP): 1070.2 (M+). Calcd for C76H46N8: 1070.4.
【0255】
化合物L8
【化85】
12H-[1]ベンゾチエノ[2,3-a]カルバゾール(0.21g,0.78mmol)、KCO(0.16g,1.18mmol)、中間体C(0.05g,0.13mmol)、および1-メチル-2-ピロリドン(NMP,4mL)の混合物を180℃で7時間撹拌した。室温で冷却後に、化合物L8のMSスペクトルが確認される。
ASAP MS:1394.5(M+). Calcd for C68H42N8: 1394.3.
【0256】
化合物L9
【化86】
11,12H-ジヒドロ-11-フェニルインドロ[2,3-a]カルバゾール(0.26g,0.78mmol)、KCO(0.16g,1.18mmol)、中間体C(0.05g,0.13mmol)、および1-メチル-2-ピロリドン(NMP,4mL)の混合物を、180℃で7時間撹拌した。室温で冷却後に、化合物L9のMSスペクトルが確認される。
ASAP MS:1630.7(M+). Calcd for C68H42N8: 1630.6.
【0257】
実施例3:
ニート膜の調製
本実施例において、実施例2で合成された化合物L1は、真空度10-3Pa以下の条件下で、真空蒸着法によって石英基材上に蒸着され、70nmの厚さを有する薄膜を形成した。
【0258】
ドープ膜の調製
また、化合物L1およびホストは真空度10-3Pa以下の条件下で、真空蒸着法によって別の蒸着源から石英基材上に蒸着され、化合物L1の濃度が20重量%で、100nmの厚さを有する薄膜を形成した。
【0259】
光学特性の評価
サンプルが、300Kで300nmの波長を有する光によって照射され、それにより、発光スペクトルは測定され、蛍光として帰属された。77Kのスペクトルも測定され、燐光として帰属された。最低一重項エネルギー(S1)および最低三重項エネルギー(T1)がそれぞれ蛍光および燐光(phsphorescence)スペクトルの発光から推定された。ΔESTは、S1とT1のエネルギーギャップから算出された。PLQYも300nmの励起光から測定された。時間分解スペクトルはストリークカメラを用いて337nmの励起光により得られ、短い発光寿命を有する成分が蛍光として帰属されたのに対して、長い発光寿命を有する成分は遅延蛍光として帰属された。蛍光成分(τprompt)および遅延蛍光成分(τdelay)の寿命は減衰曲線から算出された。
【0260】
OLEDの調製および測定
薄膜が真空度1.0X1.0-4Pa以下で真空蒸着法を用いて、ガラス基材上に積層され、その上には、50nmの厚さを有するインジウム錫酸化物(ITO)により形成された陽極が形成された。まず、HAT-CNがITO上に60nmの厚さで形成され、その上にTrisPCzが30nmの厚さで形成された。mCBPが5nmの厚さで形成され、続いて、その上に化合物L1およびホストが共蒸着されて30nmの厚さを有する層を形成し、この層は発光層と指定された。各材料は別の蒸着源から蒸着される。次いで、SF3-TRZが5nmの厚さで形成され、その上に、SF3-TRZおよびLiqが30nmの厚さに共蒸着された。次に、Liqは2nmの厚さに真空蒸着され、次いで、アルミニウム(Al)が100nmの厚さに蒸着されて陰極を形成し、それにより、有機エレクトロルミネッセンスデバイスを作成し、その光電気特性を測定した。
【0261】
化合物L1以外の実施例2で合成した化合物L2-L5の同じ評価結果も測定される。発光(light emmiting)層の組成は以下の表に記載される。図2は、337nmの励起光による化合物のニート膜の過渡減衰曲線を示し、図3は、337nmの励起光によるmCBPへの化合物L2のドープ膜の過渡減衰曲線を示す。
【表2】
【表3】
【表4】
【表5】
【化87】
【符号の説明】
【0262】
1 基材
2 陽極
3 正孔注入層
4 正孔輸送層
5 発光層
6 電子輸送層
7 陰極
図1
図2
図3