(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-20
(45)【発行日】2022-09-29
(54)【発明の名称】検体採取装置および検査方法
(51)【国際特許分類】
G01N 1/10 20060101AFI20220921BHJP
【FI】
G01N1/10 V
(21)【出願番号】P 2020189478
(22)【出願日】2020-11-13
【審査請求日】2020-11-13
(73)【特許権者】
【識別番号】520445440
【氏名又は名称】鵜飼 伸一
(74)【代理人】
【識別番号】110002457
【氏名又は名称】弁理士法人広和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鵜飼 伸一
【審査官】岩永 寛道
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第111227872(CN,A)
【文献】韓国公開特許第10-2015-0087656(KR,A)
【文献】特開2011-120647(JP,A)
【文献】特開2010-181152(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第111202544(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第111358501(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 1/00- 1/44
G01N 33/48- 33/98
A61B 10/00
B29C 45/14
C12M 1/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
採取者が被採取者から検体を採取する検体採取装置であって、
軸状部と、該軸状部の一端に設けられ検体を採取する採取部と、前記軸状部の他端側に形成された把持部と、前記採取部と前記把持部との間に位置して前記軸状部に形成された拡径部と、からなる検体採取部材と、
透明な材料からなり前記軸状部の径方向に広がる遮蔽板部と、前記検体採取部材の拡径部が係合する挿通部とからなり、前記採取者が前記被採取者から検体を採取する採取作業時に前記被採取者の発する飛沫が前記採取者に飛ぶことを抑える遮蔽部材と、を有
し、
前記検体採取部材は、前記挿通部に着脱可能に固定されることを特徴とする検体採取装置。
【請求項2】
前記拡径部または前記挿通部の少なくとも一方は可撓性材料により形成され、前記拡径部が前記挿通部に嵌合することで係合されることを特徴とする請求項
1に記載の検体採取装置。
【請求項3】
前記拡径部は、前記検体採取部材の前記採取部と前記把持部との間に着脱可能に係合するパッキン部材としたことを特徴とする請求項1
または2に記載の検体採取装置。
【請求項4】
前記挿通部は、前記遮蔽部材に形成された挿通孔と、前記挿通孔の周囲から延出するように設けられた筒状部とからなり、
前記検体採取部材の前記拡径部が前記筒状部に係合した際に、前記筒状部の内部と外部とを隔絶することを特徴とする請求項
1に記載の検体採取装置。
【請求項5】
前記拡径部は、筒部を有する有底筒状の部材からなり、前記筒部と前記筒状部とが係合することを特徴とする請求項
4に記載の検体採取装置。
【請求項6】
軸状部と、前記軸状部の一端に設けられ検体を採取する採取部と、前記軸状部の他端側に形成された把持部と、前記採取部と前記把持部との間に位置して前記軸状部に形成された拡径部と、からなる検体採取部材を、
透明な材料からなり前記軸状部の径方向に広がる遮蔽板部と、前記検体採取部材の拡径部が係合する挿通部とからなる遮蔽部材の前記挿通部に前記検体採取部材を該検体採取部材の一端から挿入して係合させる工程と、
被採取者から採取物を前記採取部に採取する工程と、
前記遮蔽部材
の前記挿通部から前記検体採取部材の前記拡径部を取り外す工程と、
前記採取部に採取された前記採取物を検査する工程とからなる検査方法。
【請求項7】
軸状部と、前記軸状部の一端に設けられ検体を採取する採取部と、前記軸状部の他端側に形成された把持部と、からなる検体採取部材に対して、前記採取部と前記把持部との間に筒状のパッキン部材を取り付ける工程と、
透明な材料からなる板状、可撓性膜状または袋状の遮蔽部材に設けられた挿通部に前記検体採取部材を挿入し、前記挿通部に前記パッキン部材を係合させる工程と、
採取物を前記採取部に採取する工程と、
前記遮蔽部材
の前記挿通部から前記検体採取部材と
一緒に前記パッキン部材を取り外す工程と、
前記採取部に採取された前記採取物を検査する工程とからなる検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、例えばウイルス感染症の検査において検体採取のために使用される検体採取装置および検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ウイルス感染症の医療検査機関では、人体(例えば、被採取者の鼻腔)から検体採取を行うときに、被採取者から発生する飛沫(例えば、くしゃみによる飛沫)等により、採取者が感染の危険に曝される虞れがある。そのため、被採取者と採取者を分離する分離プレートを用意し、この分離プレートに設けられた孔にスワブ等の検体採取具を挿入した状態で、その先端側の採取部により検体の採取を行うものが知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】中国特許出願公開第111166392号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、ウイルス感染症の検査を行う一連の作業工程にあっては、人体から検体を採取する作業と、その後に実際の検査を行う作業とが異なる場所で行われることがある。このため、検体の採取者と検査者とは異なる人員(作業者)となる場合がしばしばある。このような場合、スワブ等の検体採取具を採取者から、例えば手渡しで検査者に渡すことになる。
【0005】
特許文献1の場合、検体採取作業においては、採取者の手元は分離プレートで保護されるが、スワブ等の検体採取具を分離プレートから抜き取る際に、検体採取具の把持部が分離プレートに設けられた孔に擦れて抜き取ることになるので、孔の周囲に付着したウイルスや菌等がスワブの把持部に付着する虞れがある。このため、検査者等が検体採取具を把持する際に、検査者等の手や手袋にウイルスや菌等が付着してしまうという課題がある。
【0006】
本発明の目的は、例えば検体の採取者から検査者へと採取具を受け渡すとき等に接触感染等によるウイルス感染が拡がるのを抑え、医療機関における感染症検査時の作業性、安全性を向上することができるようにした検体採取装置および検査方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明は、採取者が被採取者から検体を採取する検体採取装置であって、軸状部と、該軸状部の一端に設けられ検体を採取する採取部と、前記軸状部の他端側に形成された把持部と、前記採取部と前記把持部との間に位置して前記軸状部に形成された拡径部と、からなる検体採取部材と、透明な材料からなり前記軸状部の径方向に広がる遮蔽板部と、前記検体採取部材の拡径部が係合する挿通部とからなり、前記採取者が前記被採取者から検体を採取する採取作業時に前記被採取者の発する飛沫が前記採取者に飛ぶことを抑える遮蔽部材と、を有し、前記検体採取部材は、前記挿通部に着脱可能に固定されることを特徴としている。
【0008】
また、本発明による検査方法は、軸状部と、前記軸状部の一端に設けられ検体を採取する採取部と、前記軸状部の他端側に形成された把持部と、前記採取部と前記把持部との間に位置して前記軸状部に形成された拡径部と、からなる検体採取部材を、透明な材料からなり前記軸状部の径方向に広がる遮蔽板部と、前記検体採取部材の拡径部が係合する挿通部とからなる遮蔽部材の前記挿通部に前記検体採取部材を該検体採取部材の一端から挿入して係合させる工程と、被採取者から採取物を前記採取部に採取する工程と、前記遮蔽部材の前記挿通部から前記検体採取部材の前記拡径部を取り外す工程と、前記採取部に採取された前記採取物を検査する工程とを備えている。
【0009】
また、本発明の検査方法は、軸状部と、前記軸状部の一端に設けられ検体を採取する採取部と、前記軸状部の他端側に形成された把持部と、からなる検体採取部材に対して、前記採取部と前記把持部との間に筒状のパッキン部材を取り付ける工程と、透明な材料からなる板状、可撓性膜状または袋状の遮蔽部材に設けられた挿通部に前記検体採取部材を挿入し、前記挿通部に前記パッキン部材を係合させる工程と、採取物を前記採取部に採取する工程と、前記遮蔽部材の前記挿通部から前記検体採取部材と一緒に前記パッキン部材を取り外す工程と、前記採取部に採取された前記採取物を検査する工程とを備えている。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、遮蔽部材により、採取作業時に被採取者の発する飛沫が遮蔽部材の採取者側に飛ぶことを抑え、検体採取作業等を行った後に、検体採取部材(検体採取具)の把持部にウイルスや菌等が付着するのを抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】第1の実施形態による検体採取装置を患者(被採取者)と共に示す斜視図である。
【
図2】
図1中の検体採取装置を検体採取前の状態(スワブを透明ガードに取付けた状態)で示す縦断面図である。
【
図3】検体採取装置のスワブを透明ガードから取外す途中の状態を示す
図2と同様位置の縦断面図である。
【
図4】第2の実施形態による検体採取装置のスワブを透明ガードに取付けた状態で示す縦断面図である。
【
図5】検体採取装置のスワブを透明ガードから取外す途中の状態を示す
図4と同様位置の縦断面図である。
【
図6】第3の実施形態による検体採取装置のスワブを透明ガードに取付けた状態で示す縦断面図である。
【
図7】検体採取装置のスワブを透明ガードから取外す途中の状態を示す
図6と同様位置の縦断面図である。
【
図8】
図7中の透明ガードを左側から単体として示す左側面図である。
【
図9】第4の実施形態による検体採取装置のスワブを透明ガードから取外す途中の状態を示す縦断面図である。
【
図10】第5の実施形態による検体採取装置の透明ガードをスワブと一緒に示す縦断面図である。
【
図11】第6の実施形態による検体採取装置の透明ガードをスワブと一緒に示す縦断面図である。
【
図12】第7の実施形態による検体採取装置の透明ガードをスワブと一緒に示す縦断面図である。
【
図13】第8の実施形態による検体採取装置の透明ガードをスワブと一緒に示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態による検体採取装置および検体採取具を、
図1ないし
図13を参照しつつ詳細に説明する。実施形態における検体採取装置は、被採取者(例えば、患者)からインフルエンザウイルス、コロナウイルス、溶連菌のようなウイルスや菌等の含まれる咽頭ぬぐい液、鼻咽頭ぬぐい液等の検体を採取するために用いられるものである。
【0013】
ここで、
図1ないし
図3は第1の実施形態を示している。
図1において、透明ガード1は、本実施形態の検体採取装置を後述のスワブ3(検体採取具)と共に構成する遮蔽部材である。透明ガード1は、後述の如くスワブ3により患者Pの鼻腔から検体採取を行うときに、患者Pのくしゃみ等で発生する飛沫が採取者に到達する量を軽減し、このような飛沫またはエアゾールから採取者を保護するための遮蔽部材(即ち、防御板)
の遮蔽板部を構成している。当然、透明ガード1を迂回した飛沫までは遮蔽できない。
【0014】
透明ガード1は、光透過性の材料(例えば、ポリカーボネート、アクリル樹脂等の透明プラスチック)を用いて薄板状の防御板として形成されている。透明ガード1の外径は、検体採取者の拳(コブシ)よりも大きく、例えば患者Pの顔面を覆う程度の大きさを有している。このため、透明ガード1は、その外径(直径)が例えば20~40cm(センチメートル)程度で、板厚が0.3~1.0mm(ミリメートル)程度の円形板により構成されている。なお、透明ガード1は、遮蔽性からは大きい程望ましいが、採取者の採取性からは小型軽量が望ましく、このバランスが確保されれば、大きさ等のサイズは、前述に特定されない。また、透明ガード1の形状も、遮蔽性、操作性、保管性を考慮して、円形に限らず、例えば楕円形、三角形または四角形や、人の顔の形状等の種々の形状にも変更可能である。
【0015】
また、透明ガード1の裏面(採取者S側の面)には、採取者が手で透明ガード1を持つ(把持する)ための取手1A(
図1参照)が設けられている。この取手1Aは、透明ガード1からスワブ3を外す際に採取者が把持する部位である。また、検体の採取を行う採取者は、例えば検体採取時の手袋をした一方の手で透明ガード1の取手1Aを持つことにより、透明ガード1の表面(患者P側の面)を患者の顔面に任意の距離まで近付けた状態に保持することも可能である。この上で、採取者は他方の手の指先(他方の手袋をした手)等で後述のスワブ3(把持部4B)を把持することにより、検体の採取作業を容易に行うことができる。なお、取手1Aは、
図1に示す位置や形状に限られるものではなく、指で掴める構成であれば、その取付位置や形状を適宜に変更してもよい。また、取手1Aは、透明ガード1にとって必須の構成ではなく、場合によっては取手を廃止してもよい。
【0016】
透明ガード1の中央(中心側)には、円形の孔からなる挿通部2が形成されている。挿通部2の孔径は、後述のスワブ3(特に、採取部5)を挿通部2内に余裕をもって挿通できるように、採取部5の外径よりも大きい径に形成されている。これにより、スワブ3の採取部5を透明ガード1の挿通部2内から矢示A方向(
図3参照)へと抜取るときには、採取部5が挿通部2の周囲(孔の内壁)に接触したりするのを抑え、挿通部2の内壁部分を清浄な状態に保つことができる。なお、挿通部2の孔径は、採取部5が通過できればよく、採取部5と略同径として、挿通部2の周囲に採取部5が接触してもよい。この場合、透明ガード1を利用ごとに洗浄する等の対応が必要となる。
【0017】
スワブ3は、検体採取装置の検体採取部材(検体採取具)を構成している。スワブ3は、一般に検体採取を行うときの所謂「綿棒」と同様に用いられるものである。スワブ3は、細長い棒状体からなる軸状部4と、軸状部4の一端(先端)に取付けられ検体を採取するための採取部5と、軸状部4の他端(基端)側に形成された把持部4Bと、後述の拡径部(パッキン部材8)とを含んで構成されている。スワブ3は、透明ガード1の挿通部2内に着脱可能に固定して設けられている。
【0018】
スワブ3の軸状部4は、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリビニル、ABS等の可撓性プラスチック材料を用いて、弾性変形可能な細長い棒状体として形成されている。スワブ3は、軸状部4が
図1に示す被採取者(患者P)側に向けて伸びるように配置され、軸状部4の先端(一端側)には採取部5が取付けられている。採取部5は、軸状部4の先端部に親水性素材からなるスポンジや繊維が接着等で固着されて、全周に亘って覆われた構造となっている。採取部5は、スポンジや繊維からなり、ポリウレタン、レーヨン、ポリエステル、ポリアミド、炭素繊維、アルギネート、綿等の材料で形成される。
【0019】
軸状部4は、一端側に位置する柔軟部4Aと、他端側に位置する把持部4Bとを有している。即ち、軸状部4の一端側は、柔軟性の高い柔軟部4Aとなっている。軸状部4の他端側は、柔軟性が低く、柔軟部4Aより大径の把持部4Bとなっている。柔軟部4Aは、鼻腔等の生体内に沿って自由に曲がることができるように、先端側の柔軟性を高めるために先端側に向けて小径となるようにテーパ、または、先端に向けて徐々に小径となる2段や多段形状にすることが望ましい。把持部4Bは、
図1に示すようにスワブ3を用いて検体採取を行うときに、検体の採取者が指先(手袋をした指)等で把持する部分で、進退操作以外にも、回転操作も行うので、2.5mm程度、または、それ以上の外径が望ましい。軸状部4の柔軟部4Aと把持部4Bの間には、段差部7が形成されている。
【0020】
拡径部としてのパッキン部材8は、スワブ3(検体採取具)の採取部5と把持部4Bの間、さらには、柔軟部4Aと把持部4Bの間に位置して、段差部7に当接するように軸状部4の途中に設けられている。パッキン部材8は、
図2に示す如く、その外周側が透明ガード1の挿通部2内に係合し、この状態で挿通部2を閉塞する拡径部である。パッキン部材8は、例えばゴム、エラストマ、可撓性プラスチック等の材料を用いて円錐台形状をなす栓体(例えば、コルク栓)として形成され、その中心側には軸方向に延びる内孔9が設けられている。
【0021】
なお、軸状部4のパッキン部材8が設けられるパッキン取付部4Cは、柔軟部4Aの一部であってもよいが、柔軟部4Aより剛性が高くなるように、柔軟部4Aと把持部4Bとの中間の外径としてもよい。さらには、パッキン部材8の取付けを考慮し、パッキン取付部4Cの外径を採取部5より大径としてもよい。
【0022】
ここで、パッキン部材8は、スワブ3の軸状部4を内孔9内に挿通することにより軸状部4に取付けられ、段差部7に当接することで軸状部4のパッキン取付部4Cの外周に位置決めされている。パッキン部材8は、その外形状がテーパ状をなす円錐台形状に形成され、軸方向一側よりも他側の方が大径となっている。即ち、パッキン部材8は、透明ガード1の挿通部2内に着脱可能に挿入され、挿通部2を閉塞することができるように、パッキン部材8の軸方向一側(先端側)が挿通部2の孔径よりも小径で、軸方向他側(基端側)が挿通部2の孔径よりも大径となる外形状に形成されている。なお、本実施形態では、パッキン部材8を軸状部4と別体に形成する場合を例に挙げて示したが、軸状部4の一部を拡径させた形状とすることで拡径部(パッキン部材)を軸状部に一体に形成してもよい。
【0023】
また、パッキン部材8の内孔9と軸状部4のパッキン取付部4Cの間に、軸方向に2分割された一対の半割筒体からなる筒状部材を設けてもよい。この筒状部材は、内径がパッキン取付部4Cの外径と略同径で外径が内孔9と略同径となっている。この筒状部材を設けることで、内孔9の内径を大きくすることができる。また、パッキン部材8自体を軸方向に切断されたように分割することで、軸状部4等の形状に関係なく取付けることが可能になる。さらには、パッキン部材8を熱収縮する材料で形成することで、軸状部4の任意の位置に取付けることが可能となる。パッキン部材8の取付けの際には、接着材により固定してもよい。このように、拡径部を設ける方法はどのような方法であってもよい。
【0024】
また、パッキン部材8の外形および挿通部2の形状を円形とした例で説明したが、これに限らず、取付け、取外し性を考慮した形状であれば、多角形等非円形であってもよい。さらに、第1の実施形態では、段差部7を設けた例を示したが、パッキン部材8が所定位置から採取の際に移動しなければ段差部7は必須ではなく、例えば、パッキン部材8の内孔9と軸状部4との摩擦力で移動しないようにしてもよい。この場合、市販のスワブを用いることができる。また、前述のように段差部7がない場合等は、パッキン部材8を把持部4B側から挿入することも可能である。この場合、パッキン部材8の孔径は、採取部5よりも小径にすることができる。
【0025】
第1の実施形態による検体採取装置および検体採取具(スワブ3)は、上述の如き構成を有するもので、次に、その使用方法について説明する。
【0026】
検体の採取を始める前に、スワブ3(検体採取部材)の採取部5と把持部4Bとの間に筒状のパッキン部材8を取り付ける。次に、透明ガード1(遮蔽部材)に設けられた挿通部2にスワブ3を挿入し、挿通部2にパッキン部材8を係合させる。このようにして、検体採取装置を用意する。
【0027】
例えば、
図1に示すように、患者P(被採取者)の鼻腔内から検体を採取するときには、透明ガード1の挿通部2にスワブ3を取付けた状態で、スワブ3の採取部5を患者P(被採取者)の鼻腔内に挿入するように、透明ガード1と一緒にスワブ3を手作業で移動させる。この場合、透明ガード1の挿通部2内には弾性変形可能なパッキン部材8が圧入され、挿通部2とパッキン部材8との間は、液密にシールされている。
【0028】
この状態で、検体の採取作業を行う採取者は、透明ガード1の採取者S側から透明ガード1越しに患者Pの鼻腔を確認(視認)しつつ、スワブ3の採取部5を患者の鼻腔内に挿入し、この鼻腔内から患者P(被採取者)の検体を採取する。即ち、採取物を採取部5に採取する。このような検体採取作業において、仮に患者Pが咳やくしゃみ等をした際にも、このときの飛沫が採取者S側に飛ぶのを透明ガード1により抑えることができ、採取者が飛沫に曝されるのを防止することができる。なお、検体の採取作業は、患者の鼻腔に限らず、例えば口腔内にスワブ3の採取部5を挿入し、患者Pの咽頭部から検体を採取することも可能である。この場合でも、患者Pの咳による飛沫に採取者が暴露されるのを透明ガード1により防止することができる。
【0029】
ここで、透明ガード1は、透過性の材料を用いて薄板状の防御板として形成されている。また、透明ガード1の外径は、検体採取者の拳(コブシ)よりも大きく、例えば患者Pの顔面を覆う程度の大きさを有している。このため、スワブ3による検体採取の状態では、患者Pからの飛沫が採取者S側に飛ぶのを透明ガード1により抑えることができ、採取者が飛沫に曝されるのを防止することができる。しかも、スワブ3の把持部4Bも透明ガード1により暴露は受けていないので、ウイルスや菌等が透明ガード1を越えて把持部4Bの周囲に付着したりするのを抑えることができる。
【0030】
次に、スワブ3による患者Pの検体採取が終わった状態では、
図3に示すように、透明ガード1の挿通部2内からスワブ3を採取者の手前(矢示A方向)に引抜き、スワブ3を透明ガード1から完全に分離する。即ち、透明ガード1(遮蔽部材)からスワブ3(検体採取部材)とパッキン部材8を取り外す。この状態で、採取者はスワブ3を検体の検査を行う次なる検査者へと手渡しする。検査者は、採取部5に採取された採取物を検査する。なお、透明ガード1に係合したパッキン部材8からスワブ3(検体採取部材)を取り外してもよい。
【0031】
この場合、透明ガード1は、使い捨てであってもよく、殺菌消毒して、再利用してもよい。また、スワブ3については、採取部5に検体を付着させるため、検査後は廃棄(使い捨て)される。しかし、パッキン部材8については、検査後にスワブ3の軸状部4を途中位置で裁断する等により、パッキン部材8をスワブ3から取外すことができ、この状態でパッキン部材8を殺菌消毒して、再利用することも可能である。
【0032】
かくして、第1の実施形態によれば、スワブ3による検体の採取時には、透明ガード1により採取者およびスワブ3の把持部4Bにウイルスや菌等が暴露され、付着するのを防止することができる。また、把持部4Bへのウイルスや菌等の付着が防止されるので、検体の採取者から他の検査者等にスワブ3を受け渡すようなときに、検査者の手等にウイルスや菌等が付着するようなこともなくなる。これにより、検査者等への感染防止を図ることができ、さらに、検体の検査者等が検査時やその他の作業時に、ウイルスや菌等を周囲に付着させるのを抑えることができ、院内感染のリスクを下げることができる。
【0033】
従って、第1の実施形態によれば、透明ガード1とスワブ3とからなる検体採取装置を採用することにより、例えば検体の採取作業等を行った後に、検体採取部材(検体採取具)であるスワブ3の把持部4Bにウイルスや菌等が付着するのを抑えることができる。これにより、検体の採取者から検査者へとスワブ3(採取具)を受け渡すとき等にウイルス感染が拡がるのを抑えることができ、医療機関における感染症検査時の作業性、安全性を向上することができる。
【0034】
また、透明ガード1の形状は、円形に限らず、楕円形、三角形や四角形等の多角形状であってもよい。透明ガード1の大きさは、患者(被採取者)の口や鼻を覆う大きさより大きければよく、操作性と防御性を考慮して大きさを決めればよいものである。この場合、
図1に示すように、透明ガード1に取手1Aを任意の位置と形状で設けるのが好ましい。しかし、透明ガード1に取手1Aを設けることは必須ではなく、場合によっては取手を廃止してもよい。
【0035】
次に、
図4および
図5は第2の実施形態を示している。本実施形態では、第1の実施形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。しかし、第1の実施形態が透明ガード1の採取者S側からスワブ3を抜取る構成であるのに対し、第2の実施形態の特徴は、後述のスワブ13を患者P(被採取者)側から抜取る構成としたことにある。
【0036】
ここで、透明ガード11(遮蔽部材)およびスワブ13の採取部15は、第1の実施形態で述べた透明ガード1(遮蔽部材)およびスワブ3の採取部5と同様に構成されている。しかし、透明ガード11の中心側に設けた挿通部12は、第1の実施形態で述べた挿通部2よりも小径な円形の孔として形成されている。挿通部12の孔径は、スワブ13の把持部14Bよりも大径であれば、採取部15の外径よりも小さい径に形成することも可能である。即ち、スワブ13を透明ガード11の挿通部12内から抜取るときには、
図5中の矢示B方向にスワブ13を移動させるので、採取部15が挿通部12の周囲(孔の内壁)に接触したりすることはなく、挿通部12の内壁部分を清浄な状態に保つことができる。
【0037】
検体採取装置の検体採取部材(検体採取具)を構成するスワブ13は、第1の実施形態で述べたスワブ3とほぼ同様に形成され、軸状部14と、軸状部14の一端(先端)に設けられ検体を採取するための採取部15と、軸状部14の他端(基端)側に形成された把持部14Bと、後述の拡径部(パッキン部材18)とを含んで構成されている。
【0038】
軸状部14の柔軟部14Aは、把持部14Bに向かって拡径するテーパ形状となっており、把持部14B側に大径部14Cが形成されている。この大径部14Cと把持部14Bとの間には、段差部17が形成されている。段差部17は、後述のパッキン部材18(拡径部)を軸状部14の途中部位に位置決めするための段差で、パッキン部材18が軸状部14の大径部14C側へと軸状部14に沿って相対移動するのを防ぐ構成となっている。
【0039】
拡径部としてのパッキン部材18は、スワブ13(検体採取具)の採取部15と把持部14Bの間に位置して軸状部14の途中に設けられている。パッキン部材18は、
図4に示す如く、その外周側が透明ガード11の挿通部12内に係合し、この状態で挿通部12を閉塞する拡径部である。パッキン部材18は、第1の実施形態で述べたパッキン部材8とほぼ同様に円錐台形状に形成されているが、パッキン部材8よりもパッキン部材18の方が外径寸法を小さくできる。
【0040】
そして、パッキン部材18の外径寸法は、軸方向一側(患者P側)の方が軸方向の他側(採取者S側)よりも大径なテーパ形状に形成されている。即ち、パッキン部材18は、透明ガード11の挿通部12内に着脱可能に挿入され、挿通部12を閉塞することができるように、パッキン部材18の軸方向一側(先端側)が挿通部12の孔径よりも大径で、軸方向他側(基端側)が挿通部12の孔径よりも小径となる外形状に形成されている。
【0041】
パッキン部材18の中心側には軸方向に延びる内孔19が設けられている。パッキン部材18は、スワブ13の軸状部14の把持部14Bを内孔19内に挿通することにより軸状部14に取付けられ、段差部17に当接することで軸状部14の外周に位置決めされる。なお、本実施形態では、パッキン部材18を軸状部14と別体に形成する場合を例に挙げて示したが、軸状部14の一部を拡径させることで拡径部(パッキン部材)を軸状部に一体に形成してもよい。
【0042】
かくして、このように構成される第2の実施形態では、患者P(被採取者)側から検体を採取するときに、透明ガード11の挿通部12内にスワブ13(検体採取具)を被採取者(患者P)側から挿入する。この挿入作業においては、挿通部12にパッキン部材18が圧入され、挿通部12とパッキン部材18との間は液密にシールされる。
【0043】
この状態で、検体の採取作業を行う採取者は、透明ガード11の採取者S側から透明ガード11越しに患者P側の鼻腔位置等を確認(視認)しつつ、スワブ13の採取部15を患者の鼻腔(図示せず)内に挿入し、この鼻腔内から検体を採取する。このような検体採取作業において、仮に患者が咳やくしゃみ等をした際にも、このときの飛沫が採取者S側に飛ぶのを透明ガード11により抑えることができ、採取者が飛沫に曝されるのを防止することができる。
【0044】
検体を採取した状態では、透明ガード11により把持部14Bも暴露を受けていないので、ウイルスや菌等が把持部14Bに付着するのを抑えることができる。そして、検体の採取後には、
図5に示すように、透明ガード11の挿通部12内からスワブ13を矢示B方向(被採取者側)に取出し、取出しスワブ13を検体の検査者へと手渡すことができる。この取出し作業においては、スワブ3を掴むことができる器具(例えば、ピンセット等)を用いることが望ましい。この場合、パッキン部材18も取り外した後に検査者に渡してもよい。
【0045】
このように、第2の実施形態では、第1の実施形態と同様な効果を得ることができる。特に、第2の実施形態では、透明ガード11の挿通部12の径を小径とすることが可能で、シール性が高まるという効果がある。しかも、患者P側にスワブ13を矢示B方向(
図5参照)へと取出し構成としているので、この引抜きの際に透明ガード11の挿通部12に把持部14Bが触れないようにすればよく、スワブ13の採取部15が挿通部12の内壁等に接触することはなくなる。また、第2の実施形態では、パッキン部材18をスワブ13(軸状部14)の把持部14B側に設けているので、パッキン部材18を軸状部14から容易に外すことができ、パッキン部材18の再利用の可能性を高めることができる。
【0046】
次に、
図6ないし
図8は第3の実施形態を示している。本実施形態の特徴は、遮蔽部材の挿通部に対する検体採取具(検体採取部材)の取付けを、嵌合、ねじ止め(螺合)等の手段を用いて着脱可能にし、より確実な装着を行い得る構成としたことにある。なお、第3の実施形態では、第1の実施形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。
【0047】
第3の実施形態で採用した透明ガード21(即ち、遮蔽部材)およびスワブ23(検体採取部材、検体採取具)の採取部25は、第1の実施形態で述べた透明ガード1(遮蔽部材)およびスワブ3の採取部5とほぼ同様に構成されている。しかし、透明ガード21の中央(中心側)には、第1の実施形態で述べた挿通部2とほぼ同径または、これよりも大径に形成された貫通孔21A(挿通孔)が設けられている。
【0048】
透明ガード21の貫通孔21A内には、円筒部材22(筒状部)の軸方向一側が嵌合等の手段で一体化するように固定されている。円筒部材22は、透明ガード21の貫通孔21Aと共に遮蔽部材の挿通部を構成している。円筒部材22の軸方向他側は、貫通孔21Aの位置から採取者S側に向けて軸方向に延び、その外周側には雄ねじ部22Aが形成されている。円筒部材22(即ち、筒状部)は、その軸方向一側が患者P(被採取者)側に開口した状態で、透明ガード21の貫通孔21A内に固定されている。
【0049】
円筒部材22の内径は、スワブ23の採取部25を円筒部材22の内側に余裕をもって挿通できるように、採取部25の外径よりも十分に大きい径に形成されている。これにより、スワブ23の採取部25を透明ガード21の円筒部材22内から矢示A方向(
図7参照)へと抜取るときには、採取部25が円筒部材22の内周面(内壁)に接触したりするのを抑え、円筒部材22の内周面(内壁)を清浄な状態に保つことができる。
【0050】
なお、透明ガード21の貫通孔21Aと円筒部材22の外周面との間には、例えばOリング等のシール部材を設けることにより、円筒部材22を透明ガード21の内周側に液密に取付けることができる。貫通孔21Aと円筒部材22とで本発明の挿通部が構成される。また、透明ガード21と円筒部材22とは、同一の材料で一体成形する構成としてもよい。
【0051】
ここで、透明ガード21の裏面(採取者S側の面)には、
図8に示すように、採取者が手で透明ガード21を持つ(把持する)ための取手21B,21Bが設けられている。これらの取手21Bは、透明ガード21の裏面側で円筒部材22を径方向の両側から挟むような位置に配置されている。この取手21B,21Bは、透明ガード21からスワブ3を外す際に採取者が把持する部位である。また、検体の採取を行う採取者は、例えば一方の手で透明ガード21の取手21Bのいずれかを持つことによって、透明ガード21の表面(患者P側の面)を患者の顔面に任意の距離まで近付けた状態に保持することもできる。この上で、採取者は他方の手の指先等でスワブ23の把持部24Bを把持することにより、検体の採取作業を容易に行うことができる。なお、取手21Bは、
図8に示す位置や形状に限られるものではなく、その取付位置や形状を適宜に変更してもよい。また、取手21Bは、透明ガード21にとって必須の構成ではなく、場合によっては取手を廃止してもよい。
【0052】
検体採取装置の検体採取部材(検体採取具)を構成するスワブ23は、第1の実施形態で述べたスワブ3とほぼ同様に形成され、軸状部24と、軸状部24の一端(先端)に設けられ検体を採取するための採取部25と、軸状部24の他端(基端)側の把持部24Bと、後述の拡径部(キャップ部材28)とを含んで構成されている。スワブ23の軸状部24は、軸方向の一側から他側にわたってほぼ等しい外径に形成してもよいが、先端側をテーパ状に小径とすることで、柔軟部24Aとすることが望ましい。
【0053】
軸状部24の軸方向中間位置には、軸状部24の外周側に後述のキャップ部材28を着脱可能に固定するための位置決め部材27が設けられている。位置決め部材27は、例えば弾性変形可能なシール材料により形成され、キャップ部材28の孔28C内で、底部28Bをスワブ23の軸状部24に対し弾性的な締代を与えて位置決めする。これにより、キャップ部材28は軸状部24の外周側に着脱可能に固定され、軸状部24に対する軸方向変位が規制される。
【0054】
スワブ23の軸状部24には、採取部25と把持部24Bとの間に位置して有底筒状のキャップ部材28が設けられている。キャップ部材28は、円筒部材22(挿通部)に係合して円筒部材22を軸方向他側(採取者S側)から閉塞する拡径部を構成している。キャップ部材28は、例えばプラスチック材料を用いて筒部28Aと底部28Bとを有する有底筒状の部材として形成されている。キャップ部材28の底部28Bには、その中心側にスワブ23の軸状部24が軸方向に挿通される小径の孔28Cが形成されている。
【0055】
キャップ部材28の孔28C内には、スワブ23の軸状部24が挿入され、軸状部24の外周に設けられた位置決め部材27により、キャップ部材28の底部28Bは軸状部24に対し着脱可能に固定されている。また、キャップ部材28の筒部28Aには、その内周側に雌ねじ部28Dが形成され、雌ねじ部28Dは円筒部材22の雄ねじ部22Aに着脱可能に螺着される。キャップ部材28の筒部28Aは、その先端側を患者P(被採取者)に開口させる向きで円筒部材22の外周側に螺着される。このとき、キャップ部材28の底部28Bは、円筒部材22を軸方向他側(採取者S側)から覆い、円筒部材22の軸方向他側を閉塞する構成としている。
【0056】
第3の実施形態によると、遮蔽部材(即ち、透明ガード21)の挿通部は、透明ガード21の内周側に形成された挿通孔(即ち、貫通孔21A)と、前記挿通孔の周囲から軸方向に延出するように設けられた筒状部(即ち、円筒部材22)とから構成されている。そして、検体採取部材(即ち、スワブ23)の拡径部(即ち、キャップ部材28)は、前記筒状部(円筒部材22)に係合(螺着)された際に、前記筒状部(円筒部材22)の内部と外部とを隔絶する。また、前記拡径部は、筒部28Aを有する有底筒状のキャップ部材28からなり、筒部28Aと前記筒状部(円筒部材22)とが係合(螺合)する構成としている。
【0057】
次に、このように構成される第3の実施形態の検体採取装置について、その使用方法を説明する。なお、第1の実施形態と同様の作用については、その説明を省略する。
【0058】
患者(被採取者)から検体を採取するときには、透明ガード21に設けられた円筒部材22の雄ねじ部22Aに、スワブ23側のキャップ部材28(雌ねじ部28D)を螺着することで、透明ガード21に対してスワブ23を着脱可能に取付けておく。この状態で、円筒部材22とキャップ部材28とは、雄ねじ部22Aと雌ねじ部28Dを螺合(螺着)することにより、両者間は液密にシールされる。なお、キャップ部材28の底部28Bに可撓性のシールを設けることで、円筒部材22とキャップ部材28との間を底部28B側でシールする構成としてもよい。
【0059】
次に、この状態でスワブ23により被採取者から検体を採取する。この検体採取作業は、第1の実施形態とほぼ同様に行われるので、患者が咳やくしゃみ等をして飛沫を飛ばした際にも、透明ガード21により検体の採取者が暴露するのを防止することができる。また、検体を採取した状態では、透明ガード21により把持部24Bの暴露を防ぐことができるので、ウイルスや菌等が把持部24Bに付着するのを抑えることができる。
【0060】
一方、円筒部材22は、その軸方向一側が患者P(被採取者)側に開口した状態で透明ガード21の貫通孔21A内に固定されている。このため、円筒部材22の内周側とキャップ部材28の底部28Bとは、患者P(被採取者)側からウイルスや菌等が付着する可能性がある。しかし、透明ガード21の円筒部材22内からスワブ23を取外すときには、キャップ部材28の筒部28Aの外周面や底部28Bの外面(採取者S側の面)には、ウイルスや菌等が付着することはない。このため、透明ガード21の円筒部材22内からスワブ23をキャップ部材28と一緒に取外すときには、採取者等の手にウイルスや菌等が付着するのを抑えることができる。
【0061】
また、採取者がスワブ23の把持部24Bを把持しつつ、スワブ23を検体の検査者等に手渡すときにも、本実施形態では、大径の有底筒状のキャップ部材28を用いているので、キャップ部材28の底部28Bによって患者P(被採取者)側からウイルスや菌等の飛沫が採取者S側へと飛散(移動)するのを遮断できる。これにより、スワブ23の把持部24B側に誤ってウイルスや菌等が付着するのを防ぐことができ、円筒部材22の内周側にもスワブ23の採取部25が誤って接触したりするのを抑えることができる。
【0062】
また、第3の実施形態では、円筒部材22の雄ねじ部22Aにキャップ部材28の雌ねじ部28Dを螺着する構成としているから、円筒部材22に対するキャップ部材28の脱着を容易に行うことができ、
図7中の矢示A方向でのスワブ23の抜取り作業を容易にかつ確実に行うことができる。さらに、円筒部材22に対するキャップ部材28の取付け作業(即ち、透明ガード21に対するスワブ23の取付作業)も容易かつ確実に行うことができる。
【0063】
一方、透明ガード21の裏面(採取者S側の面)には、
図8に示すように、採取者が手で透明ガード21を持つ(把持する)ための取手21B,21Bが設けられている。検体の採取者は、例えば一方の手で透明ガード21の取手21Bのいずれかを持つことにより、透明ガード21の表面(患者P側の面)を患者の顔面に任意の距離まで近付けた状態に保持することができる。また、透明ガード21の円筒部材22内からスワブ23を取外すときには、円筒部材22に対してキャップ部材28を螺合解除の方向に廻す作業を、取手21Bを持って透明ガード21の動きを抑えることにより、円筒部材22に対するキャップ部材28の脱着を容易に行うことができる。
【0064】
なお、取手21Bは、
図8に示す位置や形状に限られるものではなく、その取付位置や形状を適宜に変更してもよい。また、取手21Bは、透明ガード21にとって必須の構成ではなく、場合によっては取手を廃止してもよい。また、スワブ23の軸状部24に設ける有底筒状のキャップ部材28は、例えばペットボトルの蓋等を代用して用いることができる。
【0065】
一方、第3の実施形態では、円筒部材22の外周側に雄ねじ部22Aを設け、キャップ部材28の筒部28Aの内周側に雌ねじ部28Dを設ける場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限らず、例えば円筒部材の内周側に雌ねじ部を設け、キャップ部材の筒部外周側に雄ねじ部を設ける構成とし、キャップ部材の筒部を円筒部材の内周側に螺合させる構成としてもよい。
【0066】
次に、
図9は第4の実施形態を示している。本実施形態では、第3の実施形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。しかし、第4の実施形態の特徴は、透明ガード31の内周側31Aに円筒部材32(筒状部)を一体に形成し、スワブ33の軸状部34にはキャップ部材37(拡径部)を一体に形成する構成としたことにある。
【0067】
第4の実施形態で採用した透明ガード31(即ち、遮蔽部材)は、第3の実施形態で述べた透明ガード21(遮蔽部材)とほぼ同様に構成されている。しかし、本実施形態で採用した透明ガード31は、その内周側31Aに円筒部材32が一体に形成されている。円筒部材32は、第3の実施形態で述べた円筒部材22(挿通部)と同様に、その軸方向一側が患者P(被採取者)側に開口した状態で、透明ガード31の内周側31Aに一体形成されている。円筒部材32の軸方向他側は、透明ガード31の内周側31Aから採取者S側に向けて軸方向に延び、その外周側には雄ねじ部32Aが形成されている。円筒部材32は、透明ガード31(遮蔽部材)の内周側31Aで挿通部を構成している。
【0068】
円筒部材32は、第3の実施形態で述べた円筒部材22と同様な構成を有している。円筒部材32の内径は、採取部35の外径よりも十分に大きい径に形成されている。また、透明ガード31の裏面(採取者S側の面)には、第3の実施形態で述べた透明ガード21と同様に採取者が手で透明ガード31を持つ(把持する)ための取手(図示せず)が設けられている。しかし、このような取手は、透明ガード31にとって必須の構成ではなく、場合によっては取手を廃止してもよい。
【0069】
第4の実施形態で採用したスワブ33(検体採取部材、検体採取具)は、第3の実施形態で述べたスワブ23と同様に、軸状部34と、軸状部34の一端(先端)側に設けられ検体を採取するための採取部35と、軸状部34の他端(基端)側に形成された把持部34Bと、拡径部(キャップ部材37)とを含んで構成されている。しかし、本実施形態で採用したスワブ33は、軸状部34の途中位置にキャップ部材37が一体に形成されている点で、第3の実施形態とは相違している。なお、スワブ33の軸状部34は、軸方向の一側から他側にわたってほぼ等しい外径に形成してもよいが、先端側をテーパ状に小径とすることで、柔軟部34Aとすることが望ましい。
【0070】
有底筒状のキャップ部材37は、スワブ33の採取部35と把持部34Bとの間に位置して軸状部34の外周側に一体化して設けられている。キャップ部材37は、円筒部材32(挿通部)に係合して円筒部材32を軸方向他側(採取者S側)から閉塞する拡径部を構成している。キャップ部材37は、軸状部34と同一の材料を用いて筒部37Aと底部37Bとを有する有底筒状体として形成されている。また、キャップ部材37の筒部37Aには、その内周側に雌ねじ部37Cが形成されている。雌ねじ部37Cは、円筒部材32の雄ねじ部32Aに着脱可能に螺着される。キャップ部材37の筒部37Aは、その先端側を患者P(被採取者)に開口させる向きで円筒部材32の外周側に螺着される。このとき、キャップ部材37の底部37Bは、円筒部材32を軸方向他側(採取者S側)から覆い、円筒部材32の軸方向他側を閉塞する構成としている。
【0071】
かくして、このように構成される第4の実施形態でも、第3の実施形態と同様な効果を得ることができる。特に、第4の実施形態では、透明ガード31の内周側31Aに円筒部材32を一体に形成し、スワブ33の軸状部34にはキャップ部材37を一体に形成している。このため、検体採取装置の部品点数を減らすことができ、部品管理を簡素化することができる。そして、全体の構成を簡略化でき、組立て時の作業性を高めることができる。
【0072】
次に、
図10は第5の実施形態を示している。本実施形態では、第3の実施形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。しかし、第5の実施形態の特徴は、透明ガード41の内周側に大径孔41Aを形成し、大径孔41Aと円筒部材42との間には、例えばゴム等からなる可撓性の環状膜43を接着等の手段で設ける構成としたことにある。
【0073】
第5の実施形態で採用した透明ガード41(即ち、遮蔽部材)は、第3の実施形態で述べた透明ガード21(遮蔽部材)とほぼ同様に構成されている。しかし、本実施形態で採用した透明ガード41は、その内周側に大径孔41Aが形成されている。大径孔41Aの内側には、可撓性の環状膜43を介して円筒部材42が設けられている。円筒部材42は、第3の実施形態で述べた円筒部材22(挿通部)と同様に、その軸方向一側が患者P(被採取者)側に開口した状態で、環状膜43の内周側に固定または接着して設けられている。円筒部材42の軸方向他側は、環状膜43の内周側から採取者S側に向けて軸方向に延びている。円筒部材42の外周側には、雄ねじ部42Aが形成されている。円筒部材42は、透明ガード41(遮蔽部材)の内周側で環状膜43と共に挿通部を構成している。
【0074】
ここで、環状膜43は、透明ガード41の大径孔41Aの内側で円筒部材42を変位可能に支持し、透明ガード41に対する円筒部材42の傾きを許し、上,下方向および左,右方向への動きを可能にしている。このため、スワブ23を、キャップ部材28を介して円筒部材42に取付けた状態では、スワブ23の先端の採取部25を、透明ガード41を動かすことなく、細かく動かすことができ、検体の採取作業を高い自由度をもって行うことができる。
【0075】
環状膜43は、患者P(被採取者)側からウイルスや菌等の飛沫が採取者S側へと飛散(移動)するのを透明ガード41と一緒に遮断するものである。なお、透明ガード41の大径孔41Aに対する環状膜43の取付け、円筒部材42に対する環状膜43の取付けは、接着以外の手段として溶着手段を用いてもよく、嵌合手段等を用いて環状膜43の取付けを行う構成としてもよい。
【0076】
透明ガード41の外周側には、患者P(被採取者)側に向けて拡開するようにテーパ状に傾斜した拡開部41Bが一体に形成されている。なお、透明ガード41は、全体的に椀状に形成してもよい。また、透明ガード41の裏面(採取者S側の面)には、第3の実施形態で述べた透明ガード21と同様に採取者が手で透明ガード41を持つ(把持する)ため、突起状の取手41C,41Cが設けられている。取手41Cは、透明ガード41と一体成形してもよく、取手41Cの形状や位置は適宜に変更してもよい。
【0077】
かくして、このように構成される第5の実施形態でも、第3の実施形態と同様な効果を得ることができる。特に、第5の実施形態では、検体採取作業の際にスワブ23を透明ガード41に対し、環状膜43により角度を変えて、上,下方向または左,右方向へと自由に動かすことが可能になるので、透明ガード41を細かく動かさずに採取が可能になり、検体の採取作業性が向上することができる。この場合、透明ガード41をより大きくすることが可能になる。
【0078】
また、透明ガード41の裏面(採取者S側の面)に取手41Cを設けているので、採取者は取手41Cを持つことにより透明ガード41を保持することができる。これにより、採取者が透明ガード41の表面側(即ち、患者P側の面)を誤って触るのを防止できる。また、透明ガード41を持つことが可能な部分が増えるので、透明ガード41に対するスワブ23の取付け、取外しを容易に行うことができる。
【0079】
さらに、透明ガード41の外周側に拡開部41Bを設けたり、透明ガード41を椀状に形成したりすることで、検体採取時における患者P(被採取者)側でのウイルスや菌等の飛散領域を狭めることができ、周囲への飛散を抑えることができる。これによって、透明ガード41の外径を小さくすることも可能となる。
【0080】
次に、
図11は第6の実施形態を示している。本実施形態では、第5の実施形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。しかし、第6の実施形態の特徴は、透明ガード41の大径孔41Aと円筒部材42との間に、同心円状の蛇腹等からなる可撓性の環状膜51を接着等の手段で設ける構成としたことにある。
【0081】
かくして、このように構成される第6の実施形態でも、第5の実施形態と同様な効果を得ることができる。特に、第6の実施形態では、透明ガード41の大径孔41Aと円筒部材42との間に、同心円状の蛇腹等からなる可撓性の環状膜51を設けているので、蛇腹状の環状膜51により弾性変形の自由度を高め、検体採取作業の際にスワブ23を透明ガード41に対し、環状膜51でより自由に角度を変えて、上,下方向または左,右方向へと自由に動かすことが可能になり、検体採取時の作業性を向上することができる。
【0082】
なお、第6の実施形態で採用した蛇腹状の環状膜51についても、透明ガード41の大径孔41Aおよび/または円筒部材42に対する取付けは、接着以外に溶着手段を用いてもよく、嵌合手段等を用いて環状膜51の取付けを行う構成としてもよい。
【0083】
次に、
図12は第7の実施形態を示している。本実施形態では、第3の実施形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。しかし、第7の実施形態の特徴は、遮蔽部材としての透明ガード61を、可撓性膜状または袋状体として形成したことにある。
【0084】
ここで、本実施形態で採用した透明ガード61は、第3の実施形態で採用した透明ガード21とほぼ同様に形成された板状の前面板部62と、前面板部62の左,右両側の端部と上側の端部とに接合して設けられ、例えば患者P(被採取者)の頭部を上方から覆う袋状に形成されたカバー部63とから構成されている。カバー部63は、例えばポリエチレン袋等と同様な透明の材料で形成され、板状の前面板部62と一緒に患者P(被採取者)の頭部を覆うような袋状体を構成している。なお、カバー部63の後頭部側には、呼吸用の孔を設けてもよい。
【0085】
透明ガード61の前面板部62には、第3の実施形態で述べた透明ガード21と同様に円形の貫通孔62Aが形成されている。貫通孔62A内には、第3の実施形態と同様に円筒部材22の軸方向一側が嵌合等の手段で一体化するように固定されている。円筒部材22は、透明ガード61(前面板部62)の貫通孔62Aと共に遮蔽部材の挿通部を構成している。そして、円筒部材22には、第3の実施形態と同様にスワブ23がキャップ部材28を介して着脱可能に取付けられている。
【0086】
かくして、このように構成される第7の実施形態でも、第3の実施形態とほぼ同様な作用効果を得ることができる。しかし、第7の実施形態では、遮蔽部材としての透明ガード61を、前面板部62と、これに一体化された袋状のカバー部63により構成し、全体を可撓性膜状または袋状体として形成している。このため、検体の採取時には、例えば患者P(被採取者)の頭部を透明ガード61の前面板部62とカバー部63とにより、
図12に示すように覆った状態に保つことができる。
【0087】
このように、透明ガード61の前面板部62とカバー部63とは、検体の採取時に患者P(被採取者)の頭部を上側から覆った状態に保つことにより、患者P(被採取者)のくしゃみ等に伴う飛沫が透明ガード61の外側へと拡散するのを抑えることができ、ウイルスや菌等が周囲に飛散するのを未然に防止できる。この場合、透明ガード61の前面板部62を小さくすることが可能であり、場合によっては、前面板部62をなくしてカバー部63だけで遮蔽部材(透明ガード)を構成することも可能となる。この場合の遮蔽部材(透明ガード)は、患者P(被採取者)の頭部を上側から覆う「しなやかな袋状体」として形成することができる。
【0088】
次に、
図13は第8の実施形態を示している。本実施形態では、第2の実施形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。しかし、第8の実施形態の特徴は、透明ガード71の内周側に円筒部材72を設け、円筒部材72の内周にパッキン部材18を介してスワブ13を着脱可能に取付ける構成としたことにある。
【0089】
第8の実施形態で採用した透明ガード71(即ち、遮蔽部材)は、第2の実施形態で述べた透明ガード11(遮蔽部材)とほぼ同様に構成されている。しかし、透明ガード71の中央(中心側)には、第2の実施形態で述べた挿通部12とほぼ同径または、これよりも大径に形成された貫通孔71A(挿通孔)が設けられている。
【0090】
透明ガード71の貫通孔71A内には、円筒部材72の軸方向一側が嵌合等の手段で一体化するように固定されている。円筒部材72は、透明ガード71の貫通孔71Aと共に遮蔽部材の挿通部を構成している。円筒部材72の軸方向他側は、貫通孔71Aの位置から採取者S側に向けて軸方向に延びている。円筒部材72は、その軸方向一側が患者P(被採取者)側に開口した状態で、透明ガード71の貫通孔71A内に固定されている。
【0091】
円筒部材72の内径は、スワブ13の把持部14Bよりも大径であれば、採取部15の外径よりも小さい径に形成することもできる。即ち、スワブ13を透明ガード71の円筒部材72内から抜取るときには、
図13中の矢示B方向にスワブ13を移動させるので、採取部15が挿通部12の周囲(孔の内壁)に接触したりすることはなく、円筒部材72の内周面を清浄な状態に保つことができる。
【0092】
このように構成される第8の実施形態では、検体を採取する際に、透明ガード71の円筒部材72内に検体採取部材(スワブ13)を患者P(被採取者)側から挿入する。この挿入作業においては、円筒部材72の内周にスワブ13のパッキン部材18が圧入され、円筒部材72とパッキン部材18との間は、液密にシールされる。
【0093】
この状態で、スワブ13の先端側(採取部15)で患者(被採取者)から検体を採取する。この検体採取作業において、患者が咳やくしゃみ等をした際にも、透明ガード71により採取者が暴露することを防止できる。そして、検体を採取した状態では、透明ガード71によりスワブ13の把持部14Bも暴露を受けていないので、ウイルスや菌等が把持部14Bに付着するのを防ぐことができる。
【0094】
次に、検体の採取後には、透明ガード71の円筒部材72内からパッキン部材18と一緒にスワブ13を患者P(被採取者)側へと矢示B方向に取出し、検体を検査する検査者に手渡す。即ち、スワブ13のパッキン部材18を透明ガード71の円筒部材72内から抜取るときには、
図13中の矢示B方向にスワブ13を移動させるので、採取部15が円筒部材72の内壁に接触したりすることはなく、円筒部材72の内壁部分を清浄な状態に保つことができる。また、円筒部材72はスワブ13の取出しの際にガイドとして機能するので、容易かつ安全にスワブ13を取出すことができる。
【0095】
ここで、パッキン部材18(拡径部)または円筒部材72(挿通部)の少なくとも一方は可撓性材料により形成され、前記拡径部は前記挿通部に嵌合することで両者は係合される。これにより、円筒部材72とパッキン部材18との間をシールすることができ、患者が咳やくしゃみ等をした際にも、ウイルスや菌等を良好に遮断することができる。
【0096】
また、本発明は、前記各実施形態で記載した構成に限られるものではなく、例えば第1ないし第8の実施形態に記載の構成要素については、適宜に組合せて用いてもよいものである。また、第1の実施形態で述べた遮蔽部材としての透明ガード1等は、消毒殺菌等を行うことにより、再利用することが可能である。これらの点は、第2ないし第8の実施形態につても同様である。
【符号の説明】
【0097】
1,11,21,31,41,61,71 透明ガード(遮蔽部材)
2,12 挿通部
3,13,23,33 スワブ(検体採取部材、検体採取具)
4,14,24,34 軸状部
4B,14B,24B,34B 把持部
5,15,25,35 採取部
8,18 パッキン部材(拡径部)
22,32,42 円筒部材(筒状部、挿通部)
28,37 キャップ部材(拡径部)
28A,37A 筒部
21A,62A 貫通孔(挿通孔)