(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-20
(45)【発行日】2022-09-29
(54)【発明の名称】金属スズ環化のペリレンビスイミド誘導体および調製方法と応用
(51)【国際特許分類】
C07F 7/22 20060101AFI20220921BHJP
A61K 31/555 20060101ALI20220921BHJP
A61K 41/00 20200101ALI20220921BHJP
H01L 51/50 20060101ALI20220921BHJP
H01L 51/40 20060101ALI20220921BHJP
H01L 51/30 20060101ALI20220921BHJP
H01L 51/00 20060101ALI20220921BHJP
C07B 61/00 20060101ALN20220921BHJP
【FI】
C07F7/22 S CSP
A61K31/555
A61K41/00
C07F7/22 T
H05B33/14 B
H05B33/22 B
H05B33/22 D
H01L29/28 310J
H01L29/28 250H
H01L29/28 100Z
C07B61/00 300
(21)【出願番号】P 2020564627
(86)(22)【出願日】2020-06-30
(86)【国際出願番号】 CN2020099587
(87)【国際公開番号】W WO2021135133
(87)【国際公開日】2021-07-08
【審査請求日】2020-11-17
(31)【優先権主張番号】201911396285.4
(32)【優先日】2019-12-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】513324321
【氏名又は名称】大連理工大学
(74)【代理人】
【識別番号】100130111
【氏名又は名称】新保 斉
(72)【発明者】
【氏名】陳 令成
(72)【発明者】
【氏名】張 文重
(72)【発明者】
【氏名】肖 義
【審査官】中島 芳人
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/022491(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07F 7/
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の一般的な構造式で表される金属スズ環化のペリレンビスイミド誘導体。
【化1】
[式中:R1とR2はそれぞれ独立して水素原子、置換基を有していてもよいまたは有していなくてもよい基から選択され、置換基を有していてもよいまたは有していなくてもよい基としては、炭素数1~60のアルキル基、炭素数1~60のアルコキシ基、炭素数3~60のシクロアルキル基、炭素数5~60のアリール基、炭素数1~60のアルキルアリール基、炭素数1~60のアルキルヘテロアリール基、炭素数1~60のアルキル複素環基、炭素数1~60のアルキレンオキシアルキル基、炭素数1~60のアルキレンオキシアリール基、炭素数1~60のアルキレンオキシヘテロアリール基、または炭素数1~60のアルキレンオキシ複素環基が挙げられる。]
【請求項2】
前記置換基を有していてもよいまたは有していなくてもよい基としては、置換基を有していてもよいまたは有していなくてもよいメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、エイコシル基、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、イソプロピルオキシ基、n-ブトキシ基、sec-ブチルオキシ基、イソブチルオキシ基、tert-ブチルオキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、ヘプチルオキシ基、オクチルオキシ基、ノニルオキシ基、デシルオキシ基、ウンデシルオキシ基、ドデシルオキシ基、トリデシルオキシ基、テトラデシルオキシ基、ペンタデシルオキシ基、ヘキサデシルオキシ基、ヘプタデシルオキシ基、オクタデシルオキシ基、ノナデシルオキシ基、イコシルオキシ基、フェニル基、ナフチル基、アントラセニル基、フェナントリル基、テトラフェニル、ペンタフェニル、ヘキサフェニル、ピレニル基、インデニル基、ビフェニル基、フルオレニル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロノニル基、シクロデシル基、シクロウンデシル基、シクロドデシル基、シクロトリデシル基、シクロテトラデシル基、シクロペンタデシル基、シクロヘキサデシル基、 シクロヘプタデシル基、シクロオクタデシル基、シクロノナデシル基、シクロイコシル基、チエニル基、ピロリル基、フラニル基、セレノフェニル基、チロリル基、テルリル基、オキサゾリル基、ピリジル基またはピリミジニル基が挙げられることを特徴とする、請求項1に記載の金属スズ環化のペリレンビスイミド誘導体。
【請求項3】
置換基としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n-ブチル、セク-ブチル、イソブチル、tert-ブチル、ヒドロキシル、メルカプト、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、シアノ基、アルデヒド基、エステル基、スルホン酸基、スルフィン酸基、ニトロ基、アミノ基、イミノ基、カルボキシル基およびヒドラジン基のうちの少なくとも1種が挙げられることを特徴とする、請求項2に記載の金属スズ環化のペリレンビスイミド誘導体。
【請求項4】
化合物Aをビス(トリブチルスズ)と混合し、触媒と有機溶媒を添加し、撹拌・加熱して反応を起こして前記金属スズ環化のペリレンビスイミド誘導体が得られることを特徴とする請求項1に記載の金属スズ環化のペリレンビスイミド誘導体の調製方法。
【化2】
[
式中:R1とR2はそれぞれ独立して水素原子、置換基を有していてもよいまたは有していなくてもよい基から選択され、置換基を有していてもよいまたは有していなくてもよい基としては、炭素数1~60のアルキル基、炭素数1~60のアルコキシ基、炭素数3~60のシクロアルキル基、炭素数5~60のアリール基、炭素数1~60のアルキルアリール基、炭素数1~60のアルキルヘテロアリール基、炭素数1~60のアルキル複素環基、炭素数1~60のアルキレンオキシアルキル基、炭素数1~60のアルキレンオキシアリール基、炭素数1~60のアルキレンオキシヘテロアリール基、または炭素数1~60のアルキレンオキシ複素環基が挙げられる。]
【請求項5】
前記調製方法の加熱温度は、90~180℃であり、反応時間が1~30時間であり、ビス(トリブチルスズ)の混合量が化合物Aの量の0.5~10倍であり;前記溶剤としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、窒素メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスファミド、スルホラン、アセトニトリルおよびベンゾニトリルのうちの1種または複数種が挙げられ;
前記触媒としては、酢酸パラジウムまたはトリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウムが挙げられる、
ことを特徴とする、請求項4に記載の金属スズ環化のペリレンビスイミド誘導体の調製方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機半導体材料分野に属し、特に、金属スズ環化のペリレンビスイミド誘導体および調製方法と応用に関する。
【背景技術】
【0002】
ペリレンビスイミドは、3,4,9,10-ペリレンテトラカルボン酸ジイミドの略で、分子全体が中央のペリレン環骨格と両側の2つのカルボン酸イミドで構成されている。利点は、可視域に強い吸収、高いモル吸光係数、蛍光量子収率、優れた光安定性および熱安定性等を有し、特性に優れた有機半導体材料である。ペリレンビスイミドのベイ位置は、両側のイミド電子吸引基の影響を受け、反応性が高く、芳香族求電子置換反応を起こしやすいため、ペリレンビスイミドのベイ位置にハロゲンやニトロ等の活性基を導入して母体に対してより複雑な化学修飾を行うことができる。近年、ベイ位置の環形成反応は、共役面を拡大し、分子の電子構造を調整できるため、科学的研究者が先を争って研究するホットスポットとなり、この中にはヘテロ原子(セレン原子、窒素原子、酸素原子、シリコン原子等のヘテロ原子)をペリレンビスイミドのベイ位置に導入して環を形成して、分子の物理的および化学的性質を調整することが、大きな研究ブームになっている。既知の複素環を構成するために導入された原子は、すべて非金属原子であり、金属原子の研究に及んでいない。したがって金属原子を導入してベイ位置で環を形成するペリレンビスイミド誘導体をどのように開発するかが一つの大きな課題であり、かつこのような金属環化のペリレンビスイミド化合物の光学特性は、模索することに値す。これまでのところ金属スズ環化のベイ位置で環を形成するペリレンビスイミド誘導体は、見られていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
それ故に本発明は、従来技術の問題点を解決するため、金属スズで環化のペリレンビスイミド誘導体および調製方法と応用を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明では、上記目的を達成するために、次の技術的手段を講じた。
金属スズ環化のペリレンビスイミド誘導体であって、前記誘導体は、下記の一般的な構造式で表される。
【化1】
[式中:R1とR2はそれぞれ独立して水素原子、置換基を有していてもよいまたは有していなくてもよい基から選択され、置換基を有していてもよいまたは有していなくてもよい基としては、炭素数1~60のアルキル基、炭素数1~60のアルコキシ基、炭素数3~60のシクロアルキル基、炭素数5~60のアリール基、炭素数1~60のアルキルアリール基、炭素数1~60のアルキルヘテロアリール基、炭素数1~60のアルキル複素環基、炭素数1~60のアルキレンオキシアルキル基、炭素数1~60のアルキレンオキシアリール基、炭素数1~60のアルキレンオキシヘテロアリール基、または炭素数1~60のアルキレンオキシ複素環基が挙げられる。]
【0005】
前記置換基を有していてもよいまたは有していなくてもよい基としては、置換基を有していてもよいまたは有していなくてもよいメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、エイコシル基、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、イソプロピルオキシ基、n-ブトキシ基、sec-ブチルオキシ基、イソブチルオキシ基、tert-ブチルオキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、ヘプチルオキシ基、オクチルオキシ基、ノニルオキシ基、デシルオキシ基、ウンデシルオキシ基、ドデシルオキシ基、トリデシルオキシ基、テトラデシルオキシ基、ペンタデシルオキシ基、ヘキサデシルオキシ基、ヘプタデシルオキシ基、オクタデシルオキシ基、ノナデシルオキシ基、イコシルオキシ基、フェニル基、ナフチル基、アントラセニル基、フェナントリル基、テトラフェニル、ペンタフェニル、ヘキサフェニル、ピレニル基、インデニル基、ビフェニル基、フルオレニル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロノニル基、シクロデシル基、シクロウンデシル基、シクロドデシル基、シクロトリデシル基、シクロテトラデシル基、シクロペンタデシル基、シクロヘキサデシル基、 シクロヘプタデシル基、シクロオクタデシル基、シクロノナデシル基、シクロイコシル基、チエニル基、ピロリル基、フラニル基、セレノフェニル基、チロリル基、テルリル基、オキサゾリル基、ピリジル基またはピリミジニル基、上記ヘテロアリール基の環と上記アリール基の環を融合して誘導された基または、上記ヘテロアリール基の組み合わせが挙げられる。これらのヘテロアリール基を構成する基は、別の置換基を含み得る。
【0006】
前記置換基としては、アルキル基、好ましくは炭素数1~16のアルキル基;アルコキシ基、好ましくは炭素数1~16のアルコキシ基;アリール基、好ましくは炭素数5~16のアリール基;シクロアルキル基、好ましくは炭素数3~16のシクロアルキル基;複素環基、好ましくは炭素数5~16の複素環基、ここで複素環基が含有するヘテロ原子はB、Si、O、Sn、N、S、P、およびSeから選択され;ヘテロアリール基、特に炭素数1~16のヘテロアリール基;ヘテロアラルキル基、特に炭素数5~16アリール基と炭素数1~16のアルキル一部から構成されるもの;ヘテロアラルキルオキシ基、好ましくは、炭素数5~16のアリール基と炭素数1~16のアルキル基から構成されるもの;アルケニル基、特にビニル基、アリル基、2-ブテニル基、3-ペンテニル基等;アルキニル基、特にプロパルギル基、3-ペンチニル基等;アミノ基置換基、特にアミノ基、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基等;アシル基、好ましくはホルミル基、アセチル基、ベンゾイル基等;アルキルチオ基、好ましくはメチルチオ基、エチルスルフリル基等;アリールチオ基、特にフェニルチオ基等;ヘテロアリールチオ基、特にピリジルチオ基等;複素環基、好ましくはイミダゾリル基、ピリジル基等;ヒドロキシル基;ハロゲン原子;シアノ基;アルデヒド基;エステル基;スルホ基;スルフェン基;ニトロ基;カルボキシル基、ヒドラジン基から選択される。特に好ましくは、置換基としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n-ブチル、セク-ブチル、イソブチル、tert-ブチル、ヒドロキシル、メルカプト、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、シアノ基、アルデヒド基、エステル基、スルホン酸基、スルフィン酸基、ニトロ基、アミノ基、イミノ基、カルボキシル基およびヒドラジン基のうちの少なくとも1種が挙げられる。
【0007】
前記金属スズ環化のペリレンビスイミド誘導体の調製方法であって、化合物Aをビス(トリブチルスズ)と混合し、触媒と有機溶媒を添加し、撹拌・加熱して反応を起こして前記金属スズ環化のペリレンビスイミド誘導体が得られる。
【化2】
【0008】
好ましくは、前記金属スズ環化のペリレンビスイミド誘導体の調製方法の加熱温度は、90~180℃であり、反応時間が1~30時間であり、ビス(トリブチルスズ)の混合量が化合物Aの量の0.5~10倍である。
【0009】
前記溶剤としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、窒素メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスファミド、スルホラン、アセトニトリルおよびベンゾニトリルのうちの1種または複数種が挙げられる。触媒としては、酢酸パラジウムまたはトリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウムが挙げられる。
【0010】
金属スズ環化のペリレンビスイミド誘導体は、新型光増感剤として、生成される一重項酸素が癌細胞を殺すことができるため、光線力学的治療の分野に応用され、並びに触媒として一重項酸素を生成して触媒酸化関連の反応領域に応用される。前記金属スズ環化のペリレンビスイミド誘導体は、光電材料子として太陽電池、有機発光ダイオード、有機電界効果トランジスタの分野に応用される。
【発明の効果】
【0011】
本発明の金属スズ環化のペリレンビスイミド誘導体およびその調製方法と応用は、ペリレンビスイミドのベイ位置に金属元素を導入して5員環を形成する先駆的な例であり、前記誘導体の紫外可視吸収スペクトルには、有意なレッドシフトがあり、金属スズ元素の導入により、前記誘導体が光電子材料の分野でより研究の価値のあるものになる。光電子材料として、前記誘導体は、太陽電池、有機発光ダイオード、および有機電界効果トランジスタの分野で大きな応用の見通しがある。また、重元素スズの導入により、前記誘導体に三重項状態を生成する強力な能力を持たせ、新型光増感剤として使用することができる。従来の遷移金属修飾ペリレンビスイミドタイプ光増感剤と比較して、このタイプの光増感剤は、構造が単純で、ベイ位置で環を形成でき、かつ合成方法が単純で、合成ステップが少ない。直接接続された重金属スズは、ペリレンビスイミドが三重項状態を生成する能力を向上させると同時に、長い三重項の寿命を持たせ、前記誘導体は光増感剤として新しい金属元素修飾ペリレンビスイミドの技術的手段を提供する。また、前記誘導体は、細胞毒性が低く、細胞内部に入りやすく、光線力学的治療の分野に応用されることができる。前記誘導体は、触媒として触媒酸化関連反応などの分野に応用させることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】6-ウンデシルアミンから誘導されたスズ環化のペリレンビスイミドの溶液吸収スペクトルである。
【
図2】6-ウンデシルアミンから誘導されたスズ環化のペリレンビスイミドの過渡吸収スペクトルである。
【
図3】6-ウンデシルアミンから誘導されたスズ環化のペリレンビスイミドの三重項状態減衰曲線である。
【
図4】6-ウンデシルアミンから誘導されたスズ環化のペリレンビスイミドは光増感剤として影響したDCMにおけるDPBFの紫外可視吸収の経時的な減衰グラフである。
【
図5】6-ウンデシルアミンから誘導されたスズ環化のペリレンビスイミドは光増感剤として影響した子宮頸がん細胞におけるDCFH-DAのイメージング画像である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下は、本発明の技術的手段をより明確にするため、実施例における技術的手段を、本発明の実施例と併せて詳細に説明する。以下の実施例は、本発明を説明するために使用されるが、本発明の範囲を制限する意図が決してない。
【0014】
(実施例1)
【化3】
臭素化ペリレンビスイミド1g、ヘキサブチルジスタンナン1.9g、ジベンジリデンアセトンパラジウムジクロリド15mg、トリメチルフェニルリン20mgを反応フラスコに量り取り、トルエン5mlを加え、90℃で6時間撹拌する。反応が完了したら、反応溶液を減圧下でスピン乾燥し、カラムクロマトグラフィーで分離して生成物0.6gを得、収率が48%であった。HRMS:found 762.2470。
【0015】
(実施例2)
【化4】
臭素化ペリレンビスイミド1g、ヘキサブチルジスタンナン3.36g、ジベンジリデンアセトンパラジウムジクロリド12mg、トリメチルフェニルリン16mgを反応フラスコに量り取り、トルエン5mlを加え、110℃で3時間撹拌して還流させた。反応が完了したら、反応溶液を減圧下でスピン乾燥し、カラムクロマトグラフィーで分離して生成物0.5gを得、収率が41%であった。HRMS(MALDI-TOF):Calculated for C54H70N2O4Sn M-,930.4358,found 930.4310。
【0016】
(実施例3)
【化5】
臭素化ペリレンビスイミド1g、ヘキサブチルジスタンナン3.92g、酢酸パラジウム5mgを反応フラスコに量り取り、1,4-ジオキサン5mlを加え、120℃で3時間撹拌して還流させた。反応が完了したら、反応溶液を減圧下でスピン乾燥し、カラムクロマトグラフィーで分離して生成物0.48gを得、収率が40%であった。HRMS(MALDI-TOF):found 3462.1625。
【0017】
(実施例4)
【化6】
合成方法は、実施例3を参照する。
【0018】
(実施例5)
【化7】
臭素化ペリレンビスイミド1g、ヘキサブチルジスタンナン0.76g、酢酸パラジウム8mgを反応フラスコに量り取り、DMF5mlを加え、150℃で3時間撹拌する。反応が完了したら、反応溶液を減圧下でスピン乾燥し、カラムクロマトグラフィーで分離して生成物0.62gを得、収率が50%であった。HRMS(MALDI-TOF):found 706.1746。
【0019】
(実施例6)
【化8】
臭素化ペリレンビスイミド1g、ヘキサブチルジスタンナン1.8g、酢酸パラジウム8mgを反応フラスコに量り取り、クロロベンゼン2mlおよびトルエン2mlを加え、120℃で3時間撹拌して還流させた。反応が完了したら、反応溶液を減圧下でスピン乾燥し、カラムクロマトグラフィーで分離して生成物0.6gを得、収率が47%であった。HRMS(MALDI-TOF):found 734.2022。
【0020】
(実施例7)
【化9】
臭素化ペリレンビスイミド1g、ヘキサブチルジスタンナン5.7g、酢酸パラジウム20mgを反応フラスコに量り取り、窒素メチルピロリドン5mlを加え、180℃で1時間撹拌して還流させた。反応が完了したら、反応溶液を減圧下でスピン乾燥し、カラムクロマトグラフィーで分離して生成物0.51gを得、収率が40%であった。HRMS(MALDI-TOF):found 762.2362。
【0021】
(実施例8)
【化10】
臭素化ペリレンビスイミド1g、ヘキサブチルジスタンナン0.42g、酢酸パラジウム17mgを反応フラスコに量り取り、ジクロロベンゼン5mlを加え、170℃で1時間撹拌して還流させた。反応が完了したら、反応溶液を減圧下でスピン乾燥し、カラムクロマトグラフィーで分離して生成物0.4gを得、収率が33%であった。HRMS(MALDI-TOF):found 832.3262。
【0022】
(実施例9)
【化11】
臭素化ペリレンビスイミド1g、ヘキサブチルジスタンナン0.9g、酢酸パラジウム36mgを反応フラスコに量り取り、o-キシレン5mlを加え、70℃で6時間撹拌して還流させた。反応が完了したら、反応溶液を減圧下でスピン乾燥し、カラムクロマトグラフィーで分離して生成物0.43gを得、収率が35%であった。HRMS(MALDI-TOF):found 804.2949。
【0023】
(実施例10)
【化12】
臭素化ペリレンビスイミド1g、ヘキサブチルジスタンナン0.84g、酢酸パラジウム33mgを反応フラスコに量り取り、DMF5mlを加え、70℃で6時間撹拌して還流させた。反応が完了したら、反応溶液を減圧下でスピン乾燥し、カラムクロマトグラフィーで分離して生成物0.55gを得、収率が45%であった。HRMS(MALDI-TOF):found 846.3419。
【0024】
(実施例11)
【化13】
臭素化ペリレンビスイミド1g、ヘキサブチルジスタンナン0.93g、ジベンジリデンアセトンパラジウムジクロリド12mg、トリメチルフェニルリン15mgを反応フラスコに量り取り、ジオキサン5mlを加え、110℃で3時間撹拌する。反応が完了したら、反応溶液を減圧下でスピン乾燥し、カラムクロマトグラフィーで分離して生成物0.34gを得、収率が27%であった。HRMS(MALDI-TOF):found 774.1541。
【0025】
(実施例12)
【化14】
臭素化ペリレンビスイミド1g、ヘキサブチルジスタンナン0.75g、ジベンジリデンアセトンパラジウムジクロリド12mg、トリメチルフェニルリン15mgを反応フラスコに量り取り、アセトニトリル5mlを加え、90℃で10時間撹拌する。反応が完了したら、反応溶液を減圧下でスピン乾燥し、カラムクロマトグラフィーで分離して生成物0.45gを得、収率が38%であった。HRMS(MALDI-TOF):found 942.3419。
【0026】
(実施例13)
【化15】
臭素化ペリレンビスイミド1g、ヘキサブチルジスタンナン0.78g、ジベンジリデンアセトンパラジウムジクロリド12mg、トリメチルフェニルリン15mgを反応フラスコに量り取り、o-キシレン5mlを加え、90℃で30時間撹拌する。反応が完了したら、反応溶液を減圧下でスピン乾燥し、カラムクロマトグラフィーで分離して生成物0.45gを得、収率が37%であった。HRMS(MALDI-TOF):found 896.1140。
【0027】
(実施例14)
【化16】
臭素化ペリレンビスイミド1g、ヘキサブチルジスタンナン0.79g、ジベンジリデンアセトンパラジウムジクロリド13mg、トリメチルフェニルリン17mgを反応フラスコに量り取り、トルエン5mlを加え、90℃で24時間撹拌する。反応が完了したら、反応溶液を減圧下でスピン乾燥し、カラムクロマトグラフィーで分離して生成物0.52gを得、収率が43%であった。HRMS(MALDI-TOF):found 886.2793。
【0028】
(実施例15)
【化17】
臭素化ペリレンビスイミド1g、ヘキサブチルジスタンナン0.83g、酢酸パラジウム33mgを反応フラスコに量り取り、スルホラン2mlおよびヘキサメチルホスファミド2mlを加え、160℃で9時間撹拌して還流させた。反応が完了したら、反応溶液を減圧下でスピン乾燥し、カラムクロマトグラフィーで分離して生成物0.46gを得、収率が38%であった。HRMS(MALDI-TOF):found 850.1854。
【0029】
(実施例16)
【化18】
臭素化ペリレンビスイミド1g、ヘキサブチルジスタンナン0.83g、酢酸パラジウム6mgを反応フラスコに量り取り、トルエン5mlを加え、110℃で3時間撹拌して還流させた。反応が完了したら、反応溶液を減圧下でスピン乾燥し、カラムクロマトグラフィーで分離して生成物0.38gを得、収率が31%であった。HRMS(MALDI-TOF):found 854.1664。
【0030】
(実施例17)
【化19】
臭素化ペリレンビスイミド1g、ヘキサブチルジスタンナン0.8g、酢酸パラジウム6mgを反応フラスコに量り取り、1,4-ジオキサン5mlを加え、110℃で3時間撹拌して還流させた。反応が完了したら、反応溶液を減圧下でスピン乾燥し、カラムクロマトグラフィーで分離して生成物0.3gを得、収率が25%であった。HRMS(MALDI-TOF):found 874.1854。
【0031】
(実施例18)
【化20】
臭素化ペリレンビスイミド1g、ヘキサブチルジスタンナン0.9g、酢酸パラジウム7mgを反応フラスコに量り取り、1,4-ジオキサン2mlおよびジメチルスルホキシド2mlを加え、150℃で5時間撹拌して還流させた。反応が完了したら、反応溶液を減圧下でスピン乾燥し、カラムクロマトグラフィーで分離して生成物0.42gを得、収率が34%であった。HRMS(MALDI-TOF):found 802.1854。
【0032】
(実施例19)
【化21】
臭素化ペリレンビスイミド1g、ヘキサブチルジスタンナン0.92g、酢酸パラジウム9mgを反応フラスコに量り取り、アセトニトリル2mlおよびベンゾニトリル2mlを加え、100℃で20時間撹拌して還流させた。反応が完了したら、反応溶液を減圧下でスピン乾燥し、カラムクロマトグラフィーで分離して生成物0.5gを得、収率が40%であった。HRMS(MALDI-TOF):found 786.0669。
【0033】
(実施例20)
【化22】
臭素化ペリレンビスイミド1g、ヘキサブチルジスタンナン0.93g、酢酸パラジウム7mgを反応フラスコに量り取り、トルエン2mlおよびテトラヒドロフラン1mlを加え、130℃で8時間撹拌して還流させた。反応が完了したら、反応溶液を減圧下でスピン乾燥し、カラムクロマトグラフィーで分離して生成物0.5gを得、収率が40%であった。HRMS(MALDI-TOF):found 776.1446。
【0034】
(実施例21)
【化23】
臭素化ペリレンビスイミド1g、ヘキサブチルジスタンナン0.93g、酢酸パラジウム8mgを反応フラスコに量り取り、トルエン5mlを加え、110℃で3時間撹拌して還流させた。反応が完了したら、反応溶液を減圧下でスピン乾燥し、カラムクロマトグラフィーで分離して生成物0.48gを得、収率が38.1%であった。HRMS(MALDI-TOF):found 786.2486。
【0035】
(実施例22)
【化24】
臭素化ペリレンビスイミド1g、ヘキサブチルジスタンナン0.95g、酢酸パラジウム7mgを反応フラスコに量り取り、キシレン3mlおよびジクロロベンゼン1mlを加え、170℃で5時間撹拌して還流させた。反応が完了したら、反応溶液を減圧下でスピン乾燥し、カラムクロマトグラフィーで分離して生成物0.32gを得、収率が25.81%であった。HRMS(MALDI-TOF):found 786.228。
【0036】
(実施例23)
【化25】
臭素化ペリレンビスイミド1g、ヘキサブチルジスタンナン0.87g、酢酸パラジウム7mgを反応フラスコに量り取り、ジオキサン5mlを加え、110℃で3時間撹拌して還流させた。反応が完了したら、反応溶液を減圧下でスピン乾燥し、カラムクロマトグラフィーで分離して生成物0.43gを得、収率が35%であった。HRMS(MALDI-TOF):found 816.2698。
【0037】
(実施例24)
【化26】
臭素化ペリレンビスイミド1g、ヘキサブチルジスタンナン0.9g、酢酸パラジウム7mgを反応フラスコに量り取り、トルエン3mlおよびDMSO1mlを加え、150℃で4時間撹拌して還流させた。反応が完了したら、反応溶液を減圧下でスピン乾燥し、カラムクロマトグラフィーで分離して生成物0.35gを得、収率が28%であった。HRMS(MALDI-TOF):found 794.2378。
【0038】
(実施例25)
【化27】
臭素化ペリレンビスイミド1g、ヘキサブチルジスタンナン0.78g、酢酸パラジウム6mgを反応フラスコに量り取り、トルエン2mlおよびベンゼン1mlを加え、120℃で3時間撹拌して還流させた。反応が完了したら、反応溶液を減圧下でスピン乾燥し、カラムクロマトグラフィーで分離して生成物0.37gを得、収率が31%であった。HRMS(MALDI-TOF):found 900.2644。
【0039】
(実施例26)
【化28】
臭素化ペリレンビスイミド1g、ヘキサブチルジスタンナン0.83g、酢酸パラジウム4mgを反応フラスコに量り取り、DMF5mlを加え、110℃で3時間撹拌して還流させた。反応が完了したら、反応溶液を減圧下でスピン乾燥し、カラムクロマトグラフィーで分離して生成物0.53gを得、収率が43.5%であった。HRMS(MALDI-TOF):found 850.2276。
【0040】
(実施例27)
【化29】
臭素化ペリレンビスイミド1g、ヘキサブチルジスタンナン5.72g、酢酸パラジウム8mgを反応フラスコに量り取り、トルエン5mlを加え、110℃で3時間撹拌して還流させた。反応が完了したら、反応溶液を減圧下でスピン乾燥し、カラムクロマトグラフィーで分離して生成物0.42gを得、収率が33.6%であった。HRMS(MALDI-TOF):found 751.1863。
【0041】
(実施例28)
【化30】
臭素化ペリレンビスイミド1g、ヘキサブチルジスタンナン0.4g、ジベンジリデンアセトンパラジウムジクロリド13mg、トリメチルフェニルリン17mgを反応フラスコに量り取り、o-キシレン5mlを加え、110℃で3時間撹拌して還流させた。反応が完了したら、反応溶液を減圧下でスピン乾燥し、カラムクロマトグラフィーで分離して生成物0.43gを得、収率が35%であった。HRMS(MALDI-TOF):found 852.2949。
【0042】
(実施例29)
【化31】
臭素化ペリレンビスイミド1g、ヘキサブチルジスタンナン7.86g、ジベンジリデンアセトンパラジウムジクロリド12mg、トリメチルフェニルリン16mgを反応フラスコに量り取り、o-キシレン5mlを加え、110℃で3時間撹拌して還流させた。反応が完了したら、反応溶液を減圧下でスピン乾燥し、カラムクロマトグラフィーで分離して生成物0.43gを得、収率が35.6%であった。HRMS(MALDI-TOF):found 890.3065。
【0043】
(実施例30)
実施例2で得られた6-ウンデシルアミンから誘導されたスズ環化のペリレンビスイミドについて特性を研究した。
(1)6-ウンデシルアミンから誘導されたスズ環化のペリレンビスイミドおよび6-ウンデシルアミンから誘導されたペリレンビスイミドのUV-Visスペクトル(
図1)を試験して比較すると、6-ウンデシルアミンから誘導されたスズ環化のペリレンビスイミドの吸収スペクトルには、有意なレッドシフトがあった。
(2)6-ウンデシルアミンから誘導されたスズ環化のペリレンビスイミドの過渡吸収スペクトル(
図2)を試験すると、400nm~515nmで強い励起三重項状態の吸収が検出された。
(3)
図3に示す6-ウンデシルアミンから誘導されたスズ環化のペリレンビスイミドの過渡吸収スペクトルの485nmでの動的吸収は三重項減衰時間に当てはめ、減衰時間が17usであり、6-ウンデシルアミンから誘導されたスズ環化のペリレンビスイミドは長い三重項の寿命を持つ。
(4)光増感剤の三重項エネルギーを三重項酸素分子(
3O2)に伝達して一重項酸素分子(
1O2)を生成できる。一重項酸素捕捉剤1,3-ジフェニルイソベンゾフラン(DPBF)を使用して一重項酸素を捕捉すると同時に、DPBF自体が
1O2によって酸化され、紫外可視吸収スペクトルの414nmでのDPBFの吸収ピークが減少した。 414nmでのDPBFの吸収変化を監視することによって光増感剤分子の一重項酸素量子収率を計算できる。
図4に6-ウンデシルアミンから誘導されたスズ環化のペリレンビスイミドは光増感剤として影響したDCMにおけるDPBFの紫外可視吸収の経時的な減衰グラフを示している。計算により6-ウンデシルアミンから誘導されたスズ環化のペリレンビスイミドの一重項酸素量子収率40%が得られた。
(5)光線力学的治療への光増感剤の応用は、それら自体の細胞毒性が小さく、細胞に入ることができ、細胞内でより良い一重項酸素生成を達成することを必要とする。子宮頸がん細胞では、活性酸素種検出用試薬としての蛍光プローブDCFH-DAは非蛍光性であり、細胞膜を自由に透過して細胞に入り、細胞内の活性酸素種(一重項酸素)は非蛍光型DCFHを酸化して蛍光型DCFを生成でき、DCFの蛍光強度を検出することにより、細胞内の活性酸素種レベルを知ることができる。
図5は、6-ウンデシルアミンから誘導されたスズ環化のペリレンビスイミドは光増感剤として影響した子宮頸がん細胞におけるDCFH-DAのイメージング画像を示している。図では、左から右に、6-ウンデシルアミンから誘導されたスズ環化のペリレンビスイミドとDCFH-DAで培養された子宮頸がん細を使用した無光下での蛍光画像および10秒、20秒、30秒経過の420nmでの緑色ランプ照射後の蛍光画像である。この図から6-ウンデシルアミンから誘導されたスズ環化のペリレンビスイミドは光増感後に生成される一重項酸素によりDCFHを酸化して蛍光DCFを生成し、子宮頸がん細胞に蛍光を出現させ、結像によって現像し、かつイメージング効果は時間とともに良くなり、20秒後子宮頸がん細胞の蛍光強度が変化しなくなり、6-ウンデシルアミンから誘導されたスズ環化のペリレンビスイミドが細胞内で良好な一重項酸素効果を有することを示している。
【0044】
(実施例31)
化合物B4、B6、B10、B14、B16、B17、B20、B22、B25、B27の特性を下表に示し、試験条件および方法は実施例30と同じである。
【表1】
【0045】
本発明では好ましい実施例を前述の通り開示したが、これらは決して本発明に限定するものではなく、当該技術を熟知する者なら誰でも、本発明の技術的範囲を脱しない範囲内で、上記に示唆された技術的内容を利用して各種の変動や潤色を加えて均等の意味の実施例を得ることができる。ただし、本発明の技術的手段の内容から逸脱することなく、本発明の技術的本質に基づいて上記実施例に対して行われた簡単な修正、均等範囲での変化と潤色は、本発明の技術的手段の範囲内に含まれる。