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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-20
(45)【発行日】2022-09-29
(54)【発明の名称】チップ剥離装置及びテーピングマシン
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/67 20060101AFI20220921BHJP
   B65B 15/04 20060101ALI20220921BHJP
【FI】
H01L21/68 E
B65B15/04 M
B65B15/04 A
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021189044
(22)【出願日】2021-11-19
【審査請求日】2022-01-14
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】597168228
【氏名又は名称】日本ファインテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100163267
【弁理士】
【氏名又は名称】今中 崇之
(72)【発明者】
【氏名】高田 勉
(72)【発明者】
【氏名】杉山 泰英
(72)【発明者】
【氏名】新納 仁
(72)【発明者】
【氏名】松丸 明夫
【審査官】宮久保 博幸
(56)【参考文献】
【文献】中国実用新案第202167470(CN,U)
【文献】特開昭62-245644(JP,A)
【文献】特開昭61-142046(JP,A)
【文献】特開2012-119494(JP,A)
【文献】特開2020-047871(JP,A)
【文献】特開2000-150547(JP,A)
【文献】特開2000-252304(JP,A)
【文献】特開2006-093363(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/67
B65B 15/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートに貼付されたチップ部品を押し出す押出部材と、
前記押出部材が挿入される押出部材挿入孔が形成され、該押出部材を保持する押出部材保持部と、
前記押出部材保持部を前記押出部材の長手方向に進退可能に保持する軸受と、
前記軸受を保持する軸受保持部と、
前記押出部材が前記チップ部品に与える衝撃を抑制する押出部材緩衝部と、
前記押出部材保持部に対して前記押出部材を固定する止めねじと、を備え
前記押出部材緩衝部が、押出部材保持部に固定されたばね受けと、
基端側が前記軸受保持部に接触し、先端側が前記ばね受けに接触する圧縮ばねと、を有するチップ剥離装置であって、
前記押出部材保持部に固定され、前記止めねじが挿入される雌ねじが形成された止めねじ固定部材を更に備え、
前記押出部材保持部に、前記雌ねじの位置に対応して設けられ、前記押出部材挿入孔へと繋がる押出部材固定用孔が形成され、
前記止めねじの先端部が、前記押出部材の外周面に接触し、該押出部材を前記押出部材挿入孔の内周面に押し付けるチップ剥離装置。
【請求項2】
シートに貼付されたチップ部品を押し出す押出部材と、
前記押出部材が挿入される押出部材挿入孔が形成され、該押出部材を保持する押出部材保持部と、
前記押出部材保持部を前記押出部材の長手方向に進退可能に保持する軸受と、
前記軸受を保持する軸受保持部と、
前記押出部材が前記チップ部品に与える衝撃を抑制する押出部材緩衝部と、
前記押出部材の外周面に接触し、該押出部材を前記押出部材挿入孔の内周面に押し付ける止めねじと、を備え
前記押出部材緩衝部が、押出部材保持部に固定されたばね受けと、
基端側が前記軸受保持部に接触し、先端側が前記ばね受けに接触する圧縮ばねと、を有するチップ剥離装置であって、
前記押出部材保持部が、前記軸受によって支持される基部と、
前記基部の先端に設けられた先端部と、を有し、
前記押出部材保持部が進退する方向と交差する方向を法線方向とする面が前記軸受保持部に形成され、該面に、前記先端部に形成された面が空隙を介して対向しているチップ剥離装置。
【請求項3】
請求項又は記載のチップ剥離装置において、
前記ばね受けが、先端側に突出した突出部を有し、
前記押出部材保持部の基端側に、前記押出部材挿入孔が延びる方向に延び前記突出部が取り付けられるばね受け取り付け孔が形成され、
前記押出部材挿入孔と前記ばね受け取り付け孔とが繋がっており、前記押出部材が、前記突出部に突き当たった状態で固定されているチップ剥離装置。
【請求項4】
請求項記載のチップ剥離装置において、
前記軸受保持部の先端側に、前記押出部材緩衝部が底部の側に収まる第1の固定穴が形成され、
前記軸受保持部の基端側に、進退する進退部材が固定される第2の固定穴が形成されているチップ剥離装置。
【請求項5】
請求項記載のチップ剥離装置において、
前記軸受保持部の側面に、前記押出部材緩衝部が配置された空間から外部へと貫通する第1の吸引孔が形成され、
前記第1の固定穴及び前記第2の固定穴の底部に、該第1の固定穴と該第2の固定穴とを繋ぐ第2の吸引孔が形成され、
前記進退部材に、前記第2の吸引孔に繋がる第3の吸引孔が形成されているチップ剥離装置。
【請求項6】
請求項1乃至のいずれか1項に記載のチップ剥離装置を備え、
前記チップ剥離装置によって剥離された前記チップ部品をキャリアテープに挿入するテーピングマシン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チップ剥離装置及びテーピングマシンに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、半導体チップに与える衝撃力を抑制し、半導体チップが損傷する可能性を低減できるチップ剥離装置が記載されている。このチップ剥離装置は、シートに貼付された半導体チップを吸着する吸着コレットと、吸着コレットを進退させる吸着コレット進退機構と、シートを吸着するホルダと、ホルダを進退させるホルダ進退機構と、ホルダに収納され、シートに貼付された半導体チップを押し出す押出部材と、押出部材を進退させる押出部材進退機構と、を備えている。
【0003】
特許文献2には、リードフレーム上にペレットをマウントする際にペレットを突き上げてコレットに吸着させるために用いるペレット突き上げ用ピンが記載されている。このペレット突き上げ用ピンは、緩衝バネを有することにより、ペレット突き上げ時にペレットへの衝撃を緩和し、ペレットの湾曲、ペレットのコレットへの接触等の突き上げ条件不適性時に伴うトラブルを防止する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-26554号公報
【文献】特開平6-104329号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般に、チップ剥離装置においては、半導体チップをシートから剥離する際に半導体チップの裏面に細いニードルを接触させるため、衝撃力を与え、半導体チップが損傷する場合がある。
本発明は、チップ部品に与える衝撃力を抑制し、チップ部品が損傷する可能性を低減できるチップ剥離装置及びテーピングマシンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明は、シートに貼付されたチップ部品を押し出す押出部材と、前記押出部材が挿入される押出部材挿入孔が形成され、該押出部材を保持する押出部材保持部と、前記押出部材保持部を前記押出部材の長手方向に進退可能に保持する軸受と、前記軸受を保持する軸受保持部と、前記押出部材が前記チップ部品に与える衝撃を抑制する押出部材緩衝部と、前記押出部材保持部に対して前記押出部材を固定する止めねじと、を備え、前記押出部材緩衝部が、押出部材保持部に固定されたばね受けと、基端側が前記軸受保持部に接触し、先端側が前記ばね受けに接触する圧縮ばねと、を有するチップ剥離装置であって、前記押出部材保持部に固定され、前記止めねじが挿入される雌ねじが形成された止めねじ固定部材を更に備え、前記押出部材保持部に、前記雌ねじの位置に対応して設けられ、前記押出部材挿入孔へと繋がる押出部材固定用孔が形成され、前記止めねじの先端部が、前記押出部材の外周面に接触し、該押出部材を前記押出部材挿入孔の内周面に押し付けるチップ剥離装置である。
【0007】
請求項2に記載の発明は、シートに貼付されたチップ部品を押し出す押出部材と、前記押出部材が挿入される押出部材挿入孔が形成され、該押出部材を保持する押出部材保持部と、前記押出部材保持部を前記押出部材の長手方向に進退可能に保持する軸受と、前記軸受を保持する軸受保持部と、前記押出部材が前記チップ部品に与える衝撃を抑制する押出部材緩衝部と、前記押出部材の外周面に接触し、該押出部材を前記押出部材挿入孔の内周面に押し付ける止めねじと、を備え、前記押出部材緩衝部が、押出部材保持部に固定されたばね受けと、基端側が前記軸受保持部に接触し、先端側が前記ばね受けに接触する圧縮ばねと、を有するチップ剥離装置であって、前記押出部材保持部が、前記軸受によって支持される基部と、前記基部の先端に設けられた先端部と、を有し、前記押出部材保持部が進退する方向と交差する方向を法線方向とする面が前記軸受保持部に形成され、該面に、前記先端部に形成された面が空隙を介して対向しているチップ剥離装置である
【0008】
請求項に記載の発明は、請求項又は記載のチップ剥離装置において、前記ばね受けが、先端側に突出した突出部を有し、前記押出部材保持部の基端側に、前記押出部材挿入孔が延びる方向に延び前記突出部が取り付けられるばね受け取り付け孔が形成され、前記押出部材挿入孔と前記ばね受け取り付け孔とが繋がっており、前記押出部材が、前記突出部に突き当たった状態で固定されている。
【0009】
請求項に記載の発明は、請求項記載のチップ剥離装置において、前記軸受保持部の先端側に、前記押出部材緩衝部が底部の側に収まる第1の固定穴が形成され、前記軸受保持部の基端側に、進退する進退部材が固定される第2の固定穴が形成されている。
【0010】
請求項に記載の発明は、請求項記載のチップ剥離装置において、前記軸受保持部の側面に、前記押出部材緩衝部が配置された空間から外部へと貫通する第1の吸引孔が形成され、前記第1の固定穴及び前記第2の固定穴の底部に、該第1の固定穴と該第2の固定穴とを繋ぐ第2の吸引孔が形成され、前記進退部材に、前記第2の吸引孔に繋がる第3の吸引孔が形成されている。
【0011】
請求項に記載の発明は、請求項1乃至のいずれか1項に記載のチップ剥離装置を備え、前記チップ剥離装置によって剥離された前記チップ部品をキャリアテープに挿入するテーピングマシンである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、チップ部品に与える衝撃力を抑制し、チップ部品が損傷する可能性を低減できるチップ剥離装置及びテーピングマシンを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施の形態に係るチップ剥離装置を備えたテーピングマシンの各部の位置関係を模式的に示した平面図である。
図2】同チップ剥離装置が備える押出部の先端部の斜視図である。
図3】(A)、(B)は、それぞれ、同チップ剥離装置が備える押出部の断面図及び先端面を示す図である。
図4】同チップ剥離装置が備える押出部のニードル保持部材及び軸受ホルダの要部を示す説明図である。
図5】(A)~(E)は、同チップ剥離装置の動作を示す説明図である。
図6】同チップ剥離装置による衝撃緩衝の効果を示すグラフであって、(A)、(B)はそれぞれ、圧縮ばねが作用しないチップ剥離装置における衝撃力のグラフ及び圧縮ばねが作用するチップ剥離装置における衝撃力のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
続いて、添付した図面を参照しつつ、本発明を具体化した実施の形態につき説明し、本発明の理解に供する。なお、図において、説明に関連しない部分は図示を省略する場合がある。
【0015】
図1に示すテーピングマシン10は、本発明の一実施の形態に係るチップ剥離装置20を備えている。テーピングマシン10においては、チップ剥離装置20によって、ウェハーリング110に固定されたダイシング後のウェハーから半導体チップ(チップ部品の一例)Cが剥離され、剥離された半導体チップCが回転テーブル115によって各処理ユニット120a~120gにて所定の検査等がされながら搬送され、テーピングユニット140にてキャリアテープに封入される。
【0016】
付言すると、処理ユニット120a~120gのうち、処理ユニット120aは、外観検査ユニットであり、半導体チップCの外観及び基準位置からの位置ずれ量を検査できる。処理ユニット120cは、三軸補正ユニットであり、キャリアテープに挿入するために、半導体チップCの位置を補正できる。処理ユニット120eは、ランク分けユニットであり、半導体チップCを品質に応じてランク分けできる。処理ユニット120gは、強制排出ユニットであり、所定の品質を満たしていない半導体チップCを排出できる。
【0017】
チップ剥離装置20は、図5(A)~図5(E)に示すように、ダイシングされた複数の半導体チップCが貼付されたシートSTから所定の半導体チップCを剥離して取り出すことができる。
シートSTの厚みは、例えば0.1mmである。半導体チップCの長さは例えば0.4~1.0mmであり、幅は例えば0.2~0.7mmであり、厚みは例えば0.05~0.2mmである。
【0018】
チップ剥離装置20は、半導体チップCを吸着するチップ吸着部22と、シートSTを吸着するシート吸着部24及び半導体チップCを押し出す押出部26と、を備えている。
なお、シート吸着部24及び押出部26は、図1及び図5(A)に示す押出ユニット150の一例を構成する。
【0019】
チップ吸着部22は、図5(A)に示すように、吸着コレット222及び圧縮ばね228を有している。
吸着コレット222は、その先端面にエア吸着用の吸着孔HL1が形成されており、シートSTに貼付された半導体チップCを吸着できる。
吸着コレット222は、水平方向に延びる回転軸AX(図1参照)を中心に複数配置されており、この回転軸AX回りに回転することで順次半導体チップCを吸着する。
吸着された半導体チップCは、回転テーブル115に受け渡される。
【0020】
圧縮ばね(吸着コレット緩衝部の一例)228は、吸着コレット222が接触した際に半導体チップCに与える衝撃を抑制できる。圧縮ばね228は、図5(A)に示すように、吸着コレット222の基部に一端側が接触し、吸着コレット222をその先端側(半導体チップCの側)に押し付けるように作用する。
従って、圧縮ばね228は、吸着コレット222が先端側(半導体チップCの側)から大きな外力を受けると縮むので、吸着コレット222は、同図5(A)の矢印X1で示すように、圧縮ばね228の伸縮量に応じて進退することになる。
吸着コレット緩衝部は、空気圧を用いた緩衝器やゴム(弾性体)であってもよい。
【0021】
シート吸着部24は、吸着ホルダ242及び吸着ホルダ進退機構(不図示)を有している。
吸着ホルダ242は、吸着コレット222が進退する方向に進退し、その先端面にてシートSTを吸着できる。
吸着ホルダ242には、先端面の中央部に窪み244が形成され、窪み244の中央部には、孔HL2が設けられている。
窪み244の長さ及び幅は、それぞれ半導体チップCのサイズより大きく設定されている。窪み244の深さは、使用するシートSTの厚み及び弾力性等の機械的特性に基づいて設定される。
窪み244の周囲には、半導体チップCが貼付されたシートSTをエア吸着するための吸着孔HL3が設けられている。
【0022】
吸着ホルダ進退機構(不図示)は、吸着ホルダ242を進退させるカム(不図示)及びこのカムを駆動するサーボモータ(不図示)を有し、吸着ホルダ242を進退させることができる。
【0023】
押出部26は、図2及び図3に示すように、ニードル262、ニードル保持部材264、止めねじ固定部材266、止めねじ268、軸受270、軸受ホルダ272、圧縮ばね274、ばね受け276、ストッパ278及びニードル進退機構を有し、図5(A)に示すように、先端側が吸着ホルダ242の内側に配置されている。
【0024】
ニードル(押出部材の一例)262は、先端が細く形成された針状の部材である。ニードル262は、吸着ホルダ242に設けられた窪み244の孔HL2の内部に収納されている。ニードル262は、図3(A)の矢印X2で示すように、後述するニードル保持部材264とともに吸着ホルダ242が進退する方向に進退し、孔HL2を通ってシートSTに貼付された半導体チップCをシートSTの側から押し出すことができる。
ニードル262の先端部を除いた部分の直径は、例えば0.3~1.0mmである。
なお、ニードル262は、繰り返しの使用に従って摩耗するため、使用状態に応じて交換される消耗部品である。
【0025】
ニードル保持部材(押出部材保持部の一例)264は、図4に示すように、基部264a及び先端部264bを有し、ニードル262を保持した状態で図3(A)の矢印X2で示す方向に進退できる。
基部264aは、外形が円柱状であり、ニードル262が延びる方向が長手方向となっている。基部264aの基端側の端面の中心部には、長手方向に延びる雌ねじである孔(ばね受け取り付け孔の一例)HL6が形成されている。
先端部264bは、図4に示すように、外形が立方体状であり、長手方向が基部264aの長手方向と交差する方向となるように、基部264aに設けられている。
先端部264bの先端面の中心部には、基部264aの長手方向に延びニードル262が挿入されるニードル挿入孔(押出部材挿入孔の一例)HL4が基部264aまで延びて形成されている。ニードル挿入孔HL4は、ニードル262の直径よりもわずかに大きい直径となるように、予め決められた寸法公差をもって加工されている。ニードル挿入孔HL4と孔HL6とは繋がっている(図3(A)参照)。
先端部264bには、側部に少なくとも第1の面PL1及び第2の面(不図示)が形成されている。
先端部264bの第1の面PL1は、基部264aの長手方向と直交する方向が法線方向となる平面となっており、この平面には、ニードル挿入孔HL4へと繋がる貫通孔(押出部材固定用孔の一例)HL5が形成されている。貫通孔HL5を挟んだ両側には、一組のねじ穴HL51が形成されている。
先端部264bの第2の面(不図示)は、第1の面PL1の反対側の面であり、第1の面PL1と同様に、基部264aの長手方向と直交する方向が法線方向となる平面となっている。
【0026】
止めねじ固定部材266は、図2に示すように、直方体状の部材であり、ニードル保持部材264の先端部264bの第1の面PL1に形成された一組のねじ穴HL51(図4参照)にそれぞれねじ282(図3(B)参照)が挿入されることにより固定される。これら2つのねじ282の間には、図3(A)に示すように、貫通した雌ねじである貫通孔HL7が貫通孔HL5に対応した位置に形成されている。
【0027】
止めねじ268は、雌ねじである貫通孔HL7に挿入され、その先端部が貫通孔HL5を通ってニードル262の長手方向中央部の外周面に接触する。
すなわち、ニードル262は、止めねじ固定部材266によって固定される止めねじ268によってニードル挿入孔HL4の内周面に押し付けられて固定される。
【0028】
ここで、止めねじ268を固定するために、止めねじ固定部材266を設けずに、ニードル保持部材264に形成された貫通孔HL5に雌ねじを形成し、この雌ねじに止めねじ268を挿入する構成とすることが考えられる。しかしながら、このように構成すると、貫通孔HL5に雌ねじを形成する過程において、ニードル挿入孔HL4の側面に雌ねじを形成するタップの先端を逃がすための穴が形成されてしまう。そうすると、ニードル262は、形成された穴の部分にて、止めねじ268からの荷重を受けて変形し、損傷を受けやすくなってしまう。従って、止めねじ268を固定するための止めねじ固定部材266を設けることが好ましい。
【0029】
軸受270は、ニードル保持部材264の基部264aを支持し、ニードル保持部材264を長手方向に滑らかに進退するように保持できる。軸受270は、例えばボールガイドであり、基部264aが挿入されたブッシュ270aと、複数のボール(不図示)を保持し、ブッシュ270aをガイドするリテーナ270bと、により構成されている。
【0030】
軸受ホルダ(軸受保持部の一例)272は、内部に軸受270を保持することができる。軸受ホルダ272の先端側には、ニードル挿入孔HL4の長手方向に延びる穴(第1の固定穴の一例)HL8が形成され、基端側には、ニードル挿入孔HL4の長手方向に延びる穴(第2の固定穴の一例)HL9が形成されている。穴HL8と穴HL9の底部には、穴HL8と穴HL9とを繋ぐ吸引孔(第2の吸引孔の一例)HL10が形成されている。
穴HL8には、リテーナ270bが挿入され、止めねじ284よって固定されている。ただし、リテーナ270bは、リテーナ270bの基端側と穴HL8の底部との間に空間Sを形成した状態で固定される。軸受ホルダ272の側面には、空間Sから外部へと貫通する長孔である吸引孔(第1の吸引孔の一例)HL11が形成されている。
軸受ホルダ272の先端部は、図4に示すように、穴HL8の一部を含んで切断するように切り欠かれており、ニードル保持部材264の基部264aの長手方向と直交する方向(ニードル保持部材264が進退する方向と交差する方向)を法線方向とする2つの面PL2が形成されている。この面PL2には、予め設定された空隙を介してニードル保持部材264の先端部264bに形成された第2の面(前述の図示しない面であって、第1の面PL1の反対側の面)が対向する。
従って、軸受ホルダ272によって、ニードル保持部材264がニードル262の長手方向に延びる軸回り(穴HL8の中心軸回り)に回転することが抑制される。
その結果、ニードル262を交換するためにニードル保持部材264を取り外して再度取り付けた場合であっても、ニードル保持部材264の穴HL8の中心軸回りの回転ずれが一定範囲内に抑えられるので、ニードル262の先端位置のずれが抑えられる。
【0031】
圧縮ばね274は、外部から加わる荷重に応じてニードル262の長手方向に伸縮できる。圧縮ばね274は、その基端側が軸受ホルダ272の穴HL8の底部に接し、圧縮ばね274の中心軸と吸引孔HL10の中心軸とが一致するように空間Sの内部に配置される。
【0032】
ばね受け276は、空間Sの内部にてニードル保持部材264に固定され、ばねの先端側が接触する。
ばね受け276は、先端側及び基端側にそれぞれ突出部276a及び突出部276bを有している。
突出部276aは、円柱状であり、外周面に雄ねじが形成され、ニードル保持部材264の雌ねじである孔HL6に挿入される。突出部276aの先端面には、ニードル262の基端部が突き当たる。
ニードル262は、ニードル保持部材264の先端側に形成されたニードル挿入孔HL4から挿入され、突出部276aの先端面に突き当たった状態で固定されるため、交換により先端位置がずれてしまうことが抑制される。
突出部276bは、円柱状であり、圧縮ばね274の先端側に挿入される。すなわち、圧縮ばね274の先端側は、突出部276bによって保持される。
なお、圧縮ばね274及びばね受け276は、ニードル262が半導体チップCに与える衝撃を抑制する押出部材緩衝部の一例を構成する。
【0033】
ストッパ278は、軸受ホルダ272に固定され、ニードル保持部材264の先端に接触することで、ニードル保持部材264の進出量を制限できる。ストッパ278には、図2に示すように、ニードル262の先端側から見て中央部に孔HL12が形成されており、この孔HL12をニードル262が通っている。
【0034】
ニードル進退機構は、ニードル262を進退させることができる。ニードル進退機構は、ロッド(進退部材の一例)290、カム(不図示)及びサーボモータ(不図示)を有している。
ロッド290は、長手方向に延びる吸引孔(第3の吸引孔の一例)HL13が形成された棒状部材であり、図3(A)の矢印X3で示す長手方向に進退できる。ロッド290は、軸受ホルダ272の穴HL9に挿入され、穴HL9の底部に突き当たり、吸引孔HL13が吸引孔HL10に繋がった状態で、止めねじ292によって軸受ホルダ272に固定されている。
従って、ロッド290の吸引孔HL13の内部を負圧にすることで、図5(A)に示す吸着孔HL3、吸引孔HL11、空間S(図3(A)参照)、吸引孔HL10及び吸引孔HL13を順に通るエアの流路が形成され、吸着ホルダによって、シートSTが吸着される。
なお、図5(A)~図5(E)においては明示されていないが、吸着ホルダ242の内部は、吸着孔HL3から所定の流量のエアを吸引するために必要な気密が保たれるように構成されている。
カムは、ロッド290を予め設定されたタイミングで進退させることができる。
サーボモータは、カムを回転させる駆動源となるモータである。
【0035】
次に、チップ剥離装置20の動作(半導体チップCの剥離方法)について、図5に基づいて説明する。シートSTに貼付された半導体チップCは、次の工程S1~S5に従って剥離される。
吸着コレット222、吸着ホルダ進退機構、ニードル進退機構及び各処理ユニット120a~120gその他の各部は、図示しない制御装置によって制御される。
【0036】
(工程S1)
剥離すべき半導体チップCが吸着コレット222及び吸着ホルダ242の間に位置するように、シートSTが貼付されたウェハーが位置決めされる。
次に、シートSTに向かって吸着ホルダ242、ニードル262及び吸着コレット222が進出すると、図5(A)に示すように、吸着ホルダ242がシートSTに接触する。
接触後、吸着ホルダ242は、シートSTを吸着する。
【0037】
(工程S2)
吸着ホルダ242及びニードル262が、吸着コレット222の方向に向かって進出を続けると、吸着ホルダ242によって押されたシートSTが吸着コレット222の方向へ移動し、図5(B)に示すように、半導体チップCが吸着コレット222に接触する。吸着コレット222が半導体チップCに接触すると、シートSTは窪み244の内側に向かって(シートSTの厚み方向に)撓みはじめる。その結果、シートSTが緩衝材として作用し、吸着コレット222と接触したことに起因して半導体チップCに加わる衝撃力が抑制される。加えて、吸着コレット222に圧縮ばね228が設けられているので、半導体チップCに加わる衝撃力が更に抑制される。
接触後、半導体チップCは、吸着コレット222にエア吸着される。
【0038】
(工程S3)
半導体チップCが吸着コレット222に接触した状態で、吸着ホルダ242及びニードル262が更に進出すると、図5(C)に示すように、シートSTが窪み244の内側に向かって(シートSTの厚み方向に)更に撓み、ニードル262がシートSTに接触する。
【0039】
(工程S4)
ニードル262が静止した状態で、シートSTを吸着している吸着ホルダ242が後退する。
その結果、図5(D)に示すように、ニードル262によってシートSTから半導体チップCがシートSTから押し出される。その際、ニードル262は荷重を受け、長手方向に動くことに伴い、圧縮ばね274が縮む。
従って、ニードル262が半導体チップCを押し出す際の衝撃が緩和される。
【0040】
(工程S5)
ニードル262及び吸着ホルダ242が後退する。
その結果、図5(E)に示すように、半導体チップCが剥離される。吸着コレット222は、剥離した半導体チップCを所定の位置に搬送する。
以降、剥離する対象となる半導体チップCに対して前述の工程S1~S5が繰り返されることにより、一枚のシートSTに貼り付けられた全ての半導体チップCが剥離され、剥離された半導体チップCは、キャリアテープに挿入される。
【0041】
次に、半導体チップCに加わる衝撃力の評価実験例を示し、本実施の形態に係るチップ剥離装置20について更に説明する。
発明者は、圧縮ばね274が作用しないようにニードル保持部材264を軸受ホルダ272に固定したチップ剥離装置20aと、本実施形態に係るチップ剥離装置20と、について、それぞれ、半導体チップCに加わる衝撃力を測定した。衝撃力を直接測定することは困難であったため、吸着コレット222の部分にロードセルを設け、前述の工程S1~S5に従って半導体チップCを剥離した際にこのロードセルから得られた測定データを衝撃力とした。
その結果、ニードル262が進退しないチップ剥離装置20aについては、図6(A)に示すような波形となり、チップ剥離装置20については、図6(B)に示すような波形となった。いずれのグラフも、横軸は時間であり、縦軸は衝撃力である。
【0042】
図6(A)のC1で示した部分及び図6(B)のC2で示した部分は、工程S3(図5(C)参照)における動作に対応し、シートSTが窪み244の内側に向かって撓んだ際の波形である。図6(A)のD1で示した部分及び図6(B)のD2で示した部分は、工程S4(図5(D)参照)における動作に対応し、ニードル262によってシートSTから半導体チップCが押し出された際の波形である。
【0043】
両者を比較すると、特に、D1で示した部分及びD2で示した部分における衝撃力が、それぞれ約1.8[N]及び約0.4[N]となっており、チップ剥離装置20は、チップ剥離装置20aと比較して、衝撃力が25%以下に低減されている。
すなわち、チップ剥離装置20が、押出部材緩衝部を備えることにより、ニードル262が半導体チップに与える衝撃力が大きく低減されることが明らかとなった。
【0044】
以上説明したように、チップ剥離装置20によれば、半導体チップCに加わる衝撃力が抑制され、半導体チップCが損傷する可能性が低減される。
【0045】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、本発明は、上記した形態に限定されるものでなく、要旨を逸脱しない条件の変更等は全て本発明の適用範囲である。
チップ剥離装置20が剥離する対象は、半導体チップCに限定されるものではなく、任意のチップ部品であってもよい。このチップ部品として、例えば、チップ抵抗、チップコンデンサその他のチップ状の電子部品が挙げられる。
前述の実施の形態において、吸着コレット222、吸着ホルダ242及びニードル262が進退する方向は、任意の方向でよい。すなわち、吸着コレット222、吸着ホルダ242及びニードル262が進退する方向は、水平方向に限定されるものではない。
押出部材は、当業者において一般的にいわれるニードル262に限定されるものではない。押出部材は、チップ部品を押し出すことができれば任意の形状の部材でよい。
【符号の説明】
【0046】
10 テーピングマシン
20、20a チップ剥離装置
22 チップ吸着部
24 シート吸着部
26 押出部
110 ウェハーリング
115 回転テーブル
120a~120g 処理ユニット
140 テーピングユニット
150 押出ユニット
222 吸着コレット
228 圧縮ばね
242 吸着ホルダ
262 ニードル
264 ニードル保持部材
264a 基部
264b 先端部
266 固定部材
270 軸受
270a ブッシュ
270b リテーナ
272 軸受ホルダ
274 ばね受け
276a、276b 突出部
278 ストッパ
290 ロッド
C 半導体チップ
HL1 吸着孔
HL2 孔
HL3 吸着孔
HL4 ニードル挿入孔
HL5 貫通孔
HL6 孔
HL7 貫通孔
HL8 穴
HL9 穴
HL10 吸引孔
HL11 吸引孔
HL12 孔
HL13 吸引孔
PL1 第1の面
PL2 面
S 空間
ST シート
【要約】      (修正有)
【課題】チップ部品に与える衝撃力を抑制し、チップ部品が損傷する可能性を低減するチップ剥離装置及びテーピングマシンを提供する。
【解決手段】チップ剥離装置において、押出ユニットを構成する押出部26は、シートに貼付された半導体チップを押し出すニードル262材と、ニードル262を保持するニードル保持部材264と、ニードル保持部材264をニードル262の長手方向に移動可能に保持する軸受270と、軸受270を保持する軸受ホルダ272と、ニードル262が半導体チップに与える衝撃を抑制する押出部材緩衝部を構成する圧縮ばね274及びばね受け276と、を備える。
【選択図】図3
図1
図2
図3
図4
図5
図6