IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

7144119レーザー加工装置およびレーザー加工装置による長尺状の被加工物の加工方法
<>
  • -レーザー加工装置およびレーザー加工装置による長尺状の被加工物の加工方法 図1
  • -レーザー加工装置およびレーザー加工装置による長尺状の被加工物の加工方法 図2
  • -レーザー加工装置およびレーザー加工装置による長尺状の被加工物の加工方法 図3
  • -レーザー加工装置およびレーザー加工装置による長尺状の被加工物の加工方法 図4
  • -レーザー加工装置およびレーザー加工装置による長尺状の被加工物の加工方法 図5
  • -レーザー加工装置およびレーザー加工装置による長尺状の被加工物の加工方法 図6
  • -レーザー加工装置およびレーザー加工装置による長尺状の被加工物の加工方法 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-20
(45)【発行日】2022-09-29
(54)【発明の名称】レーザー加工装置およびレーザー加工装置による長尺状の被加工物の加工方法
(51)【国際特許分類】
   B23K 26/04 20140101AFI20220921BHJP
   B23K 26/382 20140101ALI20220921BHJP
   B23K 26/00 20140101ALI20220921BHJP
【FI】
B23K26/04
B23K26/382
B23K26/00 N
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018147876
(22)【出願日】2018-08-06
(65)【公開番号】P2020022975
(43)【公開日】2020-02-13
【審査請求日】2021-07-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000205306
【氏名又は名称】大阪シーリング印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100150348
【弁理士】
【氏名又は名称】嶋田 太郎
(72)【発明者】
【氏名】中西 亨
(72)【発明者】
【氏名】▲桑▼原 政睦
【審査官】柏原 郁昭
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-207849(JP,A)
【文献】特開2012-061480(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 26/00-26/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一定の方向に連続的に供給される長尺状の被加工物を切断加工するためのレーザー加工装置であって、
前記被加工物に閉じた線形状の加工を行う場合に、
加工開始点と加工終了点とが、前記閉じた線の上に位置しており、前記加工終了点が加工方向において前記加工開始点を超えて位置するように制御し、
前記加工開始点から最初に前記加工終了点を加工するまでの間は、通常よりも弱い強度の加工を行うように制御し、
前記加工終了点を最初に加工した後は、通常の強度の加工を行うように制御するレーザー加工装置。
【請求項2】
前記通常より弱い強度の加工は、レーザー加工条件中のレーザー出力、パルス周波数、デューティ比及び加工速度からなる群より選択される少なくとも一つの条件が調整されることにより行われる請求項1に記載のレーザー加工装置。
【請求項3】
一定の方向に連続的に供給される被加工物を切断して閉じた線形状の加工を行う場合に、
加工開始点と加工終了点とが、前記閉じた線の上に位置しており、前記加工終了点が加工方向において前記加工開始点を超えて位置し、
前記加工開始点から最初に前記加工終了点を加工するまでの間は、通常よりも弱い強度の加工を行い、
前記加工終了点を最初に加工した後は、通常の強度の加工を行うレーザー加工装置による長尺状の被加工物の加工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザー加工装置およびレーザー加工装置による長尺状の被加工物の加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、紙やフィルムなどの長尺状の被加工物に対しても、加工自由度の高いレーザー加工装置による加工が提案されている。例えば、特許文献1にかかる例が記載されている。
【0003】
金属加工用のレーザー加工装置においては、引用文献2の特に図1に記載されているように、被加工物に閉じた線状の加工を行う場合、例えば、レーザー加工装置を用いて矩形や円形の加工をする場合に、図7に示すように、外周線R以外の場所に加工開始点Sを置き、加工開始点Sに貫通孔を開けてから、閉じた線である外周線Rに向けて加工を続け、外周線Rに達した点を方向転換点Tとして、後は外周線Rに沿ってレーザー加工することが一般的である。このとき加工終了点Eは、方向転換点Tと一致する。なお、加工開始点Sは本図のように外周線Rの内部に置く場合も、外部に置く場合もある。
【0004】
ところで、レーザー光の方向を変化させて、加工を行うレーザー加工装置において、レーザー光の方向の制御は、通常ガルバノスキャナと呼ばれる鏡の制御を行う装置を用いて行われる。レーザー光を反射させる鏡の方向を変化させることにより、レーザー光の向きを変え、その結果、加工点を制御する。そのため、鏡に慣性力が働き、方向転換時には、程度の差はあれ、鏡の揺れが生じることにより、加工線が不安定となる。一方、レーザー光の方向を一定として、加工装置全体を被加工物の表面上を移動させる方式や、被加工物を2次元方向に移動させる方式であれば、加工装置や被加工物の慣性は一般的に鏡の慣性より一層大きいため、加工装置や被加工物に揺れが生じることにより、加工線が不安定となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2016-107288号公報
【文献】特開平7-284974号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、レーザー光の方向を変化させる方式のレーザー加工装置においても、加工装置全体を被加工物の表面上を移動させる方式、および被加工物を2次元方向に移動させる方式のレーザー加工装置においても、加工すべき外周線の以外の場所から外周線に近づいてゆき、外周線に達したところで方向転換して、外周線をレーザー加工する方式のレーザー加工装置では、加工開始点周辺の加工が不安定となり、加工精度が低下することは避けられない。
【0007】
本発明は上記課題を解決することを課題としてなされたものであって、従来に比して、閉じた線形上の加工精度を向上させることができる、長尺状の被加工物を連続的に加工するためのレーザー加工装置およびレーザー加工装置による長尺状の被加工物の加工方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)本発明のレーザー加工装置は、一定の方向に連続的に供給される長尺状の被加工物を切断加工するためのレーザー加工装置であって、前記被加工物に閉じた線形状の加工を行う場合に、加工開始点と加工終了点とが、前記閉じた線の上に位置しており、前記加工終了点が加工方向において前記加工開始点を超えて位置するように制御し、前記加工開始点から最初に前記加工終了点を加工するまでの間は、通常よりも弱い強度の加工を行うように制御し、前記加工終了点を最初に加工した後は、通常の強度の加工を行うように制御する。
【0009】
上記構成によると、加工の開始点が閉じた線の上に設けられるため、閉じた線以外の場所から閉じた線に加工線が向かうことがない。よって、閉じた線以外の場所から閉じた線の加工に移るときに生ずる方向転換に伴う加工の不安定要因を取り除くことが可能となる。また、加工開始点において、通常より弱い強度の加工を行うため、加工開始点において被加工物に穴が開く等の過剰加工が生じない。また、加工終了点を、加工開始点を超えた線の上に設けたことにより、加工開始点から加工終了点については、再加工を行うことになる。そのため、加工開始時に加工開始点において、通常より弱い強度の加工を行ったとしても、再加工時に補うことにより、必要十分な加工を行うことができる。
【0012】
(3)前記通常より弱い強度の加工は、レーザー加工条件中のレーザー出力、パルス周波数、デューティ比及び加工速度からなる群より選択される少なくとも一つの条件が調整されることにより行われることが好ましい。
【0013】
通常より弱い強度の加工を行う方法として、レーザーの出力を低下させる方法の他に、パルス周波数を少なくしたり、デューティ比を下げたり、加工速度を早くするなどの方法が例示され、これらを単独で用いても、組み合わせて用いても良い。
【0014】
(4)本発明のレーザー加工装置による長尺状の被加工物の加工方法は、一定の方向に連続的に供給される被加工物を切断して閉じた線形状の加工を行う場合に、加工開始点と加工終了点とが、前記閉じた線の上に位置しており、前記加工終了点が加工方向において前記加工開始点を超えて位置し、前記加工開始点から最初に前記加工終了点を加工するまでの間は、通常よりも弱い強度の加工を行い、前記加工終了点を最初に加工した後は、通常の強度の加工を行うことを特徴とする。
【0015】
上記構成によると、加工の開始点が閉じた線の上に設けられる、即ち、加工線が閉じた線以外の場所から閉じた線に向かうことがない。そのため、閉じた線以外の場所から閉じた線に加工が移るときに生ずる方向転換に伴う加工の不安定要因を取り除くことが可能となる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、長尺状の被加工物を連続的に加工するためのレーザー加工装置であって、閉じた線以外の場所から閉じた線に加工線が移るときに生ずる方向転換に伴う加工の不安定要因を取り除くことにより、従来に比して、閉じた線形上の加工精度を向上させることができる構成のレーザー加工装置およびレーザー加工装置による長尺状の被加工物の加工方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】実施形態に係るレーザー加工装置の斜視図である。
図2】実施形態に係るレーザー加工装置の正面図である。
図3】実施形態に係るレーザー加工装置の平面図である。
図4】実施形態に係るレーザー加工装置の側面図である。
図5】同レーザー加工装置に用いるガルバノスキャナの模式斜視図である。
図6】同レーザー加工装置による閉じた線形状の加工の一例を示す模式図である。
図7】従来のレーザー加工装置による閉じた線状の加工の一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、図1図6を参照し、本発明のレーザー加工装置の一実施形態について説明する。なお、以下の説明において、図中に記載したように、x方向とは、被加工物である長尺状のフィルムの移動方向を指す。y方向とは、同フィルムの表面上において、x方向に対して垂直な方向、即ちフィルムの幅方向を指す。また、z方向とは、x方向およびy方向に対して垂直な方向、即ち同フィルムの表面に対して垂直な方向を指す。
【0019】
図1図2図3図4は、それぞれ本実施形態に係るレーザー加工装置の斜視図・正面図・平面図・側面図である。図1および図3からあきらかなように、このレーザー加工装置において、レーザー光を発射するためのレーザー発射部であるレーザー発振器1と、折り返しミラー21,22,23とビームエキスパンダー3および走査部4は略同一平面上に設けられている。図1図3に示されるように、この平面と略平行な平面、即ちx-y平面に沿って、被加工物である長尺状のフィルム9が、図示しないフィルム供給装置によって、x方向に一定速度で供給される。
【0020】
なお、図3に示すように、レーザー発振器1および折り返しミラー21の間や、折り返しミラー21および折り返しミラー22の間などには、安全のため、それぞれダクトが設けられているが、説明の便のため他の図では図示していない。また同様に、実際には安全上等の目的で必要となるカバー類も、図示していない。
【0021】
レーザー発射部であるレーザー発振器1としては、レーザー媒体で分類すると、CO2レーザーやエキシマレーザー等の気体レーザー、ルビーレーザーやNd:YAGレーザー等の固体レーザー、色素レーザー等の液体レーザー、レーザーダイオード等を用いる半導体レーザー等が挙げられる。また、励起源としては、放電を用いるもの、フラッシュランプを用いるもの、レーザーダイオードを用いるもの、化学反応を用いるもの等が挙げられる。用途に応じていずれかを組み合わせて使用すれば良い。一般的には、高出力が得られる炭酸ガスレーザー(CO2レーザー)が好ましい。
【0022】
折り返しミラー21~23は、レーザー発振器1から発射されたレーザー光をビームエキスパンダー3の入射口に誘導するために用いられる。レーザー発振器1から発射されたレーザー光を折り返しミラー21~23によって順に反射させた後、ビームエキスパンダー3に入射させることにより、レーザー発振器1からビームエキスパンダー3の入射口までに一定の光路長を確保することができる。その間に、レーザー光中の不純な成分を取り除くことができる。
【0023】
ビームエキスパンダー3はレーザー光を一定の倍率の平行光束に広げるレンズである。入射したレーザー光を走査部4内に設けられたガルバノスキャナのミラーに合った光束に調整するために使用する。また、このビームエキスパンダー3をy方向に移動させることにより、レーザー光の焦点距離を調整することができる。
【0024】
イメージ図である図5に示すように、走査部4内には、2組のガルバノスキャナ5,6およびfθレンズ7が備えられている。ガルバノスキャナ5は、ミラー51と、ミラー51に取り付けられた回動軸52と、回動軸52を制御する図示しない制御装置を備えている。この制御装置により回動角を制御された回動軸52を回動させることにより、ミラー51の角度を、回動軸を中心とした自在な角度に高速で変化させることができる。よって、ミラー51に照射されたレーザー光8を、1次元方向において自在な角度に反射させ、誘導することができる。
【0025】
ガルバノスキャナ6は、ミラー61と、ミラー61に取り付けられた回動軸62と、回動軸62を制御する図示しない制御装置を備えている。回動軸62の軸芯方向は、回動軸52の軸芯方向とは異なる方向に向けられている。このガルバノスキャナ6もガルバノスキャナ5と同様に、ミラー61に照射されたレーザー光8を1次元方向に自在に誘導することができる。したがって、2組のガルバノスキャナ5およびガルバノスキャナ6を組み合わせることにより、2次元方向、即ちx-y平面上の一定領域を占める加工領域91上の任意の加工点92にレーザー光を誘導することが可能となる。つまり、ガルバノスキャナ5およびガルバノスキャナ6は誘導部として機能する。
【0026】
ガルバノスキャナ5およびガルバノスキャナ6により誘導されたレーザー光は、fθレンズ7に照射される。fθレンズとは、入射角度θに比例した像高Yをもち、焦点距離がfである場合にY=fθの関係を有するレンズである。本実施例においては、ガルバノスキャナ6により偏向されたレーザー光を平面上に分布する焦点に集光することができる。
【0027】
フィルム9を供給する被加工物供給部としては、図1および図3を参酌し、リールに巻回された加工前のフィルム9を取り付ける巻出し軸と、加工後のフィルムを巻き取るリールを取り付ける巻取り軸とを備えた、図示しないフィルム供給装置が例示される。かかるフィルム供給装置によりフィルム9はx方向に順次供給される。
【0028】
このレーザー加工装置によるフィルム9の加工は、例えば、以下のように行う。まず、被加工物であるリールに巻回されたフィルム9を巻出し軸に取り付け、巻出し端部を巻き取り軸に取り付けられたリールに巻き付ける。
【0029】
続いて、レーザー光を発射し、安定したら、ビームエキスパンダー3をy方向に移動させることにより焦点をフィルム9の被加工面上に合わせる。この作業はフィルム9を止めた状態で行っても良いが、移動させた状態で行うことにより、より正確に行うことができる。
【0030】
その後加工を開始し、加工が終了したら、巻き取り軸に巻き取られた加工されたフィルムを回収する。
【0031】
図6に示すように、閉じた線形状の外周線Rをこのレーザー加工装置により切断加工する場合には、制御装置により2組のガルバノスキャナ5,6を含む誘導部を制御して、外周線R上の場所に加工開始点Sを置き、外周線Rに沿ってレーザー加工を開始する。このとき、通常は加工開始点Sに貫通孔を設ける必要はない。むしろ、加工開始時は、通常より弱い強度で加工が行われるよう制御する。
【0032】
次に、加工方向に従い、外周線R上をなぞるように加工を進める。外周線R上を一周して加工開始点Sを超えても加工を継続し、加工方向において加工開始点Sを超えたところに設けられた加工終了点Eにおいて加工を終了する。つまり、加工終了点Eは加工方向において加工開始点Sを超えた外周線R上に設けられている。
【0033】
上述のように、加工開始点Sでは、通常より弱い強度で加工が開始され、その後暫時強度を高め、最初に加工終了点Eを通過する際に通常の加工強度となるように制御される。そのため、外周線R加工の初期段階では、加工開始点Sから加工終了点Eまでの間の加工が不十分となるが、この間は加工の最終段階で再度加工されるため、外周線Rの加工終了時には十分な加工状態となる。
【0034】
上述の加工強度の調節はいかなる方法で行っても良い。直接的にレーザー光の出力を制御する方法で行っても良いし、パルス周波数やデューティ比を変えることにより行っても良い。また、これらが全て同一値であっても、加工速度を制御することで、単位面積あたりに掛けられるエネルギーを制御できるため、加工強度を変化させることができる。これらは、単独で制御しても良いし、いくつかを組み合わせて制御しても良い。
【0035】
以上に説明した本実施形態によれば、以下の効果を得ることができる。
【0036】
・本実施形態のレーザー加工装置によると、加工開始点Sが閉じた線形状の外周線R上に設けられるため、外周線R以外の場所から外周線Rに加工線が向かうことがない。そのため、方向転換点Tを設ける必要はなく、閉じた線以外の場所の加工から閉じた線の加工に移るときに生ずる方向転換に伴う加工の不安定要因を取り除くことが可能となり、その結果、加工精度が従来に比して向上する。
【0037】
・本実施形態のレーザー加工装置は、加工開始点Sにおいて、通常より弱い強度の加工を行うため、加工開始点Sにおいて被加工物に穴が開く等の過剰加工が生じない。また、加工終了点Eを、加工方向において加工開始点Sを超えた外周線R上に設けことにより、加工開始点Sから加工終了点Eについては、再加工を行うことになる。そのため、加工開始時に加工開始点において、通常より弱い強度の加工を行ったとしても、再加工時に補うことにより、必要十分な加工を行うことができる。
【0038】
・本実施形態のレーザー加工装置は、加工開始点Sにおいて行う通常より弱い強度の加工は、レーザー加工条件中のレーザー出力、パルス周波数、デューティ比及び加工速度の少なくとも一つの条件を調整することにより実施される。
これらはいずれもレーザー加工装置において標準的に調整可能な条件であるので、通常より弱い強度の加工は特段の装置の追加を行わずに実現しうる。
【0039】
・本実施形態のレーザー加工装置による長尺状の被加工物の加工方法は、被加工物に閉じた線形状の加工を行うレーザー加工装置による加工方法であって、加工開始点Sが閉じた線の上に設けられる。よって、加工線が閉じた線、即ち外周線R以外の場所から、外周線Rに向かうことがない。そのため、外周線R以外の場所から外周線Rに移るときに生ずる方向転換に伴う加工の不安定要因を取り除くことが可能となり、その結果加工精度が従来に比して向上する。
【0040】
なお、上記実施形態は以下のように変更しても良い。
【0041】
・上記実施形態において、被加工物として長尺状のフィルム9を用いているが、他の被加工物を用いても良い。長尺状の加工物であれば特に制限はなく、フィルムや樹脂膜の他、紙、布などであっても良い。また、裏紙のない粘着紙や裏紙つきの粘着紙(いわゆるタック紙)の加工に用いてもよい。
【0042】
・上記実施形態のレーザー加工装置において、通常より弱い強度の加工は、レーザー切断条件中のレーザー出力、パルス周波数、デューティ及び加工速度の少なくとも一つの条件を調整することにより実施しているが、加工条件によっては、他の方法で行ってもよい。たとえば、レーザー発振器1として例示した異なる種類のレーザー装置を2つ以上有する場合には、それらを切り替えて使用してもよい。
【0043】
・上記実施形態において、レーザー加工装置は、再度加工を行う際、すなわち、加工開始点Sから加工終了点Eに向かって2度目に加工を行う際にも通常より弱い強度で加工を行ってもよい。こうすることにより過剰な加工を防止することができる。
特に、裏紙つきの粘着紙を加工する場合であって、裏紙を切断せずに、粘着紙のみを加工したい際に有効な手段となる。
【0044】
・上記実施形態において、レーザー加工装置は、加工開始点Sでは、通常より弱い強度で加工が開始され、その後暫時強度を高め、最初に加工終了点Eを通過する際に通常の加工強度となるように制御されるが、通常より弱い強度で加工が開始されてから、加工終了点Eを通過する際の加工強度の高め方はいかなる方法であっても良い。直線的に強度を高めても、任意の曲線に沿って高めても、1段または多段の階段的に強度を高めても良い。再加工時の加工強度を含めて、加工状態が最良となるよう制御されれば良い。
【0045】
・上記実施形態において、レーザー加工装置は、fθレンズ7を有しているため、平面上の各点に均一に集光することができる。ただし、他の方法でかかる効果を実現できるのであれば、fθレンズ7に変えて、通常の集光レンズを用いてもよい。
【0046】
・上記実施形態および上記変更例は、本発明の実施形態の一例であって、本発明にはその他多くの実施形態が考えられることは、当然のことである。
【符号の説明】
【0047】
1 …レーザー発振器
21,22,23…折り返しミラー
3 …ビームエキスパンダー
4 …走査部
5,6 …ガルバノスキャナ
51,61 …ミラー
52,62 …回動軸
7 …fθレンズ
8 …レーザー光
9 …フィルム(被加工物)
91 …加工領域
92 …加工点
E …加工終了点
R …外周線
S …加工開始点
T …方向転換点
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7