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特許7144152ロボットハンド用接続部材およびロボット
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-20
(45)【発行日】2022-09-29
(54)【発明の名称】ロボットハンド用接続部材およびロボット
(51)【国際特許分類】
   B25J 17/02 20060101AFI20220921BHJP
【FI】
B25J17/02 G
B25J17/02 J
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018021192
(22)【出願日】2018-02-08
(65)【公開番号】P2019136809
(43)【公開日】2019-08-22
【審査請求日】2021-01-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000102692
【氏名又は名称】NTN株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】権田 崇大
【審査官】臼井 卓巳
(56)【参考文献】
【文献】実開昭61-137428(JP,U)
【文献】実開昭62-065128(JP,U)
【文献】実開昭63-169289(JP,U)
【文献】国際公開第2017/016727(WO,A1)
【文献】実開昭60-071592(JP,U)
【文献】実開平01-175193(JP,U)
【文献】特開2017-056524(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第02857153(EP,A1)
【文献】特開昭61-152384(JP,A)
【文献】実開平06-086034(JP,U)
【文献】特開2008-214054(JP,A)
【文献】米国特許第05194791(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 17/02-19/06
B23P 19/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハンド部とアーム部とを接続するロボットハンド用接続部材であって、
前記ハンド部および前記アーム部のいずれか一方と接続される第1部材と、
前記第1部材と間隔を介して配置され、前記ハンド部および前記アーム部のいずれか他方と接続される第2部材と、
前記第1部材に対する前記第2部材の相対的な位置を変更可能な状態で、前記第1部材と前記第2部材とを前記第1部材と前記第2部材の中央部で連結する連結部材と、
前記第2部材に対して前記第1部材が離れるように前記第1部材を付勢するともに、伸縮可能な弾性部材とを備え、
前記連結部材は、前記第1部材と前記第2部材との間の距離が小さくなることが可能であるとともに、前記第1部材から前記第2部材に向かう第1方向に対して交差する第2方向に前記第1部材が前記第2部材に対して相対的に移動可能に構成され、
前記連結部材は、前記第1部材と前記第2部材との相対的な位置を決定する位置決め部を含み、
前記第2部材には前記第1部材に面する部分に開口部が形成され、
前記開口部は、前記第1部材に近づくほど幅が狭くなるように、前記第1方向に対して傾斜した内周側壁を含み、
前記連結部材は、前記第1部材に固定されるとともに前記第1部材から前記開口部の内部にまで延在する延在部をさらに含み、
前記位置決め部は、前記開口部の前記内部に位置するとともに前記延在部に接続され、前記第1部材に近づくほど幅が狭くなる形状を有し、
前記位置決め部は、前記開口部の前記内周側壁に接触可能な側壁を有し、
前記連結部材を中心にして前記弾性部材が環状に複数配置され、
前記ハンド部に対して前記第1方向に沿って前記アーム部側に前記ハンド部を押し込む方向の衝撃がない場合に、前記第2部材の蓋部と前記蓋部に対向する前記位置決め部の面との間に隙間を有する、ロボットハンド用接続部材。
【請求項2】
前記弾性部材において、前記第2部材に接触する部分の表面形状は、前記第2部材に向けて凸となっている曲面状である、請求項1に記載のロボットハンド用接続部材。
【請求項3】
前記第1部材が前記第2部材に対して前記第1方向の周りに回転することを抑制する回転抑制部材をさらに備える、請求項1もしくは請求項2に記載のロボットハンド用接続部材。
【請求項4】
アーム部と、
ハンド部と、
前記アーム部と前記ハンド部とを接続する、請求項1~のいずれか1項に記載のロボットハンド用接続部材とを備える、ロボット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、アーム部とハンド部とを接続するロボットハンド用接続部材およびロボットに関し、より特定的には、ハンド部に加わる衝撃を吸収することが可能なロボットハンド用接続部材およびロボットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ハンド部とアーム部とを衝撃吸収可能なロボットハンド用接続部材で接続した構造を有するロボットが知られている。たとえば、特開平7-24776号公報では、アーム部側の部品とハンド部側の部品を接続する連結部が円周上に八カ所配置されている。連結部は球体を介して対向配置された受圧座と保持材とを含む。更に、連結部が配置された円周の中心にバネが配置されている。このバネが引っ張られることにより連結部が固定されている。この構造により、ハンド部に対してアーム部の移動方向(たとえばアーム部の回転方向)にバネの張力以上の力が加わった時、力が加わった側と反対側の連結部を回転軸としてハンド部がアーム部に対して回転移動する。このように、連結部が変形(回転)することによりハンド部に対してアーム部の回転方向に沿って加わった力を逃がすことができる。これによりハンド部からアーム部を介してロボットに伝わる衝撃を吸収し、ロボットを保護している。また、上記力が取り除かれた時、バネの張力(反力)によりハンド部は元の状態に戻る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平7-24776号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、たとえばバラ積みのワークが入った箱からロボットによりワークをピッキングする場合を考える。この場合、ワークの位置はカメラなどにより認識し、事前に登録したバラ積みのワークが入った箱の形状の干渉領域を考慮して、ハンド部の姿勢がワークのピッキングが可能となるようにロボットアームを動かし、ワークのピッキングを行う。
【0005】
しかし、ワークや箱の位置はハンド部との接触や外的要因により変化する。ワークや箱の位置が変化した時、実際のワークや箱の位置とカメラの認識したワークや箱の位置との間にずれが生じる。この場合、ハンド部やハンド部の把持するワークが、ワークや箱と干渉する領域に位置する可能性がある。このような干渉が発生した場合、ハンド部やハンド部が把持したワークに当該干渉による衝撃が加わり、損傷する可能性がある。
【0006】
このような損傷を抑制するため、特開平7-24776号公報に開示されたロボットを利用することが考えられる。しかし、上述した干渉発生時、ハンド部はワークや箱に向かっていく動きをしているため、ハンド部にはアーム部に向けて垂直に押し込む方向の衝撃とアーム部の回転方向に加わる衝撃との2種類の衝撃が加えらえる可能性がある。そのため、特開平7-24776号公報に開示された構造のように、アーム部の回転方向に沿った衝撃のみを吸収する機構では、アーム部に向けて垂直に押し込む方向の衝撃を吸収することが困難である。
【0007】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の目的は、ハンド部に対してアーム部に向かう方向に加えられる衝撃とアーム部の回転方向に沿って加えられれる衝撃とを吸収することが可能なロボットハンド用接続部材およびロボットを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示に係るロボットハンド用接続部材は、ハンド部とアーム部とを接続するロボットハンド用接続部材であって、第1部材と第2部材と連結部材と弾性部材とを備える。第1部材は、ハンド部およびアーム部のいずれか一方と接続される。第2部材は、第1部材と間隔を介して配置され、ハンド部およびアーム部のいずれか他方と接続される。連結部材は、第1部材に対する2部材の相対的な位置を変更可能な状態で、第1部材と第2部材とを連結する。弾性部材は、第2部材に対して第1部材が離れるように第1部材を付勢するともに、伸縮可能である。連結部材は、第1部材と第2部材との間の距離が小さくなることが可能であるとともに、第1部材から第2部材に向かう第1方向に対して交差する第2方向に、第1部材が第2部材に対して相対的に移動可能に構成されている。
【0009】
本開示に従ったロボットは、アーム部と、ハンド部と、上記ロボットハンド用接続部材とを備える。ロボットハンド用接続部材は、当該アーム部とハンド部とを接続する。
【発明の効果】
【0010】
上記によれば、ハンド部に対してアーム部に向かう方向に加えられる衝撃とアーム部の回転方向に沿って加えられれる衝撃とを吸収することが可能なロボットハンド用接続部材およびロボットを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施の形態に係るロボットハンドの側面模式図である。
図2図1に示したロボットハンドの正面模式図である。
図3図2の線分III-IIIにおける断面模式図である。
図4図2の線分IV-IVにおける断面模式図である。
図5】本発明の実施の形態に係るロボットの模式図である。
図6図1に示したロボットハンドの動作を説明するための模式図である。
図7図1に示したロボットハンドの動作を説明するための模式図である。
図8図1に示したロボットハンドのハンド部のツメ部の構成を説明するための模式図である。
図9図1に示したロボットハンドの第1の変形例を説明するための断面模式図である。
図10図1に示したロボットハンドの第2の変形例を説明するための断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を説明する。なお、以下の図面において同一または相当する部分には同一の参照番号を付しその説明は繰返さない。
【0013】
<ロボットアームの構成>
図1は、本発明の実施の形態に係るロボットハンドの側面模式図である。図2は、図1に示したロボットハンドの正面模式図である。なお、図2のロボットハンドの上側に表示された接続部材については図1の線分A-A断面における断面図が示されている。図3は、図2の線分III-IIIにおける断面模式図である。図4は、図2の線分IV-IVにおける断面模式図である。図1図4を参照しながら本発明の実施の形態に係るロボットハンドを説明する。
【0014】
図1図4に示すように、本発明の実施の形態に係るロボットハンドは、ロボットハンド用接続部材100と、当該接続部材100に接続されたハンド部110とを備える。ロボットハンド用接続部材100は、ハンド部110と図示しないアーム部とを接続するロボットハンド用接続部材であって、第1部材11と第2部材5と連結部材22と弾性部材21と回転抑制部材8とを備える。
【0015】
第1部材11は、ハンド部110と接続される。第1部材11の平面形状は図4に示すように円形状である。なお第1部材11の平面形状は四角形状、三角形状などの多角形状や楕円形状など任意の形状とすることができる。第1部材11には弾性部材21が設置されている。弾性部材21は、第2部材5に対して第1部材11が離れるように第1部材11を付勢するともに、伸縮可能である。
【0016】
弾性部材21は、図2に示すように弾性体10とキャップ部材9とを含む。弾性体10はたとえばコイルバネである。弾性体10としては伸縮可能な弾性体であれば、他の形状のバネを用いてもよい。第1部材11には弾性部材21を収容するための凹部11bが形成されている。凹部11bの数は1つでもよいが、第1部材11には複数の凹部11bが形成されていてもよい。第1部材11において第2部材5と対向する表面に上記複数の凹部11bが形成されている。複数の凹部11bは環状に等間隔に配置されている。環状に配置された複数の凹部11bに囲まれた領域に、第1部材11の表面から第2部材5側に延びる延在部11aが形成されている。
【0017】
凹部11bのそれぞれには弾性部材21が収容されている。弾性部材21を構成する弾性体10の一方端部は凹部11bの底部に接触している。弾性体10の一方端部と反対側に位置する他方端部を覆うようにキャップ部材9が配置されている。キャップ部材9の頂部は図2に示すように第2部材5の表面に接触している。弾性部材21において、第2部材5に接触する部分であるキャップ部材9の頂部の表面形状は、第2部材5に向けて凸となっている曲面状である。キャップ部材9の頂部の形状は、たとえば半球状であってもよい。キャップ部材9の頂部の形状は、第2部材5との相対角度変位が生じる状態(図7参照)を容易に可能にする形状であればよい。
【0018】
凹部11bおよび弾性部材21の数は、図4に示すように6個であるが、他の任意の数としてもよい。たとえば、延在部11aを中心とした環状に等間隔に配置されていれば、2~5、あるいは7以上の凹部11bおよび弾性部材21を配置してもよい。なお、凹部11bおよび弾性部材21の数を1としてもよい。
【0019】
第2部材5は、第1部材11と間隔を介して配置され、図示しないアーム部と接続される。第2部材5は、開口部5cが形成された本体部5bと、当該本体部5bと接続された蓋部5aとを含む。第2部材5の本体部5bには第1部材11に面する部分に開口部5cが形成される。開口部5cは、第1部材11に近づくほど幅が狭くなるように、図2の上下方向である第1方向に対して傾斜した内周側壁5dを含む。開口部5cの平面形状は図3に示すように円形状である。つまり、開口部5cは逆円錐台形状を有している。
【0020】
連結部材22は、第1部材11の表面から第2部材側に延びる延在部11aと、当該延在部11aに接続された位置決め部6と、当該位置決め部6を延在部11aに固定するための固定部材としてのネジ7とを主に含む。位置決め部6は、第1部材11と第2部材5との相対的な位置を決定する。延在部11aは、第1部材11の凹部11bが形成された表面から第2部材5の開口部5cの内部にまで延在する。なお、図2では延在部11aは第1部材11と一体に形成されているが、第1部材11と別体である延在部11aを当該第1部材11に固定してもよい。位置決め部6は、開口部5cの内部に位置するとともに延在部11aにネジ7により接続される。位置決め部6は、第1部材11に近づくほど幅が狭くなるテーパ形状を有する。位置決め部6は、逆円錐台形状である。位置決め部6の側壁6aは、開口部5cの内周側壁5dに接触可能である。連結部材22は、第1部材11に対する第2部材5の相対的な位置を変更可能な状態で、第1部材11と第2部材5とを連結する。すなわち、連結部材22では、後述する図6に示すように、位置決め部6が開口部5c内において蓋部5a側に押されて移動することで、第1部材11と第2部材5との間の距離が小さくなることが可能である。また、後述する図7に示すように、開口部5cの中心軸に対して位置決め部6の中心軸が傾斜するように位置決め部6が変位することで、第1部材11から第2部材5に向かう第1方向に対して交差する第2方向に、第1部材11が第2部材5に対して相対的に移動可能である。
【0021】
回転抑制部材8は、図2に示すように、第1部材11が第2部材5に対して図1および図2の上下方向である第1方向の周りに回転することを抑制する。回転抑制部材8は、第2部材5に形成された開口部材8aと、当該開口部材8aに形成された開口部8c内部に延在する一方端部を含み、第1部材11に接続された挿入部材8bとを主に含む。開口部材8aは第2部材5の外周表面上に配置されている。開口部材8aの開口部8cは、第1方向において開口部材8aを貫通するように形成されている。挿入部材8bは、上記一方端部と反対側に位置する他方端部を含み、当該他方端部が第1部材11の外周表面に接続される。図2に示すように開口部8cの幅は挿入部材8bの一方端部の幅より大きい。そのため、後述する図7に示すように第2部材5に対して第1部材11が傾くような変位(角度変位)をした場合でも、ある程度の第1部材11の傾きは許容される。しかし、第2部材5に対して第1部材11が第1方向の周りに回転するような変位をする場合、挿入部材8bの一方端部は開口部8cの幅の範囲内でしか移動できない。この結果、第2部材5に対する第1部材11の上記回転するような変位の変位量は、開口部8cの幅により規制される。
【0022】
ハンド部110は、図1および図2に示すように、第1部材11に接続さた本体部12と、当該本体部12において第1部材11に接続された根元部と反対側に位置する先端側に位置する爪部14と、当該爪部14に接続された補助爪部16とを主に含む。爪部14は少なくとも2つ配置されている。図2では2つの爪部14が対向配置されている。爪部14は互いの間隔を変化させることが可能であり、当該爪部14によりワーク13を把持できる。2つの爪部14にそれぞれ接続された補助爪部16の先端部間の距離は、爪部14の間の距離より小さくなっている。このため、爪部14が把持可能なワーク13のサイズより小さいサイズのワーク13を補助爪部16を用いて搬送できる。ここでワーク13は、例えば転がり軸受の内輪である。
【0023】
<ロボットの構成>
図5は、図1図4に示したロボットハンドを備える、本発明の実施の形態に係るロボットの模式図である。図5を参照して、本発明の実施の形態に係るロボットを説明する。
【0024】
図5に示すように、ロボット1は、本体部1aと、本体部1aに接続されたアーム部1bと、アーム部1bに接続されたロボットハンドとを主に備える。ロボットハンドは、アーム部1bを構成するロボットハンド用接続部材100と、ハンド部110とを含む。ロボットハンド用接続部材100はアーム部1bに接続される。ハンド部110はロボットハンド用接続部材100に接続される。
【0025】
ロボット1は、たとえば、箱3の内部に収容されたワーク13(図1参照)を当該箱3の内部からワーク搬送用のコンベア4上に移動させる作業を行う。この作業のため、たとえば箱3の情報にはワーク13を認識するためのカメラ装置2が配置される。当該カメラ装置2からの画像情報に基づき、図示しない制御において箱3や当該箱3内部でのワーク13の配置が認識される。当該画像情報から認識されたワーク13の箱3内部での位置情報に基づき、制御部はロボット1を制御する。
【0026】
<ロボットハンドの動作>
図6および図7は、図1に示したロボットハンドの動作を説明するための模式図である。図6および図7を参照しながらロボットハンドの動作を説明する。
【0027】
ロボットハンドのハンド部110においてワーク13を把持し、当該ワーク13を搬送する場合、ハンド部110には図6に示すようにアーム部1b(図5参照)に向けて垂直に押し込む方向の衝撃と、図7に示すようにアーム部1bの回転方向に加わる衝撃との2種類の衝撃が加えらえる可能性がある。それぞれの場合について以下説明する。
【0028】
図6に示すように、第1部材11側から第2部材5側に向けた矢印20により示す第1方向に沿ってハンド部110へ力が加わる場合を考える。この場合、複数の弾性部材21の実質的にすべてが当該力により収縮し、第1部材11が第2部材5側に変位する。すなわち複数の弾性部材21の弾性体10が収縮することにより衝撃を吸収する。また、この時位置決め部6は開口部5cの内周側壁5dから離れ蓋部5a側に移動する。このようにして、ロボットハンド用接続部材100は矢印20により示す第1方向に沿ってワーク13に加えられる力を吸収することができる。この結果、当該衝撃によりワーク13やハンド部110が損傷する可能性を低減できる。
【0029】
上述した第1方向に沿った力がハンド部110に加えられなくなった場合には、弾性部材21の弾性体10が伸びることにより第1部材11が第2部材5から離れる方向に移動する。また、このとき位置決め部6が開口部5cの内周側壁5dに沿って移動し、開口部5c内で最も第1部材11寄りの位置に位置決めされることにより、第2部材5に対する第1部材11の定常状態での位置が決定される。このように、衝撃が吸収された後は、弾性部材21により第1部材11の第2部材5に対する位置が自動的に復旧されるため、人でで第1部材11の位置を復帰させるような構成と比較してロボット1の稼働率の低下を抑制できる。
【0030】
また、弾性体10の弾性力により、当該第1部材11の第2部材5に対する位置はハンド部110に対してある程度の応力が加えられた場合でも維持される。たとえば、ハンド部110が保持するワーク13の質量が大きい場合には、図6の矢印20と反対方向に向かう力がロボットハンド用接続部材100に加えられる。この場合、開口部5cの第1部材11寄りの端部の幅より、位置決め部6の最大幅が大きくなっているため、位置決め部6が開口部5cの第1部材11寄りの端部から抜け出すことはない。したがって、上記矢印20と反対方向に向かう大きな力がハンド部110に印加された場合であっても、第1部材11が第2部材5から分離するといった不良は発生しない。このように、弾性部材21と連結部材22とを用いて、機械的に第1部材11と第2部材5とを接続しているので、当該第1部材11と第2部材5との接続や位置決めに磁力を利用する場合のようにハンド部110におけるワークの最大質量が制限されたり、当該磁力の影響のためワーク13の材質が鉄以外の材質に制限されるといった問題は発生しない。
【0031】
次に、図7に示すように、第1部材11側から第2部材5側に向けた第1方向と交差する方向である、矢印30により示す第2方向に沿ってハンド部110へ力が加わる場合を考える。この場合、第1部材11が第2部材5の開口部5cが形成された表面に対して傾くように変位する。この結果、複数の弾性部材21うちの一部は当該力により収縮し、他の一部は当該力に起因して伸長する。より具体的には、矢印30に示す方向から力が加えられた場合に、当該力が加えられた側に位置する(図7の左側に位置する)弾性部材21の弾性体10は伸長する。一方、当該力が加えられた側と反対側に位置する(図7の右側に位置する)弾性部材21の弾性体10は収縮される。当該弾性体10の収縮により、衝撃が吸収される。
【0032】
この時、位置決め部6は開口部5cの内周側壁5dから部分的に離れ、開口部5cの内周側壁5dに対して位置決め部6の側壁6aが傾斜した状態となる。このようにして、ロボットハンド用接続部材100は矢印30により示す第2方向に沿ってワーク13に加えられる力を吸収することができる。この結果、当該衝撃によりワーク13やハンド部110が損傷する可能性を低減できる。
【0033】
上述した第2方向に沿った力がハンド部110に加えられなくなった場合には、弾性部材21の収縮していた弾性体10が伸びるとともに、伸長していた弾性体10が収縮することにより、第1部材11が第2部材5に対して図2に示したような定常状態の位置に復帰する。
【0034】
<ハンド部のツメ部の構成>
図8は、図1に示したロボットハンドのハンド部のツメ部の構成を説明するための模式図である。ハンド部110においては、図8に示すように爪部14に取付けられる補助爪部16を交換可能な構成としてもよい。具体的には、図8に示すように、爪部14の本体部に設置された補助爪部16はたとえば矢印に示す方向に爪部14から取り外し可能となっている。補助爪部16を爪部14に固定する方法は任意の方法を採用できる。たとえば、爪部14および補助爪部16にネジ穴を設け、補助爪部16のねじ穴を介して爪部14のねじ穴まで到達するようにネジなどの固定部材を配置することで、補助爪部16を爪部14に固定することができる。補助爪部16について、ワーク13のサイズに合わせて当該補助爪部16を複数種類準備しておけば、サイズの異なるワーク13、たとえば環状のワーク13であってその内径が異なるものについても、当該補助爪部16を交換することで容易に本開示に係るロボット1によりワーク13を搬送できる。
【0035】
<作用効果>
本開示に係るロボットハンド用接続部材100は、ハンド部110とアーム部1bとを接続するロボットハンド用接続部材100であって、第1部材11と第2部材5と連結部材22と弾性部材21とを備える。第1部材11は、ハンド部110およびアーム部1bのいずれか一方と接続される。第2部材5は、第1部材11と間隔を介して配置され、ハンド部110およびアーム部1bのいずれか他方と接続される。連結部材22は、第1部材11に対する第2部材5の相対的な位置を変更可能な状態で、第1部材11と第2部材5とを連結する。弾性部材21は、第2部材5に対して第1部材11が離れるように第1部材11を付勢するともに、伸縮可能である。連結部材22は、第1部材11と第2部材5との間の距離が小さくなることが可能であるとともに、第1部材11から第2部材5に向かう第1方向に対して交差する第2方向に、第1部材11が第2部材5に対して相対的に移動可能に構成されている。
【0036】
このようにすれば、図6に示すようにハンド部110に対して第1方向に沿ってアーム部1b側にハンド部110を押し込む方向の衝撃と、図7に示すように第2方向に沿ってハンド部110に加えられる衝撃との両方を、第1部材11が第2部材5に対して相対的に移動することにより、つまりロボットハンド用接続部材100により吸収することができる。また、当該衝撃がロボットハンド用接続部材100により吸収された後、弾性部材21により第1部材11が付勢されているため、連結部材22によって接続された第1部材11と第2部材5とは定常位置に、つまり第1部材11と第2部材5とが連結部材22を介して互いに最も離れた配置に自動的に戻ることができる。
【0037】
上記ロボットハンド用接続部材100において、連結部材22は、第1部材11と第2部材5との相対的な位置を決定する位置決め部6を含む。この場合、ハンド部110に対して衝撃が加わっていない通常時における第1部材11と第2部材5との相対的な位置を一定に保つことができる。
【0038】
上記ロボットハンド用接続部材100において、第2部材5には第1部材11に面する部分に開口部5cが形成される。開口部5cは、第1部材11に近づくほど幅が狭くなるように、第1方向に対して傾斜した内周側壁5dを含む。連結部材22は、第1部材11に固定されるとともに第1部材11から開口部5cの内部にまで延在する延在部11aをさらに含む。位置決め部6は、開口部5cの内部に位置するとともに延在部11aに接続され、第1部材11に近づくほど幅が狭くなる形状を有する。位置決め部6は、開口部5cの内周側壁5dに接触可能な側壁6aを有する。
【0039】
この場合、弾性部材21により第1部材11が付勢されることで、位置決め部6の側壁6aが第2部材5の開口部5cの内周側壁5dに接触し、当該開口部5c内部での位置決め部6の配置が規定される。この結果、ハンド部110に対して衝撃が加えられていない通常状態において、第2部材5に対する第1部材11の配置が連結部材22によって所定の位置に決定される。
【0040】
上記ロボットハンド用接続部材100では、弾性部材21において、第2部材5に接触する部分であるキャップ部材9の頂部の表面形状は、第2部材5に向けて凸となっている曲面状である。この場合、図7に示すように第2方向に沿ってハンド部110に衝撃が加えられたときに、弾性部材21の伸縮方向が第2部材5の表面に対する角度を滑らかに変えることができる。このため、当該衝撃による弾性部材21の伸縮を容易に行うことができる。
【0041】
上記ロボットハンド用接続部材100は、回転抑制部材8をさらに備える。回転抑制部材8は、第1部材11が第2部材5に対して第1方向の周りに回転することを抑制する。この場合、ハンド部110に衝撃が加えられたときに、第1部材11が第2部材5に対して第1方向の周りに回転することを回転抑制部材8により抑制できる。このため、第2部材5に対して第1部材11が第1方向の周りに回転した状態となることを防止できる。
【0042】
本開示に従ったロボット1は、アーム部1bと、ハンド部110と、上記ロボットハンド用接続部材100とを備える。ロボットハンド用接続部材100は、当該アーム部1bとハンド部110とを接続する。
【0043】
このようにすれば、ハンド部110に加えられる第1方向に沿った衝撃と第2方向に沿った衝撃との両方をロボットハンド用接続部材100により吸収できる。このため、当該2方向からの衝撃のいずれもハンド部110からアーム部1bに伝わることが無く、当該衝撃によってロボット1が破損する可能性を低減できる。
【0044】
<ロボットハンドの変形例の構成および作用効果>
図9は、図1に示したロボットハンドの第1の変形例を説明するための断面模式図である。図9図3に対応する。図9に示したロボットハンドは、基本的には図1図4に示したロボットハンドと同様の構成を備えるが、ロボットハンド用接続部材100における開口部5cおよび位置決め部6の平面形状が四角形状となっている点が、つまり、開口部5cおよび位置決め部6は逆四角錐台形状を有している点が、図1図4に示したロボットハンドと異なっている。このような構成とすることで、図1図4に示したロボットハンドと同様の効果を得ることができるとともに、開口部5cと位置決め部6の平面形状が円形状ではないため、開口部5cに対する位置決め部6の第1方向まわりの回転を抑制できる。このため、図1に示した回転抑制部材8を設置することなく、上記開口部5cと位置決め部6との嵌め合いによって第1方向の回転軸周りにおける第1部材11の第2部材5に対する回転を抑制できる。この結果、ロボットハンド用接続部材100の構造を簡略化できる。
【0045】
なお、開口部5cおよび位置決め部6の平面形状は、上記のような四角形状以外であったもよい。たとえば、平面形状は非点対称の形状であってもよい。具体的には、当該平面形状を三角形状や五角形状、台形状や星形、楕円形状など任意の形状としてもよい。ただし、この場合も第1の方向に沿った断面形状については、第1部材11に近づくにつれて幅が狭くなるテーパ形状とすることが好ましい。
【0046】
図10は、図1に示したロボットハンドの第2の変形例を説明するための断面模式図である。図10図2に対応する。図10に示したロボットハンドは、基本的には図1図4に示したロボットハンドと同様の構成を備えるが、ロボットハンド用接続部材100の向きが図1図4に示したロボットハンドと逆になっている点が、図1図4に示したロボットハンドと異なっている。つまり、ロボットハンド用接続部材100の第2部材5にハンド部110が接続され、第1部材11にアーム部1b(図5参照)が接続される。このような構成としても、図1図4に示したロボットハンドと同様の効果を得ることができる。
【0047】
以上のように本発明の実施の形態について説明を行ったが、上述の実施の形態を様々に変形することも可能である。また、本発明の範囲は上述の実施の形態に限定されるものではない。本発明の範囲は、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更を含むことが意図される。
【符号の説明】
【0048】
1 ロボット、1a,5b,12 本体部、1b アーム部、2 カメラ装置、3 箱、4 コンベア、5 第2部材、5a 蓋部、5c,8c 開口部、5d 内周側壁、6 位置決め部、6a 側壁、7 ネジ、8 回転抑制部材、8a 開口部材、8b 挿入部材、9 キャップ部材、10 弾性体、11 第1部材、11a 延在部、11b 凹部、13 ワーク、14 爪部、16 補助爪部、20,30 矢印、21 弾性部材、22 連結部材、100 ロボットハンド用接続部材、110 ハンド部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10