(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-20
(45)【発行日】2022-09-29
(54)【発明の名称】サンルーフ用外装部品及びサンルーフ用複合部品
(51)【国際特許分類】
C08L 69/00 20060101AFI20220921BHJP
C08K 7/14 20060101ALI20220921BHJP
B32B 5/02 20060101ALI20220921BHJP
C09B 67/20 20060101ALI20220921BHJP
C09B 1/00 20060101ALN20220921BHJP
【FI】
C08L69/00
C08K7/14
B32B5/02 Z
C09B67/20 F
C09B1/00
(21)【出願番号】P 2018036614
(22)【出願日】2018-03-01
【審査請求日】2021-02-16
(73)【特許権者】
【識別番号】313012349
【氏名又は名称】旭ファイバーグラス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【氏名又は名称】清水 義憲
(72)【発明者】
【氏名】久田 直人
(72)【発明者】
【氏名】石田 明子
(72)【発明者】
【氏名】早田 幸司
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 浩二
(72)【発明者】
【氏名】関根 圭二
【審査官】西山 義之
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/069659(WO,A1)
【文献】特表2010-537012(JP,A)
【文献】特開2009-234432(JP,A)
【文献】特開2004-331679(JP,A)
【文献】国際公開第2008/047673(WO,A1)
【文献】特開2014-100972(JP,A)
【文献】特開2014-101002(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第105131549(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第105131547(CN,A)
【文献】特開2011-246728(JP,A)
【文献】特開2007-153729(JP,A)
【文献】国際公開第2015/159813(WO,A1)
【文献】特開2012-251083(JP,A)
【文献】特開2005-146219(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 69/00
C08K 7/14
B32B 5/02
C09B 67/20
C09B 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス繊維強化複合材料の成形体からなるサンルーフ用外装部品であって、
前記ガラス繊維強化複合材料が、脂肪族ポリカーボネート樹脂、ガラス繊維及び染料を含有し、
前記脂肪族ポリカーボネート樹脂及び前記ガラス繊維の合計量を100質量部として、前記ガラス繊維強化複合材料における前記脂肪族ポリカーボネート樹脂の含有量が99~70質量部、前記ガラス繊維の含有量が1~30質量部であり、
前記脂肪族ポリカーボネート樹脂の波長589.3nmの光に対する屈折率と、前記ガラス繊維の波長589.3nmの光に対する屈折率との差が、0.01以下であり、
前記ガラス繊維が、100μm以下の繊維長を有する第一のガラス繊維と、300μm以上の繊維長を有する第二のガラス繊維と、を含有し、
前記第一のガラス繊維の含有量C
1に対する前記第二のガラス繊維の含有量C
2の比(C
2/C
1)が、
0.9~25であ
り、
前記成形体が、
前記脂肪族ポリカーボネート樹脂、前記ガラス繊維及び前記染料を含有する本体部と、
前記本体部上に設けられ、前記脂肪族ポリカーボネート樹脂及び前記染料を含有し、前記ガラス繊維を含まないスキン層と、
を有し、
前記スキン層の厚さが5~30μmである、サンルーフ用外装部品。
【請求項2】
前記成形体が、光沢度が80以上、算術平均表面粗さが0.3μm以下の面を有する、請求項1に記載のサンルーフ用外装部品。
【請求項3】
電着塗装された金属部品に、接着剤又は両面テープを介して接合される、請求項1
又は2に記載のサンルーフ用外装部品。
【請求項4】
請求項1~
3のいずれか一項に記載のサンルーフ用外装部品と、
接着剤又は両面テープを介して前記サンルーフ用外装部品に接合された金属部品と、
を備える、サンルーフ用複合部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のサンルーフを構成するための外装部品及びそれを含む複合部品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、車両の外装部品として樹脂製部品が広く使用されている。例えば、特許文献1には、透明合成樹脂板にハードコート層及び有色スクリーン印刷層を積層させた積層パネルを、接着用プライマー及び弾性接着剤によって車体に接着固定することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
車両のサンルーフを構成する外装部品には、優れた剛性、耐傷つき性、耐薬品性、耐候性等の特性が求められている。
【0005】
また、サンルーフ用外装部品は、高温環境下に曝されたり、雨等で濡れたりする場合があるが、温度変化及び吸水による寸法変化が大きいと、車体等の金属部品との接合部に過大な負荷がかかるおそれがある。このため、サンルーフ用外装部品には、温度変化及び吸水による寸法変化が小さいことも求められている。
【0006】
さらに、サンルーフ用外装部品は、車両の外観に影響を与えるため、高い意匠性が求められている。従来から、着色剤を配合した樹脂成形体が知られているが、このような樹脂成形体に対して、サンルーフ用外装部品に適した機械特性を付与しようとすると、色調が変化して良好な外観及び意匠性が維持できない場合があった。
【0007】
そこで、本発明は、優れた剛性、耐傷つき性、耐薬品性及び耐候性を有し、高温環境下又は湿潤環境下に曝されても寸法変化が小さく、且つ、良好な外観及び意匠性を容易に得ることが可能な、サンルーフ用外装部品を提供することを目的とする。本発明はまた、上記サンルーフ用外装部品と金属部品とを接合した、サンルーフ用複合部品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一側面は、ガラス繊維強化複合材料の成形体からなるサンルーフ用外装部品に関する。上記ガラス繊維強化複合材料は、脂肪族ポリカーボネート樹脂、ガラス繊維及び染料を含有する。また、上記脂肪族ポリカーボネート樹脂及び上記ガラス繊維の合計量を100質量部として、上記ガラス繊維強化複合材料における上記脂肪族ポリカーボネート樹脂の含有量は99~70質量部であり、上記ガラス繊維の含有量は1~30質量部である。また、上記脂肪族ポリカーボネート樹脂の波長589.3nmの光に対する屈折率と、上記ガラス繊維の波長589.3nmの光に対する屈折率との差は、0.01以下である。
【0009】
上記サンルーフ用外装部品は、特定の樹脂及びガラス繊維を組み合わせているため、優れた剛性、耐傷つき性、耐薬品性及び耐候性を有しており、また、高温環境下又は湿潤環境下に曝されても寸法変化が小さい。また、上記サンルーフ用外装部品は、着色剤として染料を用い、脂肪族ポリカーボネート樹脂との屈折率差が極めて小さいガラス繊維を用いることで、樹脂及び染料により発現される色調を維持したまま、上述の優れた特性が得られている。
【0010】
一態様において、上記ガラス繊維は、100μm以下の繊維長を有する第一のガラス繊維と、300μm以上の繊維長を有する第二のガラス繊維と、を含有していてよく、上記第一のガラス繊維の含有量C1に対する上記第二のガラス繊維の含有量C2の比(C2/C1)は、0.5~50であってよい。
【0011】
一態様において、上記成形体は、光沢度が80以上、算術平均表面粗さが0.3μm以下の面を有していてよい。
【0012】
一態様において、上記成形体は、上記脂肪族ポリカーボネート樹脂、上記ガラス繊維及び上記染料を含有する本体部と、上記本体部上に設けられ、上記脂肪族ポリカーボネート樹脂及び上記染料を含有し、上記ガラス繊維を含まないスキン層と、を有していてよい。
【0013】
一態様に係るサンルーフ用外装部品は、電着塗装された金属部品に、接着剤又は両面テープを介して接合されるものであってよい。
【0014】
本発明の他の一側面は、上記サンルーフ用外装部品と、接着剤又は両面テープを介して上記サンルーフ用外装部品に接合された金属部品と、を備える、サンルーフ用複合部品に関する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、優れた剛性、耐傷つき性、耐薬品性及び耐候性を有し、高温環境下又は湿潤環境下に曝されても寸法変化が小さく、且つ、良好な外観及び意匠性を容易に得ることが可能な、サンルーフ用外装部品が提供される。また、本発明によれば、上記サンルーフ用外装部品と金属部品とを接合した、サンルーフ用複合部品が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】サンルーフ用外装部品の適用例を説明するための図である。
【
図2】(a)は、実施例B-1で得られたサンルーフ用外装部品の試験片の外観を示す図であり、(b)は、参考例1で得られたサンルーフ用外装部品の試験片の外観を示す図である。
【
図3】(a)は、実施例B-1で得られたサンルーフ用外装部品の試験片の断面顕微鏡画像を示す図であり、(b)は、参考例1で得られたサンルーフ用外装部品の試験片の断面顕微鏡画像を示す図である。
【
図4】(a)は、実施例B-1で得られたサンルーフ用外装部品の試験片の表面顕微鏡画像を示す図であり、(b)は、参考例1で得られたサンルーフ用外装部品の試験片の表面顕微鏡画像を示す図であり、(c)は、参考例2で得られたサンルーフ用外装部品の試験片の表面顕微鏡画像を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照しつつ、本発明の好適な実施形態について説明する。なお、図面は理解を容易にするため一部を誇張して描いており、寸法比率等は図面に記載のものに限定されるものではない。
【0018】
本実施形態に係るサンルーフ用外装部品は、車両のサンルーフを構成するための外装部品であり、ガラス繊維強化複合材料の成形体で構成されている。
【0019】
上記ガラス繊維強化複合材料は、脂肪族ポリカーボネート樹脂、ガラス繊維及び染料を含有している。ガラス繊維強化複合材料における脂肪族ポリカーボネート樹脂及びガラス繊維の含有量は、脂肪族ポリカーボネート樹脂及びガラス繊維の合計量を100質量部として、脂肪族ポリカーボネート樹脂が99~70質量部、ガラス繊維が1~30質量部である。
【0020】
また、脂肪族ポリカーボネート樹脂の波長589.3nmの光に対する屈折率と、ガラス繊維の波長589.3nmの光に対する屈折率との差は、0.01以下である。なお、本明細書中、屈折率は、JIS K 7142:2014,B法に準拠して測定される値を示す。
【0021】
本実施形態に係るサンルーフ用外装部品は、特定の樹脂及びガラス繊維を組み合わせているため、優れた剛性、耐傷つき性、耐薬品性及び耐候性を有しており、また、高温環境下又は湿潤環境下に曝されても寸法変化が小さい。また、上記サンルーフ用外装部品は、着色剤として染料を用い、脂肪族ポリカーボネート樹脂との屈折率差が極めて小さいガラス繊維を用いることで、樹脂及び染料により発現される色調を維持したまま、上述の優れた特性が得られている。
【0022】
脂肪族ポリカーボネート樹脂の重量平均分子量Mwは、例えば10000以上であってよく、15000以上であることが好ましい。また、脂肪族ポリカーボネート樹脂の重量平均分子量Mwは、例えば60000以下であってよく、30000以下であることが好ましい。なお、本明細書中、脂肪族ポリカーボネートの重量平均分子量Mwは、GPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)分析で測定される値を示す。
【0023】
ガラス繊維強化複合材料における脂肪族ポリカーボネート樹脂の含有量は、脂肪族ポリカーボネート樹脂及びガラス繊維の合計量を100質量部として、70質量部以上であり、72質量部以上が好ましく、74質量部以上がより好ましい。また、脂肪族ポリカーボネート樹脂の含有量は、脂肪族ポリカーボネート樹脂及びガラス繊維の合計量を100質量部として、99質量部以下であり、95質量部以下が好ましく、90質量部以下がより好ましい。
【0024】
脂肪族ポリカーボネート樹脂の波長589.3nmの光に対する屈折率(以下、単に屈折率ともいう。)は特に限定されず、例えば1.515以下が好ましく、1.510以下がより好ましい。また、脂肪族ポリカーボネート樹脂の屈折率は、例えば1.490以上が好ましく、1.495以上がより好ましい。
【0025】
ガラス繊維の組成は特に限定されず、上述の屈折率の関係を満たすものであればよい。
【0026】
ガラス繊維の繊維径は特に限定されず、例えば3μm以上であってよく、5μm以上が好ましく、7μm以上がより好ましい。また、ガラス繊維の繊維径は、例えば25μm以下であってよく、20μm以下が好ましく、15μm以下がより好ましい。
【0027】
ガラス繊維の繊維長は特に限定されず、例えば30μm以上であってよく、40μm以上が好ましく、50μm以上がより好ましい。また、ガラス繊維の繊維径は、例えば800μm以下であってよく、700μm以下が好ましく、600μm以下がより好ましい。
【0028】
好適な一態様において、ガラス繊維は、100μm以下の繊維長を有する第一のガラス繊維と、300μm以上の繊維長を有する第二のガラス繊維と、を含有していてよい。このように繊維長の異なるガラス繊維を併用することで、優れた機械強度(剛性)を維持しつつ、成形体の表面の凹凸の少ない意匠性に優れた成形体が得られやすくなる傾向がある。
【0029】
第一のガラス繊維の含有量C1に対する第二のガラス繊維の含有量C2の比(C2/C1)は、例えば0.5以上であってよく、上記効果がより顕著に得られる観点からは、0.8以上が好ましく、0.9以上がより好ましい。また、上記比(C2/C1)は、例えば50以下であってよく、上記効果がより顕著に得られる観点からは、40以下が好ましく、30以下がより好ましく、25以下が更に好ましい。なお、上記比(C2/C1)において、C1の値が高いほど意匠性に優れる傾向があり、C2の値が高いほど機械強度(剛性)に優れる傾向がある。
【0030】
ガラス繊維強化複合材料におけるガラス繊維の含有量は、脂肪族ポリカーボネート樹脂及びガラス繊維の合計量を100質量部として、1質量部以上であり、5質量部以上が好ましく、10質量部以上がより好ましい。また、ガラス繊維の含有量は、脂肪族ポリカーボネート樹脂及びガラス繊維の合計量を100質量部として、30質量部以下であり、28質量部以下が好ましく、26質量部以下がより好ましい。
【0031】
ガラス繊維の波長589.3nmの光に対する屈折率(以下、単に屈折率ともいう。)は特に限定されず、例えば1.515以下が好ましく、1.510以下がより好ましい。また、ガラス繊維の屈折率は、例えば1.490以上が好ましく、1.495以上がより好ましい。
【0032】
染料は、ガラス繊維強化複合材料を着色するために配合される。本実施形態では、着色剤として染料を用いているため、樹脂とガラス繊維と界面に着色剤が偏在することが避けられ、ガラス繊維の配合による色調の変化が顕著に抑制される。
【0033】
染料は、例えば、黒色を呈する染料(黒色染料)であってもよく、有彩色を呈する染料(有彩色染料)であってもよい。
【0034】
好適な一態様において、染料は黒色染料である。黒色の程度は、例えば明度によって評価することができる。本実施形態では、上述の構成により、ガラス繊維の配合の有無による明度の変化が少ない。このため、本実施形態によれば、黒色染料によって発現する黒色の深みを維持しつつ、ガラス繊維によって機械強度が向上した成形体を得ることができる。
【0035】
染料の種類は特に限定されない。染料としては、例えば、メチン系染料、ピラゾロン系染料、ペリノン系染料、アゾ系染料、キノフタロン系染料、アンスラキノン系染料、フタロシアニン系染料等が挙げられる。
【0036】
染料の含有量は特に限定されず、所望の色調に応じて適宜調整してよい。例えば、染料の含有量は、脂肪族ポリカーボネート樹脂100質量部に対して0.1質量部以上であってよく、好ましくは0.2質量部以上、より好ましくは0.3質量部以上である。また、染料の含有量は、脂肪族ポリカーボネート樹脂100質量部に対して、例えば3.0質量部以下であってよく、好ましくは2.5質量部以下、より好ましくは2.0質量部以下である。
【0037】
ガラス繊維強化複合材料は、上記以外の他の成分を更に含有していてよい。他の成分としては、例えば、酸化防止剤、熱安定剤、可塑剤、光安定剤、重合金属不活性化剤、難燃剤、滑剤、帯電防止剤、界面活性剤、抗菌剤、紫外線吸収剤、離型剤等が挙げられる。
【0038】
本実施形態に係るサンルーフ用外装部品は、上記ガラス繊維強化複合材料の成形体で構成されている。当該成形体は、例えば、上記ガラス繊維強化複合材料又は上記ガラス繊維強化複合材料の構成成分からなる成形原料を用い、射出成形、押出成形、圧縮成形、カレンダー成形等の公知の成形方法で成形したものであってよい。
【0039】
成形体の形状は特に限定されず、サンルーフ用外装部品の適用箇所に応じて適宜変更してよい。
【0040】
好適な一態様において、成形体は、脂肪族ポリカーボネート樹脂、ガラス繊維及び染料を含有する本体部と、本体部上に設けられ、脂肪族ポリカーボネート樹脂及び染料を含有し、ガラス繊維を含まないスキン層と、を有するものであってよい。スキン層を設けることで、ガラス繊維に起因する表面の凹凸を容易に低減でき、より光沢性に優れた成形体が得られる。
【0041】
スキン層の厚さは、例えば5μm以上が好ましく、8μm以上がより好ましい。また、スキン層の厚さは、例えば30μm以下が好ましく、20μm以下がより好ましい。
【0042】
成形体全体の厚さに対するスキン層の厚さの割合は、例えば0.20%以上が好ましく、0.25%以上がより好ましい。また、上記割合は、例えば1.0%以下が好ましく、0.75%以下がより好ましい。
【0043】
スキン層を有する成形体は、例えば、ヒートアンドクール成形により得ることができる。
【0044】
ヒートアンドクール成形は、加熱した成形原料の流動体を所定の温度(T1)に加熱した金型に充填し、充填が完了した後、所定の温度(T2)まで金型を冷却して固化させることにより、ガラス繊維強化複合材料を成形する方法である。
【0045】
成形原料の充填時の金型温度T1は、例えば、脂肪族ポリカーボネート樹脂の熱変形温度Tfとの差(T1-Tf)が0~100℃となる温度が好ましく、0~75℃となる温度がより好ましい。
【0046】
また、冷却後の金型温度T2は、例えば、脂肪族ポリカーボネート樹脂の熱変形温度Tfとの差(Tf-T2)が5~100℃となる温度が好ましく、5~75℃となる温度がより好ましい。
【0047】
本実施形態において、成形体は、光沢度が80以上の面を有していることが好ましい。このような表面は外観に優れるため、車体の外観に影響を与える箇所に好適に適用することができる。上記面の光沢度は、85以上であることがより好ましい。
【0048】
また、成形体は、算術平均表面粗さが0.3μm以下の面を有していることが好ましい。このような表面は外観に優れるため、車体の外観に影響を与える箇所に好適に適用することができる。上記面の算術平均表面粗さは、0.25μm以下であることがより好ましい。
【0049】
さらに、成形体は、上記光沢度及び上記算術平均表面粗さの両方を満たす面を有していることが好ましい。このような表面は外観に特に優れるため、車体の外観に影響を与える箇所に特に好適に適用することができる。上記光沢度及び上記算術平均表面粗さは、例えば、上述のスキン層を設けることで達成することができる。
【0050】
本実施形態に係るサンルーフ用外装部品は、車両のサンルーフを構成するために用いられる。
図1は、サンルーフ用外装部品の適用例を説明するための図である。
図1に示すサンルーフ100は、フロントパネル1と、サンルーフガラス2と、スライドパネル3と、ルーフレール4と、リアパネル5とを有している。本実施形態に係るサンルーフ用外装部品は、例えば、フロントパネル1、サンルーフガラス2、スライドパネル3、ルーフレール4又はリアパネル5の一部又は全部を構成する部品であってよい。
【0051】
また、本実施形態に係るサンルーフ用外装部品は上記以外の箇所に適用されていてもよく、例えば、サンルーフ100を装飾する装飾部品であってもよい。
【0052】
本実施形態に係るサンルーフ用外装部品は、例えば、金属部品に、接着剤又は両面テープを介して接合されてよい。本実施形態に係るサンルーフ用外装部品は、温度変化等による寸法変化が小さいため、例えば高温環境下に曝された場合でも、金属部品との接合部にかかる負荷が小さい。
【0053】
サンルーフ用外装部品と接合される金属部品の素材は特に限定されず、例えば、鉄、アルミニウム、マグネシウム等であってよく、これらの金属を表面処理したものであってもよい。また、金属部品は、塗装等の修飾が施されていてよく、例えば、電着塗装されていてよい。
【0054】
上記金属部品は、車両の車体であってもよく、サンルーフを構成する一部品であってもよい。金属部品がサンルーフを構成する一部品である場合、サンルーフ用外装部品と金属部品とを接合した複合部品は、サンルーフ用複合部品ということができる。
【0055】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。
【実施例】
【0056】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
【0057】
(実施例A-1)
<サンルーフ用外装部品の作製>
脂肪族ポリカーボネート樹脂(屈折率1.5010、重量平均分子量20000)90質量部、ガラス繊維(チョップドストランド、屈折率1.5010、平均繊維径15μm、100μm以下のガラス繊維の含有量C1に対する300μm以上のガラス繊維の含有量C2の比C2/C1:20)10質量部、及び、染料(アンスラキノン系染料、住化ケムテックス社製、商品名スミプラスト)0.3質量部を押出機(池貝株式会社製、商品名「TEM-35B」)を用いて溶融混練し、射出成形機(東芝機械株式会社製、商品名「IS-80G」)を用いて、サンルーフ用外装部品の試験片を作製した。
【0058】
<評価>
得られた試験片について、引張強度、曲げ強度、曲げ弾性率、シャルピー衝撃強度、荷重たわみ温度、ロックウェル硬度、及び、成形収縮率を測定した。なお、引張強度は、JIS K7161に準じて測定した。また、曲げ強度及び曲げ弾性率は、JIS K7171に準じて測定した。また、シャルピー衝撃強度は、JIS K7111に準じて測定した。また、荷重たわみ温度は、JIS K7191に準じて測定した。また、ロックウェル強度は、JIS K7202-2に準じて測定した。また、成形収縮率は、JIS K7152-4に準じて測定した。結果を表1に示す。
【0059】
(実施例A-2)
脂肪族ポリカーボネート樹脂の量を80質量部に、ガラス繊維の量を20質量部に、それぞれ変更したこと以外は、実施例A-1と同様にしてサンルーフ用外装部品の試験片を作製した。また、作製した試験片について、実施例A-1と同様にして各物性を測定した。結果を表1に示す。
【0060】
(実施例A-3)
ガラス繊維として比C2/C1が1のガラス繊維を用い、脂肪族ポリカーボネート樹脂の量を80質量部に、ガラス繊維の量を20質量部にそれぞれ変更したこと以外は、実施例A-1と同様にしてサンルーフ用外装部品の試験片を作製した。また、作製した試験片について、実施例A-1と同様にして各物性を測定した。結果を表1に示す。
【0061】
(実施例A-4)
ガラス繊維として繊維長が3mm以下のガラス繊維のみを用い、脂肪族ポリカーボネート樹脂の量を80質量部に、ガラス繊維の量を20質量部にそれぞれ変更したこと以外は、実施例A-1と同様にしてサンルーフ用外装部品の試験片を作製した。また、作製した試験片について、実施例A-1と同様にして各物性を測定した。結果を表1に示す。
【0062】
(比較例1)
脂肪族ポリカーボネート樹脂の量を100質量部とし、ガラス繊維を配合しなかったこと以外は、実施例A-1と同様にしてサンルーフ用外装部品の試験片を作製した。また、作製した試験片について、実施例A-1と同様にして各物性を測定した。結果を表1に示す。
【0063】
【0064】
(実施例B-1)
<サンルーフ用外装部品の作製>
脂肪族ポリカーボネート樹脂(屈折率1.5010、重量平均分子量20000)80質量部、ガラス繊維(チョップドストランド、屈折率1.5010、平均繊維径15μm、比C2/C1:20)20質量部、及び、染料(アンスラキノン系染料、住化ケムテックス社製、商品名スミプラスト)0.3質量部を押出機(池貝株式会社製、商品名「TEM-35B」)を用いて溶融混練し、射出成形機(株式会社日本製鋼所製、商品名「J220EL3-460H」)を用いて、厚さ1.5mmのA4サイズに成形し、サンルーフ用外装部品の試験片を得た。なお、射出成形時には、ヒートアンドクール成形を実施した。
【0065】
<評価>
得られた試験片について、光沢度(60°グロス)、算術平均表面粗さ(Ra)、及び、スキン層の厚さを測定した。なお、光沢度は、光沢度計(BYK-Gardner GmbH製、商品名「micro-TRI-gloss」)により測定した。また、算術平均表面粗さは、レーザ顕微鏡(株式会社キーエンス製、商品名「VK-X250」)により測定した。また、スキン層の厚さは、試験片の断面を分析走査顕微鏡(日本電子株式会社製、商品名「JSM-6510LA」)を用いて観察し、成形体表面からガラス繊維までの平均距離を測定することで求めた。結果を表2に示す。
【0066】
(参考例1)
脂肪族ポリカーボネート樹脂の量を100質量部とし、ガラス繊維を配合しなかったこと以外は、実施例B-1と同様にしてサンルーフ用外装部品の試験片を得た。得られた試験片について、実施例B-1と同様の評価を行った。結果を表2に示す。
【0067】
(参考例2)
射出成形時に金型の事前加熱を行わなかった(ヒートアンドクール成形を実施しなかった)こと以外は、実施例B-1と同様にしてサンルーフ用外装部品の試験片を得た。得られた試験片について、実施例B-1と同様の評価を行った。結果を表2に示す。
【0068】
【0069】
図2(a)は、実施例B-1で得られたサンルーフ用外装部品の試験片の外観を示す図であり、
図2(b)は、参考例1で得られたサンルーフ用外装部品の試験片の外観を示す図である。
【0070】
図3(a)は、実施例B-1で得られたサンルーフ用外装部品の試験片の断面顕微鏡画像を示す図であり、
図3(b)は、参考例1で得られたサンルーフ用外装部品の試験片の断面顕微鏡画像を示す図である。
【0071】
図4(a)は、実施例B-1で得られたサンルーフ用外装部品の試験片の表面顕微鏡画像を示す図であり、
図4(b)は、参考例1で得られたサンルーフ用外装部品の試験片の表面顕微鏡画像を示す図であり、
図4(c)は、参考例2で得られたサンルーフ用外装部品の試験片の表面顕微鏡画像を示す図である。
【符号の説明】
【0072】
1…フロントパネル、2…サンルーフガラス、3…スライドパネル、4…ルーフレール、5…リアパネル、100…サンルーフ。