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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-20
(45)【発行日】2022-09-29
(54)【発明の名称】伸縮性配線板
(51)【国際特許分類】
   H05K 1/02 20060101AFI20220921BHJP
   B32B 7/025 20190101ALI20220921BHJP
【FI】
H05K1/02 D
B32B7/025
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2018050529
(22)【出願日】2018-03-19
(65)【公開番号】P2019165049
(43)【公開日】2019-09-26
【審査請求日】2020-12-16
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000005186
【氏名又は名称】株式会社フジクラ
(74)【代理人】
【識別番号】110000486
【氏名又は名称】とこしえ特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】小清水 和敏
【審査官】小林 大介
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/159456(WO,A1)
【文献】特開2016-143557(JP,A)
【文献】国際公開第2017/047519(WO,A1)
【文献】特開2017-069530(JP,A)
【文献】特開2017-168437(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 1/02
B32B 7/025
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の伸縮性基材と、
配線部と前記配線部に接続された接続部とを含むとともに、前記第1の伸縮性基材上に設けられた導体部と、
平面視において、前記配線部の一部と重なるように配置され、前記第1の伸縮性基材よりも硬い第1の補強部材と、を備え、
前記第1の伸縮性基材は、
相互に異なる方向に延在している複数の第1の部分と、
前記複数の第1の部分が接続している第2の部分と、を含み、
前記配線部は、複数の導体線が前記第2の部分上で異なる方向に折れ曲がる分岐部分を含み、
前記第1の補強部材は、平面視において、前記分岐部分と重なるように配置されている伸縮性配線板。
【請求項2】
請求項1に記載の伸縮性配線板であって、
前記伸縮性配線板は、平面視において、前記接続部と重なるように配置された第2の補強部材を備える伸縮性配線板。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の伸縮性配線板であって、
前記伸縮性配線板は、前記第1の補強部材を複数備えるとともに、
前記第1の補強部材は、前記配線部に沿って間欠的に配置されている伸縮性配線板。
【請求項4】
請求項3に記載の伸縮性配線板であって、
下記(1)式を満たす伸縮性配線板。
50mm≦L≦200mm … (1)
但し、Lは、相互に隣り合う前記第1の補強部材間の距離である。
【請求項5】
第1の伸縮性基材と、
配線部と前記配線部に接続された接続部とを含むとともに、前記第1の伸縮性基材上に設けられた導体部と、
平面視において、前記配線部の一部と重なるように配置され、前記第1の伸縮性基材よりも硬い第1の補強部材と、を備え、
前記配線部は、複数の導体線が異なる方向に折れ曲がる分岐部分を含み、
前記第1の補強部材は、平面視において、前記分岐部分と重なるように配置されている伸縮性配線板。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載の伸縮性配線板であって、
前記第1の伸縮性基材は、ホットメルト又はエラストマーである伸縮性配線板。
【請求項7】
請求項6に記載の伸縮性配線板であって、
前記第1の補強部材は、前記ホットメルト又は前記エラストマーに埋設されている伸縮性配線板。
【請求項8】
請求項6又は7に記載の伸縮性配線板であって、
前記伸縮性配線板は、前記ホットメルトに貼り付けられたファブリックを備える伸縮性配線板。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか一項に記載の伸縮性配線板であって、
前記伸縮性配線板は、前記第1の伸縮性基材と前記導体部との間に介在するプライマー層を備える伸縮性配線板。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか一項に記載の伸縮性配線板であって、
前記伸縮性配線板は、前記配線部を覆うオーバーコート層を備える伸縮性配線板。
【請求項11】
請求項10に記載の伸縮性配線板であって、
前記伸縮性配線板は、前記オーバーコート層を覆う第2の伸縮性基材を備え、
前記第1の補強部材は、前記第2の伸縮性基材より硬い伸縮性配線板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、伸縮性配線板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
伸縮性基板は、人体の動作に追随させる用途や、複雑な形状の物体の表面に倣うように配置される用途に用いられる。こうした伸縮性基板として、伸縮性を有する材料からなる基材と、当該基材よりもヤング率が大きく、基材に埋め込まれたアイランドと、を具備するものが知られており、当該伸縮性基板上には、アイランド上に位置する素子と、当該素子に接続された配線と、が形成されることが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-162124号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、伸縮性基板は、伸縮性を確保するために柔らかい材料が用いられているので、剛性が低く曲がりやすい。特に、伸縮性基板の全長が長い場合に、アイランドが形成されていない領域(配線が形成されている領域)の全長が長くなり、当該領域において撓みや捻じれが生じやすくなってしまう。その結果、伸縮性基板のハンドリング性が悪化してしまうという問題があった。
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、ハンドリング性の向上を図ることのできる伸縮性配線板を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
[1]本発明に係る伸縮性配線板は、第1の伸縮性基材と、配線部と前記配線部に接続された接続部とを含むとともに、前記第1の伸縮性基材上に設けられた導体部と、平面視において、前記配線部の一部と重なるように配置され、前記第1の伸縮性基材よりも硬い第1の補強部材と、を備えることを特徴とする。
【0007】
[2]上記発明において、前記伸縮性配線板は、平面視において、前記接続部と重なるように配置された第2の補強部材を備えていてもよい。
【0008】
[3]上記発明において、前記伸縮性配線板は、前記第1の補強部材を複数備えるとともに、前記第1の補強部材は、前記配線部に沿って間欠的に配置されていてもよい。
【0009】
[4]上記発明において、下記(1)式を満たしていてもよい。
50mm≦L≦200mm … (1)
但し、Lは、相互に隣り合う前記第1の補強部材間の距離である。
【0010】
[5]上記発明において、前記配線部は、複数に枝分かれする分岐部分を含み、前記第1の補強部材は、平面視において、前記分岐部分と重なるように配置されていてもよい。
【0011】
[6]上記発明において、前記第1の伸縮性基材は、ホットメルト又はエラストマーであってもよい。
【0012】
[7]上記発明において、前記第1の補強部材は、前記ホットメルト又は前記エラストマーに埋設されていてもよい。
【0013】
[8]上記発明において、前記伸縮性配線板は、前記第1の伸縮性基材と前記導体部との間に介在するプライマー層を備えていてもよい。
【0014】
[9]上記発明において、前記伸縮性配線板は、前記第1の伸縮性基材と前記導体部との間に介在するプライマー層を備えていてもよい。
【0015】
[10]上記発明において、前記伸縮性配線板は、前記配線部を覆うオーバーコート層を備えていてもよい。
【0016】
[11]上記発明において、前記伸縮性配線板は、前記オーバーコート層を覆う第2の伸縮性基材を備え、前記第1の補強部材は、前記第2の伸縮性基材より硬くてもよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明の伸縮性配線板によれば、平面視において、配線部に重なる位置に、第1の伸縮性基材よりも硬い第1の補強部材を配置するため、当該第1の補強部材が配置された部分の剛性が向上する。結果として、第1の補強部材が配置された部分において、伸縮性配線板が曲がりにくくなるうえに、第1の補強部材が配置された部分を支点にして、伸縮性配線板のハンドリングを行えるため、伸縮性配線板のハンドリング性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1は、本発明の第1実施形態における伸縮性配線板の平面図である。
図2図2は、図1のII-II線に沿った断面図である。
図3図3は、図1のIII部の拡大図である。
図4図4(A)は、図3のIVA-IVA線に沿った断面図であり、図4(B)は、図3のIVB-IVB線に沿った断面図である。
図5図5は、本発明の第1実施形態における伸縮性配線板の導体部を説明するための平面図である。
図6図6は、本発明の第1実施形態における伸縮性配線板の製造方法を示す工程図である。
図7図7は、図6(a)~図6(h)の各工程をそれぞれ説明する断面図である。
図8図8は、本発明の第2実施形態における伸縮性配線板の断面図である。
図9図9は、本発明の第3実施形態における伸縮性配線板の断面図である。
図10図10は、本発明の第4実施形態における伸縮性配線板の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0020】
<<第1実施形態>>
図1は本発明の第1実施形態における伸縮性配線板の平面図であり、図2図1のII-II線に沿った断面図であり、図3図1のIII部の拡大図であり、図4(A)は図3のIVA-IVA線に沿った断面図であり、図4(B)は図3のIVB-IVB線に沿った断面図であり、図5は伸縮性配線板の導体部60を説明するための平面図である。なお、図3において、ホットメルト層30A、プライマー層50、導体部60、及びオーバーコート層70は、便宜上、破線で示している。また、図1においては、接続部62に実装されている電子部品200を図示しているが、図2及び図5においては、便宜上、接続部62に実装されている電子部品200を図示していない。
【0021】
図1及び図2に示す伸縮性配線板10Aは、例えば、生体センサなどのウェアラブルデバイスや生体情報モニタなどのメディカルデバイスにおける伸縮性が必要とされる箇所に使用される。ウェアラブルデバイスやメディカルデバイスは、衣類や装具に設けられるため、伸縮性配線板10Aが人体の屈曲に十分に追従することが必要とされる。このような伸縮性配線板10Aには、図1に示すように、例えば、電子部品200が設けられる。電子部品200としては、感圧センサや銀/塩化銀電極などを形成したり、ICやコンデンサ、LEDなどの実装部品が実装される。なお、伸縮性配線板10Aの用途は、伸縮性を要求されるものであれば、特に限定されない。
【0022】
本実施形態の伸縮性配線板10Aは、図1図2に示すように、ファブリック20と、ホットメルト層30Aと、第1の補強部材40Aと、第2の補強部材40Bと、プライマー層50と、導体部60と、オーバーコート層70と、を備えている。本実施形態における「伸縮性配線板10A」が本発明における「伸縮性配線板」に相当し、本実施形態における「ファブリック20」が本発明における「ファブリック」に相当し、本実施形態における「ホットメルト層30A」が本発明における「第1の伸縮性基材」に相当し、本実施形態における「第1の補強部材40A」が本発明における「第1の補強部材」に相当し、本実施形態における「第2の補強部材40B」が本発明における「第2の補強部材」に相当し、本実施形態における「プライマー層50」が本発明における「プライマー層」に相当し、本実施形態における「導体部60」が本発明における「導体部」に相当し、本実施形態における「オーバーコート層70」が本発明における「オーバーコート層」に相当する。
【0023】
ファブリック20は、ホットメルト層30Aを貼り付ける対象であり、ウェアラブルデバイス等が設けられる衣服や装具の布帛部分である。このファブリック20は、複数の繊維により構成された織布(布)から構成されており、より具体的には、図3の拡大図に示すように、相互に交差する第1の繊維束21と第2の繊維束22とにより構成されている。第1の繊維束21は、1又は2以上の第1の繊維211を集合させることで構成されている。第1の繊維束21は、図中Y方向(伸縮性配線板10Aの伸縮予定方向)に対して傾斜した方向D(以下、第1の方向Dとも言う。)に延在し、複数の第1の繊維束21は、第1の方向Dに対して交差する方向D(以下、第2の方向Dとも言う。)に並列されている。第2の繊維束22は、1又は2以上の第2の繊維221を集合させることで構成されている。第2の繊維束22は、第2の方向Dに延在し、複数の第2の繊維束22は、第1の方向Dに並列されている。ファブリック20は、平面視において、複数の第1の繊維束21と、複数の第2の繊維束22とを相互に交差させて織り込むことで構成されている。
【0024】
第1の繊維211及び第2の繊維221としては、例えば、レーヨン、ナイロン、ポリエステル、アクリル、ポリウレタン、ビニロン、ポリエチレン、ナフィオン(登録商標)、アラミド、綿等を用いることができる。この第1の繊維211及び第2の繊維221は、伸縮性を有していてもよい。第1の繊維211と、第2の繊維221とは、相互に同じであってもよいし、異なっていてもよい。また、第1の繊維束21を構成する第1の繊維211の数と、第2の繊維束22を構成する第2の繊維221の数とは、相互に同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0025】
平面視において、相互に交差する第1の繊維束21と第2の繊維束22との間には、矩形状の間隙23が形成されている。この間隙23は、平面視において、相互に隣り合う第1の繊維束21,21と、相互に隣り合う第2の繊維束22,22とによって画定されている。
【0026】
間隙23は、ファブリック20の一方の主面201に開口すると共に、ファブリック20の他方の主面202(図4(A)及び図4(B)参照)に開口しており、ファブリック20の一方の主面201と他方の主面202を連通している。この間隙23は、ファブリック20の厚さ方向に沿って真直ぐ延在するものでなくてもよく、両方の主面201,202で開口し、両方の主面201,202を連通していればよい。伸縮性配線板10Aの変形に応じて、この間隙23が変形することで、ファブリック20全体として伸縮性が発揮される。
【0027】
また、ファブリック20のヤング率Eは、0.1~35MPaであることが好ましい(0.1MPa≦E≦35MPa)。また、ファブリック20の破断伸びBは、50%以上であることが好ましい(B≧50%)。なお、「破断伸び」とは、自然長に対する破断点までの材料の伸び率を意味する。また、ファブリック20の厚みTとしては、20~300μmであることが好ましい(20μm≦T≦300μm)。
【0028】
なお、図1において、ファブリック20の全体形状は矩形となっているが、特にこれに限定されない。ファブリック20の全体形状は、ウェアラブルデバイスが設けられる衣服や装具の形状に応じて異なる。
【0029】
ホットメルト層30Aは、図4(A)及び図4(B)に示すように、ファブリック20の主面201に貼り付けられており、ファブリック20上に形成されている。このホットメルト層30Aは、プライマー層50と導体部60とオーバーコート層70と略同一の平面形状を有している。さらに、ホットメルト層30Aは、図4(A)及び図4(B)に示すように、ファブリック20の主面201に位置する第1の繊維211及び第2の繊維221と密接しており、一の第1の繊維束21を構成する第1の繊維211同士の間に入り込むと共に、一の第2の繊維束22を構成する第2の繊維221同士の間に入り込んでいる。このホットメルト層30Aは、接触する第1の繊維211及び第2の繊維221の表面近傍に僅かに含浸しているが、第1の繊維211及び第2の繊維221の内部までは含浸していない。すなわち、本実施形態では、第1の繊維211及び第2の繊維221の内部に、ホットメルト層30Aが完全に含浸していない。
【0030】
このホットメルト層30Aは、間隙23を介して隣り合う第1の繊維束21同士の間にブリッジ状に形成されている。同様に、ホットメルト層30Aは、間隙23を介して隣り合う第2の繊維束22同士の間にブリッジ状に形成されている。これにより、ホットメルト層30Aは、ファブリック20の主面201に開口する間隙23を覆っている。また、ホットメルト層30Aは、間隙23の内部に入り込んでおらず、間隙23の内部は、ホットメルト層30Aにより満たされていない。なお、ホットメルト層30Aは、間隙23の内部を満たしていなければ、間隙23の開口近傍で間隙23の内部に僅かに入り込んでいてもよい。
【0031】
ホットメルト層30Aは、伸縮性を有しており、その構成材料としては、ポリエステル、ポリウレタン、アクリル、スチレンブタジエンゴム、シリコン等のホットメルト系の樹脂材料を用いることができる。ホットメルト層30Aのヤング率Eは、特に限定されないが、0.1MPa~35MPaであることが好ましい(0.1MPa≦E≦35MPa)。
【0032】
図1及び図2に戻り、第1の補強部材40A(第1の補強部材40A及び第1の補強部材40A)は、導体部60の厚さ方向(図中のZ方向であり、伸縮性配線板10Aの厚さ方向でもある)から見て、配線部61の一部と重なるように配置されている。また、第1の補強部材40Aは、ホットメルト層30Aに埋設されおり、その結果、第1の補強部材40Aは、ホットメルト層30Aとプライマー層50との間に介在している。第1の補強部材40Aがホットメルト層30Aに埋設されていることで、第1の補強部材40Aを配置しても伸縮性配線板10Aに段差が生じないため、伸縮性配線板10Aの両主面の平滑性を向上することができる。本実施形態における「配線部61」が本発明における「配線部」に相当する。
【0033】
また、第1の補強部材40Aは、配線部61の延在方向に沿って、互いに離間するように複数配置されている。具体的には、第1の補強部材40Aが、導体部60の厚さ方向から見て、配線部61が複数に枝分かれする第1及び第2の分岐部分612a,612bに重なるように配置されており、一方で、第1の補強部材40Aが、導体部60の厚さ方向から見て、配線部61の配線本体部分611の一部と重なるように配置されている(なお、図2の断面図においては、第1の補強部材40Aの間に位置する第1の補強部材40Aは省略されている)。分岐部分612a,612bには、応力が集中しやすいが、ここに第1の補強部材40Aを設けることで、分岐部分612a,612bの耐久性を向上することができる。また、分岐部分612a,612bに配置された第1の補強部材40Aを支点としてハンドリングが行えるため、伸縮性配線板10Aのハンドリング性が向上する。本実施形態における「第1の分岐部分612a」及び「第2の分岐部分612b」が本発明における「分岐部分」に相当する。
【0034】
結果として、第1の補強部材40A,40Aが、配線部61に沿って間欠的に配置されている。すなわち、第1の補強部材40A,40A同士が配線部61に沿って、離間して(隙間を開けて)配置されている。上記のように、第1の補強部材40Aが、第1及び第2の分岐部分612a,612bに配置されることで、第1及び第2の分岐部分612a,612bにおける配線部61の破断を抑制することができる。
【0035】
また、特に限定されることはないが、隣り合う第1の補強部材40A,40Aの間の距離L図1参照)は下記式(1)を満たしている。
50mm≦L≦200mm … (1)
【0036】
互いに隣り合う第1の補強部材40A,40Aの間の距離Lを上記の範囲とすることで、伸縮性配線板10Aの伸縮性を確保しつつ、剛性を十分に高められる。また、第1の補強部材40Aを支点として伸縮性配線板10Aを容易にハンドリングできるため、伸縮性配線板10Aのハンドリング性をより向上することができる。
【0037】
なお、隣り合う第1の補強部材40Aの間隔は、等間隔あってもよいし、不規則な間隔であってもよい。当該間隔は、伸縮性配線板10Aの設計に応じて適宜選択することができる。また、本実施形態では、第1の補強部材40Aが複数配置されている場合を例示しているが、伸縮性配線板10Aの全長が比較的短い場合などには、第1の補強部材40Aの個数は1個であってもよい。
【0038】
このような第1の補強部材40Aとしては、特に限定されないが、例えば、粘着テープなどを用いることができる。粘着テープとしては、特に限定されないが、例えば、ポリエステルフィルムの主面にアクリル系粘着剤層を備えたものを用いることができ、アクリル系粘着剤層をプライマー層50に貼りつけることで、第1の補強部材40Aが配置される。
【0039】
また、第1の補強部材40Aは、ホットメルト層30Aより硬い材料から構成されており、第1の補強部材40Aのヤング率ERAは、ホットメルト層30Aのヤング率Eより大きい(ERA>E)。一般に、ヤング率が大きくなるにつれて、剛性も高くなるため、このようなヤング率の関係を満たす場合、第1の補強部材40Aは、ホットメルト層30Aより硬くなる。
【0040】
第2の補強部材40Bは、導体部60の厚さ方向から見て、接続部62と重なるように配置されている。この第2の補強部材40Bも、第1の補強部材40Aと同様に、ホットメルト層30Aに埋設されており、ホットメルト層30Aとプライマー層50との間に介在している。接続部62においては、外部機器との接続などが行われるため、応力がかかりやすいが、第2の補強部材40Bにより補強を行うことで、接続部62の破損を防止することができる。第2の補強部材40Bがホットメルト層30Aに埋設されていることで、第2の補強部材40Bを配置しても伸縮性配線板10に段差が生じないため、伸縮性配線板10の両主面の平滑性を向上することができる。また、第2の補強部材40Bが、ホットメルト層30Aと導体部60との間に介在していることで、第2の補強部材40Bが導体部60に近い位置に配置されるため、確実に接続部62を補強することができる。本実施形態における「接続部62」が本発明における「接続部」に相当する。
【0041】
また、特に限定されることはないが、第2の補強部材40Bと、当該第2の補強部材40Bの隣の第1の補強部材40Aの間の距離L図1参照)は下記式(2)を満たしていることが好ましい。
50mm≦L≦200mm … (2)
【0042】
第2の補強部材40Bは、第1の補強部材40Aと同じ材料によって構成されていてもよいし、異なる材料によって構成されていてもよい。特に限定されることはないが、例えば、配線部61と接続部62とで、必要な剛性が異なる場合などには、第1の補強部材40Aと第2の補強部材40Bは剛性の異なる材料により構成されていてもよい。また、第2の補強部材40Bは、ホットメルト層30Aより硬い材料から構成されており、第2の補強部材40Bのヤング率ERBは、ホットメルト層30Aのヤング率Eより大きい(ERB>E)。
【0043】
プライマー層50は、ホットメルト層30A及び第1及び第2の補強部材40A,40B上に設けられており、ホットメルト層30Aと導体部60との間に介在している。このプライマー層50は、導体部60の下面601と側面602とを覆っており、プライマー層50の平面形状は、導体部60の平面形状と実質的に同一形状となっている。さらに、プライマー層50は、ファブリック20等と同様に伸縮性を有している。
【0044】
プライマー層50は、伸縮性配線板10Aの伸長時に、導体部60の破断を防止する緩衝層として機能するうえに、防水層としても機能する。このようなプライマー層50を構成する材料としては、特に限定されないが、例えば、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂、シリコン樹脂等を例示することができる。
【0045】
プライマー層50のヤング率Eは、ファブリック20のヤング率E以下であることが好ましく(E≦E)、緩和層としての機能を高める観点から、ファブリック20のヤング率Eよりも低いことがより好ましい(E<E)。このようなプライマー層50のヤング率Eとしては、0.1~10MPaであることが好ましい(0.1MPa≦E≦10MPa)。また、プライマー層50の破断伸度Bとしては、50%以上であることが好ましい(B≧50%)。また、プライマー層50の厚みTとしては、10~50μmであることが好ましい(10μm≦T≦50μm)。
【0046】
導体部60は、図2に示すように、プライマー層50上に設けられており、オーバーコート層70に覆われた配線部61と、オーバーコート層70から外部に露出している接続部62と、を含んでいる。この導体部60は、図1に示すように、複数の導体線(後述)の束からなる帯状の平面形状を有しており、ホットメルト層30A、プライマー層50、及びオーバーコート層70も、この導体部60に沿った帯状の平面形状を有している。
【0047】
配線部61は、接続部62と一体的に形成されており、これにより、複数の接続部62同士を電気的に接続している。この配線部61は、図5に示すように、相互に並行に延在する複数の導体線610a~610hの束によって構成されている。この配線部61は、複数の配線本体部分611と、当該複数の配線本体部分611同士を接続する第1及び第2の分岐部分612a,612bと、を含んでいる。
【0048】
接続部62は、図2に示すように、ホットメルト層30Aから離れる方向に突出した凸状の突出部621を有しており、当該突出部621の露出面622がオーバーコート層70から露出している。この接続部62は、電子部品200(図1参照)との接続端子として用いることができ、この露出面622において、電子部品200との導通を確保する。
【0049】
接続部62は、図5に示すように、複数の接続端子620a~620h、620a~620hを含んでおり、これらには複数の導体線610a~610hがそれぞれ接続されている。図5には特に図示しないが、接続端子620a~620h、620a~620hには、各種のセンサ、コネクタ、IC、LED、コンデンサどの電子部品200(図1参照)が設けられる。
【0050】
なお、本実施形態では、「接続部62」として、「接続端子」を例示しているがこれに限定されない。接続部62としては、例えば、電子部品200のコネクタに接続するためのコネクタ端子や感圧センサなどが直接形成されていてもよい。
【0051】
上記のような、導体部60において、導体線610a~610hと接続端子620a~620h、620a~620hは以下のように互いに接続されている。まず、導体線610a~610hが、接続端子620a~620hから、それぞれ-X方向に延在し、その後、第1の分岐部分612aにおいて、3方向に枝分かれしている。
【0052】
このうち、導体線610a,610bは、第1の分岐部分612aにおいて-Y方向に折れ曲がり、その後、-Y方向に延在し、最終的に、接続端子620a,620bにそれぞれ接続されている。また、導体線610c,610dは、延在方向を変えることなくそのまま-X方向に延在し、その後、接続端子620c,620dにそれぞれ接続されている。
【0053】
一方で、導体線610e~610hは、第1の分岐部分612aにおいて+Y方向に折れ曲がり、その後、第2の分岐部分612bまで延在し、当該第2の分岐部分612bにおいて2方向に枝分かれしている。このうち、導体線610e,610fは、第2の分岐部分612bにおいて-X方向に折れ曲がり、その後、-X方向に延在し、最終的に、接続端子620e,620fにそれぞれ接続されている。また、導体線610g,610hは、延在方向を変えることなくそのまま+Y方向に延在し、その後、接続端子620g,620hにそれぞれ接続されている。結果として、各導体線610a~610hの両端には、接続端子620a~610h,620a~610hが接続されている。
【0054】
なお、本実施形態において、配線部61は、枝分かれした平面形状を有しているが、これに限定されることはない。配線部61の平面形状は枝分かれしていなくてもよい。また、配線本体部分611は、曲線であってもよい。また、配線部61は、一本の導体線により構成されていてもよい。
【0055】
上記のような導体部60は、導電性粒子がバインダ中に分散されることで構成されており、伸縮性を有している。ここでは、導体部60に含まれるバインダが伸縮性を有する材料により構成されることで、導体部60に伸縮性が付与されているが、このようなバインダとしては、エラストマーを用いることが好ましく、例えば、アクリルゴム、ウレタンゴム、ニトリルゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴム、これらの2種以上の複合体等を用いることができる。導電性粒子としては、金、銀、白金、ルテニウム、鉛、錫、亜鉛、ビスマス等の金属又はこれらの合金からなる金属材料、若しくは、カーボン等の非金属材料を用いることができる。導電性粒子の形状としては、片鱗状又は不定状とされた形状であることが好ましい。
【0056】
なお、伸縮性配線板10Aの用途に応じて、突出部621に含まれる導電性粒子と、配線部61に含まれる導電性粒子の種類を異なるものとしてもよい。例えば、特に限定されないが、突出部621に含まれる導電性粒子としてカーボンを用い、配線部61に含まれる導電性粒子として銀を用いてもよい。
【0057】
導体部60のヤング率Eは、ファブリック20のヤング率Eよりも高くてもよいし(E>E)、ファブリック20のヤング率Eよりも低くてもよいし(E<E)、ファブリック20のヤング率Eと同じであってもよい(E=E)。特に、導体部60のヤング率Eは、ファブリック20のヤング率Eよりも高いことが好ましい(E>E)。このような導体部60のヤング率Eとしては、10~200MPaであることが好ましい(10MPa≦E≦200MPa)。また、導体部60の最大伸度LEとしては、5~50%であることが好ましい(5%≦LE≦50%)。また、導体部60の破断伸度Bとしては、10~100%であることが好ましい(10%≦B≦100%)。
【0058】
オーバーコート層70は、導体部60及びプライマー層50上に設けられており、導体部60の少なくとも一部を覆うことにより、導体部60を保護している。具体的には、配線部61の上面及び突出部621の側面がオーバーコート層70に覆われている。このオーバーコート層70には、一方の主面から他方の主面まで貫通する孔701が形成されており、当該孔701の内部には、突出部621が形成されている。
【0059】
オーバーコート層70は、ファブリック20と同様、伸縮性を有していることが好ましい。オーバーコート層70を構成する材料としては、特に限定されないが、例えば、ポリエステル、ポリウレタン、アクリル、シリコン等を例示することができる。
【0060】
オーバーコート層70のヤング率Eとしては、プライマー層50のヤング率Eよりも高いことが好ましく(E>E)、導体部60のヤング率Eよりも低いことがより好ましい(E<E)。このようなオーバーコート層70のヤング率Eとしては、5~100MPaであることが好ましい(5MPa≦E≦100MPa)。また、オーバーコート層70の最大伸度LEとしては、10~50%であることが好ましい(10%≦LE≦50%)。また、オーバーコート層70の破断伸度Bとしては、50%以上であることが好ましい(B≧50%)。また、オーバーコート層70の厚みTとしては、10~20μmであることが好ましい(10μm≦T≦20μm)。
【0061】
また、オーバーコート層70を構成する材料と、プライマー層50を構成する材料とは、実質的に同一の材料であることが好ましい。この場合、プライマー層50とオーバーコート層70の界面は僅かに視認できる程度であり、プライマー層50とオーバーコート層70とは実質的に一体となる。
【0062】
以上のような本実施形態の伸縮性配線板10Aは以下のような効果を奏する。
【0063】
伸縮性配線板は、剛性が低いため曲がりやすい。伸縮性配線板の全長が長くなると、配線部が長くなり、当該配線部が形成されている領域に撓みやねじれが生じやすくなる。これに対して、本実施形態の伸縮性配線板10Aは、平面視において、配線部61に重なる位置に、ホットメルト層30Aよりも硬い第1の補強部材40Aを配置するため、当該第1の補強部材40Aが配置された部分の剛性が向上する。
【0064】
結果として、伸縮性配線板10Aの配線部61が形成されている領域において、伸縮性配線板10Aが曲がりにくくなるうえに、第1の補強部材40Aが配置された部分を支点にして、伸縮性配線板10Aのハンドリングを行えるため、伸縮性配線板10Aのハンドリング性が向上する。
【0065】
次に、本実施形態の伸縮性配線板10Aの製造方法について、図6図7(a)~図7(h)を参照しながら説明する。図6は本実施形態に係る伸縮性配線板10Aの製造方法を説明する工程図である。また、図7(a)~図7(h)は図6の各工程(ステップS1~ステップS8)をそれぞれ示す図である。
【0066】
まず、図6のステップS1において、図7(a)に示すように、離型フィルム80を準備する。この離型フィルム80は、離型処理が施された樹脂フィルムであり、特に限定されないが、例えば、離型処理PETフィルムを離型フィルム80として用いることができる。
【0067】
次に、図6のステップS2において、図7(b)に示すように、離型フィルム80の一方の主面上に所定のパターンのオーバーコート層70を形成する。ここでは、離型フィルム80上でオーバーコート層70が形成されていない孔701も同時に形成される。オーバーコート層70は、上述のオーバーコート層70を構成する材料を離型フィルム80上に塗布し、これを硬化させることで形成される。塗布方法としては、スクリーン印刷法、スプレーコート法、バーコート法、ディップ法、インクジェット法等の種々の塗布方法を採用することができる。硬化方法としては、紫外線、赤外線レーザ光等のエネルギ線照射、加熱、加熱冷却、乾燥等を採用することができる。
【0068】
次に、図6のステップS3において、図7(c)に示すように、導体部60を形成する。このとき、孔701の内部には、接続部62を形成し、オーバーコート層70上には配線部61を形成する。導体部60は、導電性ペーストを孔701の内部とオーバーコート層70上に塗布し、これを硬化させることで形成される。導体部60を形成する導電性ペーストの具体例としては、導電性粒子、バインダ、水もしくは溶剤、及び各種添加剤を混合して構成する導電性ペーストを例示することができる。導電性ペーストに含まれる溶剤としては、ブチルセロソルブアセテート、カルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、シクロヘキサノン、イソホロン、テルピネオールを例示することができる。塗布方法及び硬化方法は、オーバーコート層70の形成時と同様の方法を用いることができる。
【0069】
次に、図6のステップS4において、図7(d)に示すように、プライマー層50を導体部60上に形成する。プライマー層50は、上述の樹脂材料を導体部60に塗布し、これを硬化させることで形成される。塗布方法及び硬化方法は、オーバーコート層70の形成時と同様の方法を用いることができる。
【0070】
次に、図6のステップS5において、図7(e)に示すように、プライマー層50に第1の補強部材40A及び第2の補強部材40Bを配置する。第1の補強部材40Aは、各層の積層方向から見て、配線部61と重なるように配置する。一方で、第2の補強部材40Bは、各層の積層方向から見て、接続部62と重なるように配置する。特に限定されないが、具体的には、上述の粘着テープを用い、当該粘着テープの接着剤層をプライマー層50に貼り付けることで第1、第2の補強部材40A、40Bが形成される。
【0071】
次に、図6のステップS6において、図7(f)に示すように、第1、第2の補強部材40A、40B及びプライマー層50上にホットメルト層30Aを形成する。ホットメルト層30Aは、上述の熱可塑性のホットメルト系接着剤を、第1、第2の補強部材40A、40B及びプライマー層50上に配置することで形成できる。このとき、ホットメルト系接着剤を加熱し、任意の形状に成形してもよい。また、この接着剤として、シート状のホットメルト系接着剤を用い、熱ラミネーターなどを用いて、シート状のホットメルト系接着剤を第1、第2の補強部材40A、40B及びプライマー層50に貼り付けてもよい。
【0072】
次に、図6のステップS7において、図7(g)に示すように、ホットメルト層30Aをファブリック20に貼り付ける。特に限定されないが、具体的には、ホットメルト層30Aを加熱することで軟化させた状態で、ファブリック20に貼り付ける。特に、本実施形態における伸縮性配線板10Aは、第1の補強部材40Aにより、配線部61が形成されている領域に剛性を付与されているため、この貼り付け作業における伸縮性配線板10Aのハンドリング性が向上する。
【0073】
次に、図6のステップS8において、図7(h)に示すように、離型フィルム80を伸縮性配線板10Aから剥離する。なお、離型フィルム80を剥離するタイミングは、ファブリック20の貼り付け後のみに限定されない。例えば、ホットメルト層30Aの形成後(図6のステップS6の後)であり、ファブリック20の貼り付け前(図6のステップS7の前)に、離型フィルム80を剥離してもよい。
【0074】
<<第2実施形態>>
図8は、本発明の第2実施形態における伸縮性配線板10Bの断面図である。本実施形態では、伸縮性配線板10Bがシームテープ90を備えている点で、第1実施形態と相違するが、それ以外の構成は第1実施形態と同様である。以下に、第2実施形態における第1実施形態との相違点であるシームテープ90についてのみ説明を行い、第1実施形態と同様の構成である部分については同一符号を付して説明を省略する。本実施形態における「シームテープ90」は、本発明における「第2の伸縮性基材」に相当する。
【0075】
伸縮性配線板10Bは、オーバーコート層70上にシームテープ90が貼り付けられている点で、第1実施形態における伸縮性配線板10Aと相違する。このシームテープ90は、配線部61に対応する位置に貼り付けられている。
【0076】
シームテープ90は、伸縮性を有しており、このシームテープ90としては、特に限定されないが、ウレタン系エラストマーから構成されるフィルムの主面にホットメルトを備えたものを用いることができる。また、シームテープ90は、第1の補強部材40Aよりも柔らかく(換言すると、第1の補強部材40Aはシームテープ90より硬い)、シームテープ90のヤング率Eは、第1の補強部材のヤング率ERAよりも小さい(E<ERA)。また、シームテープ90の破断伸度Bは、ホットメルト層30Aの破断伸度Bよりも大きい(B>B)。
【0077】
この第2実施形態における伸縮性配線板10Bにおいても、上述の第1実施形態と同様に、伸縮性配線板10Bのハンドリング性を向上させることができる。特に、このシームテープ90により、伸縮性配線板10Bの配線部61が形成されている部分の剛性が一層向上するため、ハンドリング性がより向上する。
【0078】
なお、「第2の伸縮性基材」はシームテープ90のみに限定されない。「第2の伸縮性基材」としては、各種の樹脂材料を用いることができ、特に、防水性を有していることが好ましい。第2実施形態では、防水性を有する樹脂材料として、「シームテープ」を例示している。
【0079】
本実施形態の伸縮性配線板10Bの製造方法は、基本的に、第1実施形態における伸縮性配線板10Aの製造方法と同じであるが、図6のステップS8の後に、シームテープ90を貼りつける工程を有する点で第1実施形態と相違する。この工程では、シームテープ90が備えているホットメルトをオーバーコート層70上に、熱ラミネーターなどで貼り付ければよい。これによって、伸縮性配線板10Bが製造される。
【0080】
<<第3実施形態>>
図9は、本発明の第3実施形態における伸縮性配線板10Cの断面図である。本実施形態では、伸縮性配線板10Cの第1の伸縮性基材がホットメルト層30Aではなくエラストマー層30Bであり、ファブリック20が貼り付けられていない点で、第1実施形態と相違するが、それ以外の構成は第1実施形態と同様である。以下に、第3実施形態における第1実施形態との相違点についてのみ説明を行い、第1実施形態と同様の構成である部分については同一符号を付して説明を省略する。本実施形態における「エラストマー層30B」は、本発明における「第1の伸縮性基材」に相当する。
【0081】
エラストマー層30Bは、伸縮性配線板10Cの最下部に形成されており、プライマー層50と導体部60とオーバーコート層70と略同一の平面形状を有している。本実施形態では、第1、第2の補強部材40A、40Bは、エラストマー層30Bに埋設されており、プライマー層50は、エラストマー層30B上に形成されている。また、このエラストマー層30Bには、第1実施形態のファブリック20は貼り付けられていない。
【0082】
エラストマー層30Bを構成する材料としては、例えば、天然ゴム、スチレンブタジエンゴム、ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、ブチルゴム、ニトリルゴム、エチレンプロピレンゴム、アクリルゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴム、又はフッ素ゴム等を用いることができる。なお、その他のエラストマー材料を用いてもよい。
【0083】
エラストマー層30Bのヤング率Eとしては、0.1~35MPaであることが好ましい。また、エラストマー層30Bの最大伸度LEとしては、5~50%であることが好ましい。また、エラストマー層30Bの破断伸度Bとしては、50%以上であることが好ましい。また、エラストマー層30Bの厚みTとしては、20~300μmであることが好ましい。
【0084】
この第3実施形態における伸縮性配線板10Cにおいても、上述の第1実施形態と同様に、伸縮性配線板10Cのハンドリング性を向上させることができる。
【0085】
第3実施形態の伸縮性配線板10Cは、エラストマー基材上にプライマー層を印刷、導体部を印刷、オーバーコート層を印刷して製造できる。
【0086】
<<第4実施形態>>
図10は、本発明の第4実施形態における伸縮性配線板10Dの断面図である。本実施形態では、第1、第2の補強部材40A、40Bが、伸縮性配線板10Dの最下面に形成されている点で、第3実施形態と相違するが、それ以外の構成は第3実施形態と同様である。以下に、第4実施形態における第3実施形態との相違点についてのみ説明を行い、第3実施形態と同様の構成である部分については同一符号を付して説明を省略する。
【0087】
第4実施形態における伸縮性配線板10Dは、エラストマー層30Bの下面に、第1及び第2の補強部材40A、40Bが貼り付けられている。すなわち、第1及び第2の補強部材40A,40Bは、エラストマー層30Bに埋設されておらず、第1及び第2の補強部材40A,40Bは、プライマー層50から離間して配置されているとともに、プライマー層50と第1及び第2の補強部材40A,40Bとの間に、エラストマー層30Bが介在している。
【0088】
この第4実施形態における伸縮性配線板10Dにおいても、上述の第1実施形態と同様に、伸縮性配線板10Dのハンドリング性を向上させることができる。
【0089】
この第4実施形態における伸縮性配線板10Dは、エラストマー層30Bを形成した後に第1及び第2の補強部材40A,40Bをエラストマー層30Bに貼り付けることを除いて、基本的に、第3の実施形態における伸縮性配線板10Cの製造方法と同様の製造方法により製造することができる。
【0090】
なお、以上に説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記の実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
【0091】
例えば、第1及び第2の補強部材40A,40Bは、オーバーコート層70上に貼り付けられていてもよい。また、例えば、防水性を十分に確保できる場合には、プライマー層50は無くてもよい。すなわち、上記の実施形態では、プライマー層50を介して、ホットメルト層30A又はエラストマー層30B上に導体部60が間接的に設けられていたが、第1の伸縮性基材上に導体部60が直接的に設けられていてもよく、本実施形態における「第1の伸縮性基材上に設けられた」は、「第1の伸縮性基材上に間接的又は直接的に設けられた」を意味する。
【0092】
また、伸縮性配線板10の製造方法は、上記の実施形態のみに限定されず、ステップ2~ステップ8を実施する順番は上記の実施形態における順番(図5参照)のみに限定されない。例えば、オーバーコート層70を形成する前に、離型フィルム80上に接続部62を形成しておき、その後、オーバーコート層70を形成し、次いで、配線部61を形成してもよい。
【0093】
また、オーバーコート層70を形成する前に、離型フィルム80上に接続部62の一部を形成しておき、その後、オーバーコート層70を形成し、次いで、接続部62の残部及び配線部61を同時に形成してもよい。例えば、接続部62の一部が配線部61と異なる種類の導電性粒子を含み、接続部62の残部が配線部61と同じ種類の導電性粒子を含む場合に、このような製造方法を用いることができる。より具体的には、接続部62の一部が導電性粒子としてカーボンを含み、接続部62の残部及び配線部61が導電性粒子として銀を含む場合などに、このような製造方法を用いることができる。
【符号の説明】
【0094】
10A、10B、10C、10D…伸縮性配線板
20…ファブリック
21…第1の繊維束
22…第2の繊維束
23…間隙
201…一方の主面
202…他方の主面
30A…ホットメルト層
30B…エラストマー層
40A、40A、40A…第1の補強部材
40B…第2の補強部材
50…プライマー層
60…導体部
61…配線部
610a~610h…導体線
611…配線本体部分
612a…第1の分岐部分
612b…第2の分岐部分
62…接続部
601…下面
602…側面
620a~610h、620a~610h…接続端子
621…突出部
622…露出面
70…オーバーコート層
701…孔
80…離型フィルム
200…電子部品
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10