(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-20
(45)【発行日】2022-09-29
(54)【発明の名称】設計支援装置、構造物の生産方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G06F 30/13 20200101AFI20220921BHJP
G06F 30/27 20200101ALI20220921BHJP
【FI】
G06F30/13
G06F30/27
(21)【出願番号】P 2018084318
(22)【出願日】2018-04-25
【審査請求日】2021-04-09
(73)【特許権者】
【識別番号】303046244
【氏名又は名称】旭化成ホームズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100189337
【氏名又は名称】宮本 龍
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 康明
【審査官】堀井 啓明
(56)【参考文献】
【文献】特開平05-061846(JP,A)
【文献】特開2018-005773(JP,A)
【文献】特開平04-328669(JP,A)
【文献】特開平04-130968(JP,A)
【文献】国際公開第2017/046634(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 30/00-30/398
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造物の意匠設計の結果に基づく配置条件であって、設計対象エリアにおける設計要素の配置条件を取得する取得部と、
前記取得部が取得する前記配置条件に基づく前記設計要素の配置結果を、ニューラルネットワークモデルによって生成する生成部と、
前記生成部が生成する前記配置結果を
、前記意匠設計に基づく意匠を実現するための構造部材の配置結果として出力する出力部と、
を備える設計支援装置。
【請求項2】
設計対象エリアにおける設計要素の配置条件
であって、前記設計対象エリア外の構造物による制約条件が含まれる配置条件を取得する取得部と、
前記取得部が取得する前記配置条件に基づく前記設計要素の配置結果を、ニューラルネットワークモデルによって生成する生成部と、
前記生成部が生成する前記配置結果を出力する出力部と、
を備える設計支援装置。
【請求項3】
前記取得部は、
前記設計対象エリアにおける設計要素の配置を示すデータであって、前記設計対象エリアに前記設計要素が配置される座標位置の数と、前記設計要素の種類の数とに基づく次元を有する配置データを前記配置条件として取得し、
前記生成部は、
前記取得部が取得する前記配置条件の次元に対応する入力次元を有する入力層と、前記入力次元よりも少ない次元を有する隠れ層と、前記入力次元に対応する出力次元を有する出力層とを含むニューラルネットワークモデルによって、前記配置条件に対応する前記設計要素の配置データを前記設計要素ごとに前記配置結果として生成する
請求項1
又は請求項2に記載の設計支援装置。
【請求項4】
前記設計要素には、前記配置条件に含まれない種類の設計要素である生成対象要素と、前記配置条件に含まれる種類の設計要素である既定要素とがあり、
前記取得部は、
前記設計要素の一部の種類が前記生成対象要素として欠落している配置データを前記配置条件として取得し、
前記生成部は、
前記既定要素と前記生成対象要素とのうち少なくとも前記生成対象要素についての配置データを前記配置結果として生成する
請求項1
から請求項3のいずれか一項に記載の設計支援装置。
【請求項5】
前記取得部は、
前記出力部が出力した前記配置結果を、前記配置条件として取得し、
前記生成部は、
前記取得部が前記配置条件として取得する前記出力部が出力する前記配置結果に対応する配置データを、新たな前記配置結果として生成する
請求項1から請求項
4のいずれか一項に記載の設計支援装置。
【請求項6】
前記設計要素には、前記配置条件に含まれない種類の設計要素である生成対象要素と、前記配置条件に含まれる種類の設計要素である既定要素とがある場合において、
前記取得部は、
前記出力部が前記既定要素についての配置データと前記生成対象要素についての配置データとを前記配置結果として出力する場合に、前記出力部が出力する前記既定要素についての配置データを取得せずに、前記出力部が出力する前記生成対象要素についての配置データを前記配置条件として取得する
請求項
5に記載の設計支援装置。
【請求項7】
前記取得部が取得する前記配置条件には、前記出力部が出力した前記配置結果に含まれる前記設計要素の種類と一致する種類の前記設計要素についての配置データが含まれる
請求項
5又は請求項
6に記載の設計支援装置。
【請求項8】
前記取得部が取得する前記配置条件には、設計要素の種類が、前記出力部が出力した前記配置結果に含まれる前記設計要素の種類と同一であり、前記設計対象エリアにおける配置が、前記配置結果に含まれる前記設計要素の配置とは異なる前記設計要素の配置データが含まれる
請求項
5から請求項
7のいずれか一項に記載の設計支援装置。
【請求項9】
前記生成部は、学習結果の重み付けが互いに異なる複数のニューラルネットワークモデルに基づいて、前記配置結果を前記ニューラルネットワークモデルごとに生成する
請求項1から請求項
8のいずれか一項に記載の設計支援装置。
【請求項10】
前記配置条件及び前記配置結果は、前記設計対象エリアを平面視した場合の前記設計要素の配置を示す
請求項1から請求項
9のいずれか一項に記載の設計支援装置。
【請求項11】
前記配置条件には、前記設計対象エリアにおいて前記設計要素を配置可能な最大範囲による制約条件が含まれる
請求項1から請求項
10のいずれか一項に記載の設計支援装置。
【請求項12】
構造物の意匠設計の結果に基づく配置条件であって、構造物の設計対象エリアにおける設計要素の配置条件を取得する取得手順と、
前記取得手順において取得される前記配置条件に基づく前記設計要素の配置結果を、ニューラルネットワークモデルによって生成する生成手順と、
前記生成手順において生成される前記配置結果を
、前記意匠設計に基づく意匠を実現するための構造部材の配置結果として出力する出力手順と、
によって得られる前記配置結果に基づいて構造物を生産する構造物の生産方法。
【請求項13】
設計支援装置が備えるコンピュータに、
構造物の意匠設計の結果に基づく配置条件であって、構造物の設計対象エリアにおける設計要素の配置条件を取得する取得ステップと、
前記取得ステップにおいて取得される前記配置条件に基づく前記設計要素の配置結果を、ニューラルネットワークモデルによって生成する生成ステップと、
前記生成ステップにおいて生成される前記配置結果を
、前記意匠設計に基づく意匠を実現するための構造部材の配置結果として出力する出力ステップと、
を実行させるためのプログラム。
【請求項14】
構造物の設計対象エリアにおける設計要素の配置条件であって、前記設計対象エリア外の構造物による制約条件が含まれる配置条件を取得する取得手順と、
前記取得手順において取得される前記配置条件に基づく前記設計要素の配置結果を、ニューラルネットワークモデルによって生成する生成手順と、
前記生成手順において生成される前記配置結果を出力する出力手順と、
によって得られる前記配置結果に基づいて構造物を生産する構造物の生産方法。
【請求項15】
設計支援装置が備えるコンピュータに、
構造物の設計対象エリアにおける設計要素の配置条件であって、前記設計対象エリア外の構造物による制約条件が含まれる配置条件を取得する取得ステップと、
前記取得ステップにおいて取得される前記配置条件に基づく前記設計要素の配置結果を、ニューラルネットワークモデルによって生成する生成ステップと、
前記生成ステップにおいて生成される前記配置結果を出力する出力ステップと、
を実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、設計支援装置、構造物の生産方法及びプログラム。
【背景技術】
【0002】
従来、人手によって行われていた設計業務をコンピュータによって支援する設計支援装置に関する技術が開示されている。例えば、特許文献1には、設計対象を構成する各要素の制約条件と仕様を設定し、制約条件を充足し、かつ仕様の最適化を図ることのできるシステムが開示されている。
また例えば、特許文献2には、CADデータに対する過去の解析結果を用いて、新たに入力されるCADデータに対する解析時間の短縮化を可能とする設計支援装置が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】米国特許出願公開第2008/0234991号明細書
【文献】特開2017-111658号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示される従来技術によると、各要素間の基本的な関係性および制約条件を人間が規定しなければならず、また、要素数が増えると、その組み合わせパターンは要素数のべき乗で増加し、膨大なルールあるいは制約条件を矛盾なく記述することが困難となり、作業が煩雑になるという問題があった。
また、特許文献2に開示される従来技術によると、解析の対象となる範囲の解析行為の省略を目的としている。そのため、情報の階層性を持った複雑な設計対象物についての、設計作業の省力化の効果は限定的である。
【0005】
本発明は、上述した問題点に鑑みてなされたものであり、設計要素の間の配置の関係性や配置の制約条件を人手によって設定する場合に比べ、作業の煩雑さを低減することができる設計支援装置、構造物の生産方法及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一実施形態は、設計対象エリアにおける設計要素の配置条件を取得する取得部と、前記取得部が取得する前記配置条件に基づく前記設計要素の配置結果を、ニューラルネットワークモデルによって生成する生成部と、前記生成部が生成する前記配置結果を出力する出力部と、を備える設計支援装置である。
本発明の一実施形態は、設計対象エリアにおける設計要素の配置条件であって、前記設計対象エリア外の構造物による制約条件が含まれる配置条件を取得する取得部と、前記取得部が取得する前記配置条件に基づく前記設計要素の配置結果を、ニューラルネットワークモデルによって生成する生成部と、前記生成部が生成する前記配置結果を出力する出力部と、を備える設計支援装置である。
【0007】
本発明の一実施形態は、上述した設計支援装置において、前記取得部は、前記設計対象エリアにおける設計要素の配置を示すデータであって、前記設計対象エリアに前記設計要素が配置される座標位置の数と、前記設計要素の種類の数とに基づく次元を有する配置データを前記配置条件として取得し、前記生成部は、前記取得部が取得する前記配置条件の次元に対応する入力次元を有する入力層と、前記入力次元よりも少ない次元を有する隠れ層と、前記入力次元に対応する出力次元を有する出力層とを含むニューラルネットワークモデルによって、前記配置条件に対応する前記設計要素の配置データを前記設計要素ごとに前記配置結果として生成する。
【0008】
本発明の一実施形態は、前記設計要素には、前記配置条件に含まれない種類の設計要素である生成対象要素と、前記配置条件に含まれる種類の設計要素である既定要素とがあり、前記取得部は、前記設計要素の一部の種類が前記生成対象要素として欠落している配置データを前記配置条件として取得し、前記生成部は、前記既定要素と前記生成対象要素とのうち少なくとも前記生成対象要素についての配置データを前記配置結果として生成する。
【0009】
本発明の一実施形態は、上述した設計支援装置において、前記取得部は、前記出力部が出力した前記配置結果を、前記配置条件として取得し、前記生成部は、前記取得部が前記配置条件として取得する前記出力部が出力する前記配置結果に対応する配置データを、新たな前記配置結果として生成する。
【0010】
本発明の一実施形態は、上述した設計支援装置において、前記設計要素には、前記配置条件に含まれない種類の設計要素である生成対象要素と、前記配置条件に含まれる種類の設計要素である既定要素とがある場合において、前記取得部は、前記出力部が前記既定要素についての配置データと前記生成対象要素についての配置データとを前記配置結果として出力する場合に、前記出力部が出力する前記既定要素についての配置データを取得せずに、前記出力部が出力する前記生成対象要素についての配置データを前記配置条件として取得する。
【0011】
本発明の一実施形態は、上述した設計支援装置において、前記取得部が取得する前記配置条件には、前記出力部が出力した前記配置結果に含まれる前記設計要素の種類と一致する種類の前記設計要素についての配置データが含まれる。
【0012】
本発明の一実施形態は、上述した設計支援装置において、前記取得部が取得する前記配置条件には、設計要素の種類が、前記出力部が出力した前記配置結果に含まれる前記設計要素の種類と同一であり、前記設計対象エリアにおける配置が、前記配置結果に含まれる前記設計要素の配置とは異なる前記設計要素の配置データが含まれる。
【0013】
本発明の一実施形態は、上述した設計支援装置において、前記生成部は、学習結果の重み付けが互いに異なる複数のニューラルネットワークモデルに基づいて、前記配置結果を前記ニューラルネットワークモデルごとに生成する。
【0014】
本発明の一実施形態は、上述した設計支援装置において、前記配置条件及び前記配置結果は、前記設計対象エリアを平面視した場合の前記設計要素の配置を示す。
【0015】
本発明の一実施形態は、上述した設計支援装置において、前記配置条件には、前記設計対象エリアにおいて前記設計要素を配置可能な最大範囲による制約条件が含まれる。
【0016】
本発明の一実施形態は、上述した設計支援装置において、前記配置条件には、前記設計対象エリア外の構造物による制約条件が含まれる。
【0017】
本発明の一実施形態は、構造物の意匠設計の結果に基づく配置条件であって、構造物の設計対象エリアにおける設計要素の配置条件を取得する取得手順と、前記取得手順において取得される前記配置条件に基づく前記設計要素の配置結果を、ニューラルネットワークモデルによって生成する生成手順と、前記生成手順において生成される前記配置結果を、前記意匠設計に基づく意匠を実現するための構造部材の配置結果として出力する出力手順と、によって得られる前記配置結果に基づいて構造物を生産する構造物の生産方法である。
本発明の一実施形態は、構造物の設計対象エリアにおける設計要素の配置条件であって、前記設計対象エリア外の構造物による制約条件が含まれる配置条件を取得する取得手順と、前記取得手順において取得される前記配置条件に基づく前記設計要素の配置結果を、ニューラルネットワークモデルによって生成する生成手順と、前記生成手順において生成される前記配置結果を出力する出力手順と、によって得られる前記配置結果に基づいて構造物を生産する構造物の生産方法である。
【0018】
本発明の一実施形態は、設計支援装置が備えるコンピュータに、構造物の意匠設計の結果に基づく配置条件であって、構造物の設計対象エリアにおける設計要素の配置条件を取得する取得ステップと、前記取得ステップにおいて取得される前記配置条件に基づく前記設計要素の配置結果を、ニューラルネットワークモデルによって生成する生成ステップと、前記生成ステップにおいて生成される前記配置結果を、前記意匠設計に基づく意匠を実現するための構造部材の配置結果として出力する出力ステップと、を実行させるためのプログラムである。
本発明の一実施形態は、設計支援装置が備えるコンピュータに、構造物の設計対象エリアにおける設計要素の配置条件であって、前記設計対象エリア外の構造物による制約条件が含まれる配置条件を取得する取得ステップと、前記取得ステップにおいて取得される前記配置条件に基づく前記設計要素の配置結果を、ニューラルネットワークモデルによって生成する生成ステップと、前記生成ステップにおいて生成される前記配置結果を出力する出力ステップと、を実行させるためのプログラムである。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、設計要素の間の配置の関係性や配置の制約条件を人手によって設定する場合に比べ、作業の煩雑さを低減することができる又は設計工数を低減することができる設計支援装置、構造物の生産方法及びプログラムが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本実施形態の設計支援装置の設計要素の一例を示す図である。
【
図2】本実施形態の設計支援装置の機能構成の一例を示す図である。
【
図3】本実施形態の柱の配置データの一例を示す図である。
【
図4】本実施形態の柱の配置データの他の一例を示す図である。
【
図5】本実施形態の生成部の機能構成の一例を示す図である。
【
図7】本実施形態の設計支援装置の動作の一例を示す図である。
【
図8】本実施形態の設計支援装置の第1の変形例を示す図である。
【
図9】本実施形態の設計支援装置の第2の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
[実施形態]
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。設計支援装置1は、建築物、工作機械、自動車、船舶、航空機、集積回路、コンピュータソフトウエアなどにおける構造物又は機能の配置(レイアウト)の設計支援に適用可能である。本実施形態においては、設計支援装置1が、建築物の設計支援を行う場合を一例として説明する。なお、設計支援装置1が設計支援の対象とする建築物の構造は限定されない。設計支援装置1が設計支援の対象とする建築物の構造には、鋼構造、木構造、RC(Reinforced Concrete)造など種々の構造が含まれる。
【0022】
図1は、本実施形態の設計支援装置1の設計要素DEの一例を示す図である。設計要素DEには、壁WL、柱PL、床面外周FL、窓WDが含まれる。壁WLには、外壁OWLと、内壁IWLとが含まれる。これら外壁OWLと内壁IWLとを区別しない場合には、壁WLと総称する。床面外周FLには、各階の床面外周FLが含まれる。例えば、2階建の建築物の場合、床面外周FLには、1階の床面の外周である床面外周FL1、2階の床面の外周である床面外周FL2、及び屋上の床面の外周である床面外周FL3が含まれる。これら床面外周FL1~床面外周FL3を区別しない場合には、床面外周FLと総称する。また例えば、2階建の建築物の場合、柱PLには、1階の柱である柱PL1と、2階の柱である柱PL2とが含まれる。
設計支援装置1は、これらの各種設計要素DEを設計対象エリアAR内のいずれかの位置に配置することにより、建築物の設計支援を行う。本実施形態の一例では、設計対象エリアARとは、建築物を各階ごとに平面視した場合の設計要素DEの配置対象の範囲である。
【0023】
[設計支援装置1の機能構成]
図2は、本実施形態の設計支援装置1の機能構成の一例を示す図である。設計支援装置1は、取得部110と、生成部120と、出力部130とを備える。
取得部110は、配置データPDを取得する。ここで、配置データPDとは、設計要素DEの設計対象エリアARにおける配置を示すデータである。この一例において、配置データPDには、壁WL、柱PL、窓WD、床面外周FL、建具DR、耐震フレームBR、電気設備EL、衛生設備SA等のデータが含まれる。配置データPDの一例について、
図3及び
図4を参照して説明する。
【0024】
図3は、本実施形態の柱PL1の配置データPDの一例を示す図である。この柱PL1配置データPDは、建築物の1階の床面を上面視した場合に、柱PL1が配置される座標位置を示す。この一例では、配置データPDは、建築物の1階の床面を座標平面とする直交2軸(軸x1及び軸y1)によって、座標位置が示される。
【0025】
図4は、本実施形態の柱PL2の配置データPDの一例を示す図である。この柱PL2の配置データPDは、建築物の2階の床面を上面視した場合に、柱PL2が配置される座標位置を示す。この一例では、配置データPDは、建築物の2階の床面を座標平面とする直交2軸(軸x2及び軸y2)によって、座標位置が示される。
なお、軸x1と軸x2とを総称して軸xとも記載する。また、軸y1と軸y2とを総称して軸yとも記載する。
また、配置データPDは、平面的な2次元配列に限られず、3次元以上の高次元の配列であってもよい。
【0026】
すなわち、配置データPDは、設計対象エリアARを平面視した場合の設計要素DEの配置を示す。
図3及び
図4に示す一例では、配置データPDは、軸x方向に64か所、軸y方向に64か所、すなわち4096か所の座標位置を有する。同図の配置データPDの座標位置に示される「1」は、その座標位置に柱PLが配置されること示す。また、同図の配置データPDの座標位置に示される「0」は、その座標位置に柱PLが配置されないことを示す。つまり、配置データPDは、例えば、柱PLなどの設計要素DEが配置される又は配置されない座標位置を「1」又は「0」の2値化された情報によって示す。
設計要素DEの種類を問わず、各設計要素の存在を「1」、不存在を「0」によって表すことにより配置データPDが正規化される。配置データPDが正規化されることにより、機械による配置データPDの学習を適切に進めることができる。また、出力側では「0」と「1」の間の値で表現されることにより、設計要素がその座標に存在する確率として示される。
なお、配置データPDの座標位置の数(例えば、4096か所)や、軸ごとの座標位置の数(例えば、64か所)などの数値は一例であってこれに限られず、適宜変更可能である。
【0027】
ここで、配置データPDの次元数は、設計要素DEの種類の数nDEと座標位置の数nPXとの積によって示される。この一例では、配置データPDには、壁WL、柱PL、窓WD、床面外周FL、建具DR、耐震フレームBR、電気設備EL、衛生設備SA、…の13種類の設計要素DEのデータが含まれる。なお、
図2に示す一例では、これら13種類の設計要素DEのうちの一部のみを図示している。
この場合、設計要素DEの種類の数nDEは、13である。また、配置データPDの座標位置の数nPXは、上述したように4096である。この一例の場合、配置データPDの次元数は、設計要素DEの種類の数nDEと座標位置の数nPXとの積である53248次元である。つまり、配置データPDは、設計対象エリアARに設計要素DEが配置される座標位置の数nPXと、設計要素DEの種類の数nDEとに基づく次元を有する。
なお、設計要素DEの種類の数nDE(例えば、13)の数値は一例であってこれに限られず、適宜変更可能である。
【0028】
図2に戻り、取得部110は、配置データPDを、設計要素DEの配置条件CPとして取得する。取得部110は、取得した配置データPD、すなわち配置条件CPを生成部120に供給する。
【0029】
生成部120は、取得部110から供給される配置条件CPに基づいて、配置結果RPを生成する。生成部120の構成の具体例について、
図5を参照して説明する。
【0030】
図5は、本実施形態の生成部120の機能構成の一例を示す図である。生成部120は、ニューラルネットワークモデルNNMを備えている。このニューラルネットワークモデルNNMは、入力層ILと隠れ層HLと出力層OLとを備える。
入力層ILは、取得部110が取得する配置条件CPの次元に対応する入力次元数nIDを有する。この一例では、入力層ILの次元数(すなわち、入力次元数nID)は、53248次元である。
隠れ層HLは、入力次元数nIDよりも少ない次元を有する。この一例では、隠れ層HLの次元数(すなわち、隠れ層次元数nHD)は、832次元である。
出力層OLは、入力次元数nIDに対応する出力次元数nODを有する。この一例では、出力層OLの次元数(すなわち、出力次元数nOD)は、53248次元である。
すなわち、この一例において、ニューラルネットワークモデルNNMとは、オートエンコーダ・アルゴリズムに基づく次元圧縮によって配置データPDの特徴が学習されたモデルである。
【0031】
ニューラルネットワークモデルNNMの学習段階においては、配置条件CPを入力層ILに供給した場合に出力層OLから出力される配置結果RPと、供給した配置条件CPとを比較する。この場合、ニューラルネットワークモデルNNMに供給した配置条件CPと、ニューラルネットワークモデルNNMから出力される配置結果RPとが一致することを正しい出力結果であるとして、ニューラルネットワークモデルNNMを学習させる。
なお、この一例では、3層のニューラルネットワークモデルNNMについて説明するが、これに限られない。ニューラルネットワークモデルNNMは、複数階層の中間層(隠れ層HL)を有していてもよい。
【0032】
生成部120は、このニューラルネットワークモデルNNMによって、配置条件CPに対応する設計要素DEの配置データPDを設計要素DEごとに配置結果RPとして生成する。
【0033】
図2に戻り、出力部130は、生成部120が生成する配置結果RPを出力する。例えば、出力部130は、表示装置(不図示)に接続されており、配置結果RPを画像として出力する。
【0034】
[既定要素EE及び生成対象要素GTEについて]
ここで、設計要素DEには、既定要素EEと生成対象要素GTEとがある。既定要素EEとは、設計要素DEのうち、配置条件CPに含まれる種類の設計要素DEである。生成対象要素GTEとは、設計要素DEのうち、配置条件CPに含まれない種類の設計要素DEである。
上述したように、生成部120のニューラルネットワークモデルNNMは、オートエンコーダ・アルゴリズムに基づく次元圧縮によって配置データPDの特徴が学習されている。この学習により、ニューラルネットワークモデルNNMは、学習時に入力層ILに供給された複数の設計要素DEの種類のうち、一部の設計要素DEが欠落した状態の配置条件CPが供給された場合に、この欠落した設計要素DEについての配置結果RPを生成することができる。
【0035】
本実施形態の一例では、ニューラルネットワークモデルNNMは、学習過程において、壁WL、柱PL、窓WD、床面外周FL、建具DR、耐震フレームBR、電気設備EL、衛生設備SA、…の13種類の設計要素DEについて学習している。
図2に示す一例では、これら複数種類の設計要素DEの配置データPDのうち、窓WDの配置データPDが欠落した配置条件CPが、設計支援装置1に供給される。すなわち、この一例の場合、設計要素DEのうち、窓WDが生成対象要素GTEである。また、設計要素DEのうち窓WD以外の要素、すなわち、壁WL、柱PL、床面外周FL、建具DR、耐震フレームBR、電気設備EL、衛生設備SA、…の12種類の設計要素DEが、既定要素EEである。
【0036】
取得部110は、窓WDが生成対象要素GTEとして欠落している配置データPDを、配置条件CPとして取得する。生成部120は、取得部110が取得した配置条件CPに基づいて、生成対象要素GTE(この一例では、窓WD)の配置データPDを配置結果RPとして生成する。なお、生成部120は、既定要素EE(この一例では、壁WL、柱PL、床面外周FL、耐震フレームBR、電気設備EL、衛生設備SA、…の12種類の設計要素DE)の配置データPDを、生成対象要素GTEの配置データPDとともに生成してもよい。つまり、生成部120は、生成部120は、既定要素EEと生成対象要素GTEとのうち少なくとも生成対象要素GTEについての配置データPDを、配置結果RPとして生成する。
すなわち、生成部120は、配置条件CPにおいて欠落している設計要素DE(生成対象要素GTE)についての配置データPDを、その学習結果と、既定要素EEとに基づいて生成する。
【0037】
[設計支援装置1の動作]
次に、設計支援装置1の動作の一例について説明する。まず、
図6を参照して、一般的な建造物の設計の流れの一例について説明する。
【0038】
図6は、建造物の設計の流れの一例を示す図である。
(ステップS10)設計者は、建造物の意匠設計を行う。
(ステップS20)設計者は、ステップS10において設計された意匠を実現するための構造部材の配置設計を行う。
(ステップS30)設計者は、ステップS20において設計された構造部材の配置に基づく構造計算を行う。
(ステップS40)設計者は、ステップS30における構造計算結果が所定の要件を満たした場合(ステップS40;YES)には、設計を終了する。設計者は、ステップS30における構造計算結果が所定の要件を満たさない場合(ステップS40;NO)には、ステップS20に戻り、設計を続ける。
本実施形態の設計支援装置1は、一例として、上述したステップS
20における構造部材の配置設計を支援する。
【0039】
図7は、本実施形態の設計支援装置1の動作の一例を示す図である。
(ステップS110)設計支援装置1は、設計の制約条件を取得する。ここで、設計の制約条件には、設計対象エリアARにおいて設計要素DEを配置可能な最大範囲による制約条件、設計対象エリアAR外の構造物による制約条件が含まれる。
ここで、設計対象エリアARにおいて設計要素DEを配置可能な最大範囲による制約条件には、例えば、敷地の形状、道路制限斜線、北側斜線、建ぺい率、容積率、天空率、用途地域の種類、などが含まれる。また、設計対象エリアAR外の構造物による制約条件には、隣地境界線、隣地斜線、接続道路、隣家の窓・庭・バルコニーの位置、樹木や電柱(配電設備)の位置、当該敷地と隣地との高低差、当該敷地と接続道路との高低差などが含まれる。
【0040】
(ステップS120)設計支援装置1は、ステップS110において取得される制約条件に基づいて、設計対象エリアAR内に建築可能域の配置データPDを生成する。
以下、ステップS130~ステップS180において、設計支援装置1は、配置条件CPに基づいて配置結果RPを生成する処理を繰り返す。ステップS130~ステップS180における設計支援装置1の動作について具体的に説明する。
【0041】
(ステップS130)設計支援装置1は、ステップS120において生成された建築可能域の配置データPDに基づいて、間取りを生成する。ここでいう間取りとは、設計対象エリアAR内における床面外周FL及び壁WLの配置の形態である。この一例では、学習段階において、建築可能域の配置データPDと、床面外周FLの配置データPDと、壁WLの配置データPDとの組み合わせを、ニューラルネットワークモデルNNMに予め学習させてある。このように学習されているニューラルネットワークモデルNNMは、建築可能域の配置データPDが入力されると、この建築可能域に適した床面外周FLの配置データPD及び壁WLの配置データPDを生成することができる。
具体的には、ステップS130において、取得部110は、建築可能域の配置データPDが既定要素EEにされ、床面外周FLの配置データPD及び壁WLの配置データPDが生成対象要素GTEにされた配置条件CPを取得する。つまり、取得部110は、床面外周FLの配置データPD及び壁WLの配置データPDが欠落した配置条件CPを取得する。生成部120は、この配置条件CPに基づいて、生成対象要素GTEである床面外周FLの配置データPD及び壁WLの配置データPD、すなわち間取りの配置データPDを、配置結果RPとして生成する。
なお、ステップS130において取得される配置条件CPを「配置条件CP1」と、ステップS130において生成される配置結果RPを「配置結果RP1」とも記載する。
【0042】
(ステップS140)設計支援装置1は、ステップS130において生成された間取りの配置データPDに基づいて、窓WDの配置データPD及び建具DR(例えば、開き戸や引き戸)の配置データPDを生成する。この一例では、ニューラルネットワークモデルNNMには、間取りの配置データPDと、窓WDの配置データPDと、建具DRの配置データPDとの組み合わせを予め学習させてある。このように学習されているニューラルネットワークモデルNNMは、間取りの配置データPDが入力されると、この間取りに適した窓WDの配置データPD及び建具DRの配置データPDを生成することができる。
具体的には、ステップS140において、取得部110は、間取りの配置データPDが既定要素EEにされ、窓WDの配置データPD及び建具DRの配置データPDが生成対象要素GTEにされた配置条件CPを取得する。つまり、取得部110は、窓WDの配置データPD及び建具DRの配置データPDが欠落した配置条件CPを取得する。生成部120は、この配置条件CPに基づいて、生成対象要素GTEである窓WDの配置データPD及び建具DRの配置データPDを、配置結果RPとして生成する。
【0043】
なお、ステップS140において取得される配置条件CPを「配置条件CP2」と、ステップS140において生成される配置結果RPを「配置結果RP2」とも記載する。この一例において、ステップS130において生成された配置結果RP1と、ステップS140において生成される配置条件CP2とが一致している。
すなわち、取得部110が取得する配置条件CPn(nは自然数。この一例の場合、配置条件CP2)には、出力部130が出力した配置結果RP(n-1)(この一例の場合、配置結果RP1)に含まれる設計要素DEの種類と一致する種類の設計要素DEについての配置データPDが含まれる。
【0044】
(ステップS150)設計支援装置1は、ステップS140までに生成された間取りの配置データPDと、窓WDの配置データPDと、建具DRの配置データPDとに基づいて、柱PLの配置データPD及び耐震フレームBRの配置データPDを生成する。この一例では、ニューラルネットワークモデルNNMには、間取りの配置データPDと、窓WDの配置データPDと、建具DRの配置データPDと、柱PLの配置データPD及び耐震フレームBRの配置データPDとの組み合わせを予め学習させてある。このように学習されているニューラルネットワークモデルNNMは、間取りの配置データPD、窓WDの配置データPD及び建具DRの配置データPDが入力されると、この間取り、窓WDの配置及び建具DRの配置に適した柱PLの配置データPD及び耐震フレームBRの配置データPDを生成することができる。
具体的には、ステップS150において、取得部110は、間取りの配置データPD、窓WDの配置データPD及び建具DRの配置データPDが既定要素EEにされ、柱PLの配置データPD及び耐震フレームBRの配置データPDが生成対象要素GTEにされた配置条件CPを取得する。つまり、取得部110は、柱PLの配置データPD及び耐震フレームBRの配置データPDが欠落した配置条件CPを取得する。生成部120は、この配置条件CPに基づいて、生成対象要素GTEである柱PLの配置データPD及び耐震フレームBRの配置データPDを、配置結果RPとして生成する。
なお、ステップS150において取得される配置条件CPを「配置条件CP3」と、ステップS150において生成される配置結果RPを「配置結果RP3」とも記載する。この一例において、ステップS140において生成された配置結果RP2と、ステップS150において取得される配置条件CP3とが一致している。
【0045】
(ステップS160~ステップS180)設計支援装置1は、ステップS140及びステップS150と同様にして、梁BM、衛生設備SA、給湯設備HW及び電気設備ELのそれぞれの配置データPDを、配置結果RPnとして順次生成して、一連の動作を終了する。
【0046】
すなわち、取得部110は、生成手順の前段において出力部130が出力した配置結果RP(n-1)を、配置条件CPnとして取得する。また、生成部120は、取得部110が取得する配置条件CPn(つまり、配置結果RP(n-1))に対応する配置データPDを、新たな配置結果RPnとして生成する。
【0047】
なお、設計支援装置1は、ステップS130~ステップS180において生成した各配置データPDに基づいて、部材割付図を生成する機能を有していてもよい(ステップS210)。また、設計支援装置1は、ステップS210において生成された部材割付図に基づいて、部材発注リストを生成する機能を有していてもよい(ステップS220)。
また、設計支援装置1は、これら部材割付図を生成する機能、及び部材発注リストを生成する機能を有している他の装置に対して、各配置データPDを供給する機能を有していてもよい。つまり、設計支援装置1は、配置データPDに基づいて部材割付図や部材発注リストを生成する(又は生成させる)ことにより、建築物を生産するためのデータを生成することができる。
【0048】
また、設計支援装置1は、配置データPDを他のCAD(computer-aided design)データ形式に変換する変換機能を有していてもよい。設計支援装置1は、配置データPDをCADデータ形式に変換することにより、建築物を生産するためのデータを生成することができる。
【0049】
[実施形態のまとめ]
以上説明したように、本実施形態の設計支援装置1は、与えられた配置条件CPに基づいて配置結果RPを生成する生成部120を備える。この生成部120は、学習されたニューラルネットワークモデルNNMによって、配置結果RPを生成する。設計支援装置1は、従来人手で行われていた設計作業の一部を自動化することにより、構造物の配置の設計支援を行うことができる。したがって、設計支援装置1は、設計要素DEの間の配置の関係性や配置の制約条件を人手で設定する場合に比べ、作業の煩雑さを低減することができる。
【0050】
また、本実施形態の設計支援装置1において、生成部120は、入力次元数nIDよりも少ない次元を有する隠れ層HLを有するニューラルネットワークモデルNNMによって配置データPDを生成する。このように構成されたニューラルネットワークモデルNNMは、配置データPDの特徴量が次元圧縮されるため、次元圧縮されない場合に比べて配置データPDの特徴をより捉えた学習がなされている。したがって、本実施形態の設計支援装置1によれば、より好ましい(例えば、人手による設計をした場合と比べて遜色がない、又は人手による設計をした場合よりも優れた)設計結果を得ることができる。
【0051】
また、本実施形態の設計支援装置1において、生成部120は、設計要素DEの一部の種類が欠落している配置データPDに基づいて、生成対象要素GTEを生成する。上述したように、本実施形態のニューラルネットワークモデルNNMは、学習段階において配置条件CPと配置結果RPとの組み合わせを学習している。ニューラルネットワークモデルNNMは、学習段階において配置条件CPに含まれていた設計要素DEの一部の種類が欠落していたとしても、学習結果に基づいて、この欠落している設計要素DEの配置データPDを生成することができる。
【0052】
本実施形態の取得部110は、出力部130が出力した配置結果RP(n-1)を、配置条件CPnとして取得する。また、本実施形態の設計支援装置1において、取得部110が取得する配置条件CPには、出力部130が出力した配置結果RPに含まれる設計要素DEの種類と一致する種類の設計要素DEについての配置データPDが含まれる。
建築物、工作機械、自動車、船舶、集積回路、コンピュータソフトウエアなどの設計においては、設計対象のうち抽象度が高い設計対象から抽象度が低い設計対象まで段階的に設計する、いわゆるウォーターフォール型の設計手順が採用されることがある。
本実施形態の設計支援装置1は、取得部110は、出力部130が出力した配置結果RPを、配置条件CPとして取得することにより、上述したウォーターフォール型の設計手順に適用することができる。
ここで、ある配置条件(初期条件)に基づいて適切かつ最終的な配置結果(設計結果)を1ステップで生成することができる学習済みモデルを作り出すことは一般的に難しい。本実施形態の設計支援装置1は、配置結果RPを段階的に生成する。この場合には、生成された配置結果RPが仮に好ましくない結果である場合には、その設計段階のみを再試行すればよい。つまり、本実施形態の設計支援装置1は、段階的な配置結果RPの生成を行うことで、より好ましい配置結果RPを生成することができる。
また、ある配置条件A(設計要素a0,設計要素a1,設計要素a2,…,設計要素an,)に基づき、あるニューラルネットワークモデルNNM1を用いてある配置結果A’(設計要素a0,設計要素a1,設計要素a2,…,設計要素an,設計要素an+1)を得た場合であって、かつ設計要素a1について変更の必要が生じた場合について説明する。この場合、配置結果A’から設計要素a1を欠落させた配置条件A’’(設計要素a0,設計要素a2,…,設計要素an,設計要素an+1)を入力として、あるニューラルネットワークモデルNNM2を用いてある配置結果B(設計要素a0,設計要素b1,設計要素a2,…,設計要素an,設計要素an+1)を得ることができる。このように配置結果A’を得た後に配置結果Bを得ることは、ウォーターフォール型の設計開発プロセスを遡ることを意味する。ここで、オートエンコーダ・アルゴリズムにおいては、ニューラルネットワークモデルNNMの入力層の次元数と出力層の次元数とが一致しており、すなわち入力と出力とが対称である。このため、オートエンコーダ・アルゴリズムよるニューラルネットワークモデルNNMによれば、ウォーターフォール型の設計開発プロセスを遡ることができるため、多様な設計要求や要求の変更に柔軟な対応が可能となる。
なお、上述したように、ニューラルネットワークモデルNNMは、ある設計要素DEの配置データPDが既定要素EEとして入力されると、生成対象要素GTEの配置データPDを出力するとともに、入力された設計要素DEに対応する設計要素DEの配置データPDを既定要素EEとして出力する。例えば、ニューラルネットワークモデルNNMに入力される配置データPDに「壁WL」が含まれる場合には、ニューラルネットワークモデルNNMから「壁WL」の配置データPDが既定要素EEとして出力される。ここで、オートエンコーダ・アルゴリズムよるニューラルネットワークモデルNNMの場合、ニューラルネットワークモデルNNMに入力される設計要素DEの配置データPDと、この設計要素DEについてニューラルネットワークモデルNNMから出力される配置データPDとは、完全には一致しない場合がある。例えば、ニューラルネットワークモデルNNMに入力される設計要素DEが「壁WL」である場合、ニューラルネットワークモデルNNMから出力される壁WLの配置データPDは、ニューラルネットワークモデルNNMに入力された壁WLの配置データPDとは、完全には一致しない場合がある。すなわち、ニューラルネットワークモデルNNMに入力される配置データPDに対して、出力される配置データPDが劣化する場合がある。このため、出力される配置データPDが劣化している場合には、ニューラルネットワークモデルNNMが出力する既定要素EEの配置データPDを、ウォーターフォール型の設計開発プロセスの次段の設計段階において、そのままニューラルネットワークモデルNNMに入力させないようにしてもよい。この場合には、ウォーターフォール型の設計開発プロセスにおいて、前段の設計段階においてニューラルネットワークモデルNNMから出力された配置データPDに代えて、前段の設計段階においてニューラルネットワークモデルNNMに入力された配置データPDを、次段のニューラルネットワークモデルNNMに入力させる。
また、ニューラルネットワークモデルNNMから出力される配置データPDが、設計支援を行うものとしては不完全である場合、又は精度が低い場合がある。この場合には、ニューラルネットワークモデルNNMから出力される配置データPDについて、手続型のコンピュータプログラムによって整形することにより、配置データPDを完全なもの又は精度の高いものに変換してもよい。
【0053】
[変形例(1)]
図8は、本実施形態の設計支援装置1の第1の変形例を示す図である。この変形例において、出力部130は、既定要素EEについての配置データPDと生成対象要素GTEについての配置データPDとを配置結果RPとして出力する。
同図に示す具体例の場合、設計支援装置1は、(n-1)段階において、壁WLと床面外周FLとを既定要素EEとし、窓WDを生成対象要素GTEとして配置結果RP(n-1)を生成する。この場合、設計支援装置1は、生成対象要素GTEである窓WDの配置データPDを生成するとともに、既定要素EEである壁WL及び床面外周FLの配置データPDを生成する。ここで、生成された配置結果RP(n-1)のうち、床面外周FLについて、設計上の観点や発注元の要望の観点から好ましくない配置データPDが生成される場合がある。この場合、n段階において設計支援装置1は、(n-1)段階において生成された床面外周FLの配置データPDを用いずに、配置結果RPnを生成する。すなわち、取得部110は、出力部130が出力する既定要素EEについての配置データPDを取得せずに、出力部130が出力する生成対象要素GTEについての配置データPDを配置条件CPnとして取得する。
【0054】
この場合、床面外周FLについて、(n-1)段階において生成された配置とは異なる配置にされた配置データPDが、n段階の配置条件CPとして用いられる。
すなわち、取得部110が取得する配置条件CPnには、設計要素DEの種類が、出力部130によって出力された配置結果RP(n-1)に含まれる設計要素DEの種類と同一であり、設計対象エリアARにおける配置が、配置結果RP(n-1)に含まれる設計要素DEの配置とは異なる設計要素DEの配置データPDが含まれる。
【0055】
このように構成された設計支援装置1によれば、設計の各段階においてより好ましい配置条件CPを取得することにより、より好ましい配置結果RPを生成することができる。つまり、設計支援装置1によれば、より好ましい設計結果を後段の設計に引き継ぐことができる。
【0056】
[変形例(2)]
本変形例において、生成部120は、学習結果の重み付けが互いに異なる複数のニューラルネットワークモデルNNMに基づいて、配置結果RPをニューラルネットワークモデルNNMごとに生成する。
【0057】
図9は、本実施形態の設計支援装置1の第2の変形例を示す図である。本変形例において生成部120は、複数の種類のニューラルネットワークモデルNNMを有する。この一例では、生成部120は、ニューラルネットワークモデルNNM1と、ニューラルネットワークモデルNNM2とを有する。生成部120は、1つの配置条件CPnについて、ニューラルネットワークモデルNNM1による配置結果RPと、ニューラルネットワークモデルNNM2による配置結果RPとを生成する。これら、ニューラルネットワークモデルNNM1と、ニューラルネットワークモデルNNM2とは、学習結果の重み付けが互いに異なる。このため、ニューラルネットワークモデルNNM1による配置結果RPと、ニューラルネットワークモデルNNM2による配置結果RPとは、互いに設計要素DEの配置が異なる。
【0058】
このように構成された設計支援装置1によれば、1つの配置条件CPに対して設計要素DEの配置が互いに異なる複数の配置結果RPを生成することができるため、配置結果RPのバリエーションが増加し、設計要素DEの配置の選択肢を増やすことができる。
さらに、このように構成された設計支援装置1によれば、設計要素DEの配置について様々な仕様に対応することができる。
【0059】
以上、本発明の実施形態及びその変形を説明したが、これらの実施形態及びその変形は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態及びその変形は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態及びその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同時に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【0060】
なお、上述の各装置は内部にコンピュータを有している。そして、上述した各装置の各処理の過程は、プログラムの形式でコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記憶されており、このプログラムをコンピュータが読み出して実行することによって、上記処理が行われる。ここでコンピュータ読み取り可能な記録媒体とは、磁気ディスク、光磁気ディスク、CD-ROM、DVD-ROM、半導体メモリ等をいう。また、このコンピュータプログラムを通信回線によってコンピュータに配信し、この配信を受けたコンピュータが当該プログラムを実行するようにしてもよい。
【0061】
また、上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよい。
さらに、前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であってもよい。
【符号の説明】
【0062】
1…設計支援装置、110…取得部、120…生成部、130…出力部、NNM…ニューラルネットワークモデル、DE…設計要素、EE…既定要素、GTE…生成対象要素