IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社アイホーの特許一覧

<>
  • 特許-炊飯釜 図1
  • 特許-炊飯釜 図2
  • 特許-炊飯釜 図3
  • 特許-炊飯釜 図4
  • 特許-炊飯釜 図5
  • 特許-炊飯釜 図6
  • 特許-炊飯釜 図7
  • 特許-炊飯釜 図8
  • 特許-炊飯釜 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-20
(45)【発行日】2022-09-29
(54)【発明の名称】炊飯釜
(51)【国際特許分類】
   A47J 27/00 20060101AFI20220921BHJP
   A47J 36/06 20060101ALI20220921BHJP
【FI】
A47J27/00 101B
A47J27/00 101D
A47J36/06 A
A47J36/06 E
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018119820
(22)【出願日】2018-06-25
(65)【公開番号】P2020000291
(43)【公開日】2020-01-09
【審査請求日】2021-04-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000116699
【氏名又は名称】株式会社アイホー
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】特許業務法人栄光特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中野 了一
【審査官】吉澤 伸幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-237050(JP,A)
【文献】実公昭33-015180(JP,Y1)
【文献】実開平01-017630(JP,U)
【文献】特開平06-319647(JP,A)
【文献】登録実用新案第3182845(JP,U)
【文献】特開2002-253421(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0202389(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2002/0129714(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47J 27/00
A47J 36/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
穀類を収納する釜内空間部を有する釜本体と、
前記釜内空間部を覆う様に前記釜本体に取り付けられる蓋と、
を備える炊飯釜であって、
前記釜本体の側面を形成する釜側面部の上端に、外側へ水平方向に突出する第1フランジ部と、前記第1フランジ部の外周部から起立する縁壁部と、前記縁壁部の上端から外側へ水平方向に突出する第2フランジ部と、が設けられ、
前記釜側面部の内面と前記第1フランジ部の上面との境界に、前記釜本体の中央へ向かって下るように傾斜した釜封止面が形成され、
前記蓋の下面の外周部に下方に突出した環状脚部が形成され、前記環状脚部の下端部に、前記釜本体への前記蓋の取り付け時前記釜封止面に密着する蓋封止面が形成されるとともに、前記蓋の中央に前記釜内空間部と外部空間を連通する蒸気排出部が形成されている、
炊飯釜。
【請求項2】
請求項1に記載の炊飯釜であって、
前記蓋の中央には、上方に突出する把持筒部が設けられ、
前記蒸気排出部が、前記蓋の中央の下面に形成された排気開口部と、前記把持筒部の内部に設けられて前記排気開口部に連通する導入空間部と、前記把持筒部の側面に設けられて前記導入空間部と外部空間とを連通する排気孔とを含む、
炊飯釜。
【請求項3】
請求項2に記載の炊飯釜であって、
前記把持筒部の上部には、前記把持筒部の径方向外側に突出した筒覆い部が設けられる、
炊飯釜。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炊飯釜に関する。
【背景技術】
【0002】
炊飯釜全体が均一に加熱されムラのない炊飯ができる炊飯釜が知られている(特許文献1)。
【0003】
特許文献1は、容器側壁の外側に複数のフィンを有している加熱調理容器であって、加熱調理容器全体がほぼ均等に加熱され、過大な時間やエネルギーを要することなく、ムラのない炊飯などの加熱調理を実現することができることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2005-204819号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1は、ムラのない炊飯を目的としているが、釜本体と蓋との接合は、釜本体に設けられた内側に向かって下がる方向に傾斜する段差と蓋の蓋外周下面との線接触で行われている。特許文献1の炊飯釜では、上部に蒸気の排出部がなく釜本体と蓋との密閉度も低いため、釜の縁部から蒸気が漏れやすく、排出しやすい部分からの排出が続き、蒸気の流れに片寄りが生じて蒸気の排出が不均一となることから、炊き上がりにムラが生じてしまう恐れがある。また、蓋の把持部が平面状となっており、磁力等の吸着手段により上方から吸着するしかなく、搬送途中で落下してしまう恐れもある。更に、蓋は外周下面で搬送するようになるため、搬送を繰り返すうちに凹凸が生じて、段差との間に隙間を生じてしまうとういう課題があった。
【0006】
本発明は、釜本体と蓋との密閉性を高め、全体で均一に炊き上げることができる炊飯釜を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の炊飯釜は、穀類を収納する釜内空間部を有する釜本体と、前記釜内空間部を覆う様に前記釜本体に取り付けられる蓋と、を備える炊飯釜であって、前記釜本体の側面を形成する釜側面部には、当該釜本体の中央へ向かって下るように傾斜した釜封止面が形成され、前記蓋には、前記釜本体への取り付け時に、前記釜封止面に密着する蓋封止面が形成されるとともに、当該蓋の中央には、前記釜内空間部と外部空間を連通する蒸気排出部が形成されている。
【0008】
本発明の炊飯釜の一態様として例えば、前記蓋の中央には、上方に突出する把持筒部が設けられ、前記蒸気排出部が、前記蓋の中央の下面に形成された排気開口部と、前記把持筒部の内部に設けられて前記排気開口部に連通する導入空間部と、前記把持筒部の側面に設けられて前記導入空間部と外部空間とを連通する排気孔とを含む。
【0009】
本発明の炊飯釜の一態様として例えば、前記把持筒部の上部には、前記把持筒部の径方向外側に突出した筒覆い部が設けられる。
【0010】
本発明の炊飯釜の一態様として例えば、前記釜側面部の上端には、外側へ水平方向に突出する第1フランジ部と、当該第1フランジ部の外周部から起立する縁壁部と、当該縁壁部の上端から外側へ水平方向に突出する第2フランジ部と、が設けられ、前記釜側面部の内面と前記第1フランジ部の上面との境界に前記釜封止面が設けられ、前記蓋の下面の外周部には下方に突出した環状脚部が形成され、当該環状脚部の下端部に前記蓋封止面が形成されている。
【発明の効果】
【0011】
本発明の炊飯釜は、釜封止面と蓋封止面との密着により蓋と釜本体との密閉性を高めることができ、蓋中央で釜内空間部と外部空間を連通するため、炊飯釜中央から蒸気を排気でき、蒸気が片寄って排出されることがなくなり、炊飯が全体で均一に穀類を炊き上げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明に係る炊飯釜の一例を示し、(a)側面図、(b)断面図。
図2図1の炊飯釜を示し、(a)正面図、(b)正面斜視図、(c)釜本体の正面斜視図、(d)蓋の背面斜視図。
図3図1の炊飯釜の釜本体を示し、(a)断面図、(b)(a)のA部拡大図。
図4図1の炊飯釜の蓋を示し、(a)背面図、(b)側面図。
図5図4の蓋を示し、(a)断面図、(b)(a)のA部拡大図、(c)(a)のB部拡大図。
図6】本発明に係る釜本体へ蓋を載置する状態を示す説明図、(a)載置開始時、(b)載置完了時、(c)炊飯釜。
図7】本発明に係る炊飯釜の加熱状態を示す説明図、(a)炊飯釜内、(b)把持筒部内。
図8】本発明に係る釜本体と蓋の搬送状態を示し、(a)模式図、(b)(a)のA部拡大図。
図9】本発明に係る蓋の把持装置による把持状態の説明図、(a)把持前、(b)把持後。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係る炊飯釜の好適な実施形態を、図1図9に基づいて詳述する。
【0014】
図1は本発明に係る炊飯釜の一例を示し、(a)は側面図、(b)は断面図である。図2図1の炊飯釜を示し、(a)は正面図、(b)は正面斜視図、(c)は釜本体の正面斜視図、(d)は蓋の背面斜視図である。図3図1の炊飯釜の釜本体を示し、(a)は断面図、(b)は(a)のA部拡大図である。図4図1の炊飯釜の蓋を示し、(a)は背面図、(b)は側面図である。図5図4の蓋を示し、(a)は断面図、(b)は(a)のA部拡大図、(c)は(a)のB部拡大図である。図1から図5に基づいて本実施形態の炊飯釜を詳述する。
【0015】
本実施形態の炊飯釜1は、米などの穀類を収納して例えば炊飯システム内で搬送されながら穀類を炊飯するために用いられ、釜本体100と蓋200とを備える。
【0016】
本実施形態の炊飯釜1を使用する炊飯システムの一例について説明する。炊飯システムは、複数の炊飯釜1を載置して循環搬送する搬送ベルトを有する搬送装置と、当該搬送装置により搬送する炊飯釜1の蓋200を釜本体100から外して釜本体100内に所定量の穀類(米)と水、また必要に応じて調味料を供給する穀類投入部と、所定の時間穀類を浸漬させる浸漬部と、蓋200を釜本体100に載置し炊飯釜1を加熱して炊飯を行う炊飯部と、炊き上がった穀類(米飯)を蒸らす蒸らし部と、炊飯釜1を反転させて炊き上がった穀類を取り出す釜反転部と、釜本体100及び蓋200を洗浄する炊飯釜洗浄部とを備えている。
【0017】
釜本体100は、断面すり鉢形状を呈し、穀類を収納する釜内空間部101を有し、釜内空間部101を画定する釜底面部102及び釜底面部102から立ち上がり釜本体100の側面を形成する釜側面部103と、釜側面部103の上端において、釜側面部103から外側に広がる釜縁部110とが設けられている。
【0018】
釜本体100は鋳物より成形されたアルミ製からなり、表面全体が例えば黒色にアルマイト加工されているが、黒色は塗装であってもよい。耐食性や耐摩耗性を高めるとともに効率よく熱が吸収される。釜本体100の内面は、炊き上がりの穀類(米飯)の剥離向上のため、フッ素樹脂加工(テフロン(登録商標)加工)がされていることが望ましい。尚、フッ素樹脂加工は、釜本体100に収納される穀類の高さ程度まで加工されていればよい。
【0019】
釜本体100は、正面視円形形状を呈し、釜側面部103と釜縁部110は、釜底面部102を取り囲むように環状形状を呈している。また、釜本体100は、円形形状に限らず矩形形状等でもよい。
【0020】
釜縁部110は、外側へ水平方向に突出する第1フランジ部111と、当該第1フランジ部111の外周部から起立する縁壁部112と、当該縁壁部112の上端から外側へ水平方向に突出する第2フランジ部113と、が設けられ、第1フランジ部111及び第2フランジ部113は、水平方向に延びる第1フランジ部111の上面111aと第2フランジ部113の上面113aをそれぞれ有している。
【0021】
釜側面部103の内面103aと第1フランジ部111の上面111aとの境界には、釜封止面104が設けられ、釜封止面104は、釜本体100の中央に向かって下るように傾斜した面であり、その表面は平滑研削されている。
【0022】
第1フランジ部111の下面111bは、釜本体100を支持する釜支持面として平面状に形成されている。炊飯システムで加熱される際、下面111bで釜本体100を支持することができる。また、釜本体100を操作するときは、第2フランジ部113により操作することができる。
【0023】
蓋200は、鋳物により成形されたアルミ製からなり、本実施形態では正面視円形形状を呈しているが、矩形形状でもよい。
【0024】
蓋200は、蓋200の中央から外周縁に向けやや下がるように傾斜した上面201と、上面201の反対側に位置する下面202とを有し、蓋200の中央には、釜内空間部101と外部空間を連通し蒸気を排出する蒸気排出部203が形成されている。さらに蓋200の中央には上面201から上方に突出し蓋200の把持を容易にする把持筒部210を備え、蓋200の周縁には、釜本体100の釜縁部110に密着して釜本体100を覆う外周部220とを備える。
【0025】
把持筒部210は、上面201から上方に突出する筒形状を呈し、把持筒部210の上部には、把持筒部210の外径よりも大きく把持筒部210の経方向外側に水平方向に突出する筒覆い部230を有している。筒覆い部230は本実施形態では把持筒部210と一体形成されているが、例えば円盤状の筒カバー体を、把持筒部210の上面に別体で固定してもよい。
【0026】
把持筒部210には、蓋200の中央の下面202に形成された排気開口部211と、把持筒部210の内部に設けられて排気開口部211に連通する導入空間部212と、把持筒部210の側面に導入空間部212の形成方向と垂直方向に形成され、把持筒部210の側面壁を貫通して導入空間部212と外部空間とを連通する排気孔213とが設けられている。即ち、排気孔213は、把持筒部210の側面に向けて開口し、排気開口部211及び導入空間部212と排気孔213とにより、蒸気排出部203を構成している。
【0027】
外周部220は、外周部220の下面202から下方に突出し蓋200の外周近傍を壁のように形成する環状脚部221と、環状脚部221の外方に突出し蓋200の外周縁に形成される覆い部222とを有している。覆い部222の上面は、蓋200の上面201に含まれ、把持筒部210から外周縁に向かって下がるように傾斜している。
【0028】
環状脚部221の下端部には、釜封止面104に密着する蓋封止面223が形成され、蓋封止面223は、蓋200の中央に向かって下るように傾斜した面であり、その表面は平滑研削されている。また、環状脚部221の下端部には、蓋封止面223から蓋200の中央に向かって水平に延びる蓋載置面224が形成されている。
【0029】
また、外周部220には、覆い部222の下面に沿って環状脚部221から外側に突出する複数の側面突部225と、側面突部225より外周側において覆い部222の下面から下方に突出する複数の下面突部226が設けられている。本実施形態では、側面突部225は覆い部222の環状方向に沿って4箇所設けられ、下面突部226は覆い部222の環状方向に沿って8箇所設けられている。そして側面突部225の外側部には、下方に向かって蓋200の中央方向に傾斜するガイド面225aが設けられている。
【0030】
図6は、本発明に係る釜本体へ蓋を載置する状態を示す説明図、(a)は載置開始時、(b)は載置完了時、(c)は炊飯釜である。図6に基づいて、釜本体100と蓋200との接合を説明する。
【0031】
釜本体100上部から蓋200を載置する際、蓋200を釜本体100の略中央に位置した状態のまま環状脚部221を釜縁部110内に進入させ、蓋封止面223が釜封止面104に当接すると、釜本体100を覆うように蓋200が釜本体100の上部に載置される。
【0032】
蓋200の荷重により釜封止面104と蓋封止面223は密着し、釜内空間部101を密封する。釜封止面104及び蓋封止面223は、平滑研削により密封度が高められている。また、釜封止面104及び蓋封止面223は、中央に向かって下るように傾斜した面であるため、蓋200が釜本体100の中央にガイドされ、釜本体100と蓋200が全周にわたり密着する。
【0033】
蓋200が釜本体100に載置されると、蓋200の環状脚部221及び覆い部222と、釜本体100の第1フランジ部111及び縁壁部112とで囲まれる吹き出し空間部114が形成される。このとき釜本体100の第1フランジ部111の上面111a及び縁壁部112の内面に対し側面突部225が対向して、吹き出し空間部114の空間が確保される。第2フランジ部113の上面113aと覆い部222の下面とが当接することなく通風路115が形成される。また、通風路115においては、下面突部226の下面と第2フランジ部の上面113aは離間している。
【0034】
吹き出し空間部114及び通風路115は、側面突部225及び下面突部226により部分的に領域が狭まるが、全周にわたって形成されている。
【0035】
覆い部222及び下面突部226と第2フランジ部113との間に通風路115である隙間ができるため、蓋200は、蓋封止面223のみで釜本体100上に載置された状態となる。したがって蓋200の荷重が分散することなくすべて釜封止面104に掛かり、釜封止面104と蓋封止面223との密着度が高まり、容易に蓋200が浮き上がることを防止している。
【0036】
側面突部225にガイド面225aを設けることにより、蓋200の位置が釜本体100の中央から位置ズレしていたとしても、第2フランジ部113に当接して蓋200を釜本体100の中央側に向けてスムーズに誘導することができ、吹き出し空間部114が形成できる。例えば、蓋200が位置ズレした状態で釜本体100に載置すると、縁壁部112と環状脚部221とが接近する部分、離れた部分ができ、吹き出し空間部114が形成できないだけでなく、釜封止面104と蓋封止面223とが当接せず、炊飯釜1を密封できない状態となる。このような状態を避けるため、縁壁部112と環状脚部221との間に位置するように側面突部225を環状脚部221の外周面側に設けることで、全周にわたり縁壁部112と環状脚部221との間隔が適切に保たれ、吹き出し空間部114が確実に形成される。そして、ガイド面225aによって、環状脚部221が縁壁部112に接近した場合でも、蓋200を中央側に向けてスムーズに誘導することができる。
【0037】
吹き出し空間部114を形成することで水蒸気やおねばを直接外部へ吹き出さないようにしている。例えば、炊飯工程の後半では、炊飯釜1がさらに加熱され、炊飯釜1全体で強く沸騰するようになり蒸気の排出量が急増する。そして、蓋200の排気孔213からの排出では間に合わなくなり、炊飯釜1の周縁部からおねばとともに水蒸気が吹き出してしまい、炊飯釜1の周囲を汚してしまう恐れがある。このため吹き出し空間部114を設けて、水蒸気やおねばを受け止め貯留するようにした。
【0038】
尚、おねばとは、デンプンなど米に含まれる成分が水に溶け出した米の煮汁のことであり、粘性があり炊飯工程の途中で沸騰したとき泡状となり炊飯釜1内に多く発生する。
【0039】
炊飯加熱により内圧が高まり、蓋200を押し上げ蓋封止面223と釜封止面104との間に隙間が生じて、吹き出し空間部114に水蒸気及びおねばが吹き出る。吹き出し空間部114に吹き出ることで温度や圧力が低下し、ほとんどが液体化して吹き出し空間部114に貯留される。従って、吹き出た水蒸気やおねばを直接外部に吹き出すことなく、余剰蒸気のみが通風路115から排出することができるため、おねばなどが炊飯釜1の外部へ吹きこぼれることを効果的に防止することができる。
【0040】
図7は、本発明に係る炊飯釜の加熱状態を示す説明図、(a)は炊飯釜内、(b)把持筒部内である。図7に基づいて、炊飯釜1の炊飯状態を説明する。
【0041】
釜本体100が加熱されると、釜本体100に収納されている水が沸騰し始め、蒸気となって釜内空間部101に集まる。環状脚部221と釜側面部103とで形成される炊飯釜1の側面は、釜封止面104と蓋封止面223が密着しているため蒸気の逃げ場がなく、蒸気は蓋200の中央に設けられた把持筒部210近傍に集中する。即ち、炊飯釜1内で発生した蒸気は、炊飯釜1内に充満しながら上昇し、把持筒部210内に進入する。蒸気は、排気開口部211から導入空間部212内に進入し、排気孔213から外部空間に噴出する。
【0042】
釜本体100の釜封止面104と、蓋200の外周部220の蓋封止面223とにより、全周にわたり釜内空間部101を密封することができる。釜封止面104は、釜本体100の中央に向かって下るように傾斜し、蓋封止面223も蓋200の中央に向かって下るように傾斜しているため、釜本体100に蓋200を載せたとき、蓋200が釜本体100の中央にガイドされ蓋封止面223と釜封止面104とが密着する状態となり、全周にわたり均等な面接触を実現できる。さらに、水平面状の形成された面に比較して接触面積を広くすることができ密閉度が高められる。これにより、釜本体100と蓋200とを密閉することができ、釜内空間部101内の蒸気が漏出することなく釜内空間部101に充満させることが可能となる。
【0043】
例えば、炊飯釜1の周縁の一部から蒸気が漏れ出すと、近くの蒸気は排出されやすいが、遠くの蒸気は排出されにくくなる。蒸気と共に熱も排出されるため、蒸気の流れに片寄りが生じると不均一な炊き上がりとなる。そこで、本実施形態の炊飯釜1では、釜本体100と蓋200との密閉性を高め、蓋200の中央に釜内空間部101と外部空間を連通する蒸気排出部203を形成している。当該構成により、釜内空間部101に蒸気を充満させながら、上昇した蒸気を蓋200の中央に寄せ集めて蒸気を排出させることができる。炊飯釜1内から発生した蒸気を均等に排出できるため、炊飯釜1全体が均一に加熱され、穀類をむらなく炊き上げることができる。
【0044】
また、蒸気をスムーズに排出させるために、蓋200の中央から把持筒部210を上方に突出させ、把持筒部210の排気開口部211から導入空間部212へ蒸気を誘導するようにした。導入空間部212により、炊飯釜1内の釜内空間部101が蓋200の上面201からさらに上方へ突出して形成されるので、炊飯釜1内の蒸気が導入空間部212へ向け上昇流動し易い構造となる。従って、炊飯釜1内の蒸気を中央上部に向け誘導することができるため、蓋200の中央に設けられた把持筒部210からスムーズに蒸気を排出することができる。
【0045】
さらに、排気孔213が把持筒部210から側方に向けて開口しているため、蒸気の過剰な排気を抑止することができる。排気孔213は把持筒部210の上端に開口せず、側面に開口しているため、導入空間部212に誘導された蒸気はそのまま上昇するが、導入空間部212の上端面に衝突し、一旦導入空間部212内に滞留してから側方に向け排気孔213から排出される。上方へ向け開口すると上昇流に相まって蒸気が排出され過ぎてしまうが、上昇流の勢いを抑えて適切に排気することができる。
【0046】
また、排気孔213を側面に向けて開口することで、蓋200の上方に落下する異物は下方に向け落下するため、排気孔213からの異物侵入を防ぐことができる。
【0047】
本実施形態の蓋200は、蓋200の下面202から環状脚部221を形成し、環状脚部221より外側に覆い部222を延設することで、釜本体100全体を上部から覆うようにしている。また、把持筒部210の排気孔213だけではなく、釜本体100の釜縁部110及び蓋200の外周部220からも異物の混入を防止している。
【0048】
蓋200の覆い部222の下面に、第2フランジ部113に向け突出した下面突部226を形成している。蓋200は、傾斜面(テーパ面)として形成される釜封止面104に載置されているのみなので、搬送する時の振動や沸騰による振動等により、側面視において左右に回転(ロール回転)する方向に位置ズレすることがある。蓋200がズレてしまうと、釜封止面104と蓋封止面223の接触面積が小さくなり、通風路115の間隔も拡がり蒸気がその一部から漏れやすくなる。下面突部226を複数箇所形成することで、蓋200が左右方向に大きく回転することを抑制し、炊飯釜1の全周において釜本体100と蓋200との適切な密着による封止を維持して蒸気漏れを防ぐことができる。
【0049】
図8は、本発明に係る釜本体と蓋の搬送状態を示し、(a)は模式図、(b)は(a)のA部拡大図である。図8に基づいて、釜本体100と蓋200の搬送の一例を説明する。
【0050】
釜本体100と蓋200は、炊飯システムにおいて搬送ベルト300で搬送される。本実施形態では、釜本体100が反転した状態で搬送される状態も含まれ、搬送ベルト300の搬送面301に第2フランジ部113が載置されている。
【0051】
第2フランジ部113の上面113aは、釜本体100の洗浄時などで釜本体10を反転した際、釜本体100の載置面となる。また、第2フランジ部113は釜封止面104より上方に位置しており、釜本体100を反転した際、釜封止面104が第2フランジ部113より上方に位置するため、搬送ベルト300から離間した状態となる。これにより、釜封止面104は搬送時の搬送ベルト300との衝突や摩擦に影響されることながないため、この状態で繰り返し搬送されても経年使用による密閉度の低下を抑えることができる。
【0052】
釜本体100において、第2フランジ部113を縁壁部112の上端に形成することで、第2フランジ部113の上面113aが、蓋200の下面突部226と対向する規制面として広く形成できるとともに、釜本体100の洗浄時などで釜本体10を反転する際、釜本体100の載置面とすることができる。
【0053】
そして、第2フランジ部113の位置関係は、釜本体100の取手として持ち易くなるだけでなく、第2フランジ部113の上面113aにより、下面突部226による蓋200の回転を確実に規制できるとともに、釜本体100の反転時に搬送コンベアと接する面積が広くなることで、単位面積あたりの荷重が下がり傷や凹凸を付きにくくすることができる。
【0054】
また、蓋200は、蓋載置面224が搬送ベルト300の搬送面301に接触する状態で搬送ベルト300に載置されることもある。
【0055】
蓋200を搬送ベルト300で搬送する際、蓋載置面224は搬送ベルト300との衝突や摩擦が繰り返され凹凸状となるおそれがあるものの、蓋封止面223に影響することはないので、蓋200の経年使用による密閉度の低下を抑えることができる。また、蓋載置面224は、釜本体100に蓋200を載置したとき、釜封止面104より釜本体100の内側中央よりに位置し、釜封止面104は、蓋載置面224と接することがないため、蓋載置面224の状態に影響されず、蓋封止面223との密封状態を適切に維持することができる。
【0056】
図9は、本発明に係る蓋の把持装置による把持状態の説明図、(a)は把持前、(b)は把持後である。図9に基づいて蓋200の把持状態を説明する。
【0057】
炊飯システムにおいて、把持装置400により釜本体100又は搬送ベルト300から蓋200を持ち上げる工程がある。把持装置400は、先端に爪部401を有する左右一対の把持部材402を拡縮自在に支持する把持本体403と、把持本体403を昇降させる昇降部404とを備えている。昇降部404を駆動させ把持本体403が降下すると、爪部401で筒覆い部230の下方から把持筒部210を把持し、再び昇降部404を駆動して蓋200を搬送ベルト300から持ち上げる。
【0058】
このように蓋200の中央から上方に突出させた把持筒部210を把持することで、蓋200をバランス良く把持できる。釜本体100からの蓋200の着脱や、異なる搬送ベルト300間の搬送など蓋200を把持する際、蓋200の中央を把持するため、複数箇所で把持する必要がなく、バランスよく安定した姿勢で蓋200を昇降操作することができる。
【0059】
本実施形態の筒覆い部230は、把持筒部210全体を上部から覆う構造である。把持筒部210を上部から覆うことで、上方から落下する異物は筒覆い部230上面を滑り落ち、又は跳ね返り、筒覆い部230より外方へ落下する。排気孔213を上部から覆うことで、排気孔213への異物の侵入を確実に防止することができる。
【0060】
また、筒覆い部230は、把持筒部210の上部において外方に向け突出して形成されているため、搬送装置などの把持装置400で把持筒部210を把持するとき、筒覆い部230に掛かるように把持することで、把持装置400から抜け落ちることが防止され、より確実に安定して蓋200を搬送、操作することができる。
【0061】
本実施形態の炊飯釜1であれば、炊飯釜1内で発生した蒸気は、どの場所で発生しても等しく中央に寄せ集められ、炊飯釜1内全体が均等に加熱炊飯することができる。また、内部に導入空間部212を有した把持筒部210により、蓋200をバランス良く把持できるとともに、炊飯釜1内の蒸気を中央の把持筒部210内に導入しやすくなる。さらに導入空間部212の形成方向と垂直方向に形成される排気孔213が側方に向いているため、上方からの異物の侵入を防ぐこともできる。
【0062】
尚、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数値、形態、数、配置箇所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明に係る炊飯釜は、炊飯釜内で発生した蒸気が片寄らずに排出され、ムラのない穀類(米飯)の炊き上げを望む分野に適用可能である。
【符号の説明】
【0064】
1 炊飯釜
100 釜本体
101 釜内空間部
102 釜底面部
103 釜側面部
104 釜封止面
110 釜縁部
111 第1フランジ部
111a 第1フランジ部の上面
112 縁壁部
113 第2フランジ部
113a 第2フランジ部の上面
114 吹き出し空間部
115 通風路
200 蓋
201 上面
202 下面
203 蒸気排出部
210 把持筒部
211 排気開口部
212 導入空間部
213 排気孔
220 外周部
221 環状脚部
222 覆い部
223 蓋封止面
224 蓋載置面
225 側面突部
225a ガイド面
226 下面突部
230 筒覆い部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9