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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-20
(45)【発行日】2022-09-29
(54)【発明の名称】印刷物
(51)【国際特許分類】
   B41M 3/14 20060101AFI20220921BHJP
   B41M 3/06 20060101ALI20220921BHJP
   B42D 25/378 20140101ALI20220921BHJP
   G09F 3/02 20060101ALI20220921BHJP
【FI】
B41M3/14
B41M3/06 B
B42D25/378
G09F3/02 W
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018119908
(22)【出願日】2018-06-25
(65)【公開番号】P2020001181
(43)【公開日】2020-01-09
【審査請求日】2021-05-19
(73)【特許権者】
【識別番号】591186888
【氏名又は名称】株式会社トッパンインフォメディア
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100139686
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 史朗
(72)【発明者】
【氏名】柿沼 健一
【審査官】中村 博之
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-062356(JP,A)
【文献】特開2008-162184(JP,A)
【文献】特開昭58-134782(JP,A)
【文献】特開平07-195819(JP,A)
【文献】特開2014-127140(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0029137(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41M 3/14
B41M 3/06
B42D 25/378
G09F 3/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、
前記基材上に印刷された可視印刷部と、
前記基材上に印刷され、熱又は光を照射することにより視認可能となる不可視印刷部と、
前記基材、前記可視印刷部及び前記不可視印刷部を覆う乱反射層と、
前記基材、前記可視印刷部及び前記不可視印刷部と、前記乱反射層と、の間に配置された透明層と、
を備え
前記透明層の高さは、前記不可視印刷部と前記基材又は前記可視印刷部との段差領域において滑らかに減少する印刷物。
【請求項2】
前記乱反射層は、透明なベース材と、前記ベース材内に配置され光を反射する粒子と、を備える請求項1記載の印刷物。
【請求項3】
前記乱反射層は、偏光顔料を備える請求項1又は2記載の印刷物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷物に関する。
【背景技術】
【0002】
市場から信頼された高品質の製品の模倣品が流通し、問題となっている。これらの模倣品と正規品とを識別するために、正規に製造されたことを証明する特殊なラベルを貼付する場合がある。図5に示す印刷物100のように、通常のラベルは、基材101の上に、バーコードなどの可視情報が印刷されているだけだが(可視印刷部102)、このような特殊なラベルには、正規の製品であることを保証するために、不可視情報が可視印刷部102の上に印刷されている(不可視印刷部103)。ここで、不可視情報とは、目視では読み取れないが、紫外線の照射などの外的な処理を行うことで読み取りが可能になる情報をいう。しかし、直接不可視情報を印刷した場合、基材101(又は可視印刷部102)と不可視印刷部103の間の微小な段差領域では、それ以外の領域と光の反射の仕方が異なるため、光の加減などによっては、不可視情報を目視で読み取れてしまうという問題があった。
【0003】
この問題を解決するために、従来様々な取り組みが行われてきた。特許文献1には、図6に示す印刷物200のように、可視情報を印刷した可視印刷部102と不可視情報を印刷した不可視印刷部103(透明蛍光インキ)の上に透明なオーバープリント層104を設ける技術が開示されている。特許文献2には、透明蛍光インキに含まれる蛍光顔料よりも大きい粒径の顔料で絵柄を印刷し、その絵柄印刷の上に透明蛍光インキを印刷する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平7-195819号公報
【文献】特開平7-89283号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1の技術では、依然として光の加減などによって不可視情報を読み取ることが可能な場合があり、不可視情報の読み取り防止技術としては不十分である。特許文献2の技術も、特許文献1の技術と同様に不可視情報の読み取り防止性能が不十分であることに加え、使用する顔料や不可視情報の印刷領域が限定されるという問題がある。
そこで、本発明では、可視情報を印刷する顔料や印刷領域等に制約が無く目視による不可視情報の読み取りを防止する性能に優れた印刷物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、本発明は以下の手段を提案している。
(1)第1の発明に係る印刷物は、基材と、前記基材上に印刷された可視印刷部と、前記基材上に印刷され、熱又は光を照射することにより視認可能となる不可視印刷部と、前記基材、前記可視印刷部及び前記不可視印刷部を覆う乱反射層と、前記基材、前記可視印刷部及び前記不可視印刷部と、前記乱反射層と、の間に配置された透明層と、を備え、前記透明層の高さは、前記不可視印刷部と前記基材又は前記可視印刷部との段差領域において滑らかに減少する。ここで、乱反射層とは、入射した光を乱反射する機能を有する層をいう。
【0007】
本発明によれば、乱反射層が基材及び不可視印刷部を覆っている。乱反射層に入射する光が乱反射するため、基材と不可視印刷部の段差領域とそれ以外の領域での光の反射状態の違いを小さくし、段差領域を目立ち難くする。そのため、目視により不可視印刷部を確認しにくくなる。
なお、乱反射層を設けることで、基材と不可視印刷部との段差領域も乱反射層に覆われる。例えば、乱反射層のうち、基材を覆う部分と不可視印刷部を覆う部分とで、厚さが異なる場合、乱反射層が前記段差領域における段差を吸収し、乱反射層において前記段差領域を覆う部分に現れる段差を小さくすることができる。この場合には、段差領域を一層確認し難くなる。
【0009】
本発明によれば、乱反射層が基材、可視印刷部及び不可視印刷部又は基材及び可視印刷部を覆っている。乱反射層に入射する光が乱反射するため、基材と不可視印刷部(または可視印刷部と不可視印刷部)の段差領域とそれ以外の領域での光の反射状態の違いを小さくし、段差領域を目立ち難くする。そのため、目視により不可視印刷部を確認しにくくなる。
本発明によれば、透明層が基材及び不可視印刷部と、乱反射層と、の間に配置されているため、乱反射層において前記段差領域を覆う部分に現れる段差をより小さくし、段差領域を目立ち難くする。そのため、目視により不可視印刷部を確認しにくくなる。
【0010】
)第の発明に係る印刷物において、(1)の発明の特徴に加え、前記乱反射層は、透明なベース材と、前記透明なベース材内に配置され光を反射する粒子と、を備える。
【0011】
本発明によれば、光を透過する透明なベース材を用いているため、例えば、光は乱反射層の中を進み、多数の粒子で複数回反射される。その結果、入射してきた光が乱反射され、目視により不可視印刷部を確認しにくくなる。
【0012】
)第の発明に係る印刷物において、(1)又は(2)の発明の特徴に加え、前記乱反射層は、偏光顔料を備えることを特徴とする。
【0013】
本発明によれば、偏光顔料を備えることから、印刷物を見る角度によって、その色調が変化する。そのため、前述の段差領域を目立ち難くする。そのため、目視により不可視印刷部を確認しにくくなる。
【発明の効果】
【0016】
本発明は、可視情報を印刷する顔料や印刷領域等に制約が無く目視による不可視情報の読み取りを防止する性能に優れた印刷物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の一実施形態に係る印刷物の模式断面図である。
図2】基材の上に可視印刷部を備える本発明の別の実施形態に係る印刷物の模式断面図である。
図3】基材及び可視印刷部及び不可視印刷部と乱反射層との間に配置された透明層を備える本発明の別の実施形態に係る印刷物の模式断面図である。
図4】不可視印刷部の上に可視印刷部を備える本発明の別の実施形態に係る印刷物の模式断面図である。
図5】基材及び可視印刷部の上に直接、不可視印刷部を備える印刷物の模式断面図である。
図6】基材及び可視印刷部及び不可視印刷部を覆うオーバープリント層を備える印刷物の模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図1~3を参照し、本発明の実施形態に係る印刷物について説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る印刷物11の模式断面図である。図1において、印刷物11は、基材1、不可視印刷部2、乱反射層3を備える。不可視印刷部2は基材1上に印刷され形成される。また図2又は図4は、基材1上に可視印刷部6をさらに備える。この場合、図2のように直接に可視印刷部6が基材1上に印刷されている場合もあれば、図4のように不可視印刷部2の上に可視印刷部6を印刷する場合もある。図1において、乱反射層3が粒子4を備えた例を示しているが、乱反射層3は入射した光を乱反射する機能を有していればよいため、粒子4を備えていなくてもよい(具体的な構成については後述)。図2は、可視印刷部6をさらに備える本発明の別の実施形態に係る印刷物12の模式図である。可視印刷部6は、可視情報を基材1上に印刷して形成される。可視情報や後述する不可視情報(情報)には、文字、数字、記号、バーコード、2次元コード等の他に、絵や模様なども含まれる。不可視印刷部2、可視印刷部6は、基材1の片側のみに設けられていてもよく、両面に設けられていてもよい。
以下では、特に参照しない限り、図1に係る印刷物11を説明する。
【0019】
<1.基材>
基材1は、不可視印刷部2(図2に示すように可視印刷部6を備える場合は、不可視印刷部2及び可視印刷部6)を備えることができれば、その材質は限定されない。例えば、基材1には、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリ塩化ビニル等の樹脂フィルムや上質紙、複写印刷用紙、レーヨン紙、コート紙、合成紙、ラミネート紙等の紙材を用いることができる。また、基材1は、不可視印刷部2を備える面とは反対の面に粘着層を備えていてもよい。粘着層を設ける場合は、基材1は粘着層を覆う離型紙をさらに備えていてもよい。基材1は、不可視印刷部2、可視印刷部6の剥離などを防ぐ目的で下地層を備えていてもよい。
【0020】
<2.不可視印刷部>
不可視印刷部2は、不可視情報が印刷された部分をいう。不可視印刷部2が不可視性(透明性)を有することで、目視により不可視印刷部2を確認しにくくなる。透明性が高いほど不可視印刷部2が確認しにくくなるため、不可視印刷部2は高い透明性を有することが好ましい。不可視印刷部2は、熱又は光を照射することにより視認可能となるインキで形成することができる。特に、不可視印刷部2は、紫外線や赤外線等の可視領域外の波長の光を照射することで視認可能となる蛍光インキを用いて形成することが好ましい。ここで、蛍光インキとは、紫外線や赤外線などにより蛍光を発する材料を樹脂中に分散させインキ化したものをいう。蛍光インキで形成した不可視印刷部2に紫外線又は赤外線を照射することで、蛍光インキに含有される蛍光を発する材料が励起されて所定の波長の光を発する。この光を所定の装置を利用して検出し、不可視情報を読み取ることができる。蛍光性を有する材料としては、酸化亜鉛などの無機材料の他に、アントラセン等の有機材料を用いることができる。なお、熱によって、視認可能となるインキとしては、例えばパイロットインキ製HAメタモや特開2001-105732記載のインキなどを用いることができる。このようなインキで形成した不可視印刷部2は、加熱によって発色するため、不可視情報を読み取ることができる。
【0021】
<3.乱反射層>
乱反射層3は、入射してきた光を乱反射する機能を有する。乱反射層3を基材1及び不可視印刷部2(図2では基材1及び可視印刷部6及び不可視印刷部2)の上に設けることで、印刷物11に入射する光を乱反射して、基材1と不可視印刷部2の段差領域とそれ以外の領域での光の反射状態の違いを小さくし、段差領域を目立ち難くする。その結果、目視により不可視印刷部2を確認しにくくなる。乱反射層3は、紫外線などの外的な処理で不可視印刷部2を可視化した際に、不可視印刷部2を目視で確認できる程度の透明性を有することが好ましい。乱反射層3の形成方法としては、最表層をエッチングして微細な凹凸を形成する方法や粒子が分散したインキを印刷して形成する方法などがあるが、特に方法は限定されない。不可視印刷部2の読み取り防止性能が低下しない範囲であれば、乱反射層3は、基材1の全面を完全に覆っていなくてもよく、基材の全域にわたって点状に存在し、実質的に覆っていてもよい。
【0022】
乱反射層3は、透明なベース材5と光を反射する粒子4を備えていることが好ましい。透明なベース材5と光を反射する粒子4を備える乱反射層3の場合、光を反射する粒子4の化学組成、形状、比率を変えることで、乱反射層3の透明性と乱反射性能を調整することが可能となる。そのため、基材1や可視印刷部6の色や厚み等に応じて、乱反射層3の特性を調整することで、より不可視印刷部2を確認しにくくすることができる。
【0023】
透明なベース材5は、透明性を有する材料であれば特に限定されず、例えば、ポリスチレン、ポリカーボネート、アクリル樹脂等を用いることができる。乱反射層3の耐候性、耐摩耗性を向上するために、不可視印刷部2の読み取り防止性能を阻害しない範囲でベース材5は添加物を含有することができる。
【0024】
透明なベース材5中に配置される粒子4としては、光を反射する機能を有していればよく、アルミニウム、マイカなどを用いることができる。粒子4の形状は、球状の他、鱗片状、棒状など非球状であってもよく、基材1や可視印刷部6の材質や色調に応じ適宜選択できる。粒子4の表面は、樹脂中での分散性を向上するために、修飾されていてもよい。
【0025】
乱反射層3は、偏光顔料を備えることが好ましい。ここで、偏光顔料(パール顔料)は、光の角度によって、色調が変わる顔料(粒子)をいい、例えば二酸化チタンで被覆された薄板状雲母粒子などをいう。乱反射層3が偏光顔料を備えることで、印刷物11を見る角度で印刷物11の色調が変化することになる。そのため、不可視印刷部2と基材1(又は可視印刷部6)との段差がさらに目立ちにくくなる。乱反射層3には、偏光顔料以外にも乱反射性能を向上させる目的で光を反射する粒子を併せて用いてもよい。偏光顔料は複数種類を併せて使用してもよい。偏光顔料を備える乱反射層3は、偏光顔料を含むインキによって印刷して形成しても、偏光顔料を含有するラミネートフィルムをラミネートすることで形成してもよい。
【0026】
<4.透明層>
図3は、基材1と可視印刷部6と不可視印刷部2と、乱反射層3と、の間に配置された透明層7を更に備える本発明に係る印刷物13の模式断面図である。図3のように、透明層7が基材1(又は可視印刷部6)と不可視印刷部2を覆っているため、前記段差領域7aにおいて透明層7の高さは滑らかに変化する。そのため、基材1と不可視印刷部2との段差(又は可視印刷部6と不可視印刷部2との段差)に由来し印刷物13の最表層に現れる段差が小さくなる。その結果、目視により不可視印刷部2を確認しにくくなる。透明層7は、印刷やラミネート等によって形成することができ、材質は、ポリカーボネート、アクリルなど透明な材料であれば特に限定されない。
【0027】
図4は、不可視印刷部2の上に可視印刷部6を備える別の実施形態に係る印刷物14の模式図である。本実施形態の場合、可視印刷部6は不可視印刷部2の上に印刷され形成される。本発明の印刷物14において、基材1及び乱反射層3及び可視印刷部6は赤外線又は紫外線を透過し、不可視印刷部2は、赤外線又は紫外線を透過しないことが好ましい。本発明の印刷14に対し、赤外線又は紫外線を照射すると不可視印刷部2では赤外線又は紫外線が透過しないが、それ以外の部分では透過するため、印刷物14を透過した赤外線又は紫外線をセンサー等で可視化することで不可視情報が視認可能となる。本発明の印刷物14では、乱反射層3が基材1と可視印刷部6との上に設けられているため、印刷物14に入射する光を乱反射して、可視印刷部6の段差領域6aとそれ以外の領域の反射状態の違いを小さくし、段差領域6aを目立ち難くする。その結果、不可視印刷部2に印刷された不可視情報を目視により確認しにくくなる。
【0028】
以上説明したように、本実施形態に係る印刷物11~14を用いれば、乱反射層3に入射する光が乱反射するため、基材1と不可視印刷部2の段差領域とそれ以外の領域での光の反射状態の違いを小さくし、段差領域を目立たなくすることができる。そのため、目視により不可視印刷部2を確認しにくくすることが可能となる。
【0029】
なお、本発明の技術的範囲は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、乱反射層3の上に耐摩耗性を向上するための耐摩耗層を形成してもよい。
その他、本発明の趣旨に逸脱しない範囲で、前記実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、前記した変形例を適宜組み合わせてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明の印刷物は、製品の真偽を識別するための印刷物を扱う産業に利用することができる。
【符号の説明】
【0031】
1:基材
2:不可視印刷部
3:乱反射層
4:粒子
5:透明なベース材
6:可視印刷部
7:透明層
11:印刷物
12:印刷物
13:印刷物
14:印刷物
図1
図2
図3
図4
図5
図6