(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-20
(45)【発行日】2022-09-29
(54)【発明の名称】ホース接続ユニットおよびこれを備えた洗濯機の排水構造
(51)【国際特許分類】
D06F 39/10 20060101AFI20220921BHJP
D06F 39/08 20060101ALI20220921BHJP
【FI】
D06F39/10 D
D06F39/08 311C
(21)【出願番号】P 2018121912
(22)【出願日】2018-06-27
【審査請求日】2021-06-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000150006
【氏名又は名称】日本総合住生活株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001623
【氏名又は名称】弁理士法人真菱国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】関 健次
【審査官】石井 茂
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-088660(JP,A)
【文献】特開2002-054871(JP,A)
【文献】実開昭63-008889(JP,U)
【文献】実開昭63-164329(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D06F 39/00-39/10
D06F 58/02-58/08
D06F 58/20-58/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
洗濯機の排水ホースとこれに連なる排水パイプとの間に介設されるホース接続ユニットであって、
前記排水ホースが接続されるホース接続部と、
前記ホース接続部に内嵌され、上流側端部で前記排水ホースから流れてきたコイン状異物を捕捉しその流下を阻止する筒状の異物捕捉部と、を備え、
前記異物捕捉部は、内径が前記コイン状異物よりも小径に形成され、
前記上流側端部は、周方向において前記コイン状異物を受ける受け端部と前記コイン状異物を傾かせる凸端部とを有
し、
前記凸端部は、周方向において山形に形成されていることを特徴とするホース接続ユニット。
【請求項2】
前記凸端部は、高さ寸法に対し基端の幅寸法が小さいことを特徴とする
請求項1に記載のホース接続ユニット。
【請求項3】
洗濯機の排水ホースとこれに連なる排水パイプとの間に介設されるホース接続ユニットであって、
前記排水ホースが接続されるホース接続部と、
前記ホース接続部に内嵌され、上流側端部で前記排水ホースから流れてきたコイン状異物を捕捉しその流下を阻止する筒状の異物捕捉部と、を備え、
前記異物捕捉部は、内径が前記コイン状異物よりも小径に形成され、
前記上流側端部は、周方向において前記コイン状異物を受ける受け端部と前記コイン状異物を傾かせる凸端部とを有し、
前記受け端部は、径方向内側に向かって下り傾斜の受け面を有していることを特徴とす
るホース接続ユニット。
【請求項4】
洗濯機の排水ホースとこれに連なる排水パイプとの間に介設されるホース接続ユニットであって、
前記排水ホースが接続されるホース接続部と、
前記ホース接続部に内嵌され、上流側端部で前記排水ホースから流れてきたコイン状異物を捕捉しその流下を阻止する筒状の異物捕捉部と、を備え、
前記異物捕捉部は、内径が前記コイン状異物よりも小径に形成され、
前記上流側端部は、周方向において前記コイン状異物を受ける受け端部と前記コイン状異物を傾かせる凸端部とを有し、
前記上流側端部には、180°点対称位置に前記凸端部が2つ形成されていることを特徴とす
るホース接続ユニット。
【請求項5】
前記上流側端部は、前記コイン状異物を流路に直交する面に対し45°以上の角度に傾かせることを特徴とする
請求項1、3および4のいずれかに記載のホース接続ユニット。
【請求項6】
前記ホース接続部は、軟質且つ透光性の樹脂で構成されていることを特徴とする請求項
請求項1、3および4のいずれかに記載のホース接続ユニット。
【請求項7】
前記ホース接続部と前記異物捕捉部との間には、シールリングが介設され、
前記シールリングに対応する前記ホース接続部の外周面には、径方向において前記ホース接続部を補強するスリーブが設けられていることを特徴とする
請求項6に記載のホース接続ユニット。
【請求項8】
浴室とその隣室との間の仕切りを貫通して、前記隣室に設置された洗濯機の排水を前記浴室に導く洗濯機の排水構造であって、
請求項1、3および4のいずれかに記載のホース接続ユニットと、
前記ホース接続ユニットから前記浴室に向かって延びる排水パイプと、を備えたことを特徴とする洗濯機の排水構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗濯機の排水ホースとこれに連なる排水パイプとの間に介設されたホース接続ユニットおよびこれを備えた洗濯機の排水構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、洗濯機の排水構造として、洗濯機の排水を浴室に導いて間接排水するものが知られている(特許文献1参照)。
この排水構造は、洗濯機の排水ホースが接続されるジョイントユニットと、上流側がジョイントユニットに接続されると共に、床下を浴室まで延びる放流パイプと、を備え、排水ホース、ジョイントユニットおよび放流パイプを介して、洗濯機の排水を浴室に間接排水するようになっている。
ジョイントユニットは、防水パンと、放流パイプが接続されるパイプ接続部と、排水ホースの先端部が接続される接続突出部と、接続突出部をパイプ接続部に取り付けるための鍔部と、を有している。また、ジョイントユニットは、放流パイプを満水状態とすべく、接続突出部の基部内周面に水密に内嵌された縮径部を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、洗濯機の洗濯槽とこれを囲む水槽との間隙にコイン状異物(主として硬貨)が落ち込むと、コイン状異物は、排水ホースを介してジョイントユニット(ホース接続ユニット)に流れ込むことになる。
かかる場合に、従来のジョイントユニットでは、接続突出部に流れ込んだコイン状異物が縮径部で捕捉されるが、水流に押されたコイン状異物は、縮径部の上流側の端面に、流路を塞ぐように着座する。すなわち、コイン状異物により、ジョイントユニット内で排水流路が閉塞され、洗濯機の排水が排水不能となるおそれがあった。
【0005】
本発明は、排水に混入したコイン状異物によって流路が塞がれるのを防止することができるホース接続ユニットおよびこれを備えた洗濯機の排水構造を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のホース接続ユニットは、洗濯機の排水ホースとこれに連なる排水パイプとの間に介設されるホース接続ユニットであって、排水ホースが接続されるホース接続部と、ホース接続部に内嵌され、上流側端部で排水ホースから流れてきたコイン状異物を捕捉しその流下を阻止する筒状の異物捕捉部と、を備え、異物捕捉部は、内径がコイン状異物よりも小径に形成され、上流側端部は、周方向においてコイン状異物を受ける受け端部とコイン状異物を傾かせる凸端部とを有し、凸端部は、周方向において山形に形成されていることを特徴とする。
【0007】
この構成によれば、排水ホースからホース接続部に流れ込んだコイン状異物は、コイン状異物よりも小径に形成された異物捕捉部の上流側端部に捕捉される。異物捕捉部の上流側端部には、コイン状異物を受ける受け端部とコイン状異物を傾かせる凸端部とが設けられているため、コイン状異物は、排水の流れの影響を受けつつ、受け端部と凸端部との協働により、傾いた姿勢で上流側端部に着座するように捕捉される。この場合、傾いたコイン状異物と上流側端部との間には、間隙が生ずるため、排水の流れが阻害されることがない。すなわち、異物捕捉部により、洗濯機の排水に混入したコイン状異物によって、排水の流路が塞がれるのを防止することができる。また、異物捕捉部によって、コイン状異物を傾いた姿勢で捕捉することできるため、排水ホースを外すことでこれを比較的容易に取り出すことができる(復旧)。
さらに、凸端部を所定の強度をもって形成することができる。また、排水の流れを利用して、コイン状異物を傾いた姿勢に容易に導くことができる。
【0010】
この場合、凸端部は、高さ寸法に対し基端の幅寸法が小さいことが好ましい。
【0011】
この構成によれば、異物捕捉部の上流側端部と、これに捕捉されたコイン状異物との隙間を広く執ることができる。したがって、コイン状異物が捕捉され状態で、排水の流路面積を十分に確保することができ、円滑な排水の流れを維持することができる。
【0012】
本発明の他のホース接続ユニットは、洗濯機の排水ホースとこれに連なる排水パイプとの間に介設されるホース接続ユニットであって、排水ホースが接続されるホース接続部と、ホース接続部に内嵌され、上流側端部で排水ホースから流れてきたコイン状異物を捕捉しその流下を阻止する筒状の異物捕捉部と、を備え、異物捕捉部は、内径がコイン状異物よりも小径に形成され、上流側端部は、周方向においてコイン状異物を受ける受け端部とコイン状異物を傾かせる凸端部とを有し、受け端部は、径方向内側に向かって下り傾斜の受け面を有していることを特徴とする。
【0013】
この構成によれば、排水ホースからホース接続部に流れ込んだコイン状異物は、コイン状異物よりも小径に形成された異物捕捉部の上流側端部に捕捉される。異物捕捉部の上流側端部には、コイン状異物を受ける受け端部とコイン状異物を傾かせる凸端部とが設けられているため、コイン状異物は、排水の流れの影響を受けつつ、受け端部と凸端部との協働により、傾いた姿勢で上流側端部に着座するように捕捉される。この場合、傾いたコイン状異物と上流側端部との間には、間隙が生ずるため、排水の流れが阻害されることがない。すなわち、異物捕捉部により、洗濯機の排水に混入したコイン状異物によって、排水の流路が塞がれるのを防止することができる。また、異物捕捉部によって、コイン状異物を傾いた姿勢で捕捉することできるため、排水ホースを外すことでこれを比較的容易に取り出すことができる(復旧)。
更に、受け端部の受け面により、円形のコイン状異物を安定に受けることができる。すなわち、排水の流れに緩急が生ずることがあっても、着座した(捕捉した)コイン状異物の姿勢を安定させることができ、円滑な排水の流れを維持することができる。
【0014】
本発明の他のホース接続ユニットは、洗濯機の排水ホースとこれに連なる排水パイプとの間に介設されるホース接続ユニットであって、排水ホースが接続されるホース接続部と、ホース接続部に内嵌され、上流側端部で排水ホースから流れてきたコイン状異物を捕捉しその流下を阻止する筒状の異物捕捉部と、を備え、異物捕捉部は、内径がコイン状異物よりも小径に形成され、上流側端部は、周方向においてコイン状異物を受ける受け端部とコイン状異物を傾かせる凸端部とを有し、上流側端部には、180°点対称位置に前記凸端部が2つ形成されていることを特徴とする。
【0015】
この構成によれば、排水ホースからホース接続部に流れ込んだコイン状異物は、コイン状異物よりも小径に形成された異物捕捉部の上流側端部に捕捉される。異物捕捉部の上流側端部には、コイン状異物を受ける受け端部とコイン状異物を傾かせる凸端部とが設けられているため、コイン状異物は、排水の流れの影響を受けつつ、受け端部と凸端部との協働により、傾いた姿勢で上流側端部に着座するように捕捉される。この場合、傾いたコイン状異物と上流側端部との間には、間隙が生ずるため、排水の流れが阻害されることがない。すなわち、異物捕捉部により、洗濯機の排水に混入したコイン状異物によって、排水の流路が塞がれるのを防止することができる。また、異物捕捉部によって、コイン状異物を傾いた姿勢で捕捉することできるため、排水ホースを外すことでこれを比較的容易に取り出すことができる(復旧)。
更に、排水に載って流れてくるコイン状異物が如何なる姿勢であっても、上流側端部において、これを傾いた姿勢に確実に捕捉することができる。
【0016】
また、上流側端部は、コイン状異物を流路に直交する面に対し45°以上の角度に傾かせることが好ましい。
【0017】
この構成によれば、上流側端部の受け端部と、捕捉されたコイン状異物との隙間を広く執ることができる。したがって、コイン状異物が捕捉され状態であっても、排水の流路面積を十分に確保することができ、円滑な排水の流れを維持することができる。
【0018】
一方、ホース接続部は、軟質且つ透光性の樹脂で構成されていることが好ましい。
【0019】
この構成によれば、ホース接続部が軟質の樹脂で構成されているため、排水ホースの径がメーカーによって微妙に異なることがあっても、これを適切に接続することができる。また、ホース接続部が透光性の樹脂で構成されているため、ユーザーをして、捕捉されたコイン状異物を視認することができ、その後の処理を促すことができる。
【0020】
また、ホース接続部と異物捕捉部との間には、シールリングが介設され、シールリングに対応するホース接続部の外周面には、径方向においてホース接続部を補強するスリーブが設けられていることが好ましい。
【0021】
この構成によれば、スリーブによりホース接続部が補強されるため、ホース接続部が軟質の樹脂で構成されていても、シールリングによるホース接続部と異物捕捉部との間のシール性が損なわれることがない。
【0022】
本発明の洗濯機の排水構造は、浴室とその隣室との間の仕切りを貫通して、隣室に設置された洗濯機の排水を浴室に導く洗濯機の排水構造であって、上記したホース接続ユニットと、ホース接続ユニットから浴室に向かって延びる排水パイプと、を備えたことを特徴とする。
【0023】
この構成によれば、排水ホースからホース接続部に流れ込んだコイン状異物を、流路を閉塞しない状態で異物捕捉部に捕捉することができる。また、異物捕捉部により、洗濯機排水をホース接続ユニットから満水状態で排水パイプに導くことができる。したがって、洗濯機排水にコイン状異物が混入しても、浴室への排水を円滑に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】第1実施形態の洗濯機の排水構造を表した模式図である。
【
図2】第1実施形態のホース接続ユニットにおけるジョイント部の断面図である。
【
図3】第1実施形態のホース接続ユニットにおけるジョイント部の分解斜視図である。
【
図4】第1実施形態の異物捕捉部の斜視図(a)、およびコイン状異物の捕捉した状態の異物捕捉部の斜視図(b)である。
【
図5】コイン状異物の捕捉試験における試験結果を表した図である。
【
図6】第2実施形態の異物捕捉部の斜視図(a)、およびコイン状異物の捕捉した状態の異物捕捉部の斜視図(b)である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、添付の図面を参照しながら、本発明の一実施形態に係るホース接続ユニットおよびこれを備えた洗濯機の排水構造(以下、単に「排水構造」と言う。)について説明する。この排水構造は、古いタイプの既設共同住宅等において、洗濯機排水を、既存の排水枝管や排水立て管ではなく、スラブ上の転がし配管により浴室内に間接排水するものである。また、ホース接続ユニットは、洗濯機の排水ホースと床下の転がし配管とを接続する継手様のものである。特に、このホース接続ユニットは、洗濯機排水に硬貨等のコイン状異物が混入した場合に、排水に支障が生じない状態でこれを捕捉することができる。
【0026】
図1は、排水構造を模式的に表した斜視図である。同図に示すように、この古いタイプの共同住宅では、間取り的に洗濯機1用の設置スペースが設けられておらず、洗濯機1は玄関脇のホールHに設置されている。また、ホールHに隣接して浴室Bが設けられており、洗濯機1の排水は、床下スラブ上において、ホールHを横断し浴室Bに導かれるようになっている。
【0027】
排水構造10は、洗濯機1の排水ホース3が接続されるホース接続ユニット11と、ホース接続ユニット11に接続されると共に、浴室Bまで延びる放流パイプ13(排水パイプ)と、を備えている。また、ホース接続ユニット11は、ホールHの床Haに設置された防水パン15と、防水パン15に取り付けられたジョイント部17とを有しており、ジョイント部17の部分でホールHの床Haを貫通するようにしている。そして、ジョイント部17には、床上において洗濯機1の排水ホース3が接続され、床下において放流パイプ13が接続されている。
【0028】
放流パイプ13は、床下(であってスラブ上)において、ジョイント部17の下流端の位置からホールHを縦断するように延び、さらにホールHを横断するように延びている。ここで、放流パイプ13は、床上に立ち上がり(露出)図示しない仕切り壁を山なりに貫通して浴室Bに達している。詳細は後述するが、放流パイプ13は、サイホン作用が好適に機能するように(容易に満水となるように)、洗濯機1の排水ホース3よりも十分に細径に形成されている。
【0029】
洗濯機1の排水が開始されると、排水は排水ホース3からジョイント部17に流れ、更に放流パイプ13を通って、浴室Bに流下する。詳細は後述するが、ジョイント部17には流路を絞込む部位があり、ジョイント部17に流れ込んだ排水はここで満水状態となり、この状態で放流パイプ13を流れる。このため、排水の最終段階では、放流パイプ13にサイホン作用が生じ、洗濯機1内の排水を適切に排水できるようになっている。
【0030】
次に、
図2および
図3を参照して、ホース接続ユニット11について説明する。上述のように、ホース接続ユニット11は、ホールHの床上に設置した防水パン15と、防水パン15に対し水密に且つ貫通するように組み込まれたジョイント部17と、を備えている。
【0031】
防水パン15は、小型のものであり、例えば220mm×310mm×37mmHに形成されている。また、防水パン15は、その四隅をホールHの床Haにビス止めするようにして設置されている。防水パン15には、ジョイント部17を組み込むための開口部19が形成されており(
図2参照)、ジョイント部17は、この開口部19が形成された底板の開口縁部を上下から挟み込むようにして、防水パン15に水密に取り付けられている。この場合の防水パン15には、流路から漏れた排水を集水して流下させる構造とはなっておらず、単にジョイント部17を保持すると共に、ジョイント部17をホールHの床Haに固定する機能を優先した構造となっている。よって、防水パン15を省略し、ジョイント部17を床Haに直接取り付けるようにしてもよい。
【0032】
ジョイント部17は、排水ホース3が接続されるホース接続部21と、ホース接続部21の下流端部に内嵌され、コイン状異物Cを捕捉する円筒状の異物捕捉部22と、柔軟性を有するホース接続部21を外側から補強するスリーブ23と、ホース接続部21を保持すると共に、放流パイプ13が接続される流出口部25を有するホルダ部24と、を備えている。
【0033】
排水ホース3から流下した洗濯機1の排水は、ホース接続部21、異物捕捉部22および流出口部25を通過し、放流パイプ13に導かれる。詳細は後述するが、ホース接続部21は、「L」字状に形成されると共に、鉛直軸廻りに回転可能(首振り可能)に構成され、排水ホース3の接続方向を自在に変更できるようになっている。また、排水にコイン状異物Cが混入した場合、コイン状異物Cは異物捕捉部22により捕捉されるようになっている。
【0034】
ホルダ部24は、流出口部25が下向きに突設された椀状ベース31と、椀状ベース31の上側に配設され、椀状ベース31と共に防水パン15の開口縁部を挟持するリング状ベース32と、リング状ベース32の上部内側に配設され、ホース接続部21に係合しこれを流出口部25に向かって押圧する押え蓋体33と、を有している。椀状ベース31、リング状ベース32および押え蓋体33は、ホース接続部21よりも十分に太径に形成され、且つホース接続部21の基端側(下流側)と同軸上に配設されている。
【0035】
椀状ベース31は、内周面に挟持用雌ねじ部36を形成すると共に中心部に異物捕捉部22が突き当てられる突当て受容部37を形成した椀状本体35と、椀状本体35の上端から外方に水平に延びる下フランジ部38と、椀状本体35の中心下部に突設した流出口部25とを有し、樹脂等で一体に形成されている。詳細は後述するが、突当て受容部37には凸型パッキン39が収容され、異物捕捉部22の下端(下流側端)が、この凸型パッキン39を挟んで突当て受容部37に突き当てられている。これにより、異物捕捉部22と椀状ベース31との間がシールされている。
【0036】
流出口部25は、突当て受容部37に連なる流出口41と、流出口41に連なると共に放流パイプ13が接続される接続代部42と、を有している。流出口41は、突当て受容部37および接続代部42に対し内側に環状に突出している。接続代部42には、放流パイプ13の最上流端となる短管13aが差込み接合され、またこの短管13aには放流パイプ13を横引くためのショートエルボ13bが接続されている(
図1参照)。
【0037】
リング状ベース32は、椀状ベース31(椀状本体35)の内周面に螺合し、且つ内周面に押え蓋体33が螺合するベース本体44と、ベース本体44の上端から外方に水平に延びる上フランジ部45とを有し、樹脂等で一体に形成されている。ベース本体44には、その下部内周面に環状補強部46が形成され、中間部内周面に押え蓋体33の螺合端を規制する4つの突起47が形成され、さらに上部内周面に押え蓋体33が螺合する押え用雌ねじ部48を形成されている。また、ベース本体44の下部外周面には、椀状ベース31の挟持用雌ねじ部36に螺合する挟持用雌ねじ部49が形成されている。
【0038】
環状補強部46は、ベース本体44を補強する環状のリブとして機能している。また、4つの突起47は、周方向に均等間隔で配設されており、リング状ベース32を椀状ベース31に螺合するための工具掛け部としても機能している。
【0039】
椀状ベース31の下フランジ部38と、リング状ベース32の上フランジ部45との間には、防水パン15の開口縁部を挟持するUパッキン51と、Uパッキン51の上側に設けたスリップパッキン52と、が配設されている。スリップパッキン52は、リング状ベース32の円滑な回転(ねじ込み)を許容しつつ、上フランジ部45とUパッキン51との間をシールする。Uパッキン51は、防水パン15の開口縁部を直接挟持し、スリップパッキン52と共に、椀状ベース31の下フランジ部38とリング状ベース32の上フランジ部45との間をシールする。
【0040】
リング状ベース32の椀状ベース31への組付けでは、予め放流パイプ13を施工し、放流パイプ13に椀状ベース31を取り付けておく。この状態で、先ず防水パン15の開口縁部にUパッキン51を装着すると共に、このUパッキン51が椀状ベース31の下フランジ部38に合致するように防水パン15を位置決めする。次に、リング状ベース32にスリップパッキン52を装着すると共に、リング状ベース32を椀状ベース31にねじ込んでゆく。リング状ベース32の椀状ベース31への螺合が進むと、Uパッキン51が軸方向に潰れるように圧縮される。これにより、ジョイント部17が防水パン15に保持され、且つジョイント部17と防水パン15とがシールされた状態となる。
【0041】
押え蓋体33は、中心部にホース接続部21が挿通する挿通口55が形成されたリング状の板状本体54と、板状本体54の外周部に形成した環状の押え用雄ねじ部56と、板状本体54の上面に突設した4つの突片57とを有し、樹脂等で一体に形成されている。4つの突片57は、挿通口55の部分から押え用雄ねじ部56の部分まで四方に放射状に延びており、押え蓋体33をリング状ベース32に螺合するときの指掛け部として機能すると共に、板状本体54を補強する補強リブとしても機能している。また、板状本体54の中心下部には、挿通口55廻りを補強するための環状リブ部58が突設されている。そして、押え蓋体33の押え用雄ねじ部56が、リング状ベース32の押え用雌ねじ部48に螺合することにより、押え蓋体33がリング状ベース32に取り付けられるようになっている。また、この押え蓋体33の螺合端位置を、突片57が位置規制する。
【0042】
各突片57の内端部には、ホース接続部21を軸方向において掛け止めする掛止め突起59が形成されている。詳細は後述するが、ホース接続部21の外周面には、この掛止め突起59に対応する掛止め受け部71が形成されており、掛止め受け部71に掛止め突起59を掛止めした状態で、押え蓋体33をリング状ベース32に螺合するようになっている。これにより、ホース接続部21は、ホルダ部24に対し、鉛直軸廻りに回転可能に且つ押圧された状態で取り付けられている。
【0043】
ホース接続部21は、排水ホース3が接続される先端側(上流側)の接続口部61と、ホルダ部24に保持された基端側(下流側)の被保持筒部62とから成り、全体としてエルボ状(「L」字状)に形成されている。そして、本実施形態のホース接続部21は、軟質且つ透光性の樹脂、例えばエラストマー等で一体に形成されている。これにより、接続口部61においては、排水ホース3の径がメーカーによって微妙に異なっても、これを適切に接続することができ、また被保持筒部62においては、捕捉されたコイン状異物Cを視認することができるようになっている。
【0044】
接続口部61は、被保持筒部62から斜め上向きに延びており、その内周面に排水ホース3が差し込まれる差込み接合部64が形成され、外周面にホースバンド65が巻回される環状のバンド凹部66、およびバンド凹部66に隣接してホース抜止めバンド67が取り付けられる止め輪部68が形成されている。
【0045】
バンド凹部66に装着したホースバンド65は、差込み接合部64に接合した排水ホース3を外側から締め付けることで、この部分の水密性を維持すると共に排水ホース3の抜止めとして機能する。また、ホース抜止めバンド67は、止め輪部68と図示しない排水ホース3のフックとの間に掛け渡すことで、排水ホース3の抜止めとして機能する。なお、図示では省略したが、止め輪部68或いはホース抜止めバンド67には、排水ホース3の接続方法やコイン状異物Cに関する注意事項等を記載したタグを取り付けておくことが好ましい。
【0046】
被保持筒部62は、鉛直姿勢で且つホルダ部24に深く挿入された状態で保持されている。被保持筒部62の下部外周面には、上記押え蓋体33の掛止め突起59に対応する掛止め受け部71が形成されている。掛止め受け部71は、軸方向に等間隔で配置した2つの環状凸部72と、2つの環状凸部72間に配置した1つの環状凹部73とで構成されており、掛止め突起59は、この環状凹部73に臨んで被保持筒部62を掛け止めしている。上述のように、押え蓋体33をリング状ベース32に螺合することにより、ホース接続部21は、ホルダ部24に対し、鉛直軸廻りに回転可能に且つ押圧された状態で取り付けられている。
【0047】
ホルダ部24に挿入されている被保持筒部62の下部には、異物捕捉部22が内嵌され且つスリーブ23が外嵌されている。すなわち、被保持筒部62の下部には、その内周面に異物捕捉部22がほぼ隙間なく嵌めこまれ、その外周面にスリーブ23がほぼ隙間なく嵌め込まれている。本実施形態では、異物捕捉部22の内側を絞り込んだ流路とするため、異物捕捉部22と被保持筒部62(ホース接続部21)との間に、2つのOリング75(シールリング)が介設されている。一方、ホース接続部21は軟質(柔軟性のある)樹脂で構成されているため、Oリング75により被保持筒部62が広がってしまうおそれがある。そこで、これを押さえておくために、スリーブ23が設けられている。
【0048】
スリーブ23は、上部が上記押え蓋体33の環状リブ部58を逃げるべくロート状に形成されているが、全体として被保持筒部62の外周面に添う円筒状に形成されている。スリーブ23は、例えば黄銅製やステンレススチール製等の金属製のもので構成され、2つのOリング75による径方向の押圧力に抗して、被保持筒部62の形状を維持する(被保持筒部62の拡径を抑制する)。これにより、被保持筒部62(ホース接続部21)の鉛直軸廻りの回転が許容された状態で、被保持筒部62と異物捕捉部22との間のシール性が担保されている。
【0049】
異物捕捉部22は、ポリプロピレン等で形成され、被保持筒部62に内嵌される内嵌部81と、被保持筒部62から下方に突出し、上記椀状ベース31の突当て受容部37に突き当てられる突当て部82とで一体に形成されている。上述のように、異物捕捉部22の突当て部82は、凸型パッキン39を挟んで突当て受容部37に突き当てられている。突当て部82は、内嵌部81に比して厚肉に形成されており、薄肉の内嵌部81と厚肉の突当て部82との段部84に、ホース接続部21(被保持筒部62)下端およびスリーブ23の下端が突き当てられている。
【0050】
突当て部82の外周面には、突当て部82が軸方向に弾力性を奏するように、環状の深溝85が形成されている。ホース接続部21(被保持筒部62)は、押え蓋体33から軸方向の押圧力を受けるが、この押圧力は、段部84を介して突当て部82に作用する。このため、突当て受容部37に着座している凸型パッキン39は、突当て部82から押圧力を受ける形となる。これにより、異物捕捉部22と椀状ベース31との間が水密にシールされている。
【0051】
内嵌部81の外周面には、軸方向に間隙を存して2つのOリング75が収容される環状溝87が形成されている。また、内嵌部81の上流側端部91(上端部)には、周方向においてコイン状異物Cを受ける受け端部92およびコイン状異物Cを傾かせる凸端部93が形成されている。
【0052】
ここで、
図4を参照して、異物捕捉部22における上流側端部91(上端部)の形態について、詳細に説明する。
図4(a)は、上流側端部91に受け端部92および凸端部93を有する異物捕捉部22の斜視図であり、
図4(b)は、コイン状異物Cを捕捉した状態の異物捕捉部22の斜視図である。これらの図に示すように、異物捕捉部22の上流側端部91は、周方向において、コイン状異物Cを受ける2つ(2箇所)の受け端部92とコイン状異物Cを傾かせる2つの凸端部93とを有している。すなわち、異物捕捉部22の上流側端部91は、特殊な凹凸形状に形成されている。また、異物捕捉部22の内径は、コイン状異物Cの外径よりも小径に形成されている。
【0053】
2つの受け端部92と2つの凸端部93とは、周方向において角度90°ピッチで交互に且つ連続するように形成されている。すなわち、2つの凸端部93は、同形に形成され且つ180°点対称位置に配設されており、相互に対を為している。同様に、2つの受け端部92も、同形に形成され且つ180°点対称位置に配設され、相互に対を為している。
【0054】
各凸端部93は、周方向において、頂部がなだらかに弧を描く山形に形成されている。この場合、凸端部93は、高さ寸法に対し基端の幅寸法が小さい山形を為し、その基端部は曲線を描いて受け端部92に連なっている。凸端部93の内側の輪郭部分は面取りされており、コイン状異物C(図示のものは、10円硬貨)は、この面取り部分に寄りかかるように捕捉される(
図4(b)参照)。
【0055】
一方、各受け端部92は、周方向の中間部が幾分盛り上がった形状を有し、その端面は、径方向の内側に向かって下り傾斜の受け面95となっている。捕捉されたコイン状異物Cは、異物捕捉部22の流路を跨いで2つの受け端部92の受け面95に着座する。この場合、2つ受け面95に接するコイン状異物Cの2箇所(2点)が180°点対称位置にあるときに、コイン状異物Cは安定した着座状態となる。加えて、傾いたコイン状異物Cにおいて、この2点と等距離にある1点が凸端部93に寄りかかるように接している状態が、最も安定した着座状態となる。
【0056】
すなわち、本実施形態の異物捕捉部22では、排水に混入して流れてきたコイン状異物Cは、常に(自動的に)、2つ受け面95のそれぞれのセンターと、いずれか一方の凸端部93のセンターとに接する安定した着座状態となる(捕捉)。言い換えれば、受け端部92と凸端部93との協働により、コイン状異物Cが常に傾いた安定姿勢で捕捉される。この場合、受け端部92および凸端部93(上流側端部91)は、コイン状異物Cを流路に直交する面に対し45°以上の角度に傾かせるようになっている。これにより、安定に捕捉されたコイン状異物C(の外周面)と、異物捕捉部22の内周面との間には十分な隙間が生ずる。
【0057】
したがって、安定した姿勢で捕捉されたコイン状異物Cは、異物捕捉部22により構成された流路を閉塞することがなく、コイン状異物Cを捕捉した状態であっても、排水の流路を確実に確保することができる。また、捕捉されたコイン状異物Cは、ホース接続部21が透光性の樹脂で構成されているため、ユーザーをして視認することができ、ホース接続部21から排水ホース3を外して簡単に取り出すことができる。
【0058】
ここで、
図5を参照して、コイン状異物Cの流入を想定した実施形態の排水構造(
図1参照)における排水性能試験について説明する。
この試験では、コイン状異物C(10円硬貨)が捕捉されない「なし」と、コイン状異物Cが1枚捕捉された「10円(1枚)」と、コイン状異物Cが2枚捕捉された「10円(2枚)」と、コイン状異物Cが3枚捕捉された「10円(3枚)」と、のそれぞれについて、洗濯機1の1回の平均的な排水量である13.8Lの水(排水)を流し、この水が流れきるまでの時間(流下時間)を測定した。なお、この試験では、流下時間が60秒以内のものを「合格」とし、60秒を越えるものを「不合格」とした。
【0059】
図5に示すように、「なし」の場合には、平均の流下時間が39秒となり、当然ではあるが「合格」と判定された。同様に、「「10円(1枚)」では、平均の流下時間が40秒で「合格」、「「10円(2枚)」では、平均の流下時間が51秒で「合格」となった。一方、「「10円(3枚)」では、平均の流下時間が66秒となり、「不合格」と判定された。また、いずれの場合も、放流パイプ13にサイホン作用が確認された(「サイホン起動」)。
【0060】
このように、コイン状異物Cが2枚までは、ほぼ排水に支障を生じないことが確認され、コイン状異物Cが3枚のときのみ排水に時間がかかることが確認された。もっとも、この場合の合否判定は、洗濯機1を使用するユーザーが、排水不良に気づかないであろうレベルを「合格」とし、気づくであろうレベルを「不合格」としたものであり、「不合格」となった「「10円(3枚)」でも排水不能となるわけではない。
【0061】
なお、
図5には示していないが、本実施形態の異物捕捉部22とは異なり、上流側端部91が平坦な異物捕捉部22では、流れてきたコイン状異物C(10円硬貨)が、上流側端部91につかえた瞬間に端面に貼りつくような姿勢となり、流路を閉塞してしまうことが確認されている。
【0062】
次に、
図6を参照して、第2実施形態に係る異物捕捉部22Aについて説明する。この異物捕捉部22Aの上流側端部91では、周方向360°のうち、ほぼ90°に相当する部分に受け端部92Aが形成され、残りのほぼ270°の部分に凸端部93Aが形成されている。すなわち、この上流側端部91では、周方向の一部に受け端部92Aが形成され、残りの部分に凸端部93Aが形成されている。
【0063】
この実施形態では、コイン状異物Cの周方向の1点が、受け端部92A(受け面95)のセンター付近に接する形で捕捉される(
図6(b)参照)。そして、この場合も、受け端部92Aおよび凸端部93A(上流側端部91)は、コイン状異物Cを流路に直交する面に対し45°以上の角度に傾かせるようになっている。これにより、安定に捕捉されたコイン状異物C(の外周面)と、異物捕捉部22の内周面との間には十分な隙間が生ずる。すなわち、安定した姿勢で捕捉されたコイン状異物Cは、異物捕捉部22により構成された流路を閉塞することがなく、コイン状異物Cを捕捉した状態であっても、排水の流路を確実に確保することができる。
【0064】
なお、上記の実施形態では、ホース接続ユニット11を、間接排水となる放流パイプ13に接続する排水構造10に適用した場合について説明したが、ホース接続ユニット11以降を、排水枝管や排水立て管(いずれも、いわゆる「雑排水管」)に配管接続するものであってもよい。但し、この場合には、間接排水とはならないので、ホース接続ユニット11に排水トラップを組み込むか、或いは上記のショートエルボ13bに代えて排水トラップを設けるようにする。
【符号の説明】
【0065】
1…洗濯機、3…排水ホース、10…排水構造、11…ホース接続ユニット、13…放流パイプ、17…ジョイント部、21…ホース接続部、22,22A…異物捕捉部、23…スリーブ、24…ホルダ部、61…接続口部、62…被保持筒部、75…Oリング、81…内嵌部、82…突当て部、91…上流側端部、92,92A…受け端部、93,93A…凸端部、95…受け面、B…浴室、C…コイン状異物、H…ホール。