(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-20
(45)【発行日】2022-09-29
(54)【発明の名称】タイヤ
(51)【国際特許分類】
B60C 11/00 20060101AFI20220921BHJP
B60C 9/08 20060101ALI20220921BHJP
B60C 13/00 20060101ALI20220921BHJP
B60C 15/00 20060101ALI20220921BHJP
【FI】
B60C11/00 F
B60C9/08 N
B60C13/00 D
B60C15/00 K
(21)【出願番号】P 2018185268
(22)【出願日】2018-09-28
【審査請求日】2021-08-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000005278
【氏名又は名称】株式会社ブリヂストン
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】高山 佳久
【審査官】鏡 宣宏
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-118570(JP,A)
【文献】特開2013-39851(JP,A)
【文献】特開2018-103760(JP,A)
【文献】特開平8-268012(JP,A)
【文献】特開2013-63679(JP,A)
【文献】特開2013-67256(JP,A)
【文献】国際公開第2008/114666(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 9/00-15/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
路面に接するトレッド部と、
前記トレッド部に連なり、前記トレッド部のタイヤ径方向内側に位置するタイヤサイド部と、
前記タイヤサイド部に連なり、前記タイヤサイド部のタイヤ径方向内側に位置するビード部と、
前記タイヤの骨格を形成するカーカスと、
前記カーカスのタイヤ径方向外側に設けられたベルト層と、
前記タイヤサイド部に沿って形成されたリムガードとを含むタイヤであって、
前記ビード部は、
タイヤ周方向に延びる円環状のビードコアと、
前記タイヤに組み付けられるリムホイールのリムフランジと接触する外側表面部とを有し、
前記カーカスは、
本体部と、
前記本体部に連なり、前記ビードコアを介してタイヤ幅方向外側に折り返された折り返し部とを有し、
前記本体部と前記折り返し部との間には、ビードフィラーが介在せず、
タイヤ幅方向及びタイヤ径方向に沿った断面において、
前記トレッド部におけるタイヤ赤道線上の位置を点A、前記点Aを通る前記タイヤ幅方向と平行な仮想直線をL1、前記ビード部のタイヤ径方向におけるもっとも内側の端部を点B、前記点Bを通るタイヤ幅方向と平行な仮想直線をL3、前記仮想直線L1と前記仮想直線をL3との中間を通る前記タイヤ幅方向と平行な仮想直線をL2、前記仮想直線L2と前記タイヤサイド部との交点を点C、前記仮想直線L2と前記カーカス
の本体部との幅方向外側の交点を点D、前記点Cから前記点Dまでの距離をS、前記タイヤ幅方向に沿ったトレッド踏面端から前記タイヤ赤道線までの距離をトレッド幅TW、前記トレッド部上の位置を点E、前記点Eを通り、前記トレッド部に直角に交わる仮想垂線をL4、前記仮想垂線L4と、前記ベルト層のうち、もっともタイヤ径方向外側に設けられたベルトとの交点を点F、及び前記点Eから前記点Fまでの距離をXとした場合、
前記タイヤ幅方向に沿った前記点Eから前記タイヤ赤道線までの距離は、前記トレッド幅TWの88%であり、
前記距離Sは、1~6mmであり、
前記距離Xから前記距離Sを引いた値は、8mm以下であることを特徴とするタイヤ。
【請求項2】
タイヤ最大幅位置を点G、前記点Gを通る前記タイヤ幅方向と平行な仮想直線をL8、前記仮想直線L1と前記仮想直線をL8との中間を通る前記タイヤ幅方向と平行な仮想直線をL9、前記仮想直線L9と前記カーカス
の本体部との中央部での交点を点H、前記点Hを通るタイヤ径方向と平行な仮想直線をL10、前記点Hにおいて前記カーカスに接する仮想直線をL11、前記外側表面部のタイヤ径方向外側端の位置を点J、前記点Jを通り、前記外側表面部に直角に交わる仮想垂線をL12、前記仮想垂線L12と前記折り返し部との交点を点K、及び前記点Kにおいて前記折り返し部に接する仮想直線をL13とした場合、
前記仮想直線L10と前記仮想直線L11とのなす角度は、35度~70度であり、
前記仮想直線L13と、前記リムホイールのリム径位置を通る前記タイヤ幅方向と平行なビードベースラインとのなす角度は、60~85度であることを特徴とする請求項1に記載のタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビード部の構造を簡略化したタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、特に高性能タイヤの分野において、バットレス部にコード補強層を設ける構造が知られている(特許文献1参照)。特許文献1に記載されたコード補強層は、カーカスとコード補強層との間に生じる剪断歪を分散させている。これにより、特許文献1に記載された発明は、カーカスとコード補強層との間に生じる剥離を抑制し、高速走行時における耐久性を向上させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
高性能タイヤの中でも、特にサーキット走行を典型とする高速域での走行に用いられるタイヤにおいて、高速走行時の発熱が耐久性を低下させる要因となる。しかしながら、特許文献1に記載された発明は、上述したように高速走行時の剪断歪を抑制するものの、高速走行時の発熱については言及しておらず、改善の余地がある。
【0005】
さらに近年において、環境保護の要求が高まっており、タイヤについても、さらなる軽量化が求められている。タイヤの軽量化手法の一つとして、ビードフィラー(スティフナーとも呼ばれる)を省略した構造が知られている。しかしながら、ビードフィラーを省略すると、次のような問題がある。具体的には、車両が高速で走行レーンを変更(レーンチェンジ)すると、特に、リムフランジ付近のビード部の倒れ込みが大きくなる。
【0006】
そこで、本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、ビード部の構造を簡略化した場合でも、十分な操縦安定性を確保し、かつ、高速走行時の発熱を抑制しうるタイヤの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るタイヤ(空気入りタイヤ10)は、路面に接するトレッド部(トレッド部20)と、トレッド部に連なり、トレッド部のタイヤ径方向内側に位置するタイヤサイド部(タイヤサイド部30)と、タイヤサイド部に連なり、タイヤサイド部のタイヤ径方向内側に位置するビード部(ビード部60)と、タイヤの骨格を形成するカーカス(カーカス40)と、カーカスのタイヤ径方向外側に設けられたベルト層(ベルト層50)と、タイヤサイド部に沿って形成されたリムガード(リムガード31)とを含む。ビード部は、タイヤ周方向に延びる円環状のビードコア(ビードコア200)と、タイヤに組み付けられるリムホイール(リムホイール100)のリムフランジ(リムフランジ110)と接触する外側表面部(外側表面部61)とを有する。カーカスは、本体部(本体部41)と、本体部に連なり、ビードコアを介してタイヤ幅方向外側に折り返された折り返し部(折り返し部42)とを有する。本体部と折り返し部との間には、ビードフィラーが介在しない。タイヤ幅方向及びタイヤ径方向に沿った断面において、トレッド部におけるタイヤ赤道線上の位置を点A、点Aを通るタイヤ幅方向と平行な仮想直線をL1、ビード部のタイヤ径方向におけるもっとも内側の端部を点B、点Bを通るタイヤ幅方向と平行な仮想直線をL3、仮想直線L1と仮想直線をL3との中間を通るタイヤ幅方向と平行な仮想直線をL2、仮想直線L2とタイヤサイド部との交点を点C、前記仮想直線L2と前記カーカスの本体部との幅方向外側の交点を点D、点Cから点Dまでの距離をS、タイヤ幅方向に沿ったトレッド踏面端からタイヤ赤道線までの距離をトレッド幅TW、トレッド部上の位置を点E、点Eを通り、トレッド部に直角に交わる仮想垂線をL4、仮想垂線L4と、ベルト層のうち、もっともタイヤ径方向外側に設けられたベルトとの交点を点F、及び点Eから点Fまでの距離をXとした場合、タイヤ幅方向に沿った点Eからタイヤ赤道線までの距離は、トレッド幅TWの88%である。距離Sは、1~6mmである。距離Xから距離Sを引いた値は、8mm以下である。
【発明の効果】
【0008】
上述したタイヤによれば、高速走行時の発熱を抑制しうる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、空気入りタイヤのタイヤ幅方向及びタイヤ径方向に沿った断面図である。
【
図2】
図2は、空気入りタイヤのタイヤ幅方向及びタイヤ径方向に沿った断面図である。
【
図3】
図3は、リムホイール及びビード部の拡大断面図である。
【
図4】
図4は、ビードフィラーレスタイヤの操縦安定性の評価試験結果を示すグラフである。
【
図5】
図5は、空気入りタイヤのタイヤ幅方向及びタイヤ径方向に沿った断面図である。
【
図6】
図6は、リムホイール及びビード部の拡大断面図である。
【
図7】
図7は、本発明の他の実施形態に係るリムホイール及びビード部の拡大断面図である。
【
図8】
図8は、本発明の他の実施形態に係るリムホイール及びビード部の拡大断面図である。
【
図9】
図9は、本発明の他の実施形態に係るリムホイール及びビード部の拡大断面図である。
【
図10】
図10は、本発明の他の実施形態に係るリムホイール及びビード部の拡大断面図である。
【
図11】
図11は、本発明の他の実施形態に係るリムホイール及びビード部の拡大断面図である。
【
図12】
図12は、本発明の他の実施形態に係るリムホイール及びビード部の拡大断面図である。
【
図13】
図13は、本発明の他の実施形態に係るリムホイール及びビード部の拡大断面図である。
【
図14】
図14は、本発明の他の実施形態に係るリムホイール及びビード部の拡大断面図である。
【
図15】
図15は、本発明の他の実施形態に係るリムホイール及びビード部の拡大断面図である。
【
図16】
図16は、本発明の他の実施形態に係るリムホイール及びビード部の拡大断面図である。
【
図17】
図17は、本発明の他の実施形態に係るリムホイール及びビード部の拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施形態を図面に基づいて説明する。なお、同一の機能や構成には、同一または類似の符号を付して、その説明を適宜省略する。
【0011】
(1)タイヤの全体概略構成
図1は、本実施形態に係る空気入りタイヤ10の一部断面図である。具体的には、
図1は、空気入りタイヤ10のタイヤ幅方向及びタイヤ径方向に沿った断面図である。なお、
図1は、タイヤ赤道線CLを基準とした一方側のみを示す。また、
図1では、断面ハッチングの図示は省略されている(以下同)。
【0012】
空気入りタイヤ10は、いわゆるUHP(Ultra High Performance)タイヤであり、ハイエンドカー向けのタイヤである。空気入りタイヤ10の偏平率は、60%以下である。なお、空気入りタイヤ10は、偏平率が60%以下であれば、タイヤ幅などは特に限定されない。
【0013】
図1に示すように、空気入りタイヤ10は、トレッド部20、バットレス部21、タイヤサイド部30、カーカス40、ベルト層50及びビード部60を備える。
【0014】
トレッド部20は、路面(不図示)に接する部分である。トレッド部20には、空気入りタイヤ10の使用環境や装着される車両の種別に応じたパターン(不図示)が形成される。
【0015】
バットレス部21は、トレッド踏面端からタイヤサイド部30にわたる所定の領域である。一例として、バットレス部21は、トレッド踏面端からタイヤサイド部30に向けて踏面幅の0~40%の範囲にわたる領域であってもよい。
【0016】
タイヤサイド部30は、トレッド部20に連なり、トレッド部20のタイヤ径方向内側に位置する。タイヤサイド部30は、トレッド部20のタイヤ幅方向外側端からビード部60の上端までの領域である。タイヤサイド部30は、サイドウォールなどと呼ばれることもある。
【0017】
カーカス40は、空気入りタイヤ10の骨格を形成する。カーカス40は、タイヤ径方向に沿って放射状に配置されたカーカスコード(不図示)を有するラジアル構造である。但し、カーカス40は、ラジアル構造に限定されず、カーカスコードがタイヤ径方向に交錯するように配置されたバイアス構造でも構わない。
【0018】
ベルト層50は、トレッド部20のタイヤ径方向内側に設けられる。ベルト層50は、コードが交錯する一対の交錯ベルトと、交錯ベルトのタイヤ径方向外側に設けられる補強ベルトとを含む。補強ベルトは、キャップ&レイヤーなどとも呼ばれることもある。なお、ベルト層50は、キャップ&レイヤーとは異なる形状の補強ベルトを含んでもよい。ベルト層50は、タイヤ周方向に沿って複数重ねて形成される。
図1に示す例では、ベルト層50は、ベルト50a~50cを含む。ベルト50bは、ベルト50aのタイヤ径方向外側に配置されている。ベルト50cは、ベルト50bのタイヤ径方向外側に配置されている。換言すれば、ベルト50cは、3つのベルト層の内、もっともタイヤ径方向外側に配置されている。
【0019】
ビード部60は、タイヤサイド部30に連なり、タイヤサイド部30のタイヤ径方向内側に位置する。ビード部60は、円環状であり、ビード部60を介してカーカス40がタイヤ幅方向内側からタイヤ幅方向外側に折り返されている。
【0020】
空気入りタイヤ10は、リムホイール100に組み付けられる。具体的には、ビード部60は、リムホイール100の径方向外側端に形成されるリムフランジ110(
図1において不図示、
図3参照)に係止される。
【0021】
なお、空気入りタイヤ10は、リムホイール100に組み付けられることによって形成された内部空間に空気が充填されるタイヤであるが、当該内部空間に充填される気体は、空気に限らず、窒素ガスなどの不活性ガスでもよい。
【0022】
タイヤサイド部30の表面(タイヤ外側表面)には、タイヤサイド部30の表面から突出するリムガード31が設けられている。リムガード31は頂点31Aからタイヤサイド部30に向かって裾野状に広がる三角形状である。頂点31Aは、リムフランジ110よりもタイヤ幅方向外側に形成され、リムを外的損傷から保護している(
図3参照)。なお、リムガード31は、三角形状に限定されない。リムガード31は、台形状であってもよい。
【0023】
空気入りタイヤ10では、ビード部60にビードフィラーが設けられていない。ビードフィラーは、スティフナーとも呼ばれ、他の部分のゴムよりも硬質なゴムなどの部材で形成される。ビードフィラーは、一般的に、ビード部60の剛性を向上させる目的で設けられる。
【0024】
図1に示す点Aは、トレッド部20におけるタイヤ赤道線CL上の位置である。点Bは、ビード部60のタイヤ径方向におけるもっとも内側の端部である。L1は、点Aを通るタイヤ幅方向と平行な仮想直線である。L3は、点Bを通るタイヤ幅方向と平行な仮想直線である。L2は、仮想直線L1と仮想直線をL3との中間を通るタイヤ幅方向と平行な仮想直線である。点Cは、仮想直線L2とタイヤサイド部30との交点である。点Dは、仮想直線L2とカーカス40との交点である。Sは、点Cから点Dまでの距離である。距離Sは、1~6mmであるが、これに限定されない。距離Sは、2~5mmであってもよい。
【0025】
また、
図2に示すトレッド踏面端TEは、トレッド部20が地面と接触する面(トレッド踏面)のタイヤ幅方向における最も外側の位置をいう。トレッド幅TWは、タイヤ幅方向に沿ったトレッド踏面端TEからタイヤ赤道線CLまでの距離である。点Eは、トレッド部20上の位置であり、タイヤ幅方向に沿った点Eからタイヤ赤道線CLまでの距離は、トレッド幅TWの88%である。L4は、点Eを通り、トレッド部20に直角に交わる仮想垂線である。点Fは、仮想垂線L4と、ベルト層50のうち、もっともタイヤ径方向外側に設けられたベルト50cとの交点である。Xは、点Eから点Fまでの距離である。距離Xから距離Sを引いた値は、8mm以下である。また、距離Xから距離Sを引いた値は、6mm以下であってもよく、4mm以下であってもよい。
【0026】
(2)ビード部60の構成
次に、ビード部60の具体的構成について説明する。
図3は、リムホイール100及びビード部60の拡大断面図である。具体的には、
図3は、ビード部60(及びリムホイール100)のタイヤ幅方向及びタイヤ径方向に沿った断面図である。
【0027】
図3に示すように、カーカス40は、ビード部60を介してタイヤ幅方向外側に折り返される。具体的には、カーカス40は、本体部41と折り返し部42とを含む。
【0028】
本体部41は、トレッド部20、タイヤサイド部30(
図1参照)及びビード部60に亘って設けられ、ビード部60において折り返されるまでの部分である。
【0029】
折り返し部42は、本体部41に連なり、ビードコア200を介してタイヤ幅方向外側に折り返された部分である。
【0030】
ビードコア200は、タイヤ周方向に延びる円環(リング)状の部材であり、金属(スチール)のコードによって形成される。
【0031】
また、カーカス40のタイヤ幅方向外側には、ビードフィラーシート400が設けられる。ビードフィラーシート400は、ビードコア200のタイヤ径方向外側において、カーカス40に沿って、カーカス40のタイヤ幅方向外側に設けられる。
【0032】
本実施形態では、ビードフィラーシート400のタイヤ径方向内側の部分は、折り返し部42と接し、ビードフィラーシート400のタイヤ径方向外側の部分は、本体部41と接する。つまり、ビードフィラーシート400は、折り返し部42のタイヤ径方向外側端を覆うように設けられる。
【0033】
なお、ビードフィラーシート400のタイヤ径方向外側端401は、タイヤ径方向において、タイヤ幅方向に沿った幅が最大となる空気入りタイヤ10の最大幅位置よりタイヤ径方向内側に位置すればよい。また、ビードフィラーシート400のタイヤ径方向内側端403は、タイヤ径方向において、ビードコア200のタイヤ径方向内側端よりもタイヤ径方向外側に位置すればよい。
【0034】
すなわち、ビードフィラーシート400は、タイヤ径方向において、ビードコア200のタイヤ径方向内側端と、最大幅位置との間に設けられることが好ましい。
【0035】
また、
図1に示すように、点Aから点Bまでの長さをTとした場合、ビードフィラーシート400の長さ、すなわち、ビードフィラーシート400のタイヤ径方向外側端401からタイヤ径方向内側端403までのビードフィラーシート400に沿った長さは、0.1T以上、0.5T以下であることが好ましい。
【0036】
また、ビードフィラーシート400の厚さは0.2mm以上、2.5mm以下であることが好ましい。また、ビードフィラーシート400の物性は、50%モジュラス(M50)が3MPa以上、15MPa以下であることが好ましい。
【0037】
リムライン65は、ビード部60がリムホイール100に正しく装着されているかを確認するために、タイヤ周方向に沿って形成される凸部である。本実施形態では、リムライン65は、リムフランジ110のタイヤ径方向外側端よりも6mm程度、タイヤ径方向外側に設けられている。
【0038】
上述したように、ビード部60には、ビードフィラーが設けられていない。具体的には、ビードコア200を介して折り返されたカーカス40の本体部41と折り返し部42との間には、ビードフィラーが介在していない。なお、本体部41、折り返し部42及びビードコア200によって囲まれる空間は、基本的には空隙であるが、空気入りタイヤ10の加硫工程において当該空間の周囲から入り込んだゴムが介在していてもよい。なお、当該周囲から入り込むゴムは、ビードフィラーとして用いられるゴムよりも剛性が低い。
【0039】
当該空間に入り込むゴムの物性は、300%モジュラス(M300)が5MPa以上20MPa以下であることが好ましく、例えばプライコーティングゴムが当該空間に入り込むことによって、このような物性を達成し得る。
【0040】
ビード部60は、リムフランジ110と接触する外側表面部61を有する。外側表面部61は、ビード部60のタイヤ外側表面の一部である。
【0041】
外側表面部61は、タイヤ幅方向及びタイヤ径方向に沿ったビード部60の断面において、タイヤ幅方向内側に凹むように湾曲している。
【0042】
(3)作用・効果
次に、空気入りタイヤ10の作用及び効果について説明する。具体的には、空気入りタイヤ10のようにビード部60にビードフィラーが設けられていないタイヤ(ビードフィラーレスタイヤ)の操縦安定性について説明した上で、本実施形態に係る空気入りタイヤ10の作用及び効果について説明する。
【0043】
(3.1)ビードフィラーレスタイヤの操縦安定性
図4は、ビードフィラーレスタイヤの操縦安定性の評価試験結果を示すグラフである。具体的には、
図4は、ビードフィラーが設けられている一般的な空気入りタイヤ(従来例)、及びビードフィラーレスタイヤ(比較例)の評価試験結果を示す。
【0044】
なお、
図4に示すビードフィラーレスタイヤ(比較例)及び一般的な空気入りタイヤ(従来例)は、上述した本実施形態に係る空気入りタイヤ10とは異なり、乗用自動車向けである。
【0045】
評価試験の条件などは、以下のとおりである。
【0046】
・装着車両: 前輪駆動方式のミニバン
・積載条件: 車両総重量相当(定員乗車、最大積載量の荷物)
・試験方法: シングルレーンチェンジ(シビア)
【0047】
シングルレーンチェンジ(シビア)とは、以下の条件を満たす。
・進入速度: 100km/h
・横G: 0.5~0.6
・車線変更数: 1車線
・車線変更時間: 2秒
【0048】
図4では、従来例及び比較例のそれぞれについて、車両のステアリングホイールの操舵角と、車両に発生したヨー角とが示されている。
【0049】
まず、レーンチェンジ前半のヨー角に注目すると、比較例では、従来例よりもヨー角の立ち上がりが遅れている(図中の(1))。なお、従来例及び比較例において同様の操舵角が与えられている。
【0050】
次に、レーンチェンジが進行し、車両が一定のヨー角に到達すると、ドライバーは、ステアリングホイールを戻す動作に入る(図中の(2))。ここで、比較例では、当該ステアリングホイールの操作、つまり、操舵角に対する車両の回頭性が遅れるため、当該操舵角での保持時間が長くなっている。すなわち、比較例では、車両が一定のヨー角に到達するまで、従来例よりも長い距離(時間)を要する。
【0051】
レーンチェンジの後半では、変更後のレーンに留まるために、レーンチェンジ方向と逆方向への操舵(カウンターステア)角が与えられているが、比較例では、上述したように、車両が一定のヨー角に到達するまで、従来例よりも長い距離(時間)を要するため、カウンターステアの角度も大きくなっている(図中の(3))。この結果、比較例では、車両のロール量が大きくなり、車両の揺り戻しも大きくなる。
【0052】
図4に示す試験結果を考慮すると、ビードフィラーを省略することによってタイヤの軽量化を図る場合、操縦安定性を維持するためには、レーンチェンジ前半での車両の回頭性を向上させることが重要である。そして、シミュレーションも含めて検討した結果、特に、リムフランジ110付近のビード部60の倒れ込み(剖出)を抑制することによって、操縦安定性を維持し得ることが判明した。この効果は、乗用自動車向けのタイヤに限定されず、UHPタイヤにおいても同様である。
【0053】
(3.2)空気入りタイヤ10の作用・効果
上述したように、本実施形態において、距離Sは、1~6mmである。また、距離Xから距離Sを引いた値は、8mm以下である。発明者の研究によって、バットレス部21からリムライン65までのゴムゲージ厚が上記の範囲内であれば、高速走行時におけるバットレス部21の発熱が抑制され、リムフランジ110付近のビード部60の倒れ込みが抑制されることが判明した。したがって、バットレス部21からリムライン65までのゴムゲージ厚が上記の範囲内であれば、高速走行時におけるバットレス部21の発熱は抑制され、空気入りタイヤ10の耐久性は向上し、かつ、ビード部60の構造を簡略化した場合でも、空気入りタイヤ10は十分な操縦安定性を確保しうる。なお、距離Sが2~5mmであっても同様の効果が得られる。また、距離Xから距離Sを引いた値が6mm以下または4mm以下であっても同様の効果が得られる。
【0054】
(4)その他の実施形態
以上、実施例に沿って本発明の内容を説明したが、本発明はこれらの記載に限定されるものではなく、種々の変形及び改良が可能であることは、当業者には自明である。
【0055】
例えば、バットレス部21付近の曲率は、
図5のように設定されてもよい。
図5に示す点Gは、タイヤ最大幅位置である。タイヤ最大幅位置とは、タイヤ幅方向に沿った幅が最大となる空気入りタイヤ10の最大幅位置である。L8は、点Gを通るタイヤ幅方向と平行な仮想直線である。L9は、仮想直線L1と仮想直線をL8との中間を通るタイヤ幅方向と平行な仮想直線である。点Hは、仮想直線L9とカーカス40との交点である。詳しくは、点Hは、タイヤ径方向外側のカーカス40上に位置する。L10は、点Hを通るタイヤ径方向と平行な仮想直線である。L11は、点Hにおいてカーカス40に接する仮想直線である。本実施形態において、仮想直線L10と仮想直線L11とのなす角度θ1は、35度~70度である。但し、角度θ1は、これに限定されない。角度θ1は、40~65度であってもよい。
【0056】
また、ビード部60付近の曲率は、
図6のように設定されてもよい。
図6に示す点Jは、外側表面部61のタイヤ径方向外側端の位置である。詳しくは、点Jは、外側表面部61がリムフランジ110との接触状態から離れる、空気入りタイヤ10の外側表面上に位置する離反点である。L12は、点Jを通り、外側表面部61に直角に交わる仮想垂線である。点Kは、仮想垂線L12と折り返し部42との交点である。L13は、点Kにおいて折り返し部42に接する仮想直線である。本実施形態において、BLは、リムホイール100のリム径位置を通るタイヤ幅方向と平行な直線(ビードベースライン)である。本実施形態において、仮想直線L13と、ビードベースラインBLとのなす角度θ2は、60~85度である。但し、角度θ2は、これに限定されない。角度θ2は、65~82度であってもよい。角度θ1及びθ2が上記範囲内であっても、上述した効果と同様の効果が得られる。
【0057】
また、ビード部60に埋め込まれるビードコアが本体部41と折り返し部42との間に形成される空間を埋めてもよい。この点について
図7を参照して説明する。
図7に示すように、折り返し部42は、タイヤ径方向外側において、本体部41に接する接触領域CRを有する。接触領域CRのタイヤ径方向内側端CR1は、リムフランジ110に対向する位置付近に設けられる。なお、接触領域CRでは、本体部41と折り返し部42との間にゴムが介在し、本体部41及び折り返し部42が、互いに平行に設けられていてもよい。
【0058】
図7に示すように、ビードコア250は、本体部41と折り返し部42との間に形成される空間に介在する。ビードコア250は、コア部260と先細り部270とを含む。折り返し部42は、コア部260を介して、タイヤ幅方向外側に折り返される。
【0059】
先細り部270は、コア部260のタイヤ径方向外側に位置し、コア部260と一体に設けられる。先細り部270は、タイヤ径方向及びタイヤ幅方向に沿った断面において、コア部260から接触領域CRのタイヤ径方向内側端CR1に向かうに連れて細くなる。先細り部270は、内側部分272と外側部分274とを有する。
【0060】
内側部分272は、先細り部270のタイヤ幅方向内側に位置し、ビードコア250の長手方向LD1に平行に設けられる。外側部分274は、先細り部270のタイヤ幅方向外側に位置する。外側部分274は、接触領域CRのタイヤ径方向内側端CR1に向かって、ビードコア250の長手方向LD1に対して傾斜する。
【0061】
本体部41は、内側部分272に接する。折り返し部42は、外側部分274に接する。
図7に示すように、本体部41と折り返し部42との間には、ビードフィラーが介在していない。これにより、ビード部60の構造は簡略化され、タイヤの軽量化が実現する。
【0062】
また、ビードフィラーシート400が、ビードコア250のタイヤ径方向外側において、カーカス40に沿って設けられる。ビードコア250は、タイヤ径方向及びタイヤ幅方向に沿った断面において、接触領域CRのタイヤ径方向内側端CR1に向かうに連れて細くなる先細り部270を有する。カーカス40の折り返し部42は、先細り部270に接する。このような構成により、ビードフィラーが、カーカス40の本体部41と折り返し部42との間に介在しなくても、リムフランジ110付近の剛性は向上する。これにより、リムフランジ110付近のビード部60の倒れ込みが抑制され、十分な操縦安定性が得られる。
【0063】
図7に示す外側表面部61の曲率半径Rは、30mm以上、300mm以下に設定されてもよい。また、曲率半径Rは、50mm以上、200mm以下に設定されてもよい。曲率半径Rとは、タイヤ幅方向及びタイヤ径方向に沿ったビード部60の断面において、ビード部60よりもタイヤ幅方向外側に位置する中心を基準として外側表面部61の位置を通過する円弧の半径である。曲率半径Rは、外側表面部61のタイヤ径方向外側端61aの位置を基準とする。つまり、リムフランジ110と接触するビード部60のタイヤ外側表面のうち、最もタイヤ径方向外側の位置を意味する。また、曲率半径Rは、リムホイール100に組み付けられておらず、荷重が負荷されていない空気入りタイヤ10の形状を基準とする。なお、外側表面部61が複数の曲率半径を有する場合、つまり、外側表面部61が、曲率が異なる複数の部分によって構成されている場合、曲率半径Rは、それぞれの曲率を有する部分の長さに応じた当該複数の曲率半径の平均として表現されてもよい。外側表面部61がこのような曲率を有することによって、リムフランジ110付近のビード部60に負荷される荷重が分散され、ビード部60の倒れ込みを抑制し得る。これにより、車両のロール量及び揺り戻しが低減する。つまり、空気入りタイヤ10が装着された車両の操縦安定性を確保し得る。
【0064】
図7に示す例において、点D(タイヤ径方向外側端)の位置におけるゴムゲージ、具体的には、点Dから折り返し部42のタイヤ幅方向外側端(ビードフィラーシート400を含む)までの厚さは、3.5mm以上、9.5mmであることが好ましい。
【0065】
なお、ビードコア250の形状は、
図7の形状に限定されない。例えば、
図8に示すように、ビードコア250aは、コア部260aと先細り部270aとを含んでもよい。コア部260aは、タイヤ幅方向外側に位置する外側部分264aを有する。外側部分264aは、接触領域CRのタイヤ径方向内側端CR1に向かって、ビードコア250aの長手方向LD2に対して傾斜する。
【0066】
先細り部270aは、タイヤ幅方向外側に位置する外側部分274aを有する。外側部分274aは、接触領域CRのタイヤ径方向内側端CR1に向かって、ビードコア250aの長手方向LD2に対して傾斜する。コア部260aの外側部分264a及び先細り部270aの外側部分274aは一直線状に連なり、ビードコア250aの外側部分252aを形成する。このように、ビードコア250aのタイヤ幅方向外側面は面一に形成される。
【0067】
このような構成により、空気入りタイヤ10の加硫工程において、折り返し部42がビードコア250aの外側部分252aに接する際に、折り返し部42に生じる歪みが抑制されうる。これにより、リムフランジ110付近の剛性はより高くなり、操縦安定性が維持される。
【0068】
また、
図9に示すように、ビードコア250bは、コア部260bと先細り部270bとを含んでもよい。ビードコア250bのコア部260bは、ビードコア250のコア部260と同様である。
【0069】
先細り部270bは、タイヤ径方向及びタイヤ幅方向に沿った断面において、接触領域CRのタイヤ径方向内側端CR1に向かうに連れて細くなる。先細り部270bは、内側部分272bと外側部分274bとを有する。
【0070】
内側部分272bは、先細り部270bのタイヤ幅方向内側に位置する。内側部分272bは、接触領域CRのタイヤ径方向内側端CR1に向かって、ビードコア250bの長手方向LD3に対して傾斜する。外側部分274bは、先細り部270bのタイヤ幅方向外側に位置する。外側部分274bは、接触領域CRのタイヤ径方向内側端CR1に向かって、ビードコア250bの長手方向LD3に対して傾斜する。
【0071】
カーカス40の本体部41は、内側部分272bに接する。カーカス40の折り返し部42は、外側部分274bに接する。
【0072】
このような構成により、空気入りタイヤ10の加硫工程において、カーカス40の本体部41及び折り返し部42は、タイヤ幅方向内側及びタイヤ幅方向外側から押し付けられて、ビードコア250の先細り部270に接する。これにより、リムフランジ110付近の剛性はより高くなり、操縦安定性が維持される。
【0073】
また、ビードコアの形状は、
図7~9に示す形状に限定されない。例えば、ビードコアの形状は、
図10に示す形状であってもよい。
図10に示すように、ビードコア205は、タイヤ幅方向内側に設けられる内側ビードコア210と、タイヤ幅方向外側に設けられる外側ビードコア220によって構成される。
【0074】
内側ビードコア210は、カーカス40よりもタイヤ幅方向内側に設けられ、外側ビードコア220は、カーカス40よりもタイヤ幅方向外側に設けられる。
【0075】
内側ビードコア210は、複数のコードが撚られ、断面形状が円形である2つのリング状部材によって構成される。当該2つのリング状部材は、タイヤ径方向に沿って設けられる。
【0076】
同様に、外側ビードコア220も複数のコードが撚られ、断面形状が円形である2つのリング状部材によって構成される。当該2つのリング状部材も、タイヤ径方向に沿って設けられる。
【0077】
カーカス40は、内側ビードコア210と外側ビードコア220との間に介在する。本実施形態では、カーカス40のタイヤ径方向内側端40aは、内側ビードコア210のタイヤ径方向内側端210a、及び外側ビードコア220のタイヤ径方向内側端220aまで延びる。
【0078】
内側ビードコア210と外側ビードコア220とは、このようにタイヤ径方向内側端210a及びタイヤ径方向内側端220aまで延びるカーカス40を挟み込んでいる。具体的には、内側ビードコア210は、カーカス40のタイヤ幅方向外側面と接触し、外側ビードコア220は、カーカス40のタイヤ幅方向内側面と接触する。
【0079】
ビードフィラーシート400は、ビードコア205のタイヤ径方向外側において、カーカス40に沿ってカーカス40のタイヤ幅方向外側に設けられる。
【0080】
図10に示すビード部60のビードコア205は、内側ビードコア210と外側ビードコア220とによって構成される。また、カーカス40は、内側ビードコア210と外側ビードコア220との間に介在する。つまり、カーカス40は、一般的なタイヤのようにビードコア205を介して折り返されておらず、ビード部60にはビードフィラーも設けられていない。このため、ビード部60のゲージを薄くし得る。
【0081】
また、
図10に示す空気入りタイヤ10では、ビードフィラーシート400が、カーカス40に沿ってカーカス40のタイヤ幅方向外側に設けられる。このため、ビードフィラーシート400がビード部60に負荷される荷重を支え、ビード部60の倒れ込みを抑制し得る。つまり、空気入りタイヤ10が装着された車両の操縦安定性を確保し得る。
【0082】
すなわち、
図10に示す空気入りタイヤ10によれば、ビード部60の構造を簡略化した場合でも、十分な操縦安定性を確保し得る。さらに、ビードコア205を介してカーカス40を折り返す必要がないため、製造工程が簡略化できるとともに、折り返した部分にエア溜まりが形成されることも回避し得る。また、カーカス(カーカスライン)の設計上の自由度を向上し得る。
【0083】
図10に示すカーカス40のタイヤ径方向内側端40aは、内側ビードコア210のタイヤ径方向内側端210aまたは外側ビードコア220のタイヤ径方向内側端220aで延びる。特に、内側ビードコア210と外側ビードコア220とは、カーカス40を挟み込んでいる。このため、カーカス40を内側ビードコア210と外側ビードコア220との間に確実に介在させることができ、ビード部60の剛性を向上し得る。これにより、車両の操縦安定性のさらなる向上に寄与し得る。
【0084】
また、
図11に示す空気入りタイヤ10Aのように、内側ビードコア210と外側ビードコア220Aとによって、ビードコア205Aが構成されてもよい。外側ビードコア220Aは、3つのリング状部材によって構成される。つまり、ビードコア205Aのように、内側ビードコアと外側ビードコアとは、必ずしも同一形状(対称形状)でなくてもよい。具体的には、内側ビードコアを構成するリング状部材の数と、外側ビードコアを構成するリング状部材の数とは異なっていてもよい。
【0085】
また、
図12に示す空気入りタイヤ10Bのように、内側ビードコア210と、外側ビードコア220Bとによって、ビードコア205Bが構成されてもよい。外側ビードコア220Bは、内側ビードコア210よりもタイヤ径方向外側に設けられる。つまり、ビードコア205Bのように、内側ビードコアと外側ビードコアとは、タイヤ径方向において必ずしも同じ位置に設けられていなくてもよい。空気入りタイヤ10Bでは、カーカス40のタイヤ径方向内側端40aは、外側ビードコア220Bよりもタイヤ径方向内側に位置する。
【0086】
また、カーカス40のタイヤ径方向内側端40aは、内側ビードコア及び外側ビードコアのタイヤ径方向内側端よりも、タイヤ径方向内側に位置してもよいし、内側ビードコアまたは外側ビードコアの何れか一方のタイヤ径方向内側端よりもタイヤ径方向内側に位置してもよい。或いは、カーカス40のタイヤ径方向内側端40aは、内側ビードコアまたは外側ビードコアの少なくとも何れ一方のタイヤ径方向内側端よりもタイヤ径方向外側に位置してもよい。
【0087】
また、ビードフィラーシート400は、内側ビードコアまたは外側ビードコアの少なくとも一方のタイヤ径方向外側において、カーカス40に沿ってカーカスのタイヤ幅方向外側に設けられていればよい。つまり、ビードフィラーシート400は、タイヤ径方向において、何れかのビードコアと重複して設けられても構わない。
【0088】
また、ビード部60は、
図13に示す構成を備えていてもよい。
図13に示すように、ビードコア280は、カーカス40の本体部41と折り返し部42との間に形成される空間に介在する。ビードコア280は、コア部282と凸部284とを含む。折り返し部42は、コア部282を介して、タイヤ幅方向外側に折り返される。
【0089】
凸部284は、コア部282のタイヤ径方向外側に位置し、コア部282と一体に設けられる。凸部284は、タイヤ径方向及びタイヤ幅方向に沿った断面において、本体部41と折り返し部42とコア部282との間に形成される空間に向けて、コア部282から突出する。凸部284は、内側部分286と外側部分288とを有する。
【0090】
内側部分286は、凸部284のタイヤ幅方向内側に位置し、ビードコア280の長手方向LD1に平行に設けられる。外側部分288は、凸部284のタイヤ幅方向外側に位置する。外側部分288は、内側部分286のタイヤ径方向外側端に向かって、ビードコア280の長手方向LD1に対して傾斜する。
【0091】
カーカス40の本体部41は、内側部分286に接する。カーカス40の折り返し部42は、外側部分288の一部に接する。ビードコア280の外周面は、ラッピング部材290で覆われている。ラッピング部材290は、例えば、ビニロンコードからなる。凸部284の内側部分286及び外側部分288は、ラッピング部材290を含んでいる。なお、ビードコア280の外周面にラッピング部材290を設けなくてもよい。この場合、凸部284の内側部分286及び外側部分288は、ラッピング部材290を含んでいない。
【0092】
充填部300は、カーカス40の本体部41と折り返し部42とビードコア280の凸部284との間に形成される空間を埋める。充填部300は、他の部分のゴムよりも硬質なゴムからなる。本実施形態では、折り返し部42が本体部41に接する接触領域のタイヤ径方向内側端は、リムフランジ110に対向する位置付近に設けられる。
【0093】
タイヤ径方向及びタイヤ幅方向に沿った断面において、ビードコア280の面積に対する充填部300の面積の割合は、5%以上かつ95%以下に設定される。好ましくは、ビードコア280の面積に対する充填部300の面積の割合は、10%以上かつ90%以下に設定される。より好ましくは、ビードコア280の面積に対する充填部300の面積の割合は、20%以上かつ85%以下に設定される。
【0094】
タイヤ径方向及びタイヤ幅方向に沿った断面において、ビードコア280の面積は、6mm2以上かつ70mm2以下に設定されるが、これに限定されない。ビードコア280の面積は、10mm2以上かつ50mm2以下に設定されてもよく、25mm2以上かつ45mm2以下に設定されてもよい。
【0095】
タイヤ径方向及びタイヤ幅方向に沿った断面において、充填部300の面積は、3mm2以上かつ40mm2以下に設定されるが、これに限定されない。充填部300の面積は、5mm2以上かつ30mm2以下に設定されてもよく、10mm2以上かつ20mm2以下に設定されてもよい。
【0096】
図13に示すように、ビードコア280の凸部284が、空間の一部を埋めており、充填部300が、空間の残りの部分を埋めている。これにより、他の部分のゴムよりも硬質なゴムからなる充填部300の量が減るため、
図13示す空気入りタイヤ10は、タイヤの軽量化を実現しつつ、リムフランジ110付近の剛性を高くすることができる。
【0097】
なお、
図14に示すように、充填部は、硬質ゴムの代わりに、ビードコア280の外周面を覆っているラッピング部材290によって形成されてもよい。ラッピング部材290は、カーカス40の本体部41と折り返し部42と凸部284との間に形成される空間を埋める。充填部として、ビードコア280の外周面を覆っているラッピング部材290を利用することができるため、別途硬質ゴムを用意する必要がなく、空気入りタイヤ10の製造工程は簡略化され得る。
【0098】
また、
図15に示すように、カーカス40の折り返し部42は、ビードコア280の凸部284には接していなくてもよい。充填部310は、本体部41と折り返し部42と凸部284との間に形成される空間を充填する。空気入りタイヤ10の加硫工程において、折り返し部42が凸部284に接するように押し付けられると、折り返し部42に歪みが生じる場合がある。これに対し、
図15に示すように、折り返し部42と凸部284との間に、充填部310を介在させることにより、歪みの発生は抑制され得る。これにより、リムフランジ110付近の剛性の低下が回避され得る。
【0099】
また、
図16に示すように、ビードコア280aは、コア部282aと凸部284aとを含んでもよい。コア部282aは、
図13に示すコア部282と同様である。凸部284aは、本体部41と折り返し部42とコア部282aとの間に形成される空間に向けて、コア部282aから突出する。凸部284aは、内側部分286aと外側部分288aとを有する。
【0100】
内側部分286aは、凸部284aのタイヤ幅方向内側に位置する。内側部分286aは、ビードコア280aのタイヤ径方向外側端に向かって、ビードコア280aの長手方向LD2に対して傾斜する。外側部分288aは、凸部284aのタイヤ幅方向外側に位置する。外側部分288aは、ビードコア280aのタイヤ径方向外側端に向かって、ビードコア280aの長手方向LD2に対して傾斜する。
【0101】
本体部41は、内側部分286aに接していない。カーカス40の折り返し部42は、外側部分264bに接する。充填部320は、カーカス40の本体部41と折り返し部42とビードコア280aの凸部284aとの間に形成される空間を埋める。空気入りタイヤ10の加硫工程において、折り返し部42が凸部284に接するように押し付けられると、折り返し部42に歪みが生じる場合がある。これに対し、
図16に示すように、折り返し部42と凸部284との間に、充填部310を介在させることにより、歪みの発生は抑制され得る。これにより、リムフランジ110付近の剛性の低下が回避され得る。
【0102】
また、
図17に示すように、ビードコア280bは、コア部282bと凸部284bとを含んでもよい。コア部282bは、タイヤ幅方向外側に位置する外側部分282b1を有する。外側部分282b1は、ビードコア280bのタイヤ径方向外側端に向かって、ビードコア280bの長手方向LD3に対して傾斜する。
【0103】
図17に示すように、凸部284bは、カーカス40の本体部41と折り返し部42とビードコア280bのコア部282bとの間に形成される空間に向けて、コア部282bから突出する。
【0104】
図17に示すように、凸部284bは、タイヤ幅方向外側に位置する外側部分284b1を有する。外側部分284b1は、ビードコア280bのタイヤ径方向外側端に向かって、ビードコア280bの長手方向LD3に対して傾斜する。コア部282bの外側部分282b1及び凸部284bの外側部分284b1は一直線状に連なり、ビードコア280bの外側部分280b1を形成する。このように、ビードコア280bのタイヤ幅方向外側面は面一に形成される。
【0105】
図17に示すように、カーカス40の折り返し部42は、凸部284bの外側部分284b1の一部に接していない。充填部330は、カーカス40の本体部41と折り返し部42とビードコア280bの凸部284bとの間に形成される空間を埋める。このような構成により、空気入りタイヤ10の加硫工程において、カーカス40の折り返し部42をビードコア280bの凸部284bの外側部分284b1の全てに接するように押し付けると、折り返し部42に歪みが生じる場合に、折り返し部42と凸部284bとの間に、充填部330を介在させることにより、歪みの発生を抑制することができる。これにより、リムフランジ110付近の剛性が低くなるのを回避することができる。
【0106】
上記のように、本発明の実施形態を記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面はこの発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。
【符号の説明】
【0107】
10,10A,10B 空気入りタイヤ
20 トレッド部
21 バットレス部
30 タイヤサイド部
31 リムガード
40 カーカス
41 本体部
42 折り返し部
50 ベルト層
50a、50b、50c ベルト
60 ビード部
61 外側表面部
65 リムライン
100 リムホイール
110 リムフランジ
200,205,205A,205B ビードコア
210 内側ビードコア
210a タイヤ径方向内側端
220,220A,220B 外側ビードコア
220a タイヤ径方向内側端
250,250a,250b ビードコア
252a 外側部分
260,260a,260b コア部
264a,264b 外側部分
270,270a,270b 先細り部
272,272b 内側部分
274,274a,274b 外側部分
280,280a、280b ビードコア
280b1 外側部分
282,282a、282b コア部
282b1 外側部分
284,284a、284b 凸部
284b1 外側部分
286,286a 内側部分
288,288a 外側部分
290 ラッピング部材
300,310,320、330 充填部
400 ビードフィラーシート
401 タイヤ径方向外側端
403 タイヤ径方向内側端