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7144270可溶性タンパク質を高含有量で含む大豆粕の生成プロセスとこれにより得られる生成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-20
(45)【発行日】2022-09-29
(54)【発明の名称】可溶性タンパク質を高含有量で含む大豆粕の生成プロセスとこれにより得られる生成物
(51)【国際特許分類】
   A23L 11/00 20210101AFI20220921BHJP
   A23J 3/16 20060101ALI20220921BHJP
【FI】
A23L11/00 Z
A23L11/00 A
A23J3/16
【請求項の数】 5
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2018190799
(22)【出願日】2018-10-09
(65)【公開番号】P2019068802
(43)【公開日】2019-05-09
【審査請求日】2020-12-28
(31)【優先権主張番号】102017021876 7
(32)【優先日】2017-10-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】BR
(73)【特許権者】
【識別番号】518358103
【氏名又は名称】リオ パルド ビオエネルジア ソシエダーデ アノニマ
【氏名又は名称原語表記】RIO PARDO BIOENERGIA SA
【住所又は居所原語表記】Rod. BR 060, S/N,KM 425,Sidrolandia,MS,Brazil,CEP 79170-000
(74)【代理人】
【識別番号】100169904
【弁理士】
【氏名又は名称】村井 康司
(74)【代理人】
【識別番号】100132698
【弁理士】
【氏名又は名称】川分 康博
(72)【発明者】
【氏名】オスバルド ネヴェス デ アギーア
(72)【発明者】
【氏名】セサール ボルゲス
(72)【発明者】
【氏名】ルイス アントニオ ゴンサルベス
【審査官】戸来 幸男
(56)【参考文献】
【文献】特開昭56-078561(JP,A)
【文献】国際公開第2014/115067(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 11/00-11/70
A23J 3/00-3/34
FSTA/CAplus/AGRICOLA/BIOSIS/
MEDLINE/EMBASE(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
Google
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
大豆を乾燥、貯蔵、予備洗浄、大豆粉砕、皮の除去、調整、積層、膨張器における加工(最終質量膨張生成物)および冷却の従来のプロセスに供される大豆調製の工程1により得られる、可溶性タンパク質の含有量が高い大豆粕の生成プロセスであって、さらに、
エタノールによる抽出工程2であって、
-前工程で得られた質量体を、抽出器1と呼ぶ連続抽出器(図3参照)に導き、大気圧で操作し、50℃~80℃に予め予熱しておいた65~85重量%のエタノール水溶液を用いて向流抽出に供し、
-水15~25%、エタノール60~80%、糖および他の可溶性物質8~12%を含むこの抽出から得られた溶液を、固形物のデカンテーションに送る工程と、
固形物のデカンテーション工程3であって、
-大豆加工産業で使用される従来のデカンター内で、前記膨張質量体からガム、顔料および微粉を含む固体残留物を分離し、
-前記デカンテーション後の液体を、糖および他の可溶性成分を除去するために蒸留塔に送る工程と、
エタノールの蒸留工程4であって、
-前記固形分をデカンテーションした後、蒸留カラムで蒸留を行い、65~85重%の濃度を有するエタノール水溶液を、その上部にて回収し、その底部生成物として糖および他の可溶性物質を含有する水性画分を回収し、
-65~85重量%のエタノール濃度を有する留出物を前記抽出器1に戻し、前記エタノールの損失を置き換えることによってこの流れ(flow)を調節する工程と、
ヘキサンによる抽出工程5であって、
-可溶性糖を含まない前記膨張質量体を、抽出器2と呼ぶ第2の連続抽出器に送り、そこでヘキサンによる抽出に供し、
-前記抽出器2は、水柱の-25~25mmの真空で動作するものであり、前記ヘキサンは供給前に50~60℃で予熱しておき、
-ヘキサン、油、水、エタノールおよび糖を含む前記溶液を集めて、水相および有機相の分離のためにデカンテーションに付す工程と、
前記水相および有機相のデカンテーション工程6であって、
-デカンテーションを、大豆加工産業で通常使用される通常のデカンターで行い、密度の差によって、より重い水性画分からより軽い有機画分を上清として分離し、
-60~85%のヘキサンおよび15~40%の油を含む前記有機相を蒸留に送り、前記ヘキサンから油を除去し、
-前記抽出器1に戻った前記水溶液を回収することによって、エタノール、水および溶解している糖を含有する前記水相を前記エタノール蒸留に送る工程と、
ヘキサンの蒸留工程7であって、
-前記蒸留は、大豆加工産業の従来の蒸留所で真空によって行われ、軽質留分として前記ヘキサンを分離し、これを前記抽出器2に戻し、前記油を重い画分として貯蔵に送り、
-前記蒸留においては、投入した前記大豆の約20%を脱ガム油として分離し、
-前記回収されたヘキサンを、その損失を置換するように調節する工程と、
脱溶媒和工程8であって、
-前記抽出後の膨張質量体を、DT(脱溶媒器およびトースター)において脱溶媒和に供し、前記質量体に存在するすべてのヘキサンおよびエタノールを水蒸気による間接的かつ直接的加熱によって除去し、
-前記操作の後、前記質量体はSPC大豆粕となり、前記装置の出口で85~100℃の温度に達する工程と、
前記溶媒の凝縮工程9であって、
-前記DTからの前記蒸気を、船体型凝縮器および管内にて冷却水で冷却して凝縮させ、
-前記凝縮液も前記水相および前記有機相の前記デカンテーションに送る工程と、
乾燥および冷却工程10であって、
-前記SPC大豆粕を、乾燥機/冷却器で乾燥させた後、冷却し、
-乾燥は、120~180℃の温度の熱風で行い、
-室温の空気を通過させることにより前記冷却を行い、30~45℃の温度のSPC大豆粕を得る工程と、
を含む生成プロセス
【請求項2】
任意に、前記質量体を前記抽出器1に通過させた後、前記質量体中に存在する前記水の含量を減少させるため、中間抽出器において90~92重量%の濃度のエタノール水溶液で前記質量体を抽出にかけ、得られたエタノール溶液を別の蒸留塔に送って水および糖類を除去し、その濃度を前記中間抽出器に戻すために調整することができることを特徴とする、請求項1に記載の可溶性タンパク質の含有量が高い大豆粕の生成プロセス。
【請求項3】
別法として、横方向抜取りを含む単一の蒸留塔を用いて前記2つの分離を行うことを特徴とする、請求項2に記載の可溶性タンパク質の含有量が高い大豆粕の生成プロセス。
【請求項4】
前記中間抽出器は、前記抽出器1の一部を使用して構成される、または独立装置であることを特徴とする、請求項2に記載の可溶性タンパク質の含有量が高い大豆粕の生成プロセス。
【請求項5】
前記質量体を任意に連続プレスに通して、前記エタノール水溶液の量を減少させ、分離された溶液を、デカンテーションの後、エタノールの蒸留に送ることを特徴とする、請求項1に記載の可溶性タンパク質の含有量が高い大豆粕の生成プロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化学領域に属する可溶性タンパク質の含有量が高い大豆粕製造プロセスに関し、特に、KOH中の可溶性タンパク質の含有量が60~75%に達する大豆粕の製造プロセスに関する。このプロセスでは、中間脱溶媒化なしで単一の統合工業ユニットにて、最初に可溶性糖類を大豆粕から水溶性エタノール溶液による抽出に向けて取り出し、次いで油をヘキサンで抽出する。
【背景技術】
【0002】
現在、2種類の大豆粕が市販されている。1つは、動物飼料に使用されている粗タンパク質含有量44~48%の大豆粕であり、もう1つは、特別な動物飼料に使用される粗タンパク質含有量58~62%の、いわゆるSPC(大豆タンパク質濃縮物)である。
タンパク質含有量44~48%の大豆粕の生成
【0003】
粗タンパク質の含有量が44~48%の大豆粕を生成する現在の技術では、大豆は以下の工程を経る。
1.乾燥
2.貯蔵
3.不純物の除去のための前洗浄
4.粉砕ミル中の大豆の粉砕
5.篩内の皮の除去
6.油を含む細胞を開くための間接蒸気による調整(conditioning)
7.積層(Lamination)
8.(任意で)膨張質量体(expanded mass)の形成のための膨張機における処理
9.タルトの冷却
10.ヘキサンによる油分の抽出
11.脱溶媒和/トースト
12.ヘキサンの回収のための蒸留
13.ヘキサンの凝縮および再循環
14.油分の脱ガム
【0004】
抽出工程では、積層した大豆または膨張質量体状の大豆をヘキサンで油を除去するために抽出器に送る。この工業的プロセスは連続的であり、ヘキサンは向流で供給される。抽出器には、長形または円形のベルト(DeSmet、CrownまたはRotocell)を使用可能である。ヘキサンは、後の脱ガム中に原油から除去しなければならない、大豆に含まれるガム、ペプチドおよびレシチンも除去する。
【0005】
続いて、脱溶媒器/トースター(DT)にて、ふすま中に存在する溶媒および水分の一部が除去される。ここでは食害酵素の加熱による不活性化も行われる。ふすまは装置の上部に供給され、蒸気加熱を直接的および間接的を受ける。次に、ふすまは乾燥と冷却のプロセスを経る。DTおよび蒸留で生成されたヘキサン蒸気は凝縮され、デカントされ、抽出器に再送される。
【0006】
このプロセスの最後に、原油を蒸留によりヘキサンから分離し、次いで遠心分離により脱ガムし、乾燥させる。
SPC(大豆タンパク濃縮物)粕の製造
【0007】
SPC粕を製造するには、油をすでに抜いた粗タンパク質含有量48%の大豆粕、すなわち上記のプロセスからのものを原料として使用する。
【0008】
こうしてこのふすまを篩にかけ、エタノール水溶液で抽出して、大豆中に存在する可溶性糖を除去する。次に、ふすまをプレス処理してエタン酸溶液の一部を除去する。続いて、このふすまをDT内で脱溶媒和し、次いで乾燥および冷却を行う。
【0009】
抽出装置とDTは、糠44~48%を製造するプロセスで使用されるものと同じであり、エタノール水溶液となる溶媒の変更のみが行われる。
【0010】
したがって、使用されている現プロセスにおけるSPC粕は、DT装置で2回加熱され、乾燥機で2回加熱される。
粕の品質
【0011】
大豆粕の品質における重要なパラメータは、KOHに可溶なタンパク質の含有量である。この可溶性タンパク質とは、動物による吸収に利用可能なタンパク質である。したがって、可溶性タンパク質の量が多いほど、動物へのタンパク質の利用率が向上する。
【0012】
大豆は、そのタンパク質の100%までKOHに可溶なタンパク質を含有することができる。しかし、我々が、a)存在する抗栄養因子の破壊、b)溶媒除去、およびc)乾燥を目的として大豆粒子を加熱処理にかける程度を観察したところ、タンパク質の可溶性の低下、そしてその結果として動物へのタンパク質の利用可能性の低下があった。
【0013】
KOH可溶性タンパク質を80%の最小含有量で有する44~48%タンパク質の大豆粕が良質であると考えられ、適切な熱処理を受けたものである。
【0014】
ここで、高タンパク含量のSPC粕は、DTおよび乾燥機でかけられた二重加熱により、40~50%の範囲でKOH中のより高い可溶性タンパク質含有量を示す。
従来技術
【0015】
先行技術の一部として、我々は、主題に関連しているが本特許で請求されているプロセスとは異なるプロセスであるいくつかの文書に注目した。
【0016】
米国特許第5097017号A「大豆タンパク質濃縮物を作るプロセス」にはSPCの既存の2種類の工業的プロセスが記載されている。
【0017】
この2つのプロセスは、粕から可溶性物質を除去する間にタンパク質を固定化する方法で互いに異なっている。
【0018】
1つのプロセスは、pH4~5で油を含まない粕の水性抽出を含む。このpHでは大半のたんぱく質が等電点の関連により可溶性である。
【0019】
もう1つの方法は、60~70質量%の濃度のエタノール水溶液を使用する。この濃度は、低分子量成分を可溶化すると同時に大部分のタンパク質を不溶化する。
【0020】
前述の2つの工業プロセスには以下の欠点がある。
1)既に脱溶剤および乾燥工程を経たオイルフリーのふすまを原材料として使用すると可溶性タンパク質が劣化する。
2)油とともに可溶性物質を除去するには、油の脱ガム段階が必要である。
【0021】
米国特許第5097017号A「タンパク質濃縮物およびそれによって得られる生成物の調製方法」には、希釈エタノールによる糖抽出およびこれに続く無水エタノールによる油抽出の別のプロセスが記載されており、さらに、このプロセスは無水エタノールの希釈を避けるために、湿度3%まで中間ふすま乾燥工程が必要であるため、工業的に成功しなかったと述べている。この湿度レベルに到達することは非常に困難であり、この試みでは可溶性タンパク質が大きく劣化してしまう。
【0022】
この特許は、4工程で糖および油を除去することを提案している。
1)50~70%の濃度のエタノール水溶液による糖類の抽出、2)90~92質量%の濃度のエタノールでの冷抽出による一部の水の除去、3)油を除去するため、煮沸に近い温度で90~92%の濃厚エタノールによる2工程での油除去。
【0023】
従って、この方法は工業的に応用されないという点が欠点である。なぜなら、エタノール溶液中の油溶性はわずか4%であり、これは大量のエタノールが再循環することであるため、この方法は経済的に実現不可能となるためである。
【0024】
ブラジル特許第0704513-1号は、溶媒回収システムに関し、「全体として濃縮した大豆粕を得るプロセスは以下の通り。第1の工程では、タンパク質含有量が46~48%で高い大豆粕を抽出器に送り、ここでこの生成物を含水アルコール溶媒と向流で洗浄する」として、現在の技術水準においてSPC粕がオイルフリーの粕から製造されることを確証している。
【0025】
従って、この文書は、同一の生成順序を使用しており、特許米国特許第5097017号Aについて上記に示されたものと同じ欠点を有する。
【0026】
また、エタノール抽出前の予備水和に言及するブラジル特許第0802961-0号もある。これも、油を含まない粕からのSPC粕の生成を確証している。「大豆は工業規模で処理され、大豆油と大豆粕とを生成物として得る。大豆粕は通常、タンパク質濃縮プロセスに供され、濃縮された大豆粕となる。これは動物飼料のタンパク質富化に理想的である」と述べている。
【0027】
同様に、このプロセスは、同じ生成順序を使用するので、特許米国特許第5097017号Aについて上記に示されたものと同じ欠点を有する。この特許は、「...最終生成物として、通常50%を超えない高可溶性タンパク質含有量を有する濃縮大豆粕を得る」として、現在の技術水準における粕の品質を明示している
【0028】
最後に、ブラジル特許第0704760-6号も、「このプロセスは、水とエチルアルコールで洗浄することによって大豆抽出後に得られる粕から糖を抽出することを含む」と、SPC生成プロセスについて述べている。
【0029】
したがって、これも同様に、同じ生成順序を使用するので、特許米国特許第5097017号Aについて上記に示されたものと同じ欠点を有する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0030】
したがって、本発明は、下記を目的とする。
- 可溶性タンパク質の含有量が高い60~75%の大豆粕を製造する方法を提案する。この方法では、可溶性糖類をまず水溶性エタノール溶液でその質量体から抽出し、次いでヘキサンで油を抽出して除去する。
-単一の統合された産業ユニットで、可溶性タンパク質含有量が高い大豆粕を生成するプロセスを提案する。
-2つの溶媒(エタノールとヘキサンの水溶液)を混合するプロセスを提案する。この溶媒は後にデカンテーションによって分離されて、エタノール、水、糖類およびエタノールおよび水に可溶な他の物質を含むより高密度の水性画分と、ヘキサンおよび油を含む低密度有機画分とを分離させる。
-現在の技術水準に含まれている2工程の加熱を排除するプロセスを提案する。この方法では、現在生成されているSPC粕含量よりも可溶性タンパク質含有量が高い、品質が改善された粕を生成する。
-最初の工程でエタノールによる大豆中に存在するリン脂質、レシチンおよびガムの抽出を除くプロセスを提案する。これにより、現在の技術水準に組込まれているユニットでの既存の油の脱ガム工程を排除する。
【課題を解決するための手段】
【0031】
本発明は、可溶性タンパク質含有量が高いSPC大豆粕を製造する方法を提示する。この方法では、
-抽出器1内で向流エタノール溶液による糖抽出を行う。
-大豆からの糖および他の可溶性化合物および余分な水は、蒸留によって分離される。これにより、抽出器1に戻るエタノールの水溶液が生成される。
-次に、可溶性糖を含まないまだ湿っている粕をヘキサンで抽出して抽出器内で油を除去する。
-水、糖、エタノール、ヘキサンおよび油の混合物をデカンテーションにより分離し、水性画分をエタノールの蒸留に送り、油およびヘキサンを含有する有機画分をヘキサンの蒸留に送る。
-糖および油を含まない粕を、DT中で一回加熱して溶媒を除去し、乾燥のために1回加熱する。
-これを冷却して、貯蔵するために送る。
-DTで蒸発した溶媒(水、エタノールおよびヘキサン)を凝縮させ、続いてデカンテーションにより分離して、水性画分をエタノール蒸留に送り、ヘキサン含有有機画分をヘキサン蒸留に送る。
【図面の簡単な説明】
【0032】
本特許発明は、概略的に表されている添付の図面からよりよく理解されるであろう。
図1】高可溶性タンパク質含有量でSPC大豆粕を製造するプロセスのブロック図。
図2】高可溶性タンパク質含有量でSPC大豆粕を製造するプロセスの選択肢のブロック図。
図3】このプロセスで使用される抽出器の概略図。
図4】このプロセスで使用される脱溶媒器/トースター(DT)の概略斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0033】
図1によれば、可溶性タンパク質含有量が高いSPC大豆粕の製造方法は、以下の工程を含む。
1.大豆の調製
-この工程では、大豆を乾燥、貯蔵、予備洗浄、大豆粉砕、皮の除去、調整(conditioning)、積層(lamination)、エキスパンダーでの処理(最終質量膨張生成物)、および冷却という従来のプロセスに付す。
2.エタノールによる抽出
-前工程で得られた質量体を、抽出器1と呼ぶ連続抽出器(図3参照)に導き、大気圧で操作し、50℃~80℃に予め予熱しておいた65~85重量%のエタノール水溶液を用いて向流抽出に供する。
-この抽出から得られた、水15~25%、エタノール60~80%、糖および他の可溶性物質8~12%を含む溶液を、固形物のデカンテーションに送る。
3.固形物のデカンテーション
-大豆加工産業で使用される従来のデカンター内で、膨張質量体からガム、顔料および微粉を含む固体残留物を分離する。
-デカンテーション後の液体を、糖および他の可溶性成分を除去するために蒸留塔に送る。
4.エタノールの蒸留
-固形分をデカンテーションした後、砂糖およびアルコール産業で使用される従来の「B」カラムで蒸留を行い、65~85重量%の濃度を有するエタノール水溶液を、その上部にて回収し、その底部生成物として糖および他の可溶性物質を含有する水性画分を回収する。
-65~85重量%のエタノール濃度を有する留出物を抽出器1に戻し、エタノールの損失を置き換えることによってこの流れ(flow)を調節する。
5.ヘキサンによる抽出
-可溶性糖を含まない膨張質量体を、抽出器2と呼ぶ第2の連続抽出器に送り、そこでヘキサンによる抽出に供する。
-抽出器2は、水柱の-25~25mmの真空で動作するものであり、ヘキサンは供給前に50~60℃で予熱しておく。
-ヘキサン、油、水、エタノールおよび糖を含む溶液を集めて、水相および有機相の分離のためにデカンテーションに付す。
6.水相および有機相のデカンテーション
-デカンテーションを、大豆加工産業で通常使用される通常のデカンターで行い、密度の差によって、より重い水性画分からより軽い有機画分を上清として分離する。
-60~85%のヘキサンおよび15~40%の油を含む有機相を蒸留に送り、ヘキサンから油を除去する。
-抽出器1に戻った水溶液を回収することによって、エタノール、水および溶解している糖を含有する水相をエタノールの蒸留に送る。
7.ヘキサンの蒸留:
-蒸留は、大豆加工産業の従来の蒸留所で真空によって行われ、軽質留分としてヘキサンを分離し、これを抽出器2に戻し、油分を重い画分として貯蔵に送る。
-蒸留においては、投入した大豆の約20%を脱ガム油として分離する。
-回収されたヘキサンを、その損失を置換するように調節する。
8.脱溶媒和
-抽出後の膨張質量体を、DT(脱溶媒器およびトースター)(図4参照)において脱溶媒和に供し、質量体に存在するすべてのヘキサンおよびエタノールを水蒸気による間接的かつ直接的加熱によって除去する。
-この操作の後、質量体はSPC大豆粕となり、装置出口で85~100℃の温度に達する。
9.溶媒の凝縮
-DTからの蒸気を、船体型凝縮器および管内で冷却水で冷却して凝縮させる。-この凝縮液も水相および有機相のデカンテーションに送る。
10.乾燥および冷却
-SPC大豆粕を、乾燥機/冷却器で乾燥させた後、冷却する。
-乾燥は、120~180℃の温度の熱風で行う。
-室温の空気を通過させることにより冷却を行い、30~45℃の温度のSPC大豆粕を得る。
【0034】
図2によれば、任意に、質量体を抽出器1を通過させた後、質量体中に存在する水分含量を減少させるため、中間抽出器において90~92重量%の濃度のエタノール水溶液で質量体を抽出にかけてもよい。
-得られたエタノール溶液を別の蒸留塔に送って水および糖類を除去し、その濃度を中間抽出器に戻すために調整する。
-あるいは、横方向抜取りを含む単一の蒸留塔を用いてこの2つの分離を行ってもよい。
-この中間抽出器を、抽出器1の一部を使用して構成しても、独立装置としてもよい。
【0035】
さらに図2によれば、この質量体を任意に、連続プレスに通して、エタノール水溶液の量を減少させることもできる。分離された溶液は、デカンテーションの後、エタノールの蒸留に送られる。
このプロセスによって得られる生成物
【0036】
上記のプロセスにより、以下の特徴を有するSPC粕が得られる。
-粗タンパク質含有量58~62%、および
-KOH内可溶性タンパク質含有量60~75%。
取得例
【0037】
本発明を取得する例を、本発明の範囲を限定することなく、現実的な実現可能性を説明するために提示する。
【実施例
【0038】
高可溶性タンパク質含有量を有するSPC大豆粕の製造プロセスは以下の工程を含んでいた。
1.大豆の調製
-この工程では、大豆を乾燥、貯蔵、予備洗浄、穀粒粉砕、皮の除去、調整、積層、エキスパンダーでの処理(最終質量膨張生成物)および冷却の従来のプロセスに付した。
2.エタノールによる抽出
-前工程で得られた2024kg/時間の質量体を、抽出器1である、大気圧で作動する連続ベルト抽出器ブランドDeSmetに送り、60℃で予熱した73重量%エタノール水溶液で向流抽出に付す。
-水18%、エタノール72%、糖および他の可溶性物質10%を含んで得られた溶液を固形物のデカンテーションに送った。
3.固形物のデカンテーション
-大豆加工産業で使用される従来のデカンターにおいて、膨張質量体からガム、顔料および微粉を含む少量の固体残留物が分離された。
-デカントした液体を蒸留塔に連続的に送り、糖および他の可溶性成分を除去した。
4.エタノールによる蒸留
-固形分をデカントした後、従来の「B」カラムで糖を含有するエタノール水溶液を蒸留し、73重量%のエタノール水溶液を頂部で回収し、糖および他の可溶性物質を含む水性画分を底部で回収した。
-73重量%のエタノール濃度を有する留出物を抽出器1に戻し、エタノール損失を置換することによって流れ(flow)を調整した。
5.ヘキサン抽出
-可溶性糖を含まない膨張した塊を、抽出器2と呼ぶ第2の円形連続抽出器Rotocellに送った。ここでこの質量体をヘキサンによる油抽出にかけた。
-抽出器2を4mm水柱真空で操作し、ヘキサンを抽出器2に送る前に55℃に予熱した。
-ヘキサン、エタノール、水、油および糖を含む溶液を回収し、水相および有機相の分離のためにデカンテーションに付した。
6.水相および有機相のデカンテーション
-デカンテーションを、大豆加工産業の従来の水平デカンターによって行い、密度差によってより重い水性画分からより軽い有機画分が上清として分離させた。
-1976kg/時間の全体でヘキサン80%および油20%の含有量を有する有機相を、ヘキサンからの油分離のために蒸留セクションに送った。
-エタノール、水および溶解した糖を含有する水相に、抽出器1に戻ったエタノール溶液を回収することによってエタノール蒸留を行った。
7.ヘキサンの蒸留
-蒸留を、大豆加工産業の従来の蒸留所で真空下にて行い、ヘキサンを軽質画分として分離し、これを抽出器2に戻し、重質画分として油を貯蔵に送った。
-上記蒸留では、従来の脱ガムプロセス(水和、遠心分離、乾燥)を使用せずに、414kg/時間の脱ガム油を生成した。
-回収されたヘキサンを、損失分を置換することによって調整した。
8.脱溶媒和
-抽出後の膨張質量体をDT(脱溶媒器およびトースター)で脱溶媒和し、質量体中に存在するすべてのヘキサンおよびエタノールを、合計1000kg/時間、水蒸気による間接的および直接的な加熱によって除去した。この粕は装置出口で95℃の温度に達した。
9.凝結
-DTからの蒸気を、船体型凝縮器および水平管内で凝縮させ、水相および有機相のデカンテーションに送った。
10.乾燥および冷却
-上記粕を従来の乾燥機/冷却器で乾燥させた後、冷却した。
-乾燥は150℃の熱風で行った。
-冷却は、室温で空気を通して行い、出口で45℃の粕を得た。
得られた結果
【0039】
上記実施例により、以下の特徴を有するSPC大豆粕が得られた。
-粗タンパク質含有量58.3%、および
-KOH内可溶性タンパク質含有量60.9%。
比較分析
【0040】
以下は、上記実施例で得られた結果とブラジル市場で入手可能な2つの市販粕の値との間の比較分析であり、専門の外部実験室で行った。
【表1】
本発明により得られる利点
【0041】
本発明の方法により、以下の驚くべき利点が得られた。
-60~75%の可溶性タンパク質を含有するSPC大豆粕SPCの製造。この含有量は国内市場および国際市場で現在入手可能な市販品よりもはるかに高い。
-2つのユニットを1つのプラントに統合し、SPC大豆粕生成プロセスを合理化し、設備投資(CAPEX)を削減する。
-タンパク質を著しく劣化させる、粕を加熱する二重の生成プロセスの排除することにより、より良い品質のSPC大豆粕を得ることできる。
-エタノール溶液での最初の抽出でレシチン、ペプチドおよびガムを除去することにより脱ガム化された大豆油を得られるため、脱ガムセクターを廃止することができる。
-以下の要因による生成コストの削減:
-電力消費量の低減
-熱エネルギー消費量の低減
-直接労働利用の低減(1ユニットのみ)
-設備投資(CAPEX)の大幅な削減
【0042】
本発明の範囲は、この例に限定されるべきではなく、むしろ、特許請求の範囲およびその等価物で定義される用語に限定されるべきである。
図1
図2
図3
図4