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▶ ルネサスエレクトロニクス株式会社の特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-20
(45)【発行日】2022-09-29
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 29/78 20060101AFI20220921BHJP
   H01L 21/336 20060101ALI20220921BHJP
   H01L 21/8234 20060101ALI20220921BHJP
   H01L 27/088 20060101ALI20220921BHJP
   H01L 21/822 20060101ALI20220921BHJP
   H01L 27/04 20060101ALI20220921BHJP
【FI】
H01L29/78 656A
H01L29/78 653A
H01L29/78 652H
H01L29/78 658A
H01L29/78 658G
H01L27/088 E
H01L27/04 H
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018197503
(22)【出願日】2018-10-19
(65)【公開番号】P2020065021
(43)【公開日】2020-04-23
【審査請求日】2021-03-08
(73)【特許権者】
【識別番号】302062931
【氏名又は名称】ルネサスエレクトロニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】守屋 太郎
(72)【発明者】
【氏名】柳川 洋
(72)【発明者】
【氏名】森 和久
【審査官】岩本 勉
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-139439(JP,A)
【文献】特開2005-019558(JP,A)
【文献】特開2013-084905(JP,A)
【文献】特開2016-207716(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0308529(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第106057805(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0262677(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第1574397(CN,A)
【文献】特開2017-103400(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0162662(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0203356(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第103828058(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 29/78
H01L 21/336
H01L 21/8234
H01L 21/822
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1導電型の半導体基板と、
前記半導体基板の表面に接するように形成された第1導電型の半導体層と、
前記半導体層に、互いに距離を隔ててそれぞれ規定された第1領域および第2領域と、
前記第1領域に形成され、前記半導体基板に電気的に接続される第1スイッチング素子と、
前記第2領域に形成され、前記第1スイッチング素子と直列に接続されるとともに、前記半導体基板に電気的に接続される第2スイッチング素子と
を有し、
前記第1スイッチング素子は、
前記半導体層に形成された第1トレンチ内に第1絶縁膜を介在させて、前記半導体層の表面から第1深さにわたり位置する第1トレンチゲート電極と、
前記半導体層における、前記第1トレンチゲート電極の底よりも浅い領域に、前記第1絶縁膜に接する態様で形成された第2導電型の第1不純物領域第1部と、
前記半導体層における、前記第1不純物領域第1部よりも浅い領域に、前記第1不純物領域第1部に接するとともに前記第1絶縁膜に接する態様で形成された第1導電型の第2不純物領域第1部と、
前記第1不純物領域第1部に接する態様で前記第1不純物領域第1部から前記第1深さよりも深い位置にわたり形成された第2導電型の柱状体と
を備え、
前記第2スイッチング素子は、
前記半導体層に形成された第2トレンチ内に第2絶縁膜を介在させて、前記半導体層の表面から第2深さにわたり位置する第2トレンチゲート電極と、
前記半導体層における、前記第2トレンチゲート電極の底よりも浅い領域に、前記第2絶縁膜に接する態様で形成された第2導電型の第1不純物領域第2部と、
前記半導体層における、前記第1不純物領域第2部よりも浅い領域に、前記第1不純物領域第2部に接するとともに前記第2絶縁膜に接する態様で形成された第1導電型の第2不純物領域第2部と
を備え、
前記第1深さは前記第2深さよりも浅い、半導体装置。
【請求項2】
前記第1トレンチゲート電極は第1幅を有して延在し、
前記第2トレンチゲート電極は第2幅を有して延在し、
前記第1幅は前記第2幅よりも狭い、請求項1記載の半導体装置。
【請求項3】
前記第1トレンチゲート電極と前記第2トレンチゲート電極とを繋ぐトレンチゲート配線を備えた、請求項1記載の半導体装置。
【請求項4】
前記柱状体は、前記第1不純物領域第1部から前記第2深さよりも深い位置にわたり形成された、請求項1記載の半導体装置。
【請求項5】
前記第1領域は前記第2領域よりも広い、請求項1記載の半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置に関し、たとえば、パワーMOS半導体素子を備えた車載用の半導体装置に好適に利用できるものである。
【背景技術】
【0002】
たとえば、車のメンテナンス等を行った際に、バッテリー等の電源の正極と負極とが、本来の極性とは逆の極に接続(逆接続)されることが想定される。電源が逆接続された場合に負荷等を保護することを目的として、パワーMOS(Metal Oxide Semiconductor)トランジスタを備えた半導体装置が適用されている。この種の半導体装置として、たとえば、特許文献1では、同じ特性を有する直列に接続された2つのパワーMOSトランジスタを備えた半導体装置が提案されている。
【0003】
ところが、同じ特性を有する2つのパワーMOSトランジスタを直列に接続させた場合には、半導体装置のオン抵抗は、1個のパワーMOSトランジスタのオン抵抗の約2倍程度の抵抗値になってしまう。このため、半導体装置のオン抵抗を低減するために、特許文献2には、特性等が異なる2つのパワーMOSトランジスタを直列に接続させた半導体装置が提案されている。
【0004】
2つのパワーMOSトランジスタのうち、一方のパワーMOSトランジスタでは、電源が逆接続された場合の保護のために、耐圧として電源の最大定格程度が確保されるように設計されている。2つのパワーMOSトランジスタのうち、他方のパワーMOSトランジスタでは、電源が適切に接続された場合のオン抵抗の低減のために、コラムを備えたスーパージャンクション構造が採用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2002-368219号公報
【文献】特開2016-207716号公報
【文献】特開2005-19558号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
半導体装置では、オフ状態において、たとえば、逆起電力またはサージ電流等によって、耐圧を超える電圧が印加されると、ブレークダウンが発生することがある。ブレークダウンが発生すると、スーパージャンクション構造を備えたパワーMOSトランジスタでは、ドレイン側からソース側へ電流が流れることになる。
【0007】
このとき、トレンチゲート電極およびコラムの配置構造によっては、電流がドレインからトレンチゲート側を経てソース側へ流れる場合がある。電流がトレンチゲート側を流れると、ゲート容量が変動してしまい、パワーMOSトランジスタの特性が変動することがあった。
【0008】
その他の課題と新規な特徴は、本明細書の記述および添付の図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0009】
一実施の形態に係る半導体装置は、半導体基板と、半導体層と、第1領域および第2領域と、第1スイッチング素子と、第2スイッチング素子とを有している。第1スイッチング素子は、半導体層の表面から第1深さにわたり位置する第1トレンチゲート電極と、第1不純物領域第1部と、第2不純物領域第1部と、柱状体とを備えている。第2スイッチング素子は、半導体層の表面から第2深さにわたり位置する第2トレンチゲート電極と、第1不純物領域第2部と、第2不純物領域第2部とを備えている。第1深さは第2深さよりも浅い。
【発明の効果】
【0011】
一実施の形態に係る半導体装置によれば、ブレークダウンが発生した際に、第1スイッチング素子が特性変動を起こすのを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】各実施の形態に係る半導体装置を適用した回路図である。
図2】実施の形態1に係る半導体装置の平面パターンの一例を示す平面図である。
図3】同実施の形態において、図2に示す点線枠FR内の平面構造を示す部分拡大平面図である。
図4】同実施の形態において、図2に示す点線枠RR内の平面構造を示す部分拡大平面図である。
図5】同実施の形態において、図2に示す断面線V-Vにおける部分断面図である。
図6】同実施の形態において、半導体装置の製造方法の一工程を示す部分断面図である。
図7】同実施の形態において、図6に示す工程の後に行われる工程を示す部分断面図である。
図8】同実施の形態において、図7に示す工程の後に行われる工程を示す部分断面図である。
図9】同実施の形態において、図8に示す工程の後に行われる工程を示す部分断面図である。
図10】同実施の形態において、図9に示す工程の後に行われる工程を示す部分断面図である。
図11】同実施の形態において、図10に示す工程の後に行われる工程を示す部分断面図である。
図12】同実施の形態において、図11に示す工程の後に行われる工程を示す部分断面図である。
図13】同実施の形態において、図12に示す工程の後に行われる工程を示す部分断面図である。
図14】同実施の形態において、図13に示す工程の後に行われる工程を示す部分断面図である。
図15】同実施の形態において、図14に示す工程の後に行われる工程を示す部分断面図である。
図16】同実施の形態において、図15に示す工程の後に行われる工程を示す部分断面図である。
図17】同実施の形態において、電源が適切に接続されている場合の半導体装置の動作を説明するための回路図である。
図18】同実施の形態において、電源が逆接続されている場合の半導体装置の動作を説明するための回路図である。
図19】比較例に係る半導体装置を説明するための部分断面図である。
図20】同実施の形態において、電源が適切に接続されている場合の半導体装置に、ブレークダウンが発生した場合の電流の流れを説明するための回路図である。
図21】同実施の形態において、半導体装置にブレークダウンが発生した場合の特性変動の有無をシミュレーションによって評価した結果を示す図である。
図22】同実施の形態において、マイクロローディング効果を説明するためのトレンチの深さとトレンチの幅との関係を示すグラフである。
図23】実施の形態2に係る半導体装置の平面構造を示す部分拡大平面図である。
図24】同実施の形態において、図23に示す断面線XXIV-XXIVにおける部分断面図である。
図25】実施の形態3に係る半導体装置の部分断面図である。
図26】同実施の形態において、半導体装置の製造方法の一工程を示す部分断面図である。
図27】同実施の形態において、図26に示す工程の後に行われる工程を示す部分断面図である。
図28】同実施の形態において、図27に示す工程の後に行われる工程を示す部分断面図である。
図29】同実施の形態において、図28に示す工程の後に行われる工程を示す部分断面図である。
図30】同実施の形態において、図29に示す工程の後に行われる工程を示す部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
はじめに、各実施の形態に係る半導体装置が、スイッチとして適用される回路について説明する。図1に示すように、バッテリー等の電源BAと負荷LADとの間に、半導体装置SDVが電気的に接続されている。半導体装置SDVでは、第1パワーMOSトランジスタQ1(第1スイッチング素子)と第2パワーMOSトランジスタQ2(第2スイッチング素子)とが、共通のドレインD12を介して電気的に直列に接続されている。
【0015】
電源BAが適切に接続されている状態では、電源BAの正極が、第2パワーMOSトランジスタQ2のソースS2に電気的に接続され、電源BAの負極が、負荷LADを介して第1パワーMOSトランジスタQ1のソースS1に電気的に接続されている。
【0016】
第1パワーMOSトランジスタQ1は、電源BAが適切に接続されている場合に、負荷LADへ電力を供給する通常の動作(オン動作とオフ動作)を行うパワーMOSトランジスタである。第1パワーMOSトランジスタQ1では、逆起電力またはサージ電流等による電圧を考慮した耐圧が確保されている。一方、第2パワーMOSトランジスタQ2は、電源BAが逆接続された場合に、電流の逆流を阻止するためのパワーMOSトランジスタである。以下、半導体装置の構造について、具体的に説明する。
【0017】
実施の形態1
実施の形態1に係る半導体装置の一例について説明する。図2に示すように、半導体装置SDVでは、第1パワーMOSトランジスタQ1と第2パワーMOSトランジスタQ2とは、同一の半導体基板SUBに形成されている。第1パワーMOSトランジスタQ1は、第1素子領域FCMに形成されている。第2パワーMOSトランジスタQ2は、第2素子領域RCMに形成されている。半導体基板SUBは、共通のドレインDN(図5参照)となる。
【0018】
第1素子領域FCMを周囲から取り囲み、電流のリークを阻止する第1外周部構造TS1(図5参照)が形成されている。第2素子領域RCMを周囲から取り囲み、電流のリークを阻止する第2外周部構造TS2(図5参照)が形成されている。半導体基板SUBは、たとえば、リードフレーム(図示せず)に搭載されている。
【0019】
第1素子領域FCMの表面には、第1ゲート電極GE1と第1ソース電極SE1とが配置されている。図2および図3に示すように、第1ゲート電極GE1は、ゲートコンタクトGCT1を介して、第1パワーMOSトランジスタQ1のゲートとしての第1トレンチゲート電極TGE1に電気的に接続されている。第1ソース電極SE1は、ソースコンタクトSCT1を介して、第1パワーMOSトランジスタQ1のソースに電気的に接続されている。また、第1素子領域FCMでは、互いに間隔を隔てて、P型のコラムCLMが形成されている。
【0020】
第2素子領域RCMの表面には、第2ゲート電極GE2と第2ソース電極SE2とが配置されている。図2および図4に示すように、第2ゲート電極GE2は、ゲートコンタクトGCT2を介して、第2パワーMOSトランジスタQ2のゲートとしての第2トレンチゲート電極TGE2に電気的に接続されている。第2ソース電極SE2は、ソースコンタクトSCT2を介して、第2パワーMOSトランジスタQ2のソースに電気的に接続されている。
【0021】
次に、半導体装置SDVの断面構造について説明する。図5に示すように、N+型の半導体基板SUBの表面上に、N-型のエピタキシャル層NEL(半導体層)が形成されている。N+型の半導体基板SUBは、第1パワーMOSトランジスタQ1と第2パワーMOSトランジスタQ2との共通のドレインDNとなる。エピタキシャル層NELには、互いに距離を隔てて第1素子領域FCMと第2素子領域RCMとが規定されている。第1素子領域FCMと第2素子領域RCMとの間には、第1外周部構造TS1と第2外周部構造TS2が位置する。
【0022】
第1素子領域FCMでは、エピタキシャル層NELの表面から所定の深さにわたって第1トレンチTRC1が形成されている。その第1トレンチTRC1内に、第1ゲート絶縁膜GIF1(第1絶縁膜)を介在させて第1トレンチゲート電極TGE1が形成されている。図3に示すように、第1トレンチゲート電極TGE1は、一方向に延在するともに、一方向と交差する他の方向に互いに間隔を隔てて形成されている。
【0023】
エピタキシャル層NELにおける、第1トレンチゲート電極TGE1の底よりも浅い領域には、第1ゲート絶縁膜GIF1に接する態様で、チャネルとなるP-型のP-型領域PMが形成されている。エピタキシャル層NELにおける、P-型領域PMよりも浅い領域には、ソースとしてのN+型のN+型領域SNと、P+型領域PPとがそれぞれ形成されている。N+型領域SNは、P-型領域PMと第1ゲート絶縁膜GIF1とに接する態様で形成されている。P+型領域PPは、P-型領域PMとN+型領域SNとに接する態様で形成されている。
【0024】
エピタキシャル層NELにおける、P-型領域PMよりも深い領域には、P-型領域PMに接する態様で、第1トレンチゲート電極TGE1の底よりも深い位置にわたりP型のコラムCLMが形成されている。図3に示すように、コラムCLMは、第1トレンチゲート電極TGE1が延在する方向に沿って、互いに間隔を隔てて配置されている。また、コラムCLMは、第1トレンチゲート電極TGE1とは、第1トレンチゲート電極TGE1が延在する方向と交差する他の方向に距離を隔てて配置されている。
【0025】
第2素子領域RCMでは、エピタキシャル層NELの表面から所定の深さにわたって第2トレンチTRC2が形成されている。その第2トレンチTRC2内に、第2ゲート絶縁膜GIF2(第2絶縁膜)を介在させて第2トレンチゲート電極TGE2が形成されている。図3に示すように、第2トレンチゲート電極TGE2は、一方向に延在するともに、一方向と交差する他の方向に互いに間隔を隔てて形成されている。
【0026】
エピタキシャル層NELにおける、第2トレンチゲート電極TGE2の底よりも浅い領域には、第2ゲート絶縁膜GIF2に接する態様で、チャネルとなるP-型のP-型領域PMが形成されている。エピタキシャル層NELにおける、P-型領域PMよりも浅い領域には、ソースとしてのN+型のN+型領域SNと、P+型領域PPとがそれぞれ形成されている。N+型領域SNは、P-型領域PMと第2ゲート絶縁膜GIF2とに接する態様で形成されている。P+型領域PPは、P-型領域PMとN+型領域SNとに接する態様で形成されている。
【0027】
上述した半導体装置SDVでは、第1パワーMOSトランジスタQ1の第1トレンチゲート電極TGE1は、エピタキシャル層NELの表面から所定の深さGDP1(第1深さ)にわたり位置する。第2パワーMOSトランジスタQ2の第2トレンチゲート電極TGE2は、エピタキシャル層NELの表面から所定の深さGDP2(第2深さ)にわたり位置する。深さGDP1は、深さGDP2よりも浅い。第1トレンチゲート電極TGE1が延在する方向と交差する方向の長さ(幅GW1)は、第2トレンチゲート電極TGE2が延在する方向と交差する方向の長さ(幅GW2)よりも狭い。
【0028】
次に、上述した半導体装置の製造方法の一例について説明する。まず、ドレイン領域となるN+型の半導体基板SUBが用意される(図6参照)。次に、図6に示すように、半導体基板SUBの表面に、エピタキシャル成長法によって、N-型のエピタキシャル層NELが形成される。次に、エピタキシャル層NELを覆うように、ハードマスクとなるシリコン酸化膜HM1が形成される。
【0029】
次に、所定の写真製版処理を行うことにより、フォトレジストパターンPR1が形成される。フォトレジストパターンPR1には、第1トレンチに対応する開口部NKと第2トレンチに対応する開口部WKとが形成されている。開口部NKの開口幅は幅WR1であり、開口部WKの開口幅は幅WR2である。幅WR1は幅WR2よりも狭い。
【0030】
次に、フォトレジストパターンPR1をエッチングマスクとして、シリコン酸化膜HM1に異方性エッチング処理を行うことにより、第1素子領域FCMには、開口部NPが形成される。第2素子領域RCMには、開口部WPが形成される。その後、フォトレジストパターンPR1が除去される。
【0031】
こうして、図7に示すように、第1トレンチと第2トレンチとを形成する際のハードマスクとなるシリコン酸化膜HM1のパターンが形成される。第1素子領域FCMに位置するシリコン酸化膜HM1の部分には、第1トレンチを形成するための開口部NPが形成される。第2素子領域RCMに位置するシリコン酸化膜HM1の部分は、第2トレンチ形成するための開口部WPが形成される。開口部NPの開口幅は幅WM1であり、開口部WPの開口幅は幅WM2である。幅WM1は幅WM2よりも狭い。
【0032】
次に、図8に示すように、シリコン酸化膜HM1をエッチングマスクとして、エピタキシャル層NELにエッチング処理を行うことによって、第1素子領域FCMには、第1トレンチTRC1が形成され、第2素子領域RCMには、第2トレンチTRC2が形成される。
【0033】
ここで、第1トレンチを形成するための開口部NPの幅WM1は、第2トレンチを形成するための開口部WPの幅WM2よりも狭い。このため、マイクロローディング効果により、第1トレンチを形成する際のエピタキシャル層NELのエッチンググレートは、第2トレンチを形成する際のエピタキシャル層NELのエッチンググレートよりも低くなる。なお、マイクロローディング効果は、たとえば、特許文献3において報告されている。
【0034】
これにより、第1トレンチTRC1の深さD1は、第2トレンチTRC2の深さD2よりも浅くなる。また、第1トレンチTRC1の幅W1は、第2トレンチTRC2の幅W2よりも狭い。その後、シリコン酸化膜HM1が除去される。
【0035】
次に、半導体基板SUB(エピタキシャル層NEL)を覆うように、注入マスクとなるシリコン酸化膜IM(図9参照)が形成される。次に、所定の写真製版処理を行うことにより、フォトレジストパターン(図示せず)が形成される。フォトレジストパターンには、コラムに対応する開口部が形成されている。次に、そのフォトレジストパターンをエッチングマスクとしてシリコン酸化膜IM(図9参照)にエッチング処理が行われる。シリコン酸化膜IMには、開口部CKが形成されている。その後、そのフォトレジストパターンが除去される。
【0036】
次に、図9に示すように、開口部CKが形成されたシリコン酸化膜IMを注入マスクとして、P型の不純物を注入することによって、第1素子領域FCMにP型のコラムCLMが形成される。その後、シリコン酸化膜IMが除去される。
【0037】
次に、たとえば、熱酸化処理を行うことよって、第1トレンチTRC1の内壁面および第2トレンチTRC2の内壁面を含むエピタキシャル層NELの表面に、ゲート絶縁膜となるシリコン酸化膜(図示せず)が形成される。次に、第1トレンチTRC1および第2トレンチTRC2を埋め込む態様で、シリコン酸化膜を覆うように、たとえば、トレンチゲート電極となるポリシリコン膜(図示せず)が形成される。
【0038】
次に、ポリシリコン膜およびシリコン酸化膜にエッチバック処理が行われる。これにより、図10に示すように、第1トレンチTRC1および第2トレンチTRC2のそれぞれの内部に位置するポリシリコン膜およびシリコン酸化膜の部分を残して、エピタキシャル層NELの上面上に位置するポリシリコン膜およびシリコン酸化膜のそれぞれの部分が除去される。
【0039】
こうして、第1素子領域FCMでは、第1トレンチTRC1の内壁面上に、第1ゲート絶縁膜GIF1を介在させて第1トレンチゲート電極TGE1が形成される。第2素子領域RCMでは、第2トレンチTRC2の内壁面上に、第2ゲート絶縁膜GIF2を介在させて第2トレンチゲート電極TGE2が形成される。
【0040】
次に、所定の写真製版処理を行うことによって、P-型領域を形成するためのフォトレジストパターン(図示せず)が形成される。次に、そのフォトレジストパターンを注入マスクとして、P型の不純物を注入することによって、P-型領域PMが形成される(図11参照)。その後、フォトレジストパターンが除去される。
【0041】
これにより、図11に示すように、P-型領域PMは、エピタキシャル層NELの表面から所定の深さにわたり形成される。第1素子領域FCMでは、P-型領域PMは、エピタキシャル層NELの表面からコラムCLMに接触する位置にまで形成される。P-型領域PMの底は、第1トレンチゲート電極TGE1の底よりも浅い位置にある。第2素子領域RCMでは、P-型領域PMの底は、第2トレンチゲート電極TGE2の底よりも浅い位置にある。
【0042】
次に、所定の写真製版処理を行うことによって、N+型領域を形成するためのフォトレジストパターン(図示せず)が形成される。次に、そのフォトレジストパターンを注入マスクとして、N型の不純物を注入することによって、N+型領域SNが形成される(図12参照)。その後、フォトレジストパターンが除去される。
【0043】
これにより、図12に示すように、N+型領域SNは、エピタキシャル層NEL(P-型領域PM)の表面からP-型領域PMの底よりも浅い位置にわたり形成される。第1素子領域FCMでは、N+型領域SNは、第1ゲート絶縁膜GIF1に接触するとともにP-型領域PMに接触する。第2素子領域RCMでは、N+型領域SNは、第2ゲート絶縁膜GIF2に接触するとともにP-型領域PMに接触する。
【0044】
次に、所定の写真製版処理を行うことによって、P+型領域を形成するためのフォトレジストパターン(図示せず)が形成される。次に、そのフォトレジストパターンを注入マスクとして、P型の不純物を注入することによって、P+型領域PPが形成される。その後、フォトレジストパターンが除去される。
【0045】
これにより、図13に示すように、P+型領域PPは、エピタキシャル層NEL(P-型領域PM)の表面からP-型領域PMの底よりも浅い位置にわたり形成される。第1素子領域FCMおよび第2素子領域RCMのそれぞれでは、P+型領域PPは、N+型領域SNに接触するとともに、P-型領域PMに接触する。
【0046】
次に、第1トレンチゲート電極TGE1および第2トレンチゲート電極TGE2等を覆うように、層間絶縁膜ILFが形成される。次に、所定の写真製版処理を行うことによって、コンタクトプラグを形成するためのフォトレジストパターン(図示せず)が形成される。次に、そのフォトレジストパターンをエッチングマスクとして、第1素子領域FCMと第2素子領域RCMのそれぞれにコンタクトホールPK(図14参照)が形成される。コンタクトホールPKの底には、N+型領域SNとP+型領域PPとが露出する。
【0047】
次に、コンタクトホールPKを埋め込む態様で、層間絶縁膜ILFを覆うように導電性膜(図示せず)が形成される。次に、その導電性膜に、たとえば、化学的機械研磨処理またはエッチバク処理を行うことによって、コンタクトホールPK内に位置するに導電性膜の部分を残して、層間絶縁膜ILFの上面上に位置する導電性膜の部分が除去される。
【0048】
これにより、図14に示すように、第1素子領域FCMでは、コンタクトホールPK内に、コンタクトプラグSCP1が形成される。コンタクトプラグSCP1は、N+型領域SNとP+型領域PPとに接触する。第2素子領域RCMでは、コンタクトホールPK内に、コンタクトプラグSCP2が形成される。コンタクトプラグSCP2は、N+型領域SNとP+型領域PPとに接触する。
【0049】
次に、たとえば、スパッタ法によって、層間絶縁膜ILF等を覆うようにアルミニウム膜(図示せず)が形成される。次に、所定の写真製版処理を行うことによって、フォトレジストパターン(図示せず)が形成される。次に、そのフォトレジストパターンをエッチングマスクとして、アルミニウム膜にエッチング処理が行われる。その後、フォトレジストパターンが除去される。
【0050】
これにより、図15示すように、第1素子領域FCMでは、第1ソース電極SE1と第1ゲート電極GE1(図3参照)が形成される。図15および図3に示すように、第1ソース電極SE1は、コンタクトプラグSCP1(ソースコンタクトSCT1)を介して、N+型領域SNとP+型領域PPとにそれぞれ電気的に接続される。第1ゲート電極GE1は、ゲートコンタクトGCT1を介して、第1トレンチゲート電極TGE1に電気的に接続される。
【0051】
第2素子領域RCMでは、第2ソース電極SE2と第2ゲート電極GE2(図4参照)が形成される。図15および図4に示すように、第2ソース電極SE2は、コンタクトプラグSCP2(ソースコンタクトSCT2)を介して、N+型領域SNとP+型領域PPとにそれぞれ電気的に接続される。第2ゲート電極GE2は、ゲートコンタクトGCT2を介して、第2トレンチゲート電極TGE2に電気的に接続される。
【0052】
次に、第1ソース電極SE1、第1ゲート電極GE1、第2ソース電極SE2および第2ゲート電極GE2等を覆うように、カバー膜となるポリイミド膜(図示せず)が形成される。次に、所定の写真製版処理を行うことによりフォトレジストパターン(図示せず)が形成される。次に、そのフォトレジストパターンをエッチングマスクとして、ポリイミド膜にエッチング処理が行われる。その後、フォトレジストパターンが除去される。
【0053】
これにより、図16に示すように、カバー膜CVFが形成される。カバー膜CVFには、第1ソース電極SE1、第1ゲート電極GE1、第2ソース電極SE2および第2ゲート電極GEのそれぞれを露出する電極開口部(図示せず)が形成されている。
【0054】
その後、半導体基板SUB(ウェハ)をダイシングすることによって、図2に示すように、第1パワーMOSトランジスタQ1と第2パワーMOSトランジスタQ2とが形成された半導体装置(半導体基板SUB)が一つのチップとして取り出される。取り出された半導体基板SUBは、リードフレーム(図示せず)に搭載する工程等を経て、半導体装置として完成する。
【0055】
次に、上述した半導体装置の動作について説明する。まず、電源BAが適切に接続されている場合(図1参照)について説明する。この場合、第1パワーMOSトランジスタQ1のゲートG1と第2パワーMOSトランジスタQ2のゲートG2とのそれぞれに、しきい値電圧以上の電圧を印加することによって、第1パワーMOSトランジスタQ1および第2パワーMOSトランジスタQ2がオン状態になる。これにより、電源BAから、電流が、第2パワーMOSトランジスタQ2を経て第1パワーMOSトランジスタQ1を流れて、負荷LADに電力が供給されることになる。
【0056】
次に、ゲートG1をソースS1に電気的に短絡させることによって、第1パワーMOSトランジスタQ1がオフ状態になる。ここで、図17に示すように、第2パワーMOSトランジスタQ2の状態によらず、寄生ダイオードPDD2を電流が流れて、共通のドレインD12の電位が上昇する。このとき、第1パワーMOSトランジスタQ1によって耐圧が保持されて、回路に電流が流れるのを阻止することができる。
【0057】
次に、電源BAが逆接続された場合について説明する。この場合、第2パワーMOSトランジスタQ2をオフ状態にする。ここで、図18に示すように、第1パワーMOSトランジスタQ1の状態によらず、寄生ダイオードPDD1を電流が流れて、共通のドレインD12の電位が上昇する。このとき、第2パワーMOSトランジスタQ2によって耐圧が保持されて、回路に電流が流れるのを阻止することができる。
【0058】
こうして、上述した半導体装置SDVでは、オフ状態において、電源BAが半導体装置SDVに対して適切に接続されている場合と、電源BAが半導体装置SDVに対して逆接続されている場合との双方について、回路に電流が流れるのを阻止することができる。
【0059】
さらに、上述した半導体装置SDVでは、電源BAが適切に接続されている場合のオフ状態において、第1パワーMOSトランジスタQ1がブレークダウンしたとしても、第1パワーMOSトランジスタQ1の特性の変動を抑制することができる。このことについて、比較例に係る半導体装置と比べて説明する。
【0060】
図19に示すように、比較例に係る半導体装置では、第1素子領域FCMに第1パワーMOSトランジスタQ1が配置され、第2素子領域RCMに第2パワーMOSトランジスタQ2が配置されている。
【0061】
第1素子領域FCMでは、エピタキシャル層NELの表面から所定の深さにわたって形成された第1トレンチCTR1内に、第1ゲート絶縁膜GIFを介在させて第1トレンチゲート電極CTG1が形成されている。P-型領域PMに接する態様で、P-型領域PMから半導体基板SUBに向かってP型のコラムCCLMが形成されている。第2素子領域RCMでは、エピタキシャル層NELの表面から所定の深さにわたって形成された第2トレンチCTR2内に、第2ゲート絶縁膜GIF2を介在させて第2トレンチゲート電極CTG2が形成されている。
【0062】
第1トレンチCTR1と第2トレンチCTR2とは、ほぼ同じ深さであり、第1トレンチゲート電極CTG1と第2トレンチゲート電極CTG2とは、エピタキシャル層NELの表面からほぼ同じ深さにわたり位置する。なお、実施の形態1に係る半導体装置と同一部材には同一符号を付し、必要である場合を除きその説明を繰り返さないこととする。
【0063】
図19に示すように、比較例に係る半導体装置では、第1パワーMOSトランジスタQ1がブレークダウンを起こした場合には、電流が、共通のドレインとしての半導体基板SUBから第1トレンチゲート電極CTG1の側方を流れることがある。第1パワーMOSトランジスタQ1のブレークダウンによって、第1トレンチゲート電極CTG1側へ電流が集中して流れると、ゲート容量が変動(増加)して、第1パワーMOSトランジスタQ1の特性が変動することになる。
【0064】
比較例に係る半導体装置に対して、上述した半導体装置SDVでは、第1トレンチゲート電極TGE1の底の位置は、第2トレンチゲート電極TGE2の底の位置よりも浅い位置にある。これにより、図20に示すように、第1パワーMOSトランジスタQ1がブレークダウンを起こしたとしても、電流は、半導体基板SUBからコラムCLM側を流れるようになる。その結果、電流が第1トレンチゲート電極CTG1側を流れる場合と比べると、ゲート容量の変動に伴う、第1パワーMOSトランジスタQ1の特性変動を抑制することができる。
【0065】
ブレークダウン時の電流が、第1トレンチゲート電極TGE1(CTG1)側を流れるか、コラムCLM(CCLM)側を流れるかは、第1トレンチゲート電極TGE1(CTG1)とコラムCLM(CCLM)との距離、第1トレンチゲート電極TGE1(CTG1)の深さ、コラムCLM(CCLM)の寸法(幅)に依存することが、今回、発明者らによって明らかにされた。
【0066】
発明者らの評価によれば、次のような知見が得られた。すなわち、第1トレンチゲート電極CTG1とコラムCLMとの距離が比較的短い場合に、電流はコラム側を流れやすくなることがわかった。また、第1トレンチゲート電極TGE1(第1トレンチTRC1)が比較的浅い場合に、電流はコラムCLM側を流れやすくなることがわかった。
【0067】
発明者らのシミュレーションによる評価について、詳しく説明する。図21に示すように、コラムCLMと第1トレンチゲート電極TGE1との距離(コラム-トレンチ距離CGD)として、基準となる距離(1.00)に基づいて、コラムCLMの幅(コラム寸法CLW)を段階的に広く設定(1.00~+80%)することによって、9条件(1.00~-80%)を設定した。
【0068】
また、コラム-トレンチ距離CGDのそれぞれの距離(1.00~-80%)に対して、第1トレンチゲート電極TGE1の深さGDP1として、基準となる深さに基づいて段階的に5条件(-20%~1~+20%)を設定した。
【0069】
図21では、ブレークダウン時に電流がコラム側に流れて、第1パワーMOSトランジスタQ1に特性変動が生じない場合が「○」で示されている。一方、電流がトレンチゲート電極側を流れて、第1パワーMOSトランジスタQ1に特性変動が生じるおそれがある場合が「NG」で示されている。
【0070】
図21に示すように、コラム-トレンチ距離CGDが短くなると、ブレークダウン時の電流が、コラムCLM側に流れやすくなることがわかる。また、第1トレンチゲート電極TGE1の深さGDP1(第1トレンチの深さ)が深くなるにしたがって、ブレークダウン時の電流が、コラムCLM側に流れやすくなることがわかる。
【0071】
たとえば、コラム-トレンチ距離CGDの距離が、基準値の-30%(コラム寸法+30%)の場合の5つの評価結果に注目する。この評価結果のうち、第1トレンチゲート電極TGE1の深さGDP1が基準値の場合では、電流が第1トレンチゲート電極TGE1側を流れて、第1パワーMOSトランジスタQ1に特性変動が生じるおそれがあることがわかる。一方、第1トレンチゲート電極TGE1の深さGDP1が基準値よりも10%浅くなると、電流はコラム側に流れて、第1パワーMOSトランジスタQ1には特性変動が生じないことがわかる。
【0072】
次に、たとえば、コラム-トレンチ距離CGDの距離が、基準値の-50%(コラム寸法+50%)の場合の5つの評価結果に注目する。この評価結果では、第1トレンチゲート電極TGE1の深さGDP1が基準値の+20%の場合も含めて、5つの条件のすべてについて、電流はコラム側に流れて、第1パワーMOSトランジスタQ1には特性変動が生じないことがわかった。ところが、コラム寸法CLW(幅)を基準値の+50%を超えて広くすると、所望のジャンクション耐圧を得ることが難しくなることが懸念される。
【0073】
次に、たとえば、第1トレンチゲート電極TGE1の深さGDP1が、基準値の-20%の場合の9つの評価結果に注目する。この評価結果では、コラム-トレンチ距離CGDの距離が、基準値の-20%以下(コラム寸法+20%以上)になると、電流はコラム側に流れて、第1パワーMOSトランジスタQ1には特性変動が生じないことがわかった。
【0074】
これらの評価結果から、発明者らは、ブレークダウン時の電流がコラムCLM側を流れるように設計しながら、所望のジャンクション耐圧に対するマージンも確保できることがわかった。
【0075】
また、上述した半導体装置SDVでは、深さの異なる第1トレンチTRC1と第2トレンチTRC2とが、エピタキシャル層NELに形成される。このとき、マイクロローディング効果によって、幅の狭い第1トレンチTRC1を形成する際のエピタキシャル層NELのエッチングレートが、幅の広い第2トレンチTRC2を形成する際のエピタキシャル層NELのエッチングレートよりも低くなる。これにより、深さの異なる第1トレンチTRC1と第2トレンチTRC2とを、1回のエッチング工程によって、エピタキシャル層NELに形成することができる。
【0076】
ここで、発明者らが、同じエッチング条件のもとで行った、トレンチ深さとトレンチ幅との関係を、図22にグラフとして示す。グラフの横軸はトレンチ幅であり、グラフの縦軸はトレンチ深さを示す。グラフは、トレンチ深さのトレンチ幅の依存性を示す。図22に示すように、トレンチの幅が狭くなるにしたがって、エッチングレートが下がり、トレンチ深さが浅くなることがわかる。
【0077】
上述した半導体装置の製造方法では、マイクロローディング効果を利用して、深さの異なる第1トレンチTRC1と第2トレンチTRC2とを、1回の写真製版処理と1回のエッチング処理とによって、エピタキシャル層NELに同時に形成することができる。その結果、生産コストの低減に寄与することができる。
【0078】
また、上述した半導体装置SDVでは、第1パワーMOSトランジスタQ1が配置されている第1素子領域FCMの面積は、第2パワーMOSトランジスタQ2が配置されている第2素子領域RCMの面積よりも広く設定されている。
【0079】
上述したように、第1パワーMOSトランジスタQ1の第1トレンチゲート電極TGE1の深さGDP1は、第2パワーMOSトランジスタQ2の第2トレンチゲート電極TGE2の深さGDP2よりも浅い。このため、第1パワーMOSトランジスタQ1のオン抵抗は、第2パワーMOSトランジスタQ2のオン抵抗よりも高くなる。また、オン抵抗は、パワーMOSトランジスタが形成されている領域の面積に依存し、その面積が大きい方がオン抵抗は低くなる。
【0080】
そこで、第1素子領域FCMの面積を第2素子領域RCMの面積よりも広く設定することで、第1パワーMOSトランジスタQ1の単位面積当たりのオン抵抗が、第2パワーMOSトランジスタQ2の単位面積当たりのオン抵抗に合わせられて、動作時のオン抵抗を下げるのに貢献することができる。
【0081】
実施の形態2
実施の形態1では、第1トレンチゲート電極TGE1が第1素子領域FCMに形成され、第2トレンチゲート電極TGE2が第2素子領域RCMに形成された場合について説明した(図2図5参照)。
【0082】
半導体装置SDVでは、第1トレンチゲート電極TGE1の電位と、第2トレンチゲート電極TGE2の電位とは同じ電位に設定される。ここでは、第1素子領域FCMと第2素子領域RCMとの間に、第1トレンチゲート電極TGE1と第2トレンチゲート電極TGE2とを電気的に接続するトレンチゲート配線が配置された半導体装置の一例について説明する。
【0083】
図23および図24に示すように、第1素子領域FCMと第2素子領域RCMとの間に、トレンチゲート配線TGEが形成されている。第1トレンチゲート電極TGE1と第2トレンチゲート電極TGE2とが、そのトレンチゲート配線TGEによって電気的に接続されている。また、第1トレンチゲート電極TGE1の底の位置は、第2トレンチゲート電極TGE2の底の位置よりも浅い位置にあり、第1トレンチゲート電極TGE1の深さGDP1は、第2トレンチゲート電極TGE2の深さGDP2よりも浅い。なお、図3図5に示す半導体装置SDVの構成と同一部材には同一符号を付し、必要である場合を除きその説明を繰り返さないこととする。
【0084】
次に、上述した半導体装置SDVの製造方法の一例について簡単に説明する。上述した半導体装置SDVでは、前述した図6図8に示す工程において、トレンチゲート配線TGEを形成するためのパターンが追加される。その後、前述した図9図16に示す工程と同様の工程を経て、半導体装置SDVが製造される。
【0085】
上述した半導体装置SDVでは、第1トレンチゲート電極TGE1の深さGDP1は、第2トレンチゲート電極TGE2の深さGDP2よりも浅い。これにより、第1パワーMOSトランジスタQ1がブレークダウンを起こしたとしても、前述した半導体装置SDVと同様に、電流は、半導体基板SUBからコラムCLM側を流れるようになる。その結果、ゲート容量の変動に伴う、第1パワーMOSトランジスタQ1の特性変動を抑制することができる。
【0086】
実施の形態3
実施の形態1では、深さの異なる第1トレンチTRC1と第2トレンチTRC2とを、1回の写真製版処理と1回のエッチング処理とによって、エピタキシャル層NELに同時に形成する場合について説明した。ここでは、深さの異なる第1トレンチTRC1と第2トレンチTRC2とを、個別に形成する場合について説明する。
【0087】
実施の形態3に係る半導体装置の断面構造は、実施の形態1に係る半導体装置の断面構造と実質的に同じである。図25に示すように、第1トレンチゲート電極TGE1の底の位置は、第2トレンチゲート電極TGE2の底の位置よりも浅い位置にあり、第1トレンチゲート電極TGE1の深さGDP1は、第2トレンチゲート電極TGE2の深さGDP2よりも浅い。図3図5に示す半導体装置SDVの構成と同一部材には同一符号を付し、必要である場合を除きその説明を繰り返さないこととする。
【0088】
次に、上述した半導体装置の製造方法の一例について説明する。まず、半導体基板SUBの表面に形成されたエピタキシャル層NELを覆うように、ハードマスクとなるシリコン酸化膜HM2が形成される(図26参照)。次に、図26に示すように、所定の写真製版処理とエッチング処理を行うことによって、第1素子領域FCMに位置するシリコン酸化膜HM2の部分に開口部NPが形成される。一方、第2素子領域RCMは、シリコン酸化膜HM2に覆われた状態にある。
【0089】
次に、図27に示すように、シリコン酸化膜HM2をエッチングマスクとして、エピタキシャル層NELにエッチング処理を行うことによって、第1素子領域FCMには、第1トレンチTRC1が形成される。エッチング時間を制御することで、幅W1を有する所定の深さD1の第1トレンチTRC1を形成することができる。その後、シリコン酸化膜HM2が除去される。
【0090】
次に、エピタキシャル層NELを覆うように、ハードマスクとなるシリコン酸化膜HM3が形成される(図28参照)。次に、図28に示すように、所定の写真製版処理とエッチング処理を行うことによって、第2素子領域RCMに位置するシリコン酸化膜HM3の部分に開口部WPが形成される。一方、第1素子領域FCMは、シリコン酸化膜HM3に覆われた状態にある。
【0091】
次に、図29に示すように、シリコン酸化膜HM3をエッチングマスクとして、エピタキシャル層NELにエッチング処理を行うことによって、第2素子領域RCMには、第2トレンチTRC2が形成される。エッチング時間を制御することで、幅W2を有する所定の深さD2の第2トレンチTRC2を形成することができる。第2トレンチTRC2の深さD2は、第1トレンチTRC1の深さD1よりも深い。なお、幅W2は、幅W1よりも広いが、必ずしもその必要はない。その後、シリコン酸化膜HM3が除去される。
【0092】
第1トレンチTRC1および第2トレンチTRC2が形成された後、図9図16に示す工程と同様の工程を経て、図30に示すように、カバー膜CVFが形成される。次に、半導体基板SUB(ウェハ)をダイシングすることによって、半導体装置(半導体基板SUB)が一つのチップとして取り出される。その後、取り出された半導体基板SUBは、リードフレーム(図示せず)に搭載する工程等を経て、半導体装置として完成する。
【0093】
上述した半導体装置SDVでは、第1トレンチゲート電極TGE1の深さGDP1は、第2トレンチゲート電極TGE2の深さGDP2よりも浅い。これにより、第1パワーMOSトランジスタQ1がブレークダウンを起こしたとしても、実施の形態1に係る半導体装置SDVと同様に、電流は、半導体基板SUBからコラムCLM側を流れるようになる。その結果、ゲート容量の変動に伴う、第1パワーMOSトランジスタQ1の特性変動を抑制することができる。
【0094】
また、上述した半導体装置SDVの製造方法では、深さの異なる第1トレンチTRC1と第2トレンチTRC2とが、個々のエッチング処理によって形成される。第1トレンチTRC1は、シリコン酸化膜HM2をエッチングマスクとして、エピタキシャル層NELにエッチング処理を行うことによって形成される。第2トレンチTRC2は、シリコン酸化膜HM3をエッチングマスクとして、エピタキシャル層NELにエッチング処理を行うことによって形成される。これにより、第1トレンチTRC1および第2トレンチTRC2のそれぞれの深さを精度よく制御することができる。
【0095】
なお、各実施の形態において説明した半導体装置については、必要に応じて種々組み合わせることが可能である。
【0096】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0097】
SDV 半導体装置、SUB 半導体基板、NEL エピタキシャル層、CLM コラム、FCM 第1素子領域、RCM 第2素子領域、Q1 第1パワーMOSトランジスタ、PDD1 寄生ダイオード、S1 ソース、DN、D12 ドレイン、G1 ゲート、TRC1 第1トレンチ、GIF1 第1ゲート絶縁膜、TGE1 第1トレンチゲート電極、SE1 第1ソース電極、GE1 第1ゲート電極、GCT1 ゲートコンタクト、SCT1 ソースコンタクト、Q2 第2パワーMOSトランジスタ、PDD2 寄生ダイオード、S2 ソース、D12 ドレイン、G2 ゲート、TRC2 第2トレンチ、GIF2 第2ゲート絶縁膜、TGE2 第2トレンチゲート電極、SE2 第2ソース電極、GE2 第2ゲート電極、GCT2 ゲートコンタクト、SCT2 ソースコンタクト、TS1 第1外周部構造、TS2 第2外周部構造、FR、RR 領域、PM P-型領域、SN N+型領域、PP P+型領域、PR1 フォトレジストパターン、WK、NK、WP、NP 開口部、D1、D2、GDP1、GDP2 深さ、W1、W2、WR1、WR2、WM1、WM2 幅、IM シリコン酸化膜、CK 開口部、ILF 層間絶縁膜、SCP1、SCP2 ソースコンタクトプラグ、CVF カバー膜、PDD1、PDD2 寄生ダイオード、HM1、HM2、HM3、シリコン酸化膜、TGE トレンチゲート配線、BA 電源、LAD 負荷、CGD 距離、GW1、GW2 幅、CLW コラム寸法。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
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図15
図16
図17
図18
図19
図20
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