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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-20
(45)【発行日】2022-09-29
(54)【発明の名称】1缶多回路式給湯装置
(51)【国際特許分類】
   F24D 3/00 20220101AFI20220921BHJP
   F24H 7/02 20220101ALI20220921BHJP
   F24H 15/174 20220101ALI20220921BHJP
   F24H 15/486 20220101ALI20220921BHJP
【FI】
F24D3/00 J
F24H7/02 601Z
F24H15/174
F24H15/486
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2018215230
(22)【出願日】2018-11-16
(65)【公開番号】P2020085262
(43)【公開日】2020-06-04
【審査請求日】2021-04-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000000538
【氏名又は名称】株式会社コロナ
(72)【発明者】
【氏名】中村 浩二
(72)【発明者】
【氏名】森田 誠
【審査官】古川 峻弘
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-130370(JP,A)
【文献】特開2003-130448(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24H 1/00-15/493
F24D 1/00-19/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱手段により加熱される暖房用の熱媒体を貯留する暖房用熱交缶体と、該暖房用熱交缶体内に配置された給湯回路の給湯用熱交換器と、前記暖房用熱交缶体内の前記熱媒体の温度を検出する缶体温度検出手段と、前記暖房用熱交缶体内の前記熱媒体の温度が所定の缶体目標温度になるよう前記缶体温度検出手段で検出される温度に基づいて前記加熱手段を制御する制御部とを備え、前記暖房用熱交缶体内の熱媒体による暖房運転と、前記給湯用熱交換器を流通する水を前記暖房用熱交缶体内の前記熱媒体により間接加熱して湯を供給するようにした給湯運転とが同時に行われる場合は、前記缶体目標温度を第1目標温度に設定し、前記暖房運転が単独で行われる場合は、前記缶体目標温度を前記第1目標温度より低い第2目標温度に設定する1缶多回路式給湯装置において、前記制御部は、前記暖房運転と前記給湯運転との同時運転中に前記給湯運転が停止された場合、前記給湯運転停止から所定時間が経過するまでは、前記缶体目標温度を前記第1目標温度よりも低く前記第2目標温度よりも高い所定の待機温度に設定し、かつ、前記所定時間の間に、時間の経過に伴い前記待機温度を下げるようにしたことを特徴とする1缶多回路式給湯装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1つの缶体で、少なくとも給湯回路と暖房回路と有する1缶多回路式装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来この種の1缶多回路式給湯装置においては、暖房用の熱媒体が貯留された缶体内に給湯用熱交換器を備え、暖房用の熱媒体を用いた暖房単独運転、暖房用の熱媒体の間接加熱による給湯単独運転、暖房運転と給湯運転との同時運転をそれぞれ良好に行うものであった。(例えば、特許文献1参照。)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2006-322655号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、この従来のものでは、給湯運転を行う場合、給水は缶体内に備えられた給湯用熱交換器にて缶体内に貯留された暖房用の熱媒体によって間接加熱されることから、缶体内の熱媒体の目標温度は高温、例えば85℃に設定されて給湯が行われるものであるが、暖房運転では直接缶体内の熱媒体を循環させて暖房を行うことになるため、間接加熱式の給湯用熱交換器のような熱交換の損失がなく、放熱端末に供給する熱媒体の温度も70℃程度でよいことから、暖房単独運転時は缶体内の熱媒体の目標温度を70℃とやや高温に設定して暖房を行っていた。
【0005】
暖房運転と給湯運転との同時運転を行う場合も、給湯のことを考慮して缶体内の熱媒体の目標温度は高温(85℃)に設定されるものであるが、この同時運転時に給湯のみが停止された場合、缶体内の熱媒体の目標温度は85℃から暖房単独運転時の70℃に変更される。そして、暖房運転は継続されているため熱媒体の温度は低下し、缶体内の熱媒体の温度が70℃になるように制御される。しかし、給湯は断続的な使用があり、缶体内の熱媒体の温度が低下した状態で給湯が開始されて暖房運転と給湯運転との同時運転が再開されると、給湯分の熱量が不足し、給湯運転開始時に給湯温度が大きくアンダーシュートしてしまう場合があり、給湯温度が給湯設定温度に上昇するまで時間がかかり、使用感が損なわれてしまうという問題点を有するものであった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は上記課題を解決するために、請求項1では、加熱手段により加熱される暖房用の熱媒体を貯留する暖房用熱交缶体と、該暖房用熱交缶体内に配置された給湯回路の給湯用熱交換器と、前記暖房用熱交缶体内の前記熱媒体の温度を検出する缶体温度検出手段と、前記暖房用熱交缶体内の前記熱媒体の温度が所定の缶体目標温度になるよう前記缶体温度検出手段で検出される温度に基づいて前記加熱手段を制御する制御部とを備え、前記暖房用熱交缶体内の熱媒体による暖房運転と、前記給湯用熱交換器を流通する水を前記暖房用熱交缶体内の前記熱媒体により間接加熱して湯を供給するようにした給湯運転とが同時に行われる場合は、前記缶体目標温度を第1目標温度に設定し、前記暖房運転が単独で行われる場合は、前記缶体目標温度を前記第1目標温度より低い第2目標温度に設定する1缶多回路式給湯装置において、前記制御部は、前記暖房運転と前記給湯運転との同時運転中に前記給湯運転が停止された場合、前記給湯運転停止から所定時間が経過するまでは、前記缶体目標温度を前記第1目標温度よりも低く前記第2目標温度よりも高い所定の待機温度に設定し、かつ、前記所定時間の間に、時間の経過に伴い前記待機温度を下げるようにした
【0007】
また、請求項2では、前記制御部は、前記所定時間の間の前記缶体目標温度を、前記第1目標温度よりも低く前記第2目標温度よりも高い所定の待機温度に設定するものとした。
【0008】
また、請求項3では、前記制御部は、前記所定時間の間に、時間の経過に伴い前記待機温度を下げるものとした。
【発明の効果】
【0009】
この発明の請求項1によれば、暖房運転と給湯運転の同時運転中に給湯運転が停止された場合、制御部は、給湯運転停止から所定時間が経過するまでは、缶体目標温度を暖房単独運転時の缶体目標温度である第2目標温度よりも高い温度に設定するようにしたことで、給湯運転の再開に備えて熱媒体の温度を暖房単独運転時の第2目標温度よりも高く保つようにし、給湯が再開された場合に給湯に使用される分の熱量不足を防止することができ、給湯再開時には給湯温度の大きなアンダーシュートがなく、使用感を損ねずに快適な給湯が可能となるものである。
【0010】
また、制御部は、所定時間の間の缶体目標温度を、第1目標温度よりも低く第2目標温度よりも高い所定の待機温度に設定するようにしたことで、暖房運転と給湯運転との同時運転時に使用されるエネルギー使用量(燃料使用量)よりもエネルギー使用量(燃料使用量)を抑制しつつ、給湯再開時には熱媒体の温度を素早く第1目標温度に上昇させることができる缶体目標温度としたので、給湯が再開された場合に給湯に使用される分の熱量不足を防止することができ、給湯温度の大きなアンダーシュートがなく、使用感を損ねることなく快適な給湯が可能となるものである。
【0011】
また、制御部は、所定時間の間に、時間の経過に伴い待機温度を下げるようにしたことで、所定時間の間は、給湯運転の再開に備えて熱媒体の温度を暖房単独運転時の第2目標温度よりも高く保ち、給湯が再開された場合に給湯に使用される分の熱量不足を抑制することができ、給湯を停止してから時間が経過するにつれ給湯再開の見込みもなくなっていくことから、時間経過に伴い待機温度を下げていくので、給湯運転の
再開に備えて熱媒体の温度を無駄に高く保ち続けることなく、エネルギー使用量(燃料使用量)を抑制することができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施形態に係る1缶3回路式給湯装置の概略構成図。
図2】要部ブロック図。
図3】缶体目標温度設定に関する動作を示すフローチャート。
図4】暖房・給湯同時運転中に給湯のみ停止した後、所定時間が経過する前に給湯を再開した場合の経時推移を説明するタイムチャート。
図5】缶体目標温度設定に関する動作を示す他のフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の実施形態に係る1缶多回路式給湯装置、ここでは1缶3回路式給湯装置の構成について、図面を参照しながら説明する。
1は下部に加熱手段としてのバーナ部2を備える燃焼室3を形成した暖房用の熱媒体を貯留する暖房用熱交缶体としての缶体で、この缶体1内方には蛇管による間接加熱式の給湯用の熱交換器を構成する給湯用熱交換器4と、蛇管による間接加熱式の風呂追焚き用の熱交換器を構成する風呂用熱交換器5とを備え、缶体1内上部に給湯用熱交換器4、缶体1内下部に風呂用熱交換器5を配設し、温水暖房、給湯、風呂追焚きを同時またはそれぞれ単独でも行えるようにしたものである。
【0014】
まず、暖房回路Aについて説明すると、6は暖房往き管、7は例えば床暖房パネル等の放熱端末、8は暖房戻り管、9は暖房用循環ポンプ、10は気液分離器、11は暖房用膨張タンク、12は開閉弁13が設けられた暖房バイパス管、14は暖房用の熱媒体(水や不凍液等の循環液)の温度制御に用いる缶体温度検出手段としての缶体温度センサ14で、缶体1にてバーナ部2の燃焼で暖房運転用の缶体目標温度まで加熱された熱媒体が、暖房用循環ポンプ9の駆動により暖房往き管6を介して放熱端末7に送られて暖房が行われ、放熱端末7で放熱した低温の熱媒体が暖房戻り管8を介して缶体1に戻され再度加熱されて循環するものである。
【0015】
次に、給湯回路Bについて説明すると、15は給水源からの給水を給湯用熱交換器4に供給する給水管、16は水の流量を検出する給湯流量センサ、17は給湯用熱交換器4で加熱された温水を出湯する給湯管、18は給湯栓、19は給水管15から分岐した給水バイパス管、20は給湯管17と給水バイパス管19との接続部に設けられ、給湯管17からの湯と給水バイパス管19からの水とを混合し、その混合比を可変できる混合弁、21は給湯栓18の閉止時の熱膨張を吸収する給湯用膨張タンク、22は給水温度センサ、23は給湯温度センサで、給湯栓18が開かれて給湯流量センサ16が最低作動流量を検出すると、缶体1内の熱媒体の温度を給湯運転用の缶体目標温度に維持するようバーナ部2で燃焼を行い、給湯用熱交換器4を流通する水が缶体1内の高温の熱媒体により間接加熱され、給湯管17からの湯と給水バイパス管19からの水が混合弁20で混合され適温に調節されて給湯栓18から給湯される。なお、給水管15には能力オーバー時に給湯量を絞る水比例弁24が備えられており、この水比例弁24は給湯管17に備えてもよいものである。
【0016】
次に、風呂回路Cについて説明すると、25は浴槽、26は風呂往き管、27は風呂戻り管、28は風呂戻り管27に設けられた風呂用循環ポンプ、29は浴槽水の循環の有無を検知する流水スイッチ、30は風呂温度センサで、浴槽25内の湯の追焚き要求があると、缶体1内の熱媒体の温度を風呂追焚き用の缶体目標温度に維持するようバーナ部2で燃焼を行い、浴槽25内の湯を風呂用循環ポンプ28で風呂用熱交換器5に循環させ、浴槽水が缶体1内の高温の熱媒体により間接加熱されることで、浴槽水を適温まで沸かし上げたり保温したりするものである。
【0017】
そして、31は給湯回路Bの給湯管17から分岐されて風呂回路Cに湯張り弁32及び三方弁33を介して接続される湯張り管で、風呂の湯張り要求があると三方弁33を風呂回路Cと湯張り管31とを連通するよう切り換えると共に湯張り弁32を開弁し、給湯用熱交換器4で加熱された湯を風呂回路C内に流入させて浴槽25への一定量の湯張りを行うものである。
【0018】
また、34は缶体1の上部と下部とを結ぶ連通管、35はこの連通管34途中に備えられた撹拌用循環ポンプで、給湯運転時または風呂追焚き運転時に駆動して、缶体1内の温度を上下均一化させるもので、給湯運転または風呂追焚き運転が終了するまで継続駆動して撹拌を行うものである。なお、暖房運転時は暖房用循環ポンプ9が駆動されているため、撹拌用循環ポンプ35は駆動しないようにすることも可能である。
【0019】
36はマイコンからなる制御部で、入力側には缶体温度センサ14、給湯流量センサ16、給水温度センサ22、給湯温度センサ23、給湯栓18から出湯させる給湯温度を適宜希望の温度に設定する給湯温度設定手段37、流水スイッチ29、風呂温度センサ30、浴槽水の温度を適宜希望の温度に設定する風呂温度設定手段38、浴槽水を風呂温度設定手段38で設定した温度に加熱する風呂追焚き運転の開始及び停止を行う風呂追焚き運転スイッチ39、暖房温度を適宜希望の温度に設定する暖房温度設定手段40、暖房運転の開始及び停止を行う暖房運転スイッチ41がそれぞれ接続され、出力側にはバーナ部2、暖房用循環ポンプ9、開閉弁13、混合弁20、水比例弁24、風呂用循環ポンプ28、湯張り弁32、三方弁33、撹拌用循環ポンプ35がそれぞれ接続されており、暖房運転、給湯運転、風呂湯張り運転や風呂追焚き運転、バーナ部2の燃焼制御を行うものである。
【0020】
前記制御部36は、缶体1内の熱媒体を加熱する加熱制御(燃焼制御)として、缶体1内の熱媒体の温度が所定の缶体目標温度になるように、缶体温度センサ14で検出される缶体1内の熱媒体の温度に基づき、バーナ部2の燃焼をオンオフ制御するものである。より詳細には、缶体目標温度が設定されると、それに応じてバーナ部2による加熱を開始する加熱開始温度(燃焼オン温度)およびバーナ部2による加熱を停止する加熱停止温度(燃焼オフ温度)が設定され、制御部36は、缶体温度センサ14の検出する温度が前記加熱開始温度(燃焼オン温度)に達したら、バーナ部2の燃焼加熱を開始し、缶体温度センサ14の検出する温度が前記加熱停止温度(燃焼オフ温度)に達したら、バーナ部2の燃焼加熱を停止する制御を行って、缶体1内の熱媒体の温度が設定された缶体目標温度になるように制御するものである。
【0021】
上記缶体目標温度の設定方法について具体的に説明すると、給湯運転を行う場合、給水は缶体1内に備えられた給湯用熱交換器4にて缶体1内に貯留された熱媒体によって間接加熱されることから、缶体目標温度は高温の第1目標温度、例えば85℃に設定される。また、風呂追焚き運転を行う場合、浴槽水は缶体1内に備えられた風呂用熱交換器5にて缶体1内に貯留された熱媒体によって間接加熱されることから、缶体目標温度は給湯運転を行う場合と同様に前記第1目標温度に設定される。そして、暖房運転を単独で行う場合、暖房運転では直接缶体1内の熱媒体を循環させて暖房を行うことになるため、間接加熱式の給湯用熱交換器4、風呂用熱交換器5のような熱交換の損失がなく、放熱端末7に供給する熱媒体の温度も、給湯運転や風呂追焚き運転に比べてやや低めでよいことから、缶体目標温度は前記第1目標温度よりも低い第2目標温度、例えば70℃に設定される。なお、上記第2目標温度は、暖房温度設定手段40で設定された暖房温度に基づいて設定されるものであり、例えば60℃~70℃の温度範囲で設定される。
【0022】
また、暖房運転と給湯運転との同時運転を行う場合、缶体目標温度は高温の前記第1目標温度に設定され、暖房運転と風呂追焚き運転との同時運転を行う場合、缶体目標温度は高温の前記第1目標温度に設定され、暖房運転と給湯運転と風呂追焚き運転との同時運転を行う場合、缶体目標温度は高温の前記第1目標温度に設定される。なお、暖房運転、給湯運転、風呂追焚き運転の何れの運転も行われない場合、缶体目標温度は70℃に設定される。
【0023】
次に、この一実施形態の作動について説明する。
まず、暖房運転を説明すれば、暖房運転スイッチ41がオンされ、暖房運転が開始されると、制御部36は、缶体温度センサ14の検出する熱媒体の温度が缶体目標温度である第2目標温度(例えば70℃)になるように、缶体温度センサ14の検出する温度が第2目標温度に応じて設定される加熱開始温度(燃焼オン温度)に達したら、バーナ部2の燃焼加熱を開始し、缶体温度センサ14の検出する温度が第2目標温度に応じて設定される加熱停止温度(燃焼オフ温度)に達したら、バーナ部2の燃焼加熱を停止する制御を行うと共に、暖房用循環ポンプ9を駆動して缶体1内の熱媒体を放熱端末7に流通させた後、再び缶体1に戻す循環を繰り返して、放熱端末7によって室内の暖房を行うものである。
【0024】
次に、給湯運転は、給湯栓18が開かれて給湯運転が開始されると、制御部36は、缶体温度センサ14の検出する熱媒体の温度が缶体目標温度である第1目標温度(例えば85℃)になるように、缶体温度センサ14の検出する温度が第1目標温度に応じて設定される加熱開始温度(燃焼オン温度)に達したら、バーナ部2の燃焼加熱を開始し、缶体温度センサ14の検出する温度が第1目標温度に応じて設定される加熱停止温度(燃焼オフ温度)に達したら、バーナ部2の燃焼加熱を停止する制御を行う。そして、給水管15からの低温の水は給湯用熱交換器4で缶体1内の高温の熱媒体により間接加熱され、給湯管17からの湯と給水バイパス管19からの水が混合弁20で混合され、給湯温度設定手段37で設定された温度の湯が給湯栓18から給湯される。また、制御部36は、バーナ部2の制御と共に、撹拌用循環ポンプ35を駆動させ連通管34を介して缶体1下部の熱媒体を缶体1上部に供給して缶体1内の熱媒体の撹拌を行い、缶体1内の上部と下部の温度差をなくし、ほぼ同じ熱交換効率で熱交換できるようにして所望の温度の湯が供給されるものである。
【0025】
次に、風呂追焚き運転は、風呂追焚き運転スイッチ39がONされ浴槽水の沸かし上げが開始される、または浴槽水の保温制御が開始されることにより、浴槽水の追焚き要求があると、制御部36は、缶体温度センサ14の検出する熱媒体の温度が缶体目標温度である第1目標温度(例えば85℃)になるように、缶体温度センサ14の検出する温度が第1目標温度に応じて設定される加熱開始温度(燃焼オン温度)に達したら、バーナ部2の燃焼加熱を開始し、缶体温度センサ14の検出する温度が第1目標温度に応じて設定される加熱停止温度(燃焼オフ温度)に達したら、バーナ部2の燃焼加熱を停止する制御を行うと共に、風呂用循環ポンプ28を駆動させて浴槽25内の浴槽水を風呂用熱交換器5に循環させて、高温に保持された缶体1内の熱媒体で加熱して浴槽水を風呂温度設定手段38で設定された所望の温度に追焚きしたり保温したりするもので、風呂温度センサ30が所望の温度を検知すると自動的に停止されるものである。
【0026】
次に、本実施形態の特徴的な動作として、暖房と給湯の同時使用時に給湯運転が停止されて暖房単独運転となった場合における缶体1内の熱媒体の目標温度(缶体目標温度)の設定の仕方について、図3のフローチャートを用いて説明する。
【0027】
まず、制御部36は、缶体1内の熱媒体を放熱端末7に直接供給して室内を暖房する暖房運転と、給湯栓18が開かれて給湯栓18から給湯される給湯運転との同時運転が行われているか否か判断し(ステップS1)、同時運転が行なわれていると判断した場合は、缶体目標温度を第1目標温度(例えば85℃)に設定する(ステップS2)。なお、暖房運転と給湯運転との同時運転が行われる状況としては、暖房運転と給湯運転が同時に開始されて暖房運転中且つ給湯運転中となる状況、または暖房運転中に給湯運転が開始されて暖房運転中且つ給湯運転中となる状況、または給湯運転中に暖房運転が開始されて暖房運転中且つ給湯運転中となる状況が想定されるものである。
【0028】
そして、制御部36は、暖房運転と給湯運転の同時運転中に給湯運転が停止されたか否か判断し(ステップS3)、給湯運転が停止されたと判断した場合は、缶体目標温度を前記ステップS2で設定した第1目標温度から、第1目標温度より低く且つ第2目標温度より高い所定の待機温度(例えば80℃)に設定を変更し(ステップS4)、続いて、給湯運転が停止してから所定時間(例えば10分)が経過したか否か判断し(ステップS5)、所定時間が経過したと判断した場合は、缶体目標温度を前記ステップS4で設定した待機温度から、待機温度より低い暖房単独運転時の缶体目標温度である第2目標温度(例えば70℃)に設定を変更し(ステップS6)、暖房単独運転を継続するものである。
【0029】
なお、前記ステップS5において、制御部36は、所定時間が経過していないと判断した場合、給湯運転が再開(開始)されたか否か判断し(ステップS7)、給湯運転が再開されたと判断した場合は、暖房運転と給湯運転の同時運転が行われているとして、前記ステップS2の処理に戻り、前記ステップS7において、給湯運転が再開(開始)されていないと判断した場合は、ステップS5の処理に戻るものである。
【0030】
次に、本実施形態の特徴的な動作として、暖房と給湯の同時使用時に給湯運転が停止されて暖房単独運転となり、そこから給湯が再開され、再び暖房と給湯の同時使用となる場面の動作について、図4のタイムチャートを用いて説明する。図4では、本実施形態における缶体目標温度、缶体温度センサ14で検出される缶体1内の熱媒体の温度、給湯温度センサ23で検出される給湯温度、給湯流量センサ16で検出される給湯流量の経時推移を実線で示し、比較例(従来例)における缶体目標温度、缶体温度センサ14で検出される缶体1内の熱媒体の温度、給湯温度センサ23で検出される給湯温度、給湯流量センサ16で検出される給湯流量の経時推移を一点鎖線で示している。なお、時間t1は暖房運転と給湯運転の同時運転が行われ、一定の時間が経過した後の安定状態となったときの時間を表すものとする。
【0031】
時間t1~t2では、暖房運転と給湯運転とが行われており、缶体目標温度が、暖房運転と給湯運転との同時運転を行う場合の第1目標温度(ここでは、85℃)に設定された状態であり、制御部36は、缶体温度センサ14で検出される熱媒体の温度が缶体目標温度である第1目標温度になるようにバーナ部2の燃焼を制御している。給湯温度は、ユーザ操作により給湯温度設定手段37で設定された温度(ここでは、40℃)に維持されている。
【0032】
そして、時間t2において、ユーザにより給湯栓18が閉じられ給湯が停止されると(時間t2の給湯流量参照)、制御部36は缶体目標温度を第1目標温度から待機温度(ここでは80℃)に設定を変更する(本実施形態の時間t2の缶体目標温度参照)。
【0033】
時間t2~t3においては、暖房運転は継続され暖房単独での運転が行われており、缶体1内の熱媒体は放熱端末7に供給され室内の暖房に使用されるため、熱媒体の温度は徐々に低下、すなわち、缶体温度センサ14で検出される熱媒体の温度は徐々に低下していくが、待機温度付近まで温度低下すると、制御部36はバーナ部2の燃焼を制御し、缶体温度センサ14で検出される熱媒体の温度が缶体目標温度である待機温度になるように制御する(本実施形態の時間t2~t3の缶体温度参照)。同じく、時間t2~t3において、給湯が停止され給湯管17に滞留する湯は自然放熱により徐々に温度低下するため、給湯温度センサ23で検出される給湯温度も徐々に低下していく(本実施形態の時間t2~t3の給湯温度参照)。
【0034】
そして、暖房運転と給湯運転の同時運転の状態から給湯のみが停止され、時間t2から所定時間(ここでは、10分)が経過する前に、時間t3において給湯流量センサ16の検出する流量が最低作動流量以上となって(時間t3の給湯流量参照)、制御部36により給湯再開(開始)が判断されると、制御部36は缶体目標温度を待機温度から暖房運転と給湯運転との同時運転を行う場合の第1目標温度に設定を変更する(本実施形態の時間t3の缶体目標温度参照)。
【0035】
時間t3以降において、制御部36は、缶体温度センサ14で検出される熱媒体の温度が缶体目標温度である第1目標温度になるようにバーナ部2の燃焼を制御する。このとき、給湯再開に伴い給湯用熱交換器4には低温の給水が流れ込むため、缶体温度センサ14で検出される熱媒体の温度は多少落ち込むものの、第1目標温度に向かって熱媒体の温度が上昇していく(本実施形態の時間t3以降の缶体温度参照)。ここで、時間t3以降の給湯温度を見ると、缶体1内の熱媒体の温度が高温(80℃程度)に維持され、再開された給湯分の熱量も確保された状態だったことから、給湯温度は給湯設定温度である40℃からほとんどアンダーシュートせずに、40℃が維持されている(本実施形態の時間t3以降の給湯温度参照)。
【0036】
このように、本実施形態では、給水を加熱するための給湯用熱交換器4が、暖房用の熱媒体が貯留された缶体1内に配置され、給水が暖房用の熱媒体によって間接的に加熱される構成のものにおいて、暖房運転と給湯運転の同時運転中に給湯運転のみが停止された場合、制御部36は、給湯運転停止から所定時間が経過するまでは、缶体目標温度を暖房単独運転時の缶体目標温度である第2目標温度よりも高い所定の待機温度に設定するようにしている。
【0037】
給湯運転は、シャワー等のように所定の期間内に断続的に使用される場面がままある。暖房運転と給湯運転の同時運転中に給湯運転のみが停止された場合において、給湯運転停止のタイミングですぐに、缶体目標温度を暖房単独運転時の缶体目標温度である第2目標温度に戻してしまうと(比較例の時間t2の缶体目標温度参照)、缶体1内の熱媒体は第2目標温度になるように温度制御され、缶体1内の熱媒体の温度は低下し、暖房をまかなえるだけの分の熱量を有する状態となってしまう(比較例の時間t2~t3の缶体温度参照)。この時、給湯運転が再開されると、缶体1内の熱媒体の温度は、給湯停止前に行われていた同時運転時からは大きく低下した状態であり(比較例の時間t3の缶体温度参照)、缶体1内の熱媒体では給湯分の熱量が不足し、給湯温度を給湯設定温度に維持することができず、給湯設定温度から大きくアンダーシュートしてしまい、給湯設定温度まで湯温が上昇するのに時間がかかり(比較例の時間t3以降の給湯温度参照)、使用感が損なわれてしまう。
【0038】
それに対して、本実施形態では、暖房運転と給湯運転の同時運転中に給湯運転のみが停止された場合、制御部36は、缶体目標温度を給湯運転停止後すぐに暖房単独運転時の缶体目標温度である第2目標温度に落とすのではなく、給湯運転停止から所定時間が経過するまでは、缶体目標温度を暖房単独運転時の缶体目標温度である第2目標温度よりも高い所定の待機温度に設定するようにしたことで、給湯運転の再開に備えて熱媒体の温度を暖房単独運転時の第2目標温度よりも高く保ち、給湯が再開された場合に給湯に使用される分の熱量不足を防止することができ、給湯再開時には給湯温度の大きなアンダーシュートがなく、使用感を損ねずに快適な給湯が可能となるものである。また、暖房運転と給湯運転の同時運転中に給湯運転のみが停止され、給湯運転停止から所定時間経過した後は、缶体目標温度を暖房単独運転時と同じ第2目標温度に戻すようにしたことで、いつまでも給湯運転の再開に備えて熱媒体の温度を無駄に高く保ち続けることなく、エネルギー使用量(燃料使用量)を抑制することができるものである。
【0039】
さらに、本実施形態では、待機温度を第1目標温度よりも低く第2目標温度よりも高い温度としたことで、同時運転時に使用されるエネルギー使用量(燃料使用量)よりもエネルギー使用量(燃料使用量)を抑制しつつも、給湯再開時には熱媒体の温度を素早く第1目標温度に上昇させることができるような缶体目標温度となっているので、給湯が再開された場合に給湯に使用される分の熱量不足を抑制することができ、給湯温度の大きなアンダーシュートがなく、使用感を損ねずに快適な給湯が可能となるものである。
【0040】
なお、本発明は先に説明した一実施形態に限定されるものでなく、本実施形態に記載した構成を適宜組み合わせ乃至選択することを含め、その趣旨を逸脱しない範囲において適宜その構成を変更することができるものである。また、前記実施形態の構成の一部について、追加、削除、置換をすることができる。
【0041】
例えば、本実施形態では、図3のフローチャートに示したように、暖房運転と給湯運転の同時運転中に給湯運転のみが停止された場合、所定時間の間は、缶体目標温度を一定温度の待機温度(本実施形態では80℃一定)としたが、所定時間の間に、時間の経過に伴い、第1目標温度より低く且つ第2目標温度を超える温度範囲内(第1目標温度<待機温度<第2目標温度)で待機温度を徐々に下げていくようにしてもよいものである。この場合の動作について図5のフローチャートを用いて詳しく説明する。
【0042】
まず、図5のフローチャートのステップS11~S13の処理は、先に説明した図3のフローチャートのステップS1~S3の処理と同じなので説明を省略する。
ステップS13において、制御部36は、暖房運転と給湯運転の同時運転中に給湯運転が停止されたと判断した場合は、缶体目標温度をステップS12で設定した第1目標温度から、第1目標温度より低く且つ第2目標温度より高い所定の第1待機温度(例えば80℃)に設定を変更する(ステップS14)。
【0043】
続いて、制御部36は、給湯運転が停止してから予め設定された所定時間(例えば10分)のうち、一定の時間(例えば5分)が経過したか否か判断し(ステップS15)、一定の時間が経過したと判断した場合は、缶体目標温度を前記ステップS14で設定した第1待機温度から、第1待機温度より低い第2待機温度(例えば75℃)に設定を変更し(ステップS16)、後述するステップS18の処理へと進む。なお、前記ステップS15において、制御部36は、一定の時間が経過していないと判断した場合、給湯運転が再開(開始)されたか否か判断し(ステップS17)、給湯運転が再開されたと判断した場合は、暖房運転と給湯運転の同時運転が行われているとして、前記ステップS12の処理に戻り、前記ステップS17において、給湯運転が再開(開始)されていないと判断した場合は、ステップS15の処理に戻るものである。
【0044】
そして、制御部36は、ステップS18の処理において、所定時間(10分)が経過したか否か判断し、所定時間が経過したと判断した場合は、缶体目標温度を前記ステップS16で設定した第2待機温度から、第2待機温度より低い暖房単独運転時の缶体目標温度である第2目標温度(例えば70℃)に設定を変更し(ステップS19)、暖房単独運転を継続するものである。なお、前記ステップS18において、制御部36は、所定時間が経過していないと判断した場合、給湯運転が再開(開始)されたか否か判断し(ステップS20)、給湯運転が再開されたと判断した場合は、暖房運転と給湯運転の同時運転が行われているとして、前記ステップS12の処理に戻り、前記ステップS20において、給湯運転が再開(開始)されていないと判断した場合は、ステップS18の処理に戻るものである。
【0045】
上記のように、所定時間(10分)の間に、第1目標温度より低く且つ第2目標温度を超える温度範囲内で、時間の経過に伴い待機温度を第1待機温度(80℃)から第2待機温度(75℃)に下げるようにしたことで、所定時間の間は、給湯運転の再開に備えて熱媒体の温度を暖房単独運転時の第2目標温度よりも高く保ち、給湯が再開された場合に給湯に使用される分の熱量不足を抑制することができ、給湯を停止してから時間が経過するにつれ給湯再開の見込みもなくなっていくことから、時間経過に伴い待機温度を下げていくので、給湯運転の再開に備えて熱媒体の温度を無駄に高く保ち続けることなく、エネルギー使用量(燃料使用量)を抑制することができるものである。もちろん、暖房運転と給湯運転の同時運転中に給湯運転のみが停止され、給湯運転停止から所定時間経過した後は、缶体目標温度を暖房単独運転時と同じ第2目標温度に戻すようにしたことで、いつまでも給湯運転の再開に備えて熱媒体の温度を無駄に高く保ち続けることなく、エネルギー使用量(燃料使用量)を抑制することができるという効果も発揮できるものである。
【0046】
また、図5に示すフローチャートの動作では、所定時間の間の待機温度の下げ回数は1回であったが、所定時間の間に複数回待機温度を下げるようにしてもよく、さらに、待機温度の下げ方としては、段階的に下げるようにするものであっても比例的に下げるようにするものであってもよい。
【0047】
なお、本発明は先に説明した実施形態に限定されるものでなく、本実施形態では、1缶多回路式給湯装置として、温水暖房、給湯、風呂追焚きが行なえる1缶3回路式給湯装置に本発明を適用したが、温水暖房と給湯が行える1缶2回路式給湯装置に本発明を適用してもよいものである。
【0048】
さらに、本実施形態では、缶体1内の熱媒体を加熱する加熱手段としてバーナ部2を用いたが、加熱手段は、電気ヒータやヒートポンプ式加熱手段でもよく、特に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0049】
1 缶体
2 バーナ部
4 給湯用熱交換器
14 缶体温度センサ
36 制御部
B 給湯回路
図1
図2
図3
図4
図5