(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-20
(45)【発行日】2022-09-29
(54)【発明の名称】端子接続構造
(51)【国際特許分類】
H01R 4/00 20060101AFI20220921BHJP
H01R 4/48 20060101ALI20220921BHJP
H01R 4/28 20060101ALI20220921BHJP
H01R 4/18 20060101ALN20220921BHJP
【FI】
H01R4/00 Z
H01R4/48 Z
H01R4/28
H01R4/18 A
(21)【出願番号】P 2018219419
(22)【出願日】2018-11-22
【審査請求日】2021-10-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】特許業務法人栄光特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉江 和彦
【審査官】山下 寿信
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-230010(JP,A)
【文献】特開2015-056209(JP,A)
【文献】特開昭60-221977(JP,A)
【文献】実公昭36-002665(JP,Y1)
【文献】特開2019-061742(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 4/00
H01R 4/48
H01R 4/28
H01R 4/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
端子収容室を有するハウジングと、
前記端子収容室に収容される端子と、
前記端子に形成され対向する一対の側壁を有して電線端末の芯線に接続される電線接続部と、
前記電線接続部の内方に突出するように一方の前記側壁に形成されたバネ部と、
前記バネ部に対向する他方の前記側壁に形成されて前記端子が前記端子収容室に挿入されることにより前記端子収容室の内壁により押圧付勢されて前記バネ部との間で前記芯線を挟持する押圧可動部と、
を備えることを特徴とする端子接続構造。
【請求項2】
前記バネ部が、前記端子の挿入方向側を自由先端部とするとともにその反対側を基端支持部とする片持ち梁状に形成され、
前記自由先端部のエッジ部が、前記芯線に食い込む
ことを特徴とする請求項1に記載の端子接続構造。
【請求項3】
前記バネ部が、前記芯線の延在方向に複数箇所設けられている
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の端子接続構造。
【請求項4】
前記押圧可動部の揺動先端部に、前記電線端末の被覆に食い込む被覆固定爪が形成されている
ことを特徴とする請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の端子接続構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、端子接続構造に関する。
【背景技術】
【0002】
小径サイズの電線に端子を圧着するに際し、固着力を安定させたり、耐衝撃強度を高めたりする工夫が提案されている。例えば特許文献1における圧着接続端子の導線圧着部には、U字状の弯曲部に沿って内側に凸状に膨らむ凸状部、外側に凹状に凹んだ凹状部が設けられ、内側の凸状部にそれぞれセレーションが弯曲部に沿って形成される。また、特許文献2の端子は、電線の被覆に圧着されるインシュレーションバレルの圧着面に凹部が設けられ、凹部の開口が後方に向かうにつれて狭まる形状とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2010-44913号公報
【文献】特開2016-164836号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記した従来の端子は、いずれも端子と電線の芯線(導体)を加締め型で圧着して接続する。このため、導体断面積が0.13mm2、0.08mm2等の極細電線と、これに固定する導体圧着部を備えた小型端子との組み合わせでは、小型端子における導体圧着部の製作も、加締め型の製作も困難となる。
【0005】
本発明は上記状況に鑑みてなされたもので、その目的は、電線端末に端子を圧着することなく電気的に接続できる端子接続構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る上記目的は、下記構成により達成される。
(1) 端子収容室を有するハウジングと、前記端子収容室に収容される端子と、前記端子に形成され対向する一対の側壁を有して電線端末の芯線に接続される電線接続部と、前記電線接続部の内方に突出するように一方の前記側壁に形成されたバネ部と、前記バネ部に対向する他方の前記側壁に形成されて前記端子が前記端子収容室に挿入されることにより前記端子収容室の内壁により押圧付勢されて前記バネ部との間で前記芯線を挟持する押圧可動部と、を備えることを特徴とする端子接続構造。
【0007】
上記(1)の構成の端子接続構造によれば、電線端末の芯線に接続される電線接続部は、端子の対向する一対の側壁に設けられる。電線接続部の内方には、一方の側壁から他方の側壁に向かって突出するバネ部が形成される。バネ部は、一方の側壁に、例えば切り起こし加工により形成される。電線接続部のバネ部に対向する他方の側壁には、押圧可動部が形成される。押圧可動部は、端子がハウジングの端子収容室に挿入されると、端子収容室の内壁により、一方の側壁に向かって押圧付勢される。即ち、押圧可動部は、端子収容室への挿入前では、端子の他方の側壁から端子収容室の内壁に干渉する位置へ外側に向かって開いている。そして、押圧可動部は、端子が端子収容室に挿入される過程で、バネ部に接近する方向に閉じることとなる。これにより、電線接続部に配置された芯線は、端子が端子収容室に挿入されると、押圧可動部とバネ部とにより挟持される。電線接続部で挟持された芯線は、押圧可動部に押圧されることにより、バネ部を弾性変形させる。バネ部は、この際に生じた弾性復元力により芯線を所定の付勢力で押圧可動部と協働して挟持する。その結果、端子接続構造は、端子に導体圧着部を設けずに、電線端末を端子に容易に電気的に接続することができる。
【0008】
(2) 前記バネ部が、前記端子の挿入方向側を自由先端部とするとともにその反対側を基端支持部とする片持ち梁状に形成され、前記自由先端部のエッジ部が、前記芯線に食い込むことを特徴とする上記(1)に記載の端子接続構造。
【0009】
上記(2)の構成の端子接続構造によれば、バネ部は、自由先端部が、挿入方向側を向いた片持ち梁状に形成されている。この自由先端部には、芯線に対向する側にエッジ部が形成される。これにより、芯線は、押圧可動部により押圧付勢されて、バネ部に当接すると、エッジ部が食い込んで塑性変形する。芯線は、電線に引っ張り方向の外力が作用した場合であっても、芯線に食い込んだエッジ部により、バネ部と係合状態となって、引っ張り力に抗することができる。また、バネ部は、エッジ部よりも引き抜き方向側の梁部が、基端支持部により支持されるので、梁部の軸方向に沿う大きな圧縮強度で引っ張り力に抗することができる。これにより、片持ち梁状のバネ部は、自由先端部と基端支持部とが逆配置される構造に比べ、高い抜け止め強度を確保できる。
【0010】
(3) 前記バネ部が、前記芯線の延在方向に沿って複数箇所設けられていることを特徴とする上記(1)または(2)に記載の端子接続構造。
【0011】
上記(3)の構成の端子接続構造によれば、バネ部が、芯線の延在方向に沿って複数箇所設けられている。これにより、電線接続部と芯線との固定強度が、バネ部の数に比例して増大し、芯線をより抜けにくくできる。即ち、バネ部の増設により抜け止め力が増大するので、一定の抜け止め強度を満足すればよい場合には、バネ部の数を増やすことにより、個々のバネ部の食い込み量を小さくすることが可能となる。これにより、複数のバネ部を設けた端子接続構造によれば、バネ部が1つの場合に比べ、芯線の食い込み量を小さくして、芯線の損傷を抑制することができる。
【0012】
(4) 前記押圧可動部の揺動先端部には、前記電線端末の被覆に食い込む被覆固定爪が形成されていることを特徴とする上記(1)~(3)のいずれか1つに記載の端子接続構造。
【0013】
上記(4)の構成の端子接続構造によれば、押圧可動部の揺動先端部に、電線端末の被覆に食い込む被覆固定爪が形成される。この端子接続構造では、押圧可動部とバネ部とにより芯線が挟持されるのに加え、押圧可動部の被覆固定爪が電線端末の被覆に食い込む。このため、芯線のみをバネ部と押圧可動部とにより挟持する構成に比べ、より大きな挟持力で電線端末と端子とを接続できる。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る端子接続構造によれば、電線端末と端子を圧着することなく電気的に接続できる。
【0015】
以上、本発明について簡潔に説明した。更に、以下に説明される発明を実施するための形態(以下、「実施形態」という。)を添付の図面を参照して通読することにより、本発明の詳細は更に明確化されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る端子接続構造が適用される端子と電線の斜視図である。
【
図2】
図1に示した端子がハウジングの端子収容室に収容される前の斜視図である。
【
図3】(a)及び(b)は端子と電線の接続前の状態を説明するために端子の一部を切り欠いた平面図である。
【
図4】端子収容室に収容された端子及び電線の平断面図である。
【
図5】(a)及び(b)は複数本の導体からなる芯線が押圧可動部とバネ部とに挟持されるときの説明図である。
【
図6】端子のバネ部が両持ち梁構造である場合の変形例を示す平断面図である。
【
図7】端子のバネ部が両持ち梁構造である場合の他の変形例を示す平断面図である。
【
図8】本発明の第2実施形態に係る端子接続構造が適用される端子及び電線の平断面図及び要部拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係る実施形態を図面を参照して説明する。
図1は本発明の第1実施形態に係る端子接続構造が適用される端子13と電線15の斜視図、
図2は
図1に示した端子13がハウジング11の端子収容室17に収容される前の斜視図である。
本第1実施形態に係る端子接続構造は、ハウジング11と、端子13と、電線15と、を主要な構成部材として有する。
【0018】
図2に示すように、ハウジング11は、絶縁性を有する合成樹脂により成形される。ハウジング11は、少なくとも一つの端子収容室17を有する。端子収容室17には、端子13が収容される。ハウジング11は、相手コネクタの相手ハウジングとの結合側が前面となる。ハウジング11の後端面には、端子収容室17の端子挿入開口部19が開口している。ハウジング11は、複数の端子収容室17が左右に設けられる場合、後端面に複数の端子挿入開口部19が横に開口する。
【0019】
図1に示すように、端子13は、相手コネクタに収容される相手端子との電気接触部21が、端子挿入開口部19への挿入方向の先端側に設けられている。端子13は、導電性を有し且つバネ性を有する金属(例えばリン青銅等)を好適に用いることができる。本第1実施形態において、端子13は、電気接触部21が箱形に形成される雌端子となる。端子13は、箱形に形成された電気接触部21の内側に、雄端子となる相手端子に形成された例えばタブ状の電気接触部が進入する。図示は省略するが、箱形の電気接触部21の内方には、雄端子のタブ状の電気接触部と接触する弾性接触片が設けられている。
なお、本第1実施形態に係る端子13は、タブ状の電気接触部を有した雄端子であってもよい。この場合、相手端子が雌端子となる。
【0020】
電気接触部21の後方には、電線接続部23が連設される。電線接続部23は、対向する一対の平行な側壁を有する。一対の側壁は、電気接触部21から挿入方向の後方に向けて延出して形成される。これら一対の側壁の下端同士は、電気接触部21から延出する底板部25により連結される。即ち、電線接続部23は、上方が開放した断面U字状に形成される。
【0021】
一対の側壁は、電気接触部21の上壁よりも上端が低く形成される。このため、電気接触部21の上壁後端と一対の側壁との間には、電気接触部21の上壁から一対の側壁の上端へ向かって一段下がった切欠状の段部が設けられる。本第1実施形態において、この段部は、端子13を端子収容室17から後方へ抜け止めするための係止部27となっている。
【0022】
一方、ハウジング11には、端子収容室17に係止先端が突出する可撓係止片(図示せず)が形成されている。可撓係止片は、挿入方向に向かうにしたがって端子収容室17へ突出する方向の傾斜面を有し、その先端には、上記した端子13の係止部27に係止する係止爪が形成される。これにより、端子13は、可撓係止片を押し上げて端子収容室17へ挿入される。端子13は、所定位置まで挿入されると、弾性復帰する可撓係止片の係止爪が、係止部27に係止することにより、後方への抜けが規制される。
【0023】
なお、係止部27は、端子13の底板部25に、係止穴として形成されてもよい。この場合、可撓係止片は、端子収容室17の底板部25と対向する底側に配置される。
また、端子13の端子収容室17から後方への抜け止めは、ハウジングに装着されたリテーナによって係止部27を係止する構成とされてもよい。
【0024】
電線15は、電線端末の被覆31が除去され、芯線33が所定長さで露出されている。芯線33は、例えば銅、アルミニウムとすることができる。電線15は、この露出された芯線33がU字状の電線接続部23に配置される。なお、本第1実施形態において、電線15は、導体断面積(芯線33の断面積)が0.13mm
2、0.08mm
2等の極細電線となる。電線15は、芯線33が複数の導体34からなる撚り線(
図5の(a)参照)であっても、単線であってもよい。
また、本第1実施形態では、電線15が極細電線である場合を例に説明するが、電線15は、0.13mm
2よりも大きい導体断面積を有する通常の太さの電線であってもよい。
【0025】
図3の(a)及び(b)は端子13と電線15の接続前の状態を説明するために端子13の一部を切り欠いた平面図である。
電線接続部23の一方の側壁35には、バネ部37が形成される。バネ部37は、電線接続部23の内方に突出するように一方の側壁35に形成される。バネ部37は、挿入方向側(
図3中、左方向側)が電線接続部23の内方に突出する。具体的には、バネ部37は、
図1に示すように、一方の側壁35に、挿入方向側に延在する一対のスリットの先端側同士が連結されたU字状の切欠を入れ、この切欠に囲まれた板片の自由先端部39を電線接続部23の内方へ折り曲げる(切り起こす)ことで加工される。なお、バネ部37の形成方法は、これに限定されない。バネ部37は、別体で形成したものを一方の側壁35に接合してもよい。これにより、バネ部37は、挿入方向側が自由先端部39、挿入方向側と反対側が基端支持部41となった片持ち梁状に形成される。
【0026】
片持ち梁状に形成されたバネ部37の自由先端部39は、例えばプレス加工により打ち抜きされることで、輪郭部分に鋭いエッジ部43を有する。また、エッジ部43は、プレス加工により発生するバリを含むことができる。バネ部37は、エッジ部43を有することで、後述する作用により、芯線33への食い込みを良好にできる。
【0027】
バネ部37は、芯線33の延在方向に沿って複数箇所設けられている。本第1実施形態では、2つのバネ部37が形成されている。なお、バネ部37は、一つであっても、3つ以上の複数であってもよい。
【0028】
押圧可動部45は、バネ部37に対向する他方の側壁47に形成される。押圧可動部45は、他方の側壁47の上部が、底板部側と切り離されることにより短冊状に形成されている。押圧可動部45は、電気接触部21に、折り曲げ部49を介して接続されている。押圧可動部45は、折り曲げ部49から挿入方向と反対側に延出されており、この延出方向先端(即ち、端子13の後端側)が可動部自由端51とされている。押圧可動部45は、折り曲げ部49を揺動中心として、可動部自由端51がバネ部37に対して離反・接近する方向(以下、開閉方向とも称す)に揺動可能となっている。
【0029】
図4は端子収容室17に収容された端子13及び電線15の平断面図である。
図4に示すように、押圧可動部45は、端子13がハウジング11の端子収容室17に挿入されると、端子収容室17の内壁53により押圧付勢される。これにより、押圧可動部45は、バネ部37との間で芯線33を挟持できるように形成されている。
【0030】
バネ部37は、上記したように、端子13の挿入方向側を自由先端部39とするとともに、その反対側を基端支持部41とする片持ち梁状に形成されている。電線接続部23は、バネ部37のエッジ部43と、他方の側壁47と面一となった押圧可動部45との間隔が、芯線33の直径よりも小さく設定されている。このため、バネ部37は、端子13が端子収容室17へ挿入されると、押圧可動部45により芯線33が押し付けられ、自由先端部39のエッジ部43が、芯線33に食い込むようになされている。
その結果、一対の対向する側壁を有した端子13の電線接続部23は、電線端末の芯線33に接続される。
【0031】
次に、端子接続構造の組付け手順を説明する。
電線15を端子13に組付けるには、先ず、
図3の(a)に示すように、電線端末で被覆31が除去された芯線33を、端子13の電線接続部23の内方に挿入する。芯線33は、
図3の(b)に示すように、電線接続部23の複数のバネ部37に当接した位置に配置され。この際、押圧可動部45は、
図3の(b)に示すように、折り曲げ部49の近傍を除いて芯線33から殆ど離れている状態(開放状態)となる。
【0032】
端子13は、
図2に示すように、例えば押圧可動部45がバネ部37に接近する方向に保持されて芯線33を仮挟持した状態で、ハウジング11の後端面に開口する端子挿入開口部19より挿入される。端子13は、電気接触部21が先ず端子挿入開口部19に挿入された後、更に挿入されると、外側に開いた押圧可動部45が、端子挿入開口部19の開口縁に当接する。端子挿入開口部19の開口縁に押圧可動部45が当接した端子13は、更に挿入されることにより、押圧可動部45がバネ部37に接近する方向に閉動される。
【0033】
図4に示すように、端子13が、端子収容室17の所定位置まで挿入されると、電気接触部21の後端に設けられた係止部27に、図示しない可撓係止片が係止する。これにより、端子13は、後抜けが規制される。この際、押圧可動部45は、端子収容室17の内壁53と平行となる状態まで閉動され、内壁53からの反力により押圧された状態となる。内壁53から押圧された押圧可動部45は、芯線33をバネ部37に押圧する。
【0034】
バネ部37は、芯線33から押圧されることにより、電線接続部23の外側へ弾性変位すると共に、エッジ部43が芯線33に食い込む。これにより、端子13のハウジング11への収容が完了すると同時に、端子13と電線15との接続が完了する。
【0035】
図5の(a)及び(b)は複数本の導体34からなる芯線33が押圧可動部45とバネ部37とに挟持されるときの説明図である。
芯線33は、
図5の(a)及び(b)に示すように、複数本(図示例では7本)が束ねられた撚り線である場合、押圧可動部45とバネ部37とにより挟持されると、押圧可動部45の押圧面と平行にほぐされる。芯線33は、ほぐされることで、1本1本が押圧可動部45の押圧面と平行となって並び、それぞれにバネ部37のエッジ部43が食い込む。
【0036】
次に、上記した第1実施形態に係る端子接続構造の作用を説明する。
本第1実施形態に係る端子接続構造では、電線15の電線端末の芯線33に接続されている電線接続部23は、端子13の対向する一対の側壁35,47に設けられる。電線接続部23の内方には、一方の側壁35から他方の側壁47に向かって突出するバネ部37が形成される。バネ部37は、一方の側壁35に、例えば切り起こし加工により形成される。
【0037】
電線接続部23のバネ部37に対向する他方の側壁47には、押圧可動部45が形成される。押圧可動部45は、端子13がハウジング11の端子収容室17に挿入されると、端子収容室17の内壁53により、一方の側壁35に向かって押圧付勢される。即ち、押圧可動部45は、端子収容室17への挿入前では、端子13の他方の側壁47から端子収容室17の内壁53に干渉する位置へ外側に向かって開いている。そして、押圧可動部45は、端子13が端子収容室17に挿入される過程で、バネ部37に接近する方向に閉じることとなる。これにより、電線接続部23に配置された芯線33は、端子13が端子収容室17に挿入されると、押圧可動部45とバネ部37とにより挟持される。
【0038】
電線接続部23で挟持された芯線33は、押圧可動部45に押圧されることにより、バネ部37を弾性変形させる。バネ部37は、この際に生じた弾性復元力により芯線33を所定の付勢力で押圧可動部45と協働して挟持する。その結果、端子接続構造は、端子13に導体圧着部を設けずに、電線端末を端子13に容易に電気的に接続することができる。
【0039】
また、本第1実施形態の端子接続構造では、バネ部37は、自由先端部39が、挿入方向側を向いた片持ち梁状に形成されている。この自由先端部39には、芯線33に対向する側にエッジ部43が形成される。これにより、芯線33は、押圧可動部45により押圧付勢されて、バネ部37に当接すると、エッジ部43が食い込んで塑性変形する。芯線33は、電線15に引っ張り方向の外力が作用した場合であっても、芯線33に食い込んだエッジ部43により、バネ部37と確実に係合状態となって、引っ張り力に抗することができる。
【0040】
また、バネ部37は、エッジ部43よりも引き抜き方向側の梁部が、基端支持部41により支持されるので、梁部の軸方向に沿う大きな圧縮強度で引っ張り力に抗することができる。これにより、片持ち梁状のバネ部37は、自由先端部39と基端支持部41とが逆配置される構造に比べ、高い抜け止め強度を確保することができる。
【0041】
また、本第1実施形態の端子接続構造では、バネ部37が、芯線33の延在方向に沿って複数箇所設けられている。これにより、電線接続部23と芯線33との固定強度が、バネ部37の数に比例して増大し、芯線33をより抜けにくくできる。即ち、バネ部37の増設により抜け止め力が増大するので、一定の抜け止め強度を満足すればよい場合には、バネ部37の数を増やすことにより、個々のバネ部37の食い込み量を小さくすることが可能となる。これにより、複数のバネ部37を設けた端子接続構造では、バネ部37が1つの場合に比べ、芯線33の食い込み量を小さくして、芯線33の損傷を抑制することができる。
【0042】
次に、上記した第1実施形態に係る端子接続構造の変形例を説明する。
図6は端子13Aのバネ部55が両持ち梁構造である場合の変形例を示す平断面図である。
上記の実施形態では、端子13のバネ部37が片持ち梁状である場合を説明したが、例えば、
図6に示す両持ち梁状として端子13Aのバネ部55を形成することもできる。この場合、両持ち梁状のバネ部55は、芯線33との接触面57に、微小凹凸部(セレーション等)を形成することが好ましい。両持ち梁状のバネ部55は、押圧可動部45により芯線33が押し付けられると、弾性変形し、その弾性復元力により押圧可動部45と協働して芯線33を挟持する。この変形例によれば、芯線33と接触する接触面積を大きく確保することができる。
【0043】
次に、上記した第1実施形態に係る端子接続構造の他の変形例を説明する。
図7は端子13Bのバネ部55Aが両持ち梁構造である場合の他の変形例を示す平断面図である。
図7に示す端子13Bは、芯線33の延在方向に延びる両持ち梁状のバネ部55Aに、片持ち梁状のバネ部37Aが形成されている。バネ部37Aは、電線接続部23の内方に突出するようにバネ部55Aの接触面57に形成される。バネ部37Aの自由先端部39は、輪郭部分にエッジ部43を有する。なお、バネ部37Aは、芯線33の延在方向に沿って一箇所設けられているが、2つ以上の複数であってもよい。
【0044】
この場合、電線接続部23で挟持された芯線33は、押圧可動部45に押圧されることにより、バネ部37A及びバネ部55Aを弾性変形させる。バネ部37A及びバネ部55Aは、この際に生じた弾性復元力により芯線33を所定の付勢力で押圧可動部45と協働して挟持する。押圧可動部45により芯線33が押し付けられると、バネ部37Aのエッジ部43は芯線33に食い込む。
従って、例えば電線接続部23における一対の側壁35,47の間隔に対して導体断面積(芯線33の断面積)が小さい電線であっても、電線端末の芯線33に接続された端子13Bの電線接続部23は、高い抜け止め強度を確保しつつ、芯線33と接触する接触圧力を大きく確保することができる。
【0045】
図8は本発明の第2実施形態に係る端子接続構造が適用される端子13C及び電線15の平断面図及び要部拡大図である。
上記の第1実施形態では、押圧可動部45が、芯線33のみを押圧する構成としたが、本第2実施形態に係る端子接続構造のように、押圧可動部61は、電線15の被覆31も同時に押圧する構成としてもよい。この場合、押圧可動部61は、揺動先端に、被覆31に食い込む被覆固定爪59が形成される。
【0046】
図8に示すように、被覆固定爪59は、押圧可動部61の揺動先端が、例えば被覆31に向けて屈曲させたフック状に形成される。被覆固定爪59は、芯線33の円周方向における複数箇所で接触するように(V溝内に挟み入れられるように)、複数を設けてもよい。これにより、被覆固定爪59は、被覆31を挟みながら被覆31に食い込むことで、高い保持力を得ることができる。
【0047】
また、被覆固定爪59を備えた押圧可動部61の場合には、被覆固定爪59よりも端子13Cの挿入方向側に、被覆固定爪59よりも芯線33に接近して突出する芯線押圧凸部63を設けることがより好ましい。これにより、押圧可動部61は、被覆固定爪59が被覆31に食い込む場合であっても、芯線押圧凸部63により適宜な押圧力で芯線33を同時にバネ部37に押しつけることが可能となる。
【0048】
そして、本第2実施形態に係る端子接続構造によれば、押圧可動部61とバネ部37とにより芯線33が挟持されるのに加え、押圧可動部61の被覆固定爪59が電線端末の被覆31に食い込む。このため、芯線33のみをバネ部37と押圧可動部45とにより挟持する上記第1実施形態に係る端子接続構造の構成に比べ、より大きな挟持力で電線端末と端子13Cとを接続できる。
【0049】
また、本第2実施形態に係る端子接続構造では、押圧可動部61が、被覆固定爪59よりも端子13Cの挿入方向側に芯線押圧凸部63を有してもよい。芯線押圧凸部63は、被覆固定爪59よりも芯線33に接近して突出する。押圧可動部61は、芯線押圧凸部63が設けられることにより、被覆固定爪59が被覆31に食い込んだ際に、押圧可動部61と芯線33との間に、間隙の生じることを防止できる。これにより、本第2実施形態に係る端子接続構造は、被覆固定爪59を被覆31に食い込ませると同時に、押圧可動部61の芯線押圧凸部63を所定の押圧力で芯線33に押圧することができる。その結果、本第2実施形態に係る端子接続構造は、被覆固定爪59を設けることによる芯線33への押圧力低下を抑制でき、芯線33と被覆31とを共に最適な挟持力で保持することが可能となる。
【0050】
従って、上記各実施形態に係る端子接続構造によれば、電線15と端子13,13A,13B,13Cを圧着することなく電気的に接続できる。
【0051】
尚、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数、配置箇所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【0052】
ここで、上述した本発明に係る端子接続構造の実施形態の特徴をそれぞれ以下[1]~[4]に簡潔に纏めて列記する。
[1] 端子収容室(17)を有するハウジング(11)と、
前記端子収容室に収容される端子(13,13A,13B,13C)と、
前記端子に形成され対向する一対の側壁(35,47)を有して電線端末の芯線(33)に接続される電線接続部(23)と、
前記電線接続部の内方に突出するように一方の前記側壁(35)に形成されたバネ部(37,37A,55,55A)と、
前記バネ部に対向する他方の前記側壁(47)に形成されて前記端子が前記端子収容室に挿入されることにより前記端子収容室の内壁(53)により押圧付勢されて前記バネ部との間で前記芯線を挟持する押圧可動部(45,61)と、
を備えることを特徴とする端子接続構造。
[2] 前記バネ部(37,37A)が、前記端子(13、13B)の挿入方向側を自由先端部(39)とするとともにその反対側を基端支持部(41)とする片持ち梁状に形成され、
前記自由先端部のエッジ部(43)が、前記芯線(33)に食い込む
ことを特徴とする上記[1]に記載の端子接続構造。
[3] 前記バネ部(37)が、前記芯線(33)の延在方向に沿って複数箇所設けられている
ことを特徴とする上記[1]または[2]に記載の端子接続構造。
[4] 前記押圧可動部(61)の揺動先端部には、前記電線端末の被覆(31)に食い込む被覆固定爪(59)が形成されている
ことを特徴とする上記[1]~[3]のいずれか1つに記載の端子接続構造。
【符号の説明】
【0053】
11…ハウジング
13…端子
17…端子収容室
23…電線接続部
31…被覆
33…芯線
35…一方の側壁
37…バネ部
39…自由先端部
41…基端支持部
43…エッジ部
45…押圧可動部
47…他方の側壁
53…内壁