(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-20
(45)【発行日】2022-09-29
(54)【発明の名称】回転構造物及び焼却炉
(51)【国際特許分類】
E04H 9/02 20060101AFI20220921BHJP
E04H 7/00 20060101ALI20220921BHJP
F16F 15/02 20060101ALI20220921BHJP
F23G 5/20 20060101ALI20220921BHJP
【FI】
E04H9/02 301
E04H9/02 331E
E04H9/02 331D
E04H7/00
F16F15/02 L
F23G5/20 A
(21)【出願番号】P 2018244939
(22)【出願日】2018-12-27
【審査請求日】2021-08-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000192590
【氏名又は名称】株式会社神鋼環境ソリューション
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【氏名又は名称】三好 秀和
(72)【発明者】
【氏名】塩見 謙介
(72)【発明者】
【氏名】岩本 浩祐
(72)【発明者】
【氏名】若松 秀樹
【審査官】沖原 有里奈
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-279020(JP,A)
【文献】特表平11-514736(JP,A)
【文献】特開2018-083717(JP,A)
【文献】特開2002-266517(JP,A)
【文献】実開昭60-102541(JP,U)
【文献】特開2014-105723(JP,A)
【文献】特開2017-145839(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04H 9/00-9/16
E04H 7/00-7/32
F16F 15/00-15/36
F23G 5/20-5/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体を流通させる配管を配置して回転可能な円筒体と、
前記配管に前記流体を供給する供給流路と、前記配管から前記流体を回収する回収流路とが同軸状に積層された二重連絡管と、
前記二重連絡管の前記配管に接続される側とは反対側に接続され、前記円筒体の回転に合わせて前記二重連絡管を回転可能に支持するロータリージョイントと、
第1部材と、該第1部材との連結方向に対して垂直な方向に移動可能な第2部材とを含む変位機構と、
を備え、
前記第1部材は、地面側の架台に接続され、
前記第2部材は、前記ロータリージョイントに接続される、回転構造物。
【請求項2】
前記変位機構は、すべり支承を用いた免震機構である、請求項1に記載の回転構造物。
【請求項3】
前記変位機構は、転がり支承を用いた免震機構である、請求項1に記載の回転構造物。
【請求項4】
一端が前記第1部材の側に接続され、他端が前記第2部材の側に接続されるシャーピンを備える、請求項1~3のいずれか1項に記載の回転構造物。
【請求項5】
回転可能な円筒体を炉体とする回転式の焼却炉であって、
前記円筒体を含み、前記円筒体を回転させる回転構造物を備え、
前記回転構造物は、請求項1~4のいずれか1項に記載の回転構造物である、焼却炉。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、回転構造物、及び、それを用いた焼却炉に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、対象物を収容した回転体を回転させることで対象物を攪拌する回転構造物を備えた産業用装置が存在する。そのなかでも特に大型の産業用装置として、特許文献1は、回転している円筒状の炉体に都市ゴミ等の廃棄物を供給して焼却させる回転式焼却炉を開示している。
【0003】
回転式焼却炉に用いられる炉体は、それぞれ軸方向に沿って延伸する複数の水管を周方向に一定間隔で配置した円筒体である。水管は、炉体冷却用の冷却水を流通させる。冷却水は、いずれかの水管内を円筒体の一方の開口側から他方の開口側に向かう方向で流通した後、他の水管内を反対方向に流通することで戻るので、炉体全体としては、それぞれの水管を通じて循環流通する。これらの水管は、二重連絡管を介してロータリージョイントに連接され、外部との間で冷却水の導入と排出とが行われる。ロータリージョイントは、炉体の周方向の回転に合わせて二重連絡管を回転可能に支持する軸受機構である。
【0004】
また、回転式焼却炉では、炉体の姿勢は、廃棄物が供給される入口側が高く、焼却灰等が排出される出口側が低くなるように傾斜している。そして、二重連絡管は、炉体の低位置側に設置されている。つまり、二重連絡管は、炉体側から、炉体の下流側に設置されている未燃ガスを処理するための二次燃焼室を貫通して、二次燃焼室の外部に設置されているロータリージョイントまで延伸している。そのため、ロータリージョイントは、炉体を支持する架台とは離れた位置にある別の架台に支持されることが多い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
例えば、炉体を支持する第1架台と、ロータリージョイントを支持する第2架台とが、上記のように、互いに離れて独立して地上面に設置されていると想定する。この場合、地震が発生したときには、第1架台と第2架台とが互いに異なる振動周期及び振幅で揺れることで、第1架台と第2架台との間には、大きな相対変位が生じる。このとき、一端が第1架台側の炉体に接続され、他端が第2架台側のロータリージョイントに接続されている二重連絡管には、相対変位が強制変位として入力されて、過大な変形や応力が発生するおそれがある。このような変形等に起因して二重連絡管が損傷した場合には、二重連絡管の修復や交換が要求されることもあり得る。
【0007】
そこで、本開示は、地震に起因した損傷等の発生を抑えるのに有利となる回転構造物及び焼却炉を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の一態様に係る回転構造物は、流体を流通させる配管を配置して回転可能な円筒体と、配管に流体を供給する供給流路と、配管から流体を回収する回収流路とが同軸状に積層された二重連絡管と、二重連絡管の配管に接続される側とは反対側に接続され、円筒体の回転に合わせて二重連絡管を回転可能に支持するロータリージョイントと、第1部材と、該第1部材との連結方向に対して垂直な方向に移動可能な第2部材とを含む変位機構と、を備え、第1部材は、地面側の架台に接続され、第2部材は、ロータリージョイントに接続される。
【0009】
上記の回転構造物では、変位機構は、すべり支承を用いた免震機構であってもよい。又は、変位機構は、転がり支承を用いた免震機構であってもよい。また、上記の回転構造物は、一端が第1部材の側に接続され、他端が第2部材の側に接続されるシャーピンを備えてもよい。
【0010】
また、本開示の一態様に係る焼却炉は、回転可能な円筒体を炉体とする回転式の焼却炉であって、円筒体を含み、円筒体を回転させる回転構造物を備え、回転構造物は、上記の回転構造物であってもよい。
【発明の効果】
【0011】
本開示によれば、地震に起因した損傷等の発生を抑えるのに有利となる回転構造物及び焼却炉を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本開示の一実施形態に係る焼却炉の構成を示す図である。
【
図2】本開示の一実施形態に係る回転構造物の支持構成を示す側面図である。
【
図3】地震発生後の一実施形態に係る回転構造物の状態の一例を説明する図である。
【
図4】本開示の他の実施形態に係る回転構造物の支持構成を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本開示の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。ここで、実施形態に示す寸法、材料、その他、具体的な数値等は例示にすぎず、特に断る場合を除き、本開示を限定するものではない。また、実質的に同一の機能及び構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、本開示に直接関係のない要素については、図示を省略する。
【0014】
また、以下に示す実施形態では、本開示の回転構造物が、廃棄物を焼却処理する産業用装置としての回転式焼却炉に備えられ、かつ、回転可能な円筒状の炉体を円筒体として含むものとする。なお、回転式焼却炉は、回転ストーカ式焼却炉と呼ばれることもある。
【0015】
図1は、一実施形態に係る回転式の焼却炉100の構成を示す概略断面図である。焼却炉100は、本実施形態に係る回転構造物10と、廃棄物投入部20と、風箱30と、二次燃焼室40と、後燃焼装置50とを備える。
【0016】
回転構造物10は、円筒体11と、ロータリージョイント12と、ターニングローラ13と、駆動装置14と、不図示のスラストローラとを含む。回転構造物10は、カバーケーシング16内に配置される。
【0017】
円筒体11は、流体を流通させる配管としてそれぞれ軸方向に沿って延伸する複数の水管11a(
図2参照)を、周方向に一定間隔で配置することで構成される炉体である。なお、回転式の焼却炉100では、円筒体11は、ストーカ炉と呼ばれることもある。隣り合う水管11a同士は、不図示であるが、円筒体11の軸方向に沿って所定の間隔で形成された複数の空気孔を有するフィンを介して連接されている。また、円筒体11は、廃棄物Wが供給される入口側の開口に合わせて環状に設置された入口側ヘッダー管11bと、焼却灰等が排出される出口側の開口に合わせて環状に設置された出口側ヘッダー管11cとを含む。複数の水管11aの一端は、入口側ヘッダー管11bに連通する。複数の水管11aの他端は、出口側ヘッダー管11cに連通する。そして、いずれかの水管11aを通じて出口側ヘッダー管11c側から入口側ヘッダー管11b側に向かった冷却水は、他の水管11aを通じて入口側ヘッダー管11b側から出口側ヘッダー管11c側に戻ることができる。出口側ヘッダー管11cは、二重連絡管17を介して、二次燃焼室40の外部に設置されているロータリージョイント12に連接されている。二重連絡管17には、水管11aに冷却水を供給する供給流路と、水管11aから冷却水を回収する回収流路とが同軸状に積層されている。
【0018】
ロータリージョイント12は、二重連絡管17を回転可能に支持する軸受機構である。ロータリージョイント12は、二重連絡管17を介して、それぞれの水管11a内に炉体冷却用の冷却水を循環流通させる。本実施形態におけるロータリージョイント12の配置及び支持構成については、以下で詳説する。
【0019】
また、円筒体11は、外周壁に同軸状に取り付けられた複数の環状部材19を備える。例えば、円筒体11は、廃棄物Wが供給される入口側の開口近傍と、焼却灰等が排出される出口側の開口近傍との2カ所に環状部材19を備えてもよい。なお、回転式の焼却炉100では、環状部材19は、タイヤと呼ばれることもある。
【0020】
ターニングローラ13は、環状部材19を回転可能に支持する。本実施形態では、環状部材19が2つ存在するので、ターニングローラ13は、2つの環状部材19ごとに存在する。
【0021】
駆動装置14は、円筒体11の廃棄物Wが供給される入口側のターニングローラ13を回転させることで、円筒体11を回転させる。なお、駆動装置14は、このような構成に限られず、例えば、円筒体11の外周壁に環状のピンギアを同軸状に取り付け、ピンビアに係合する回転ギアを回転させることで、円筒体11を回転させるものであってもよい。
【0022】
また、ターニングローラ13は、第1架台60上に支持される。ここで、ターニングローラ13は、円筒体11が、廃棄物Wが供給される入口側が高く、焼却灰等が排出される出口側が低くなる傾斜姿勢となるように、円筒体11を支持する。つまり、ターニングローラ13は、第1架台60上に、円筒体11が水平面に対して中心軸AXが角度θで傾斜した姿勢で回転可能となるように設置される(
図2参照)。本実施形態では、一例として、第1架台60の表面は、円筒体11の傾斜姿勢に合わせて傾斜しているものとする。
【0023】
スラストローラは、例えば、円筒体11の廃棄物Wが供給される入口側の開口近傍にある環状部材19に接触することで、円筒体11の傾斜姿勢に伴う円筒体11の軸方向への移動を規制する。スラストローラも、ターニングローラ13と同様に、第1架台60上に支持される。
【0024】
廃棄物投入部20は、投入ホッパ21と、給じん機22とを含む。投入ホッパ21は、処理対象物である廃棄物Wが投入され、投入された廃棄物Wを給じん機22へ導く。給じん機22は、投入ホッパ21から送られてきた廃棄物Wを円筒体11の内部に供給する。
【0025】
風箱30は、円筒体11の下側位置に設置され、円筒体11に向けて燃焼用空気31を供給する。風箱30から供給された燃焼用空気31は、円筒体11に形成されている複数の空気孔を通して炉内に導入される。風箱30は、円筒体11の軸方向に沿って3分割された分割流路30aを有する。3つの分割流路30aは、それぞれ、ダンパ32を備える。ダンパ32は、燃焼用空気31の供給量を調整する。なお、3つの分割流路30aは、不図示であるが、それぞれ、さらに周方向にも複数に分割され、それぞれの分割部にもダンパ32を備えてもよい。これらの分割部は、円筒体11の底部に滞留する廃棄物Wの周方向の量に応じて、空気の供給量を調整してもよい。
【0026】
二次燃焼室40は、円筒体11の下流側上部に設置され、未燃ガスを処理する。後燃焼装置50は、円筒体11の下流側下部に設置され、灰中未燃分を処理する。
【0027】
焼却炉100は、このような構成により、円筒体11に供給された廃棄物Wを、円筒体11の回転により撹拌しながら順次下流側へ移送し、風箱30から供給される燃焼用空気31により乾燥、熱分解、燃焼の過程を経て焼却処分することができる。
【0028】
次に、回転構造物10の支持構成について具体的に説明する。
【0029】
図2は、回転構造物10の支持構成を示す側面図である。なお、
図2では、駆動装置14等の描画を省略している。
【0030】
円筒体11とロータリージョイント12とは、上記のとおり、二重連絡管17を介して接続されている。二重連絡管17は、二次燃焼室40の外部に設置されているロータリージョイント12から、二次燃焼室40の壁部40aに設けられている貫通穴40bを貫通して、円筒体11に向かって延伸している。
【0031】
二重連絡管17は、円筒体11の中心軸AXと同軸に延設される。つまり、二重連絡管17と、中心軸AXを回転軸として二重連絡管17を回転させるロータリージョイント12との姿勢は、円筒体11の姿勢と同様に、水平面に対して中心軸AXが角度θで傾斜している。二重連絡管17は、円筒体11に設置されている環状の出口側ヘッダー管11cに対して、中心軸AXから放射状にそれぞれ分岐した複数の支流管11dを介して連通している。本実施形態では、一例として、支流管11dは、中心軸AXから放射状の四方にそれぞれ分岐した計4つ存在するものとしている。以下、
図2に示すように、中心軸AXの延伸方向をX方向と規定する。併せて、水平面においてX方向に対して垂直となる方向をY方向と規定する。また、XY平面に対して垂直となる方向をZ方向と規定する。
【0032】
円筒体11は、地面側の第1架台60上に支持されている。一方、ロータリージョイント12は、二次燃焼室40の外部にある、地面側の第2架台61上に支持されている。本実施形態では、一例として、第1架台60と第2架台61とが互いに独立して地面上に立設されているものとする。そして、本実施形態では、ロータリージョイント12は、変位機構70を介して第2架台61に支持される。
【0033】
変位機構70は、互いに連結された第1部材71と第2部材72とを含む。第1部材71及び第2部材72は、それぞれ、例えば板体である。第2部材72は、第1部材71との連結方向に対して垂直な方向に移動可能である。この場合、第1部材71は、第2架台61に接続される。第2部材72は、ロータリージョイント12に接続される。この構成によれば、ロータリージョイント12は、第2架台61に対して、XY平面と平行な平面内で移動可能となる。変位機構70としては、例えば、すべり支承を用いた免震機構や、転がり支承を用いた免震機構などが適用可能である。
【0034】
また、回転構造物10は、一端が第1部材71の側に接続され、他端が第2部材72の側に接続されるシャーピン75を備える。シャーピン75は、加えられる荷重によって、所定の耐荷重までは形状を維持し、耐荷重を超えた荷重が加えられたときに破断する部材である。本実施形態では、シャーピン75の耐荷重は、回転構造物10を構成する要素が損傷すると想定される地震時の揺れの程度から決定されてもよい。ここで、損傷が想定される回転構造物10の構成要素は、例えば、二重連絡管17である。なお、シャーピン75の設置位置や設置個数等は、特に限定するものではない。
【0035】
次に、本実施形態に係る回転構造物10の特に地震発生時の作用について説明する。
【0036】
図3は、
図2に示す地震発生前の回転構造物10の状態に対して、地震発生後の回転構造物10の状態の一例を説明する図である。
【0037】
まず、地震が発生していない通常動作時、又は、シャーピン75の耐荷重を超えるような揺れが生じない程度の地震が発生した場合には、シャーピン75は破断しない。したがって、ロータリージョイント12は、第2架台61に固定された状態で支持されている。
【0038】
一方、
図3に示すように、シャーピン75の耐荷重を超えるような揺れが生じる大きな地震が発生した場合には、シャーピン75が破断する。そして、地震により、円筒体11を支持する第1架台60、及び、ロータリージョイント12を支持する第2架台61は、ともに大きく揺れる。このとき、第1架台60と第2架台61とでは、例えば、振動周期や振幅が互いに異なる。しかし、本実施形態では、シャーピン75が破断したことで、ロータリージョイント12は、第2架台61に対して移動自在となる。そのため、ロータリージョイント12は、第2架台61上にあるものの、二重連絡管17を介して接続されている円筒体11の揺れに追従して揺れることになる。つまり、二重連絡管17には、第1架台60と第2架台61とにおける振動周期等の相違に起因した強制変位が入力されづらくなるため、損傷が生じづらくなる。
【0039】
次に、本実施形態に係る回転構造物10及び焼却炉100の効果について説明する。
【0040】
まず、本実施形態に係る回転構造物10は、流体を流通させる配管を配置して回転可能な円筒体11と、配管に流体を供給する供給流路と、配管から流体を回収する回収流路とが同軸状に積層された二重連絡管17とを備える。ここで、流体を流通させる配管は、上記例示でいう冷却水を流通させる水管11aに相当する。また、回転構造物10は、二重連絡管17の配管に接続される側とは反対側に接続され、円筒体11の回転に合わせて二重連絡管17を回転可能に支持するロータリージョイント12を備える。さらに、回転構造物10は、第1部材71と、該第1部材71との連結方向に対して垂直な方向に移動可能な第2部材72とを含む変位機構70を備える。第1部材71は、地面側の第2架台61に接続され、第2部材72は、ロータリージョイント12に接続される。
【0041】
ここで、従来であれば、ロータリージョイント12は、第2架台61に対して強固に固定されている。そのため、大きな地震が発生したときには、円筒体11を支持する第1架台60と、第2架台61とが互いに異なる振動周期及び振幅で揺れ、第1架台60と第2架台61との間に大きな相対変位が生じる。そして、二重連絡管17には、相対変位が強制変位として入力されて、損傷が引き起こされることもあり得る。
【0042】
これに対して、回転構造物10によれば、ロータリージョイント12は、第2架台61に対して移動自在であるため、大きな地震が発生した場合には、二重連絡管17を介して接続されている円筒体11の揺れに追従して揺れる。したがって、二重連絡管17には、第1架台60と第2架台61とにおける振動周期等の相違に起因した強制変位が入力されづらくなるため、損傷が生じづらくなる。特に、変位機構70によれば、ロータリージョイント12は、例えば、X方向などの特定の方向に沿った移動だけではなく、Y方向に沿った移動なども可能となるため、二重連絡管17の損傷を生じづらくさせるには、より有利となり得る。
【0043】
このように、本実施形態によれば、地震に起因した損傷等の発生を抑えるのに有利となる回転構造物10を提供することができる。
【0044】
また、本実施形態に係る回転構造物10では、変位機構70は、すべり支承を用いた免震機構であってもよい。又は、変位機構70は、転がり支承を用いた免震機構であってもよい。
【0045】
このような回転構造物10によれば、変位機構70を、例えば、二重連絡管17の強度等を考慮して求められる免震の程度、第2架台61の構造、又は、製造の容易性やコストなどに基づいて、適宜、選択することができる。
【0046】
また、本実施形態に係る回転構造物10は、一端が第1部材71の側に接続され、他端が第2部材72の側に接続されるシャーピン75を備えてもよい。
【0047】
このような回転構造物10によれば、予め所望の耐荷重のシャーピン75を選択しておけば、その耐荷重を超えるような揺れが生じる大きな地震が発生した場合には、シャーピン75を破断させ、ロータリージョイント12を適切に移動自在とすることができる。一方、地震が発生していない通常動作時や、その耐荷重を超えるような揺れが生じない程度の地震が発生した場合には、シャーピン75は破断せず、ロータリージョイント12は、第2架台61に固定された状態で支持される。そのため、例えば、ロータリージョイント12の移動によって二重連絡管17の同芯性が失われるなどの不具合を抑止することができる。
【0048】
さらに、本実施形態に係る、回転可能な円筒体11を炉体とする回転式の焼却炉100は、円筒体11を含み、円筒体11を回転させる上記の回転構造物10を備えてもよい。
【0049】
本実施形態によれば、上記説明した回転構造物10を備えるので、上記の回転構造物10による効果と同様に、地震に起因した損傷等の発生を抑えるのに有利となる焼却炉100を提供することができる。
【0050】
なお、上記説明では、回転構造物10が、廃棄物Wを焼却処理する産業用装置としての回転式の焼却炉100に備えられ、かつ、回転可能な円筒状の炉体を円筒体11として含むものとした。しかし、本開示の回転構造物は、焼却炉100に適用されるものに限られず、例えば、ロータリーキルンなど、回転可能な円筒体を備える他の産業用装置にも採用可能である。
【0051】
また、上記説明では、第1架台60と第2架台61とが互いに独立して地面上に立設されているものとした。しかし、本開示の回転構造物10では、これに限定されない。特に焼却炉100に用いられるような回転構造物10は大型であり、この場合、架台自体も大型となるため、第1架台60と第2架台61とは、互いに連接していたとしても、面内剛性が不足して相対変位を引き起こすおそれがある。したがって、第1架台60と第2架台61とが一体化されていたとしても、本開示の回転構造物10は有用となり得る。
【0052】
さらに、上記説明では、大きな地震が発生したときに、第1架台60側の円筒体11と、第2架台61側のロータリージョイント12との相対変位が二重連絡管17に入力されないようにするために、変位機構70を用いるものとした。これに対して、回転構造物10は、例えば、変位機構70に代えて、第1架台60と第2架台61とを直接的に連接させる減衰デバイスを用いることも考えられる。
【0053】
図4は、変位機構70に代えて減衰デバイス80を備えた回転構造物10の構成を示す図である。減衰デバイス80とは、取り付けられた部位同士の間に発生した相対変位によって減衰力を発揮させることができる装置をいう。減衰デバイス80としては、例えば、座屈拘束ブレースや油圧ダンパ等がある。例えば、減衰デバイス80の一端を第1架台60に接続し、他端を第2架台61に接続することで、減衰デバイス80は、第1架台60及び第2架台61全体の振動応答を低減させることができる。特に、回転構造物10に減衰デバイス80が採用される場合には、減衰デバイス80は、相対変位に起因する二重連絡管17の損傷等を回避するだけでなく、第1架台60又は第2架台61を構成する柱、梁などの鉄骨部分自体の応力も低減することができる。
【0054】
以上、本開示の好ましい実施形態について説明したが、本開示は、これらの実施形態に限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。
【符号の説明】
【0055】
10 回転構造物
11 円筒体
11a 水管
12 ロータリージョイント
17 二重連絡管
61 第2架台
70 変位機構
71 第1部材
72 第2部材
75 シャーピン
100 焼却炉